JP6032057B2 - 樹脂成形部品及びその製造方法 - Google Patents
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しかし、先端に貫通孔112の形成されたフランジ部111には、射出成形時に基端側から流入する溶融樹脂f0が貫通孔112を回避して左右分岐する。左右分岐した溶融樹脂f1、f2が再び合流する合流部113、114において、ウェルドラインWLが発生し易い。分岐した溶融樹脂f1、f2の先頭部は、再合流する前から固化が始まっているので、図14(a)に示すように、ウェルドラインWLを境に固化した樹脂が面直に接合する不連続面を形成し、強度的に弱くなるので、図14(b)に示すように、外力Gがフランジ部に面方向から作用すると、ウェルドラインWLから割れやすくなる。
そのため、先端に貫通孔の形成されたフランジ部において、ウェルドラインを低減するための検討がなされている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に開示された樹脂成形部品の構成によれば、成形時において凹部の側面側の樹脂の流れよりも底面側の樹脂の流れが多くなり、貫通孔の周囲に形成される溶融樹脂の合流する部分、すなわちウェルドラインが形成される部分に凹部の底面側からより多くの樹脂が流れ込むようになる。その結果、ウェルドラインの形成を抑制することができると記載されている。
これに対して、図12、図13に示すような、一般的な樹脂成形部品100におけるフランジ部111の樹脂の厚みは、2mm程度である。樹脂の厚みが2mm程度しかないフランジ部に特許文献1の凹部を形成して、ウェルドラインが形成される部分に凹部の側面側より底面側からより多くの樹脂が流れ込むようにすることは、事実上困難である。したがって、特許文献1の技術を、フランジ部の樹脂の厚みが2mm程度である一般の樹脂成形部品に採用することは適さないという問題があった。
また、特許文献1の技術は、凹部の側面側の樹脂の流れよりも底面側の樹脂の流れが多くなり、貫通孔の周囲に形成される溶融樹脂の合流する部分、すなわちウェルドラインが形成される部分に凹部の底面側からより多くの樹脂が流れ込むようにすることによって、ウェルドラインの形成を抑制する技術である。そのため、より多くの樹脂が流れ込むフランジ下面側(凹部の底面側)においては、ウェルドラインの形成を抑制することが可能であるが、樹脂の流れ込みが少ないフランジ上面側(凹部の底面と反対側)においては、ウェルドラインの形成を抑制することは困難である。したがって、特許文献1の技術を適用しても、フランジの上面側でウェルドラインが残存し、そこから割れが生じる問題があった。
(1)先端に貫通孔が形成されたフランジ部を有する樹脂成形部品であって、
前記貫通孔を隔てて左右いずれか一方の側のフランジ部には、薄肉部を形成したことを特徴とする。
したがって、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部において、薄肉部を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層は、貫通孔を隔てて薄肉部と反対側のフランジ部を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層に押し返されて、ウェルドラインが断面くさび状に湾曲して形成される。
その結果、貫通孔が形成されたフランジ部に外力が作用しても、断面くさび状に湾曲して形成されたウェルドラインの境界面で、その外力に対抗しつつ割れを低減することができる。よって、ウェルドラインが面直に形成される従来のフランジ部の形状に比較して、大幅に強度が向上する。
以上のように、本発明によれば、フランジ部の樹脂の厚みが2mm程度である一般の樹脂成形部品に適用することができ、貫通孔の周辺で溶融樹脂が合流する合流部に生じるウェルドラインで割れにくくするフランジ部の形状を備える樹脂成形部品を提供することができる。
前記薄肉部は、前記貫通孔の外周縁から前記一方の側のフランジ部の外周縁まで形成されていることを特徴とする。
そのため、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部において、貫通孔の外周縁から一方の側のフランジ部の外周縁まで、全長にわたってウェルドラインが断面くさび状に湾曲して形成される。
したがって、貫通孔が形成されたフランジ部に外力が作用しても、断面くさび状に湾曲して形成されたウェルドラインの境界面の全範囲で、その外力に対抗しつつ割れを低減することができる。その結果、ウェルドラインでより一層割れにくくすることができる。
前記薄肉部は、前記一方の側のフランジ部の対向する上下面をそれぞれ凹ませて形成することを特徴とする。
そのため、ウェルドラインがフランジ部の上下方向略中央を中心に対称的な断面くさび状に湾曲して形成される。
したがって、貫通孔が形成されたフランジ部に外力が作用しても、フランジ部の上下方向略中央を中心に対称的な断面くさび状に湾曲したウェルドラインの境界面で、その外力を上下略均等に分散させて、割れをより一層低減することができる。
前記薄肉部を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の温度を、前記貫通孔を隔てて前記薄肉部と反対側のフランジ部を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の温度に比べて、相対的に低くすることを特徴とする。
したがって、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部において、薄肉部を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層は、貫通孔を隔てて薄肉部と反対側のフランジ部を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層により大きく押し返されて、ウェルドラインは、先端が鋭角的な断面くさび状に湾曲して形成される。
まず、本発明に係る実施形態である樹脂成形部品において、貫通孔の周辺で溶融樹脂が合流する合流部に生じるウェルドラインで割れにくくするフランジ部の基本構成を、図1〜図3を用いて説明する。図1に、本発明に係る実施形態である樹脂成形部品の部分斜視図を示す。図2に、図1に示す樹脂成形部品における取付部を構成するフランジ部の詳細説明図を示す。図3に、図2に示すフランジ部のB−B断面図を示す。
に限定されることはない。繊維強化型のプラスチックであっても良い。
流動性の低いスキン層23AS、23BSの圧力q1は、左右略均等であるが、流動性が高いコア層23AC、23BCの圧力P1、P2は、上述したように左右相違する。すなわち、薄肉部21に近い合流部23A側の溶融樹脂のコア層23ACの圧力P1が、薄肉部21と反対側の合流部23B側の溶融樹脂のコア層23BCの圧力P2より、相対的に小さい。
その結果、貫通孔3が形成されたフランジ部に上下方向から外力が作用しても、断面くさび状に湾曲して形成されたウェルドライン24の境界面で、その外力に対抗しつつ割れを低減することができる。
そのため、ウェルドライン24がフランジ部20の上下方向略中央を中心に対称的な断面くさび状に湾曲して形成される。
そのため、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部23A、23Bにおいて、貫通孔3の外周縁から一方の側のフランジ部20の外周縁まで、全長にわたってウェルドライン24が断面くさび状に湾曲して形成される。
次に、上述した薄肉部のバリエーションとして、薄肉部の変形例を図4〜図11を用いて説明する。図4に、図2に示す薄肉部における第1変形例の斜視図を示す。図5に、図2、図4に示す薄肉部のC−C,D−D断面図を示す。図6に、図2、図4に示す薄肉部のC−C,D−D断面図の変形例を示す。図7に、図2に示す薄肉部における第2変形例の斜視図を示す。図8に、図7に示す薄肉部のE−E断面図を示す。図9に、図2に示す薄肉部における第3変形例の斜視図を示す。図10に、図9に示す薄肉部のF−F断面図を示す。図11に、図2に示す薄肉部における第4変形例の斜視図を示す。
図4に示すように、フランジ部20の長手方向における薄肉部21Aの幅を、貫通孔3の外周縁の幅w2と一方の側のフランジ部20の外周縁の幅w1とで相違させてもよい。例えば、薄肉部21Aにおける一方の側のフランジ部20の外周縁の幅w1を貫通孔3の外周縁の幅w2より長くすることによって、一方の側のフランジ部20の外周縁側における溶融樹脂のコア層の圧力P11を、貫通孔3の外周縁側における溶融樹脂のコア層の圧力P12より小さくさせて、フランジ部20の長手方向に対するウェルドライン24の傾斜角θを増大させることができる。ウェルドライン24の傾斜角θが増大することによって、ウェルドライン24の長さLが長くなる。そのため、フランジ部の先端に外力を作用させたときに、長さLが長くなったウェルドライン24全体で、力の分散を図ることが可能となり、ウェルドライン24は撓みにくくなる。その結果、ウェルドライン24は、より一層割れにくくなる。
図7に示すように、薄肉部21B、21C、21Dは、フランジ部20の長手方向に複数個並列状に形成してもよい。薄肉部21B、21C、21Dを複数個並列状に形成することによって、1個当たりの薄肉部の幅を短くすることができるので、貫通孔3の周辺で他の部品と当接する面を確保し易くなる。当接面が増加するので、貫通孔3を介して他の部品を締結する際、薄肉部21B、21C、21Dを緩みにくくすることができる。
なお、図8に示すように、薄肉部21B、21C、21Dは、フランジ部20の上面211及び下面212からそれぞれ凹ませて形成することができるが、フランジ部20の上面211及び下面212のいずれか一方側からのみ凹ませて形成することも可能である(図示しない)。薄肉部21B、21C、21Dの厚みt4、t5、t6は、それぞれ他のフランジ部20,22の厚みt0の1/2倍程度が好ましい。
図9に示すように、薄肉部21Eを、貫通孔3の外周縁側のリブ21Fと一方の側のフランジ部20の外周縁側のリブ21Gとによって囲むように形成してもよい。貫通孔3の外周縁側と一方の側のフランジ部20の外周縁側とにリブ21F、21Gを形成して、薄肉部21Eを囲むことによってフランジ部20を補強することができる。
なお、図10に示すように、薄肉部21Eは、フランジ部20の上面211及び下面212からそれぞれ凹ませて形成することができるが、フランジ部20の上面211及び下面212のいずれか一方側からのみ凹ませて形成することも可能である(図示しない)。薄肉部21Eの厚みt7は、他のフランジ部20,22の厚みt0の1/2倍程度が好ましい。
図11に示すように、薄肉部21Hは、互いに近接する複数個の凹形状として形成してもよい。複数個の凹形状が互いに近接して形成されることによって、薄肉部21Hをフランジ部20の一定範囲に形成したのと略同等の効果を奏することができる。また、フランジ部20の凹形状が形成されていない薄肉部21Hの周辺部21Lは、フランジ部20を補強する効果を奏する。凹形状は、円筒形状でもよいが、矩形形状など他の立体形状でもよい。各薄肉部21Hの厚みは、他のフランジ部20,22の厚みt0の1/3〜1/2倍程度が好ましい。
次に、樹脂成形部品10を射出成形法によって製造する方法について説明する。射出成形法自体は、公知技術であるので、ここでは本願発明の特徴である、薄肉部21を形成する溶融樹脂の冷却方法を中心に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂成形部品10には、本体部1の一部に樹脂注入口(ゲート)INが形成されている。
樹脂注入口(ゲート)INから、金型キャビティ内に注入される溶融樹脂は、ガラス転移温度以上に加熱されて、流動性が高い。
貫通孔3の手前で左右に分岐した一方の溶融樹脂は、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を通過する際、上下の隙間が狭い金型表面から熱吸収されやすい。そのため、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂は、温度が低下して、粘性抵抗が増大する。これに対して、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂は、上下の隙間が広いので金型表面から熱吸収されにくい。そのため、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂は、温度が低下しにくく、粘性抵抗も増大しにくい。
そのため、図3に示すように、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部23A,23Bにおいて、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23ACは、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23BCに押し返されて、ウェルドライン24が断面くさび状に湾曲して形成される。
ここで、薄肉部を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂を積極的に冷却する手段としては、例えば、薄肉部を形成する金型において、熱伝導性の高いZAS又はアルミ合金等を用いること、冷却水の配管経路を他の回路とは別に設定して温度コントロールすること等がある。
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る樹脂成形部品10によれば、貫通孔3を隔てて左右いずれか一方の側のフランジ部20には、薄肉部21を形成したので、射出成形時に貫通孔3を回避して左右分岐した溶融樹脂の内、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の粘性抵抗が増大する。そのため、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の圧力P1が、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の圧力P2に比べて、相対的に小さくなる。
したがって、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部23A,23Bにおいて、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23ACは、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23BCに押し返されて、ウェルドライン24が断面くさび状に湾曲して形成される。
その結果、貫通孔3が形成されたフランジ部20に外力が作用しても、断面くさび状に湾曲して形成されたウェルドライン24の境界面で、その外力に対抗しつつ割れを低減することができる。よって、ウェルドライン24が面直に形成される従来のフランジ部の形状に比較して、大幅に強度が向上する。
そのため、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部23A,23Bにおいて、貫通孔3の外周縁から一方の側のフランジ部20の外周縁まで、全長にわたってウェルドライン24が断面くさび状に湾曲して形成される。
したがって、貫通孔3が形成されたフランジ部20に外力が作用しても、断面くさび状に湾曲して形成されたウェルドライン24の境界面の全範囲で、その外力に対抗しつつ割れを低減することができる。その結果、ウェルドライン24でより一層割れにくくすることができる。
そのため、ウェルドライン24がフランジ部20の上下方向略中央を中心に対称的な断面くさび状に湾曲して形成される。
したがって、貫通孔3が形成されたフランジ部20に外力が作用しても、フランジ部20の上下方向略中央を中心に対称的な断面くさび状に湾曲したウェルドライン24の境界面で、その外力を上下略均等に分散させて、割れをより一層低減することができる。
そのため、左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部23A,23Bにおいて、薄肉部21を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23ACは、貫通孔3を隔てて薄肉部21と反対側のフランジ部22を形成する金型キャビティ内を通過した溶融樹脂のコア層23BCに押し返されて、ウェルドライン24は、先端が鋭角的な断面くさび状に湾曲して形成される。
2 取付部
3 貫通孔
10 樹脂成形部品
20、22 フランジ部
21 薄肉部
23A,23B 合流部
23AS,23BS スキン層
23AC,23BC コア層
24 ウェルドライン
Claims (3)
- 先端に貫通孔が形成されたフランジ部を有する樹脂成形部品であって、
前記貫通孔を隔てて左右いずれか一方の側のフランジ部には、薄肉部を形成したこと、前記薄肉部は、前記貫通孔の外周縁から前記一方の側のフランジ部の外周縁まで形成されていること、前記一方の側のフランジ部と前記貫通孔を隔てた反対側のフランジ部とで左右分岐した溶融樹脂が再び合流する合流部において形成されるウェルドラインの境界面は、前記薄肉部から離間した位置で、前記貫通孔の外周縁から前記一方の側のフランジ部の外周縁まで、全長にわたって断面くさび状に湾曲して形成されていることを特徴とする樹脂成形部品。 - 請求項1に記載された樹脂成形部品において、
前記薄肉部は、前記一方の側のフランジ部の対向する上下面をそれぞれ凹ませて形成することを特徴とする樹脂成形部品。 - 請求項1又は請求項2に記載された樹脂成形部品の製造方法において、
前記薄肉部を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の温度を、前記貫通孔を隔てて前記薄肉部と反対側のフランジ部を形成する金型キャビティ内を流れる溶融樹脂の温度に比べて、相対的に低くすることを特徴とする樹脂成形部品の製造方法。
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