JP6027432B2 - エアクリーナ - Google Patents

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本発明は、エアクリーナに関するものである。
従来、エンジンが吸入する空気中の異物を除去するための濾過装置としてエアクリーナが知られている。図5は従来におけるエアクリーナの一例を示すもので、図中1はその軸心方向に空気2を流して異物を捕集する軸流型のフィルタエレメント、3は該フィルタエレメント1を収容するハウジングを示し、該ハウジング3内の一側に上方から下方に向けて空気2を導き入れる入口ダクト4が区画形成され、該入口ダクト4に隣接したハウジング3内の残余の空間における底部より所要高さ嵩上げされた位置に前記フィルタエレメント1が設置されており、前記ハウジング3の頂部には、前記フィルタエレメント1を通過した空気2を図示しないエンジンへと送り出す空気取出口5が設けられている。
そして、このような構成によれば、図示しない吸気口より入口ダクト4を通して空気2をハウジング3の底部に導き、ここで上向きに折り返させてフィルタエレメント1を下から上に通過させ、該フィルタエレメント1を通過することにより異物を除去された空気2のみが前記ハウジング3の空気取出口5から図示しないエンジンへと送り出されることになる。
ここで、図6に部分的な拡大図を示す如く、前記フィルタエレメント1は、濾材から成る波形シート1aとフラットシート1bとを二枚重ねにしたものをロール状に巻いて相互間に多数の流路1cを形成したハニカム構造を成しており、その製作段階で各流路1cの入口を接着剤の塗布により一つ置きに目封じし且つ入口が目封じされていない流路1cについては出口を目封じして、各流路1cを区画する濾壁を透過した空気2のみが下流側へ排出されるようにしてある。
斯かる従来のエアクリーナ6においては、吸気口から空気2と共に雨や雪が取り込まれてしまうことがあるが、前述した通り、吸気口から取り込まれた空気2は、入口ダクト4を下降してからハウジング3の底部で上向きに折り返してフィルタエレメント1を通過するようになっているので、その折り返し時に雨や雪を分離してハウジング3の底部に溜めておくことができ、空気2のみをエンジンに導けるようになっている。
斯かるエアクリーナ6においては、豪雪地域等における降雪時の長時間走行で大気中を舞う雪が多量に吸気口から取り込まれてしまうことがあり、図7に示す如く、ハウジング3内におけるフィルタエレメント1下側の水溜めスペース7全体に雪が詰まって空気2の取り込みが困難となる虞れがあったため、雪の取り込みが無い場所に配置した補助吸気口9から空気2を導くバイパス流路8を備えてフィルタエレメント1の下面の一部に接続しておき、前記水溜めスペース7に多量の雪が積もっても、前記バイパス流路8から空気2を導くことで必要最低限の吸気量を確保し、車両が道路の途中で立ち往生してしまうような事態を回避できるようにすることが提案されている。
ここで、図7に例示しているバイパス流路8は、エアクリーナ6のハウジング3内において、水溜めスペース7を仕切板8aで区画することで形成され、ハウジング3外においては、配管8bを接続することで構成するようにしている。
また、補助吸気口9が配置される雪の取り込みが無い場所とは、一般的には、エンジンルーム内の余剰空間等が想定されるが、このような場所から清浄で温度の低い空気2を取り込むことは難しいので、エンジン側で必要とする空気2の全量をここから取り込むことは好ましくない。
そして、斯かるバイパス流路8の装備は、水溜めスペース7の許容量を超えて多量の水が取り込まれた場合にも、必要最低限の吸気量を確保できるように機能するものと考えられており、例えば座席より低い位置に吸気口がレイアウトされている車型の場合には、激しい降雨により冠水した道路を通過するような特殊なケースにおいて、水溜めスペース7の許容量を超えて多量の水が取り込まれる虞れがあり、図8に示すように、水のレベルがフィルタエレメント1の下端まで達すると、該フィルタエレメント1の軸心方向に延びる流路によるストロー効果で水が吸い上げられてしまう虞れがあるが、このような場合であっても、前記バイパス流路8が配管されていれば、該バイパス流路8と連通している抵抗の少ない流路1cに空気2が流れて水の吸い上げが回避されるものと期待されていた。
尚、この種の軸流型のフィルタエレメント1を備えたエアクリーナ6に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
実開2009−150276号公報
しかしながら、実際にハウジング3内に水溜めスペース7の許容量を超える水が取り込まれた場合について検証してみると、水はフィルタエレメント1の濾壁に次々と含浸してバイパス流路8からの空気2が流れる流路1cにも滲み出してしまうため、該流路1cに水が入った瞬間から吸入空気抵抗が急増して必要最低限の吸気量を確保することが難しくなり、車両が冠水道路の途中で走行停止に陥ってしまう懸念があることが判り、走行停止に到らないまでも、下流側のエアフローメータ10等へ水滴が流出して不具合を招く虞れがあることが判った。
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、車両が冠水道路の途中で走行停止に陥る事態や水滴流出によるエアフローメータ等の不具合の発生を未然に回避し得るようにすることを目的としている。
本発明は、軸流型のフィルタエレメントをその軸心方向が上下方向に向くようにしてハウジング内に収容し、該ハウジングの入口ダクトから前記ハウジングの底部に導き入れた空気及び補助吸気口からバイパス流路を介して前記ハウジングに導き入れた空気をフィルタエレメントに対し下から上に通して前記空気中の異物を捕集するようにしたエアクリーナにおいて、フィルタエレメント内の一部の流路を防水層により周囲の流路と隔絶して非常用通気エリアとし、前記バイパス流路を前記非常用通気エリアの流路下端に接続し、前記バイパス流路からの空気を前記非常用通気エリアへ導く一方、前記入口ダクトからの空気を前記非常用通気エリアの周囲の流路を導くよう構成したことを特徴とするものである。
而して、このようにすれば、フィルタエレメント内の一部の流路を防水層により周囲の流路と隔絶して非常用通気エリアとしているので、冠水道路の通過時にハウジング内に水が流入し、その水のレベルがフィルタエレメントの下端まで達したとしても、非常用通気エリアへの水の滲み出しが防水層により阻まれ、この非常用通気エリアの各流路を通して必要最低限の空気が支障なく取り込まれると共に、非常用通気エリア周囲の各流路における水の吸い上げが回避されることになる。
即ち、非常用通気エリアの各流路で空気を吸い上げる方が、その周囲の各流路で水を吸い上げるよりも抵抗が少ないため、非常用通気エリアの各流路に必要最低限の空気が支障なく流れたならば、非常用通気エリア周囲の各流路では殆ど水が吸い上げられる事態が起こらなくなる。
更に、本発明においては、濾材から成る波形シートとフラットシートとを交互に積層して相互間に多数の流路を形成し且つ該各流路の入口又は出口の何れか一方を目封じして空気が濾壁を透過して流れるようにしたフィルタエレメントを採用し、該フィルタエレメントの波形シートとフラットシートとの間に防水フィルムを介装して防水層としたり、フィルタエレメントの波形シートとフラットシートの何れかの面に防水剤を塗布して防水層としたりすることが可能である。
上記した本発明のエアクリーナによれば、冠水道路の通過時にハウジング内に水が流入し、その水のレベルがフィルタエレメントの下端まで達したとしても、非常用通気エリアへの水の滲み出しを防水層により阻止することができ、この非常用通気エリアの各流路を通して必要最低限の空気を確保することができるので、車両が冠水道路の途中で走行停止に陥る事態を未然に回避することができ、しかも、非常用通気エリア周囲の各流路における水の吸い上げを回避することができるので、水滴流出によるエアフローメータ等の不具合の発生を未然に回避することもできるという優れた効果を奏し得る。
本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。 図1のフィルタエレメントを模式的に示した斜視図である。 本発明の別の形態例を示す断面図である。 図3のフィルタエレメントを模式的に示した斜視図である。 従来例を示す断面図である。 図5のフィルタエレメントの部分的な拡大図である。 図5の水溜めスペースに雪が積もった状態を示す断面図である。 図5の水溜めスペースに多量の水が取り込まれた状態を示す断面図である。
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図5〜図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
図1に示す如く、本形態例のエアクリーナ11においては、前述の図5で説明したものと略同様に構成されているが、ハウジング3内に設置されている軸流型のフィルタエレメント1内の一部の流路1cが防水フィルム12(防水層)により周囲の流路1cと隔絶されて非常用通気エリア13を構成しており、補助吸気口9から空気2を導くバイパス流路8が前記非常用通気エリア13の流路1c下端に接続されるようになっている点で相違している。
より具体的には、図2に模式的に示す通り、濾材から成る波形シート1aとフラットシート1bとを横方向に交互に積層して並べることで相互間に縦方向の多数の流路1cを形成した箱形のハニカム構造体としてフィルタエレメント1を構成しており、その製作段階で各流路1cの入口を接着剤の塗布により一つ置きに目封じし且つ入口が目封じされていない流路1cについては出口を目封じして、各流路1cを区画する濾壁を透過した空気2のみが下流側へ排出されるようにし、その積層方向における一部の流路1cを残余の流路1cと分断するように防水フィルム12を介装することで非常用通気エリア13を構成するようにしている。
ただし、ここに図示している例では、フィルタエレメント1の波形シート1aとフラットシート1bとの間に防水フィルム12を介装して防水層としているが、非常用通気エリア13の外殻を成す波形シート1a及びフラットシート1bの何れかの面に防水剤を塗布して防水層とすることも可能である。
ここで、前記バイパス流路8は、エアクリーナ11のハウジング3内において、水溜めスペース7を仕切板8aで区画することで形成され、ハウジング3外においては、配管8bを接続することで構成されている。
尚、図2中では説明の便宜上からフィルタエレメント1の各流路1cを模式的に大きく描いているが、実際のフィルタエレメント1の流路は図示よりも細かく形成されるものであることは勿論である。
而して、このようにすれば、フィルタエレメント1内の一部の流路1cを防水フィルム12により周囲の流路1cと隔絶して非常用通気エリア13としているので、冠水道路の通過時にハウジング3内に水が流入し、その水のレベルがフィルタエレメント1の下端まで達したとしても、非常用通気エリア13への水の滲み出しが防水フィルム12により阻まれ、この非常用通気エリア13の各流路1cを通して必要最低限の空気2が支障なく取り込まれると共に、非常用通気エリア13周囲の各流路1cにおける水の吸い上げが回避されることになる。
即ち、非常用通気エリア13の各流路1cで空気2を吸い上げる方が、その周囲の各流路1cで水を吸い上げるよりも抵抗が少ないため、非常用通気エリア13の各流路1cに必要最低限の空気2が支障なく流れる一方、非常用通気エリア13周囲の各流路1cでは殆ど水が吸い上げられる事態が起こらなくなる。
従って、上記形態例によれば、冠水道路の通過時にハウジング3内に水が流入し、その水のレベルがフィルタエレメント1の下端まで達したとしても、非常用通気エリア13への水の滲み出しを防水フィルム12により阻止することができ、この非常用通気エリア13の各流路1cを通して必要最低限の空気2を確保することができるので、車両が冠水道路の途中で走行停止に陥る事態を未然に回避することができ、しかも、非常用通気エリア13周囲の各流路1cにおける水の吸い上げを回避することができるので、水滴流出によるエアフローメータ10等の不具合の発生を未然に回避することもできる。
図3及び図4は本発明の別の形態例を示すもので、ここに採用されているフィルタエレメント1は、濾材から成る波形シート1aとフラットシート1bとを二枚重ねにしたものをロール状に巻いて相互間に多数の流路1cを形成した円柱形のハニカム構造体として構成され、その製作段階で各流路1cの入口を接着剤の塗布により一つ置きに目封じし且つ入口が目封じされていない流路1cについては出口を目封じして、各流路1cを区画する濾壁を透過した空気2のみが下流側へ排出されるようにしたものであるが、先ずフィルタエレメント1の中心部をロール状に形成し、その周囲を防水フィルム12により全周に亘り被覆した後に、その外周に波形シート1a及びフラットシート1bを二枚重ねにしたものを再びロール状に巻き付けて完成させたものであり、前記防水フィルム12により周囲を被覆された中心部の流路1cが非常用通気エリア13を成している。尚、このようにした場合、バイパス流路8については、ハウジング3を貫通させて配管8bを前記フィルタエレメント1の下面中心部に下から接続するようにすれば良い。
而して、本形態例においても、フィルタエレメント1の中心部の流路1cが防水フィルム12により周囲の流路1cと隔絶された非常用通気エリア13となっているので、冠水道路の通過時にハウジング3内に水が流入し、その水のレベルがフィルタエレメント1の下端まで達したとしても、非常用通気エリア13への水の滲み出しを防水フィルム12により阻止することができ、この非常用通気エリア13の各流路1cを通して必要最低限の空気2を確保することができるので、車両が冠水道路の途中で走行停止に陥る事態を未然に回避することができ、しかも、非常用通気エリア13周囲の各流路1cにおける水の吸い上げを回避することができるので、水滴流出によるエアフローメータ10等の不具合の発生を未然に回避することもできる。
尚、本発明のエアクリーナは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、フィルタエレメントの形状には図示以外の形状を適宜に採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 フィルタエレメント
1a 波形シート
1b フラットシート
1c 流路
2 空気
3 ハウジング
8 バイパス流路
9 補助吸気口
10 エアフローメータ
11 エアクリーナ
12 防水フィルム(防水層)
13 非常用通気エリア

Claims (3)

  1. 軸流型のフィルタエレメントをその軸心方向が上下方向に向くようにしてハウジング内に収容し、該ハウジングの入口ダクトから前記ハウジングの底部に導き入れた空気及び補助吸気口からバイパス流路を介して前記ハウジングに導き入れた空気をフィルタエレメントに対し下から上に通して前記空気中の異物を捕集するようにしたエアクリーナにおいて、フィルタエレメント内の一部の流路を防水層により周囲の流路と隔絶して非常用通気エリアとし、前記バイパス流路を前記非常用通気エリアの流路下端に接続し、前記バイパス流路からの空気を前記非常用通気エリアへ導く一方、前記入口ダクトからの空気を前記非常用通気エリアの周囲の流路を導くよう構成したことを特徴とするエアクリーナ。
  2. 濾材から成る波形シートとフラットシートとを交互に積層して相互間に多数の流路を形成し且つ該各流路の入口又は出口の何れか一方を目封じして空気が濾壁を透過して流れるようにしたフィルタエレメントを採用し、該フィルタエレメントの波形シートとフラットシートとの間に防水フィルムを介装して防水層としたことを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
  3. 濾材から成る波形シートとフラットシートとを交互に積層して相互間に多数の流路を形成し且つ該各流路の入口又は出口の何れか一方を目封じして空気が濾壁を透過して流れるようにしたフィルタエレメントを採用し、該フィルタエレメントの波形シート及びフラットシートの何れかの面に防水剤を塗布して防水層としたことを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
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