以下、ステントデリバリカテーテル10の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず図1を参照しながらステントデリバリカテーテル10の概略構成を説明する。図1はステントデリバリカテーテル10の構成を示す概略全体側面図である。なお、図1では図面の関係上、バルーン15周辺を実際よりも大きく示す。
図1に示すように、ステントデリバリカテーテル10は、バルーンカテーテル11と、バルーンカテーテル11のバルーン15上に取り付けられたステント12とを備える。バルーンカテーテル11は、カテーテルチューブ13と、当該カテーテルチューブ13の基端部(近位端部)に取り付けられたハブ14と、カテーテルチューブ13の先端側(遠位端側)に取り付けられたバルーン15とを備える。なお、ステントデリバリカテーテル10(バルーンカテーテル11)の長さ寸法は、1m〜2mとなっている。
バルーンカテーテル11においてカテーテルチューブ13は、複数のチューブにより構成されており、少なくとも軸線方向(長手方向)の途中位置からバルーン15の位置まで内外複数管構造となっている。具体的には、カテーテルチューブ13は、外側チューブ16と、当該外側チューブ16よりも細径化された内側チューブ17と、を備えており、外側チューブ16に内側チューブ17が内挿されていることで内外2重管構造となっている。
外側チューブ16は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された外側管孔21(図2参照)を有する管状に形成されている。外側チューブ16は、近位端部においてハブ14に接続されるとともにNi―Ti合金やステンレスなどの金属により形成された外側近位チューブ22と、外側近位チューブ22に対して遠位側にて連続し外側近位チューブ22よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側中間チューブ23と、外側中間チューブ23に対して遠位側にて連続し外側中間チューブ23よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側遠位チューブ24と、を備えている。
内側チューブ17は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された内側管孔31(図2参照)を有する管状に形成されている。内側チューブ17は、その基端部が外側チューブ16における軸線方向の途中位置、具体的には外側中間チューブ23と外側遠位チューブ24との境界に対して接合されている。また、内側チューブ17は、その一部を外側チューブ16よりも遠位側に延出させた状態で設けられており、その延出した領域を外側から覆うようにしてバルーン15が設けられている。
外側チューブ16の外側管孔21は、バルーン15を膨張又は収縮させる際に圧縮流体を流通させる流体用ルーメンとして機能し、内側チューブ17の内側管孔31は、ガイドワイヤGが挿通されるガイドワイヤ用ルーメンとして機能する。また、内側管孔31の基端開口31aはステントデリバリカテーテル10の軸線方向の途中位置に存在しており、それ故本カテーテル10は所謂RX型のカテーテルとして構成されている。但し、これに限定されることはなく、内側管孔31の基端開口31aがカテーテル10の基端部に存在する所謂オーバー・ザ・ワイヤ型のカテーテルであってもよい。
次に、バルーン15及びその周辺の構成について図2及び図3に基づいて説明する。図2は、(a)が膨張状態におけるバルーン15及びその周辺の構成を示す側面図、(b)が収縮状態におけるバルーン15及びその周辺の構成を示す側面図である。また、図3は、(a)が図2(b)のA−A線断面図、(b)がB−B線断面図、(c)がC−C線断面図である。
図2に示すように、バルーン15は、上述したように、内側チューブ17において外側チューブ16よりも先端側に延出した領域(以下、この領域を延出領域26という)を外側から覆うように設けられている。バルーン15は、その基端部が外側チューブ16(詳細には外側遠位チューブ24)の先端部に接合され、その先端部が内側チューブ17(詳細にはその延出領域26)の先端側に接合されている。
バルーン15は、熱可塑性のポリアミドにより形成されている。但し、これに限定されることはなく、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマ、ポリエステル、ポリエステルエラストマ、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリエチレンテレフタレート、シリコンゴム、スチレンオレフィンゴムなどといった他の合成樹脂により形成されていてもよい。また、このように列挙した合成樹脂や上記ポリアミドエラストマのうち、2種類以上を混合させた材料により形成してもよく、この場合、単層構造としてもよく、多層構造としてもよい。
バルーン15の製造方法としては特に限定されることはなく、ブロー成形、ディッピング成形、押出成形などによる製造方法が挙げられる。但し、心臓の冠状動脈に生じた狭窄部を拡張治療する場合、バルーン15が十分な耐圧強度を有することが好ましく、この場合、ブロー成形が好ましい。
バルーン15は、カテーテルチューブ13に対して接合される両端の接合部と、それら接合部の間に設けられ膨張及び収縮を行う膨張収縮部とを有している。具体的には、バルーン15は、外側チューブ16(外側遠位チューブ24)の先端部に接合される基端側レッグ領域15aと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に拡径されるようにテーパ状をなす基端側コーン領域15bと、長さ方向の全体に亘って内径及び外径が同一でありバルーン15の最大外径領域をなす直管領域15cと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に縮径されるようにテーパ状をなす先端側コーン領域15dと、内側チューブ17の延出領域26に接合される先端側レッグ領域15eとを、基端側からこの順で有している。ここで、基端側コーン領域15b、直管領域15c及び先端側コーン領域15dにより膨張収縮部が構成されている。
なお、外側チューブ16と基端側レッグ領域15aとの接合、及び内側チューブ17と先端側レッグ領域15eとの接合はともに熱溶着により行われている。但し、これらの接合は必ずしも熱溶着により行う必要はなく、接着剤を用いた接着など他の接合方法を採用してもよい。
バルーン15は、外側チューブ16の外側管孔21を通じて流体が当該バルーン15内に加圧供給されると膨張状態となり(図2(a)参照)、外側管孔21に対して陰圧が付与されて流体が当該バルーン15内から排出されると収縮状態となる(図2(b)参照)。
図3(a)〜(c)に示すように、バルーン15は、その収縮状態において形成される複数(図3では6つ)の羽27を備えている。これら各羽27は、バルーン15の周方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で設けられている。各羽27は、バルーン15の膨張収縮部(基端側コーン領域15b、直管領域15c及び先端側コーン領域15d)において軸線方向に延びるように形成されており、より詳しくは膨張収縮部においてその基端部(基端側コーン領域15bの基端部)から先端部(先端側コーン領域15dの先端部)に亘って連続して形成されている。
バルーン15が収縮状態になると、各羽27がそれぞれバルーン15の周方向に折り畳まれて、内側チューブ17の周囲に巻き付いた状態となる。具体的には、バルーン15の収縮状態では、各羽27がそれぞれバルーン15の周方向の一側に折り曲げられるとともに、他側に折り曲げられて折り畳み状態とされている。より詳しくは、バルーン15には、折り畳まれた羽27の内周側に内側チューブ17の外周面と対向する対向部28が設けられており、その対向部28に対して羽27が折り畳まれている。なおここで、対向部28がチューブ対向部に相当する。
なお、収縮状態においてバルーン15に形成される羽27の数は、6枚に限定されることはなく、2〜5枚であってもよく7枚以上であってもよい。
ステント12は、収縮状態におけるバルーン15の外周面上に取り付けられている。すなわち、ステント12は、上記各羽27が巻きついた状態にあるバルーン15の外周面上に取り付けられている。ステント12は、塑性変形可能な金属材料により略円筒形状に形成されており、塑性変形を行うことで収縮状態とそれよりも外径が大きくなる拡張状態との間で遷移するものとなっている。具体的には、ステント12はコバルトクロム合金により形成されている。但し、ステント12は必ずしもコバルトクロム合金により形成される必要はなく、ステンレス鋼等他の金属材料や、ポリ乳酸等の生分解性樹脂を用いて形成されてもよい。また、ステント12として、金属製ステントの表面や樹脂製ステントの表面に、薬剤が付与されたものを用いてもよい。
ステント12は、バルーン15の直管領域15cにおける外周面上に収縮状態で取り付けられている。ステント12は、軸線方向の長さが直管領域15cの軸線方向の長さと同じか又はそれよりも短くなっており、その両端部が直管領域15cからはみ出さないようにして取り付けられている。そして、ステント12は、バルーン15が膨張されて当該バルーン15により径方向外側に向けた外力を受けることで塑性変形しながら拡張状態へと遷移するようになっている。
内側チューブ17においてバルーン15により覆われた領域には、一対の造影環32,33が取り付けられている。これら各造影環32,33は、ステント12が取り付けられた範囲をX線投影下で生体外から目視確認可能とするためのものである。各造影環32,33は、X線造影機能を有する金属、詳細にはステンレス鋼により筒状に形成されている。但し、各造影環32,33は、金、白金、イリジウム、コバルトクロム合金、チタン等により形成されていてもよい。
各造影環32,33は、軸線方向においてステント12を挟んだ両側位置にそれぞれ配置されている。造影環32はステント12に対して基端側に配置されており、その先端部が軸線方向において基端側コーン領域15bと直管領域15cとの境界付近に位置している。また、造影環33はステント12に対して先端側に配置されており、その基端部が直管領域15cと先端側コーン領域15dとの境界付近に位置している。
次に、収縮状態におけるバルーン15の構成に関して、図3に加え図4を用いながら詳しく説明する。図4は、収縮状態におけるバルーン15及びその周辺の構成を拡大して示す側面図である。
図4に示すように、バルーン15の収縮状態では、バルーン15においてステント12よりも基端側の領域(以下、ステント基端側領域38ともいう)にステント12の外周よりも径方向外側に延出した延出部36が設けられている。延出部36は、バルーン15において基端側コーン領域15bに形成されており、基端側レッグ領域15aには形成されていない。
延出部36は、基端側コーン領域15bにおいて軸線方向における中間部に形成されている。具体的には、基端側コーン領域15bは、同領域15bの先端部から基端側に向かって外径D1(D1は基端側コーン領域15bの外径)が大きくなるように形成されるとともに外径D1がステント12の外径DS以下とされた領域48と、当該領域48の基端部から基端側に向かって延びるとともに外径D1がステント12の外径DSよりも大きくされた領域49と、当該領域49の基端部から基端側に向かって外径D1が小さくなるように形成されるとともに外径D1がステント12の外径DS以下とされた領域50とを有している。そして、これら各領域48〜50のうち中間部の領域49に延出部36が形成されており、詳しくは同領域49においてステント12の外周よりも径方向外側に延出した部分が延出部36となっている。
以下の説明では、かかる延出部36が形成された中間部の領域49を延出部形成領域49といい、延出部形成領域49を挟んだ両側の各領域48,50すなわち延出部が形成されていない各領域48,50をそれぞれ延出部非形成領域48,50という。
延出部形成領域49では、同領域49の先端部から基端側に向かうにつれて外径D1が大きくなっており、その途中部位で外径D1が最大(D1(MAX))となっている。そして、その最大外径部位から基端側に向かうにつれて外径D1が小さくなっている。ここで、延出部形成領域49において外径D1が最大となる部位では、延出部36がステント12外周から径方向外側に延出する延出量が最大となっており、以下においてはこの延出部36における最大延出部位を最大延出部36aという。また、この最大延出部36aは、軸線方向において造影環32よりも基端側に位置している。但し、最大延出部36aは、軸線方向において造影環32と同位置にあってもよいし、造影環32より先端側にあってもよい。
基端側レッグ領域15aには、外側チューブ16の先端部が熱溶着により接合されている。基端側レッグ領域15aと外側チューブ16とは、前者を外側、後者を内側として互いに重ね合わせられた状態で接合されている。本実施形態では、基端側レッグ領域15aの外径DL、詳しくは同領域15aと外側チューブ16との接合部分の外径DLがステント12の外径DSよりも小さくなっている。但し、基端側レッグ領域15aの外径DLはステント12の外径DSと同じであってもよいし、ステント12の外径DSより大きくてもよい。
続いて、図3(a)を参照しながら延出部36についてもう少し詳しく説明する。図3(a)は、延出部形成領域49におけるバルーンカテーテル11の横断面を示しており、詳しくは最大延出部36aが形成された部位におけるバルーンカテーテル11の横断面を示している。なお、図3(a)では、ステント12の外周仮想線を一点鎖線で示している(図3(c)も同様)。
図3(a)に示すように、延出部形成領域49では、その外周にステント12が取り付けられていないため、バルーン15の各羽27がステント12によって外周側から押さえ付けられていない。これによって、延出部形成領域49では、バルーン15において羽27が折り畳まれた部位、詳しくは羽27とその内側の対向部28とが互いに重なり合う部位に浮きが生じている。
具体的には、延出部形成領域49では、図3(a)に示すように、羽27の先端部29(折り曲げ先端部)と対向部28とがバルーン径方向に互いに離間しており、それら両者28,29の間に隙間51が形成されている。また、延出部形成領域49では、対向部28と内側チューブ17の外周面とがバルーン径方向に互いに離間しており、それら両者17,28の間に隙間52が形成されている。つまり、延出部形成領域49では、羽27の先端部29と対向部28とが互いに離間し、かつ、対向部28と内側チューブ17とが互いに離間することによって羽27の折り畳み部位に浮きが生じており、そしてその浮きによって羽27の一部がステント12の外周よりも径方向外側に延出し延出部36となっている。
延出部36は、バルーン15の各羽27ごとにそれぞれ設けられている。したがって、延出部形成領域49では、延出部36がバルーン15の周方向において所定の間隔(等間隔)で複数配置されている。また、延出部36は、少なくとも最大延出部36aにおいて、バルーン15の肉厚分ステント12外周よりも径方向外側へ延出している。
図4の説明に戻って、バルーン15においてステント12よりも先端側の領域(以下、ステント先端側領域39ともいう)には、ステント12の外周よりも径方向外側に延出した部分(つまり延出部)が設けられていない。すなわち、先端側コーン領域15d及び先端側レッグ領域15eにはいずれも延出部が設けられていない。また、バルーン15のステント先端側領域39の基端は、ステント12の内周よりも径方向外側に延出している。
先端側コーン領域15dは、同領域15dの基端部から先端側に向かうにつれて外径D2(D2は先端側コーン領域15dの外径)が大きくなるように形成された領域55と、当該領域55の先端部から先端側に向かって延び外径D2が一定とされた領域56と、当該領域56の先端部から先端側に向かうにつれて外径D2が小さくなるように形成された領域(図示略)とを有している。すなわち、先端側コーン領域15dでは、上記各領域55,56のうち中間の領域56において外径D2が最大となっており、以下においてはこの領域56を最大外径領域56という。また、この最大外径領域56では、外径D2が、ステント12の内径よりも大きく、かつステント12の外径DS以下となっている。好ましくは、最大外径領域56では、外径D2がステント12の外径DSと同じとなっている。
図3(c)には、最大外径領域56におけるバルーンカテーテル11の横断面が示されている。同図に示すように、最大外径領域56では、上述した基端側コーン領域15bの延出部形成領域49と同様、その外周にステント12が取り付けられていないため、各羽27の折り畳み部位に浮きが生じている。すなわち、羽27の先端部29と対向部28とがバルーン径方向に若干離間しており、また対向部28と内側チューブ17の外周面とがバルーン径方向に若干離間している。しかしながら、この離間の程度は、上述した延出部形成領域49におけるそれと比べ小さいものとなっており、それ故最大外径領域56では羽27がステント12外周よりも径方向外側に延出していない。すなわち、最大外径領域56(ひいては先端側コーン領域15d)では羽27に延出部が設けられていない。
次に、バルーンカテーテル11のバルーン15上にステント12を取り付けてステントデリバリカテーテル10を製造する際の製造手順について説明する。図5は、ステントデリバリカテーテル10の製造手順を説明するための説明図である。なおここでは、バルーンカテーテル11が製造されていることを前提として説明を行う。
まず、バルーンカテーテル11において収縮状態にあるバルーン15の外周面上にステント12を仮取り付けする仮取付工程を行う。この工程では、まず図5(a)に示すように、拡張状態のステント12をバルーン15の外周側に配置し、それから図5(b)に示すように、ステント12をクリンプ装置45(詳細は後述)を用いて径方向内側に圧縮しバルーン15の外周面上に圧着する。これにより、ステント12がバルーン15の外周面上に仮取り付けされる。なお、この仮取付状態では、ステント12の外径が目標外径(最終外径)よりも大きくなっている。
次に、図5(c)に示すように、バルーン15上に仮取り付けされたステント12と、バルーン15におけるステント12よりも先端側の領域(すなわちステント先端側領域39)とを被覆チューブ43により外側から被覆する被覆工程を行う。この工程では、ステント12の基端からバルーン15のステント先端側領域39先端までの範囲を被覆チューブ43により被覆する。この場合、バルーン15においてステント12よりも基端側の領域すなわちステント基端側領域38については被覆チューブ43により被覆しない。また、被覆チューブ43はPTFE等の合成樹脂により形成されており、その厚みがバルーン15の厚みと略同じとされている。
次に、図5(d)に示すように、ステント12が仮取り付けされたバルーン15をクリンプ装置45に配置(セット)する配置工程を行う。クリンプ装置45は、ステント12をバルーン15上に本取り付け(クリンプ)する際に用いる装置であり、ステント12が仮取り付けされたバルーン15を配置する配置領域46を有している。クリンプ装置45は、その配置領域46を囲んで設けられる複数の押圧部材47を備え、それら各押圧部材47はそれぞれ配置領域46に配置されたステント12を外周側から押圧する押圧面47aを有している。各押圧部材47はそれぞれ配置領域46の中心軸側に向かって移動可能に設けられており、中心軸側に移動することで押圧面47aによりステント12を径方向内側に向けて押圧(圧縮)するものとなっている。
配置工程では、クリンプ装置45の配置領域46にステント12が仮取り付けされたバルーン15をその軸線方向が配置領域46の中心軸方向に向くように配置する。このとき、バルーン15は、軸線方向全域が配置領域46に位置するように配置される。
次に、図5(e)に示すように、各押圧部材47によりステント12を径方向内側に向けて圧縮(押圧)することで、ステント12を収縮状態にしてバルーン15の外周面上に圧着する(クリンプする)本取付工程を行う。この工程では、各押圧部材47をそれぞれ配置領域46の中心軸側に移動させることで、ステント12を各押圧部材47の押圧面47aにより圧縮する。また、本工程では、バルーン15に対して圧縮流体を供給することでバルーン15を加圧しながらステント12をバルーン15上に圧着する。
ここで、この本取付工程に際しては、ステント12及びバルーン15のステント先端側領域39がそれぞれ被覆チューブ43により被覆されているため、ステント12及びステント先端側領域39については被覆チューブ43を介して各押圧部材47により押圧されることとなる。したがって、このとき、ステント先端側領域39では、被覆チューブ43を介して押圧される部位(詳しくは最大外径領域56)の外径がステント12の外径と同じとなる。
その一方で、バルーン15のステント基端側領域38は被覆チューブ43により被覆されていないため、各押圧部材47の押圧面47aにより直に押圧されることとなる。したがって、このとき、ステント基端側領域38では、その一部がステント12の外周よりも径方向外側に被覆チューブ43の厚み分だけ延出し、その延出した部分が延出部36となる。より詳しくはこのとき、ステント基端側領域38では、その一部において羽27の折り畳み部分に浮きが生じており、その浮きによって羽27の一部がステント12外周よりも外側に延出して延出部36となっている。
その後、図5(f)に示すように、ステント12が取り付けられたバルーン15をクリンプ装置45から取り外すとともに、ステント12及びバルーン15から被覆チューブ43を取り外す。これによって、一連の製造作業が終了する。
次に、ステントデリバリカテーテル10を用いてステント12を体内における狭窄箇所に留置する際の作業内容について説明する。
先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、押引操作して冠動脈入口部まで導入する。次いで、ガイドワイヤGをガイディングカテーテルに挿通し、冠動脈入口部から狭窄箇所を経て末梢部位まで導入する。続いて、ガイドワイヤGをステントデリバリカテーテル10の内側管孔31に挿入する。次いで、ガイドワイヤGに沿ってステントデリバリカテーテル10を、押引操作を加えながら体内に挿入し、バルーン15上のステント12を狭窄箇所まで搬送する。ここで上述したように、バルーン15においてステント12よりも先端側の領域(ステント先端側領域39)には延出部が設けられていないため、ステント12を体内に導入する際において通過性(操作性)の向上を図ることができる。
ところで、ステント12を体内に導入するに際し、ステント12が体内の狭窄箇所において通過しづらくなっている場合には、ステント12を一旦ガイディングカテーテル内に引き戻し、それから再度ステント12を狭窄箇所に向かって導入することがある。また、ステント12が狭窄箇所において通過不能となっている場合には、ステント12をガイディングカテーテルを通じて体外に引き出すことがある。ここで上述したように、本カテーテル10では、バルーン15においてステント12よりも基端側の領域(ステント基端側領域38)に延出部36が設けられているため、ステント12をガイディングカテーテル内に引き戻す際にはこの延出部36によってステント12の基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのを抑制することができる。そのため、ステント12を引き戻す際の操作性向上を図ることができる。
ステント12を狭窄箇所まで搬送した後、加圧器を用いてハブ14側からバルーン15内に圧縮流体を注入し、バルーン15を膨張させる。これにより、収縮状態のステント12が塑性変形して拡張状態となり、その拡張状態のステント12により狭窄箇所が拡張される。その後、バルーン15内に注入された圧縮流体を抜き取ることによりバルーン15を収縮させ、バルーンカテーテル11を体内から抜き取る。これにより、ステント12の留置作業が完了し、その留置されたステント12によって血管の拡張状態が保持される。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
バルーン15の膨張収縮部(詳しくは基端側コーン領域15b)においてステント12よりも基端側の領域に延出部36を設けたため、延出部36がステント12基端に対して比較的近い位置に配置されている。この場合、ステント12の引き戻し時にステント12基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのを抑制し易くなり、ステント12引き戻し時の操作性をより一層高めることができる。
バルーン15においてステント12よりも基端側の領域(ステント基端側領域38)にて、羽27の折り畳まれた部位に浮きを生じさせることで当該羽27の一部を延出部36とした。かかる構成では、バルーン15(羽27)に対して径方向内側への力が作用した場合に羽27ごと内側に凹むこととなるため、バルーン15に延出部36を設けた構成にあって通過性の低下を抑制することができる。
具体的には、バルーン15のステント基端側領域38において、羽27の先端部29とそのバルーン径方向内側に対向する対向部28とを互いに離間させることで上記の浮きを生じさせるようにした。羽27の先端部は、羽27において容易に凹む部位であるため、この場合、通過性の低下を好適に抑制することができる。
バルーン15のステント基端側領域38において、バルーン15の対向部28を内側チューブ17の外周面に対して離間させることで上記の浮きを生じさせるようにした。この場合、羽27全体が内側チューブ17から離間するように浮きが生じるため、延出部36を羽27においてバルーン周方向に延在させ易い。そのため、ステント12の引き戻し時に、ステント12の基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのを抑制する効果を高めることができる。
なお、羽27の先端部29と対向部28とを互いに離間させること、及び、対向部28と内側チューブ17の外周面とを互いに離間させることのうちいずれか一方のみによって、羽27の折り畳み部分に浮きを生じさせるようにしてもよい。
延出部36をバルーン15の各羽27ごとにそれぞれ設けることで、延出部36をバルーンの外周方向に所定の間隔で複数配置した。これにより、ステント12の引き戻し時にステント12の基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのをより確実に抑制することができる。
ステントデリバリカテーテル10において造影環32が設けられた部位では他の部位と比べ可撓性が低下していると考えられ、ひいては屈曲血管に挿入する際の追従性が低下していると考えられる。この点、延出部36において最も径方向外側に延出した部分(最大延出部36a)を造影環32よりも基端側に配置したため、追従性の低い部位に外径の大きい部位が重なって追従性が大きく低下してしまうのを回避することができる。
バルーン15においてステント12よりも先端側の領域にステント12の外径と同じ外径を有する最大外径領域56を設けたため、ステントデリバリカテーテル10を体内に挿入する際にステント12の先端が体内の血管壁に引っ掛かるのを抑制することができる。これにより、ステント12の体内導入時の操作性を高めることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、バルーン15において基端側コーン領域15b(換言すると膨張収縮部)にのみ延出部36を設けたが、基端側コーン領域15bに加え基端側レッグ領域15aにも延出部を設けるようにしてもよい。図6に示すバルーン60は、基端側レッグ領域60aの外径DL(詳しくは内径も)がステント12の外径DSよりも大きくなっている。このため、基端側レッグ領域60aの全域が延出部61となっている。また、基端側コーン領域60bでは、同領域60bの基端部から先端側に向かって外径D1が小さくなっており、その途中部位において外径D1がステント12の外径DSと同じとなっている。この場合、基端側コーン領域60bにおける当該途中部位よりも基端側においてステント12外周よりも径方向外側に延出した延出部62が形成されている。かかる構成では、基端側コーン領域60bに加えて基端側レッグ領域60aにも延出部61が設けられているため、ステント12の引き戻し時にステント12の基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのをより一層抑制することができる。
(2)バルーン15の直管領域15cにおいてステント12よりも基端側に延出部を設けてもよい。この場合、延出部をステント12基端の近傍に配置することができるため、ステント12の引き戻し時にステント12基端がガイディングカテーテル先端に引っ掛かるのを顕著に抑制することができる。
(3)延出部36がステント12の外周から径方向外側に延出する延出量は任意としてよい。例えば上記実施形態では、延出部36の延出量を少なくとも最大延出部36aにおいてバルーン15の肉厚寸法以上としたが、これを変更して、延出部36の延出量を最大延出部36aにおいてバルーン15の肉厚寸法より小さくしてもよい。そうすれば、通過性の向上を図りながら、ステント12引き戻し時のステント12基端のガイディングカテーテル先端への引っ掛かりを抑制することができる。なお、延出部36の延出量は、被覆工程においてステント12及びステント先端側領域39を被覆する被覆チューブ43の厚みを変えることで適宜調整することが可能である。
(4)上記実施形態では、バルーン15においてステント12よりも先端側の領域(ステント先端側領域39)のうち外径が最大となる最大外径領域56においてその外径D2をステント12の外径DSと同じとしたが、これを変更して、図6に示すように最大外径領域56においてその外径D2をステント12の外径DSより小さくしてもよい。この場合、バルーン15先端側をより細くすることができるため、ステント12を体内に導入する際の通過性をさらに高めることができる。
(5)上記実施形態では、本取付工程の際、被覆チューブ43を用いることでバルーン15のステント基端側領域38において羽27の折り畳み部分に浮きを生じさせ(すなわち延出部36を形成した)が、羽27の折り畳み部分に浮きを生じさせるための方法は必ずしもこれに限定されない。例えば配置工程において、バルーン15においてステント12が取り付けられたステント取付部分及びステント先端側領域39だけを配置領域46に配置し、ステント基端側領域38については配置領域46に配置しないようにする方法が考えられる。この場合、本取付工程の際、ステント基端側領域38については押圧部材47により押圧されないため、同領域38における羽27の折り畳み部分に浮きを生じさせることができる。
(6)延出部36は、必ずしも各羽27の折り畳み部分に生じる浮きによって形成する必要はなく、他の方法で形成してもよい。例えば図7に示すように、バルーン15の羽27の外表面に径方向外側に向けて突出する突出部65を設け、その突出部65をステント12の外周よりも径方向外側に延出するように形成することが考えられる。かかる突出部65は、例えばバルーン15の成形加工時に形成することが考えられる。この場合、突出部65(延出部)を羽27の外表面において任意の位置に形成することができるため、突出部65をステント12基端の近くに容易に配置することができる。また、突出部65は各羽27ごとにそれぞれ設けてもよいし、各羽27のうち一部の羽27にだけ設けてもよい。また、一の羽27において突出部65を1つだけ設けてもよいし複数設けてもよい。