以下、バルーン拡張型のステントデリバリカテーテル10についての一実施形態を図面に基づいて説明する。先ず図1を参照しながらステントデリバリカテーテル10の概略構成を説明する。図1はステントデリバリカテーテル10の構成を示す概略全体側面図である。なお、図面の関係上、バルーン15周辺を実際よりも大きく示す。
図1に示すように、ステントデリバリカテーテル10(以下、略してカテーテル10ともいう)は、バルーンカテーテル11と、バルーンカテーテル11のバルーン15上に取り付けられたステント12とを備える。バルーンカテーテル11は、カテーテルチューブ13と、当該カテーテルチューブ13の基端部(近位端部)に取り付けられたハブ14と、カテーテルチューブ13の先端側(遠位端側)に取り付けられたバルーン15とを備える。なお、ステントデリバリカテーテル10(バルーンカテーテル11)の長さ寸法は、1m〜2mとなっている。
カテーテルチューブ13は、外側チューブ16と、外側チューブ16の内側に設けられた内側チューブ17と、外側チューブ16の外側に設けられたガイドワイヤチューブ18とを備える。
外側チューブ16は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された管孔21(図2参照)を有する管状に形成されている。外側チューブ16は、近位端部においてハブ14に接続されるとともにNi―Ti合金やステンレスなどの金属により形成された外側近位チューブ22と、外側近位チューブ22に対して遠位側にて連続し外側近位チューブ22よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側中間チューブ23と、外側中間チューブ23に対して遠位側にて連続し外側中間チューブ23よりも剛性が低くなるように熱可塑性のポリアミドエラストマにより形成された外側遠位チューブ24と、を備えている。
内側チューブ17は、軸線方向の全体に亘って連続するとともに両端にて開放された管孔31(図2参照)を有する管状に形成されている。内側チューブ17は、外側チューブ16に内挿されることにより外側チューブ16とともに内外二重管構造を構築している。内側チューブ17は、その基端部が外側チューブ16における軸線方向の途中位置、具体的には外側中間チューブ23と外側遠位チューブ24との境界部に対して接合されている。内側チューブ17は、その一部を外側チューブ16よりも先端側に延出させた状態で設けられ、その延出した領域を外側から覆うようにしてバルーン15が設けられている。
ガイドワイヤチューブ18は、軸線方向の全体に亘って連続して延びる管孔19(図2参照)を有する管状に形成されている。ガイドワイヤチューブ18は、外側チューブ16(詳しくは外側遠位チューブ24)の外周面とバルーン15の外周面とに跨がって設けられている。
外側チューブ16の管孔21は、バルーン15を膨張又は収縮させる際に圧縮流体を流通させる流体用ルーメンとして機能する。また、内側チューブ17の管孔31とガイドワイヤチューブ18の管孔19とはそれぞれガイドワイヤGが挿通されるガイドワイヤ用ルーメンとして機能する。なお、内側チューブ17が第1ガイドワイヤチューブに相当し、ガイドワイヤチューブ18が第2ガイドワイヤチューブに相当する。
また、管孔31の基端開口31aはバルーンカテーテル11の軸線方向の途中位置に存在しており、それ故本カテーテル11は所謂RX型のカテーテルとして構成されている。但し、これに限定されることはなく、管孔31の基端開口31aがカテーテル11の基端部に存在する所謂オーバー・ザ・ワイヤ型のカテーテルであってもよい。
次に、バルーン15及びその周辺の構成について図2乃至図4に基づいて説明する。図2はバルーン15及びその周辺の構成を示す断面図であり、図3は同構成を示す側面図である。図4は、バルーン15及びその周辺をバルーン先端側から見た図である。なお、図2及び図4はそれぞれバルーン15の膨張状態を示しており、図3では(a)がバルーン15の膨張状態を示し、(b)がバルーン15の収縮状態を示している。
図2に示すように、バルーン15は、上述したように、内側チューブ17において外側チューブ16よりも先端側に延出した領域(以下、この領域を延出領域25という)を外側から覆うように設けられている。バルーン15は、その基端部が外側チューブ16(詳細には外側遠位チューブ24)の先端部に接合され、その先端部が内側チューブ17(詳細にはその延出領域25)の先端側に接合されている。
バルーン15は、熱可塑性のポリアミドにより形成されている。但し、これに限定されることはなく、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマ、ポリエステル、ポリエステルエラストマ、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリエチレンテレフタレート、シリコンゴム、スチレンオレフィンゴムなどといった他の合成樹脂により形成されていてもよい。また、このように列挙した合成樹脂や上記ポリアミドエラストマのうち、2種類以上を混合させた材料により形成してもよく、この場合、単層構造としてもよく、多層構造としてもよい。
バルーン15の製造方法としては特に限定されることはなく、ブロー成形、ディッピング成形、押出成形などによる製造方法が挙げられる。但し、心臓の冠状動脈に生じた狭窄部を拡張治療する場合、バルーン15が十分な耐圧強度を有することが好ましく、この場合、ブロー成形が好ましい。
バルーン15は、カテーテルチューブ13に対して接合される両端の接合部と、それら接合部の間に設けられ膨張及び収縮を行う膨張収縮部とを有している。具体的には、バルーン15は、外側チューブ16(外側遠位チューブ24)の先端部に接合される基端側レッグ領域15aと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に拡径されるようにテーパ状をなす基端側コーン領域15bと、長さ方向の全体に亘って内径及び外径が同一でありバルーン15の最大外径領域をなす直管領域15cと、先端側に向けて内径及び外径が連続的に縮径されるようにテーパ状をなす先端側コーン領域15dと、内側チューブ17の延出領域25に接合される先端側レッグ領域15eとを、基端側からこの順で有している。ここで、基端側コーン領域15b、直管領域15c及び先端側コーン領域15dにより膨張収縮部が構成されている。
なお、外側チューブ16と基端側レッグ領域15aとの接合、及び内側チューブ17と先端側レッグ領域15eとの接合はともに熱溶着により行われている。但し、これらの接合は必ずしも熱溶着により行う必要はなく、接着剤を用いた接着など他の接合方法を採用してもよい。
バルーン15は、外側チューブ16の管孔21を通じて流体が当該バルーン15内に加圧供給されると膨張状態となり(図3(a)参照)、管孔21に対して陰圧が付与されて流体が当該バルーン15内から排出されると収縮状態となる(図3(b)参照)。
続いて、内側チューブ17とガイドワイヤチューブ18とについて説明する。
内側チューブ17は、樹脂材料により管状に形成されている。内側チューブ17は、例えば複数種類の樹脂が積層されてなる複層構造をなしており、具体的には外層がポリアミドエラストマ、内層が高密度ポリエチレン、中間層が低密度ポリエチレンにより形成されている。
内側チューブ17の管孔31は、第1ガイドワイヤG1が挿通される第1ガイドワイヤルーメンとして機能するものである。第1ガイドワイヤG1は後述するように、血管の分岐部分において分岐される主管と分岐管とのうち主管に導入されるガイドワイヤである。第1ガイドワイヤG1の外径は0.35〜0.36mmに設定されており、これに対して、管孔31の孔径は0.355mm〜0.394mmに設定されている。
内側チューブ17は、その基端部が上述したように外側中間チューブ23と外側遠位チューブ24との境界部に対して接合されている。具体的には、外側遠位チューブ24の基端部には、同チューブ24の周壁部24aを貫通するように貫通孔32が形成されており、その貫通孔32に内側チューブ17の基端部が入り込んで外側遠位チューブ24に接合されている。この場合、内側チューブ17の管孔31は貫通孔32を通じて外側チューブ16の外部に開放されている。これにより、内側チューブ17の先端開口31bを通じて管孔31に導入された第1ガイドワイヤG1が基端開口31aを通じて管孔31から導出されるようになっている。
内側チューブ17においてバルーン15により覆われた領域(換言すると延出領域25)には一対の造影環37,38が取り付けられている。各造影環37,38は、内側チューブ17において軸線方向におけるステント12を挟んだ両側位置にそれぞれ配置されている。各造影環37,38は、X線造影機能を有するステンレス鋼等の金属により形成されており、X線を投影することでその位置を特定することが可能となっている。
ガイドワイヤチューブ18は、樹脂材料により形成されており、例えばナイロン樹脂により形成されている。ガイドワイヤチューブ18の管孔19は、第2ガイドワイヤG2が挿通される第2ガイドワイヤルーメンとして機能するものである。第2ガイドワイヤG2は後述するように、血管の分岐部分において分岐される主管と分岐管とのうち分岐管に導入されるガイドワイヤである。
第2ガイドワイヤG2の外径は、第1ガイドワイヤG1の外径よりも小さい値に設定されており、例えば0.25〜0.26mmに設定されている。これにより、ステント12の線状要素間を通って分岐管へと延びる第2ガイドワイヤG2についてその操作性を良好なものとすることができる。また、第2ガイドワイヤG2の外径が第1ガイドワイヤG1の外径よりも小さくなっている関係上、ガイドワイヤチューブ18の管孔19の孔径は内側チューブ17の管孔31の孔径よりも小さい値に設定されている。具体的には、管孔19の孔径は0.28mm〜0.30mmに設定されている。
ガイドワイヤチューブ18は、外側チューブ16(外側遠位チューブ24)の外周面とバルーン15の直管領域15cの外周面とに跨がって設けられており、外側遠位チューブ24と直管領域15cとにそれぞれ熱溶着により接合されている。但し、かかる接合は必ずしも熱溶着により行う必要はなく、接着剤を用いた接着など他の接合方法を採用してもよい。
ガイドワイヤチューブ18は、直管領域15cの外周面において軸線方向に沿って延びており、詳しくは直管領域15cの軸線方向全域に亘って延びている。ガイドワイヤチューブ18の先端部は直管領域15cと先端側コーン領域15dとの境界部に位置しており、同境界部に対して管孔19の先端開口を閉塞するように押し潰された状態で溶着されている。
ガイドワイヤチューブ18は、外側遠位チューブ24の外周面において基端側に向けて延びており、その基端部が内側チューブ17の基端部よりも先端側に位置している。これにより、管孔19の基端開口19aは内側チューブ17の基端開口31aよりも先端側に位置している。また、管孔19の基端開口19aは外側チューブ16の径方向において当該外側チューブ16の軸線を挟んで基端開口31aとは反対側に位置している。これにより、基端開口31aを介して内側チューブ17から導出される第1ガイドワイヤG1と、基端開口19aを介してガイドワイヤチューブ18から導出される第2ガイドワイヤG2とが互いに干渉し合うことが抑制されている。
なお、外側遠位チューブ24の外周面においてガイドワイヤチューブ18が配設されている部位では、径方向内側に向けて凹ませられた凹部36が形成されている。ガイドワイヤチューブ18は、その凹部36に入り込んだ状態で設けられており、その状態で外側遠位チューブ24に接合されている。これにより、外側チューブ16の外周側にガイドワイヤチューブ18を設けた構成にあってカテーテル10の小径化が図られている。
図2及び図3に示すように、ガイドワイヤチューブ18において管孔19を囲む周壁部33には、管孔19に第2ガイドワイヤG2を導入するための導入口34が形成されている。導入口34は、周壁部33を貫通するように形成されており、バルーン15の径方向外側に向けて開口されている。より詳しくは、導入口34は、周壁部33においてバルーン15とガイドワイヤチューブ18とが並ぶ並び方向におけるバルーン15側とは反対側に向けて開口されている。
導入口34は、軸線方向において所定の間隔(ピッチ)P1(詳しくは等間隔)で複数設けられており、本実施形態では5個設けられている。この場合、各導入口34は、直管領域15cの軸線方向全域に亘って分散するように配置されている。各導入口34はそれぞれ円形状をなしており、詳しくは軸線方向に長い長円形状をなしている。これにより、第2ガイドワイヤG2を導入口34から管孔19に導入し易くなっている。
なお、導入口34の個数は必ずしも5個である必要はなく、2〜4個であってもよいし6個以上であってもよい。
バルーン15の外周面上には、ステント12が取り付けられている。以下、ステント12について図3に加え図5を参照しながら説明する。なお、図5は収縮状態におけるステント12の展開図である。
図3に示すように、ステント12は、線状要素により全体として筒状(又は管状)でかつ網目状に形成されている。ステント12は、塑性変形可能な金属材料により形成されており、塑性変形を行うことで収縮状態とそれよりも外径が大きくなる拡張状態との間で遷移するものとなっている。具体的には、ステント12はコバルトクロム合金により形成されている。但し、ステント12は必ずしもコバルトクロム合金により形成される必要はなく、ステンレス鋼等他の金属材料や、ポリ乳酸等の生分解性樹脂を用いて形成されてもよい。
ステント12は、軸線方向の長さが直管領域15cの軸線方向の長さと同じか又はそれよりも短くなっており、その両端部が直管領域15cからはみ出さないようにして同領域15cに取り付けられている。ステント12は、収縮状態におけるバルーン15(直管領域15c)の外周面上に取り付けられ(図3(b)参照)、その取付状態においてバルーン15が膨張されることにより当該バルーン15から径方向外側への外力を受け拡張状態へと遷移する(図3(a)参照)。
ステント12について具体的には、当該ステント12は、軸線方向に並んで設けられた複数(具体的には5個)の環状部26と、隣り合う環状部26同士を互いに接続する接続部27とを備える。各環状部26は、線状要素が軸線方向の両端にて複数回折り返されたような形状となっており、全体として軸周りに連続する波線状となっている。具体的には、各環状部26は、基端側に凸となる凸状部分28を周方向に複数並べて形成されており、いずれも同一の構成を有している。各環状部26はそれぞれ、各々の凸状部分28が周方向で同位置となるように配置されている。したがって、各環状部26の凸状部分28は軸線方向に並んで配置されている。
各環状部26はそれぞれ軸線方向に所定の間隔(ピッチ)P2(詳しくは等間隔)で配置されている。各環状部26の間隔P2は、ガイドワイヤチューブ18の各導入口34の間隔P1と同じに設定されている。但し、各環状部26の間隔P2は必ずしも各導入口34の間隔P1と同じである必要はなく、例えば導入口34の間隔P1の半分であってもよい。
接続部27は、線状要素により略S字状に形成されている。接続部27は、隣り合う環状部26の間ごとにそれぞれ設けられ、隣り合う環状部26同士を軸線方向に互いに連結している。具体的には、各接続部27はそれぞれ隣り合う環状部26において軸線方向に隣り合う凸状部分28同士を互いに接続している。
接続部27は、隣り合う環状部26の間ごとにそれぞれ周方向に所定間隔(詳しくは等間隔)で複数配置されており、本実施形態では2個ずつ配置されている(図5参照)。また、隣り合う環状部26の間における各接続部27の周方向の位置は各環状部26間ごとにそれぞれ同位置とされている。したがって、各接続部27は全体として軸線方向に沿って二列に並んで配置されている。
なお、隣り合う環状部26の間に接続部27を3個以上配置してもよく、1個だけ配置してもよい。また、隣り合う環状部26間ごとで接続部27の個数を互いに異ならせてもよい。さらに、隣り合う環状部26間における各接続部27の周方向の位置を各環状部26間ごとにそれぞれ異ならせてもよい。
続いて、バルーン15に対するステント12の取付状態について詳しく説明する。
図3(b)に示すように、ステント12は、その内側(内周側)にガイドワイヤチューブ18を配置した状態で、収縮状態におけるバルーン15の外周面上に取り付けられている。かかるステント12の取付状態では、ガイドワイヤチューブ18の各導入口34がそれぞれバルーン15の外周側から見てステント12における各々の環状部26の凸状部分28の内側に位置している。より詳しくは、各導入口34がそれぞれ凸状部分28の内側においてその凸の先端寄り(換言すると軸線方向における基端寄り)に位置している。
また、かかるステント12の取付状態では、各接続部27がそれぞれ、導入口34が内側に配置された凸状部分28(以下、凸状部分28aという)とは異なる凸状部分28(以下、凸状部分28bという)に接続されて配置されている。この場合、隣り合う環状部26は、互いの凸状部分28b同士が接続部27により接続されることで互いに連結されている。
上記のように収縮状態のバルーン15上に取り付けられたステント12を、バルーン15を膨張させることにより拡張させると、図3(a)に示す状態となる。同図3(a)に示すように、ステント12の拡張状態においても、ガイドワイヤチューブ18の各導入口34はそれぞれバルーン外周側から見てステント12における各々の環状部26の凸状部分28内側に位置しており、具体的には凸状部分28の内側においてその凸の先端寄り(換言すると軸線方向における基端寄り)に位置している。より詳しくは、各導入口34は、バルーン外周側から見てその基端が凸状部分28に達するように配置されている。したがって、本カテーテル10では、バルーン15上に取り付けられたステント12が収縮状態及び拡張状態のいずれにある場合でも、各導入口34がそれぞれ各環状部26の凸状部分28内側で開口するようになっている。
次に、ステントデリバリカテーテル10の製造手順について簡単に説明する。ここでは、バルーンカテーテル11とステント12とが予め製造されていることを想定しており、バルーンカテーテル11のバルーン15上にステント12を取り付ける際の作業手順について説明する。
バルーン15上にステント12を取り付ける際にはまず、ガイドワイヤチューブ18の管孔19にマンドレルを挿入する。マンドレル(芯材)は、ガイドワイヤチューブ18(管孔19)の内径と同じ大きさの外径を有する棒材であり、例えばガイドワイヤチューブ18の基端開口19aより管孔19に挿入される。マンドレルは、ガイドワイヤチューブ18において少なくともバルーン15の直管領域15c上に配置された部位全域に亘って配置される。
次に、バルーン15(さらにはガイドワイヤチューブ18)の外周側に拡張状態のステント12を配置し、そのステント12を専用のクリンプ装置を用いて径方向内側に圧縮(押圧)することでバルーン15の外周面上に仮取り付けする(仮クリンプする)。この仮取付状態では、ステント12の外径が目標外径(最終外径)よりも大きくなっている。したがって、仮取付状態では、ステント12をバルーン15の外周面に沿って径方向及び軸線方向にスライド(移動)させることが許容されている。
なお、ステント12の仮取り付けはガイドワイヤチューブ18にマンドレルが挿入された状態で行われるため、ガイドワイヤチューブ18に潰れ等の変形が生じるのを回避することができる。
次に、ステント12をバルーン15に対して軸線方向にスライドさせることでステント12をバルーン15上の所定位置に配置するとともに、ステント12を周方向にスライドさせることでバルーン15上において所定の向きで配置する。これにより、ガイドワイヤチューブ18の各導入口34がそれぞれバルーン外周側から見てステント12の各環状部26の凸状部分28内側に位置するようにステント12がバルーン15上に配置される。
次に、バルーン15上に仮取り付けされたステント12をクリンプ装置を用いて径方向内側に圧縮(押圧)することでバルーン15の外周面上に本取り付けする(クリンプする)。これにより、ステントデリバリカテーテル10の製造が完了し、一連の製造作業が終了する。
次に、ステントデリバリカテーテル10を用いてステント12を体内における血管の分岐部分に搬送しKBTの手法で拡張させる場合の手順について説明する。なお、図6はかかる手順を説明するための説明図である。
先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、押引操作して血管の分岐部分41まで導入する。次いで、図6(a)に示すように、第1ガイドワイヤG1及び第2ガイドワイヤG2をそれぞれガイディングカテーテルに挿通し分岐部分41を超える位置まで導入する。具体的には、分岐部分41で分岐される主管42及び分岐管43のうち主管42に第1ガイドワイヤG1を導入し、分岐管43に第2ガイドワイヤG2を導入する。
次に、図6(b)に示すように、第1ガイドワイヤG1をステントデリバリカテーテル10の内側チューブ17内(管孔31)に挿通するとともに第2ガイドワイヤG2をガイドワイヤチューブ18内(管孔19)に挿通し、かかる挿通状態で同カテーテル10を各ガイドワイヤG1,G2に沿って押引操作を加えながら血管内に挿入する。なおここでは、第2ガイドワイヤG2を各導入口34のうち先端側から2つ目の導入口34よりガイドワイヤチューブ18内に導入している。したがって、第2ガイドワイヤG2がステント12の各環状部26のうち先端側から2つ目の環状部26(以下、この環状部26の符号にAを付す)の凸状部分28(以下、この凸状部分28の符号にAを付す)内側を通った状態となっている。
ステント12を分岐部分41に向けて搬送していくと、最終的に導入口34の周縁部又は凸状部分28Aが、第2ガイドワイヤG2において分岐管43の方へと延びる部位に当接する。これにより、図6(c)に示すように、ステントデリバリカテーテル10(ステント12)がそれ以上先端側(末梢側)へ導入されることが規制され、その結果ステント12が分岐部分41においてかかる規制位置で位置決めされる。この規制位置では、第2ガイドワイヤG2が導入口34の周縁部又は当該凸状部分28aにより先端側へ向けて押し付けられることから分岐管43の入口部分の先端部(遠位端部)を通過した状態で配置される。また、その第2ガイドワイヤG2が内側を通る上記凸状部分28Aも分岐管43の入口部分の先端部に配置される。
次に、図6(d)に示すように、バルーン15を膨張させることでステント12を拡張させる。このステント12の拡張状態においても、第2ガイドワイヤG2は分岐管43の入口部分の先端部(遠位端部)を通過した状態で配置され、その第2ガイドワイヤG2が内側を通る凸状部分28Aも分岐管43の入口部分の先端部に配置された状態となっている。
ステント12を拡張させた後、図6(e)に示すように、バルーン15を収縮状態としてバルーンカテーテル11を体内から引き出す。これにより、ステント12が分岐部分41に拡張状態で留置される。
次に、KBTによる手法を用いて分岐部分41に留置されたステント12を再拡張させる。ステント12の再拡張に際しては、まず図6(f)に示すように、KBT用の2つのバルーンカテーテル45,46をそれぞれバルーン47,48を収縮させた状態で各ガイドワイヤG1,G2に沿って分岐部分41に導入する。具体的には、このとき一方のバルーンカテーテル45を第1ガイドワイヤG1に沿って導入し、そのバルーン47を主管42においてステント12の内側に配置する。また、他方のバルーンカテーテル46を第2ガイドワイヤG2に沿って導入し、そのバルーン48をステント12の環状部26間を通して配置する。この場合、バルーン48は凸状部分28Aの内側を通った状態で主管42から分岐管43に跨がって配置される。したがって、バルーン48は、分岐管43において第2ガイドワイヤG2が延びる方向から見た場合に、凸状部分28Aと分岐管43のカリナ49近傍の血管壁との間に挟まれるようにして配置されることとなる。
次に、図6(g)に示すように、各バルーン47,48を同時に膨張させる。これにより、ステント12が分岐部分41において再拡張される。この再拡張に際して、内側にバルーン48が配設された凸状部分28Aは、バルーン48の膨張によって分岐管43の入口部分の先端部から分岐管43における主管42とは反対側の血管壁に向けて引っ張られる。その結果、当該凸状部分28Aを有する環状部26Aは分岐部分41の先端部(換言するとカリナ49(分岐頂部)の基端側近傍)において、その全域(全周)を血管壁に押し付けた状態で拡張される。これにより、分岐部分41を好適に拡張させることが可能となる。
また、各バルーン47,48の膨張に際して、それら両バルーン47,48をカリナ49近傍の血管壁に隙間なく押し付けることができるため、カリナ49近傍に病変部が発生した場合にその病変部をバルーン47,48により好適に押さえ付けることができる。特に、分岐管43に入り込んで配置されるバルーン48は凸状部分28Aと分岐管43のカリナ49近傍の血管壁との間で膨張するため、膨張したバルーン15をカリナ49近傍の血管壁に十分な力で押し付けることが可能となる。
また、この場合、環状部26Aだけでなくそれよりも基端側の各環状部26についてもその全域を血管壁に押し付けるようにして拡張させることができるため、分岐管43の入口部分に位置する環状部26が、当該入口部分を閉鎖するように配置されてしまうのを抑制することができる。そのため、分岐管43への血液の流れを良好なものとすることができる。
また、環状部26Aの拡張に伴い、当該環状部26Aに対して先端側で隣接する環状部26Bが当該環状部26Aにより基端側に向けて引っ張られる。具体的には、当該環状部26Bにおいて径方向における分岐管43寄りの部位が基端側(近位側)に引っ張られて、当該環状部26Bが主管42において斜めに傾いた状態となる。この場合、環状部26Bによりカリナ49近傍を好適に押さえ付けることができるため、カリナ49周辺で病変部が発生した際には好都合となる。
ステント12を再拡張した後、各バルーン47,48を収縮状態とし各バルーンカテーテル45,46を体内から引き抜く。これにより、図6(h)に示すように、ステント12が分岐部分41に留置され、一連の作業が終了する。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
ガイドワイヤチューブ18の周壁部33に軸線方向に所定間隔で複数の導入口34を形成し、それら各導入口34をそれぞれバルーン外周側から見て各々の環状部26の凸状部分28内側に配置させた。この場合、各導入口34のうちいずれの導入口34から第2ガイドワイヤG2をガイドワイヤチューブ18内に導入するかによって、第2ガイドワイヤG2を各環状部26のうちいずれの環状部26の凸状部分28内側を通すのか選択することができる。つまり、この場合ステント12を分岐部分41に搬送する際、第2ガイドワイヤG2によって分岐管43の入口部分の先端部に位置決めされる凸状部分28を各環状部26のうちいずれの環状部26のものとするかを選択することができる。これにより、分岐部分41においてステント12が配置(留置)される位置をステント導入方向に調整することができるため、分岐部分41において発生した病変部の位置や範囲等に応じた適切な拡張が可能となる。
環状部26を、その複数の凸状部分28のうち内側に導入口34が配置されている凸状部分28aとは異なる凸状部分28bで、接続部27により他の環状部26と接続した。この場合、KBTによるステント12の再拡張時に、バルーン48を凸状部分28aの内側を通した状態で膨張させるに際し、凸状部分28aがバルーン48により分岐管43における主管42とは反対側の血管壁に向けて引っ張られるのを接続部27により妨げられてしまうのを抑制できる。これにより、当該凸状部分28aを含む環状部26を十分に拡張させることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、バルーン15の外周側から見て導入口34をステント12の環状部26の凸状部分28a内側においてその凸の先端寄り(軸線方向の基端寄り)に配置したが、凸の先端寄りとは反対側(軸線方向の先端寄り)に配置してもよい。この場合においても、第2ガイドワイヤG2を凸状部分28aの内側を通して導入口34からガイドワイヤチューブ18内に導入することができるため、ステント12の分岐部分41への導入時に第2ガイドワイヤG2によりステント12を位置決めすることにより、当該凸状部分28aを分岐管43の入口部分の先端部に配置することができる。したがって、その後のKBTによるステント12の再拡張を好適に行うことができる。
(2)上記実施形態では、ガイドワイヤチューブ18に導入口34を複数設けたが、導入口34を1つだけ設けるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、隣り合う環状部26において互いの凸状部分28b(つまり、導入口34が内側に配置されている凸状部分28aとは異なる凸状部分28b)同士を接続部27により接続するようにしたが、これを変更して、互いの凸状部分28a同士を接続部27により接続してもよい。また、隣り合う環状部26のうち一方の環状部26の凸状部分28aと他方の環状部26の凸状部分28bとを接続部27により接続してもよい。
(4)ガイドワイヤチューブ18に造影環を取り付けてもよい。そうすれば、ステントデリバリカテーテル10(ステント12)を体内の分岐部分41に導入する際、生体外からバルーン15上におけるガイドワイヤチューブ18の周方向の位置を確認することができ、ひいては導入口34が分岐部分41(主管42)においていずれの側を向いているのかを確認することができる。これにより、ステント12の導入の際導入口34を確実に分岐管43の側に向けることが可能となる。
(5)バルーン15の膨張に伴いステント12が拡張する際に、凸状部分28aにおいてその内側に配置された導入口34よりも基端側の部位がガイドワイヤチューブ18に対して軸線方向に位置ずれするのを規制する規制手段を設けてもよい。そうすれば、ステント12の拡張に伴い、凸状部分28が位置ずれして導入口34が閉鎖されたり、導入口34が凸状部分28の内側から外れたりするのを防止することができる。
かかる規制手段としては、例えば、凸状部分28aの上記基端側の部位をガイドワイヤチューブ18の外周面に溶着や接着等により接合することが考えられる。この場合、ステント12の拡張後バルーン15を収縮させる際に、凸状部分28aの上記基端側の部位がガイドワイヤチューブ18から外れる程度の接合強度で接合を行う。
(6)上記実施形態において、ステント12を分岐部分41に導入しKBTの手法で再拡張させた後、もう一つ別のステントXを新たに分岐部分41に導入し主管42から分岐管43にかけて留置することで、それら両ステント12,XによりY−ステントを形成してもよい。この場合、先に留置されるステント12は、上述したように環状部26A及びそれよりも基端側の各環状部26がその全域を血管壁に押し付けるように拡張されるため、分岐管43の入口部分に位置する環状部26が当該入口部分を閉鎖するように配置されることが抑制されている。そのため、後に留置されるステントXを主管42から分岐管43にかけて導入するにあたり、その導入操作がステント12の環状部26によって妨げられてしまうのを抑制できる。
(7)上記実施形態では、第1ガイドワイヤチューブとしての内側チューブ17をバルーン15内部を通して配置したが、第1ガイドワイヤチューブをバルーン15の外周面に沿って配置するようにしてもよい。但し、カテーテル10の挿通性の点からはカテーテル10の外径をできるだけ小さくすることが望ましく、その点を鑑みると第1ガイドワイヤチューブはバルーン15内部を通して配置するのがよい。
(8)体内の分岐部分に導入されるステント12として、生分解性材料により形成されたステントや、薬剤の放出を可能とする薬剤溶出性ステント(DES)を用いてもよい。