JP6025581B2 - 液体吐出ヘッド用基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体吐出ヘッド用基板の製造方法に関する。
液体を吐出する液体吐出ヘッドは、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、基板を貫通し液体をエネルギー発生素子に供給するための供給口とを有するシリコン基板を備えている。液体の供給口をシリコン基板に形成する手法としては、<100>の面方位を有するシリコン基板のアルカリ溶液による異方性エッチングが一般的に用いられている。これは、面方位によるアルカリ溶液に対する溶解速度差を利用したもので、具体的には、溶解速度の極めて遅い<111>面を残すような形態でエッチングが進行する。従来のシリコン異方性エッチング方法では、例えば、図2に示すように、厚みTのシリコン基板51を貫通させるような加工をする場合、エッチング開始面は幾何学的には少なくとも(2T/tan54.7°)の幅が必要である。そのため、チップの小型化やチップの後工程(ダイボンディング工程等)での加工等に支障がでる場合がある。
そこで、特許文献1にはこれを解決するために先導孔を用いてエッチング開始面の幅を狭くする方法が開示されている。また、特許文献2には、シリコン基板への熱処理後に異方性エッチングを実施する製造方法が開示されている。この文献では、シリコン基板の裏面から所望の高さまでは加工幅が広がる方向に<111>が形成され、所望の高さを超えると加工幅が狭まる方向の<111>を有する断面形状(以下、この形状を「樽型」とする)を有するインク供給口を形成している。また、特許文献3にはドライエッチング後に異方性エッチングを実施することにより、樽型形状を有するインク供給口を形成する方法が開示されている。
米国特許出願公報第2007/0212890号明細書 米国特許第3416468号明細書 米国特許第6805432号明細書
これらの製法を用いて精度良くインク供給口を形成するためには、結晶異方性エッチングにおける厳密なエッチングレートの管理が必要である。また、エッチングレートを精度良く管理するためには、従来では専用ダミー基板を使用して製品基板とは別に結晶異方性エッチングを実施し、深さレートを測定する必要があった。そのため、製造工程において大きな負荷と時間の浪費が発生する場合があった。
そこで、本発明の目的は、液体供給口を形成する異方性エッチングにおけるエッチングレートの管理を効率的に行うことができる液体吐出ヘッド用基板の製造方法を提供することにある。
本発明は、 液体を吐出するエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子を第一の面側に有し、かつ前記第一の面及び該第一の面と反対側の面である第二の面の間を貫通する液体供給口を有するシリコン基板と、
前記液体を吐出する吐出口と、前記吐出エネルギー発生素子が配置されかつ前記吐出口及び前記液体供給口に連通する液体流路と、を形成する流路形成層と、
を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、
(1)前記シリコン基板の前記第一の面の上であって前記液体供給口の形成領域の上側に犠牲層を形成する工程と、
(2)前記犠牲層を覆うエッチングストップ層を形成する工程と、
(3)前記エッチングストップ層の上に、開口寸法識別パターンを形成する工程と、
(4)前記シリコン基板の前記第二の面にエッチングマスク層を形成する工程と、
(5)前記エッチングマスク層をマスクとして前記シリコン基板を前記第二の面から前記第一の面までアルカリ溶液を用いて異方性エッチングし、前記犠牲層を等方的にエッチング除去することで、前記液体供給口を形成する工程と、
(6)前記液体供給口のうち前記第一の面側の第一の開口に露出する前記エッチングストップ層を除去する工程と、
(7)前記第一の開口に露出する前記開口寸法識別パターンを前記第二の面側から観察し、前記アルカリ溶液の状態を判断する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板の製造方法である。
本発明により、液体供給口を形成する異方性エッチングにおけるエッチングレートの管理を効率的に行うことができる液体吐出ヘッド用基板の製造方法を提供することができる。
本実施形態で製造される液体吐出ヘッド用基板の構成例を示す模式的斜視図である。 結晶異方性エッチングで得られる液体供給口の例を示す基板の模式的断面図である。 本実施形態における開口寸法識別パターンの構成例を示す模式的な断面図及び平面図である。 本実施形態における開口寸法識別パターンの種々の構成例を示す模式的な平面図である。 本実施形態の液体吐出ヘッド用基板の製造方法を説明するための工程断面図である。 本実施形態の液体吐出ヘッド用基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
一般に、液体吐出ヘッド用基板は、吐出エネルギー発生素子2が形成されたシリコンウエハー等のシリコン基板上に吐出口や液体流路を構成する流路形成層を形成し、一枚のウエハーに複数の液体吐出ヘッド素子を形成することで製造される。液体吐出ヘッド素子が製品チップに相当することになる。
本発明は、シリコン基板1からなるウエハーを複数枚加工する液体吐出ヘッド用基板の製造方法に関するものである。また、本発明では、液体供給口の形成領域の上側に設けた犠牲層3の上に、開口寸法識別パターン12を形成しておく。これにより、後工程における液体供給口を形成するための結晶異方性エッチング処理の後に、開口寸法識別パターン12を介し、顕微鏡等を用いて液体供給口の開口寸法を判別することができる。この液体供給口の開口寸法から、エッチング液の状態を把握し、次以降のロットにおける結晶異方性エッチングにおける処理条件を調整することが可能となる。
例えば、通常、結晶異方性ウェットエッチングに用いるエッチング液は工程歩留まりが所定基準以上であれば、複数ロットにわたって利用されるが、このエッチング液にはシリコンが溶出し、ロット毎でエッチングレートが変化する場合がある。本発明では、開口寸法識別パターンを設けておくことで、インク供給口の開口寸法を瞬時又は容易に判断でき、液体供給口を形成する結晶異方性エッチングの後にエッチング液の状態を調べることができる。そして、その結果を考慮して次ロットにおける結晶異方性エッチングの処理条件を選択することができる。したがって、結晶異方性エッチングにおけるエッチングレートの管理を効率的に行うことができ、より安定して液体供給口を形成することができる。また、エッチングレートを測定するために別途専用ダミー基板を用いる必要がなく、経費の削減、時間短縮を達成することができる。更に、エッチングレート測定を行う手間を省くことも可能である。工業的見地からは、通常、複数枚のウエハーを同時に処理するバッチ式が採用されるが、開口寸法識別パターン12は、1バッチで処理される全てのウエハーに設けてもよく、また一部のウエハーにのみ設けてもよい。1バッチに処理される枚数やエッチング装置の規模などに応じて適宜設定すればよい。
図1に液体吐出ヘッド用基板の一形態であるインクジェット記録ヘッド用基板の構成例を示す模式的斜視図を示す。
このインクジェット記録ヘッド用基板は、表面(第一の面)に吐出エネルギー発生素子2が所定のピッチで2列並んで形成されたシリコン基板1を有している。シリコン基板1上には、ポリエーテルアミド等からなる密着層(不図示)が形成されている。更に、シリコン基板1上には、吐出エネルギー発生素子2の上方に開口するインク吐出口8を有する流路形成層7が形成されている。また、流路形成層7は、インク供給口11から各インク吐出口8に連通するインク流路を形成している。また、シリコン酸化膜(SiO膜)をマスクとして、シリコン基板1の裏面(第二の面)からの結晶異方性エッチングによって形成されたインク供給口11が、吐出エネルギー発生素子2の2つの列の間に開口するように形成されている。このインクジェット記録ヘッド用基板から製造されるインクジェット記録ヘッド素子(液体吐出ヘッド素子)は、インク供給口11を介してインク流路内にインク(液体)を充填する。そして、インク流路内に充填されたインクに、吐出エネルギー発生素子2が発生する圧力を加えることによって、インク吐出口8からインクの液滴を吐出させ、被記録媒体に付着させることにより記録を行う。
この液体吐出ヘッド素子は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、更には各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。そして、この液体吐出ヘッド装置を用いることによって、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックなど種々の被記録媒体に記録を行うことができる。尚、本発明において「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味する。さらに、「液体」とは、広く解釈されるべきものであり、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、記録媒体の加工、或いはインク、または記録媒体の処理に供される液体を言うものとする。ここで、インクまたは記録媒体の処理としては、例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化による定着性の向上や、記録品位ないし発色性の向上、画像耐久性の向上などのことを言う。
以下、本発明の実施形態について図3を参照して説明する。
尚、以下の説明では、本発明の適用例として、液体吐出ヘッド用基板としてインクジェット記録ヘッド用基板を例に挙げて説明を行うが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。また、液体吐出ヘッド用基板としては、インクジェット記録ヘッド用基板の他、バイオッチップ作製や電子回路印刷用途の液体吐出ヘッド用基板の製造方法にも適用できる。液体吐出ヘッド用基板としては、他にも例えばカラーフィルターの製造用途の基板等も挙げられる。
図3に、本実施形態に係わる液体吐出ヘッド用基板の代表的な模式図を示す。図3(A)において、液体吐出ヘッド用基板のインク供給口11の形成領域の上側にアルカリ溶液にて等方的にエッチングされ得る材料で形成されていた犠牲層3は、液体供給口を形成するための異方性エッチングで除去されている。そして、エッチングストップ層の上に開口寸法識別パターン12が形成されている。図3(B)は、開口寸法識別パターンをシリコン基板1の上側(表面側)から見た模式的平面図であり、図3(C)は、異方性エッチング後にシリコン基板1の裏面側から見た模式的平面図である。さらに、図3(D)は図3(C)のII−II´線における断面図であり、図3(E)は図3(C)のIII−III´線における断面図である。図3(C)に示すように、異方性エッチング後に開口寸法識別パターン12を観察することで、異方性エッチングのインク供給口11の開口寸法を容易に判別することができる。その結果を考慮して、次ロットにおける結晶異方性エッチングの処理条件を選択することが可能となる。尚、開口寸法識別パターンは、犠牲層3より上側であれば、どの階層に位置するかは制限されるものではないが、アルカリ溶液でエッチングされることのない金属であることが好ましい。また、開口寸法識別パターン12が所定幅の階段状パターンを有する形状である場合、インク供給口11の開口寸法を容易に判別することできるため好ましい。例えば図4(A)〜(E)に示すような、一段がメモリとして機能する階段状パターンが有効である。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態について、図5を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるべき他の技術にも応用することができる。
図5(A)〜(E)は、図1のI−I´線における断面図であり、本実施形態のシリコン基板1の加工方法の基本的な工程を示すための断面模式図である。
図5(A)に示されるシリコン基板1の第一の面側(表面側)には、発熱抵抗体等の吐出エネルギー発生素子2が複数個配置されている。また、前記基板1の第二の面(裏面、第一の面と反対側の面)はシリコン酸化膜(SiO膜)(不図示)で全面覆われている。また、シリコン基板1の第一の面(表面)上には、インク供給口11(液体供給口)の表面開口を精度よく形成するための犠牲層3が設けられている。犠牲層3はシリコン基板1のエッチング液(アルカリ溶液)で等方的にエッチング除去される材料からなり、例えば、Poly−Siやエッチング速度の速いアルミ、アルミSi、アルミ銅、アルミSi銅などで形成される。シリコン基板の面の結晶方位は(100)であることが好ましい。
シリコン基板1および犠牲層3の上には、エッチングストップ層4が形成されている。エッチングストップ層としては、例えば、シリコン酸化膜を用いることができ、絶縁層としての機能を兼ね備えることができる。より具体的には、例えば、エッチングストップ層4はシリコン酸化膜を成膜して所望の形状にパターニングして形成することができる。また、本実施形態において、エッチングストップ層及び絶縁層を兼ねるシリコン酸化膜の上にTaSiNなどの材料を成膜して所望の形状にパターニングすることにより、発熱抵抗体等の上記吐出エネルギー発生素子2を複数個配置することができる。
エッチングストップ層4の上に、吐出エネルギー発生素子2及び電気信号回路を保護する保護膜5が形成されている。保護膜5としては、例えば、シリコン窒化膜等を用いることができる。より具体的には、例えば、保護膜5は、シリコン窒化膜を成膜し、フォトリソ技術を用いて所望の形状にパターニングすることにより形成することができる。尚、吐出エネルギー発生素子2(ヒーター)の配線やそのヒーターを駆動するための半導体素子は図示していない。
保護膜5の上には、開口寸法識別パターン12が形成されている。開口寸法識別パターン12を設けておくことにより、後工程の異方性エッチングで形成される液体供給口の開口寸法を容易に識別することができる。つまり、液体供給口の表面側の開口(第一の開口とも称す)に露出する開口寸法識別パターンを観察することで液体供給口の開口寸法を把握することができ、この開口寸法からエッチング液の状態を容易に判断することができる。
開口寸法識別パターンは金属膜からなることが好ましい。金属膜からなる開口寸法識別パターンであれば、金属顕微鏡を用いて基板裏面側から容易に観察できる。また、金属としては、例えば、金、銅、アルミニウム、タンタル等が好ましい。
開口寸法識別パターンは、後工程における液体供給口の第一の面側の第一の開口に少なくとも一部が第一の開口端部から露出するように配置される。また、液体供給口の開口寸法が矩形状になる場合、その長手方向の2つの端辺から露出するように配置されることが好ましい。
また、本実施形態では、開口寸法識別パターン12は、めっきバンプで用いる金属拡散防止層と同じ材料を用いることができ、金属拡散防止層を形成する際にその材料を開口寸法識別パターンとして残すようにパターニングすることができる。より具体的には、金めっきバンプで用いる金拡散防止層に用いる材料をフォトリソ技術により所望のパターンに形成し、開口寸法識別パターン12として配置することができる。
シリコン基板1の裏面(第二の面)には、後工程の異方性エッチングにマスクとして用いるエッチングマスク層9が形成されている。エッチングマスク層9は、例えばポリエーテルアミド樹脂を塗布してベーク処理し、パターニングすることで形成することができる。また、パターニングとしては、ポジ型レジストをスピンコート等により塗布、露光、現像してパターンマスクを形成した後、ドライエッチング等によりパターニングすることができる。このエッチングマスク層は、後工程の結晶異方性エッチングにおけるエッチング開始面を形成する。
また、保護膜5の表面に、密着層を形成することができる(不図示)。密着層は、例えば、ポリエーテルアミド樹脂を塗布・硬化し、ポジ型レジストをスピンコート等により塗布・露光・現像し、ポリエーテルアミド樹脂をドライエッチング等によりパターニングすることで形成することができる。
次に、図5(B)に示すように、基板表面側にポジ型レジスト等を用いてインク流路(液体流路)の型となる流路型パターン6を形成する。
次に、図5(C)に示すように、吐出口8を有する流路形成層7を形成する。
具体的には、流路型パターン6の上にネガ型レジスト等の被覆樹脂材料をスピンコート法等により配置する。また、さらにその上に、撥水材(不図示)をドライフィルムのラミネート等により形成することもできる。そして、被覆樹脂材料に対して紫外線やDeep UV光等による露光処理及び現像処理を行って、吐出口8を有する流路形成層7を形成する。
さらに、流路形成層7等が形成されている前記基板1の表面側及び側面側をスピンコート等によって保護材(不図示)で覆い、前記エッチングマスク層の開口部に露出するエッチング開始面に先導孔10を形成する。この際、まず、エッチングマスク層9をマスクとして、シリコン基板1の裏面に存在するSiO膜(不図示)を除去する。その後、シリコン基板1の裏面側からレーザー加工により先導孔10として未貫通穴を形成する。
次に、図5(D)に示すように、TMAH液等のアルカリ溶液を異方性エッチング液として用い、シリコン基板1の裏面から表面まで異方性エッチングを行い、インク供給口11を形成する。この際、犠牲層は等方的にエッチング除去される。
この異方性エッチングでは、先導孔10の先端からエッチングが進行し、裏面に対して54.7°で形成される<111>面が犠牲層3に至る。犠牲層3はエッチング液によって等方エッチングされ、インク供給口11はその上端が犠牲層3の形状に対応し、<111>面により断面形状が樽型に形成される。
次に、図5(E)に示すように、インク供給口の第一の面側の開口(第一の開口)に露出するエッチングストップ層4を除去し、さらに保護膜5を除去する。
より具体的には、シリコン酸化膜等のエッチングストップ層4の一部をウェットエッチングにて除去し、さらにシリコン窒化膜等の保護膜5の一部をドライエッチングにて除去する。
そして、開口寸法識別パターン12をシリコン基板1の裏面側より金属顕微鏡等の顕微鏡等で観察することにより、インク供給口11の開口寸法を識別することができる。そして、識別した開口寸法よりアルカリ溶液の状態を判断し、その結果を、次ロットの結晶異方性エッチングの処理時間等のエッチング条件にフィードバックする。これを繰り返すことで、常に安定してインク供給口11を形成することができる。また、結晶異方性エッチングの処理時間を調整するだけでなく、その他にも、エッチング液の組成や濃度を調整してもよい。
すなわち、本実施形態は、液体吐出ヘッド用基板を複数ロット製造する際に、開口寸法識別パターンからアルカリ溶液の状態を判断し、得られた結果を次ロット以降、好ましくは次ロットの異方性エッチングのエッチング条件にフィードバックする方法である。フィードバックされるエッチング条件としては、エッチングの処理時間や、エッチング液の組成・濃度、温度等が挙げられ、特に限定されるものではなく、エッチング液の取り換えも含まれる。
また、基板裏面側から観察するという観点から、液体供給口の第二の面側の第二の開口の方が、液体供給口の第一の面側の第一の開口よりも開口面積が広いことが好ましい。
また、エッチングマスク層9及び保護材(不図示)を除去する。更に、流路型パターン6を、インク吐出口8及びインク供給口11から溶出させることにより、インク流路が形成される。
以上の工程によりノズル部が形成された液体吐出ヘッド用基板1をダイシングソー等により切断分離、チップ化し、吐出エネルギー発生素子2を駆動させるための電気的接合を行う。その後、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、液体吐出ヘッド素子を完成させる。
以上の説明では、本発明の適用例として、液体吐出ヘッド用基板を例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、例えばバイオッチップや電子回路印刷用の液体吐出ヘッド用基板にも適用できる。
また、液体吐出ヘッド素子は、ファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。例えば、バイオッチップ作製や電子回路印刷、薬物を噴霧状に吐出するなどの用途にも用いることができる。
そして、この液体吐出ヘッド素子を用いることによって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々の記録媒体に記録を行うことができる。なお、本明細書内で用いられる「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味することとする。
さらに、「液体」とは、広く解釈されるべきものであり、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、記録媒体の加工、或いはインク、または記録媒体の処理に供される液体を言うものとする。ここで、インクまたは記録媒体の処理としては、例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化による定着性の向上や、記録品位ないし発色性の向上、画像耐久性の向上などのことを言う。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態について、図6(A)〜(E)を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるべき他の技術にも応用することができる。
図6(A)〜(E)は、図1のI−I´線における断面図であり、本実施形態のシリコン基板の加工方法の基本的な工程を示すための断面模式図である。
図6(A)に示されるシリコン基板1の第一の面側には、発熱抵抗体等の吐出エネルギー発生素子2が複数個配置されている。また、前記基板1の第二の面(裏面)にはシリコン酸化膜(SiO膜)(不図示)で全面覆われている。また、シリコン基板1の第一の面(表面)にはインク供給口11(液体供給口)の表面開口を精度よく形成するための犠牲層3が設けられている。
シリコン基板1および犠牲層3の上には、エッチングストップ層4が形成されている。エッチングストップ層としては、例えば、シリコン酸化膜を用いることができ、絶縁層としての機能を兼ね備えることができる。より具体的には、例えば、エッチングストップ層4はシリコン酸化膜を成膜して所望の形状にパターニングして形成することができる。また、本実施形態において、エッチングストップ層及び絶縁層を兼ねるシリコン酸化膜の上にTaSiNなどの材料を成膜して所望の形状にパターニングすることにより、発熱抵抗体等の上記吐出エネルギー発生素子2を複数個配置することができる。尚、本実施形態では、前記TaSiNなどの発熱抵抗体のパターン形成と同時に、開口寸法識別パターン12をシリコン酸化膜などのエッチングストップ層4の上に形成する形態を示す。つまり、開口寸法識別パターン12は、発熱抵抗体と同じ材料を用いることができ、発熱抵抗体を形成する際にその材料を開口寸法識別パターンとして残すようにパターニングすることができる。
開口寸法識別パターン12の上に、吐出エネルギー発生素子2及び電気信号回路の保護する保護膜5が形成されている。保護膜5としては、例えば、シリコン窒化膜等を用いることができる。より具体的には、例えば、保護膜5は、シリコン窒化膜を成膜し、フォトリソ技術を用いて所望の形状にパターニングすることにより形成することができる。尚、吐出エネルギー発生素子2(ヒーター)の配線やそのヒーターを駆動するための半導体素子は図示していない。
また、シリコン基板1の裏面にエッチングマスク層9が形成されている。このエッチングマスク層は、後工程の結晶異方性エッチングにおけるエッチング開始面を形成する。また、保護膜5の表面に、例えばポリエーテルアミド樹脂等を用いて密着層を設けてもよい。
次に、図6(B)に示すように、インク流路(液体流路)の型となる流路型パターン6を形成する。
次に、図6(C)に示すように、流路型パターンの上に、吐出口8を有する流路形成層7を形成する。
さらに、流路形成層7等が形成されている基板表面側及び側面をスピンコート法等により保護材(不図示)で覆い、前記エッチングマスク層の開口部に露出するエッチング開始面に先導孔10を形成する。
次に、図6(D)に示すように、TMAH液等のアルカリ溶液を異方性エッチング液として用い、シリコン基板1の裏面から表面まで異方性エッチングを行って、インク供給口11を形成する。この際、犠牲層は等方的にエッチング除去される。
次に、図6(E)に示すように、インク供給口の第一の面側の開口(第一の開口)に露出するエッチングストップ層4を除去する。
より具体的には、シリコン酸化膜等のエッチングストップ層4の一部をウェットエッチングにて除去する。
そして、開口寸法識別パターン12をシリコン基板1の裏面側より金属顕微鏡などの顕微鏡で観察することにより、インク供給口11の開口寸法を識別することができる。そして、識別した開口寸法よりアルカリ溶液の状態を判断し、その結果を、次ロットの結晶異方性エッチングの処理時間等のエッチング条件にフィードバックする。これを繰り返すことで、常に安定してインク供給口11を形成することができる。また、結晶異方性エッチングの処理時間を調整するだけでなく、その他にも、エッチング液の組成や濃度を調整してもよい。
エッチングストップ層は、除去することも可能である。例えば、ドライエッチングのガス比を調整することにより、不要となった開口寸法識別パターン12を除去することも可能である。
そして、シリコン窒化膜等の保護膜5もドライエッチング等で除去される。
また、エッチングマスク層9及び保護材(不図示)を除去する。更に、流路型パターン6を、インク吐出口8及びインク供給口11から溶出させることにより、インク流路が形成される。
以上の工程によりノズル部が形成された液体吐出ヘッド用基板1をダイシングソー等により切断分離、チップ化し、吐出エネルギー発生素子2を駆動させるための電気的接合を行う。その後、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、液体吐出ヘッド素子を完成させる。
1 シリコン基板
2 吐出エネルギー発生素子
3 犠牲層
4 エッチングストップ層
5 保護膜
6 流路型パターン
7 流路形成層(ノズル層)
8 吐出口
9 エッチングマスク層
10 先導孔
11 液体供給口
12 開口寸法識別パターン

Claims (7)

  1. 液体を吐出するエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子を第一の面側に有し、かつ前記第一の面及び該第一の面と反対側の面である第二の面の間を貫通する液体供給口を有するシリコン基板と、
    前記液体を吐出する吐出口と、前記吐出エネルギー発生素子が配置されかつ前記吐出口及び前記液体供給口に連通する液体流路と、を形成する流路形成層と、
    を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、
    (1)前記シリコン基板の前記第一の面の上であって前記液体供給口の形成領域の上側に犠牲層を形成する工程と、
    (2)前記犠牲層を覆うエッチングストップ層を形成する工程と、
    (3)前記エッチングストップ層の上に、開口寸法識別パターンを形成する工程と、
    (4)前記シリコン基板の前記第二の面にエッチングマスク層を形成する工程と、
    (5)前記エッチングマスク層をマスクとして前記シリコン基板を前記第二の面から前記第一の面までアルカリ溶液を用いて異方性エッチングし、前記犠牲層を等方的にエッチング除去することで、前記液体供給口を形成する工程と、
    (6)前記液体供給口のうち前記第一の面側の第一の開口に露出する前記エッチングストップ層を除去する工程と、
    (7)前記第一の開口に露出する前記開口寸法識別パターンを前記第二の面側から観察し、前記アルカリ溶液の状態を判断する工程と、
    を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  2. 開口寸法識別パターンが金属膜で形成される請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  3. 前記開口寸法識別パターンを金属顕微鏡を用いて観察する請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  4. 前記開口寸法識別パターンが、一段がメモリとして機能する階段状パターンを有する請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  5. 前記開口寸法識別パターンは、前記液体供給口の前記第一の開口の端部から少なくとも一部が露出するように配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  6. 前記工程(4)と前記工程(5)の間に、前記エッチングマスク層の開口部に露出するエッチング開始面に先導孔を形成する工程を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
  7. 前記シリコン基板の面の結晶方位が(100)である請求項1乃至6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
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