替刃保持機構を一体化させて替刃保持ユニットとし、その替刃保持ユニットをハンドル本体にワンタッチで装着することができるカミソリハンドルを提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、替刃保持ユニットが、替刃カートリッジを保持するための替刃連結部を有し、ハンドル本体には、替刃保持ユニットを装着するよりも前に、既に、替刃保持ユニットを装着するために画定された装着空間部が形成されており、替刃保持ユニットを装着空間部に装着して固定する手段が、替刃保持ユニットと装着空間部との間に介在し、ハンドル本体の装着空間部は、替刃連結部を装着空間部の外側に突出させるための開口を有しており、替刃連結部を、前記開口にその装着空間部側から挿入して外側に突出させて、替刃保持ユニットを装着空間部に装着固定させたときに、替刃保持ユニットが後退不能となるように、替刃保持ユニットの装着時における移動と共に、替刃保持ユニットを装着空間部に自動的に係止させる係止手段が設けられており、前記開口は、少なくとも一方の部材が切欠凹部を有する2つの部材を結合させてその切欠凹部を開口とするものではなく、装着空間部の周壁の一部を抜いて形成される構成である。
請求項2に記載の発明は、替刃保持ユニットを装着空間部に装着する手段には、替刃保持ユニットを装着して固定するための別部材を含んでおらず、替刃保持ユニットをワンタッチで装着空間部に取り付けることができる構成である。
請求項3記載の発明は、替刃保持ユニットが、ユニット基台と、そのユニット基台に対して移動可能に結合された可動部材とを有し、その可動部材は、後方へ付勢され、中立位置と前進位置との間で可動であり、可動部材が前進位置にあるときに替刃カートリッジを着脱することができ、可動部材が中立位置にあるときに替刃カートリッジを保持することができる構成である。
請求項4記載の発明は、替刃連結部に取り付けた替刃カートリッジを、その長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動させることができる手段が備えられ、その手段は、替刃カートリッジの底面に存在するカム面と協働して揺動した替刃カートリッジを静止位置に戻すために、替刃カートリッジの方へ付勢されているプランジャであり、そのプランジャは、ユニット基台に取り付けられて替刃保持ユニットの一部を構成している構成である。
請求項5記載の発明は、可動部材を付勢させる付勢部材と、プランジャを付勢させる付勢部材とが、異なる付勢部材である構成である。
請求項6記載の発明は、可動部材を前方へ移動させるためのボタンが、旋回軸線の回りで旋回可能にハンドル本体に取り付けられ、ボタンを押すことによって、ボタンが旋回しつつ可動部材の後端面上をスライドしながら可動部材を前方に移動させる構成である。
請求項7記載の発明は、ボタンを押すときに、ボタンを押す力で可動部材の後端部が下がることを規制するための規制手段が、可動部材と装着空間部との間に設けられている構成である。
請求項8記載の発明は、装着空間部がカミソリハンドルの背面側に解放口を有し、替刃保持ユニットは、解放口を介してカミソリハンドルの背面側から装着空間部に装着されると共に、ボタンはカミソリハンドルの背面側から本体に装着される構成である。
請求項9記載の発明は、ハンドルが、ハンドル本体の背面側に取り付けられる背面板を含み、背面板が取り付けられたときに、装着空間部に装着されている替刃保持ユニットは露出されたままで、その露出されたままの替刃保持ユニットを覆うようにボタンが取り付けられている構成である。
請求項1記載の発明は、ハンドル本体には、替刃保持ユニットを装着するよりも前に、既に、替刃保持ユニットを装着するために画定された装着空間部が形成されており、替刃保持ユニットを装着空間部に装着して固定する手段が、替刃保持ユニットと装着空間部との間に介在し、ハンドル本体の装着空間部は、替刃連結部を装着空間部の外側に突出させるための開口を有しており、替刃連結部を、前記開口にその装着空間部側から挿入して外側に突出させて、替刃保持ユニットを装着空間部に装着固定させたときに、替刃保持ユニットが後退不能となるように、替刃保持ユニットの装着時における移動と共に、替刃保持ユニットを装着空間部に自動的に係止させる係止手段が設けられており、前記開口は、少なくとも一方の部材が切欠凹部を有する2つの部材を結合させてその切欠凹部を開口とするものではなく、装着空間部の周壁の一部を抜いて形成されるものである。従来技術では、装着空間部は、例えば2つに分割されたハンドル本体に、装着空間部がそれぞれ半分ずつの広さで形成され、それらのハンドル本体を結合したときに、初めて装着空間部が形成される構成である。このような従来技術は、分割された一方のハンドル本体に替刃保持ユニットを装着固定する構成ではなく、分割された双方のハンドル本体を結合するときに、同時に替刃保持ユニットをハンドル本体の中に組み込む構成である。したがって、結合して替刃保持ユニットをその間に組み込むときに、分割されている双方のハンドル本体を保持する2つの保持機構と、替刃保持ユニットを保持する1つの保持機構の合計3つの保持機構を必要とする。これに対して、請求項1記載の発明は、替刃保持ユニットを装着するよりも前に、既に、替刃保持ユニットを装着するために画定された装着空間部がハンドル本体に形成されており、そこに替刃保持ユニット装着して固定する構成である。したがって、装着空間部があらかじめ形成されているから、1つのハンドル本体を保持する1つの保持機構と、替刃保持ユニットを保持する保持機構の2つの保持機構だけで、替刃保持ユニットのハンドル本体の取り付けを行うことができる。
また、請求項1記載の発明は、ハンドル本体の装着空間部が、替刃連結部を装着空間部の外側に突出させるための開口を有しており、替刃連結部を、前記開口にその装着空間部側から挿入して外側に突出させて、替刃保持ユニットを装着空間部に装着固定させたときに、替刃保持ユニットが後退不能となるように、替刃保持ユニットの装着時における移動と共に、替刃保持ユニットを装着空間部に自動的に係止させる係止手段が設けられている。したがって、替刃保持ユニットをワンタッチで装着できると共に、替刃保持ユニットが後退する虞もなく確実に固定することができる。
さらに、請求項1記載の発明は、開口が、少なくとも一方の部材が切欠凹部を有する2つの部材を結合させてその切欠凹部を開口とするものではなく、装着空間部の周壁の一部を抜いて形成されるものである。従来のように、開口が2つの切欠凹部を結合させて構成されているときは、その結合部分が離れて開口の上下幅が広がってしまう虞がある。このように、結合部分が離れると、開口に挿通されている部材がガタついてしまうのである。請求項4の発明は、開口が、2つの切欠凹部の結合でなく、装着空間部の周壁を抜いたものであるから、形成し易い。また、結合部分がないので、製造工程において開口を形成する2つの部材の結合部分に誤差によるずれが生じるというようなことが起きる余地がなく、不良品の発生を防止できる。さらに、結合部分がないので、その結合部分が割れて開口の上下幅が広がるというような虞が全くない。
請求項2記載の発明は、替刃保持ユニットを装着空間部に装着する手段には、替刃保持ユニットを装着して固定するための別部材を含んでおらず、替刃保持ユニットをワンタッチで装着空間部に取り付けることができる。ワンタッチで取り付けができるので、取り付けるための他の部材も、その部材を組み込むための工程も必要としない。したがって、替刃保持ユニットの取り付け工程が削減されると共に、替刃保持ユニットを簡単に取り付けることができる。
請求項3記載の発明は、替刃保持ユニットが、ユニット基台と、そのユニット基台に対し移動可能に結合された可動部材とを有し、その可動部材は、後方へ付勢され、中立位置と前進位置との間で可動であり、可動部材が前進位置にあるときに替刃カートリッジを着脱することができ、可動部材が中立位置にあるときに替刃カートリッジを保持することができる。したがって、替刃保持ユニットのみで、替刃カートリッジを着脱可能に取り付けることができるから、ハンドル本体に替刃カートリッジの着脱に関係する部材を設けることが不要であり、替刃保持ユニットのハンドル本体への装着を簡単に行うことができる。
請求項4記載の発明は、替刃連結部に取り付けた替刃カートリッジを、その長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動させることができる手段が備えられ、その手段は、替刃カートリッジの底面に存在するカム面と協働して揺動した替刃カートリッジを静止位置に戻すために、替刃カートリッジの方へ付勢されているプランジャであり、そのプランジャは、ユニット基台に取り付けられて替刃保持ユニットの一部を構成している。したがって、替刃保持ユニットのみで、替刃連結部に取り付けられた替刃カートリッジを、その長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動させることができるから、ハンドル本体に替刃カートリッジの揺動に関係する部材を設けることが不要であり、替刃保持ユニットのハンドル本体への装着を簡単に行うことができる。
請求項5記載の発明は、可動部材を付勢させる付勢部材と、プランジャを付勢させる付勢部材は、異なる付勢部材である。可動部材とプランジャの双方を1つの付勢部材で付勢するときは、付勢部材の長さなどが大きくなり、その分、付勢部材がそれを押す力で変形するときに、付勢する方向と異なる方向に撓み易く、付勢させられる部材の移動が円滑に行われない虞がある。請求項7の発明は、付勢部材が大きくなりすぎることがなく、可動部材とプランジャをそれぞれ独立して付勢するので、可動部材やプランジャの移動が円滑に行われる。
請求項6記載の発明は、ボタンを押すことによって、ボタンが旋回しつつ可動部材の後端面上をスライドしながら可動部材を前方に移動させる。可動部材の移動方向と同じ方向に力を加える構成であるときは、ボタンの取り付け位置や大きさが限定されるが、ボタンの旋回運動を直線運動に変換して可動部材に力を加えるので、ボタンの取り付け位置を比較的自由に設定することができると共に、ボタンの大きさを大きくして指で押し易くすることが可能である。
請求項7記載の発明は、ボタンを押すときに、ボタンを押す力で可動部材の後端部が下がることを規制するための規制手段が、可動部材と装着空間部との間に設けられている。したがって、可動部材をそのスライド方向に円滑に移動させることができる。
請求項8記載の発明は、装着空間部がハンドルの背面側に解放口を有し、替刃保持ユニットが、解放口を介してハンドルの背面側から装着空間部に装着されると共に、ボタンはハンドルの背面側から本体に装着される。したがって、ハンドル本体に替刃保持ユニットやボタンを装着するときに、ハンドルの背面側から行われ、ハンドルの正面側や側面側からの取り付け工程がなく、すべて同じ側からの取り付けとなる。このため、ハンドルの正面側や側面側に取り付け装置を設置するための空間を必要とせず、狭い空間で取り付けをすることができる。
請求項9記載の発明は、ハンドルが、ハンドル本体の背面側に取り付けられる背面板を含み、背面板が取り付けられたときに、装着空間部に装着されている替刃保持ユニットは露出されたままで、その露出されたままの替刃保持ユニットを覆うようにボタンが取り付けられている。したがって、ボタンは可動部材を移動させると共に、替刃保持ユニットを覆う背面板としての作用もなしている。
ハンドル1は、ハンドル本体2と、そのハンドル本体2の本体頭部3の内部に装着された替刃保持ユニット5と、本体頭部3に旋回可能に取り付けられたボタン4と、ハンドル本体2の背面側に取り付けられた背面板6を有する。また、替刃保持ユニット5に取り付けられている一対のアーム7,7とプランジャ8が、本体頭部3から外側に突出している。替刃カートリッジ9を保持するための替刃連結部はアーム7,7であり、アーム7,7の先端に設けられている外向きのジャーナル軸30,30に替刃カートリッジ9が連結される。
替刃保持ユニット5は、替刃カートリッジ9をアーム7,7に交換可能に取り付ける機構と、アーム7,7に取り付けた替刃カートリッジ9を、その長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動させる機構とを一体化させて、一つのユニットとしたものである。これらの機構については、本発明のようにワンタッチで取り付けるものではないが、ほぼ同じ機構が特許第4837256号公報に開示されており、これらの機構について詳述することはせず、以下、概略について説明する。
替刃保持ユニット5は、ユニット基台10と、そのユニット基台10に対して前後に移動可能に結合された可動部材11とを有する。また、ユニット基台10は、基板部12と、その基板部12の上面に形成された一対の対向するガイド壁13,13を有する。ガイド壁13,13は、基板部12に対して前後方向に移動する可動部材11と、伸縮するプランジャ8をガイドしている。ガイド壁13,13の間に隔壁14が形成されており、この隔壁14とプランジャ8との間に付勢部材としてコイルバネ15が取り付けられ、プランジャ8を替刃カートリッジの取り付け位置の方へ付勢している。プランジャ8に設けられているバネ挿入孔80は、コイルバネ15を位置決めするためのものである。また、隔壁14と可動部材11との間に付勢部材としてコイルバネ16が取り付けられ、可動部材11をユニット基台10に対して後方へ付勢している。可動部材11に設けられている突起81は、コイルバネ16を位置決めするためのものである。
可動部材11は、アーム7,7の間隔が広がって替刃カートリッジを保持する中立位置と、アーム7,7の間隔が狭められて替刃カートリッジを取り外す前進位置との間で可動であり、且つ中立位置又は前進位置に維持可能である。次に、その可動部材11の固定構造について説明する。ガイド壁13,13の内面に一対の第一の係止凹部17,17が形成され、さらにその後方に第二の係止凹部18,18が形成されている。また、可動部材11には一対の細長い片持ち弾性部19,19が設けられ、この細長い片持ち弾性部19,19の先端に係止凸部20,20が形成されている。片持ち弾性部19,19はガイド壁13,13の間に嵌め込まれ、前後に移動可能であり、移動後にガイド壁13,13に対して固定される。すなわち、可動部材11を前方に移動させると、係止凸部20,20が第一の係止凹部17,17に係止して、可動部材11は固定される。この位置が、可動部材11の前進位置である。可動部材11が後方に移動すると、係止凸部20,20が第二の係止凹部18,18に係止して、可動部材11は固定される。この位置が、可動部材11の中立位置である。なお、係止凸部20,20の第一の係止凹部17,17に対する係止は、強固な係止ではなく、可動部材11をユニット基台10に対して後方に押圧すると係止が容易に外れる程度の弱めの係止強度である。この係止が外れることにより、コイルバネ16で後方へ付勢されている可動部材11は、自動的に後退する。
可動部材11が、その前進位置と中立位置の間を移動して、それぞれの位置で固定される構成は以上の通りである。そして、このような構成によって、アーム7,7の間隔を狭めたり広げたりすることができる。以下、それについて説明する。図7に示すように、アーム7,7はそれらの基部に軸孔21,21を有する。ユニット基台10の基板部12には突起22が形成されており、両アーム7,7の軸孔21,21を重ねて突起22を挿し込むことにより、アーム7,7は突起22を中心に旋回可能となり、アーム7,7の間の間隔を広げたり狭めたりすることができる。図9に示すように、可動部材11は、延長部23,23を有している。延長部23,23の下面には凹所24とスライド溝34が形成され、凹所24の前後に、凹所前面部25と凹所後面部26が形成される。また、凹所24が形成されることにより、凹所24の前側に前端肉厚部28が形成される。前記凹所前面部25はこの前端肉厚部28の周面の一部を構成している。図5に示すように、アーム7,7の基部が凹所24の中に通されており、可動部材11の前後の移動により、凹所前面部25及び凹所後面部26が同時に移動し、そのいずれかがアーム7,7を押圧して、そのアーム7,7をいずれかの方向に旋回させる。また、スライド溝34にはユニット基台10の基板部12がスライド可能に挿通されている。なお、図5は、可動部材11が前進位置にある状態を示しており、アーム7,7が最も狭まった状態である。
図11は、可動部材11を前進位置に固定させて、アーム7,7の幅を最も狭めたときのアーム7,7と可動部材11の関係を示している。ここで、図6から明らかなように、下側延長部33,33はアーム7,7よりも下側にあるから、図11において下側延長部33,33はアーム7,7よりも手前側にあることになる。また、図8から明らかなように、下側延長部33は、凹所後面部26の位置まで延びているので、図11において凹所後面部26は下側延長部33に隠れている。図5及び図11に示すように、延長部23,23の凹所後面部26,26が、アーム7,7を後ろ側から押圧してアーム7,7を旋回させ、アーム7,7の間隔を狭めている。また、凹所前面部25,25は凹面27,27を有し、この凹面27,27にアーム7,7の膨出縁部89,89が当たることにより、アーム7,7が必要以上に狭まることを規制している。同様に、図6に示すように、替刃保持ユニット5の前端部37に形成された段差部59にアーム7,7が当たり、ここでもアーム7,7が必要以上に狭まることを規制している。
図12は、可動部材11を中立位置に戻して、アーム7,7の幅を最も広げたときのアーム7,7と可動部材11の関係を示している。前述したように、可動部材11の前進位置での係止凸部20,20の第一の係止凹部17,17に対する係止は、強固な係止ではなく、弱めの係止強度であり、そのために可動部材11を後方に押圧すると、この係止強度が弱めの係止は容易に外れる。この係止の外し方には2つの方法がある。その一つは、プランジャ8を押圧する方法である。前述したように、可動部材11が前進位置にあってアーム7,7が最も狭まった状態を示す図5と、分解図である図7を参照しながら説明すると、プランジャ8を押圧したときに、プランジャ8は、それを付勢しているコイルバネ15の弾性力に抗して後退する。さらにプランジャ8が押圧されると、プランジャ8の後端部に形成されているプッシャ32の両側の突出部85,85が、隔壁14とガイド壁13,13との隙間に入るようにして可動部材11の片持ち弾性部19,19に当たり、それを押圧する。これにより、可動部材11が後方に押圧され、係止強度が弱めである係止が外れる。ここで、プッシャ32の突出部85,85の先端部の内面が傾斜面に形成され、突出部85,85の先端は尖っている。したがって、可動部材11が後方に押圧されたときに、突出部85,85の傾斜面が、片持ち弾性部19,19の先端をその外側から内側に押圧するので、片持ち弾性部19,19はそれぞれ内側に撓む。これにより、可動部材11の前進位置での係止凸部20,20の第一の係止凹部17,17に対する係止は、さらに容易に外すことができる。係止が外れると、可動部材11はコイルバネ16の付勢力により自動的に後方へ移動する。
係止凸部20,20の第一の係止凹部17,17に対する係止を外す方法の他の一つは、アーム7,7を後方に押す方法である。前述したように、図5は、可動部材11が前進位置にある状態を示しており、アーム7,7が最も狭まった状態である。この図5に示すように、可動部材11の延長部23の下面に形成された凹所24にアーム7,7が通されている。アーム7,7は、ユニット基台10に旋回可能に取り付けられているので、狭められているアーム7,7を押すことによりアーム7,7が後方に旋回し、可動部材11の凹所後面部26を後方へ押圧する。これにより、アーム7,7を押す力が一定の大きさを超えると、係止凸部20,20の第一の係止凹部17,17に対する係止強度が弱めの係止が外れる。そして、後方へバネ付勢されている可動部材11は自動的に後退し、アーム7,7を狭める力が解除される。その結果、コイルバネ16により、凹所前面部25がアーム7,7を開く方向に付勢され、図12に示すように、凹所前面部25,25の凹面27,27は、アーム7,7の膨出縁部89上を滑りながらアーム7,7に対して後退し、延長部23,23の前端肉厚部28,28がアーム7,7を押し広げる。
次に、替刃保持ユニット5の組み立て方について説明する。まず、アーム7,7の軸孔21,21にユニット基台10の突起22を挿入し、次いで、プランジャ8のバネ挿入孔80にコイルバネ15を挿入してコイルバネ15を位置決めし、そのコイルバネ15を長さ方向に圧縮した状態で、プランジャ8のプッシャ32を第一の係止凹部17,17の間から挿入すると共に、プランジャ8を両ガイド壁13,13の間に入れる。このとき、コイルバネ15はバネ挿入孔80と隔壁14との間で圧縮状態となり、プランジャ8は前方に付勢される。図5に示すように、プッシャ32の両側に一対の切欠溝84(他方は図示せず。)が形成され、この切欠溝84が、ガイド壁13,13に形成されたフランジ82,82の下側に位置するので、プッシャ32がユニット基台10から外れることはない。さらに、プランジャ8のプッシャ32は両側に張り出しているので、このプッシャ32が、ガイド壁13,13に設けられた内向きのストッパー83,83に当たり、プランジャ8がガイド壁13,13の間から前方へ抜け出すことがない。このようにして、最初にプランジャ8をユニット基台10に取り付ける。
次に、ユニット基台10に可動部材11を結合する。前述したように、可動部材11は、延長部23,23を有している。そして、図9に示すように、可動部11は、延長部23,23の下方にそれよりも短い下側延長部33,33が形成されており、延長部23,23と下側延長部33,33との間にスライド溝34,34が形成されている。ユニット基台10に可動部材11を結合する方法を、図7を参照しながら説明する。まず、可動部材11の片持ち弾性部19,19をユニット基台10の後方からガイド壁13,13の間に挿し込んで行くと、係止凸部20,20が第二の係止凹部18,18に嵌り、図7に示すように、係止凸部20,20が直角三角形であるために、片持ち弾性部19,19はガイド溝13,13の間から抜け出すことがない。そのとき、図5に示すように、ユニット基台10の基板部12は、可動部材11のスライド溝34の中にスライドして行くので、基板部12は、その上下にある延長部材23と下側延長部材33の間に挟まれ、上下に移動することが規制される。このようにして、可動部材11は、ユニット基台10に対して前後にスライド可能に結合されて、ユニット基台10と可動部材11が組み合わされ、次いで、可動部材11の突起81をコイルバネ16に挿入してコイルバネ81を位置決めする。この状態で、コイルバネ16は可動部材11の突起81と隔壁14との間で圧縮された状態であるので、可動部材11は、ユニット基台10に対して後方に付勢されている。可動部材11とユニット基台10は、それらに一体に形成されている種々の結合要素部分のみによって結合されるから、別体の結合部材を用意しなくても替刃保持ユニットを組み立てることができる。
次に、替刃保持ユニット5をハンドル本体2に装着する機構について説明する。図13に示すように、本体頭部3には、替刃保持ユニット5を装着するための装着空間部35が形成されている。また、装着空間部35内面の上端部には、替刃保持ユニット5に取り付けられているアーム7,7とプランジャ8を装着空間部35の外側に突出させるための開口36が形成されている。図14に示すように、開口36の形状は、替刃保持ユニット5の前端部37の形状と一致している。装着空間部35の周壁38は比較的高く形成されており、開口36は、この周壁38を抜いて形成されている。開口36の両端部は周壁38に食い込むように周壁38の表面付近まで届いており、そのために、その部分の周壁38の肉厚は薄くなっているが、開口36が周壁38を抜いて形成されており、凹部を有する2つの部材を接合して形成したものでないので、周壁38がその薄肉部分で割れることがない。
替刃保持ユニット5を装着空間部35に装着するときは、まず、替刃保持ユニット5の可動部材11を前進位置に固定させ、アーム7,7の間隔を狭めた状態に維持する。装着空間部35はハンドル本体2の背面側に解放口39を有し、替刃保持ユニット5は、解放口39を介してハンドル本体2の背面側から装着空間部35に装着されるように構成されている。したがって、狭めた状態に維持されているアーム7,7の先端を装着空間部35の背面側から開口36に挿し込んで行く。アーム7,7が開口36から完全に突出するときに、替刃保持ユニット5のフランジ状突起40,40が、装着空間部35内面に設けられている上向き突起42,42の上を滑りながら乗り越え、次いで、落し込み凹部44,44に落し込まれる。これにより、フランジ状突起40,40は落し込み凹部44,44に係止されるので、替刃保持ユニット5が後退することがないのである。すなわち、替刃保持ユニット5が装着空間部35に装着されたときに、替刃保持ユニット5が後退することを規制する手段の一つは、替刃保持ユニット5のガイド壁13,13に形成されているフランジ状突起40,40と、装着空間部35の開口36の内側の入口41の両側に設けられている上向き突起42,42と、その上向き突起42,42の前側に続く落し込み凹部44,44であるということができる。また、アーム7,7が開口36から完全に突出すると、開口36と同じ形状に形成されている替刃保持ユニット5の前端部37が、開口36内に嵌合して開口36を塞ぎ、替刃保持ユニット5の前端部37のガタつきを防止することができる。
替刃保持ユニット5のユニット基台10の底面には、前側が解放されたコ字形突部45が形成されている。また、ハンドル本体2の装着空間部35内面には、コ字形突部45に係合させるための中央支持板部46が形成され、その上面には後方に延びる細長い支持面47が形成されている。替刃保持ユニット5が装着空間部35に装着されたときに、中央支持板部46がコ字形突部45に係合し、替刃保持ユニット5の前方及び側方への移動を規制する。さらに、ユニット基台10の底面が、中央支持板部46に形成されている支持面47に当たるので、ユニット基台10の中央部が支持面47によって下から支持され、替刃保持ユニット5が下がることを規制する。
また、装着空間部35内面に形成された中央支持板部46の両側に、側部支持板部48,48が形成され、それらの上面には後方に延びる細長い支持面49,49が形成されている。この支持面49,49は中央支持板部46の支持面47よりも後方に長く延びている。替刃保持ユニット5が装着されたときに、可動部材11の下側延長部33,33が支持面49,49に支持され、替刃保持ユニット5の下方への移動を規制する。支持面49,49は中央支持板部46の支持面47よりも長いので、支持面49,49は替刃保持ユニット5の前部から後部に亘って幅広い範囲で支持する。これにより、替刃保持ユニット5がガタつくことを確実に防止することができる。
さらに、支持面49,49の前端には、ハンドル本体2に装着された替刃保持ユニット5の後退を阻止するための後退ストッパー86,86が突出し、他方、替刃保持ユニット5のユニット基台10の底面には係止突部87,87が設けられている。この係止突部87,87が後退ストッパー86,86に係止することにより、装着された替刃保持ユニット5が後退することを確実に阻止できる。後退ストッパー86,86はそれぞれ傾斜面を有しており、係止突部87,87が後退ストッパー86,86に係止するときに、その係止突部87,87が傾斜面により誘導されて円滑に後退ストッパー86,86を乗り越え、替刃保持ユニット5の装着時に自然且つ自動的に後退ストッパー86,86に係止される。
前述したように、替刃保持ユニット5が装着空間部35に装着されたときに、中央支持板部46がコ字形突部45に係合し、替刃保持ユニット5の前方及び側方への移動を規制している。さらに、替刃保持ユニット5が、そのあらかじめ設定された位置以上に前方に移動することを確実に規制するために、他の規制手段も有している。その規制手段は、ユニット基台10の基板部12の両側に形成されている側方突部50,50と、装着空間部35内面に形成されている前進ストッパー51,51である。替刃保持ユニット5が装着空間部35に装着されたときに、側方突部50,50が前進ストッパー51,51に当たることによって、替刃保持ユニット5のそれ以上の前進を規制することができる。さらに、替刃保持ユニット5の係止突部87,87が、ハンドル本体2の後退ストッパー86,86に係止することにより、装着された替刃保持ユニット5が後退することを確実に阻止できる。このように、替刃保持ユニット5を装着空間部35に装着固定するための種々の手段が設けられているが、これらの手段は、替刃保持ユニット5を装着空間部35に装着する工程において、替刃保持ユニット5を挿入するだけで自動的に機能するように構成されており、替刃保持ユニット5をワンタッチで装着空間部35に装着することができる。
前述したように、アーム7,7の間隔が狭められているときに、アーム7,7とプランジャ8の一方又は双方を押すことにより、可動部材11が自動的に後退してアーム7,7の間隔が広がる。これにより、アーム7,7に替刃カートリッジ9が取り付けられるが、その取り付け機構について説明する。替刃カートリッジ9をアーム7,7に取り付けるときは、替刃カートリッジ9が替刃容器に収納されている状態で行われる。替刃容器に収納されている替刃カートリッジ9は、その底面を上にして取り付けられている。そのような状態で替刃カートリッジ9をハンドル1に取り付けるときは、ボタン4を押して可動部材11を前進位置に進めアーム7,7の間隔を狭めた状態にして、まず、プランジャ8の先端部を替刃カートリッジ9の底面に設けられている原動カム29に宛がう。
ここで、本実施例のプランジャ8の先端部は特殊な構成に形成されているので、これについて先に説明する。図6に示すように、プランジャ8の先端部は2つの突起73、74に分かれており、その一方の突起73には切欠75が形成されている。また、替刃カートリッジ9の底面に設けられている原動カム29には、その横方向に突出する干渉部76が形成されている。前述した、プランジャ8の先端部の切欠75と、替刃カートリッジ9の原動カム29の干渉部76は、協働して替刃カートリッジ9が逆向きでアーム7,7に取り付けられることを防止する作用をなす。すなわち、替刃カートリッジ9が適正に取り付けられるときは、プランジャ8の切欠75と原動カム29の干渉部76が同じ側にあるので、干渉部76は切欠75の中に入り込んで干渉作用をなさず、原動カム29がプランジャ8の突起73,74の間に入り込み、原動カム29からの反力によってプランジャ8が押され、ジャーナル軸30,30が、替刃カートリッジ9のジャーナル軸受31に入る。これに対して、ハンドル1が替刃カートリッジ9に対して不適正な方向にあるときは、切欠を有しない他方の突起74が干渉部76に阻止されて、プランジャ8を原動カム29に対して適正な位置に宛がうことができない。そのために、プランジャ8が不適正な位置において原動カム29からの反力によって押されたときに、プランジャ8が後退してアーム7,7は広がるが、そのジャーナル軸30,30を、替刃カートリッジ9のジャーナル軸受31に入れることができない。これにより、ハンドル1が替刃カートリッジ9に対して適正な方向にあるときにのみ、替刃カートリッジ9がアーム7,7に取り付けられる。なお、プランジャ8の突起73,74の間の間隔は、原動カム29の幅よりもわずかに小さくなるように形成されている。突起73,74の間の間隔は、原動カム29の幅と同じ、又はこれより広くてもよい。間隔が小さいときは、突起73,74と原動カム29との間に小さな摩擦力が生じるので、替刃カートリッジ9をアーム7,7から外すときに、替刃カートリッジ9が勢いよく飛び出すことを防止できる。
プランジャ8と替刃カートリッジ9の原動カム29はこのように形成されているので、アーム7,7に替刃カートリッジ9を取り付けるときは、替刃カートリッジ9を適正な方向とすることにより、プランジャ8の突起73,74の間の部分を原動カム29に宛がうことができる。プランジャ8が替刃カートリッジ9の原動カム29に宛がわれると、アーム7,7の先端部も替刃カートリッジ9の底面のガイド溝88に接触又は近接する。それから、ハンドル1を強く押すと、プランジャ8が替刃カートリッジ9の原動カム29からの反力により押され、アーム7,7も替刃カートリッジ9の底面からの反力に押されて、係止凸部20,20と第一の係止凹部17,17との係止が外れ、可動部材11が自動的に後退する。それにより、アーム7,7は自動的に広がり、アーム7,7の端部に設けられた外向きのジャーナル軸30,30が、ガイド溝88をスライドしながらジャーナル軸受31に係合し、替刃カートリッジ9をハンドル1に揺動可能に取り付けることができる。
装着空間部35に装着された替刃保持ユニット5のアーム7,7に替刃カートリッジを交換可能に取り付けるためには、取り付けられた替刃カートリッジ9を取り外さなければならない。そのためには、可動部材11を前方に移動させてアーム7,7の間の間隔を狭める必要がある。まず、可動部材11を前方に移動させるための手段であるボタン4について説明する。図17に示すように、ボタン4は板状に形成され、その裏面52に三本の突条53,53,53が設けられている。また、それらの突条53の両側に、三角形状の突板部54,54が設けられている。さらに、ボタン4の前部の両側面に旋回軸55が設けられている。ボタン4をハンドル本体2に取り付けるために、図13及び図15に示すように、本体頭部3に形成されて装着空間部35内面の両側に旋回軸受56が形成されている。ボタン4の旋回軸55を旋回軸受56に結合させることにより、ボタン4は旋回軸線を中心に旋回可能にハンドル本体2に取り付けられる。なお、旋回軸受56に隣接して形成されている凹面状の切欠面57は、ボタン4の旋回軸55,55が、その切欠面57上を滑りながら、円滑に旋回軸受56に到達可能とするためのものである。
ボタン4はこのようにしてハンドル本体2に取り付けられるが、ボタン4をハンドル本体2に取り付けるよりも前に、ハンドル本体2には、重り58と背面板6が取り付けられる。背面板6がハンドル本体2に取り付けられるときは、背面板6の一方の側部に設けられた3つの係止突起65,65(他の1つは図示せず。)が、ハンドル本体2の一方の側縁部内面に形成された3つの係止溝77,77,77に係止する。また、背面板6の他方の側部に設けられた3つの係止突起66,66,66が、ハンドル本体2の他方の側縁部内面に形成された3つの係止溝(図示せず。)に係止する。さらに、背面板6の前端部に設けられた一対の嵌合突起78,78が、ハンドル本体2に設けられた嵌合穴79(一方は図示せず。)に嵌合する。このようにして、背面板6はハンドル本体2に取り付けられる。図2に示すように、重り58は金属の角棒で形成されており、ハンドル本体2の重り収納部60内に嵌合されている。重り58のハンドル本体2への取り付けは、替刃保持ユニット5の取り付けよりも前に行われるが、その取り付けの後であってもよい。背面板6は、ハンドル本体2をその背面側から覆う部材であって、図1に示すように、ハンドル本体2の背面とほぼ同じ形状に形成されている。しかし、ハンドル本体2にボタン4を取り付ける必要があるので、背面板6にはボタン4を取り付けるための余地として凹状面部43が形成され、装着空間部35内に装着されている替刃保持ユニット5が凹状面部43に囲まれた空間から露出する。ボタン4は、その凹状面部43に囲まれた空間を塞ぐように、したがって、露出している替刃保持ユニット5を覆うようにハンドル本体2に取り付けられる。また、背面板6の長さ方向に対して交わる方向に延びる凹状面部43の横幅は、比較的広めに形成されている。これにより、図16に示すように、可動部材11が中立位置にあってボタン4の後端が浮き上っても、凹状面部43により装着空間部35の中が覗かない。また、この状態からボタン4を押して、ボタン4の後端が凹状面部43に囲まれた空間に入ったときも、凹状面部43により装着空間部35の中が覗かない。
次に、ボタン4を押すことにより、替刃保持ユニット5の可動部材11が中立位置から前進位置に移動する構成について説明する。図16は、可動部材11が中立位置にある状態を示している。可動部材11の後端には、2つのブラケット軸受61(他方は図示せず。)が設けられ、その上面から後面にかけて凸の弧状をなすスライド面62が形成されている。可動部材11が中立位置にあるとき、コイルバネ16が可動部材11を後方へ付勢しているから、スライド面62は、ハンドル本体2に取り付けられているボタン4の裏面の突条53を下から軽く押して、ボタン4を上方に旋回させるように作用する。図16において、ボタン4が上方、すなわち反時計回りに旋回しようとしても、ボタン4の前縁部63が、装着空間部35の周壁38の前側部分64の上面に当たるので、このときボタン4の上方への旋回が規制される。したがって、スライド面62,62が、ボタン4の裏面の突条53,53を下から軽く押したときは、ボタン4は所定の位置で旋回が規制され、上方に付勢された状態になるから、ボタン4は自然に下方に旋回することがなく下がることがない。このような状態から、ボタン4を押すと、ボタン4は下方に旋回してその突条53が、ブラケット軸受61のスライド面62上をスライドしながら可動部材11を前方に押す。これにより、図5に示すように、可動部材11の係止凸部20,20は、ユニット基台10の第二の係止凹部18,18から抜け出し、第一の係止凹部17,17に係止して、前述したようにアーム7,7の間隔が狭められる。アーム7,7の間隔が狭められると、ジャーナル軸30が替刃カートリッジ9のジャーナル軸受31から抜け出して、替刃カートリッジ9を取り外すことができる。
前述したように、ブラケット軸受61がボタン4によって押されると、可動部材11の後端部が下がることが考えられるので、それを規制する手段が設けられている。その手段はリンク67であり、リンク67は両端部の両側にそれぞれ軸68,69を有している。また、装着空間部35の底面には、軸受部70が設けられ、その軸受部70に2つの受け溝71が形成されている。また、前述したブラケット軸受61にも、それぞれ受け溝72が形成されている。リンク67の軸68,69をそれらの受け溝71,71,72,72に嵌め込むことにより、ブラケット軸受61と軸受部70とがリンク67により連結される。そのため、ブラケット軸受61,61をボタン4で押すと、リンク67の作用によって可動部材11の後端部が下がることを規制することができる。
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、コイルバネの代わりに、コイルバネと同等の伸縮性を有する弾性材料を用いた弾性部材としてもよい。また、可動部材11を前進させるための旋回するボタン4に代えて、直線的に移動するボタンにより、可動部材11にその移動方向と同じ方向の力を与えて移動させるものであってもよい。