<参考例1>
本発明の参考例1について、図1ないし図13を用いて説明する。なお、本参考例において、現像装置は、例えば以下に述べるような画像形成装置の中で使用されるが、必ずしもこの形態に限られるものではなく、静電記録方式のものにも適用できる。また、本参考例では、画像形成装置として、フルカラーの中間転写方式のものを図示しているが、本発明の画像形成装置は、特にそれに限定されるものではない。まず、図1及び図2により、画像形成装置の全体構成及び各画像形成部の構成について概説する。
[画像形成装置]
画像形成装置100は、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のトナー像をそれぞれ形成する画像形成部PY、PM、PC、PKを有するタンデム方式を採用している。複数の画像形成部PY、PM、PC、PKは、画像搬送体としての中間転写ベルト(中間転写体)24の回転方向に並んで配置され、トナー像を形成するまでのプロセスを各色毎に並列処理する。即ち、複数の画像形成部PY、PM、PC、PKは、次述するように、それぞれが像担持体としての感光ドラムと、現像装置と、一次転写部とを有する。
なお、各画像形成部の構成は、基本的に同じであるため、以下の説明では、各画像形成部の構成を示す添え字Y、M、C、Kを省略し、図面及び必要な説明においてのみ、添え字を付すこととする。
画像形成部Pは、各色のトナー像が形成担持される像担持体としての感光ドラム10を有する。感光ドラム10の周囲には、帯電装置21、露光装置22、現像装置1、転写部材としての一次転写ローラ23、クリーニング装置26が配置される。また、感光ドラム10に隣接する位置には、感光ドラム10と当接し、後述するように感光ドラム10から転写されたトナー画像を搬送する中間転写ベルト24を設けている。
感光ドラム10は、図2の矢印の方向に回転駆動され、帯電装置21により表面が所定電位に一様に帯電される。その後、露光装置22によって所定電位に帯電された感光ドラム10の表面を露光することによって、感光ドラム10上に静電潜像が形成される。例えば、露光装置22によって、画像情報信号に応じて変調されたレーザ光で露光して静電潜像(潜像)を形成する。感光ドラム10上の静電潜像は、現像装置1によって現像剤を用いて現像され、トナー画像として可視画像化される。
現像装置1によって現像された感光ドラム10上のトナー画像は、一次転写部T1で、一次転写ローラ23に一次転写バイアスが印加されることによって、無端状の中間転写ベルト24上に順次重畳させて一次転写される。一次転写ローラ23は、感光ドラム10と中間転写ベルト24を介して当接するように配置され、転写バイアス印加手段としての電源23aが接続される。そして、電源23aから一次転写部T1に一次転写バイアスを印加するようにしている。
なお、本参考例では、各画像形成部の一次転写ローラ23Y、23M、23C、23Kにそれぞれ、電源23aY、23aM、23aC、23aKを接続して、それぞれ別々に一次転写バイアスを印加できるようにしている。
全色一次転写された中間転写ベルト24上のトナー画像は、二次転写ローラ29に二次転写バイアスが印加されることによって、記録材S上に一括して二次転写される。二次転写ローラ29は、中間転写ベルト24に当接して従動回転する。一次転写後の感光ドラム10の表面はクリーニング装置26により転写残トナーなどが除去され、次の画像形成に使用される。また、二次転写後の中間転写ベルト24の表面も、不図示のクリーナにより転写残トナーなどが除去され、次の画像形成に使用される。
記録材Sは、不図示の給紙カセットや給送ローラなどの給送手段によって、二次転写ローラ29と中間転写ベルト24とから構成される二次転写部T2まで搬送される。二次転写後、未定着のトナー画像を担持した記録材Sは、定着装置25へと搬送される。そして、定着装置25で加熱されかつ加圧されることで未定着のトナー画像が溶融軟化して記録材Sに定着される。トナー画像を定着した記録材Sは、画像形成装置100の外へと排紙される。
以上のように、帯電、露光、現像、転写、そして定着までの一連の画像形成プロセスが実行され、記録材S上に画像が記録形成される。なお、モノクロの画像形成装置ではブラックの画像形成部のみが存在する。また、Y、M、C、K各色の画像形成部の並び順や構成はこの限りではない。
[現像装置]
次に、本参考例の現像装置1について、図2を用いてより詳細に説明する。現像装置1は、収容部としての現像容器2と、搬送部材としての搬送スクリュー3、4と、現像剤担持体としての現像スリーブ5と、現像バイアス印加手段としての電源6とを備える。本参考例の現像装置1は、縦攪拌型であるため、現像容器2の内部は、その略中央部が紙面に垂直方向に延在する隔壁2cによって現像室2aと攪拌室2bとに上下に区画されている。現像剤は、現像室2a及び攪拌室2bに収容されている。
本参考例では、現像剤として、非磁性のトナーと低磁化高抵抗のキャリアを含む2成分現像剤を用いている。非磁性のトナーは、スチレン系樹脂やポリエステル樹脂等の結着樹脂、カーボンブラックや染料、顔料等の着色剤、ワックス等の離型剤、荷電制御剤等を適当量用いることにより構成される。このような非磁性のトナーは、粉砕法や重合法などの常法により製造することができる。
現像室2a及び攪拌室2bには、搬送スクリュー3、4がそれぞれ配置されている。搬送スクリュー3は、上側の現像室2aの底部に現像スリーブ5の軸方向に沿ってほぼ平行に配置されており、回転して現像室2a内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に攪拌しつつ搬送する。また、搬送スクリュー4は、下側の攪拌室2b内の底部に搬送スクリュー3とほぼ平行に配置され、攪拌室2b内の現像剤を搬送スクリュー3と反対方向に攪拌しつつ搬送する。搬送スクリュー3、4は、駆動手段としてのモータ3aにより回転駆動される。
このように、搬送スクリュー3、4の回転による搬送によって、現像剤が隔壁2cの両端部の開口部(連通部)を通じて現像室2aと攪拌室2bとの間で循環される。この結果、搬送スクリュー3、4により収容部内(現像容器2内)で現像剤が搬送される。また、この際、キャリアとトナーとが現像容器2内で摩擦帯電されることで、トナーが帯電する。本参考例では、負に帯電するトナーを使用する。
また、現像容器2の感光ドラム10に対向した現像領域に相当する位置(現像位置)には開口部があり、この開口部に現像スリーブ5が感光ドラム方向に一部露出するように回転可能に配設されている。現像スリーブ5は、現像容器内で搬送スクリュー3、4により搬送された現像剤を担持して現像位置に搬送し、感光ドラム10の現像領域に現像剤を供給する。現像スリーブ5に担持された現像剤の穂(磁気ブラシ)は、穂切り部材である規制ブレード2dにより長さ(コート量)が規制される。そして、現像スリーブ5に担持され規制ブレード2dにより長さを規制された状態で現像領域に搬送された現像剤の穂を、感光ドラム10と接触させて、感光ドラム10上の静電潜像の現像が行う。現像スリーブ5は、駆動手段としてのモータ5aにより回転駆動される。本参考例では、現像スリーブ5と搬送スクリュー3、4とが、それぞれ別の駆動源により駆動されるため、それぞれ単独で駆動及び停止が可能である。
このような現像スリーブ5は、アルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成され、その内部には磁界手段であるマグネットローラ7が非回転状態で設置されている。このマグネットローラ7は、現像領域における感光ドラム10に対向して配置された現像極S1を有する。また、規制ブレード2dに対向して配置された磁極S2、磁極S1、S2の間に配置された磁極N1、現像室2a及び攪拌室2bにそれぞれ対向して配置された磁極N2及びN3を有している。
このように内部にマグネットローラ7を有する現像スリーブ5は、現像時に図示矢印方向(反時計方向)に回転することにより、現像剤を担持しつつ搬送する。そして、規制ブレード2dによる磁気ブラシの穂切りによって層厚を規制された現像剤を、感光ドラム10と対向した現像領域に搬送し、感光ドラム10上に形成された静電潜像に現像剤を供給して潜像を現像する。
また、現像装置1の上部には、トナーとキャリアを混合した補給用の2成分現像剤を収容するホッパー8が配置される。トナー補給手段を構成するこのホッパー8は、下部に設けられたスクリュー状の搬送部材により、画像形成で消費された現像剤(トナー)を現像容器2内に補給する。
現像時には、電源6により現像スリーブ5と感光ドラム10との間に現像バイアスを印加する。そして、現像スリーブ5により現像位置に搬送された現像剤を、感光ドラム10の帯電電位との電位差との関係で感光ドラム10上に転移させる。また、感光ドラム10上に転移したトナーは、一次転写部T1で一次転写バイアスが印加されることにより中間転写ベルト24に転移する。この点について図3を用いて説明する。
[各部の電位関係]
感光ドラム10の表面は、帯電装置21により負の電位(帯電電位)Vdに帯電されており、露光装置22により露光された個所の露光部電位VLは、0V側へ除電されている。例えば、Vdを−700V、VLを−200Vとする。現像装置1内で負極性に摩擦帯電されたトナーを含む現像剤は、現像スリーブ5によって、感光ドラム10の現像位置に搬送される。この時、現像スリーブ5に印加される現像バイアスVdcは、帯電電位Vdと露光部電位VLの間の電位である。例えば、Vdcを−550Vとする。
これにより、現像スリーブ5上の負に帯電したトナーは、同じく負の現像バイアスVdcによって、帯電電位Vdや現像バイアスVdcよりも、相対的に正電位に近い露光部電位VLに対して、現像バイアスVdcと同電位になるまで飛翔する。即ち、現像バイアスVdcと露光部電位VLの差分である現像潜像電位Vcontと同等分のトナーが感光ドラム10上に載ることになる。このため、現像潜像電位Vcontを調整することで、画像濃度を調整することができる。
次いで、感光ドラム10に飛翔した負極性帯電のトナーは、一次転写部T1において、一次転写ローラ23と中間転写ベルト24との圧力および電界の力によって、中間転写ベルト24に転写される。この際、一次転写ローラ23には、トナーと逆の正極性の一次転写バイアスVtr1が印加される。例えば、Vtr1を+1000Vとする。
[感光ドラム及び中間転写ベルトの駆動構成]
本参考例では、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間で周速差を発生させながら、画像の転写を行うスリップトランスファーと呼ばれる転写方式を採用している。即ち、感光ドラム10と中間転写ベルト24とは、画像を搬送する速度(周速)が異なる。感光ドラム10と中間転写ベルト24の周速差の設定は、例えば、感光ドラム10が中間転写ベルト24よりも0.1〜1.0%程度、速く回転する制御設定とする。なお、中間転写ベルトの方を速くしても良い。
ここで、感光ドラム10と中間転写ベルト24の速度制御について、図4及び図5を用いて説明する。まず、感光ドラム10の速度制御について、図4に示す感光ドラムの駆動部により説明する。
図4の31はモータギア、32、33は速度検知手段としての速度検知センサ、34はエンコーダ、35はドラム駆動ギアである。感光ドラム10は、第1駆動手段としてのドラム駆動モータ10aによって、モータギア31及びドラム駆動ギア35を介して回転駆動される。感光ドラム10の回転軸上にはエンコーダ34があり、エンコーダ34の回転を2つの速度検知センサ32、33で監視している。速度検知センサ32、33は、感光ドラム10の速度をパルスとしてカウントし、感光ドラム10の回転速度を速度検知信号α1、α2として、速度制御コントローラ30にフィードバックし速度制御が行われる。本参考例では、2つの速度検知センサ32、33から得られる速度の平均値を用いて速度制御を行っている。これにより、エンコーダ34の偏心や振れの成分を除去するようにしている。なお、速度検知センサは1個としても良い。
次に、中間転写ベルト24の速度制御について、図5に示す中間転写ベルトの駆動部により説明する。図5の36はモータギア、37、38は速度検知手段としての速度検知センサ、39はエンコーダ、40はITB(中間転写ベルト)駆動ローラ、41、42はITB駆動ギアである。
中間転写ベルト24は、無端状のベルトからなり、第2駆動手段としてのITB駆動モータ24aによってITB駆動ローラ40が、モータギア36及びITB駆動ギア42、41を介して回転駆動されることで、搬送される。ITB駆動ローラ40の回転軸上にはエンコーダ39があり、エンコーダ39の回転を2つの速度検知センサ37、38で監視している。速度検知センサ37、38はITB駆動ローラ40の速度をパルスとしてカウントし、ITB駆動ローラ40の回転速度を速度検知信号β1、β2として、速度制御コントローラ43にフィードバックし速度制御が行われる。これにより、エンコーダ39の偏心や振れの成分を除去するようにしている。なお、速度検知センサは1個としても良い。
画像形成装置の動作中において、感光ドラム10と中間転写ベルト24には、それぞれ定速回転に対して外乱となる様々な負荷変動が生じる。本参考例では、負荷変動が生じても、画像位置(色ずれ)の精度を高める為に、感光ドラム10及び中間転写ベルト24の回転速度をそれぞれ一定に保つように制御を行っている。
感光ドラム10と中間転写ベルト24とにかかる負荷変動は、例えば以下のものが挙げられる。例えば、周速差を設けて回転する感光ドラム10と中間転写ベルト24との接触部に生じる負荷変動がある。それは、互いに回転するもの同士の微小なスティックスリップによる摩擦変動や、一次転写バイアスの印加によって、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に生じる静電的な吸着力により互いのグリップ力が上がる為に起こる摩擦変動などがある。また、トナーは感光ドラム10と中間転写ベルト24との両者間の潤滑剤として働いているため、トナーの有無は摩擦力の変化に大きな影響を及ぼす。
[通常の画像形成シーケンス]
上述したように、現像および転写動作は各部材の電位差によって行われている。そのため、少しでも各部材を帯電したり駆動したりするタイミングがずれると、予期せぬタイミングでトナーが感光ドラム10上に飛翔したりする。このため、本参考例の通常の画像形成動作では、上記駆動およびバイアス印加のタイミングを調整したシーケンスが設けられている。
図6により、本参考例の通常の画像形成シーケンス(画像形成ジョブ)について説明する。なお、図6では、2つの画像を連続して形成するJOBのシーケンスを示している。ここでは、前回転、画像形成、紙間、後回転の4つの期間について説明する。前回転とは、画像形成動作に先立ち各駆動や高圧をONにする期間である。画像形成とは、実際に感光ドラム10上に潜像を形成しトナーで現像して可視化する期間をいう。紙間とは、連続して画像形成を行っている画像間、即ち、連続画像形成動作において画像と次の画像との間の画像形成を行わない期間をいう。後回転とは、画像形成完了に続いて感光ドラム10等の回転を一定時間継続する期間をいう。
前回転動作では、まず感光ドラム10及び中間転写ベルト24を駆動(ON)させた後、帯電バイアスを印加(ON)する。次いで、感光ドラム10上の帯電部が一次転写部T1に来た際に一次転写バイアスをONする。最後に、現像スリーブ5の駆動と現像バイアスをONする。
画像形成では、帯電した感光ドラム10に対して、露光装置22からレーザで露光(ON)して潜像を作成し、現像位置で現像スリーブ5上のトナーで可視化した後、一次転写部T1でトナーを中間転写ベルト24に転写する。
紙間では、露光をOFFするが、その他の駆動およびバイアスは画像形成期間と同一の状態を維持する。
後回転では、露光、現像スリーブ5の駆動、現像バイアス、一次転写バイアス、帯電バイアスの順でOFFした後、感光ドラム10と中間転写ベルト24を停止(OFF)する。
[紙間が長くなった場合の一般的なシーケンス]
次に、2枚プリント時の紙間が、高圧制御や複数の給紙カセットの切り替え等で、時間が長くなった場合の、一般的なシーケンスについて、図7により説明する。ここでは、図6と重複する前回転および画像形成、後回転の説明は省略する。図6で示したシーケンスとの大きな差は、画像形成と画像形成の間の紙間の期間が、通常の紙間とは異なり、画像形成動作を必要としない各種の制御を行うための制御時間となっていることである。このように、各種の制御や複数の給紙カセットの切り替え等と言った画像形成動作を必要としない制御時間が発生した場合は、図7に示すように現像スリーブの駆動及び現像バイアスをOFFする。これは、現像剤劣化をできるだけ抑制するためである。
しかしながら、上述のように現像スリーブの駆動を停止させると、色ずれや画像ムラといった画像不良が生じる場合がある。この点について、以下に説明する。
[現像スリーブ停止による色ずれや画像ムラの発生メカニズム]
上述の図7に示した紙間シーケンスや、前述の特許文献1に記載された構造のように、現像スリーブの駆動を停止させた際の色ずれや画像ムラが生じるメカニズムについて、図8ないし図10を用いて説明する。
図6に示したように、通常の画像形成シーケンスやその紙間においては、現像スリーブの駆動および現像バイアスが常に動作している為、感光ドラム10上には、トナーが常に存在する状態となる。プリント画像がない領域においても、感光ドラム10上には微少のかぶりトナーが存在する。そのような状態を図8(a)に示す。
一方、図7に示したように紙間制御で現像スリーブの駆動をOFFした場合、図8(b)に示すように、感光ドラム10上に存在していたかぶりトナーがなくなってしまう。感光ドラム10上のかぶりトナーがなくなると、感光ドラム10と中間転写ベルト24との摩擦力が急激に増加する。
感光ドラム10と中間転写ベルト24との摩擦力が増加すると、相対的に速度が速い感光ドラム10が中間転写ベルト24を強く引っ張る状態となり、中間転写ベルト24を駆動するITB駆動モータ24aの負荷が急激に減少する。更に、その状態が一定時間以上続き、ITB駆動モータ24aの負荷が一定以上なくなる(負荷がほぼ0に近い状態になる)と、前述した中間転写ベルト24の速度制御が不能な状態に陥ってしまう場合がある。
つまり、感光ドラム10が中間転写ベルト24を引っ張る状態になると、ドラム駆動モータ10aの負荷が上昇した分、ITB駆動モータ24aの負荷が減少する。ITB駆動モータ24aの負荷が一定以上なくなると、ITB駆動モータ24aの駆動電流がほぼ0に近い状態となり、仕事をしない状態に陥ってしまう。言い換えれば速度制御が不能な状態に陥ってしまうことになる。
その様子を、図9を用いて説明する。紙間制御で現像スリーブの駆動及び現像バイアスをOFFすると、感光ドラム10上に殆どトナーが供給されなくなる。そして感光ドラム10上のかぶりトナーがなくなってから、図中Aの時間経過後に感光ドラム10と中間転写ベルト24間のトナーもなくなる。図中Aの区間は、感光ドラム10の周方向における現像スリーブ5から一次転写ローラ23までの距離に相当する時間である。
図中Aの時間が経過し、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のトナーがなくなると、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間の摩擦力が、図中Bに示す区間で増加する。図中Bの区間では、図8(a)の状態から図8(b)の状態に変化していることになる。その間、感光ドラム10と中間転写ベルト24の相対的に速度の速い感光ドラム10が中間転写ベルト24を引っ張る形となるため、図9に示すように、Bの区間でITB駆動モータ24aの駆動電流値は減少し、最終的にはほぼ0に近い状態となる。ITB駆動モータ24aの駆動電流値がほぼ0に近い状態とは、上述のように仕事をしない状態であり、その状態では速度制御が不能となる。
そして、現像スリーブの駆動及び現像バイアスを再びONすると、図中Cの時間経過後に、感光ドラム10と中間転写ベルト24の間にかぶりトナーが存在する状態となる。図中Cの区間は、図中Aの区間と同様に、感光ドラム10の周方向における現像スリーブ5から一次転写ローラ23までの距離に相当する時間である。
かぶりトナーが感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に再び到達したタイミングで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との摩擦力が減少する。このため、このタイミングで再びITB駆動モータ24aに負荷が発生することになる。このとき、図中Bの区間でITB駆動モータ24aが制御不能な状態に陥ってしまっていた場合、ITB駆動モータ24aに再び負荷が発生する負荷変動によって、図中Dの区間以降でITB駆動モータ24aは速度変動を起こしてしまう。
ITB駆動モータ24aが速度変動を起こしてしまった際の、部分的な速度変動とその時の色ずれの拡大図を図10に示す。図10に示すように、速度正常時に対して、速度異常時になると、ITB駆動モータ24aの速度変動に伴う中間転写ベルト24の速度変動に応じて、YMCKの順が入れ換わるような色ずれが発生してしまう。単色画像の場合は、画像ムラとなってしまう。
上述した負荷変動は、感光ドラム10と中間転写ベルト24の間にかぶりトナーが突入するタイミング以外に、前述した感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のスティックスリップによっても生じ得る。即ち、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にトナーがない状態では、スティックスリップが生じ易くなり、上述した負荷変動も生じ易くなる。そして、ITB駆動モータ24aが速度制御不能な際に、これらの負荷変動が起こると、色ずれや画像ムラを発生させてしまう。
[本参考例の現像スリーブ停止時のシーケンス]
本参考例では、制御手段としての制御部200(図2)は、連続して画像形成を行っている画像間(紙間)で、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止する現像剤担持体停止モードを実行可能としている。ここで、現像剤担持体停止モードでは、例えば、以下のような動作を実行する。まず、前述の特許文献1に記載されているように、現像容器2内の現像剤の不動層を崩すために、紙間で、搬送スクリュー3、4の駆動を継続しつつ、現像スリーブ5の駆動を停止する。また、前述の図7に示したように、紙間で画像形成動作を必要としない制御時間が発生した場合に、現像剤劣化を抑制するために、現像スリーブの駆動及び現像バイアスをOFFする。感光ドラム10及び中間転写ベルト24の回転駆動は、紙間でも継続される。
制御部200は、このような現像剤担持体停止モードから現像スリーブ5による現像剤の搬送を再開した際に、感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度の変化が低減されるように、以下のような制御を行っている。即ち、現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との当接状態を、通常画像転写時に対して変更するようにしている。ここで、通常画像転写時とは、感光ドラム10で、帯電、露光、現像の各プロセスを経て形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写するとき、即ち、感光ドラム10に形成された画像を中間転写ベルト24に転写するときである。
本参考例では、制御部200は、一次転写バイアスを印加する電源23aを制御して、現像剤担持体停止モードで一次転写部T1に印加する一次転写バイアスを、通常画像転写時の一次転写バイアスよりも低くしている。即ち、一次転写バイアスを変更することで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間の静電吸着力が変化し、当接状態が変更される。
このために制御部200は、現像装置1の搬送スクリュー3、4を駆動するモータ3a、現像スリーブ5を駆動するモータ5a、現像バイアスを印加する電源6、一次転写バイアスを印加する電源23aを制御する。そして、現像剤担持体停止モードで、不動層を崩すモードを実行する場合には、制御部200が、紙間で搬送スクリュー3、4の駆動を継続しつつ、現像スリーブ5の駆動を停止する。また、紙間で画像形成動作を必要としない制御時間が発生した場合には、制御部200が、現像剤劣化を抑制するために、現像スリーブの駆動及び現像バイアスをOFFする。更に、このような現像剤担持体停止モードで、制御部200が、一次転写部T1に印加する一次転写バイアスを、通常画像転写時の一次転写バイアスよりも低くしている。具体的には、現像剤担持体停止モードでは、一次転写部T1に一次転写バイアスを印加しないように(OFF)している。
このような本参考例のシーケンスについて、図11を用いて説明する。図11に示すように、紙間で現像スリーブ5の駆動及び現像バイアスがOFFされた後に、一次転写バイアスをOFFしている。そして、紙間での制御が終了し、現像スリーブ5の駆動及び現像バイアスがONされると、一次転写バイアスをONして、通常画像転写時の一次転写バイアスを一次転写部T1に印加するようにしている。その後、次の画像形成動作が行われる。
ここで、一次転写バイアスを変更(OFF)するタイミングは、図11のAの区間、つまり、現像スリーブ5の駆動及び現像バイアスをOFFしてから感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーが殆どなくなるまでの時間内とする。即ち、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止するのと同時又はそれ以降で、且つ、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止することで感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーが殆どなくなるのと同時又はそれ以前とする。ここで、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止することで感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーが殆どなくなるのと同時又はそれ以前とは、次のようなタイミングである。まず、現像スリーブ5による現像剤の搬送停止中に現像スリーブ5と対向する位置(現像位置)を通過した感光ドラム10の領域を停止中通過領域とする。そして、この停止中通過領域の感光ドラム10の搬送方向下流端(回転方向先端)が、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間を通過するのと同時又はそれ以前のタイミングで、一次転写バイアスを変更する。言い換えれば、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止したときに現像スリーブ5と対向していた感光ドラム10の位置が、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間を通過するのと同時又はそれ以前のタイミングで、一次転写バイアスを変更する。
このような時間内に一次転写バイアスをOFFすると、負荷変動が少なくなるため、最も良い。即ち、この時間内では、かぶりトナーが画像形成中の状態からなくなる状態に変化する。したがって、この時間内で一次転写バイアスをOFFすることで、かぶりトナーがなくなることによる摩擦力の増加と、一次転写バイアスOFFの静電吸着力を下げることによる摩擦力の減少を、ほぼ同時のタイミングで行える。この結果、互いの摩擦変動が打ち消し合い、摩擦力の変化が低減される。
しかし、一次転写バイアスを変更するタイミングは、必ずしもこの時間内に限られる必要はない。例えば、一次転写バイアスを変更するタイミングが、現像スリーブ5の駆動停止のタイミング、又は、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーが殆どなくなるタイミングの近傍であれば、摩擦力の変化の低減と言う効果を得ることできる。
一方、一次転写バイアスをONする、即ち、一次転写バイアスを通常画像転写時の状態に戻すタイミングは、図11のBの区間以降、つまり、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが到達してから行うこととする。即ち、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止してから再度搬送を開始することで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが到達するのと同時又はそれ以降とする。言い換えれば、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止してから再度搬送を開始したときに現像スリーブ5と対向していた感光ドラム10の位置が、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に到達するのと同時又はそれ以降とする。勿論、一次転写バイアスをONするタイミングは、この条件を満たし、且つ、現像スリーブ5による現像剤の搬送を再度開始した後、最初に感光ドラム10に形成された画像が感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に到達する前とする。
このような時間内に一次転写バイアスをONすると、負荷変動が少なくなるため、最も良い。即ち、かぶりトナーが到達してから、一次転写バイアスをONすることで、一次転写バイアスによる静電吸着力の影響を抑制でき、摩擦力の変化が低減される。
しかし、一次転写バイアスを通常画像転写時の状態に戻すタイミングは、必ずしもこのようなタイミングに限られる必要はない。例えば、一次転写バイアスを通常画像転写時の状態に戻すタイミングが、現像スリーブ5及び現像バイアスのONタイミング近傍から、次の画像に影響がないタイミングであれば、同様の効果を得ることができる。
本参考例では、上述の一次転写バイアスのON、OFFを各画像形成部毎に順次行うようにしている。即ち、各画像形成部でトナー画像が形成されるタイミング及び紙間のタイミングが異なり、中間転写ベルト24の回転方向下流側ほど、タイミングが遅くなる。したがって、それぞれのタイミングで上述したシーケンスを実行する。前述したように、本参考例では、各画像形成部で一次転写バイアスを印加する電源23aを別々としているため、異なったタイミングで一次転写バイアスを印加するタイミングと異ならせることができる。
なお、全ての画像形成部の一次転写部に一次転写バイアスを印加する電源を共通とした場合、一次転写バイアスのON、OFFを次のようにすることが好ましい。まず、一次転写バイアスをOFFするタイミングは、最も早くに感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーがなくなる画像形成部のタイミングに合わせることが好ましい。一方、一次転写バイアスをONするタイミングは、全ての画像形成部で、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが到達するタイミングに合わせることが好ましい。
本参考例の場合、現像剤の搬送を再開した際に、感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度の変化が低減されるように、現像剤担持体停止モードで感光ドラム10と中間転写ベルト24との当接状態を通常画像転写時に対して変更している。即ち、現像剤担持体停止モードで、一次転写バイアスをOFFしている。このため、現像スリーブ5による現像剤の搬送を停止した状態から再開させた場合でも、感光ドラム10と中間転写ベルト24とのうちの速度が遅い側の部材(本参考例では中間転写ベルト24)の負荷変動を低減できる。この結果、速度が遅い側の部材(中間転写ベルト24)の速度変動による画像ムラや色ずれが生じることを低減できる。
即ち、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーがなくなっても、一次転写バイアスによる静電的な吸着力を減少させることで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間の摩擦力を減少させることができる。具体的には、図8(b)に示したように、現像剤担持体停止モードでは、かぶりトナーがなくなって、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間の摩擦力が増加する。これに対して、本実施形態では、一次転写バイアスをOFFすることによって、図12に示すように、その分の摩擦力を減少させて、相対的に摩擦力の変化を低減させている。
このように摩擦力の変化を低減すると、図11に示すように、ITB駆動モータ24aの駆動電流が減少して速度制御不能な状態に陥ることがない。即ち、かぶりトナーがなくなる状態になっても、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間の摩擦力が急激に増加することはなくなり、ITB駆動モータ24aが安定して速度制御を行うことができる。この結果、現像剤の搬送を再開した際に、感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度の変化が低減され、前述した図9のDの区間以降での速度変動による色ずれや画像ムラの発生を抑制することができる。
このように本参考例によれば、感光ドラム10及び中間転写ベルト24の回転中に現像スリーブを停止させても、感光ドラム10及び中間転写ベルト24を安定して回転制御でき、色ずれのない高品位な画像を提供することができる。
[参考例1の別例]
上述の参考例1では、現像剤担持体停止モードで一次転写バイアスをOFFすることとしたが、一次転写バイアスを通常画像転写時よりも低下させるだけでも良い。即ち、一次転写バイアスを通常画像転写時よりも低下させることで、感光ドラム10と中間転写ベルト24の静電吸着力が低下するため、同様の効果を得られる。その様子を図13に示す。
図13に示すように摩擦変動はなくならなくても、速度変動に対しては、十分に抑制することができる。その他の詳細な内容については、一次転写バイアスをOFFするか低下させるかの違いを除いて、上述の参考例1と同様のため、説明は省略する。
また、現像剤担持体停止モードで、全ての画像形成部において一次転写バイアスをOFF又は通常画像転写時よりも低下させることが好ましいが、少なくとも1つの画像形成部で一次転写バイアスをOFF又は通常画像転写時よりも低下させても良い。
また、上述の参考例1では、感光ドラム10が中間転写ベルト24よりも相対的に速い系について説明を行ったが、中間転写ベルト24が感光ドラム10よりも速い系においても、同様の現象が発生する可能性がある。このため、その場合にも、同様に制御を行うことで、同様の効果を得られる。
<参考例2>
本発明の参考例2について、図14を用いて説明する。本参考例では、参考例1で説明した紙間の制御で現像スリーブの駆動をOFFした際に、一次転写ローラ23を離間させるようにしている。本参考例では、この紙間の制御の際に、図14に示すように、フルカラーモードから白黒モードに移行するように、Y、M、Cの一次転写ローラ23Y、23M、23Cを感光ドラム10Y、10M、10Cから離間させている。これにより、感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24を非接触状態としている。
即ち、本参考例の画像形成装置100Aは、フルカラーモードと白黒モードとを実行可能で、フルカラーモードでは、Y、M、C、Kの全色で画像形成を行い、白黒モードでは、Kの単色で画像形成を行う。このため、フルカラーモードでは、全ての画像形成部の一次転写ローラ23Y、23M、23C、23Kが中間転写ベルト24を介してそれぞれ感光ドラム10Y、10M、10C、10Kに当接させる。これに対して、白黒モードでは、Kの画像形成部の一次転写ローラ23Kのみを中間転写ベルト24を介して感光ドラム10Kに当接させ、それ以外の画像形成部の一次転写ローラを離間させている。これにより、画像形成に使用しない画像形成部の駆動を停止でき、各部材の消耗を抑制できる。
このように、白黒モードで一次転写ローラ23Y、23M、23Cを感光ドラム10Y、10M、10Cから離間させるべく、本参考例の画像形成装置100Aは、次のような構成を有する。即ち、一次転写部T1Y、T1M、T1Cは、一次転写ローラ23Y、23M、23Cと、接離手段としての接離機構50とを有する。
一次転写ローラ23Y、23M、23Cは、各感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24を介してそれぞれ当接又は離間可能に配置され、通常画像転写時に当接する。具体的には、画像形成装置100Aの本体の固定部分に回動自在に支持されたフレーム51に、各感光ドラム10Y、10M、10Cに向けて付勢するばねを介して回転自在に支持されている。なお、フレーム51には、中間転写ベルト24を張架する張架ローラのうち、一次転写ローラ23Yの上流に配置される張架ローラ24bも支持する。
接離機構50は、一次転写ローラ23Y、23M、23Cを各感光ドラム10Y、10M、10Cに中間転写ベルト24を介してそれぞれ当接又は離間させるものである。このよう接離機構50は、フレーム51に当接する偏心カム52と偏心カム52を回転駆動するモータ53とを有する。フレーム51は、不図示のばねなどの付勢手段により偏心カム52に向けて付勢されている。制御手段としての制御部200Aは、モータ53により偏心カム52を回転させることでフレーム51を回動させる。フレーム51には、上述のように一次転写ローラ23Y、23M、23C及び張架ローラ24bが支持されている。このため、フレーム51の回動により、一次転写ローラ23Y、23M、23Cと共に中間転写ベルト24が各感光ドラム10Y、10M、10Cにそれぞれ当接又は離間する。
本参考例では、制御部200Aは、接離機構50を制御して、現像剤担持体停止モードで一次転写ローラ23Y、23M、23Cを離間させることにより、感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24との当接状態を変更している。即ち、フルカラーモードの紙間で白黒モードとすることで、感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24とを非接触としている。
このように、フルカラーモードにおける現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24とを非接触状態としている。これにより、前述の図8(b)で示した感光ドラム10Y、10M、10Cと中間転写ベルト24との摩擦力は、そもそも存在しないことになる。このため、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間で摩擦力が生じているのはK一色のみとなる。この結果、摩擦力は全体として減少するため、参考例1と同様の効果を得ることができる。
また、このような一次転写ローラを離間させるタイミング、及び、現像剤担持体停止モードが終了して画像形成を行うべく、再び、一次転写ローラを当接させるタイミングは、参考例1と同様である。例えば、一次転写ローラの離間タイミングは、現像スリーブの駆動及び現像バイアスがOFFしてから、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーがなくなるまでの間とすることが最も効果的である。また、離間状態からの復帰タイミングは、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーがくるタイミング以降とすることが最も効果的である。
なお、一次転写ローラの接離動作については、上述のように、モータ53や偏心カム52の組合せで行うことができるが、これに限られたものではない。例えば、フレーム51をリニアモータなどのアクチュエータで移動させるようにしても良い。また、各一次転写ローラを個々にカムやアクチュエータで移動させるようにしても良い。
また、本参考例では、一次転写ローラの接離動作は、フルカラーモードと白黒モードの切り替え動作を例として挙げたが、これに限られるものではなく、一色のみ、または全色の一次転写ローラを離間しても効果が得られることは言うまでもない。即ち、現像剤担持体停止モードで、複数の画像形成部のうちの少なくとも1つの画像形成部の一次転写ローラ23を離間させることにより、感光ドラム10と中間転写ベルト24との当接状態を変更すれば良い。その他の構造及び作用は、上述の参考例1と同様である。
また、本参考例のように、現像剤担持体停止モードで、一次転写ローラを離間させることに加えて、参考例1のように一次転写バイアスを低くしても良い。即ち、白黒モードとした場合に、K色の一次転写ローラ23Kに印加する一次転写バイアスを低くしても良い。要は、本参考例は、上述の参考例1と適宜組み合わせて実施できる。
<実施形態>
本発明の実施形態について、図1、図2、図4及び図5を参照しつつ、図15を用いて説明する。本実施形態では、参考例1で説明した紙間の制御で現像スリーブの駆動をOFFした際に、感光ドラム10と中間転写ベルト24との速度設定を、互いに周速差が少なくなる側に変更している。即ち、制御部200は、第1駆動手段としてのドラム駆動モータ10aと第2駆動手段としてのITB駆動モータ24aとのうちの少なくとも何れかを制御する。そして、現像剤担持体停止モードでの感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度差(第2周速差)を、通常画像転写時での相対速度差(第1周速差)よりも低く(小さく)する。即ち、現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度の状態を、通常画像転写時に対して変更する。
本実施形態では、図15に示すように、紙間で、相対的に速い感光ドラム10の周速を遅くし、相対的に遅い中間転写ベルト24の周速を速くして、互いの周速差を小さくしている。このために制御部200は、図4及び図5に示した速度制御コントローラ30、43の速度設定を変更可能である。なお、このような紙間での制御の感光ドラム10及び中間転写ベルト24の速度設定の変更は、どちらか一方であっても、相対的な周速差が変われば良いものとする。
また、このような感光ドラム10及び中間転写ベルト24の速度設定の変更のタイミング、及び、現像剤担持体停止モードが終了して画像形成を行うべく、再び、速度設定を戻すタイミングは、参考例1と同様である。即ち、現像剤担持体停止モード時において、現像スリーブによる現像剤の搬送が停止しているときに現像位置を通過する感光ドラム10の領域が、転写部を通過する期間に感光ドラム10と中間転写ベルト24を駆動させるとともに、感光ドラム10と中間転写ベルト24との周速差を第1速度差よりも小さい第2速度差に変更する、もしくは、周速差をゼロに変更するようにドラム駆動モータ10aとITB駆動モータ24aを制御する。例えば、感光ドラム10及び中間転写ベルト24の速度設定の変更(第2周速差に変更、もしくは、周速差をゼロに変更)のタイミングは、現像スリーブの駆動及び現像バイアスがOFFしてから、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間のかぶりトナーがなくなるまでの間とすることが最も効果的である。また、感光ドラム10及び中間転写ベルト24の速度設定を戻す(第1周速差に変更する)タイミングは、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが再びくるタイミング以降とすることが最も効果的である。
また、速度設定の変更、即ち、図15のEに示す速度目標値の変更値は、感光ドラム10と中間転写ベルト24との周速差がちょうど0になるように設定すると最も効果的である。
更に、速度設定の変更のタイミング及び速度設定を戻すタイミングは、全ての画像形成部で同じとしても良いし、異ならせても良い。要は、上述のかぶりトナーが感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に存在するか否かを考慮して、適宜タイミングを設定すれば良い。例えば、画像形成部毎にタイミングを異ならせる場合、各画像形成部でトナー画像が形成されるタイミング及び紙間のタイミングが異なるため、中間転写ベルト24の回転方向下流側ほど、タイミングが遅くなる。また、全ての画像形成部でタイミングを同じとする場合、次のようにすることが好ましい。まず、速度設定を変更するタイミングは、最も早くに感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーがなくなる画像形成部のタイミングに合わせることが好ましい。一方、速度設定を戻すタイミングは、全ての画像形成部で、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが到達するタイミングに合わせることが好ましい。
このように、現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との周速差を小さくする若しくは0にすることで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との引っ張りあいが抑制され、摩擦力の変化が少なくなる。そうすることで、例えば参考例1で説明したように、ITB駆動モータ24aが制御不能に陥ることもなくなり、画像形成区間において、中間転写ベルト24を安定して回転させることができ、参考例1と同様の効果が得られる。その他の構造及び作用は、上述の参考例1と同様である。
また、本実施形態のように、現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との周速差を小さくする若しくは0にすることに加えて、参考例1のように一次転写バイアスを低くしても良い。また、参考例2のように、白黒モードとした場合に、K色の感光ドラム10Kと中間転写ベルト24との周速差を小さくする若しくは0にするようにしても良い。要は、本実施形態は、上述の参考例1及び参考例2と適宜組み合わせて実施できる。
なお、現像剤担持体停止モードで、感光ドラム10及び中間転写ベルト24の駆動を停止することにより、感光ドラム10と中間転写ベルト24との相対速度の状態を変更するようにしても良い。即ち、現像剤担持体停止モードで、一度、ドラム駆動モータ10aとITB駆動モータ24aを停止することで、そもそも速度変動の影響を受けないようにして、色ずれや画像ムラの発生を防止しても良い。
<参考例3>
本発明の参考例3について、図1及び図2を参照しつつ、図16を用いて説明する。本参考例では、参考例1で説明した紙間の制御で現像スリーブの駆動をOFFした際に、図9で説明した中間転写ベルト24の速度変動が収まるまで紙間時間を広げるようにしている。即ち、現像剤担持体停止モードを実行し、再度、現像スリーブ5による現像剤の搬送を開始することで、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが到達してから所定時間経過した後に、紙間後の画像形成を行う。言い換えれば、再度、現像スリーブ5による現像剤の搬送を開始したときに現像スリーブ5と対向していた感光ドラム10の位置が、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間に到達してから所定時間経過した後に、紙間後の画像形成を行う。具体的には、図16に示すように、紙間時間を、図9で説明した中間転写ベルト24の速度変動が収まるまでの所定時間(延長時間)分長くして、現像スリーブ5による現像剤の搬送を再度開始した後の最初の画像形成を行う。言い換えれば、中間転写ベルト24の速度変動が収まるまで、紙間時間を延長する。
このように、中間転写ベルト24の速度変動が収まるまで時間延長して次の画像形成動作を待てば、そもそも速度変動の影響を受けないため、色ずれや画像ムラの発生を防止することができる。その他の構造及び作用は、上述の参考例1と同様である。
<参考例4>
本発明の参考例4について、図1及び図2を参照しつつ、図17ないし図19を用いて説明する。本参考例では、参考例1で説明した紙間の制御で現像スリーブの駆動をOFFした際に、現像バイアスを通常画像転写時よりも感光ドラム10の帯電電位(所定電位)に近づけるようにしている。
即ち、参考例1では、現像スリーブの駆動が紙間の調整などで停止した際に、一次転写バイアスをOFFすることで、感光ドラム10若しくは中間転写ベルト24の速度ブレを抑制した。しかしながら、一次転写バイアスの高圧基板の特性によっては、高圧をOFF及びONした場合に、ある程度の緩和時間τが生じるものがあり、現像スリーブの駆動が停止する時間内にOFF又はONしきれないことがある。
例えば、図17に示すように、制御信号として一次転写バイアスOFFの信号が入ってから、実際の電圧値が0Vになるまで1s強の時間がかかる場合がある。また、制御信号がONしてから実際の電圧値が所望値になるまでの時間も、約500ms程かかる場合がある。これは、高圧基板の容量などによって充電および放電に時間がかかることに由来するものである。
このような高圧基板を用いた場合、参考例1のように、現像剤担持体停止モードで一次転写バイアスをOFFする構成を採用すると、実際の電圧値の変化が送れるため、効果を十分に得られない可能性がある。また、効果を十分に得るためには、紙間時間を長くする必要がある。
そこで、本参考例では、上述の様な高圧基板を用いている場合を想定して、現像剤担持体停止モードで、一次転写バイアスを変更せずに、現像バイアスを変更している。そして、紙間で、現像スリーブの駆動が停止している間、帯電電位Vdと現像バイアスVdcの差分を小さくして、現像スリーブの駆動が停止している間も、かぶりトナーを感光ドラム10上に供給するようにしている。
即ち、現像スリーブ5の表面には、現像後であってもトナーが残っているため、現像バイアスを通常画像転写時よりも感光ドラム10の帯電電位に近づけることにより、残っているトナーが感光ドラム10に転移し易くなる。この結果、現像スリーブ5の駆動を停止していても、感光ドラム10にかぶりトナーを供給できる。
図18により本参考例のシーケンスを説明する。参考例1と同様に、紙間で調整が入って紙間時間が長いと判断された場合、現像スリーブの駆動を停止する。この時、本参考例では現像バイアスをOFFするのではなく、通常画像転写時の−550Vから−600Vにする。これにより、感光ドラム10の帯電電位Vdと現像バイアスVdcの電位差Vbackを小さくして、現像スリーブ5が停止している状態でもかぶりトナーが感光ドラム10に飛翔し易くなる。
本参考例では、このように、現像剤担持体停止モードで、現像バイアスを変更して感光ドラム10にかぶりトナーを供給するようにしている。感光ドラム10にかぶりトナーが供給されれば、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーが供給され、摩擦力の変化が少なくなる。この結果、参考例1と同様に、中間転写ベルト24の速度変動を抑えられ、色ずれや画像ムラを低減できる。
図19に、現像スリーブの駆動をONした場合とOFFした場合とでの、電位差Vbackとかぶりトナー量の関係図を示す。かぶりトナー量については、(有)東京電色の反射濃度計TC−6MC−Dを使用して計測した。ここでは、数値が高いほど、かぶり量が多いことを示している。
図19から、現像スリーブの駆動がONしている状態と、現像スリーブの駆動がOFFしている状態で、かぶり量が異なっていることが分かる。本参考例では、感光ドラムの帯電電位Vdと現像バイアスVdcの差分Vbackは、通常(即ち、現像スリーブの駆動ON)150Vで、かぶり量は1.5%である。しかし、現像スリーブの駆動が停止していると、同じVback150Vだと、かぶり量は0.3%とかなり減少し、ほぼかぶりトナーが無い状態と等しくなる。
そこで、本参考例では、現像スリーブの駆動が停止している状態の時のみ、現像バイアスVdcを−600Vにして、Vbackを150Vから100Vにしている。これにより、図19に示すように、かぶり量を現像スリーブの駆動ON時と同等の1.5%にすることができる。この結果、現像スリーブ5の駆動が停止しているにも拘らず、感光ドラム10と中間転写ベルト24との間にかぶりトナーを供給でき、中間転写ベルト24の速度変動を抑えられ、色ずれや画像ムラを低減できる。その他の構造及び作用は、上述の参考例1と同様である。
また、本参考例のように、現像剤担持体停止モードで、現像バイアスを変更することに加えて、参考例1のように一次転写バイアスを低くしても良い。また、参考例2のように、白黒モードとした場合に、K色の現像バイアスを変更しても良い。また、実施形態のように、感光ドラム10と中間転写ベルト24との周速差を小さくする若しくは0にすると共に、現像バイアスを変更しても良い。要は、本参考例は、上述の参考例1、参考例2及び実施形態と適宜組み合わせて実施できる。
<他の実施形態>
上述の各参考例及び実施形態では、中間転写ベルトの方が感光ドラムよりも遅い場合について説明したが、感光ドラムの方が遅い場合でも、勿論、本発明を同様に適用できる。この場合、感光ドラムの速度変動が抑えられることで、色ずれや画像ムラを低減できる。また、上述の各参考例及び実施形態では、本発明を中間転写方式の画像形成装置に適用した場合について説明した。但し、本発明は、像担持体から直接記録材に画像を転写する直接転写方式の画像形成装置にも適用可能である。この場合、記録材を搬送する記録材搬送ベルトなどの搬送部材が画像搬送体となる。この構成の場合、通常画像転写時とは、像担持体に形成された画像が記録材に転写される時である。また、中間転写方式であっても、中間転写体は、中間転写ベルト以外にドラム状に形成された中間転写ドラムであっても良い。また、本発明は、上述のようなフルカラーの画像形成装置以外に、単色の画像形成装置にも適用可能である。