JP6024682B2 - 車両走行制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自車の前方を走行する先行車に追従する追従制御を実行する車両走行制御装置に関する。
車を運転するドライバの操作負担を軽減する技術の一つとして、自車の前方を走行する先行車から追従対象車を選択し、自車と追従対象車との車間距離を一定に保持するように車速等を制御して自動的に追従させる車両走行制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示されている技術では、追従制御中にドライバが加速操作または減速操作を実行すると追従制御を中止し、ドライバによる加速操作または減速操作が終了して自車と追従対象車との相対速度が0になったときの実車間距離に基づいて目標車間距離を変更して追従制御に復帰する。これにより、追従制御に復帰したときに、目標車間距離を保持するための追従制御による加速および減速を低減しようとしている。
特開2010−143323号公報
追従制御中にドライバによる加速操作または減速操作が終了するとき以外にも、追従対象車と自車との間に他車が進入して進入車が追従対象車となるとき、あるいはドライバがスイッチなどを操作して追従制御を開始するときなど、追従対象車と自車との相対速度が徐々に変化するのではなく不連続に変化することがある。相対速度が正の場合は追従対象車の方が自車より速度が速く離れる状態であり、相対速度が負の場合は追従対象車の方が自車より速度が遅く近づく状態である。
通常の追従制御では、追従対象車と自車との相対速度が不連続に変化すると、追従対象車に自車を追従させようとして自車の目標加速度を不連続に変化させて自車を急激に加速または減速させるので、追従制御による加速ショックまたは減速ショックが発生し、ドライバビリティが低下する。
特許文献1の技術は、追従制御中にドライバによる加速操作または減速操作が終了して追従制御に復帰したときに、追従制御による加速および減速を低減することを制御対象としているが、それ以外に目標加速度が不連続に変化する場合の追従制御による加速ショックまたは減速ショックを低減することは制御対象としていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、自車が追従対象車を追従するときに目標加速度が不連続に変化する事象が発生するときに、追従制御による加速ショックまたは減速ショックを低減する車両走行制御装置を提供することを目的とする。
本発明の車両走行制御装置は、自車の前方を走行する先行車の中から選択された追従対象車に自車を追従して走行させる追従制御を実行する車両走行制御システムに適用され、相対速度取得手段と、加速度設定手段と、検出手段と、ゲイン補正手段とを備えている。
相対速度取得手段は、自車に対する追従対象車の実相対速度を取得し、加速度設定手段は、相対速度ゲインと相対速度取得手段が取得する実相対速度との積に基づいて、自車が追従対象車を追従するときの目標加速度を設定し、検出手段は、加速度設定手段が設定する目標加速度が不連続に変化する事象の発生を検出する。
ゲイン補正手段は、検出手段が事象の発生を検出すると、加速度設定手段が目標加速度を設定するときの相対速度ゲインを、事象の発生が検出されたときに通常の追従制御において設定される基準ゲインよりも小さい値から徐々に大きくする。
このように、事象発生時に相対速度ゲインを補正することにより、事象が発生したときに目標加速度が急激に変化することを低減できるので、事象発生時の追従制御による加速ショックまたは減速ショックを低減できる。
また、相対速度ゲインを徐々に大きくして通常の追従制御で設定される基準ゲインに近づけることが望ましい。これにより、通常の追従制御に滑らかに移行できる。
車両走行制御システムの構成を示すブロック図。 加速追従時の車間距離と最長車間距離との関係を示す模式図。 加速追従時および減速追従時の補正後相対速度ゲインを示すタイムチャート。 加速追従時の推定相対速度および車間距離の変化を示すタイムチャート。 加速追従時の推定相対速度と閾値との関係を示す特性図。 減速追従時の車間距離と最短車間距離との関係を示す模式図。 減速追従時の推定相対速度および車間距離の変化を示すタイムチャート。 減速追従時の推定相対速度と閾値との関係を示す特性図。 追従制御処理を示すフローチャート。
以下に本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示す車両走行制御システム2は、自動車に搭載され、自車の前方を走行する先行車の中から自車が追従する追従対象車を選択し、追従対象車との車間距離を一定に保持するように自車の走行を制御するものである。
車両走行制御システム2は、自車周辺の状況および自車の走行状態を検出するための各種センサおよび各種スイッチと、エンジンECU30と、ブレーキECU40と、車両走行制御装置50とから主に構成されている。
車両走行制御システム2は、各種センサとして、レーダセンサ10、カメラ12、車速センサ14、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ18などを備え、各種スイッチとして、追従スイッチ20、追従モードスイッチ22などを備えている。
レーダセンサ10は、自車前方へレーザ光を所定角度の範囲でスキャンして出力してその反射光を検出し、レーザ光を反射した物体との間をレーザ光が往復するのに要した時間から物体までの距離と、反射光を検出した時にレーザ光を照射した方向から物体が存在する方位とを求める。尚、レーダセンサ10は、レーザ光を利用するものに限らず、ミリ波帯またはマイクロ波帯の電波を利用するものや、超音波を利用するものを使用してもよい。
カメラ12は自車の前方を撮像するものである。カメラ12が撮像した画像データは、図示しない画像解析装置で解析され、自車の前方の物体が車両であるか障害物であるかなどが検出される。
車速センサ14は自車の現在車速を検出し、アクセルセンサ16はアクセルペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキセンサ18はブレーキペダルの踏み込み量を検出する。図1では、各種センサとして車速センサ14、アクセルセンサ16およびブレーキセンサ18の検出信号が車両走行制御装置50に入力されているが、エンジンECU30およびブレーキECU40にも各種センサの検出信号が入力されている。
追従スイッチ20は、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を実行するか否かを入力するためのスイッチである。ACCは、先行車が存在しない場合に、設定された目標速度で走行し、先行車が存在する場合に、所定の速度範囲内で所定の車間距離を保った追従走行を実行する周知の制御である。
追従モードスイッチ22は、追従モードとして、ACCを実行するときに保持する追従対象車との車間距離を短くするか長くするかの距離モードと、追従走行する場合の速度範囲とを選択するためのスイッチである。追従対象車との車間距離は、所定距離の範囲内で連続して設定するものでもよい。
エンジンECU30とブレーキECU40と車両走行制御装置50とは、それぞれCPU、ROM、RAM、フラッシュメモリなどを備えるマイクロコンピュータ、A/D変換回路、入出力インターフェース(I/O)、および車内LAN100を介して他のECUとの通信を行う通信回路などを備えている。
エンジンECU30は、例えばガソリンエンジンを搭載している車両であれば、エンジンの始動および停止、燃料噴射量、点火時期等を制御する。具体的には、エンジンECU30は、吸気管に設けられたスロットルを開閉するスロットルアクチュエータを、アクセルセンサ16の検出値、あるいは車両走行制御装置50からの指令にしたがい、エンジンの駆動力を増減させるように制御する。
ブレーキECU40は、ブレーキセンサ18の検出値、あるいは車両走行制御装置50からの指令にしたがい、自車に制動力を加えるブレーキアクチュエータを制御し、自車の制動力を増減させる。
車両走行制御装置50は、追従スイッチ20がオンになりACCの実行が指示されると、追従対象車を選択する処理を周期的に実行し、先行車の中から選択した追従対象車に対する追従制御を実行する。車両走行制御装置50は、追従モードスイッチ22によって選択された距離モードと自車の車速とに基づいて、追従対象車を追従するときの目標車間距離を設定する。
また、車両走行制御装置50は、レーダセンサ10から取得する追従対象車と自車との距離の時間変化などから、自車に対する追従対象車の実相対速度を算出する。
追従制御では、通常はエンジンECU30がスロットルアクチュエータを制御して車速を上昇または低下させ、スロットルアクチュエータで対応することができない場合、ブレーキECU40がブレーキアクチュエータを制御することにより、エンジンECU30と協働して車速を上昇または低下させる。
(追従制御処理)
追従対象車と自車との車間距離を目標車間距離に保持して車両走行制御装置50が追従制御を実行している場合、自車に対する追随対象車の相対速度は0である。この状態で追従対象車が加速または減速して相対速度が0から正または負になると、追従対象車と自車との車間距離が目標車間距離からずれる。
車両走行制御装置50は、相対速度が正になり追従対象車が目標車間距離よりも離れるとエンジンECU30に指令して自車を加速させて目標車間距離を保持する。また、車両走行制御装置50は、相対速度が負になり追従対象車が目標車間距離よりも近づくとエンジンECU30およびブレーキECU40に指令して自車を減速させ目標車間距離を保持する。
車両走行制御装置50は、自車を加速または減速させるときの自車の目標加速度を、次式(1)から求める。式(1)において、Atgt(Vr)は目標加速度、αは相対速度ゲイン、Vrは自車に対する追従対象車の実相対速度である。
Atgt(Vr)=α×Vr ・・・(1)
車間距離を目標車間距離に保持して追従制御を実行しているときに、追従対象車が加速または減速して相対速度が0から正または負に変化する場合、実相対速度は0から徐々に変化するので、自車の目標加速度も徐々に変化する。したがって、加速ショックまたは減速ショックは小さい。
車両走行制御装置50は、通常の追従制御の場合、自車の車速、ならびに自車と追従対象車との車間距離に基づいて、マップなどから算出する基準ゲインを式(1)の相対速度ゲインとして設定する。
これに対し、以下のような事象(1)〜(4)のいずれかが発生する場合、通常の追従制御で算出される基準ゲインを式(1)の相対速度ゲインとして設定すると、式(1)から算出される目標加速度が不連続に変化し、追従制御による加速ショックまたは減速ショックが発生する可能性がある。
(1)一定速度で走行時に新規に追従対象車が選択される。
(2)追従対象車と自車との間に他車が進入し、追従対象車が進入車に切り替る。
(3)追従制御中に自車のドライバがアクセル操作またはブレーキ操作等により自車を加速または減速させるオーバーライド操作の終了時。
(4)追従スイッチ20が操作され、追従制御が開始されるとき。
車両走行制御装置50は、事象(1)〜(4)のいずれかが発生すると、式(1)の相対速度ゲインとして通常の追従制御の基準ゲインを設定するのではなく、追従制御による加速ショックまたは減速ショックを低減するために相対速度ゲインを補正する補正処理を開始する。
尚、追従制御において設定する目標加速度は、式(1)の相対速度ゲインおよび実相対速度に基づいて設定されるだけではなく、目標車間距離と実車間距離との距離差によっても設定される。しかし、相対速度ゲインおよび実相対速度に比べ距離差が目標加速度を変化させる割合は小さいので、本実施形態では、相対速度ゲインおよび実相対速度を用いた目標加速度の設定について説明する。
(加速補正)
車両走行制御装置50は、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの実相対速度が正、つまり追従対象車が自車から離れていく場合、図2に示すように、自車200と追従対象車202との車間距離が最長車間距離(Dmax)以下であれば、図3に示すように、式(1)の相対速度ゲイン(α)として、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときに通常の追従制御において設定される基準ゲインよりも小さい初期ゲインを設定する。加速補正における初期ゲインの設定を次に説明する。
車両走行制御装置50は、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの実相対速度が正の場合、図4に示すように、時間(Tdec)の間に、実相対速度(Vr)が事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの初期相対速度(Vr0)から0になるように目標加速度を設定する。このときの目標加速度は次式(2)から求められる。
Atgt(Vr)=Vr0/Tdec ・・・(2)
また、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの車間距離をD0、DmaxとD0との距離差をΔDとすると、D0、Dmax、ΔD、Tdec、Vr0の関係は次式(3)で表わされる。
Dmax−D0=ΔD=Tdec×Vr0/2 ・・・(3)
式(2)と式(3)とに基づいて、加速補正の初期ゲイン(α0)は次式(4)から算出される。
α0=1/Tdec
=Vr0/(2×ΔD) ・・・(4)
図4は、目標加速度が式(2)から求められる値から変化しないと仮定した場合の実相対速度(Vr)の第1推定相対速度である推定相対速度300と車間距離(D)との変化を表わしている。しかし、実相対速度は初期相対速度(Vr0)から0に近づいていくので、式(4)の初期ゲインと実相対速度との積により設定される目標加速度は式(2)に示す一定値ではなく、徐々に0に近づく。
したがって、式(1)の相対速度ゲインとして式(4)の初期ゲインを設定することにより変化すると推定される推定相対速度は、目標加速度が変化しないと仮定した図4の推定相対速度300よりも緩やかに0に近づく。その結果、推定相対速度が0になり、車間距離がDmaxになるまでに要する時間はTdecよりも長くなる。
ただし、本実施形態では、説明を容易にするために、推定相対速度と車間距離とは図4に示す変化をすると仮定して以下の説明を行う。
加速補正において、相対速度ゲインとして初期ゲインが設定されている間は、追従対象車との車間距離は最長車間距離(Dmax)まで長くなる。したがって、最長車間距離(Dmax)は、追従対象車が自車から遠くなり過ぎないように、自車速と追従モードスイッチ22で選択された距離モードとに基づいて設定される。
その後は、図3に示すように、式(1)において設定する相対速度ゲインを所定時間で初期ゲイン(α0)から徐々に大きくし、通常の追従制御で車間距離と自車速とに基づいて設定される基準ゲインに近づける。これにより、車間距離は最長車間距離から近くなり目標車間距離に近づく。相対速度ゲインが基準ゲインに一致すると、相対速度ゲインの加速補正は終了し、通常の追従制御に移行する。
ここで、事象(1)〜(4)のいずれかが発生してから追従対象車の車速などが変化すると、実相対速度は推定相対速度300からずれる。
図5に示すように、相対速度ゲインとして初期ゲイン(α0)を設定して加速補正を開始してからの経過時間(T)における推定相対速度300をVr1、実相対速度が推定相対速度300から遅れて変化するときに許容される所定遅れ時間をTthre、所定遅れ時間(Tthre)で変化したときの実相対速度の所定増加分をVoff、推定相対速度にVoffを加えた実相対速度の第1閾値である加速補正閾値302をVthreとすると、経過時間(T)とともに変化する加速補正閾値(Vthre)302は次式(5)で表わされる。
Vthre=Vr1+Voff ・・・(5)
加速補正閾値302は、実相対速度が加速補正閾値302よりも大きくなると、加速補正において相対速度ゲインとして基準ゲインを設定するか否かを判定する閾値である。相対速度の大小は、正負の符号を含めて説明している。
ただし、実相対速度が加速補正閾値302よりも大きくなったときに、相対速度ゲインとして初期ゲインに代えて基準ゲインを設定すると、相対速度ゲインが不連続に変化し、目標加速度が急激に変化する可能性がある。そこで、次に説明するように、実相対速度が加速補正閾値に近づくにしたがい、相対速度ゲインを初期ゲインから基準ゲインに徐々に近づけていくことが望ましい。
実相対速度(Vr)が推定相対速度(Vr1)以上であり推定相対速度(Vr1)よりも所定増加分大きい加速補正閾値(Vthre)以下の場合、車両走行制御装置50は、加速補正閾値302に対する実相対速度(Vr)の位置係数(m)を次式(6)から求め、位置係数(m)に応じて次式(7)から初期ゲインをさらに補正した相対速度ゲイン(αm)を算出する。
加速補正において実相対速度(Vr)が推定相対速度(Vr1)よりも小さい場合、車両走行制御装置50は初期ゲインを補正しない。
式(7)において、αbsは基準ゲインを表わしている。位置係数(m)が1に近いほど実相対速度(Vr)は加速補正閾値302から遠い、言い換えれば推定相対速度に近いことを表わしている。
m=(Vthre−Vr)/Voff ・・・(6)
αm=m×α0+(1−m)×αbs ・・・(7)
(減速補正)
車両走行制御装置50は、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの実相対速度が負、つまり追従対象車が自車に近づいてくる場合、図6に示すように、自車200と追従対象車202との車間距離が最短車間距離(Dmin)以上であれば、加速補正と同様に図3に示すように、式(1)の相対速度ゲイン(α)として、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときに通常の追従制御において設定される基準ゲインよりも小さい初期ゲインを設定する。減速補正における初期ゲインの設定を次に説明する。
車両走行制御装置50は、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの実相対速度が負の場合、図7に示すように、時間(Tdec)の間に、実相対速度(Vr)が事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの初期相対速度(Vr0)から0になるように、目標加速度を設定する。このときの目標加速度は前述した式(2)で表わされる。
また、事象(1)〜(4)のいずれかが発生したときの車間距離をD0、D0とDminとの距離差をΔDとすると、D0、Dmin、ΔD、Tdec、Vr0の関係は次式(8)で表わされる。
D0−Dmin=ΔD=−Tdec×Vr0/2 ・・・(8)
式(2)と式(8)とに基づいて、減速補正の初期ゲイン(α0)は次式(9)から算出できる。
α0=1/Tdec
=−Vr0/(2×ΔD) ・・・(9)
初期相対速度(Vr0)の絶対値を|Vr0|とすると、式(4)、(9)は次式(10)と記載することもできる。
α0=|Vr0|/(2×ΔD) ・・・(10)
図7は、目標加速度が式(2)から求められる値から変化しないと仮定した場合の実相対速度(Vr)の第2推定相対速度である推定相対速度310と車間距離(D)との変化を表わしている。ただし、本実施形態では、前述した加速補正と同様に説明を容易にするために、推定相対速度と車間距離とは図7に示す変化をすると仮定して以下の説明を行う。
減速補正において、相対速度ゲインとして初期ゲインが設定されている間は、追従対象車との車間距離は最短車間距離(Dmin)まで短くなる。したがって、最短車間距離(Dmin)は、追従対象車が自車に近くなり過ぎないように、自車速と追従モードスイッチ22で選択された距離モードとに基づいて設定される。
その後は、図3に示すように、式(1)において設定する相対速度ゲインを所定時間で初期ゲイン(α0)から徐々に大きくし、通常の追従制御で車間距離と自車速とに基づいて設定される基準ゲインに近づける。これにより、車間距離は最短車間距離から長くなり目標車間距離に近づく。相対速度ゲインが基準ゲインに一致すると、相対速度ゲインの減速補正は終了し、通常の追従制御に移行する。
ここで、事象(1)〜(4)のいずれかが発生してから追従対象車の車速などが変化すると、実相対速度は推定相対速度310からずれる。
図8に示すように、相対速度ゲインとして初期ゲイン(α0)を設定して減速補正を開始してからの経過時間(T)における推定相対速度310をVr2、実相対速度が推定相対速度310から遅れて変化するときに許容される所定遅れ時間をTthre、所定遅れ時間(Tthre)で変化したときの実相対速度の所定減少分をVoff、推定相対速度310からVoffを引いた実相対速度の第2閾値である減速補正閾値312をVthreとすると、経過時間(T)とともに変化する減速補正閾値(Vthre)312は次式(11)で表わされる。
Vthre=Vr2−Voff ・・・(11)
減速補正閾値312は、実相対速度が減速補正閾値312よりも小さくなると、減速補正において相対速度ゲインとして基準ゲインを設定するか否かを判定する閾値である。
ただし、実相対速度が減速補正閾値312よりも小さくなったときに、相対速度ゲインとして初期ゲインに代えて基準ゲインを設定すると、相対速度ゲインが不連続に変化し、目標加速度が急激に変化する可能性がある。そこで、次に説明するように、実相対速度が減速補正閾値近づくにしたがい、相対速度ゲインを初期ゲインから基準ゲインに徐々に近づけていくことが望ましい。
実相対速度(Vr)が推定相対速度(Vr2)以下であり推定相対速度(Vr2)よりも所定減少分小さい減速補正閾値(Vthre)以上の場合、車両走行制御装置50は、減速補正閾値312に対する実相対速度(Vr)の位置係数(m)を次式(12)から求め、位置係数(m)に応じて次式(13)から初期ゲインをさらに補正した相対速度ゲイン(αm)を算出する。
減速補正において実相対速度(Vr)が推定相対速度(Vr2)よりも大きい場合、車両走行制御装置50は初期ゲインを補正しない。
式(13)において、αbsは基準ゲインを表わしている。位置係数(m)が1に近いほど実相対速度(Vr)は減速補正閾値312から遠い、言い換えれば推定相対速度310に近いことを表わしている。
m=(Vr−Vthre)/Voff ・・・(12)
αm=m×α0+(1−m)×αbs ・・・(13)
次に、車両走行制御装置50のCPUがROMまたはフラッシュメモリに記憶された制御プログラムにより実行する追従制御処理について、図9のフローチャートに基づいて説明する。図9のフローチャートは追従スイッチ20がオンの間、常時実行される。図9において「S」はステップを表わしている。
S400において車両走行制御装置50は、前述した事象(1)〜(4)のいずれかの発生を検出したか否かを判定する。事象(1)〜(4)のいずれも発生していない場合(S400:No)、車両走行制御装置50はS420に処理を移行する。
この場合、車両走行制御装置50は、追従対象車が既に存在する場合には、S420において式(1)の相対速度ゲインとして基準ゲインを設定し、目標加速度を算出する。これに対し、追従対象車が存在しない場合には、S420において、設定された目標車速と自車速との差に基づいて目標加速度を設定し、目標車速に自車速を保持する追従制御を実行する。
事象(1)〜(4)のいずれかの発生を検出した場合(S400:Yes)、車両走行制御装置50は、実相対速度が正であり、かつ追従対象車との車間距離が最長車間距離以下である待機条件が成立しているか否かを判定する(S402)。
S402の待機条件が成立している場合(S402:Yes)、車両走行制御装置50は、補正中フラグを1に設定し(S404)、相対速度補正1として式(4)から算出される初期ゲインを式(1)の相対速度ゲインとして設定し(S406)、S420に処理を移行する。
尚、式(4)の初期ゲインを相対速度ゲインとして設定する場合、実相対速度が推定相対速度よりも増加方向にずれる場合、図5で説明したように初期ゲインを補正して相対速度ゲインとして設定する。
S402の待機条件が成立していない場合(S402:No)、車両走行制御装置50は、実相対速度が負であり、かつ追従対象車との車間距離が最短車間距離以上である待機条件が成立しているか否かを判定する(S408)。
S408の待機条件が成立している場合(S408:Yes)、車両走行制御装置50は、補正中フラグを1に設定し(S410)、相対速度補正2として式(9)から算出され初期ゲインを式(1)の相対速度ゲインとして設定し(S412)、S420に処理を移行する。
尚、式(9)の初期ゲインを相対速度ゲインとして設定する場合、実相対速度が推定相対速度よりも減少方向にずれる場合、図8で説明したように初期ゲインを補正して相対速度ゲインとして設定する。
S408の待機条件が成立していない場合(S408:No)、車両走行制御装置50は、補正中フラグを0に設定し(S414)、補正中フラグが1から0に設定されたか否かを判定する(S416)。
S400の判定が「Yes」になってからS402およびS408の待機条件がまだ成立しておらず、S404またはS410で補正中フラグが1に設定されていない場合、S416の判定結果は「No」になり、S420に処理が移行する。この場合、S420では、式(1)の相対速度ゲインとして基準ゲインを設定し、目標加速度を算出する。
S400の判定が「Yes」になってからS402またはS408のいずれかの待機条件が成立し、S404またはS410で補正中フラグが1に設定されてから0に設定された場合、S416の判定結果は「Yes」になる。この場合、車両走行制御装置50は、相対速度補正3として式(1)の相対速度ゲインを初期ゲインから徐々に増加させて基準ゲインに近づけ(S418)、S420に処理を移行する。
S420において車両走行制御装置50は、式(1)から、追従制御を実行するときの自車の目標加速度を算出し、エンジンECU30およびブレーキECU40に目標加速度に基づく車両制御を実行させる。
S422において車両走行制御装置50は、S406またはS412のいずれの相対速度補正1、2も実行されずに補正中フラグが0に設定されているか否かを判定する(S422)。
車両走行制御装置50は、S422の判定結果が「Yes」であればS400に処理を移行し、S422の判定結果が「No」であればS402に処理を移行する。S400に処理が移行すると、S400で判定する事象の発生結果はクリアされる。
尚、例えば新規に追従対象車が選択される事象の発生を検出し(S400:Yes)、そのときの実相対速度が正であり、かつ車間距離が最長車間距離よりも長い場合(S402:No)、S408およびS416の判定結果は「No」になるので、S406、S412およびS418の相対速度補正1〜3が実行されずにS420に処理が移行される。
この場合、車両走行制御装置50は、式(1)の相対速度ゲインとして基準ゲインを設定して算出した目標加速度と目標車速に基づいて算出した目標加速度とを比較し、小さい方の目標加速度で追従制御を実行する。
また、新規に追従対象車が選択される事象の発生を検出し(S400:Yes)、そのときの実相対速度が負であり、かつ車間距離が最短車間距離よりも短い場合、S402、S408およびS416の判定結果は「No」になるので、S406、S412およびS418の相対速度補正1〜3が実行されずにS420に処理が移行される。
この場合、車両走行制御装置50は、式(1)の相対速度ゲインとして基準ゲインを設定して目標加速度を算出する。これにより、実相対速度が負である追従対象車が最短車間距離よりも近くに新規に選択されると、自車は直ちに減速し追従対象車との接近を回避しようとする。
以上説明した上記実施形態では、事象(1)〜(4)のいずれかが発生し、S402またはS408の待機条件が成立している間、式(1)の相対速度ゲインを基準ゲインよりも小さい初期ゲインに設定し、S402またはS408の待機条件が不成立になると、相対速度ゲインを初期ゲインから徐々に大きくして基準ゲインに近づけている。
このように相対速度ゲインを補正することにより、相対速度ゲインとして基準ゲインを設定すると目標加速度が不連続になる追従対象車が選択されても、目標加速度の急激な変化を低減できるので、事象発生時の追従制御による加速ショックまたは減速ショックを低減できる。さらに、相対速度ゲインが初期ゲインから徐々に大きくなり基準ゲインに近づくので、ゲイン補正を行わない通常の追従制御に滑らかに移行できる。
[他の実施形態}
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、S402またはS408の待機条件が成立している間、式(1)の相対速度ゲインとして設定する初期ゲインを、式(4)または(9)から算出するのではなく、固定値の0にしてもよい。
また、相対速度ゲインを初期ゲインから徐々に大きくして目標加速度を算出する場合、S402またはS408の待機条件が成立している間、相対速度ゲインを初期ゲインに保持するのではなく、事象(1)〜(4)のいずれかが発生すると、S402およびS408の待機条件を判定することなく相対速度ゲインを初期値から徐々に大きくしてもよい。
2:車両走行制御システム、50:車両走行制御装置(相対速度取得手段、加速度設定手段、検出手段、ゲイン補正手段、車間距離取得手段)

Claims (7)

  1. 自車の前方を走行する先行車の中から選択された追従対象車に自車を追従して走行させる追従制御を実行する車両走行制御システムに適用される車両走行制御装置であって、
    自車に対する前記追従対象車の実相対速度を取得する相対速度取得手段(S402、S408)と、
    相対速度ゲインと前記相対速度取得手段が取得する前記実相対速度との積に基づいて、自車が前記追従対象車を追従するときの目標加速度を設定する加速度設定手段(S420)と、
    前記加速度設定手段が設定する前記目標加速度が不連続に変化する事象の発生を検出する検出手段(S400)と、
    前記検出手段が前記事象の発生を検出し、前記自車の前方に前記追従対象車が存在する場合、前記加速度設定手段が前記目標加速度を設定するときの前記相対速度ゲインを、前記事象の発生が検出されたときに通常の前記追従制御において設定される基準ゲインよりも小さい値から徐々に大きくするゲイン補正手段(S406、S412、S418)と、
    を備えることを特徴とする車両走行制御装置(50)。
  2. 前記ゲイン補正手段は、前記事象の発生が検出されると、前記相対速度ゲインを徐々に大きくして前記基準ゲインに近づけることを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
  3. 前記追従対象車と自車との車間距離を取得する車間距離取得手段(S402、S408)を備え、
    前記ゲイン補正手段は、前記事象の発生が検出されると、前記実相対速度が正の場合には前記追従対象車が自車から離れるときに許容される最長車間距離と前記事象の発生が検出されたときに前記車間距離取得手段が取得する前記車間距離との距離差、あるいは前記実相対速度が負の場合には前記追従対象車が自車に近づくときに許容される最短車間距離と前記事象の発生が検出されたときに前記車間距離取得手段が取得する前記車間距離との距離差をΔD、前記事象の発生が検出されたときの前記実相対速度の絶対値を|Vr0|とすると、前記相対速度ゲインを、前記小さい値として|Vr0|/(2×ΔD)で求められる初期ゲインから徐々に大きくする、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両走行制御装置。
  4. 前記ゲイン補正手段は、前記事象の発生が検出されると、前記実相対速度が正であり前記車間距離が前記最長車間距離以下、あるいは前記実相対速度が負であり前記車間距離が前記最短車間距離以上である待機条件が成立している間、前記相対速度ゲインとして前記初期ゲインを設定し、前記待機条件が成立してから不成立になると、前記相対速度ゲインを前記初期ゲインから徐々に大きくする、
    ことを特徴とする請求項3に記載の車両走行制御装置。
  5. 前記ゲイン補正手段は、前記事象の発生が検出されたときの前記実相対速度が正の場合には、前記実相対速度が、前記相対速度ゲインとして前記初期ゲインを設定することにより変化すると推定される自車に対する前記追従対象車の第1推定相対速度以上でかつ前記第1推定相対速度よりも所定増加分大きい第1閾値以下の場合には、前記実相対速度が前記第1閾値に近いほど前記相対速度ゲインを前記初期ゲインから前記基準ゲインに近づけ、前記実相対速度が前記第1閾値よりも大きい場合には、前記相対速度ゲインとして前記基準ゲインを設定し、前記事象の発生が検出されたときの前記実相対速度が負の場合には、前記実相対速度が、前記相対速度ゲインとして前記初期ゲインを設定することにより変化すると推定される自車に対する前記追従対象車の第2推定相対速度以下でかつ前記第2推定相対速度よりも所定減少分小さい第2閾値以上の場合には、前記実相対速度が前記第
    2閾値に近いほど前記相対速度ゲインを前記初期ゲインから前記基準ゲインに近づけ、前記実相対速度が前記第2閾値よりも小さい場合には、前記相対速度ゲインとして前記基準ゲインを設定することを特徴とする請求項4に記載の車両走行制御装置。
  6. 前記事象の発生は、新規の前記追従対象車が選択されたとき、前記追従対象車が切り替わったとき、前記追従制御中の自車のドライバによる加速操作または減速操作が終了したとき、および前記追従制御を開始するとき、のいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両走行制御装置。
  7. 前記追従対象車と自車との車間距離を取得する車間距離取得手段(S402、S408)を備え、
    前記加速度設定手段は、前記車間距離と自車の車速とに基づいて設定される前記基準ゲインを、通常の前記追従制御における前記相対速度ゲインとして設定する、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両走行制御装置。
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