図1は、本発明の一実施例としての変速機の制御装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、流体伝動装置22と自動変速機30との構成の概略を示す構成図である。
実施例の自動車10は、図1および図2に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられた流体伝動装置22と、この流体伝動装置22の出力側に入力軸31が接続されると共にギヤ機構48やデファレンシャルギヤ49を介して駆動輪11a,11bに出力軸32が接続され入力軸31に入力された動力を変速して出力軸32に伝達する有段の自動変速機30と、流体伝動装置22や自動変速機30に作動油を給排する油圧回路50と、油圧回路50を制御することによって流体伝動装置22や自動変速機30を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。ここで、実施例の変速機の制御装置としては、変速機ECU80が該当する。
エンジンECU16は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。エンジンECU16にはクランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号やイグニッションスイッチ90からのイグニッション信号,アクセルペダル93の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。
流体伝動装置22は、図2に示すように、ロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されており、フロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト14に接続された入力側流体伝動要素としてのポンプインペラ23と、タービンハブを介して自動変速機30の入力軸31に接続された出力側流体伝動要素としてのタービンランナ24と、ポンプインペラ23およびタービンランナ24の内側に配置されてタービンランナ24からポンプインペラ23への作動油の流れを整流するステータ25と、ステータ25の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ26と、ダンパ機構を有するロックアップクラッチ28と、を備える。この流体伝動装置22は、ポンプインペラ23とタービンランナ24との回転速度の差が大きいときにはステータ25の作用によってトルク増幅機として機能し、ポンプインペラ23とタービンランナ24との回転速度の差が小さいときには流体継手として機能する。また、ロックアップクラッチ28は、ポンプインペラ23(フロントカバー18)とタービンランナ24(タービンハブ)とを連結するロックアップとロックアップの解除とを実行可能なものであり、自動車10の発進後にロックアップオン条件が成立すると、ロックアップクラッチ28によってポンプインペラ23とタービンランナ24とがロックアップされてエンジン12からの動力が入力軸31に機械的かつ直接的に伝達されるようになる。なお、この際に入力軸31に伝達されるトルクの変動は、ダンパ機構によって吸収される。
自動変速機30は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構35とラビニヨ式の遊星歯車機構40と3つのクラッチC1,C2,C3と2つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構35は、外歯歯車としてのサンギヤ36と、このサンギヤ36と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ37と、サンギヤ36に噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のピニオンギヤ38と、複数のピニオンギヤ38を自転かつ公転自在に保持するキャリア39とを備える。サンギヤ36はケースに固定されており、リングギヤ37は入力軸31に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の2つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備える。サンギヤ41aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構35のキャリア39に接続され、サンギヤ41bはクラッチC3を介してキャリア39に接続されると共にブレーキB1を介してケースに接続され、リングギヤ42は出力軸32に接続され、キャリア44はクラッチC2を介して入力軸31に接続されている。また、キャリア44はブレーキB2を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF1を介してケースに接続されている。図3に自動変速機30の各変速段とクラッチC1,C2,C3,ブレーキB1,B2の作動状態との関係を表した作動表を示す。この自動変速機30は、図3の作動表に示すように、クラッチC1,C2,C3のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)とブレーキB1,B2のオンオフとの組み合わせによって前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り替えることができる。
クラッチC1,C2,C3およびブレーキB1,B2は、油圧回路50からの油圧によって作動する摩擦係合要素として構成されている。クラッチC1は、図4の自動変速機30のクラッチC1周辺の断面図に示すように、多板摩擦式油圧クラッチとして構成されており、連結部材100を介して遊星歯車機構40のサンギヤ41aに接続されたクラッチドラム101と、遊星歯車機構35のキャリア39と一体化されたクラッチハブ102と、クラッチドラム101の内周面に形成されたスプラインに嵌合された複数のクラッチプレート(相手板)103と、クラッチハブ102の外周面に形成されたスプラインに嵌合された複数のクラッチプレート(摩擦板)104と、クラッチプレート103,104を押圧可能なクラッチピストン105と、を備える。クラッチピストン105は、連結部材100の筒状部100aに摺動自在に嵌合され、連結部材100と共に係合側油室106を画成する。また、筒状部100aには、クラッチピストン105より図中右側に位置するようキャンセルプレート107が固定される。キャンセルプレート107は、クラッチピストン105と共に、係合側油室106内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル室108を画成する。クラッチピストン105とキャンセルプレート107との間には、リターンスプリング109が配置される。このクラッチC1は、係合側油室106に作動油を供給することによってクラッチピストン105が図中右側に移動して係合し、係合側油室106の作動油を排出することによってクラッチピストン105が図中左側に移動して係合を解除する。連結部材100には、外周側におけるクラッチピストン105が摺動する位置に、係合側油室106をシールするためのシールリング110が取り付けられており、係合側油室106の作動油がクラッチドラム101とクラッチピストン105とによって画成される油室111側に漏れるのを抑制している。なお、このシールリング100によって係合側油室106の作動油が油室111側に漏れるのを完全に抑止するのは困難であり、実際には、若干の漏れが生じることがある。クラッチドラム101には、油室111の作動油を排出できるよう開口部101aが形成されている。
図5は、シールリング110の合口部110a周辺の様子の一例を示す説明図である。実施例では、シールリング110の合口部110aは、図示するように、厚み方向に斜めに形成されているものとした。係合側油室106内の作動油の油圧が高いときには、作動油の油圧によってシールリング110に作用する力Foの合口部110aに沿った方向の分力である油圧分力Focが比較的大きく、作動油の温度がそれほど高くないときには、シールリング110による熱膨張が比較的小さいために、シールリング110の熱膨張による力Fhの合口部110aに沿った方向の分力である熱膨張分力Fhcが比較的小さい。したがって、これらの場合には、図5(a)に示すように、油圧分力Focが熱膨張分力Fhcより大きく、シールリング110の合口部110aはズレにくい。この結果、係合側油室106の作動油が油室111側に漏れるのを抑制することができる。特に、作動油の温度が低いときには、作動油の粘性が比較的大きいため、係合側油室106の作動油が油室111側に漏れるのをより抑制することができる。なお、こうした場合でも、係合側油室106の作動油が油室111側に漏れるのを完全に抑止するのは難しく、若干の漏れが生じることがある。一方、係合側油室106内の作動油の油圧が低く且つ作動油の温度が高いときには、油圧分力Focより熱膨張分力Fhcが大きくなり、図5(b)に示すように、シールリング110の合口部110aがズレる場合があり、この場合、係合側油室106の作動油が油室111側に漏れやすくなる。図6に作動油の温度と係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量との関係の一例を示す。作動油の漏れ量は、上述の理由により、図示するように、油温Toが高いほど高くなる傾向があると考えられるが、シールリング110の個体差や経年変化などによって異なる。
流体伝動装置22や自動変速機30は、変速機ECU80によって駆動制御される油圧回路50によって作動する。油圧回路50は、いずれも図示しないが、エンジン12からの動力を用いて作動油を圧送するオイルポンプや、オイルポンプからの作動油を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ,プライマリレギュレータバルブからのライン圧PLを減圧してセカンダリ圧Psecを生成するセカンダリレギュレータバルブ,プライマリレギュレータバルブからのライン圧PLを調圧して一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ,シフトレバー91の操作位置に応じてプライマリレギュレータバルブからのライン圧PLの供給先(クラッチC1,C2,C3やブレーキB1,B2)を切り替えるマニュアルバルブ,マニュアルバルブからのライン圧PLを調圧して対応するクラッチC1,C2,C3やブレーキB1,B2へのソレノイド圧を生成する複数のリニアソレノイドバルブなどを備える。
変速機ECU80は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。変速機ECU80には、クランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号や、入力軸31に取り付けられた回転速度センサ31aからの入力軸回転速度Ninや、出力軸32に取り付けられた回転速度センサ32aからの出力軸回転速度Nout,油圧回路50に取り付けられた温度センサ52からの作動油の温度To,イグニッションスイッチ90からのイグニッション信号,シフトレバー91の位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル95の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ96からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されており、変速機ECU80からは、油圧回路50への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
なお、エンジンECU16とブレーキECU17と変速機ECU80は、相互に通信ポートを介して接続されており、相互に制御に必要な各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
次に、こうして構成された実施例の自動車10の動作、特に、自動変速機30の変速段を変更する際の動作について説明する。なお、以下の説明では、自動変速機30の変速段を5速(クラッチC2,C3が係合状態でクラッチC1,ブレーキB1,B2が解放状態)から4速(クラッチC1,C2が係合状態でクラッチC3,ブレーキB1,B2が解放状態)に変更する際の動作を例として説明する。
まず、自動変速機30の変速段を5速から4速に変更する際の変速制御(油圧回路50の制御)について説明する。図7は、自動変速機30の変速段の5速から4速への変更が指示されたときに変速機ECU80により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
変速制御ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、まず、変速に際して係合すべき摩擦係合要素(以下、係合側要素という)としてのクラッチC1のクラッチピストン105とクラッチプレート103,104との隙間を詰めるために係合側油室106に作動油が急速充填されるよう油圧指令を設定して油圧回路50を制御するファストフィル制御の実行を開始すると共に(ステップS100)、ファストフィル制御の実行時間としての充填時間tfが経過するのを待つ(ステップS110)。ここで、充填時間tfは、工場出荷時などには予め実験や解析などによって定められた基本値tfbaseが設定され、その後、後述の学習によって更新されるとその更新後の値が用いられる。なお、このファストフィル制御と並行して、変速に際して解放すべき摩擦係合要素(以下、開放側要素という)としてのクラッチC3に対する油圧を1段低下させてクラッチC3を半係合(スリップ係合)させる。
充填時間tfが経過すると、係合側要素に対する油圧が比較的低い待機圧Pwで所定時間に亘って保持されるよう油圧指令を設定して油圧回路50を制御する待機制御を実行する(ステップS120)。ここで、待機圧Pwは、工場出荷時などには予め実験や解析などによって定められた基本値Pwbaseが設定され、その後、後述の学習によって更新されるとその更新後の値が用いられる。
続いて、係合側要素に対する油圧が予め定められた所定トルク相圧Ptまで上昇するよう油圧指令を設定して油圧回路50を制御するトルク相制御を実行する(ステップS130)。ここで、所定トルク相圧Ptは、入力軸31の回転上昇が生じない油圧範囲の上限またはそれより若干低い油圧として実験や解析などによって定められた油圧を用いるものとした。トルク相制御は、入力軸31の回転上昇が生じない範囲で係合側要素に対する油圧を所定トルク相圧Ptまで徐々に(滑らかに)上昇させる制御であり、実施例では、係合側要素に対する油圧を所定トルク相圧Ptまで上昇させるのに要する時間として実験や解析などによって定められた時間に亘って実行するものものとした。
そして、入力軸31の回転速度が自動変速機30の変速後の変速段に応じた回転速度である変速後目標回転速度Nin*まで一定の変化率(回転速度の単位時間あたりの上昇量が一定)で上昇するよう油圧指令を設定して油圧回路50を制御するイナーシャ相制御の実行を開始する(ステップS140)。ここで、イナーシャ相制御は、入力軸31の回転速度Ninが変速後目標回転速度Nin*まで一定の変化率で上昇するよう係合側要素に対する油圧を調節する制御であり、実施例では、入力軸31の回転速度Ninが変速後目標回転速度Nin*近傍に至るまで実行するものとした。なお、このイナーシャ相制御は、入力軸31の回転速度を出力軸32の回転速度で除して得られる自動変速機30の現在の変速比が変速後の変速段の変速比近傍に至るまで実行するものなどとしてもよい。
そして、イナーシャ相制御の実行が完了するのを待って(ステップS150)、係合側要素に対する油圧が最大となるよう油圧指令を設定して油圧回路50を制御する終期制御を実行して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
図8は、自動変速機30の変速段を5速から4速に変更する際の入力軸回転速度Ninと係合側要素や解放側要素の油圧との時間変化の様子を模式的に示す説明図である。この際には、図示するように、変速処理の開始として(時刻t11)、係合側要素に対するファストフィル制御の実行を開始すると共に開放側要素に対する油圧を1段低下させて半係合させる。そして、ファストフィル制御の実行開始から充填時間tfが経過すると(時刻t12)、待機圧Pwで待機制御を実行する。そして、トルク相制御の実行を開始し(時刻t13)、入力軸31の回転速度Ninが上昇し始めてイナーシャ相が開始すると(時刻t14)、イナーシャ相制御の実行を開始し、入力軸回転速度Ninが目標回転速度Nin*近傍に至ると(時刻t15)、係合側要素の油圧を最大油圧にする終期制御を実行する。
以上、自動変速機30の変速段を5速から4速に変更する際の変速制御(油圧回路50の制御)について説明した。次に、この変速制御に用いる制御量の学習を行なう処理について説明する。図9は、自動変速機30の変速段を5速から4速に変更したときに変速機ECU80により実行される変速学習ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、実施例では、変速制御に用いる制御量として、係合側要素についての充填時間tfおよび待機圧Pwを学習するものとした。
変速学習ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、まず、複数の温度領域R[1]〜R[N]のうち温度センサ52からの作動油の温度Toが属する温度領域としての油温所属領域R[To]を入力する処理を実行する(ステップS200)。ここで、複数の温度領域R[1]〜R[N]としては、例えば、温度T1(例えば40℃など)未満の領域を温度領域R[1]とし、温度T1以上で温度T2(例えば65℃など)未満の領域を温度領域R[2]とし、温度T2以上で温度T3(例えば110℃など)未満の温度領域を均等又は不均等に分割して温度領域R[3]〜R[N−1]とし、温度T3以上の温度領域を温度領域R[N]とすることが考えられる。以下、温度領域R[1]〜R[N]のそれぞれの充填時間tf,待機圧Pwを充填時間tf[1]〜tf[N],待機圧Pw[1]〜Pw[N]と表記する場合がある。
続いて、変速制御に用いる制御量の第1段階の学習である第1段階学習が完了したか否かを示すフラグF1の値を調べる(ステップS210)。ここで、フラグF1は、出荷時などに初期値として値0が設定され、第1段階学習が完了したときに値1が設定されるフラグである。なお、実施例では、詳細は後述するが、変速制御に用いる制御量の学習を3段階で行なうものとした。
フラグF1が値0のときには、第1段階学習が終了していないと判断し、第1段階学習の実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS220)。ここで、第1段階学習の実行条件は、油温所属領域R[To]が温度領域R[3]〜R[N−1]内である条件を用いるものとした。
第1段階学習の実行条件が成立しているときには、第1段階学習を実行し(ステップS230,S240)、第1段階学習の実行条件が成立していないときにはこれを実行しない。この第1段階学習では、まず、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を学習する(ステップS230)。ここで、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]の学習は、実施例では、変速時の入力軸31の回転速度Ninの変化率(回転速度変化率ΔNin)の最大値としての最大変化率ΔNinmaxと、変速開始から回転速度変化率ΔNinが最大変化率ΔNinmaxとなるまでの時間としてのピーク到達時間tpeakと、に基づいて行なうものとした。具体的には、ピーク到達時間tpeakおよび最大変化率ΔNinが共に実験や解析などによって予め定められた許容範囲内のときには、変速制御が適正に行なわれた(ショックの程度が許容範囲内だった)と判断して、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を保持し(更新せず)、ピーク到達時間tpeakと最大変化率ΔNinとのうち一方または両方が許容範囲外のときには、変速制御が適正に行なわれなかった(ある程度大きなショックを生じた可能性がある)と判断し、変速制御が適正に行なわれる方向(ピーク到達時間tpeakおよび最大変化率ΔNinが共に許容範囲内となる方向)に、現在のファスト時間tf[To]に所定値αを増減して新たな充填時間tf[To]を設定すると共に現在の待機圧Pw[To]に所定値βを増減して新たな待機圧Pw[To]を設定する。なお、所定値α,βは、充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を更新(補正)する際の変更量であり、適宜設定することができる。
続いて、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を、それ以外の温度領域R[i](iは1〜Nの整数,i≠t)の新たな充填時間tf[i]および待機圧Pw[i]に設定する(ステップS240)。このステップS230,S240の処理は、温度領域R[1]〜R[N]で一律に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を学習する処理であり、温度領域R[1]〜R[N]をまとめて1つの温度領域とみなして充填時間tfおよび待機圧Pwの学習を行なうのと同様に考えることができる。こうして温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を学習(更新)すると、その後に、自動変速機30変速段を5速から4速に変更する際に、この学習結果を用いて変速制御(油圧回路50の制御)を行なう。
このようにして第1段階学習を行なうことにより、作動油の温度To(油温所属領域R[To])に拘わらず温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を学習する機会をある程度確保することができると共に、その後の変速制御をより適正に行なうことができる。上述したように、係合側油室106をシールするためのシールリング110は、係合側油室106内の作動油の油圧が低く且つ作動油の温度が高いときに、合口部110aがズレやすくなり係合側油室106の作動油が油室111側に漏れやすくなる。そして、この影響は、ピーク到達時間tpeakや最大変化率ΔNinに現われると考えられる。したがって、この影響が現われたときには、ステップS130,S140の処理で、合口部110aがズレるのを抑制する方向(係合側油室106の作動油の油圧が高くなる方向)に温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を一律に学習する、即ち、充填時間tf[1]〜tf[N]を長くなる方向に一律に更新すると共に待機圧Pw[1]〜Pw[N]を大きくなる方向に一律に更新することにより、学習を行なわないものに比して、その後の変速制御をより適正に行なうことができる。
そして、第1段階学習の完了条件が成立したか否かを判定し(ステップS250)、完了条件が成立していないときには、そのまま本ルーチンを終了し、完了条件が成立したときには、フラグF1に値一を設定して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。ここで、第1段階学習の完了条件は、第1段階学習の実行条件が成立して第1段階学習が行なわれた回数が所定回数(例えば、3回や5回,7回など)以上である条件と、出荷後に変速制御が適正に行なわれた(ピーク到達時間tpeakおよび最大変化率ΔNinが共に許容範囲内であった)回数が所定回数(例えば、2回や3回,5回など)以上である条件と、を用いるものとした。実施例では、この2つのいずれも成立していないときには第1段階学習の完了条件が成立していないと判定し、この2つのいずれかが成立したときには第1段階学習の完了条件が成立したと判定するものとした。
こうしてフラグF1が設定されると、その後に本ルーチンが実行されたときには、変速制御に用いる制御量の第2段階の学習である第2段階学習が完了したか否かを示すフラグF2の値を調べる(ステップS270)。ここで、フラグF2は、出荷時などに初期値として値0が設定され、第2段階学習が完了したときに値1が設定されるフラグである。
フラグF2が値0のときには、第2段階学習が終了していないと判断し、第2段階学習の実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS280)。ここで、第2段階学習の実行条件は、油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件を用いるものとした。
第2段階学習の実行条件が成立しているときには、第2段階学習を実行し(ステップS290,S300)、第2段階学習の実行条件が成立していないときには、これを実行しない。この第2段階学習では、まず、ステップS230の処理と同様に、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を学習する(ステップS290)。
続いて、ステップS290で設定した油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を、温度領域R[To]〜R[N]のそれぞれで、低温側の温度領域の最大値以上となるよう反映する(ステップS300)。この処理を充填時間tf[To]〜tf[N]について行なう場合、ステップSS290で設定した油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]を温度領域R[t−1]の現在の充填時間tf[t−1](前回までに更新された充填時間tf[t−1])で下限ガードして油温所属領域R[To]の新たな充填時間tf[To]として設定し、油温所属領域R[To]が温度領域R[N]でないときには、同様に、温度領域R[t+j]の現在の充填時間tf[t+j]を温度領域R[t+j−1]の新たな充填時間tf[t+j−1]で下限ガードして温度領域R[t+j]の新たな充填時間tf[t+j]として設定する処理を変数jを値1から値[n−j]まで順に実行する、ことによって行なうものとした。また、待機圧Pw[To]〜Pw[N]については、充填時間tf[To]〜tf[N]と同様に行なうことができる。なお、この処理では、温度領域R[1]〜R[t−1]の充填時間tf[1]〜tf[t−1]および待機圧Pw[1]〜Pw[t−1]については変更しない(保持する)。このステップS300の処理により、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]は、高温側の温度領域ほど値が大きくなる傾向に設定される。上述したように、シールリング110は、作動油の油圧が低く作動油の温度が高いときに合口部110aがズレやすくなり、図6に示したように、係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量は作動油の温度が高いほど多くなる傾向があると考えられる。実施例では、第2段階学習(ステップS290,S300の処理)を行なって、温度領域R[1]〜R[N]のうち高温側の温度領域ほど値が大きくなる傾向に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を設定することにより、充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]を図6の特性に応じたより適正な値とすることができ、変速制御をより適正に行なうことができる。
そして、第2段階学習の完了条件が成立したか否かを判定し(ステップS310)、完了条件が成立していないときには、そのまま本ルーチンを終了し、完了条件が成立したときには、フラグF1に値一を設定して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。ここで、第2段階学習の完了条件は、第2段階学習の実行条件(油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件)が成立して第2段階学習が行なわれたときに油温所属領域R[To]が温度領域R[k](2<k≦N−1)〜R[N−1]内であった回数が所定回数(例えば、3回や5回,7回など)以上である条件を用いるものとした。このように、第2段階学習の実行条件に用いる温度領域R[2]〜R[N−1]のうち高温側の温度領域R[k]〜R[N−1]を第2段階学習の完了条件に用いるのは、油温所属領域Toに対する作動油の漏れ量の製造バラツキや経年バラツキが高温側の温度領域R[k]〜R[N−1]で低温側に比してより顕著になりやすく、学習を行なう必要性が高いためである。
こうしてフラグF2が設定されると、その後に本ルーチンが実行されたときには、変速制御に用いる制御量の第2段階学習が完了したと判断し、変速制御に用いる制御量の第3段階学習である第3段階学習の実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS330)。ここで、第3段階学習の実行条件は、油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件を用いるものとした。
第3段階学習の実行条件が成立しているときには、第3段階学習を実行し(ステップS340)、第3段階学習の実行条件が成立していないときには、第3段階学習を実行しない。この第3段階学習では、ステップS230の処理と同様に、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を学習する(ステップS340)。この第3段階学習では、油温所属領域R[To]の充填時間tf[To]および待機圧Pw[To]を、それ以外の温度領域R[i](iは1〜Nの整数,i≠t)の充填時間tf[i]および待機圧Pw[i]には反映しない。即ち、第3段階学習では、温度領域R[1]〜R[N]のそれぞれで個別に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を行なうのである。シールリング110の経年変化などによって、作動油の温度と係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量との関係が変化する(図6とは異なる特性となる)ことがあるが、このようにして第3段階学習を実行することにより、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をシールリング110の経年変化などに応じたより適正な値とすることができ、変速制御をより適正に行なうことができる。
図10は、温度領域R[1]〜R[N]と充填時間tfとの関係の一例を示す説明図である。出荷時には、図中破線に示すように、充填時間tfは、温度領域R[1]〜R[N]に拘わらず一定の初期値が設定されている。そして、第1段階学習の実行により、図中一点鎖線に示すように、充填時間tfは、温度領域R[1]〜R[N]に拘わらず一定を保持しながら変更される。その後、第2段階学習の実行により、図中二点鎖線に示すように、充填時間tfは、高温側の温度領域ほど大きくなる傾向に設定される。さらに、その後、第3段階学習の実行により、図中実線に示すように、温度領域R[1]〜R[N]のそれぞれで個別に設定される。こうした3段階の学習の実行により、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習機会をある程度確保することができると共に、充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をより適正な値とすることができる。この結果、変速制御をより適正に行なうことができ、変速ショックを抑制することができる。なお、待機圧Pwについては、この充填時間tfと同様に考えることができる。
以上説明した実施例の自動車10が備える変速機ECU80によれば、第1段階学習の完了条件が成立するまでは、作動油の温度To(油温所属領域R[To])に拘わらず温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を一律に行なうから、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習機会をある程度確保することができる。そして、第1段階学習の完了条件が成立してから第2段階学習の完了条件が成立するまでは、温度領域R[1]〜R[N]のうち高温側の温度領域ほど値が大きくなる傾向に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を行なうから、作動油の油圧が低く作動油の温度が高いときにシールリング110の合口部110aがズレやすくなり係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量が作動油の温度が高いほど多くなる傾向がある場合に、充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をこの傾向を踏まえたより適正な値とすることができる。さらに、第2段階学習の完了条件が成立した後は、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を温度領域R[1]〜R[N]のそれぞれで個別に行なうから、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をシールリング110の経年変化などに応じたより適正な値とすることができる。即ち、こうした3段階の学習の実行により、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習機会をある程度確保することができると共に、充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をより適正な値とすることができるのである。この結果、変速制御をより適正に行なうことができ、変速ショックを抑制することができる。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、第2段階学習では、シールリング110が作動油の油圧が低く作動油の温度が高いときに合口部110aがズレやすくなり係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量が作動油の温度が高いほど多くなる傾向があることを踏まえて、高温側の温度領域ほど値が大きくなる傾向に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を行なうものとしたが、他の要因などにより、作動油の漏れ量が作動油の温度が低いほど多くなることが分かっているときには、低温側の温度領域ほど値が大きくなる傾向に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を行なうものとすればよく、作動油の漏れ量が作動油の温度が所定温度(例えば、温度T2と温度T3との間の温度T23)で最大となることが分かっているときには、温度領域R[T1],R[N]から温度T23が属する温度領域R[T23]に向けて値が大きくなる傾向に充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習を行なうものとすればよい。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、第1段階学習の実行条件は、油温所属領域R[To]が温度領域R[3]〜R[N−1]内である条件を用いるものとし、第2段階学習および第3段階学習の実行条件は、油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件を用いるものとしたが、第1段階学習,第2段階学習,第3段階学習の実行条件は、共通して、油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件を用いるものとしたり、温度領域R[3]〜R[N−1]内である条件を用いるものとしたりしてもよい。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、第1段階学習の完了条件は、第1段階学習の実行条件が成立して第1段階学習が行なわれた回数が所定回数以上である条件と、出荷後に変速制御が適正に行なわれた回数が所定回数以上である条件と、を用いるものとしたが、これらのうち一方だけを用いるものとしてもよい。また、他の条件、例えば、第1段階学習の実行条件が成立して第1段階学習が行なわれたときに油温所属領域R[To]が所定範囲(第1段階学習の実行条件が成立する範囲より狭い範囲)内であった回数が所定回数(例えば、2回や3回,5回など)以上である条件などを用いるものとしてもよい。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、第2段階学習の完了条件は、第2段階学習の実行条件(油温所属領域R[To]が温度領域R[2]〜R[N−1]内である条件)が成立して第2段階学習が行なわれたときに油温所属領域R[To]が温度領域R[k](2<k≦N−1)〜R[N−1]内であった回数が所定回数(例えば、3回や5回,7回など)以上である条件を用いるものとしたが、第2段階学習の実行条件が成立して第2段階学習が行なわれた回数が所定回数以上である条件や、第1段階学習の完了後に変速制御が適正に行なわれた回数が所定回数以上である条件などをも用いるものとしてもよい。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、変速制御に用いる制御量(充填時間tfおよび待機圧Pw)の学習を第1段階学習,第2段階学習,第3段階学習の順に3段階で行なうものとしたが、第2段階学習を行なわずに、第1段階学習,第3段階学習の順に2段階で行なうものとしてもよい。この場合、第1段階学習を行なうことにより、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習機会をある程度確保することができ、第3段階学習を行なうことにより、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をシールリング110の経年変化などに応じたより適正な値とすることができる。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、変速制御に用いる制御量(充填時間tfおよび待機圧Pw)の学習を第1段階学習,第2段階学習,第3段階学習の順に3段階で行なうものとしたが、第3段階学習を行なわずに、第1段階学習,第2段階学習の順に2段階で行なうものとしてもよい。この場合、第1段階学習を行なうことにより、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]の学習機会をある程度確保することができ、第2段階学習を行なうことにより、作動油の油圧が低く作動油の温度が高いときにシールリング110の合口部110aがズレやすくなり係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量が作動油の温度が高いほど多くなる傾向がある場合に、充填時間tf[To]〜tf[N]および待機圧Pw[To]〜Pw[N]をこの傾向を踏まえたより適正な値とすることができる。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、変速制御に用いる制御量(充填時間tfおよび待機圧Pw)の学習を第1段階学習,第2段階学習,第3段階学習の順に3段階で行なうものとしたが、第1段階学習,第2段階学習を行なわずに、第3段階学習だけを行なうものとしてもよい。この場合、第3段階学習を行なうことにより、温度領域R[1]〜R[N]の充填時間tf[1]〜tf[N]および待機圧Pw[1]〜Pw[N]をシールリング110の経年変化などに応じたより適正な値とすることができる。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、変速制御に用いる制御量(充填時間tfおよび待機圧Pw)の学習を第1段階学習,第2段階学習,第3段階学習の順に3段階で行なうものとしたが、第1段階学習,第3段階学習を行なわずに、第2段階学習だけを行なうものとしてもよい。この場合、第2段階学習を行なうことにより、作動油の油圧が低く作動油の温度が高いときにシールリング110の合口部110aがズレやすくなり係合側油室106から油室111側への作動油の漏れ量が作動油の温度が高いほど多くなる傾向がある場合に、充填時間tf[To]〜tf[N]および待機圧Pw[To]〜Pw[N]をこの傾向を踏まえたより適正な値とすることができる。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、変速制御に用いる制御量として、係合側要素についての充填時間tfおよび待機圧Pwを学習するものとしたが、充填時間tfと待機圧Pwとのうち一方だけを学習するものとしてもよい。
実施例の自動車10が備える変速機ECU80では、自動変速機30の変速段を5速(クラッチC2,C3が係合状態でクラッチC1,ブレーキB1,B2が解放状態)から4速(クラッチC1,C2が係合状態でクラッチC3,ブレーキB1,B2が解放状態)に変更する場合の変速制御(油圧回路50の制御)やこの変速制御に用いる制御量の学習について説明したが、6速(クラッチC2,ブレーキB1が係合状態でクラッチC1,C3,ブレーキB2が解放状態)から4速に切り替える場合にも、クラッチC1が係合側要素となることから、実施例と同様の手法により、変速制御やこの変速制御に用いる制御量の学習を行なうことができる。また、クラッチC2,C3やブレーキB1,B2が係合側要素となる場合には、係合側要素が異なる点を除いて、同様の手法により、変速制御やこの変速制御に用いる制御量の学習を行なうことができる。
実施例の自動変速装置20では、6速の自動変速機30を用いるものとしたが、3速や4速,5速の自動変速機を用いるものとしてもよいし、7速や8速以上の自動変速機を用いるものとしてもよい。
実施例の自動変速装置20では、基本的には、3つのクラッチC1〜C3と2つのブレーキB1,B2の5つの係合要素のうち、2つの係合要素を係合状態とすると共に3つの係合要素を開放状態とすることにより変速段(2速〜6速)を形成し、変速時における係合側要素に変速制御やこの変速制御に用いる制御量の学習を行なうものとしたが、3つの係合要素を係合状態とすることによって変速段を形成し、変速時に係合状態とする3つの係合要素のうちの少なくとも係合要素が係合側要素となるときに変速時における係合側要素に変速制御やこの変速制御に用いる制御量の学習を行なうものとしてもよい。4つ以上の係合要素を係合状態とすることによって変速段を形成するものも同様である。
実施例では、本発明を変速機ECU80の形態に適用するものとしたが、変速機の制御方法の形態に適用するものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、自動変速機30が「変速機」に相当し、図7の変速制御ルーチンを実行する変速機ECU80が「油圧制御手段」に相当し、図9の変速学習ルーチンを実行する変速機ECU80が「学習手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。