JP6022352B2 - 抗菌剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗菌剤およびその製造方法に関し、より詳細には、イソα酸の酸分解物を冷却して得られる沈殿物を含んでなる抗菌剤およびその製造方法に関する。
微生物の中には、ビール中で生育することができるものが存在し、それらはビール混濁菌と呼ばれる。ビール混濁菌は、濁らせたり、硫黄臭を発したりして、ビール品質を著しく低下させる場合がある。ビール混濁菌等の微生物増殖を抑制させるための一つの方策として、ホップが用いられることが知られている。
しかしながら、微生物に対して抗菌活性を有する既知のホップ成分であるα酸やα酸の酸化成分は、少なからず渋みを有しており、ビール等の飲料の香味特徴に影響する場合があった(例えば、特許文献1および2)。一方で、ホップのイソα酸の分解成分に、香味特徴を持たない抗菌成分が含まれることはこれまで知られていなかった。
国際公開第99/9842号公報 特開第2008−228634号公報
このように、ビールテイスト飲料や清涼飲料等の飲料の香味特徴に影響を与えない、無味、無臭の抗菌成分が望まれているといえる。
本発明は、ビールテイスト飲料や清涼飲料等の飲料に添加しても官能評価上の影響が少ない抗菌剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、イソα酸を酸性条件下で所定の加熱処理を行うことで、官能評価において香味に影響を与えにくい抗菌剤が得られることを見出した。本発明者らはまた、このようにして得られた抗菌剤をさらに冷却処理したところ、抗菌活性成分が沈殿物中に回収できることを見出した。本発明はこのような知見に基づいてなされた発明である。
すなわち、本発明では以下の発明が提供される。
(1)イソα酸の酸加熱分解物の冷却沈殿物を含んでなる、抗菌剤。
(2)イソα酸の酸加熱分解物由来の成分であって、下記の高速クロマトグラフィ分析条件でリテンションタイムが25±1分である成分および27±1分である成分を含んでなる、抗菌剤。
<高速液体クロマトグラフィ分析条件>
・カラム:Alltima88052(オルテック社製)(粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mm)
・サンプル注入量:2μL
・移動相Aの組成:蒸留水:リン酸=1000:0.02(v/v)+EDTA0.02%(w/v)
・移動相Bの組成:アセトニトリル
・グラジエントプログラムは以下の通りである:
分析開始時においては、移動相Aの割合を70%、移動相Bの割合を30%とし、リテンションタイムが15分までに移動相Aの割合が70%から60%、移動相Bの割合が30%から40%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが15〜22分の間は移動相Aの割合を60%、移動相Bの割合を40%とし、リテンションタイムが25分までに、移動相Aの割合が60%から48%、移動相Bの割合が40%から52%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが25〜55分の間は移動相Aの割合を48%、移動相Bの割合を52%とした。
・移動相流速:毎分1.6mL(流速一定)
(3)グラム陽性菌の増殖を抑制するための、上記(1)または(2)に記載の抗菌剤。
(4)ビールテイスト飲料または清涼飲料に添加するための、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗菌剤。
(5)上記(4)に記載の抗菌剤が添加されてなる、ビールテイスト飲料または清涼飲料。
(6)イソα酸を酸性条件下で加熱処理してイソα酸の分解物を得、次いで、得られた分解物を冷却して沈殿物を得ること
を含んでなる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗菌剤の製造方法。
(7)加熱処理の処理温度が100〜135℃であり、かつ、処理時間が60〜150分である、上記(6)に記載の製造方法。
本発明の抗菌剤は、α酸、α酸の分解物およびイソα酸が有する渋味や收斂味のような香味特徴を持たず、かつ、グラム陽性菌などの微生物に対して抗菌活性を有する。従って、本発明の抗菌剤は、飲食品に与える香味変化を懸念せずに飲食品に用いることができる点で有利である。また、本発明の抗菌剤は、ビールテイスト飲料や清涼飲料で問題となるグラム陽性の芽胞菌に対して抗菌作用を発揮することから、ビールテイスト飲料や清涼飲料に用いた場合に特に有利である。さらに、本発明の抗菌剤は、沈殿物として得られるため溶媒に溶解させて任意の濃度の抗菌剤として利用できる点でも有利である。
図1は、イソα酸の酸分解物の高速液体クロマトグラフィ分析チャート(移動相流速:毎分1.8mL(流速一定))を表す。縦軸のmAUは270nmの吸収強度を電気変換した単位を表す。 図2は、イソα酸の酸分解物の高速液体クロマトグラフィ分析チャート(移動相流速:毎分1.6mL(流速一定))を表す。図2Aは、低温静置前の酸分解物のチャートであり、図2Bは、低温静置後に得られた沈殿のチャートである。図2Aの下向きの矢印は、T−フラクションを示し、図2Bの下向きの矢印は、T−フラクションを示す。縦軸のmAUは270nmの吸収強度を電気変換した単位を表す。 図3は、イソα酸の酸分解物を低温処理して得られる沈殿物の、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に対する抗菌作用を示す図である。対照では溶媒が添加されている。
発明の具体的な説明
本明細書では、「ビールテイスト飲料」は、「ビールテイスト発酵飲料」または「ビールテイスト非発酵飲料」を意味する。
本明細書では、「ビールテイスト発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、通常のビールの製造方法に従いアルコール発酵により製造した場合に得られる、ビールに類似する香味特徴を有するすべての発酵飲料をいう。ビールテイスト発酵飲料としては、例えば、ビール、発泡酒、ビール風味発酵飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)が挙げられる。ビールテイスト発酵飲料には、原料液汁に麦汁を用いる麦芽発酵飲料と呼ばれるものが挙げられるが、必ずしも麦汁を用いる必要はない。
本明細書では、「ビールテイスト非発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、アルコール発酵を行わないで製造することができる非発酵飲料であって、ビールに類似する香味特徴を有するすべての非発酵飲料をいう。例えば、アルコール含量が0%である完全無アルコール麦芽飲料や、麦芽を用いない完全無アルコールビールテイスト飲料等もビールテイスト非発酵飲料に含まれる。
本発明の抗菌剤は、イソα酸の酸加熱分解物に由来するものであり、具体的には、該酸加熱分解物を冷却して得られる沈殿物を含んでなるものである。
本発明において、イソα酸は、ホップに含まれる成分であり、ホップから抽出して、精製してもよく、また合成してもよいが、市販されているものを用いてもよく、またホップ中のα酸の異性化によって生成してもよい。市販されているイソα酸としては、例えば、スタイナー社製(米国)のイソα酸含有量30%(重量比)溶液が挙げられる。
ここで、本発明によれば、イソα酸(イソフムロン化合物)は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、およびテトラハイドロイソポストフムロンを含む意味で用いられ、イソフムロン、イソアドフムロン、および/またはイソコフムロンが含有されていることが好ましい。
本発明において、「イソα酸の酸加熱分解物」とは、イソα酸を酸性条件下で加熱して得られる分解産物をいう。イソα酸の加熱分解物は、イソα酸を酸性条件下で50℃より高い温度で加熱処理することにより得ることができる。
本発明の加熱処理は、50℃以上で加熱する工程であり、好ましくは100℃以上で加熱する工程である。後に述べる冷却工程で沈殿物の量を高める観点では、加熱温度は、100〜150℃、より好ましくは、約120℃とすることができる。加熱処理における加熱時間は、わずかな時間(例えば、1分)であってもよいが、10分以上であることが好ましい。イソα酸の酸分解物の収率を高める観点では、加熱時間は、10〜180分とすることがより好ましい。また、後に述べる冷却処理で沈殿物の量を高める観点では、加熱時間は60〜150分であることがさらに好ましく、60〜120分であることがさらにより好ましく、90〜120分間(例えば、約90分間)であることがさらにより好ましい。
従って、本発明の好ましい態様によれば、加熱処理は、100℃以上で、かつ10分以上の加熱工程であり、より好ましくは、100℃以上で、かつ10〜180分間の加熱工程である。この時間の範囲内で加熱を行うことにより、より収率よくイソα酸の酸分解物を製造することができる。後に述べる冷却処理で沈殿物の量を高める観点では、加熱工程は、好ましくは、100〜150℃で60〜150分間の加熱工程であり、さらに好ましくは、約120℃で60〜120分間の加熱工程であり、さらにより好ましくは約120℃で90〜120分間(例えば、約90分間)の加熱工程である。
上記の加熱処理は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下であれば特に限定されないが、pH1〜5であることが好ましく、より好ましくは約pH3である。酸性条件下とすることができれば特に限定されないが、例えばリン酸、クエン酸、または乳酸を用いることができる。
本発明のイソα酸の酸加熱分解物の「冷却沈殿物」とは、イソα酸の酸加熱分解物を冷却処理して得られる沈殿物をいう。冷却処理は、10℃以下の温度で行うことが好ましく、8℃以下(例えば、8℃)であることが好ましく、4℃以下(例えば、4℃)であることがより好ましい。酸加熱分解物をこのように冷却することで、イソα酸の酸分解物中の抗菌作用を有する成分を沈殿物として析出させることができる。冷却処理は、沈殿が形成されるために十分な時間行うことができるが、例えば、1時間〜4週間程度行うことができ、好ましくは24時間〜1週間程度行うことができ、より好ましくは1週間程度行うことができる。沈殿は目視により確認が可能であるため、当業者であれば適時冷却時間を調整することができる。
冷却処理により析出した沈殿物は、回収して抗菌剤として使用することができる。回収は、上清を除去して行ってもよいし、ろ紙などのフィルターを用いて行ってもよい。回収された沈殿物は、そのまま用いてもよいが、適当な溶媒に溶解させてから用いてもよい。飲食品に添加するための抗菌剤を得る場合には、溶媒としては、水やエタノールなど飲食品に添加可能な溶媒を用いることが好ましい。
以上のように調製された抗菌剤は、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析により成分分析を行うことができる。
製造された沈殿物中の成分量を測定するための高速液体クロマトグラフィの分析条件としては、例えば、以下の条件を用いて行うことができ、高速液体クロマトグラフィに使用されるカラムは逆相カラムであれば特に限定されないが、C18カラム(好ましくは、粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mmの形態のもの)が好ましい。C18カラムとしては、例えば、Alltima 88052(オルテック社製)(粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mm)が挙げられる。
<高速液体クロマトグラフィ分析用試料調製条件>
T−フラクションを添加した試料10mLに、1mLの3N塩酸を加えた後、20mLのイソオクタンを加え、振とう、静置する。静置後、有機溶媒層(イソオクタン)を10mLを採取する。採取した溶液を、窒素ガス噴霧下で完全に乾燥させ固体化する。これに内部標準物質βフェニルカルコン12mgと、エタノール溶液440mLとの混合溶液を1mL加え、溶解したものを高速液体クロマトグラフィ分析用試料とする。
<高速液体クロマトグラフィ分析条件>
・カラム:C18カラム(粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mm)
・移動相Aの組成:蒸留水:リン酸=1000:0.02(v/v)+EDTA0.02%(w/v)
・移動相Bの組成:アセトニトリル
・グラジエントプログラムは以下の通りである(表1参照):
分析開始時においては、移動相Aの割合を70%、移動相Bの割合を30%とし、リテンションタイム(保持時間:R.T.)が15分までに移動相Aの割合が70%から60%、移動相Bの割合が30%から40%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが15〜22分の間は移動相Aの割合を60%、移動相Bの割合を40%とし、リテンションタイムが25分までに、移動相Aの割合が60%から48%、移動相Bの割合が40%から52%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが25〜45分の間は移動相Aの割合を48%、移動相Bの割合を52%とする。
・移動相流速:毎分1.6mL(流速一定)
・検出波長:270nm
本発明の抗菌剤では、上記高速液体クロマトグラフィ分析用試料調製条件により調製し、高速液体クロマトグラフィ条件により分析した場合に、リテンションタイムが25±1分および27±1分である2本のピークが見出される。本明細書では、このピークを「T−フラクション」という。T−フラクションの2本のピークは、各々のリテンションタイムが内部標準物質βフェニルカルコンよりそれぞれ、15±1分および13±1分早く検出される。このピーク面積の総和を、内部標準物質βフェニルカルコンのピーク面積で除したピーク面積比に基づいて、T−フラクション内標比(含有量に相当する)を求めることができる。すなわち、T−フラクションの内標比は、下記式(II):
により求めることができる。この内標比は、試料中の抗菌活性成分の濃度を評価するために用いることができる。
本発明の抗菌剤には、表1の高速液体クロマトグラフィ条件により分析した場合に、リテンションタイムが25±1分である成分および27±1分である成分の他に、34.5±1分の成分、42.5±1分の成分および53±1分の成分が含まれていてもよい。
本発明の抗菌剤は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して用いることができ、特に、グラム陽性菌、特に、ペクチネイタス属菌および/またはラクトバチルス属菌に対して用いることができる。
ペクチネイタス属菌は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくはペクチネイタス・フリシンジェンシス(Pectinatus frisingensis)またはペクチネイタス・セレビシフィラス(Pectinatus cerevisiiphilus)であり、より好ましくはペクチネイタス・フリシンジェンシスである。
ラクトバチルス属菌は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくはラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)またはラクトバチルス リンドネリ(Lactobacillus lindneri)であり、より好ましくはラクトバチルス・ブレビスである。
本発明の抗菌剤は、必要に応じて、添加物を含有することができる。添加物としては、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、水等を適宜加えることができる。
本発明の抗菌剤は、抗菌スペクトルが広く、放線菌などの特殊な微生物を除き、グラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌に対しても抗菌作用を示すため、抗菌性を要求される様々な用途に用いることができる。すなわち、本発明の抗菌剤は、例えば、食品、飲料、化粧品、口腔用組成物等の医薬部外品、抗菌繊維や抗菌樹脂等の抗菌性素材、およびペットフード等としてそのまま、または、これらに添加して使用してもよい。これらの中でも、特に飲料が好ましい。本発明の抗菌剤を添加できる飲料としては、特に限定されないが、水、清涼飲料(例えば、コーヒー飲料、紅茶飲料(ミルクティーおよびレモンティーなど)、緑茶飲料、烏龍茶飲料、炭酸飲料、およびジュースなど)、酒類(例えば、ビールテイスト発酵飲料など)、並びにビールテイスト非発酵飲料が挙げられる。本発明の抗菌剤を添加できる飲料の好ましい例としては、コーヒーやミルクティーのような清涼飲料およびビールテイスト飲料が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、上記抗菌剤を含む抗菌性素材を用いることができる。抗菌性素材としては、特に限定されないが、例えば、シャツ等の衣料、医療用シーツや内装材、生理用ナプキンや使い捨てオムツ等の保健衛生用品の表面材等に用いられる抗菌性繊維、台所用品等に用いられる抗菌樹脂、建築用資材として用いられるコーキング剤等が挙げられる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:T−フラクション生成試験
本実施例では、T−フラクションの生成条件を検討した。
イソα酸含有量30%(重量比)溶液(スタイナー社製、米国)を用いて、重量比0.5%水溶液を作成し、かつ乳酸を用いて溶液をpH3の酸性状態とした。その後、処理温度を50、100、120または135℃とし、処理時間を0、10、20、60、120または180分として、加熱処理を行った。
実施例2:高速液体クロマトグラフィ分析のための試料の調製
加熱処理した各試料10mLに、1mLの3N塩酸を加えた後、20mLのイソオクタンを加え、振とう、静置した。この溶液は、水溶層と、有機溶媒層(イソオクタン)との二層に分離し、有機溶媒層から10mLを採取した。採取した溶液を、窒素ガス噴霧下で完全に乾燥させ固体化させた。これに内部標準物質βフェニルカルコン12mgと、エタノール440mLとの混合溶液を1mL加え、溶解したものを高速液体クロマトグラフィ分析用試料とした。
高速液体クロマトグラフィ分析によるT−フラクション内標比の算出
高速液体クロマトグラフィの分析条件は、以下の通りである。
<高速液体クロマトグラフィ分析条件>
・カラム:Alltima88052(オルテック社製)(粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mm)
・サンプル注入量10μL
・移動相Aの組成:蒸留水:リン酸=1000:0.02(v/v)+EDTA0.02%(w/v)
・移動相Bの組成:アセトニトリル
・グラジエントプログラムは以下の通りである(表2参照):
分析開始時においては、移動相Aの割合を70%、移動相Bの割合を30%とし、リテンションタイムが15分までに移動相Aの割合が70%から60%、移動相Bの割合が30%から40%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが15〜22分の間は移動相Aの割合を60%、移動相Bの割合を40%とし、リテンションタイムが25分までに、移動相Aの割合が60%から48%、移動相Bの割合が40%から52%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが25〜45分の間は移動相Aの割合を48%、移動相Bの割合を52%とした。
・移動相流速:毎分1.8mL(流速一定)
・検出波長:270nm
上記条件下で、高速液体クロマトグラフィ分析を行った場合において、リテンションタイムが6〜12分であるピークの中で検出強度(mAU)(縦軸)が他のピークよりも高い2本のピークで、各々のリテンションタイムが内部標準物質βフェニルカルコンより33分±0.6分、30分±0.7分早く検出されるピークを便宜的に「T−フラクション」と定義した(図1参照)。
加熱条件とT−フラクションの生成との関係は以下の通りであった。
表3に示されるように、100〜135℃の温度領域でT−フラクションの生成が確認された。また、加熱時間は10分以上であるときにT−フラクションの生成が確認された。なお、実施例4(図2A)で示すように、イソα酸の酸加熱分解産物にはT−フラクションのみならず、T―フラクション(後述する)も存在することから、加熱時間が10分以上であるときにT−フラクションも生成していると考えられる。
実施例3:T−フラクションの殺菌効果
本実施例では、イソα酸の加熱分解物であるT−フラクションの殺菌効果を検討した。
(1)植菌試験用T−フラクション溶液の調製
異性化ホップエキス(スタイナー社製(米国))を蒸留水に0.5%溶解させた後に、溶解液を乳酸によりpH3.0に調製した。該溶解液を135℃で、20分間オートクレーブ処理した処理液をT−フラクション溶液とした。
(2)T−フラクション溶液添加による植菌試験(ペクチネイタス・フリシンジェンシス)
市販品のビールに上記T−フラクション溶液を添加し、ビール混濁菌であるペクチネイタス・フリシンジェンシス(Pectinatus frisingensis)(入手先:ドイツ微生物寄託機関(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)))の増殖抑制効果を得る成分値の範囲を探索した。T−フラクション溶液の各添加水準は、下記に示した表4の通りであった。
さらに、1.0×10CFU/mLレベルでペクチネイタス・フリシンジェンシスを植菌し、14日間30℃で培養後、生菌数を確認した。試験の結果を表4に示す。なお、T−フラクションの内標比は、以下の式(I)に基づき計算した。
(3)T−フラクション溶液添加による植菌試験(ラクトバチルス・ブレビス)
市販品のビールに上記T−フラクション溶液を添加し、ビール混濁菌であるラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(入手先:ドイツ微生物寄託機関(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM))の増殖抑制効果を確認した。T−フラクション溶液の各添加水準は、下記に示した表5の通りであった。
さらに、1.0×10CFU/mLレベルでラクトバチルス・ブレビスを植菌し、14日間30℃で培養後、生菌数を確認した。試験の結果を表5に示す。
このように、イソα酸を酸性条件下で加熱処理して得られるT−フラクションは、抗菌作用を有していたが、官能評価では、異臭味は無く、香味に対して影響が見られなかった。従って、味や香味の変化を気にすることが無く、抗菌目的で飲料等に添加することが可能であることが分かった。なお、α酸、α酸の酸分解物およびイソα酸は、抗菌作用が表われる程度に濃度を高めると、若干の渋味が感じられた。
さらに、市販のビール10種におけるT−フラクションの内標比を算出したところ、いずれも、内標比は0.02〜0.09の間であり、0.10以上のものは存在しなかった。
実施例4:冷却による抗菌成分の濃縮
本実施例では、冷却による抗菌成分の濃縮を試みた。
イソα酸含有量30重量%溶液(スタイナー社製、米国)を用いて、重量比0.5%水溶液を作成し、乳酸を添加してpH3の酸性状態として、120℃にて120分の加熱処理を行った。
さらに、抗菌成分の濃縮を試みた。具体的には、得られたT−フラクションを含む溶液を室温または低温(4℃または8℃)で1週間静置した。すると、室温の静置条件では、沈殿物は見られなかったが、低温では沈殿が確認された。また、8℃の静置条件よりも4℃の静置条件で、より多くの沈殿が観察された。
低温静置前のサンプルと、低温静置後の沈殿をそれぞれ、実施例2に記載の方法によりHPLCで分析した。低温静置前のサンプルは、試料10mLに、1mLの3N塩酸を加えた後、20mLのイソオクタンを加え、振とう、静置した。静置後、有機溶媒層から10mLを採取した。採取した溶液を、窒素ガス噴霧下で完全に乾燥させ固体化させて用いた。また、低温静置後の沈殿は、上清を除去して用いた。
これらのそれぞれに内部標準物質βフェニルカルコン12mgと、エタノール440mLとの混合溶液を1mL加え、溶解したものをHPLC分析用試料とした。HPLC分析は、サンプル注入量を2μLとし、流速を1.6mL/分として、解析時間を55分まで延長した以外は、実施例2に記載の条件にて行った。
その結果、低温静置前のサンプルには、実施例2で定義したT−フラクションが含まれていたが(図2A)、低温静置後の沈殿には、T−フラクションはほとんど含まれておらず、T−フラクションよりも遅いリテンションタイムを示すいくつかのピークが観察された(図2B)。本明細書では、本実施例のHPLC分析条件にて25±1分および27分±1で抽出されるフラクションを特にT−フラクションと定義する。
実施例5:冷却後の沈殿物の添加による植菌試験(ラクトバチルス・ブレビス)
本実施例では、市販のビールに実施例4で得られた冷却後の沈殿物を添加して植菌試験を実施した。
抗菌活性測定は、乳酸菌の生育阻害濃度を測定する既知の方法に基づいて実施した(W.J. Simpson and A.R.W. Smith, Journal of Applied Bacteriology, 1992, 72: 327-334)。すなわち、市販M.R.S.培地作成用試薬(M.R.S BROTH、OXOID社製)から調製したM.R.S.培地を2mL容のエッペンドルフチューブに分注し、事前に培養した乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス(入手先:ドイツ微生物寄託機関(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM))40μL(4×10個の乳酸菌が含まれる)を添加した。そこに実施例4で得た沈殿物0.5gをエタノール10mLに溶解した溶液を100μL添加した試験区、および等量エタノールのみを加えた対照区を設定した。30℃にて3日間静置培養し、波長560nmでの吸光度を測定した。この吸光度は、増殖した菌数に比例することが知られており、吸光度が高ければ高いほど増殖したことになる(W.J. Simpson and A.R.W. Smith, Journal of Applied Bacteriology, 1992, 72: 327-334)。
測定の結果、対照区は6を越える高い吸光度を示し、試験区は2程度と増殖が抑制されていること、すなわち沈殿物には抗菌性を有することが確認された(図3)。この結果から、T−フラクション以外の成分も抗菌作用を有することが明らかとなった。また、沈殿物は、ビール中で沈殿物を発生させない濃度域で抗菌作用を発揮し、抗菌剤として用いることができた。また、沈殿物を希釈したサンプルは、冷却前のサンプルに比べて強い抗菌活性を有していた(データ掲載省略)。
実施例6:イソα酸の加熱条件と沈殿物の生成量との関係
本実施例では、イソα酸の加熱条件が、冷却後の沈殿物の生成量とどのように関係するかを検討した。
具体的には、イソα酸含有量30%(重量比)溶液(スタイナー社製、米国)を用いて、重量比0.5%水溶液を作成し、かつ乳酸を用いてpH3の酸性状態とした後、該溶液の処理温度を120℃とし、処理時間を60、120または150分として、加熱処理を行った。実施例4に記載の条件でHPLC分析を行い、25±1分および27±1分で抽出されるT−フラクションのピーク面積を算出し、ピーク面積が最大となる加熱時間を調べた。このピーク面積は、内部標準物質(βフェニルカルコン)のピーク面積で標準化して、上記式(II)の内標比を求めた。
表6に示されるように、加熱時間が60分の場合は、内標比が4.1であったが、加熱時間を120分とすると内標比は4.8となり特に優良な比を示した。また、加熱時間を150分とすると内標比は4.6となり、加熱時間が120分である場合の内標比と比較すると若干低下するが、依然優良な内標比を示した。
このことから、加熱時間は60分以上が好ましく、120〜150分間加熱することがより好ましいことが明らかとなった。

Claims (7)

  1. イソα酸をpH1〜5、100〜150℃で60〜150分処理することにより得られる酸加熱分解物の冷却沈殿物を含んでなる、抗菌剤。
  2. イソα酸をpH1〜5、100〜150℃で60〜150分処理することにより得られる酸加熱分解物由来の成分であって、下記の高速クロマトグラフィ分析条件でリテンションタイムが25±1分である成分および27±1分である成分を含んでなる、抗菌剤
    <高速液体クロマトグラフィ分析条件>
    ・カラム:Alltima88052(オルテック社製)(粒径5μm×内径4.6mm×カラム長150mm)
    ・サンプル注入量:2μL
    ・移動相Aの組成:蒸留水:リン酸=1000:0.02(v/v)+EDTA0.02%(w/v)
    ・移動相Bの組成:アセトニトリル
    ・グラジエントプログラムは以下の通りである:
    分析開始時においては、移動相Aの割合を70%、移動相Bの割合を30%とし、リテンションタイムが15分までに移動相Aの割合が70%から60%、移動相Bの割合が30%から40%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが15〜22分の間は移動相Aの割合を60%、移動相Bの割合を40%とし、リテンションタイムが25分までに、移動相Aの割合が60%から48%、移動相Bの割合が40%から52%となるように、連続かつ直線的なグラジエントを行い、リテンションタイムが25〜55分の間は移動相Aの割合を48%、移動相Bの割合を52%とした
    ・移動相流速:毎分1.6mL(流速一定)
    ・検出波長:270nm。
  3. グラム陽性菌の増殖を抑制するための、請求項1または2に記載の抗菌剤。
  4. ビールテイスト飲料または清涼飲料に添加するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌剤。
  5. 請求項4に記載の抗菌剤が添加されてなる、ビールテイスト飲料または清涼飲料。
  6. イソα酸を酸性条件下で加熱処理してイソα酸の分解物を得、次いで、得られた分解物を冷却して沈殿物を得ることを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗菌剤の製造方法。
  7. 加熱処理の処理温度が100〜135℃であり、かつ、処理時間が60〜150分である、請求項6に記載の製造方法。
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