以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図12は、本実施の形態に係る貨幣処理システムを示す図である。このうち、図1は、本実施の形態における貨幣処理システムの構成の概略を示す概略構成図である。また、図2は、図1に示す貨幣処理システムにおける硬貨釣銭機、紙幣釣銭機およびPOSレジスタの外観を示す斜視図であり、図3は、図1等に示す貨幣処理システムの制御ブロック図である。また、図4は、在高不明確状態の内容や発生原因と、在高不明確状態の解除方法との関係を示すテーブル(表)であり、図5は、在高不明確状態の内容や発生原因と、精査で実行する処理との関係を示すテーブル(表)である。また、図6(a)は、預かり金計数機モードおよび釣銭機モードにおける在高異常の解除に必要な動作を示すテーブル(表)であり、図6(b)は、現金管理機モードにおける在高異常の解除に必要な動作を示すテーブル(表)である。また、図7は、図1等に示す貨幣処理システムの硬貨釣銭機や紙幣釣銭機において在高不明確状態が発生したときの精査方法を示すフローチャートであり、図8乃至図12は、図7に示すような精査方法を実行する際における操作表示部の表示内容を示す図である。
まず、本実施の形態の貨幣処理システム1の全体構成について図1および図2を用いて説明する。図1および図2に示すように、貨幣処理システム1は、硬貨釣銭機100と、紙幣釣銭機200と、POSレジスタ300とを備えている。硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200は、それぞれ硬貨や紙幣の入出金処理を行うようになっている。また、図2に示すように、硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200は左右方向に並べて配置される。また、POSレジスタ300は、硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200の上方に配置される。以下、硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200をまとめて貨幣釣銭機ともいう。
また、図1に示すように、POSレジスタ300は店舗サーバ400に通信接続されている。そして、POSレジスタ300から店舗サーバ400に売上金情報等が送信されるようになっている。また、各種設定情報が、店舗サーバ400からPOSレジスタ300(複数台でも可)に配信されるようになっている。
図1に示すように、硬貨釣銭機100は、硬貨制御部130および表示制御部140を有している。また、紙幣釣銭機200は、紙幣制御部230を有している。ここで、硬貨制御部130および紙幣制御部230はそれぞれ表示制御部140に接続されている。また、POSレジスタ300もPOS制御部330を有しており、硬貨釣銭機100の表示制御部140はPOSレジスタ300のPOS制御部330に通信接続されている。
以下、硬貨釣銭機100、紙幣釣銭機200およびPOSレジスタ300の構成について図1および図2を用いて詳述する。
まず、硬貨釣銭機100の構成について具体的に説明する。図1および図2に示すように、硬貨釣銭機100は、前部上面に操作表示部112が設けられた筐体110を備えている。ここで、本実施の形態の硬貨釣銭機100では、操作表示部112としてカラーLCDが用いられるようになっている。また、操作表示部112のそばには、例えば6つのボタンからなる操作部113が設けられている。ここで、操作表示部112における各ボタンの近傍には様々な指令キーが表示されるようになっており、各指令キーに対応するボタンを押下することにより、表示制御部140を介して硬貨制御部130や紙幣制御部230に様々な指令が与えられるようになっている。また、筐体110の前部には硬貨受入部114および硬貨払出部116が設けられている。
硬貨受入部114は、投入された硬貨を検知すると駆動され、受け入れた硬貨を1層1列状態で1枚ずつ機体内に取り込むようになっている。図1に示すように、この硬貨受入部114には、当該硬貨受入部114により機体内に取り込まれた硬貨を搬送する入金搬送部103が接続されている。
図1に示すように、入金搬送部103の途中には、硬貨の識別を行う硬貨識別部101と、分岐部104とがそれぞれ設けられている。分岐部104は、硬貨識別部101による硬貨の識別結果に基づいて、リジェクト硬貨等の、硬貨払出部116から払い出されるべき硬貨を出金搬送部108へ案内(搬送)するようになっている。
一方、正常硬貨等の機体内に収納されるべき硬貨は入金搬送部103により硬貨収納部106へ搬送されるようになっている。硬貨収納部106は硬貨を金種別に収納するようになっている。具体的には、例えば入金搬送部103の上流側から高額順に硬貨が収納される。
出金搬送部108は、硬貨収納部106から繰り出された硬貨を硬貨払出部116へ搬送するようになっている。また、出金搬送部108は、分岐部104から案内されたリジェクト硬貨等を硬貨払出部116へ搬送するようになっている。
なお、硬貨釣銭機100において、各硬貨収納部106、入金搬送部103、出金搬送部108、硬貨受入部114、硬貨払出部116等は一体型の硬貨収納庫となっており、この硬貨収納庫を筐体110から手前側に引き出すことにより、各硬貨収納部106に収納されている硬貨や、入金搬送部103や出金搬送部108でジャム等により詰まっている硬貨を取り出すことができるようになっている。
次に、紙幣釣銭機200の構成について具体的に説明する。図1および図2に示すように、紙幣釣銭機200は、筐体210と、この筐体210内の略中央部に設けられた環状の周回搬送部203aとを備えている。また、紙幣受入部214、3つの紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207が、周回搬送部203aを外周から取り囲むように配置されている。
また、紙幣釣銭機200の筐体210の内部には、紙幣受入部214、各紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207と、周回搬送部203aとの間をそれぞれ接続する複数の接続搬送部203bが形成されている。また、周回搬送部203aには紙幣識別部201が設けられており、この紙幣識別部201は、当該紙幣識別部201を通過する紙幣の識別を行うようになっている。
また、周回搬送部203aと各接続搬送部203bとの間で紙幣の搬送経路を切り換える経路切換部(図示せず)が、周回搬送部203aに沿って配置されている。
図1および図2に示すように、筐体210の前面には、紙幣受入部214の紙幣受入口214aと、紙幣払出部216の紙幣取出口216aとがそれぞれ設けられている。また、紙幣回収カセット207は筐体210に対して着脱可能に取り付けられている。
紙幣受入部214は、投入された紙幣を検知すると駆動され、紙幣受入口214aに挿入された入金紙幣を一括で取り込んで、周回搬送部203a側へ1枚ずつ繰り出すようになっている。各紙幣収納部206は、紙幣識別部201の識別結果に基づいて紙幣を金種別に収納する。紙幣払出部216は、各紙幣収納部206から周回搬送部203aに繰り出された紙幣を紙幣取出口216aより機外へ放出するようになっている。
出金リジェクト部204は、紙幣収納部206から繰り出された紙幣のうち、斜行等の搬送異常により紙幣識別部201で識別することができない紙幣を出金リジェクト紙幣として収納する。また、紙幣受入部214から機体内に取り込まれた紙幣のうち、汚損等により紙幣識別部201で識別することができない紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣払出部216に返却されるようになっている。
なお、紙幣釣銭機200において、各紙幣収納部206、紙幣受入部214、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、紙幣回収カセット207、周回搬送部203aおよび接続搬送部203b等は一体型の紙幣収納庫となっており、この紙幣収納庫を筐体210から手前側に引き出すことにより、各紙幣収納部206に収納されている紙幣、出金リジェクト部204に送られた出金リジェクト紙幣、周回搬送部203aや接続搬送部203bでジャム等により詰まっている紙幣を取り出すことができるようになっている。
次に、POSレジスタ300の構成について具体的に説明する。POSレジスタ300は、商品の購入情報を登録するとともに、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に対して硬貨や紙幣の入出金処理を行わせるようになっている。
POSレジスタ300のPOS制御部330は、図1に示すように、硬貨釣銭機100の表示制御部140に通信接続されているとともに、店舗サーバ400にも通信接続されている。そして、このPOS制御部330は、表示制御部140を介して硬貨制御部130や紙幣制御部230に指令を送ることにより硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に対して硬貨や紙幣の入出金処理を行わせるようになっている。また、POS制御部330は、硬貨制御部130や紙幣制御部230から、表示制御部140を介して、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における硬貨や紙幣の処理状況に係る情報を受け取るようになっている。
操作部304は、操作者が操作することができるようになっており、POS制御部330に対して様々な指令を与えることができるようになっている。また、表示部302は、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における硬貨や紙幣の処理状況や、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の内部に収納された硬貨や紙幣の在高を表示するようになっている。また、図2に示すように、POSレジスタ300には、客(購入者)が視認可能な追加の表示部302aが設けられており、様々な情報を表示部302に表示させる代わりに、あるいは表示部302における表示に加えて、追加の表示部302aにおいて表示が行われるようになっていてもよい。また、POSレジスタ300にはカードリーダ336およびプリンタ338が設けられている(図3参照、図1および図2では図示せず)。カードリーダ336は、操作者のIDカードを読み取ることにより操作者のIDや権限等に関する情報を取得するようになっている。また、プリンタ338は、売上レシートや集計レシートに加えて、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に収納された硬貨や紙幣の在高等の様々な情報を印字するようになっている。
図3に、上述のような構成からなる貨幣処理システム1の制御ブロック図を示す。図3に示すように、硬貨釣銭機100の表示制御部140には、操作表示部112、操作部113、記憶部144、インターフェース142等が接続されている。そして、操作者によって操作部113により入力された指令が当該操作部113から表示制御部140に送られるとともに、表示制御部140は操作表示部112に指令を送ることにより当該操作表示部112に様々な情報を表示させるようになっている。より詳細には、操作表示部112には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における硬貨や紙幣の処理状況や、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の内部に収納された硬貨や紙幣の在高を表示するようになっている。また、表示制御部140は、インターフェース142により、硬貨釣銭機100の硬貨制御部130、紙幣釣銭機200の紙幣制御部230、およびPOSレジスタ300のPOS制御部330に対してそれぞれ信号の送受信を行うようになっている。また、記憶部144には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における硬貨や紙幣の処理状況や、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の内部に収納された硬貨や紙幣の在高が記憶されるようになっている。
硬貨釣銭機100の硬貨制御部130には、インターフェース132、硬貨受入部114、入金搬送部103、硬貨識別部101、分岐部104、硬貨収納部106、出金搬送部108、硬貨払出部116、記憶部134等がそれぞれ接続されており、硬貨識別部101から硬貨制御部130に硬貨の識別結果が送られるとともに、硬貨制御部130から硬貨受入部114、入金搬送部103、分岐部104、硬貨収納部106、出金搬送部108、硬貨払出部116等の各々に対して様々な指令が送られるようになっている。また、硬貨制御部130は、インターフェース132により表示制御部140に対して信号の送受信を行うようになっている。また、記憶部134には、硬貨釣銭機100における硬貨の処理状況や、硬貨釣銭機100の内部に収納された硬貨の在高等の様々な情報が記憶されるようになっている。
また、紙幣釣銭機200の紙幣制御部230には、インターフェース232、紙幣受入部214、周回搬送部203a、接続搬送部203b、紙幣識別部201、紙幣収納部206、出金リジェクト部204、紙幣払出部216、記憶部234等がそれぞれ接続されており、紙幣識別部201から紙幣制御部230に紙幣の識別結果が送られるとともに、紙幣制御部230から紙幣受入部214、周回搬送部203a、接続搬送部203b、紙幣収納部206、出金リジェクト部204、紙幣払出部216等の各々に対して様々な指令が送られるようになっている。また、紙幣制御部230は、インターフェース232により、硬貨釣銭機100の表示制御部140に対して信号の送受信を行うようになっている。また、記憶部234には、紙幣釣銭機200における紙幣の処理状況や、紙幣釣銭機200の内部に収納された紙幣の在高等の様々な情報が記憶されるようになっている。
また、POSレジスタ300のPOS制御部330には、表示部302、操作部304、記憶部334、インターフェース332、カードリーダ336、プリンタ338等がそれぞれ接続されており、操作者により操作部304に入力された指令が当該操作部304からPOS制御部330に送られたり、カードリーダ336により読み取られた操作者のIDカードに係る情報がPOS制御部330に送られたりするようになっている。また、POS制御部330は表示部302に指令を送ることにより当該表示部302に様々な情報を表示させるようになっている。なお、POS制御部330は、表示部302に様々な情報を表示させる代わりに、あるいは表示部302における表示に加えて、追加の表示部302aにおいて表示を行わせるようになっていてもよい。また、POS制御部330はプリンタ338に指令を送ることにより当該プリンタ338により様々な情報を印字させるようになっている。また、POSレジスタ300のPOS制御部330は、インターフェース332により、硬貨釣銭機100の表示制御部140や店舗サーバ400に対して信号の送受信を行うようになっている。また、記憶部334には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から送信された、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における硬貨や紙幣の処理状況や、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の内部に収納された硬貨や紙幣の在高等の様々な情報が記憶されるようになっている。
次に、このような構成からなる貨幣処理システム1の動作について説明する。なお、以下に示す貨幣処理システム1の動作は、硬貨釣銭機100の表示制御部140や硬貨制御部130、紙幣釣銭機200の紙幣制御部230、あるいはPOSレジスタ300のPOS制御部330が、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の各構成要素をそれぞれ制御することにより行われる。
まず、硬貨釣銭機100に硬貨を入金する場合の動作について以下に説明する。硬貨釣銭機100の硬貨受入部114に硬貨が受け入れられると、硬貨受入部114は、受け入れた硬貨を1層1列状態で1枚ずつ機体内に取り込み、取り込まれた硬貨は入金搬送部103により搬送される。そして、入金搬送部103により搬送される硬貨は硬貨識別部101により硬貨の識別が行われる。硬貨識別部101による硬貨の識別結果に基づいて、リジェクト硬貨等の、硬貨払出部116から払い出されるべき硬貨であると識別された硬貨は、分岐部104により出金搬送部108へ案内(搬送)され、出金搬送部108により硬貨払出部116に搬送される。一方、硬貨識別部101による硬貨の識別結果に基づいて、正常硬貨等の機体内に収納されるべき硬貨であると識別された硬貨は、入金搬送部103により硬貨収納部106へ搬送され、当該硬貨収納部106に金種別に収納される。
また、硬貨釣銭機100から釣銭としての硬貨を出金する場合には、操作者は操作表示部112により出金されるべき硬貨の金種別の枚数や合計金額等を入力する。あるいは、POSレジスタ300のPOS制御部330から出金指令が硬貨釣銭機100の硬貨制御部130に送られることにより、硬貨釣銭機100から釣銭としての硬貨が出金されるようになる。硬貨釣銭機100の硬貨制御部130に対して出金指令が与えられると、硬貨収納部106に収納されている硬貨が当該硬貨収納部106から繰り出され、繰り出された硬貨は出金搬送部108により硬貨払出部116へ搬送される。このようにして、操作者は、硬貨払出部116から硬貨を取り出すことができるようになる。
次に、紙幣釣銭機200に紙幣を入金する場合の動作について以下に説明する。紙幣受入部214の紙幣受入口214aに紙幣が挿入されると、紙幣受入部214は、紙幣受入口214aに挿入された入金紙幣を一括で取り込んで、周回搬送部203a側へ1枚ずつ繰り出す。そして、周回搬送部203a側へ繰り出された紙幣は当該周回搬送部203aにより搬送され、この際に紙幣識別部201により紙幣の識別が行われる。紙幣識別部201により正常な紙幣であると識別された紙幣は、各紙幣収納部206に金種別に収納される。一方、紙幣受入部214から取り込まれた紙幣のうち、汚損や搬送異常等により紙幣識別部201で識別することができない紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣払出部216に返却される。
また、紙幣釣銭機200から釣銭としての紙幣を出金する場合には、操作者は操作表示部112により出金されるべき紙幣の金種別の枚数や合計金額等を入力する。あるいは、POSレジスタ300のPOS制御部330から出金指令が硬貨釣銭機100経由で紙幣釣銭機200の紙幣制御部230に送られることにより、紙幣釣銭機200から釣銭としての紙幣が出金されるようになる。紙幣釣銭機200の紙幣制御部230に対して出金指令が与えられると、紙幣収納部206に収納されている紙幣が当該紙幣収納部206から繰り出され、繰り出された紙幣は紙幣識別部201により識別された後、周回搬送部203aにより紙幣払出部216に送られる。そして、紙幣払出部216は、紙幣収納部206から送られた紙幣を紙幣取出口216aより筐体210外へ放出する。このようにして、操作者は、紙幣釣銭機200から出金された紙幣を得ることができるようになる。なお、紙幣収納部206から繰り出された紙幣のうち、斜行等の搬送異常により紙幣識別部201で識別することができない紙幣は、出金リジェクト紙幣として出金リジェクト部204に収納される。
上述のような硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200では、硬貨収納部106や紙幣収納部206からの硬貨や紙幣の繰出不良が発生したときや、入金搬送部103、出金搬送部108、周回搬送部203a、接続搬送部203b等で紙幣や硬貨のジャム等の異常が発生したとき、あるいは硬貨釣銭機100の筐体110から硬貨収納庫を引き出したり紙幣釣銭機200の筐体210から紙幣収納庫を引き出したりすることによりこれらの硬貨収納庫や紙幣収納庫を開いたりしたときには、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の機内在高が不明確になってしまう。このため、このような場合には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の機内在高を明確にするために精査処理を行う必要がある。
本実施の形態では、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて最適な精査方法を選択して出力するようになっている。ここで、在高不明確状態の内容または発生原因としては、(a)硬貨釣銭機100の硬貨収納庫や紙幣釣銭機200の紙幣収納庫が開いたこと、(b)硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の装置トラブル(例えば、バッテリーエラー)により機内在高が不明確となったこと、(c)硬貨釣銭機100の各硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の各紙幣収納部206に対する硬貨や紙幣の出し入れに関するトラブルにより実際の機内在高が計算上の機内在高と異なるようになったこと、が挙げられる。以下、上記発生原因(a)を「収納庫開」、上記発生原因(b)を「在高異常」、上記発生原因(c)を「在高差分」ともいう。
また、本実施の形態の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200では、複数の種類の精査処理を行うことができるようになっている。具体的には、精査処理として、(i)硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から全ての金種の硬貨や紙幣を回収する「全回収」、(ii)硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から一部の金種の硬貨や紙幣を回収する「金種個別回収」、(iii)硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の機内から回収された硬貨や紙幣を硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に戻す「戻し入れ動作」、(iv)紙幣釣銭機200での出金処理におけるリジェクト紙幣を出金リジェクト部204から回収する「リジェクト回収」、が挙げられる。なお、これらの精査処理の方法は硬貨釣銭機100の記憶部134や紙幣釣銭機200の記憶部234に記憶されるようになっている。
また、本実施の形態では、前述のように、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて最適な精査方法を選択して出力するようになっているが、同じ在高不明確状態の内容や発生原因でも、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の計数モードの種類によって異なる精査方法が選択されるようになっている。以下、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の各計数モードについて説明する。
硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の計数モードとしては、例えば、預かり金計数機モード、釣銭機モードおよび現金管理機モードの3つのモードがある。預かり金計数機モードとは、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に、預かり金の計数機能および釣銭の出金機能が設けられたモードのことをいう。このような預かり金計数機モードが行われているときには、レジでの運用手順は、まず、POSレジスタ300で商品の金額を計算し、次に店員が客から預かった預かり金を硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に投入し、その後これらの硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から釣銭が出金されるようになる。
また、釣銭機モードとは、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に、釣銭の出金機能のみが設けられたモードのことをいう。このような釣銭機モードが行われているときには、レジでの運用手順は、まず、POSレジスタ300で商品の金額を計算し、次に店員が客から預かった預かり金の金額をPOSレジスタ300で手入力し、その後硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から釣銭が出金されるようになる。その後、任意のタイミングで硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に硬貨や紙幣が補充される。
また、現金管理機モードとは、預かり金計数機モードと同様に、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に、預かり金の計数機能および釣銭の出金機能が設けられたモードのことをいう。このような現金管理機モードが行われているときには、レジでの運用手順は、預かり金計数機モードと同様に、まず、POSレジスタ300で商品の金額を計算し、次に店員が客から預かった預かり金を硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に投入し、その後これらの硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から釣銭が出金されるようになる。
なお、預かり金計数機モード、釣銭機モードあるいは現金管理機モードによって、出金時の在高更新のタイミングが異なるようになっている。すなわち、預かり金計数機モードや釣銭機モードでは出金処理を開始した時点で在高の更新を行うが、現金管理機モードでは出金処理が完了した時点で在高を更新する。したがって、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における出金搬送部108や周回搬送部203a上から取り出された硬貨や紙幣を、硬貨収納部106や紙幣収納部206に戻すか、あるいは硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の機外に取り出すべきかが、モードによって異なるようになる。
図3に示すように、本実施の形態では、硬貨釣銭機100の硬貨制御部130に検出手段150、出力手段152がそれぞれ接続されている。検出手段150は、硬貨釣銭機100において在高不明確状態が発生したときにこのことを検出するようになっている。また、出力手段152は、検出手段150によって在高不明確状態の発生が検出されたときに、この在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて、記憶部134に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択して出力するようになっている。また、紙幣釣銭機200の紙幣制御部230にも検出手段250、出力手段252がそれぞれ接続されている。検出手段250は、紙幣釣銭機200において在高不明確状態が発生したときにこのことを検出するようになっている。また、出力手段252は、検出手段250によって在高不明確状態の発生が検出されたときに、この在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて、記憶部234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択して出力するようになっている。
以下、在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて、記憶部134、234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択する方法について図4および図5に示すテーブル(表)を用いて説明する。
まず、図4のテーブルに、在高不明確状態の内容または発生原因と、在高不明確状態の解除方法との関係を示す。図4に示すように、解除優先度として、「(a)収納庫開」、「(b)在高異常」、「(c)在高差分」の順に優先順位が定められている。すなわち、在高不明確状態の内容や発生原因として複数のものが検出手段150、250により検出された場合には、図4における解除優先度で優先順位の高い内容や発生原因が採用されるようになる。また、対応優先度としては、「(iii)戻し入れ動作」「(ii)金種個別回収」「(i)全回収」の順に優先順位が定められている。そして、在高不明確状態の内容や発生原因が決まったときに、対応優先度の高い解除方法が用いられるようになる。図4のテーブルでは、在高不明確状態の内容や発生原因が「(a)収納庫開」または「(b)在高異常」である場合には、「(i)全回収」の精査方法が選択される。一方、在高不明確状態の内容や発生原因が「(c)在高差分」である場合には、「(iii)戻し入れ動作」「(ii)金種個別回収」「(i)全回収」のうち優先順位の高いものが用いられる。ここで、在高不明確状態の発生原因が「(c)在高差分」である場合に、実際にどの精査方法が選択されるかについては、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の計数モードによって異なるようになる。
より詳細に説明すると、現金管理機モードでは、硬貨釣銭機100の各硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の各紙幣収納部206に対する硬貨や紙幣の出し入れに関するトラブルが発生したときに、硬貨釣銭機100内や紙幣釣銭機200内において各硬貨収納部106や各紙幣収納部206に収納されていない硬貨や紙幣は全て各硬貨収納部106や各紙幣収納部206に戻すべき硬貨や紙幣として扱われるようになる。このため、在高不明確状態の内容または発生原因が「(c)在高差分」である場合には、図5に示すように「(iii)戻し入れ動作」が選択されるようになる。また、この際に、リジェクト紙幣を回収して紙幣釣銭機200の各紙幣収納部206に戻すという「リジェクト(RJ)回収」処理が選択的に行われてもよい。
一方、預かり金計数機モードや釣銭機モードでは、硬貨釣銭機100の各硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の各紙幣収納部206に対する硬貨や紙幣の出し入れに関するトラブルが発生したときに、硬貨釣銭機100内や紙幣釣銭機200内において各硬貨収納部106や各紙幣収納部206に収納されていない硬貨や紙幣の取り扱いについて、硬貨収納部106や紙幣収納部206に戻すべきか、それとも釣銭機の機体外に取り除くべきか不明となる。このため、在高不明確状態の発生原因が「(c)在高差分」である場合には、戻し入れ動作を行うことなく、代わりに「(ii)金種個別回収」または「(i)全回収」を行うようになる。また、この際に、リジェクト紙幣を回収するという「リジェクト(RJ)回収」処理が選択的に行われてもよい。
なお、図4や図5に示すテーブルは、「記憶部134、234に記憶された各精査方法と在高不明確状態の内容または発生原因との関係」として、記憶部134、234に記憶されるようになっている。そして、出力手段152、252において、このような記憶部134、234に記憶された関係を用いて、検出手段150、250によって検出された在高不明確状態の内容または発生原因に対応する精査方法が選択されるようになる。
次に、図6を用いて、硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200における在高異常の解除に必要な動作を示す。図6(a)は、預かり金計数機モードおよび釣銭機モードにおける在高異常の解除に必要な動作を示すテーブルであり、図6(b)は、現金管理機モードにおける在高異常の解除に必要な動作を示すテーブルである。
図6(a)に示すように、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の計数モードが預かり金計数機モードや釣銭機モードである場合には、硬貨釣銭機100、紙幣釣銭機200ともに、「(i)全回収」「(ii)金種個別回収」「なし」のうち何れかの精査方法が選択される。一方、図6(b)に示すように、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の計数モードが現金管理機モードである場合には、硬貨釣銭機100において「(i)全回収」「(iii)戻し入れ動作」「なし」のうち何れかの精査方法が選択され、また、紙幣釣銭機200において「(i)全回収」「リジェクト(RJ)回収+(iii)戻し入れ動作」「(iii)戻し入れ動作」「なし」のうち何れかの精査方法が選択される。
また、本実施の形態の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200では、精査処理として、「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」を行う際に、各金種の硬貨や紙幣の回収を連続的に行うようになっている。すなわち、ある金種の硬貨や紙幣が硬貨収納部106や紙幣収納部206から硬貨払出部116や紙幣払出部216に全て払い出されると、次の金種の硬貨や紙幣が引き続いて硬貨収納部106や紙幣収納部206から硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出されるようになる。
あるいは、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200において、精査処理として、「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」を行う際に、各金種の硬貨や紙幣の回収を同時に行うようになっていてもよい。この場合には、複数の金種の硬貨や紙幣が各硬貨収納部106や各紙幣収納部206から同時に出金搬送部108や周回搬送部203aに繰り出され、これらの複数の金種の硬貨や紙幣が同時に硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出されるようになる。
前述したように、検出手段150、250によって在高不明確状態の発生が検出されたときに、この在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて、出力手段152、252は、記憶部134、234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択して出力するようになっているが、出力手段152、252により出力された情報は、硬貨釣銭機100の操作表示部112に表示されるようになっている。また、出力手段152、252により出力された情報は、硬貨釣銭機100のインターフェース132、142や紙幣釣銭機200のインターフェース232により、これらの硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200とは別に設けられた外部装置(例えば、POSレジスタ300や店舗サーバ400)に送信されるようになっている。このことにより、出力手段152、252により出力された情報を、POSレジスタ300の表示部302や店舗サーバ400の表示部(図示せず)にも表示させることができるようになる。
次に、上述のような貨幣処理システム1における貨幣の処理方法、具体的には硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200において在高不明確状態が発生したときの精査方法について図7に示すフローチャートおよび図8乃至図12に示す操作表示部112の表示画面を用いて説明する。
まず、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200が正常状態である場合には、操作表示部112には、図8(a)に示すような待機画面が表示される。このときに、操作者が「精査」キーを押下すると、操作表示部112における表示画面が図8(b)に示す画面に切り替わる。そして、図8(b)に示す画面において、操作者が「精査処理」メニューを選択して「決定」キーを押下した場合には、操作表示部112には図12に示すように「異常なし 正常動作中です」というメッセージが表示される。
また、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の検出手段150、250は、これらの硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200において在高不明確状態が発生したか否かを常に監視している(図7のフローチャートのSTEP1)。そして、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200において在高不明確状態が発生したことが検出手段150、250により検出されると(STEP1の「YES」)、出力手段152、252は、在高不明確状態の内容または発生原因に基づいて、記憶部134、234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択する(STEP2)。この際に、記憶部134、234に記憶された、図4や図5のテーブルに示すような各精査方法と在高不明確状態の内容や発生原因との関係を用いて、適切な精査方法が選択されるようになる。より具体的に説明すると、例えば操作者が硬貨釣銭機100の硬貨収納庫を筐体110から手前に引き出して開いた場合には、図8(c)に示すように、硬貨釣銭機100の硬貨収納庫が開いた旨のメッセージおよび画像が操作表示部112に表示される。また、この際に、操作表示部112には、「取り出した硬貨は機内扱い」というメッセージが表示される。そして、操作者が硬貨収納庫を筐体110内に戻すと、操作表示部112には、図8(d)に示すような、「在高を確認してください」というメッセージが表示される。また、この場合には硬貨釣銭機100は在高不明確状態となるので、「精査」キーが色表示等により強調表示され、操作者に対して「精査」キーを押下することを促すようになる。その後、操作者が「精査」キーを押下すると(STEP3の「YES」)、操作表示部112における表示画面が図8(b)に示す画面に切り替わるが、この場合には、「精査処理」メニューが色表示等により強調表示される。
その後、操作者が「精査処理」メニューを選択して「決定」キーを押下すると、選択された精査方法が実行されるようになる。この際に、出力手段152、252は、選択された精査方法を出力する。出力手段152、252により出力された精査方法は操作表示部112に表示されるようになる。また、出力手段152、252により出力された精査方法はインターフェース142等を介してPOSレジスタ300や店舗サーバ400に送信される。
精査方法として「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」が選択された場合には、在高不明確状態を解消するための対応方法が操作表示部112に表示されるようになる(STEP11)。具体的には、図9A(a)に示すような画面が操作表示部112に表示される。そして、操作者が「決定」キーを押下すると(STEP12の「YES」)、在高不明確状態を解消するための対応方法が実行される(STEP13)。具体的には、硬貨釣銭機100の硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の紙幣収納部206から全ての金種の硬貨や紙幣、あるいは特定の金種の硬貨や紙幣が硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出される。この際に、操作表示部112には図9A(b)に示すような画面が表示される。また、硬貨釣銭機100の硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の紙幣収納部206から硬貨や紙幣が払い出される際に、これらの硬貨や紙幣の計数が行われる。そして、硬貨払出部116や紙幣払出部216への硬貨や紙幣の払い出しが終了すると、図9A(c)に示すように、「回収終了」というメッセージが操作表示部112に表示される。そして、操作者が硬貨払出部116や紙幣払出部216から硬貨や紙幣を取り出し、「終了」キーを押下すると、操作表示部112における表示画面は図9A(d)に示すような精査メニュー画面に戻り、このような精査メニュー画面で「戻る」キーを更に押下すると、操作表示部112における表示画面は図8(a)に示す待機画面に戻る。なお、図9A(b)に示す画面において操作者が「中止」キーを押下すると、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200からの硬貨や紙幣の払い出し動作が中止となり、操作表示部112における表示画面は図9B(d)に示すような精査メニュー画面に戻る。
その後、操作者が図8(a)に示すような操作表示部112において「補充」キーを押下することにより、操作表示部112における表示画面は図9B(e)に示すような画面に切り替わる。そして、払い出された硬貨や紙幣を操作者が硬貨受入部114や紙幣受入部214に投入することにより、これらの硬貨や紙幣が硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に収納されるようになる(STEP14)。このようにして、「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」に係る精査処理が終了する。
また、精査方法として「(iii)戻し入れ動作」が選択された場合にも、在高不明確状態を解消するための対応方法が操作表示部112に表示されるようになる(STEP21)。具体的には、図10(a)に示すような画面が操作表示部112に表示される。なお、精査方法として「(iii)戻し入れ動作」を行う際に、出金リジェクト部204に送られた出金リジェクト紙幣の回収も選択的に行うことができるようになっている。出金リジェクト紙幣の回収を行う場合には、図10(a)に示すような画面が操作表示部112に表示されているときに操作者が「決定」キーを押下すると、操作表示部112における表示画面が図10(b)に示すような画面に切り替わる。この際に、操作表示部112には、「リジェクト部の紙幣を抜き取ってください」というメッセージが表示されるとともに、出金リジェクト部204に収納されている出金リジェクト紙幣の抜き取り方法の画像が表示される。そして、出金リジェクト紙幣を回収した後、戻し入れすべき硬貨や紙幣を操作者が硬貨受入部114や紙幣受入部214に投入すると、操作表示部112には図10(c)に示すような画面が表示される。なお、戻し入れ動作を行う場合には、在高加算は行われない。そして、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200への硬貨や紙幣の戻し入れ動作が終了すると、操作表示部112における表示画面は図10(d)に示すような精査メニュー画面に戻り、このような精査メニュー画面で「戻る」キーを更に押下すると、操作表示部112における表示画面は図8(a)に示す待機画面に戻る。このようにして、「(iii)戻し入れ動作」に係る精査処理が終了する。なお、図10(b)に示す画面において操作者が「中止」キーを押下すると、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200への硬貨や紙幣の戻し入れ動作が中止となり、操作表示部112における表示画面は図10(d)に示すような精査メニュー画面に戻る。
また、精査方法として「(i)全回収+(iii)戻し入れ動作」が選択された場合にも、在高不明確状態を解消するための対応方法が操作表示部112に表示されるようになる(STEP31)。ここで、「(i)全回収+(iii)戻し入れ動作」とは、現金管理機モードにおいて、硬貨について全回収を行い紙幣について戻し入れ動作を行うパターン、あるいは紙幣について全回収を行い硬貨について戻し入れ動作を行うパターンのことをいう(図6(b)のテーブルにおける符号Cで示される欄参照)。在高不明確状態を解消するための対応方法を操作表示部112に表示するにあたり、図11A(a)に示すような画面が操作表示部112に表示される。そして、操作者が「決定」キーを押下すると(STEP32の「YES」)、在高不明確状態を解消するための対応方法が実行される(STEP33)。具体的には、戻し入れすべき硬貨または紙幣を操作者が硬貨受入部114や紙幣受入部214に投入することにより、硬貨または紙幣の戻し入れ動作が行われる。この際に、操作表示部112には図11A(b)に示す画面が表示される。そして、硬貨または紙幣の戻し入れ動作が終了した後、操作者が「次へ」キーを押下することにより、全ての金種の硬貨、または全ての金種の紙幣が硬貨釣銭機100または紙幣釣銭機200から払い出される。この際に、操作表示部112には図11A(c)に示すような画面が表示される。ここで、硬貨釣銭機100または紙幣釣銭機200から硬貨または紙幣が払い出される際に、硬貨または紙幣の計数が行われる。そして、硬貨または紙幣の払い出しが終了すると、図11A(d)に示すように、「回収終了」というメッセージが操作表示部112に表示される。そして、操作者が硬貨払出部116や紙幣払出部216から硬貨や紙幣を取り出し、「終了」キーを押下すると、操作表示部112における表示画面は図11B(e)に示すような精査メニュー画面に戻り、このような精査メニュー画面で「戻る」キーを更に押下すると、操作表示部112における表示画面は図8(a)に示す待機画面に戻る。なお、図11A(b)や図11A(c)に示す画面において操作者が「中止」キーを押下すると、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200からの硬貨や紙幣の払い出し動作や全回収処理が中止となり、操作表示部112における表示画面は図11B(e)に示すような精査メニュー画面に戻る。
その後、操作者が図8(a)に示すような操作表示部112において「補充」キーを押下することにより、操作表示部112における表示画面は図11B(f)に示すような画面に切り替わる。そして、払い出された硬貨または紙幣を操作者が硬貨受入部114または紙幣受入部214に投入することにより、払い出された硬貨または紙幣が硬貨釣銭機100または紙幣釣銭機200に収納されるようになる(STEP34)。このようにして、「(i)全回収+(iii)戻し入れ動作」に係る精査処理が終了する。
以上のように本実施の形態の貨幣釣銭機や貨幣処理システム1によれば、検出手段150、250によって在高不明確状態の発生が検出されたときに、出力手段152、252は、この在高不明確状態の内容あるいは発生原因に基づいて、記憶部134、234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択して出力するようになっている。このように、貨幣釣銭機における在高不明確状態の内容や発生原因に基づいて適切な精査方法を選択して出力することにより、操作者の熟練度に依存することなく適切な精査方法を実行することができる。
また、本実施の形態の貨幣釣銭機や貨幣処理システム1においては、前述のように、記憶部134、234は、当該記憶部134、234に記憶された各精査方法と在高不明確状態の内容あるいは発生原因との関係も記憶するようになっている。具体的には、記憶部134、234は、「記憶部134、234に記憶された各精査方法と在高不明確状態の内容または発生原因との関係」として、図4や図5に示すテーブルの内容を記憶するようになっている。そして、出力手段152、252において、このような記憶部134、234に記憶された関係を用いて、検出手段150、250によって検出された在高不明確状態の内容または発生原因に対応する精査方法が選択されるようになっている。
また、本実施の形態の貨幣釣銭機や貨幣処理システム1においては、精査処理として、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から全ての金種の硬貨や紙幣を回収する全回収、または硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から一部の硬貨や紙幣の貨幣を回収する金種個別回収を行う際に、各金種の硬貨や紙幣の回収を連続的に行うようになっている。すなわち、ある金種の硬貨や紙幣が硬貨収納部106や紙幣収納部206から硬貨払出部116や紙幣払出部216に全て払い出されると、次の金種の硬貨や紙幣が引き続いて硬貨収納部106や紙幣収納部206から硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出されるようになる。このことにより、1金種ずつ硬貨や紙幣の精査処理を別々に行い、一つの金種の硬貨や紙幣の精査処理が終わると次の金種の硬貨や紙幣の精査処理の開始を改めて指示するような従来の方法と比較して、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から硬貨や紙幣を回収する動作を迅速に行うことができるとともに、操作者にとっての負担を軽減することができる。
また、前述のように、本実施の形態の貨幣釣銭機や貨幣処理システム1においては、精査処理として、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から全ての金種の硬貨や紙幣を回収する全回収、または硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から一部の硬貨や紙幣の貨幣を回収する金種個別回収を行う際に、各金種の硬貨や紙幣の回収を同時に行うようになっていてもよい。この場合には、複数の金種の硬貨や紙幣が各硬貨収納部106や各紙幣収納部206から同時に出金搬送部108や周回搬送部203aに繰り出され、これらの複数の金種の硬貨や紙幣が同時に硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出されるようになる。このような各金種の硬貨や紙幣の回収を同時に行う方法を用いた場合でも、一つの金種の硬貨や紙幣の精査処理が終わると次の金種の硬貨や紙幣の精査処理の開始を改めて指示するような従来の方法と比較して、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から硬貨や紙幣を回収する動作を迅速に行うことができるとともに、操作者にとっての負担を軽減することができる。
また、本実施の形態の貨幣釣銭機において、硬貨や紙幣の出金処理を行う際に各硬貨収納部106や各紙幣収納部206から繰り出された硬貨や紙幣に関するトラブルにより実際の在高が計算上の在高と異なるようになり、検出手段150、250により在高不明確状態の発生が検出されたときに、全ての金種ではないが複数の金種の硬貨や紙幣の精査処理を行うことができるようになっている。すなわち、例えば硬貨釣銭機100において硬貨の出金処理を行う際に各硬貨収納部106から繰り出された硬貨に関するトラブルにより実際の在高が計算上の在高と異なるようになり、検出手段150により在高不明確状態の発生が検出されたときに、1円、5円、10円、50円、100円、500円という6つの金種のうち、2つ〜5つの金種の硬貨の精査処理を行うことができるようになっている。このことにより、全ての金種の硬貨の精査処理を行う場合と比較して、精査処理にかかる時間を短くすることができる。しかも、複数の金種の硬貨について在高が不明確である場合でも、これらの複数の金種の硬貨の精査処理を一度に行うことができるようになり、一つの金種の硬貨や紙幣の精査処理が終わると次の金種の硬貨や紙幣の精査処理の開始を改めて指示するような従来の方法と比較して、精査処理にかかる時間を短くすることができる。
なお、本実施の形態による貨幣釣銭機やこの貨幣釣銭機が設けられた貨幣処理システムは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
変形例に係る硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200では、出力手段152、252により、記憶部134、234に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法が選択されて出力されたときに、出力された精査方法を自動的に行うようになっていてもよい。例えば、出力手段152、252により精査方法として「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」が選択されたときに、硬貨釣銭機100の硬貨収納部106や紙幣釣銭機200の紙幣収納部206から全ての金種の硬貨や紙幣、あるいは特定の金種の硬貨や紙幣が自動的に硬貨払出部116や紙幣払出部216に払い出されるようになっていてもよい。
また、前述のように、出力手段152、252により出力された情報は、操作表示部112に表示される代わりに、あるいは操作表示部112に表示されることに加えて、POSレジスタ300の表示部302にも表示されるようになっていてもよい。また、POSレジスタ300以外の外部装置に設けられた表示部に、出力手段152、252により出力された情報が表示されるようになっていてもよい。そして、操作者は、POSレジスタ300の表示部302等に表示された精査方法を見ながら、このPOSレジスタ300の操作部304等により精査処理の実行を指令することができるようになる。この場合には、硬貨釣銭機100の操作表示部112に精査方法が表示される場合と比較して、POSレジスタ300の表示部302等ではより大きな画面で精査方法の表示を行うことができるので、操作者にとって精査方法が見やすくなり、また操作しやすくなるという利点がある。
また、本実施の形態では、硬貨釣銭機100および紙幣釣銭機200を組み合わせた貨幣釣銭機ではなく、硬貨釣銭機100単体、または紙幣釣銭機200単体でも精査処理を行うことができるようになっていてもよい。なお、紙幣釣銭機200単体で精査処理を行う場合には、この紙幣釣銭機200に表示部や操作部が設けられていることが好ましい。
また、本実施の形態では、硬貨釣銭機として、図1に示すような構成の代わりに、図13に示すような一時保留部が設けられた構成のものが用いられてもよい。以下、図13に示すような硬貨釣銭機100aの構成について説明する。
図13に示すような硬貨釣銭機100aでは、入金搬送部103における分岐部104と各硬貨収納部106の間に一時保留部180が設けられている。そして、硬貨受入部114に受け入れられ、硬貨識別部101により識別された硬貨は一時保留部180に一旦保留され、その後、操作者が入金確定の指令を操作部113により与えることによって、一時保留部180に一時的に保留された硬貨が各硬貨収納部106に送られるようになっている。また、図13に示すような硬貨釣銭機100aでは、出金搬送部108にも追加の分岐部109が設けられており、この分岐部109により、各硬貨収納部106から繰り出されて出金搬送部108により搬送される硬貨を一時保留部180に分岐させることができるようになっている。
このような硬貨釣銭機100aでは、精査方法として、既に説明した様々な精査方法に加えて、各硬貨収納部106から硬貨を繰り出して出金搬送部108により搬送し、搬送される硬貨を分岐部109により一時保留部180に分岐させてこの一時保留部180で一時的に保留し、その後一時保留部180に保留された硬貨を各硬貨収納部106に戻すような機内循環処理も用いられるようになっている。ここで、このような機内循環処理が行われる際に、各硬貨収納部106から硬貨が繰り出されるときにこの硬貨の計数が行われる。このような機内循環処理に係る精査方法も記憶部134に記憶されるようになっている。
図13に示すような硬貨釣銭機100aでも、図1等に示すような硬貨釣銭機100と同様に、検出手段150によって在高不明確状態の発生が検出されたときに、出力手段152は、この在高不明確状態の内容または発生原因に基づいて、記憶部134に記憶された複数の精査方法のうち特定の精査方法を選択して出力するようになっているが、特定の精査方法として、上述のような機内循環処理に係る精査方法が選択される場合もある。具体的には、図13に示すような硬貨釣銭機100aでは、精査方法として、「(i)全回収」や「(ii)金種個別回収」が選択される代わりに機内循環処理が選択されるようになる。
図13に示すような硬貨釣銭機100aの更なる変形例として、一時保留部180が硬貨釣銭機100aの筐体110内に設けられる代わりに、一時保留部180が硬貨釣銭機100aの筐体110の外部に着脱自在に取り付けられるようになっていてもよい。このような更なる変形例では、精査方法として機内循環処理を行う場合に、各硬貨収納部106から硬貨が繰り出されて出金搬送部108により搬送され、硬貨払出部116に送られた硬貨が自動的に一時保留部180に保留され、その後、一時保留部180に保留された硬貨が自動的に硬貨受入部114によって筐体110内に受け入れられて各硬貨収納部106に戻されるようになる。このような更なる変形例でも、機内循環処理に係る精査方法を適切に行うことができる。