JP6021150B2 - 耐低温性樹脂組成物及びそれを用いた超電導線材 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば金属基板上に希土類系酸化物超電導体による超電導層が形成され、その上に絶縁被覆層が形成されたテープ状の超電導線材の前記絶縁被覆層として使用される耐低温性樹脂組成物及びそれを用いた超電導線材に関する。
近年、プリント配線板における配線の高密度化に伴い、用いられる接着剤には十分な熱伝導性のほか、高温領域における電気絶縁性、高い銅箔接着性などが要求されている。そのような要求を満たすため、特許文献1には電気回路、金属箔又は回路基板と放熱板とを接着するための耐熱性接着剤が開示されている。
この耐熱性接着剤は、平均粒子径0.01〜10μmの微粒子からなる熱可塑性エラストマーが分散されて構成されている。該耐熱性接着剤として具体的には、シロキサン変性ポリアミドイミド、熱硬化性樹脂及び前記熱可塑性エラストマーと、無機フィラーとを含有するものである。前記熱可塑性エラストマーとしては、ブタジエン重合体ゴム、ブタジエン共重合体ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィンゴム又はそれらの混合物が用いられる。
特開2004−217862号公報
前述した特許文献1に記載されている従来構成の耐熱性接着剤においては、耐熱性を有する樹脂や熱可塑性エラストマーを使用していることから、150℃という高温においても耐え得ることができ、接着性能を保持することができる。しかしながら、例えば超電導線材による超電導コイルが使用される−270℃〜−190℃という極低温においては、前記樹脂や熱可塑性エラストマーが極度に硬く、脆くなり、耐性を失うとともに、接着剤としての機能を十分に発揮することは難しいという問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、極低温において十分な耐性を有するとともに、優れた接着強度を発揮することができ、超電導線材として好適に使用することができる耐低温性樹脂組成物及びそれを用いた超電導線材を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の耐低温性樹脂組成物は、下記に示す一般式(1)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、無機フィラーとして窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム又は炭酸カルシウムとを含有し、前記無機フィラーの含有量が2〜75体積%であるとともに、−270℃〜−190℃の極低温で用いられることを特徴とする。
但し、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)<1を示し、m+nは0より大きく、200以下の正数である。Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。
請求項2に記載の発明の耐低温性樹脂組成物は、請求項1に係る発明において、前記無機フィラーは板状に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の耐低温性樹脂組成物は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記無機フィラーの含有量は、5〜70体積%であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の耐低温性樹脂組成物は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記無機フィラーは、窒化ホウ素又は酸化マグネシウムであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の耐低温性樹脂組成物は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、エポキシ樹脂と、その硬化剤とを含有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明の超電導線材は、基板上に中間層を介してイットリウム系酸化物超電導体の超電導層が形成され、その超電導層上に金属層が形成されるとともに、それらの外周部に絶縁被覆層が形成されたテープ状をなす超電導線材であって、前記絶縁被覆層は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐低温性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明の超電導線材は、請求項6に係る発明において、前記金属層は、銅層であることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の耐低温性樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、無機フィラーとして窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム又は炭酸カルシウムとを含有し、−270℃〜−190℃の極低温で用いられるものである。そして、耐低温性樹脂組成物は、例えば超電導線材の銅箔上に塗布され、硬化されて絶縁被覆層が形成される。このとき、耐低温性樹脂組成物は、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を含有していることから、耐低温性、低温での接着性及び柔軟性を有している。一方、無機フィラーとしての例えば窒化ホウ素の窒素原子と芳香族ポリアミド樹脂のイミノ基との間の親和性によりスキン層が形成されるとともに、無機フィラーと銅箔表面との間に分子間力が働き、絶縁被覆層と銅箔との間の接着性が向上する。
このため、超電導線材から超電導コイルを製造する際に受ける曲げ応力や超電導コイルを液体窒素や液体ヘリウムで冷却するときに受ける熱膨張率の差に基づく応力が超電導線材に作用したとき、その応力が絶縁被覆層で十分に受け止められる。その結果、超電導線材の各層間、特に超電導層の剥離を防止しつつ、超電導コイルの製作を円滑に行うことができるとともに、超電導コイルを安定した状態で使用することができる。従って、超電導線材から製作される超電導コイルを−270℃〜−190℃という極低温で使用した場合でも、絶縁被覆層は銅箔に対する良好な密着性を発現でき、その密着性を長時間維持することができる。
さらに、芳香族ポリアミド樹脂は低温での熱伝導性に優れており、無機フィラーも熱伝導性を高める機能を有していることから、超電導線材の冷却時における冷却効率を高めることができる。加えて、芳香族ポリアミド樹脂は、低温での電気絶縁性に優れていることから、絶縁被覆層の電気絶縁機能が良好に維持される。
従って、本発明の耐低温性樹脂組成物によれば、極低温において十分な耐性を有するとともに、優れた接着強度を発揮することができ、超電導線材として好適に使用することができるという効果を奏する。
本発明を具体化した実施形態における超電導線材を示す断面図。 (a)は超電導線材の銅箔と板状の無機フィラーとの間にスキン層が介在された状態を模式的に示す断面図、(b)は超電導線材の銅箔と粒状の無機フィラーとの間にスキン層が介在された状態を模式的に示す断面図。 応用例1の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 応用例2の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 応用例3の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 応用例4の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 応用例5の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 応用例6の超電導コイルの超電導特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。
以下、本発明の耐低温性樹脂組成物を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の耐低温性樹脂組成物は、下記に示す一般式(1)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂〔以下、成分(A)という〕と、無機フィラーとして窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム又は炭酸カルシウム〔以下、成分(B)という〕とを含有し、−270℃〜−190℃の極低温で用いられるものである。
但し、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)<1を示し、m+nは0より大きく、200以下の正数である。Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。
一般式(1)におけるArは二価の芳香族基を、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基を、Arは二価の芳香族基をそれぞれ表す。尚、本明細書において「二価の芳香族基」とは、その構造中に少なくとも一つの芳香族基を有する化合物の芳香環から水素原子を二個除いた構造を意味しており、例えばジフェニルエーテルにおいて酸素を挟んで両側に位置する別々のベンゼン環から、それぞれ一つずつ水素原子を除いた構造も本明細書でいう「二価の芳香族基」の範疇に含まれる。
一般式(1)におけるArの具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸、4.4’−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3’−カルボニル二安息香酸、4,4’一カルボニル二安息香酸、4,4’−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び1,2−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸類から二個のカルボキシル基を除いた残基が挙げられ、イソフタル酸又はテレフタル酸の残基が好ましく、イソフタル酸の残基がより好ましい。
一般式(1)におけるArの具体例としては、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸及び2−ヒドロキシテレフタル酸等のフェノール性水酸基を有するジカルボン酸類から二個のカルボキシル基を除いた残基が挙げられ、5−ヒドロキシイソフタル酸の残基が好ましい。
一般式(1)におけるArの具体例としては、下記のジアミン類から二個のアミノ基を除いた残基が挙げられる。Ar用のジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン及びm−トリレンジアミン等のフェニレンジアミン類;3.3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類;3,3’一ジメチル−4.4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル及び3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルチオエーテル類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等のアミノフェノキシベンゼン類;4,4’−ジアミノベンゾフェノン及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン類;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン類;ベンチジン、3,3’−ジメチルベンチジン、2,2’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン及び2,2’−ジメトキシベンチジン等のベンチジン類;3,3’−ジアミノビフェニル;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン及びo−キシリレンジアミン等のキシリレンジアミン類並びに4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン類等が挙げられる。これらの中で、フェニレンジアミン類、ジアミノジフェニルメタン類又はジアミノジフェニルエーテル類が好ましく、ジアミノジフェニルメタン類又はジアミノジフェニルエーテル類がより好ましい。得られる樹脂の溶剤溶解性や難燃性の面から、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
一般式(1)におけるm及びnは、0.005≦n/(m+n)<1及び0<m+n≦200の関係を満たす平均繰り返し数を表す。n/(m+n)の好ましい範囲は、0.005≦n/(m+n)≦0.5であり、より好ましくは0.005≦n/(m+n)<0.25、さらに好ましくは0.005≦n/(m+n)≦0.2である。また、場合により、0.005≦n/(m+n)<0.1でもよい。なお、m+nは好ましくは2〜200、より好ましくは10〜100、最も好ましくは20〜80である。
一般式(1)におけるn/(m+n)の値が小さくなり過ぎる場合には、後述するエポキシ樹脂〔以下、成分(C)という)中のエポキシ基と成分(A)中のフェノール性水酸基との架橋反応が十分に進行せず、硬化物の耐低温性や機械的強度等が低下する。また、m+nの値が大きくなり過ぎる場合には、溶剤溶解性が極端に低下するため、成分(A)の生産性やワニスとしての作業性に問題が生じる。
一般式(1)におけるポリアミド樹脂の両末端は、ジアミン成分のアミノ基、ジカルボン酸成分のカルボキシル基又は両者の混合のいずれでも良いが、ジアミン成分を小過剰で反応させて得られる両末端にアミノ基を有するポリアミド樹脂が好ましい。
一般式(1)のポリアミド樹脂のフェノール性水酸基当量は、8000〜35000g/eqが好ましく、10000〜25000g/eqがより好ましく、12000〜20000は最も好ましい。また、該ポリアミド樹脂の活性水素当量は3500〜10000g/eqが好ましく、4000〜8000がより好ましい。
耐低温性樹脂組成物の総量に対する成分(A)の含有量は、好ましくは30〜95体積%、より好ましくは40〜90体積%、特に好ましくは50〜80体積%である。前記成分(A)は、前記のジカルボン酸類、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸類及びジアミン類を用い、常法に従って合成することができる。
耐低温性樹脂組成物には、成分(A)及び成分(B)に加えて、成分(C)としてのエポキシ樹脂を配合することができる。この場合、前記成分(A)を成分(C)の硬化剤(架橋成分)として使用することができる。成分(C)のエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に制限されない。具体的にはノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール縮合型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は2種以上を併用することもできる。好ましいエポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、例えばNC−3000〔日本化薬(株)製)〕等が挙げられる。
耐低温性樹脂組成物における成分(C)の含有量は、成分(A)及び場合により併用される後述するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素1当量に対して、成分(C)のエポキシ基が通常0.5〜2.0当量、好ましくは0.7〜1.5当量、より好ましくは0.8〜1.3当量となる量である。尚、ここでいう活性水素当量とは、エポキシ基と反応しうる官能基に含まれる電気陰性度の大きな原子に結合した水素原子の当量を示す。一般式(1)のポリアミド樹脂における活性水素は、フェノール性水酸基の水素原子及び末端アミノ基における1つの水素原子が該当する。成分(A)100質量部に対する成分(C)の含有量は、通常2〜50質量部、好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。
耐低温性樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化剤〔以下、成分(D)という〕を配合してもよい。硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノールノボラック等の多価フェノール化合物、トリフェニルメタン及びこれらの変性物、イミダゾール、フッ化ホウ素(BF)−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、使用態様により適宜選択すればよい。
例えば好ましい1つの態様においては、多価フェノール化合物が使用され、好ましくはフェノール、ホルムアルデヒド及びベンゼン又はビフェニル等を縮合反応させることにより得られるフェノールノボラックが好ましく、フェノール、ホルムアルデヒド及びビフェニルの縮合反応で得られるフェノールノボラックがより好ましい。
その他の硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザービシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。この硬化剤としては、イミダゾール類が好ましい。成分(D)の使用量は、成分(C)100質量部に対して好ましくは0.1〜20.0質量部である。
次に、前記無機フィラーは、窒化ホウ素(BN)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化アルミニウム(AlN)又は炭酸カルシウム(CaCO)である。この無機フィラー(2次凝集粒子)の平均粒子径は、接着性や熱伝導性の観点から好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜60μm、特に好ましくは30〜55μmである。この平均粒子径が15μmを下回る場合には板状の無機フィラーが得られ難く、接着性や熱伝導性が低下する一方、80μmを上回る場合には製造が困難になったりして好ましくない。
例えば、窒化ホウ素は鱗片状の微小結晶で、結晶の平均粒子径が2μm以下のもの、結晶の長径が10μm以下のもの等が知られている。これらの微小結晶は、通常凝集して比較的大きな2次凝集粒子を形成する。原料として大きな2次凝集粒子の窒化ホウ素を用いるときには、適宜耐低温性樹脂組成物中に分散する窒化ホウ素の2次凝集粒子の大きさが、上記の範囲になるよう粉砕等で、適宜調整することが好ましい。予め、窒化ホウ素の粒子径を撹拌混合などによって調整するか、又は他の原料との撹拌混合若しくは混練の際に、2次粒子の調整を行っても良い。
平均粒子径は、撹拌混合中の液をサンプリングして、測定すればよい。平均粒子径の測定はグラインドゲージ(粒度ゲージ)又はレーザ回折粒度分布測定装置で行うことができる。
無機フィラーが前記成分(A)の芳香族ポリアミド樹脂に配合される場合には、ロール等を用いて混練されることから、無機フィラーは板状に形成される。板状の無機フィラーは、厚さ1〜10μm、縦、横の長さが10〜30μm程度の大きさに形成される。無機フィラーが板状に形成されることにより、耐低温性樹脂組成物が銅等の金属表面に塗布されたときには、板状の無機フィラーがスキン層を介して金属表面に密着され、粒状の無機フィラーに比べて良好な密着性が発揮される。
無機フィラーの含有量は、耐低温性樹脂組成物(固形分)中に好ましくは5〜70体積%、より好ましくは10〜60体積%、特に好ましくは20〜50体積%である。無機フィラーの含有量が5体積%より少ない場合、耐低温性樹脂組成物による接着性や熱伝導性の向上を図ることが難しくなる。その一方、70体積%より多い場合、かえって接着性の低下を招くとともに、柔軟性が悪化し、電気的信頼性が低下する傾向を示す。
この無機フィラーとしては、レーザーフラッシュ法で測定した熱伝導率が3W/m・K以上のものが好ましく、5W/m・K以上のものがより好ましい。窒化ホウ素の熱伝導率は、30〜60W/m・K、酸化マグネシウムの熱伝導率は45〜60W/m・K、窒化アルミニウムの熱伝導率は70〜270W/m・K、炭酸カルシウムの熱伝導率は0.4〜0.6W/m・Kである。従って、これらの無機フィラーのうち、熱伝導率の観点から窒化ホウ素、酸化マグネシウム及び窒化アルミニウムが好ましく、接着性の観点から窒化ホウ素及び酸化マグネシウムが好ましい。
耐低温性樹脂組成物には、前記成分(A)〜成分(D)以外の添加剤、例えばカップリング剤、イオン捕捉剤及び有機溶剤等を必要により添加してもよい。カップリング剤は特に限定されないが、シランカップリング剤が好ましく、その具体例としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらカップリング剤の含有量は、耐低温性樹脂組成物の用途や成分(D)の含有量、カップリング剤の種類等に応じて選択すればよく、耐低温性樹脂組成物中に通常0〜5質量%である。
前記イオン捕捉剤は特に限定されないが、例えば銅がイオン化して溶け出すのを防ぐための銅害防止剤として知られるトリアジンチオール化合物や2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第3−ブチルフェノール)などのビスフェノール系還元剤、無機イオン吸着剤としてのジルコニウム系化合物、アンチモンビスマス系化合物、マグネシウムアルミニウム系化合物及びハイドロタルサイト等が挙げられる。これらイオン捕捉剤を添加することにより、イオン性不純物が吸着されて吸湿時の電気信頼性を向上させることができる。イオン捕捉剤の含有量は、その効果や耐熱性、コスト等の兼ね合いから耐低温性樹脂組成物中に通常0〜5質量%である。
耐低温性樹脂組成物は、有機溶剤に溶解したワニスとして用いることができる。用いられる有機溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン等のラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン及びキシレン等の芳香族溶剤が挙げられる。これらの中で、ラクトン類、アミド系溶剤又はケトン系溶剤が好ましく、ラクトン類又はアミド系溶剤がより好ましい。これら有機溶剤の含有量は、耐低温性樹脂組成物のワニスの総量中に通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。耐低温性樹脂組成物(固形分)100質量部に対する有機溶剤の含有量としては好ましくは30〜500質量部、より好ましくは70〜300質量部、特に好ましくは100〜200質量部である。
前記ワニスは、成分(B)の無機フィラー以外の成分を混合撹拌しながら、成分(B)を少しずつ添加して製造することができる。成分(B)の分散を考慮した場合、擂潰機、3本ロール、ビーズミルなどにより、又はこれらの組み合わせにより撹拌混合若しくは混練することにより製造することができる。また、成分(B)と低分子量成分〔例えばエポキシ樹脂の硬化剤及びその他の添加剤等〕を予め混合した後、高分子量成分〔例えば成分(A)等〕を配合することにより、混合に要する時間を短縮することができる。また、各成分を混合する際に、ワニスからその内部に含まれる気泡を真空脱気により除去することが好ましい。
耐低温性樹脂組成物は、前記ワニスを対象物に塗布した後、加熱して硬化するか、又は有機溶剤を乾燥させた後加熱して硬化させることができる。耐低温性樹脂組成物を硬化させるときの硬化温度は、耐低温性樹脂組成物の組成によるが、130〜180℃が好ましい。
次に、前記フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂(A)の具体的な製造方法について説明する。
温度計、冷却管、分留管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素パージを施しながら、5−ヒドロキシイソフタル酸、イソフタル酸、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、塩化リチウム、N−メチルピロリドン及びピリジンを加えて撹拌溶解させる。次いで、亜リン酸トリフェニルを加えて95℃で4時間縮合反応をさせることにより、成分(A)を含む反応液が得られる。この反応液を撹拌しながら、90℃で水を3時間かけて滴下し、さらに90℃で1時間撹拌する。その後、60℃まで冷却して30分間静置すると、上層が水層、下層が油層(樹脂層)に層分離し、上層をデカンテーションによって除去する。得られた油層(樹脂層)にN,N−ジメチルホルムアミドを加え、希釈液とする。
該希釈液に水を添加し、静置して層分離後、デカンテーションにより水層を除去する。この水洗工程を複数回繰り返して成分(A)の洗浄を行う。洗浄終了後、得られる成分(A)の希釈液を、撹拌された水中に2流体ノズルを用いて噴霧し、析出した平均粒子径5〜50μmの成分(A)の微粉を濾別する。得られた析出物のウェットケーキを、メタノールに分散させ、撹拌下で2時間還流する。次いで、メタノールを濾別し、濾取した析出物を水で洗浄後、乾燥することにより、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を構造中に有する成分(A)が得られる。
以上のようにして得られる耐低温性樹脂組成物は、−270℃〜−190℃という極低温で使用される超電導機器、その他の低温用機器等に好適に使用される。具体的には、例えば超電導線材の絶縁被覆層として用いられる。この超電導線材について説明する。図1に示すように、超電導線材11はテープ形状をなし、基板12上に中間層13を介してイットリウム系酸化物超電導体の超電導層14が形成され、その超電導層14上に第1安定化層15及び第2安定化層16が被覆され、それら各層の外周部を覆うように絶縁被覆層17が被覆されて構成されている。
前記基板12は、ニッケル合金〔ハステロイ(登録商標)〕、銀、銀合金等の金属により、例えば厚さ100μm、幅10mmに形成されている。なお、ハステロイは、ニッケルを主成分とし、クロム、モリブデン等を含む合金で、耐熱性、機械的強度等が良好である。中間層13は、ガドリニウム・ジルコニウム酸化物(Gd・Zr酸化物)、酸化マグネシウム(MgO)、イットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、バリウム・ジルコニウム酸化物(Ba・Zr酸化物)、酸化セリウム(CeO)等の化合物により、例えば厚さ500nm、幅10mmに形成されている。
超電導層14は、希土類系酸化物超電導体のCVD法(化学蒸着法)により、例えば厚さ約1μm、幅10mmに形成されている。希土類元素としては、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられる。希土類系酸化物としては、RE・Ba・Cu・O等が挙げられる。但し、REは希土類元素を表す。この超電導層14として具体的には、イットリウム・バリウム・銅酸化物(Y・Ba・Cu酸化物)、ランタン・バリウム・銅酸化物(La・Ba・Cu酸化物)等が挙げられる。
第1安定化層15は、銀等の金属のスパッタリング等により、例えば厚さ約15μm、幅10mmに形成されている。第2安定化層16は、銅層として例えば厚さ100μmの銅箔が第1安定化層15に貼り合せて形成されている。
絶縁被覆層17は、前述した耐低温性樹脂組成物により形成される。この耐低温性樹脂組成物を使用することにより、絶縁被覆層17は−270℃〜−190℃の極低温に対する耐性を示すとともに、柔軟性及び電気絶縁性を発揮することができ、超電導線材11の幅方向端部で受ける曲げ応力等の応力を受け止め、形状を保持できるとともに、電界の集中を緩和することができる。テープ状の超電導線材11を円筒状に巻回することにより超電導コイル(パンケーキコイル)が形成され、超電導線材11の始端と終端にはそれぞれ電極が接続される。
この耐低温性樹脂組成物は、超電導電力貯蔵装置、磁気浮上装置、加速器等の超電導機器において、例えば液体ヘリウム〔沸点−269℃(4K)〕、液体窒素〔沸点−196℃(77K)〕等の極低温の冷媒中で使用される。
次に、上記のように構成された耐低温性樹脂組成物について作用を説明する。
さて、図1に示すように、本実施形態の耐低温性樹脂組成物は、超電導線材11を構成する第2安定化層16としての銅箔上に塗布された後、例えば150℃に加熱して硬化され、絶縁被覆層17が形成される。この絶縁被覆層17を形成する耐低温性樹脂組成物は、前述の芳香族ポリアミド樹脂を含有していることから、耐低温性を発現できるとともに、極低温での接着性及び柔軟性を発現できる。
また、図2(a)に示すように、無機フィラーとして例えば板状の窒化ホウ素18を用いた場合には、窒化ホウ素18の窒素原子と芳香族ポリアミド樹脂のイミノ基との間の親和性に基づくスキン層20が形成されると同時に、板状の窒化ホウ素18と銅箔表面との間に分子間力が作用するものと推測される。この場合、無機フィラーの窒化ホウ素18が板状に形成されていることによって接触面積が大きくなり、スキン層20が銅箔と絶縁被覆層17との間の密着性に有効に寄与する。その結果、絶縁被覆層17と銅箔との間の接着性が高められる。なお、図2(b)に示すように、無機フィラーが粒状体19である場合には接触面積が小さくなり、板状である場合に比べてスキン層20による銅箔と絶縁被覆層17との間の密着性が低下する。
このため、超電導線材11から超電導コイルを製造する際に受ける曲げ応力や超電導コイルを液体窒素や液体ヘリウムで冷却するときに受ける熱膨張率の差に基づく応力が超電導線材11に作用したとき、その応力が絶縁被覆層17で十分に受け止められる。その結果、超電導線材11の各層間、特に超電導層14の剥離を防止しつつ、超電導コイルの製作を円滑に行うことができるとともに、超電導コイルを安定した状態で使用することができる。従って、超電導線材11から製作される超電導コイルを−270℃〜−190℃という極低温で使用した場合でも、絶縁被覆層17は銅箔に対する良好な密着性を発現でき、その密着性を長時間維持することができる。
さらに、前記芳香族ポリアミド樹脂は低温での熱伝導性に優れており、無機フィラーも熱伝導性を高める機能を有していることから、超電導線材11の冷却時における冷却効率を高めることができる。加えて、芳香族ポリアミド樹脂は、低温での電気絶縁性に優れていることから、絶縁被覆層17の電気絶縁機能が良好に維持される。
その上、エポキシ樹脂は接着性及び機械的強度に優れていることから、銅箔に対する絶縁被覆層17の密着性を一層高めることができるとともに、超電導コイルの形状維持を図ることができる。
以上詳述した実施形態によって得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の耐低温性樹脂組成物は、前記芳香族ポリアミド樹脂と、無機フィラーとして窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム又は炭酸カルシウムとを含有し、極低温で用いられる。このため、芳香族ポリアミド樹脂が耐低温性、低温での接着性及び柔軟性を発揮できる。一方、無機フィラーと芳香族ポリアミド樹脂との間の親和性によってスキン層が形成されると同時に、無機フィラーと銅箔表面との間に分子間力が働き、絶縁被覆層と銅箔との間の接着性が向上する。
このため、超電導線材から超電導コイルの製造時に受ける曲げ応力や超電導コイルが冷却時に受ける応力が超電導線材に作用したとき、その応力が絶縁被覆層で十分に受け止めら、超電導層の剥離を防止しつつ、超電導コイルを効率良く製作できるとともに、超電導コイルを安定した状態で使用することができる。従って、超電導線材から製作される超電導コイルを−270℃〜−190℃という極低温で使用した場合でも、絶縁被覆層は銅箔に対する優れた密着性を発揮でき、その密着性を長時間維持することができる。
さらに、芳香族ポリアミド樹脂と無機フィラーの熱伝導性を高める機能により、超電導線材の冷却効率を高めることができる。加えて、芳香族ポリアミド樹脂は、低温での電気絶縁性に優れているため、絶縁被覆層の電気絶縁機能を良好に発揮できる。
従って、本実施形態の耐低温性樹脂組成物によれば、極低温において十分な耐性を有するとともに、優れた接着強度を発揮することができ、超電導線材として好適に使用することができるという効果を奏する。
(2)前記無機フィラーは板状に形成されている。そのため、耐低温性樹脂組成物が例えば金属表面に塗布されたとき、無機フィラーが金属表面に沿って並び、芳香族ポリアミド樹脂と金属との親和性により得られるスキン層を介して金属表面と密着すると同時に、金属表面との間に働く分子間力により、金属に対する耐低温性樹脂組成物の硬化物の接着強度を高めることができる。
(3)前記無機フィラーの含有量は5〜70体積%が好ましい。この場合には、無機フィラーによる接着性、熱伝導性、電気絶縁性等の特性をバランス良く発揮することができる。
(4)前記無機フィラーとしては、窒化ホウ素又は酸化マグネシウムが好ましい。これらの窒化ホウ素と酸化マグネシウムは、無機フィラーの中でも金属、特に銅との親和性が良く、銅との間の分子間力が高くなり、金属に対する耐低温性樹脂組成物の硬化物の接着強度を一層高めることができる。
(5)前記耐低温性樹脂組成物は、エポキシ樹脂とその硬化剤とを含有する。このため、エポキシ樹脂中のエポキシ基が芳香族ポリアミド樹脂中のフェノール性水酸基と反応して架橋構造を形成することができ、耐低温性樹脂組成物の硬化物の耐低温性や機械的強度を一層向上させることができる。
(6)前記超電導線材の絶縁被覆層は耐低温性樹脂組成物により形成されている。このため、絶縁被覆層は極低温において銅箔に対する接着性に優れるとともに、熱伝導性及び電気絶縁性に優れている。
(7)前記超電導線材の金属層は銅箔である。そのため、芳香族ポリアミド樹脂と銅箔との間の親和力が高められ、スキン層の形成が促進されるとともに、無機フィラーと銅箔との間の分子間力が高められる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例において、部は質量部を意味する。
〔合成例1、芳香族ポリアミド樹脂の調製[n/(m+n)=0.02]〕
温度計、冷却管、分留管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素パージを施しながら、5−ヒドロキシイソフタル酸3.64部(0.02モル)、イソフタル酸162.81部(0.98モル)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル204.24部(1.02モル)、塩化リチウム10.68部、N−メチルピロリドン1105部及びピリジン236.28部を加えて撹拌溶解させた。これに亜リン酸トリフェニル512.07部を加えて95℃で4時間縮合反応をさせることにより、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕を含む反応液を得た。この反応液に撹拌を施しながら、90℃で水670部を3時間かけて滴下し、さらに90℃で1時間撹拌した。
その後、60℃まで冷却して30分間静置したところ、上層が水槽、下層が油層(樹脂層)に分離したため、上層をデカンテーションによって除去した。除去した上層の量は1200部であった。油層(樹脂層)にN,N−ジメチルホルムアミド530部を加え、希釈液とした。該希釈液に、水670部を添加し、静置した。層分離後、デカンテーションにより、水層を除去した。この水洗工程を4回繰り返して成分(A)の洗浄を行った。
洗浄終了後、得られた成分(A)の希釈液を、撹拌された水8000部中に2流体ノズルを用いて噴霧し、析出した平均粒子径5〜50μmの成分(A)の微粉を濾別した。得られた析出物のウェットケーキを、メタノール2700部に分散させて撹拌下で2時間還流した。次いで、メタノールを濾別し、濾取した析出物を水3300部で洗浄後、乾燥することにより、下記式(2)で表される繰り返し単位を構造中に有する成分(A)332部を得た。
得られた成分(A)の固有粘度は0.52dl/g(ジメチルアセトアミド溶液、30℃)であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)でのポリスチレン換算の数平均分子量44000、重量平均分子量106000であった。仕込み比率より、n/(m+n)=0.02、フェノール性水酸基当量16735g/eq、活性水素当量は5578g/eqであった。
〔合成例2、芳香族ポリアミド樹脂の調製[n/(m+n)=0.005]〕
合成例1において、5−ヒドロキシイソフタル酸0.911部(0.005モル)、及びイソフタル酸165.3部(0.995モル)とした以外は同じ操作で、式(2)で表される繰り返し単位を構造中に有する成分(E)329部を得た。得られた成分(E)の固有粘度は0.49dl/g(ジメチルアセトアミド溶液、30℃)であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量41000、重量平均分子量98000であった。仕込み比率より、n/(m+n)=0.005、フェノール性水酸基当量66890g/eq、活性水素当量は7432g/eqであった。
〔合成例3、芳香族ポリアミド樹脂の調製[n/(m+n)=0.95]〕
合成例1において、5−ヒドロキシイソフタル酸173.02部(0.95モル)、及びイソフタル酸8.307部(0.05モル)とした以外は同じ操作で、式(2)で表される繰り返し単位を構造中に有する成分(F)336部を得た。得られた成分(F)の固有粘度は0.58dl/g(ジメチルアセトアミド溶液、30℃)であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量56000、重量平均分子量138000であった。仕込み比率より、n/(m+n)=0.95、フェノール性水酸基当量368g/eq、活性水素当量は353g/eqであった。
(実施例1〜4及び比較例1〜3、接着強度の測定)
実施例1では、前記合成例1の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕に無機フィラーとして窒化ホウ素(BN、平均粒子径40μm)を34体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した〔成分(A)66体積%〕。この場合、無機フィラーを芳香族ポリアミド樹脂に分散させるため、3本ロールでロール間のギャップを30〜10μmに設定し、ロール間を2回通し、混練しながら撹拌を行った。このとき、窒化ホウ素は板状に形成された。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、17.6Pa・sであった。
実施例2では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、酸化マグネシウム(MgO、平均粒子径50μm)を25体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、10.9Pa・sであった。実施例3では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、窒化アルミニウム(AlN、平均粒子径50μm)を27体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、10.2Pa・sであった。実施例4では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、炭酸カルシウム(CaCO、平均粒子径60μm)を31体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、12.5Pa・sであった。
一方、比較例1では、前記合成例1の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕のみで耐低温性樹脂組成物を調製した。その耐低温性樹脂組成物の粘度は、5.0Pa・sであった。比較例2では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、粒状のシリカ(SiO)を32体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、17.8Pa・sであった。比較例3では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、粒状のアルミナ(Al)を24体積%(50質量%)加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、8.3Pa・sであった。
被着体として、厚さ18μmの銅箔(表面は平均表面粗さが30〜80μmの鏡面Aと平均表面粗さが50〜100μmの鏡面B)を用意した。そして、各例の耐低温性樹脂組成物をアプリケータで乾燥後の厚さが25μmになるように銅箔表面に塗布した。そして、100℃で10分間乾燥させて溶剤を除去した後、さらに前記と同じ銅箔を重ね180℃で1時間硬化反応を行って銅箔間を接着した。銅箔間の接着強度として90度剥離強度(N/mm)を、JIS K 6854−1に準拠して測定した。すなわち、接着した一方の銅箔を固定し、他方の銅箔の一端を直角にゆっくりと引っ張り、剥離の度合いを測定した。その結果を表1に示した。
表1に示したように、実施例1〜4の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例1及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例2、3の耐低温性樹脂組成物に比べて明らかに高い90度剥離強度が得られ、接着性に優れていることが明らかになった。
(実施例5〜8及び比較例4〜6、無機フィラーの配合量の変化)
実施例5〜8では、前記実施例1〜4において、それぞれ無機フィラーの含有量を2体積%、5体積%、10体積%、30体積%、50体積%、70体積%及び75体積%に変化させ、90℃剥離強度に及ぼす無機フィラーの含有量の影響について分析した。一方、比較例4〜6では、前記比較例1〜3において、それぞれ無機フィラーの含有量を2体積%、5体積%、10体積%、30体積%、50体積%、70体積%及び75体積%に変化させ、90度剥離強度を測定した。
そして、前記実施例1〜4と同様にして90度剥離強度(N/mm)を測定し、それらの結果を表2に示した。
表2に示したように、実施例5〜8の耐低温性樹脂組成物においては、比較例4〜6の耐低温性樹脂組成物に比べて、無機フィラーの含有量に拘らず、高い90度剥離強度を示した。特に、無機フィラーの含有量が5〜70体積%の範囲では、90度剥離強度が一層良好であった。
(応用例1及び2、冷却サイクル試験)
図1に示すように、超電導線材11は長さ2mのテープ形状をなし、ハステロイ製の基板12上に中間層13を介してイットリウム系の超電導層14が形成され、その超電導層14上に銀製の第1安定化層15及び銅箔による第2安定化層16が被覆され、それらの各層を覆うように絶縁被覆層17が被覆されて構成されている。この絶縁被覆層17は、前記合成例1の芳香族ポリアミド樹脂に無機フィラーとして窒化ホウ素を30体積%含有する耐低温性樹脂組成物を第2安定化層16上にコーティングした後、150℃に加熱して耐低温性樹脂組成物を硬化することにより形成した。絶縁被覆層17の厚さが40μmの場合を応用例1とし、絶縁被覆層17の厚さが80μmの場合を応用例2とした。
この2mの超電導線材11を最小曲率半径が100mmとなるように巻回して超電導コイルにした状態で液体窒素中に浸漬し、室温に戻すという冷却サイクルを10回繰返し、その前後における電流(A)と電圧(μV)との関係を示す通電特性を測定した。応用例1及び2の測定結果について、図3及び図4に示した。なお、図3及び図4において、実線は冷却サイクル1回実施後の測定結果を表し、破線は冷却サイクル10回実施後の測定結果を表す。
図3及び図4に示すように、絶縁被覆層17の厚さが40μm及び80μmのいずれの場合にも、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性に変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化していることから、超電導線材11のコイルについて冷却サイクルの特性には変動がないことが示された。
(実施例9〜12及び比較例7〜9、接着強度の測定)
実施例9では、前記合成例2の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕に無機フィラーとして窒化ホウ素を34体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。この場合、無機フィラーを芳香族ポリアミド樹脂に分散させるため、3本ロールでロール間のギャップを300〜100μmに設定し、ロール間を2回通し、混練しながら撹拌を行った。このとき、窒化ホウ素は板状に形成された。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、16.8Pa・sであった。
実施例10では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、酸化マグネシウムを25体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、9.7Pa・sであった。実施例11では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、窒化アルミニウムを27体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、9.5Pa・sであった。実施例12では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、炭酸カルシウムを31体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、12.0Pa・sであった。
一方、比較例7では、前記合成例2の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕のみで耐低温性樹脂組成物を調製した。その耐低温性樹脂組成物の粘度は、4.8Pa・sであった。比較例8では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、シリカを32体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、16.2Pa・sであった。比較例9では、実施例1の窒化ホウ素に代えて、アルミナを24体積%加えて耐低温性樹脂組成物を調製した。ロール後の耐低温性樹脂組成物の粘度は、7.9Pa・sであった。
そして、実施例1〜4と同様に各例の耐低温性樹脂組成物を銅箔表面に接着した後、90度剥離強度(N/mm)を測定した。それらの結果を表3に示した。
表3に示したように、実施例9〜12の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例7及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例8、9の耐低温性樹脂組成物に比べて、明らかに高い90度剥離強度が得られた。
(実施例13〜16及び比較例10〜12、無機フィラーの配合量の変化)
実施例13〜16及び比較例10〜12では、前記実施例5〜8及び比較例4〜6において、芳香族ポリアミド樹脂として合成例2で得られた芳香族ポリアミド樹脂〔成分(E)〕を用いた以外は、それぞれ実施例5〜8及び比較例4〜6と同様にして、接着強度を測定した。それらの結果を表4に示した。
表4に示したように、実施例13〜16の耐低温性樹脂組成物においては、比較例10〜12の耐低温性樹脂組成物に比べて、無機フィラーの含有量に拘らず、高い90度剥離強度を示した。特に、無機フィラーの含有量が5〜70体積%の範囲では、90度剥離強度が一層良好であった。
(応用例3及び4、冷却サイクル試験)
前記応用例1及び2において、絶縁被覆層17は、合成例2の芳香族ポリアミド樹脂に無機フィラーとして窒化ホウ素を30体積%含有する耐低温性樹脂組成物を第2安定化層16上にコーティングした後、150℃に加熱して耐低温性樹脂組成物を硬化することにより形成した。絶縁被覆層17の厚さが30μmの場合を応用例3とし、絶縁被覆層17の厚さが60μmの場合を応用例4とした。そして、応用例1及び2と同様にして、電流(A)と電圧(μV)との関係を示す通電特性を測定した。それらの測定結果について、図5及び図6に示した。
図5及び図6に示すように、絶縁被覆層17の厚さが30μm及び60μmのいずれの場合にも、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性に変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化していることから、超電導線材11のコイルについて冷却サイクルの特性には変動がないことが示された。
(実施例17〜20及び比較例13〜15、接着強度の測定)
実施例17〜20及び比較例13〜15では、前記実施例1〜4及び比較例1〜3において、合成例3の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(F)〕を用いた以外は、それぞれ実施例1〜4及び比較例1〜3と同様にして、接着強度を測定した。それらの結果を表5に示した。
表5に示したように、実施例17〜20の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例13及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例14、15の耐低温性樹脂組成物に比べて十分に高い90度剥離強度が得られた。
(実施例21〜24及び比較例16〜18、無機フィラーの配合量の変化)
実施例21〜24及び比較例16〜18では、前記実施例5〜8及び比較例4〜6において、芳香族ポリアミド樹脂として合成例3で得られた樹脂を用いた以外は、それぞれ実施例5〜8及び比較例4〜6と同様にして、接着強度を測定した。それらの結果を表6に示した。
表6に示したように、実施例21〜24の耐低温性樹脂組成物においては、比較例16〜18の耐低温性樹脂組成物に比べ、無機フィラーの含有量に拘らず、高い90度剥離強度を示した。特に、無機フィラーの含有量が5〜70体積%の範囲では、90度剥離強度が一層良好であった。
(応用例5及び6、冷却サイクル試験)
応用例5及び6では、前記合成例3の芳香族ポリアミド樹脂に無機フィラーとして窒化ホウ素を30体積%含有する芳香族ポリアミド樹脂組成物について、前記応用例1及び2と同様にして冷却サイクルを実施した。絶縁被覆層17の厚さが55μmの場合を応用例5とし、85μmの場合を応用例6として、冷却サイクルの結果をそれぞれ図7及び図8に示した。
図7及び図8に示すように、絶縁被覆層17の厚さが55μm及び85μmのいずれの場合にも、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性に変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化していることから、超電導線材11のコイルについて冷却サイクルの特性には変動がないことが示された。
次に、合成例1〜3の成分(A)、成分(E)又は成分(F)に、エポキシ樹脂、その硬化剤等を加えて、下記の配合例1〜3に示す混合溶液を調製した。
(配合例1)
合成例1で得られた成分(A)100部に対し、成分(B)としてビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂NC−3000〔(日本化薬(株)製、エポキシ当量275g/eq〕を10部、成分(A)以外のエポキシ樹脂硬化剤としてGPH−65〔日本化薬(株)製、水酸基当量203g/eq〕を2.5部、成分(D)として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)を1部、溶剤としてN−メチルピロリドン210.4部をそれぞれ加え、30℃で2時間撹拌することにより、混合溶液(G)(固形分濃度35質量%)を得た。
(配合例2)
配合例1における成分(A)の代わりに合成例2で得られた成分(E)を用いた以外は、配合例1と同様の操作で混合溶液(H)(固形分濃度35質量%)を得た。
(配合例3)
配合例1における成分(A)の代わりに合成例3で得られた成分(F)を用いた以外は、配合例1と同様な操作で混合溶液(I)(固形分濃度35質量%)を得た。
(実施例25〜28及び比較例19〜21、接着強度の測定)
実施例25〜28及び比較例19〜21では、前記実施例1〜4及び比較例1〜3において、合成例1の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(A)〕に代えて配合例1の混合溶液(G)を用いた以外は、実施例1〜4及び比較例1〜3と同様にして耐低温性樹脂組成物を調製した。そして、それらの耐低温性樹脂組成物を用い、銅箔間の90度剥離強度を測定した。その結果を表7に示した。
表7に示したように、実施例25〜28の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例19及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例20、21の耐低温性樹脂組成物に比べて十分に高い90度剥離強度が得られた。
ここで、上記配合例1の混合溶液(G)を用いた耐低温性樹脂組成物を、絶縁被覆層17に使用した超電導線材11の超電導コイルについて冷却サイクル試験を実施した。すなわち、絶縁被覆層17の厚さが40μmの場合と80μmの場合について、前記応用例1及び2と同様にして冷却サイクル試験を行った。その結果、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性にほとんど変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化し、超電導線材11のコイルについて冷却サイクルの特性が維持された。
(実施例29〜32及び比較例22〜24、接着強度の測定)
実施例29〜32及び比較例22〜24では、前記実施例9〜12及び比較例7〜9において、合成例2の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(E)〕に代えて配合例2の混合溶液(H)を用いた以外は、実施例9〜12及び比較例7〜9と同様にして耐低温性樹脂組成物を調製した。そして、それらの耐低温性樹脂組成物を用い、銅箔間の90度剥離強度を測定した。その結果を表8に示した。
表8に示したように、実施例29〜32の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例22及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例23、24の耐低温性樹脂組成物に比べて十分に高い90度剥離強度が得られた。
(実施例33〜36及び比較例25〜27、無機フィラーの配合量の変化)
これらの実施例33〜36及び比較例25〜27では、前記実施例13〜16及び比較例10〜12において、合成例2の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(E)〕に代えて配合例2の混合溶液(H)を用いた以外は、それぞれ実施例13〜16及び比較例10〜12と同様にして、接着強度を測定した。それらの結果を表9に示した。
表9に示したように、実施例33〜36の耐低温性樹脂組成物においては、比較例25〜27の耐低温性樹脂組成物に比べて、無機フィラーの含有量に拘らず、高い90度剥離強度を示した。特に、無機フィラーの含有量が5〜70体積%の範囲では、90度剥離強度が一層良好であった。
ここで、上記配合例2の混合溶液(H)を用いた耐低温性樹脂組成物を、絶縁被覆層17に使用した超電導線材11の超電導コイルについて冷却サイクル試験を実施した。すなわち、絶縁被覆層17の厚さが30μmの場合と60μmの場合について、前記応用例3及び4と同様にして冷却サイクル試験を行った。その結果、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性にほとんど変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化し、超電導コイルについて冷却サイクルの特性が維持された。
(実施例37〜40及び比較例28〜30、接着強度の測定)
この実施例37〜40及び比較例28〜30では、前記実施例17〜20及び比較例13〜15において、合成例3の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(F)〕に代えて配合例3の混合溶液(I)を用いた以外は、実施例17〜20及び比較例13〜15と同様にして耐低温性樹脂組成物を調製した。そして、それらの耐低温性樹脂組成物を用い、銅箔間の90度剥離強度を測定した。その結果を表10に示した。
表10に示したように、実施例37〜40の耐低温性樹脂組成物においては、無機フィラーが含まれない比較例28及び本発明の範囲外の無機フィラーが含まれる比較例29、30の耐低温性樹脂組成物に比べて十分に高い90度剥離強度が得られた。
(実施例41〜44及び比較例31〜33、無機フィラーの配合量の変化)
これらの実施例41〜44及び比較例31〜33では、前記実施例21〜24及び比較例16〜18において、合成例3の芳香族ポリアミド樹脂〔成分(F)〕に代えて配合例3の混合溶液(I)を用いた以外は、それぞれ実施例21〜24及び比較例16〜18と同様にして、接着強度を測定した。それらの結果を表11に示した。
表11に示したように、実施例41〜44の耐低温性樹脂組成物においては、比較例31〜33の耐低温性樹脂組成物に比べて、無機フィラーの含有量に拘らず、高い90度剥離強度を示した。特に、無機フィラーの含有量が5〜70体積%の範囲では、90度剥離強度が一層良好であった。
ここで、上記配合例3の混合溶液(I)を用いた耐低温性樹脂組成物を、絶縁被覆層17に使用した超電導線材11の超電導コイルについて冷却サイクル試験を実施した。すなわち、絶縁被覆層17の厚さが55μmの場合と85μmの場合について、前記応用例5及び6と同様にして冷却サイクル試験を行った。その結果、冷却サイクルの1回実施後と10回実施後で電流−電圧特性にほとんど変化がなく、かつ臨界電流を超えた後の電圧変化も指数関数的に変化し、超電導コイルについて冷却サイクルの特性が維持された。
なお、前記各実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記無機フィラーとして、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム及び炭酸カルシウムのうちの2種以上を適宜選択し、耐低温性樹脂組成物を調製してもよい。例えば、無機フィラーとして、接着性の高い窒化ホウ素と酸化マグネシウムとを併用してもよい。
・ 前記芳香族ポリアミド樹脂がエポキシ樹脂の硬化剤となるため、耐低温性樹脂組成物にエポキシ樹脂を配合する場合、エポキシ樹脂用硬化剤の配合を省略してもよい。
・ 前記超電導線材11の第2安定化層16として、銅箔に代えて、銅めっき層を用いてもよい。
・ 前記絶縁被覆層17として、耐低温性樹脂組成物を銅箔の外周に電着法で被覆形成してもよい。電着法では、耐低温性樹脂組成物に電荷を与え、逆の電荷を有する銅箔の外周面を被覆する。
11…超電導線材、12…基板、13…中間層、14…超電導層、16…銅層としての銅箔、17…絶縁被覆層、18…窒化ホウ素。

Claims (7)

  1. 下記に示す一般式(1)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、無機フィラーとして窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム又は炭酸カルシウムとを含有し、前記無機フィラーの含有量が2〜75体積%であるとともに、−270℃〜−190℃の極低温で用いられることを特徴とする耐低温性樹脂組成物。
    但し、m、nは平均値で、0.005≦n/(m+n)<1を示し、m+nは0より大きく、200以下の正数である。Arは二価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す。
  2. 前記無機フィラーは板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐低温性樹脂組成物。
  3. 前記無機フィラーの含有量は、5〜70体積%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐低温性樹脂組成物。
  4. 前記無機フィラーは、窒化ホウ素又は酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の耐低温性樹脂組成物。
  5. エポキシ樹脂と、その硬化剤とを含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の耐低温性樹脂組成物。
  6. 基板上に中間層を介してイットリウム系酸化物超電導体の超電導層が形成され、その超電導層上に金属層が形成されるとともに、それらの外周部に絶縁被覆層が形成されたテープ状をなす超電導線材であって、
    前記絶縁被覆層は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐低温性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする超電導線材。
  7. 前記金属層は、銅層であることを特徴とする請求項6に記載の超電導線材。
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