JP6020865B2 - 核酸リンカー - Google Patents

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Description

本発明は、核酸リンカー、核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、核酸リンカー固定化固相、核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相、タンパク質又はペプチド固定化固相、マイクロアレイ、核酸回収方法、及び、機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法に関する。
本願は、2013年3月13日に、日本に出願された特願2013−050936号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
新規機能性タンパク質は、医薬品、洗剤、食品加工、研究開発用試薬、臨床分析、さらにはバイオエネルギー、バイオセンサーなど様々なバイオ応用分野への貢献が期待されている。
新規機能性タンパク質の取得に際しては、タンパク質の構造情報から人知によりデザインするタンパク質工学的手法が主流であった。しかし、より有用なタンパク質を取得するためには従来手法よりも効率的にスクリーニングする必要があり、タンパク質のランダムな分子構造改変と淘汰を繰り返す進化分子工学的手法が期待されている。
進化分子工学的手法の一つであるcDNAディスプレイ法は、遺伝子型−表現型の対応付けの方法であり、核酸リンカーが、タンパク質(表現型)と、これをコードするmRNAと、逆転写したcDNA(遺伝子型)と、を結ぶものである。mRNA/cDNA−タンパク質連結体構造は、非常に安定であるため、該核酸リンカーを用いることにより、様々な環境下でスクリーニングを実施することが可能となった。
cDNAディスプレイ法は、タンパク質とこれをコードするポリヌクレオチドとを連結する核酸リンカー中に有するピューロマイシンに特徴を有している(特許文献1参照)。
ピューロマイシンは、アミノアシル−tRNAの3’末端と類似する構造を有するタンパク質合成阻害剤であり、所定の条件下ではリボソーム上で伸長中のタンパク質のC末端に特異的に共有結合する。
cDNAディスプレイ法を用いた有用タンパク質のスクリーニング方法は、以下の一連の工程を有する。
先ず、ピューロマイシンを有する核酸リンカーとmRNAとを連結させ、無細胞翻訳系を用いてmRNAからタンパク質を合成し、合成されたタンパク質とこれをコードするmRNAとがピューロマイシンを介して結合している複合体(mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体)が生じる(非特許文献1参照)。
次いで、このmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体のライブラリーを製造した後、製造したmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を逆転写酵素により逆転写し、cDNAを合成することにより、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質複合体のライブラリーを製造する。
次いで、このmRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質複合体のライブラリーを用いて、所望の機能をもつタンパク質を選択し、選択したmRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質複合体中のcDNAの塩基配列を解析することによりタンパク質を同定する。逆転写のタイミングは、タンパク質を選択した後でもよい(非特許文献2参照)。
上記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質複合体のライブラリーを基板上に固定したタンパク質アレイは、網羅的解析により、短期間で機能性タンパク質又は機能性ペプチドを取得するためのツールとして重要である。
かかるタンパク質アレイを製造するための方法として、5’末端に光反応性塩基誘導体であるソラレンを有する核酸リンカー/逆転写酵素プライマー構築物を用いる方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法は、核酸リンカーとmRNAを架橋して、核酸リンカー−mRNA間の結合を強固なものとして、mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体の合成効率を上昇できる点で優れている。
特許第4318721号公報 特許第480315号公報
Nemotoら、FEBS Lett、第414巻、第405〜408頁、1997年 Yamaguchiら、Nucleic Acids Res.第37巻、e108頁、2009年
しかしながら、特許文献2では、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を効率よく製造することについては何ら検討されておらず、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を効率よく合成する核酸リンカーについては改良の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を効率よく合成する核酸リンカー、該核酸リンカーを用いた核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、核酸リンカー固定化固相、核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相、タンパク質又はペプチド固定化固相、マイクロアレイ、核酸回収方法、及び、機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、スペーサー部分を有する核酸リンカーにより課題を解決できることを見出した。本発明の一実施態様は、下記(1)〜(15)を提供するものである。
(1)本発明の一実施態様における核酸リンカーは、mRNAと、該mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体を製造するための核酸リンカーであって、5’末端にスペーサー部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得るポリヌクレオチド部分と、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分を3’末端に有するアーム部分とを備え、前記スペーサー部分と前記ポリヌクレオチド部分と前記アーム部分とが一本鎖を形成してなり、前記ポリヌクレオチド部分が光反応性塩基誘導体を含み、前記スペーサー部分は50塩基以上のオリゴヌクレオチドを有し、前記光反応性塩基誘導体は3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideであることを特徴とする。
(3)本発明の一実施態様における核酸リンカー−逆転写プライマー複合体は、先に記載の核酸リンカーと、該mRNAの逆転写プライマーと、からなる核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であって、前記逆転写プライマーは、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分を含むことを特徴とする。
(4)本発明の一実施態様におけるmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体は、先に記載の核酸リンカーと、前記mRNAと、該mRNAの逆転写プライマーと、からなるmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であって、前記逆転写プライマーは、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなることを特徴とする。
(5)本発明の一実施態様における核酸リンカー固定化固相は、先に記載の核酸リンカーが、固相上に固定化されてなることを特徴とする。
(6)本発明の一実施態様における核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相は、先に記載の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とする。
(7)本発明の一実施態様におけるタンパク質又はペプチド固定化固相は、mRNAと、先に記載の核酸リンカーと、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とする。
(8)本発明の一実施態様におけるタンパク質又はペプチド固定化固相は、先に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体と、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体であるmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とする。
(9)本発明の一実施態様におけるマイクロアレイは、複数の核酸リンカーが固定化されたマイクロアレイであって、前記核酸リンカーは先に記載の核酸リンカーであることを特徴とする。
(10)本発明の一実施態様におけるマイクロアレイは、複数の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が固定化されたマイクロアレイであって、前記核酸リンカー−逆転写プライマー複合体は先に記載の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であることを特徴とする。
(11)本発明の一実施態様におけるマイクロアレイは、複数のmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体が固定化されたマイクロアレイであって、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体は、先に記載の核酸リンカーと、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体であることを特徴とする。
(12)本発明の一実施態様における核酸回収方法は、先に記載の核酸リンカーが固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、前記mRNAと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A1と、前記mRNAと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B1と、
を含むことを特徴とする。
(13)本発明の一実施形態における核酸回収方法は、先に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、前記mRNAの逆転写プライマーと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A2と、前記逆転写プライマーと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B2と、を含むことを特徴とする。
(14)本発明の一実施態様における機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法は、先に記載の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A6と、無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B6と、更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C6と、前記固相上の全てのスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとmRNAを架橋するとともに、核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程D6と、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖を伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程E6と、前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程F6と、機能性スクリーニングにより特定されたスポットに第二の波長帯域の光を照射して、特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G6と、解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H6と、を有することを特徴とする。
(15)本発明の一実施態様における機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法は、先に記載の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A7と、無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B7と、更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C7と、前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程D7と、前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程E7と、機能性スクリーニングにより特定されたスポット以外のスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとcDNAを架橋する工程F7と、特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G7と、解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H7と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を効率よく合成できる。
本発明の核酸リンカーの一態様を示した図である。 本発明の核酸リンカーの一態様を示した図である。 本発明の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体の一態様を示した図である。 本発明のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体の一態様を示した図である。 本発明の核酸回収方法の一態様を示した図である。 本発明の核酸回収方法の一態様を示した図である。 本発明の核酸回収方法の一態様を示した図である。 本発明の核酸回収方法の一態様を示した図である。 本発明の機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法の一態様を示した図である。 本発明の機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法の一態様を示した図である。 実施例における電気泳動の結果である。 実施例における電気泳動の結果である。 実施例における蛍光イメージャーによる解析結果である。 実施例におけるCy3修飾mRNAの定量結果である。 実施例における蛍光イメージャーによる解析結果である。 実施例における蛍光イメージャーによる解析結果である。 実施例における蛍光イメージャーによる解析結果である。 実施例における回収したCy3修飾DNAの定量結果である。 実施例における蛍光イメージャーによる解析結果である。
≪核酸リンカー≫[第1実施形態]
本実施形態の核酸リンカーは、mRNAと、該mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体を製造するための核酸リンカーである。本実施形態の核酸リンカーの構造について、図1を用いて説明する。
図1中、Puはピューロマイシン、ATCGはDNA配列を示している。また、Spc18はアーム部を構成するスペーサー(第1のスペーサー)を示している。
本実施形態の核酸リンカー2は、5’末端にスペーサー部分51cと、スクリーニングすべきmRNA23の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得るポリヌクレオチド部分51aと、前記タンパク質又はペプチド33との連結部分2aを3’末端に有するアーム部分51bとを備えている。そして、本実施形態の核酸リンカー2は、スペーサー部分51cとポリヌクレオチド部分51aとアーム部分51bとがこの順に一本鎖を形成してなる。
ポリヌクレオチド部分51aは、DNAであってもPNA(ポリヌクレオペプチド)などの核酸誘導体であってもよく、ヌクレアーゼ耐性が付与された修飾DNAが好ましい。
修飾DNAとしては、ホスホロチオエートなどのヌクレオシド間結合を有するDNA、2’−フルオロ、2’−O−アルキルなどの糖修飾を有するDNAなど,当該技術分野において知られる修飾DNAのいずれを用いてもよい。
そして、ポリヌクレオチド部分51aは、光反応性塩基誘導体2bを含む。光反応性塩基誘導体2bは、所定の波長の光が照射されることにより、反応性が活性化され、核酸リンカー2とmRNA23を架橋可能な塩基誘導体を意味する。
光反応性塩基誘導体2bは、可逆的光連結性塩基を用いることが好ましい。可逆的光連結性塩基は、例えば、異なる波長帯域の光が照射されることによって、核酸リンカー2とmRNA23を可逆的に光連結及び光開裂する塩基を含む。可逆的光連結性塩基は、一例として、ソラーレン(psoralen)を付加した塩基、3−Cyanovinylcarbazole Nucleoside(以下、CNVKともいう。)が挙げられる。
なお、可逆的光連結性塩基は、短時間で効率よく架橋できることが良いため、CNVKが好ましい。
光反応性塩基誘導体2bとしてCNVKを用いる場合、核酸リンカー2とmRNA23との複合体に、光連結する第一の波長帯域の光と光開裂する第二の波長帯域の光とを照射することで可逆的な架橋反応が可能である。第一の波長帯域は340nm以上の光である。一例として、340〜380nmの波長帯域の光を照射することにより、CNVKの5’側 に隣接するプリン塩基と塩基対を形成しているmRNA23中のピリミジン塩基を構成する原子とCNVKを構成する原子とが架橋構造を形成する。第二の波長帯域は350nm未満の光である。一例として、280〜345nmの波長帯域の光を照射することにより、架橋は解除される。第一の波長帯域と第二の波長帯域は、波長帯域の一部が互いに重複していてもよいとする。
CNVKを用いることで、所定の波長帯域の光を短時間(例えば30秒)照射することで高い架橋効率が得られ、照射対象の核酸を損傷するおそれがない。また、CNVKは、効率のよい可逆的な架橋反応が可能であるという点において優れている。
アーム部分51bは、mRNA23とタンパク質又はペプチドとの連結部分2aとを所望の距離に保持するスペーサーとして機能する。アーム部51bの5’末端は、ポリヌクレオチド部分51aの3’末端と結合し、アーム部分51bの3’末端はタンパク質連結部分2aを有する。
3’末端を除くアーム部分51bは、標識物質を用いて標識されてもよい。標識物質としては、例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、量子ドット、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体、酵素等が挙げられる。
蛍光色素としては、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5'−ヘキサクロロ−フルオレセイン−CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647等が挙げられる。
アーム部51bの3’末端にはタンパク質又はペプチド33の連結部分2aが存在する。タンパク質又はペプチド連結部分2aとは、所定の条件下でリボソーム上の伸長中のタンパク質又はペプチド33のC末端に特異的に結合する性質を有する構造を意味し、ピューロマイシンが代表的である。
ピューロマイシンは、アミノアシル−tRNAの3’末端と類似する構造を有するタンパク質合成阻害剤である。タンパク質33の連結部分2aとしては、伸長中のタンパク質又はペプチド33のC末端に特異的に結合する機能を有する限り、任意の物質を用いることができ、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(PANS−アミノ酸)、または3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(AANS−アミノ酸)などのピューロマイシン誘導体を用いることができる。
PANS−アミノ酸としては、アミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、バリンのPANS−Val、アラニンのPANS−Ala、又はアミノ酸部が全ての各アミノ酸に対応するPANS−アミノ酸混合物を挙げることができる。
AANS−アミノ酸としては、アミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、バリンのAANS−Val、アラニンのAANS−Ala、又はアミノ酸部が全アミノ酸の各アミノ酸に対応するAANS−アミノ酸混合物を挙げることができる。
ピューロマイシン以外に好適に使用できるアミノアシルtRNA3’末端アナログとしては、リボシチジルピューロマイシン(rCpPur)、デオキシジルピューロマイシン(dCpPur)、デオキシウリジルピューロマイシン(dUpPur)などを挙げることができる。
アーム部51bは、スペーサー(第1のスペーサー)として機能するものであれば、核酸や核酸誘導体から構成されていてもよく、ポリエチレングリコールなどの高分子から構成されていてもよい。アーム部51bにはさらに、ピューロマイシンの安定性を高めるための修飾や、複合体の検出のための標識が付加されていてもよい。本実施形態の核酸リンカー2を、後述するmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー−複合体に用いる場合には、アーム部分51bは、逆転写プライマーと相補対を形成するための核酸や核酸誘導体を有することが好ましい。
本実施形態の核酸リンカー2は、5’末端にスペーサー部分51c(第2のスペーサー)を有する。本発明者は、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体を効率よく製造するためには、スペーサー部分51cが必要であることを見出した。タンパク質又はペプチド33の合成工程において、リボソームが固相に接触してタンパク質又はペプチド33の合成が阻害されることを抑制するために、固相から所定の距離をおく必要があると考えられる。この理由のため、本実施形態の核酸リンカー2は、5’末端にスペーサー部分51c(第2のスペーサー)を有し、そのスペーサー部分は複数の塩基を有する。一例として、本実施形態のスペーサー部分は約50塩基以上のオリゴヌクレオチドを有する。
また、スペーサー部分51cが5’末端に固相との結合部位を有することが好ましい。
固相結合部位/固相結合部位を認識する固相上の固相結合部位認識部位の組み合わせとしては、アビジン−ビオチン結合を利用する方法の他、核酸リンカー2をアミノ基、ホルミル基、SH基、などの官能基で修飾し、固相をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理したものを利用する方法や、金-チオール結合を利用する方法などを用いることができ、金-チオール結合を利用した方法が好ましい。
本実施形態の核酸リンカー2は、一本鎖という単純な構造を有しているため、従来の核酸リンカーと比較して容易に製造できる。このため、この核酸リンカーを用いてペプチド又はタンパク質を迅速かつ簡単に調製できる。
更に、本実施形態の核酸リンカー2は、スペーサー部分51cを有するため、固相上でのタンパク質又はペプチド33の合成に適している。
更に、本実施形態の核酸リンカー2は、光反応性塩基誘導体2bを含むため、mRNA23との複合体を安定化でき、効率よくタンパク質又はペプチド33を合成できる。
[第2実施形態]
本実施形態の核酸リンカー12の構造について、図2を用いて説明する。
図2において、図1の核酸リンカー2の模式図に示されたものと同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の核酸リンカー12は、第1実施形態と同様に、5’末端にスペーサー部分51cと、スクリーニングすべきmRNA23の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得るポリヌクレオチド部分51aと、前記タンパク質又はペプチド33との連結部分2aを3’末端に有するアーム部分51bとを備えている。そして、本実施形態の核酸リンカー12は、スペーサー部分51cとポリヌクレオチド部分51aとアーム部分51bとがこの順に一本鎖を形成してなる。更に、本実施形態の核酸リンカー12は、ポリヌクレオチド部分51aと、アーム部分51bの間から突出した3’末端を有する分岐鎖51dを有する。分岐鎖51dは、mRNA23の一部の配列とハイブリダイズして、mRNA23を逆転写するプライマー配列を有する。
分岐鎖51dは、分岐鎖51dの3’末端から数塩基5’側の位置で一本鎖ポリヌクレオチド部51aと結合し、T字型の構造を形成している。逆転写の際に分岐鎖51dの3’末端がプライマーとして機能する。
本実施形態の核酸リンカー12によれば、分岐鎖51dを有するため、第1実施形態の効果に加えて、スクリーニングする目的のタンパク質をコードするmRNAを逆転写して生成されるcDNAが得られる。
≪核酸リンカー−逆転写プライマー複合体≫[第1実施形態]
本実施形態の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体52は、核酸リンカー2と、mRNAの逆転写プライマー44と、からなる複合体である。本実施形態の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体52(以下、複合体52ともいう。)の構造について、図3を用いて説明する。図3において、図1の核酸リンカー2の模式図に示されたものと同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
逆転写プライマー44は、核酸リンカー2のアーム部分51bの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分44aを含む。
本実施形態の複合体52を構成する核酸リンカー2は、核酸リンカーの第1実施形態として上述したものと同様の構成である。本実施形態の複合体52において、核酸リンカー2のアーム部分51bは、逆転写プライマーと相補対を形成するための核酸や核酸誘導体を有することが好ましい。
逆転写プライマー44は、5’末端領域44aを介して、核酸リンカー2のアーム部分51bと相補対を形成する。
複合体52を安定化する観点から、逆転写プライマー44は、5’末端領域部分44aが光反応性塩基誘導体44bを含むことが好ましい。光反応性塩基誘導体44bは、可逆的光連結性塩基を用いることが好ましい。本実施形態においては、短時間で効率のよい可逆的な架橋反応が可能である点から、光反応性塩基誘導体44bは、CNVKを用いている。
≪mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体≫[第1実施形態]
本実施形態のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体62は、核酸リンカー2と、mRNA63と、mRNA63の逆転写プライマー54と、からなる複合体である。本実施形態のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体62(以下、複合体62ともいう。)の構造について、図4を用いて説明する。図4において、図1及び図3の核酸リンカー2の模式図に示されたものと同じ構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
逆転写プライマー54は、核酸リンカー2のアーム部分51bの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分54aと、mRNA63の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分54bと、からなる。
逆転写プライマー54は、5’末端領域54aを介して、核酸リンカー2のアーム部分51bと相補対を形成する。また、逆転写プライマー54は、3’末端領域54bを介して、mRNA63と相補対を形成する。
核酸リンカー2は、ポリヌクレオチド部分51aを介してmRNA63と相補対を形成し、アーム部分51bを介して逆転写プライマー54と相補対を形成している。
このように、本実施形態の複合体62は、逆転写プライマー54、核酸リンカー2、及び、mRNA63の3本の核酸鎖が相互に二本鎖を形成することによって、3つの二本鎖核酸が1ヶ所で交差した構造を形成している。また、本実施形態の複合体62は、逆転写プライマー54、核酸リンカー2、及び、mRNA63の3本の核酸鎖が相互に二本鎖を形成することによって、3つの二本鎖核酸が1つの共通領域を基点に互いに異なる方向に伸びた構造を形成している。
複合体62を安定化する観点から、逆転写プライマー54は、5’末端領域部分54aが光反応性塩基誘導体54cを含むことが好ましい。光反応性塩基誘導体54cは、可逆的光連結性塩基を用いることが好ましい。本実施形態においては、短時間で効率のよい可逆的な架橋反応が可能である点から、光反応性塩基誘導体54cは、CNVKを用いている。
本実施形態の複合体62は、上述した核酸リンカーの第1実施形態と同様の効果を奏し、ペプチド又はタンパク質を迅速かつ簡単に効率よく合成できる。
また、本実施形態の複合体62は、上述した核酸リンカーの第2実施形態と同様の効果を奏し、スクリーニングすべきタンパク質をコードするmRNAを逆転写してなるcDNAを得ることができる。
更に、本実施形態の複合体62は、後述するようにスクリーニングすべきタンパク質又はペプチドをコードする核酸を回収する方法に好適に用いられる。
≪核酸リンカー固定化固相≫
本実施形態の核酸リンカー固定化固相は、上述した実施形態の核酸リンカーが、固相上に固定化されてなるものである。固相としては、基板又は担体が挙げられる。以下、好ましい実施形態について説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の核酸リンカー固定化固相は、上述した実施形態の核酸リンカーが、基板上に固定化されてなるものである。
用いられる基板としては、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板等が挙げられる。上述したように本実施形態の核酸リンカーは、スペーサー部分を有している。該スペーサー部分が5’末端に固相との結合部位を有することが好ましく、その固相結合部位と、基板に結合させた固相結合部位認識部位との結合を利用して、核酸リンカーが基板上に固定化される。
このような固相結合部位/固相結合部位認識部位の組み合わせとしては、上述したように、金-チオール結合を利用した組合せが好ましい。かかる観点から、基板としては金基板が好ましい。
基板として金基板を用いる場合、先ず、該金基板をSPM洗浄(硫酸過酸化水素水洗浄)し、酸化作用を利用して、該金基板上の有機物を除去することが好ましい。次いで、該金基板上に5’末端に固相との結合部位であるチオールを有する核酸リンカーを滴下し、室温で20〜24時間密閉空間内で反応させた後、還元剤を用いてこの金基板上の金-チオール結合以外の反応をブロックすることが好ましい。
用いる還元剤としては、6−メルカプト−1−ヘキサノールが好ましい。かかるブロッキング処理により、核酸リンカーが効率よくスポットされた金基板が得られる。
[第2実施形態]
本実施形態の核酸リンカー固定化固相は、上述した実施形態の核酸リンカーが、ビーズ担体上に固定化されてなるものである。
用いられるビーズ担体としては、磁気ビーズ、金ナノ粒子、アガロースビーズ、プラスチックビーズ等が挙げられ、磁性を利用したハンドリングが容易であることから磁気ビーズであることが好ましい。核酸リンカー固定化ビーズを用いて、複数の反応槽が配設されたビーズ配置用基板中の反応槽に配列させることにより、核酸リンカー固定化アレイを構成することができる。核酸リンカーの固定化には、上述した、アビジン−ビオチン結合を利用する方法の他、核酸リンカーをアミノ基、ホルミル基、SH基、などの官能基で修飾し、ビーズ担体をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理したものを利用する方法が挙げられ、特に、アビジン−ビオチン結合を利用した方法が好ましい。
≪核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相≫[第1実施形態]
本実施形態の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相は、上述した第1実施形態の核酸リンカー−逆転写プライマー−複合体が、固相上に固定化されてなるものである。固相としては、≪核酸リンカー固定化固相≫と同様に、基板又は担体が挙げられる。
≪タンパク質又はペプチド固定化固相≫[第1実施形態]
本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相は、mRNA23と、上述した第1実施形態の核酸リンカー2と、前記mRNA23によりコードされるタンパク質又はペプチド33との複合体が、固相上に固定化されてなる(図1参照)。固相としては、≪核酸リンカー固定化固相≫と同様に、基板又は担体が挙げられる。
本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相は、核酸リンカー2が固相上に固定化されてなる上述した核酸リンカー固定化固相を用いて製造される。
即ち、本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相の製造方法は、(a)本実施形態の核酸リンカー固定化固相に、mRNA23を接触させ、mRNA23を核酸リンカー2にハイブリダイズさせて固相上にmRNA23−核酸リンカー2複合体を形成させる工程と、(b)前記工程(a)の後、固相上のmRNA23−核酸リンカー2複合体に第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカー2とmRNA23を架橋する工程と、(c)前記工程(b)の後、無細胞タンパク質翻訳系を用いてmRNA23からタンパク質又はペプチド33を合成し、タンパク質又はペプチド33のC末端と核酸リンカー2のタンパク質又はペプチドとの連結部分2aとを結合させて、mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体又はmRNA−核酸リンカー−ペプチド複合体を固相上に作製する工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
工程(a)において、mRNA23を核酸リンカー2にハイブリダイズさせる。まず、工程(a)に用いられるmRNAの調製について説明する。
mRNA23は、スクリーニングすべきタンパク質又はペプチドをコードするDNAを調製し、RNAポリメラーゼにより転写させることにより得られる。RNAポリメラーゼとしては、例えばT7RNAポリメラーゼが挙げられる。
前記DNAとしては、任意のDNAまたはDNAライブラリーを利用することができる。例えば、サンプル組織から得たcDNAライブラリー、配列をランダムに合成したDNAライブラリー、配列の一部を変異させたDNAライブラリーなどを用いることができる。
作製されるタンパク質又はペプチドを精製しやすいように、PCR等で予めDNAの末端に該ポリヒスチジンやFLAG等のタグをコードする塩基配列を付加しておくことが好ましい。また、転写効率を高めるために、PCR等で予めDNAの5’末端にT7プロモーター配列を付加しておくことが好ましく、翻訳効率を高めるために、PCR等で予めDNAの5’末端にオメガ配列を付加しておくことが好ましい。
次にmRNA23の3’末端領域と核酸リンカー2の5’末端領域とをハイブリダイズさせる。例えば、90℃まで加熱し、mRNA23を変性させた後、1時間かけて25℃まで冷却することによりmRNA23が核酸リンカー2に確実にハイブリダイズされる。
次に工程(b)において、前記工程(a)の後、固相上のmRNA23−核酸リンカー2複合体に第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカー2とmRNA23を架橋する。
第一の波長帯域は、340nm以上の光である。一例として、340〜380nmの波長帯域の光を照射する。照射時間は、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い時間がよく、5秒〜60秒が好ましい。また、照射時間は、10秒〜50秒がより好ましく、20秒〜40秒が特に好ましい。例えば、365nmの光を30秒間照射することにより、mRNA23と核酸リンカー2の全モル数中、60%以上のmRNA23−核酸リンカー2複合体の形成率が得られる。
架橋反応を行う際に用いるバッファーとしては、特に限定されず、Tris−HClバッファー等が挙げられる。該バッファー中の塩としては、100mM〜1MのNaClが好ましく、200mM〜600mMのNaClがより好ましい。また、例えば、バッファー中の塩が200mMのNaClであることにより、80%以上のmRNA23−核酸リンカー2複合体の形成率が得られる。
更に、架橋反応後、架橋されずに残ったmRNAを取り除く観点から、固相を洗浄することが好ましい。洗浄方法としては、特に限定されず、従来公知の方法が挙げられるが、例えば8Mの尿素含有バッファーを用いて、架橋されていないmRNAを変性させて取り除く方法が好ましい。
次に工程(c)において、前記工程(b)の後、無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNA23からタンパク質又はペプチド33を合成する。
無細胞タンパク質翻訳系とは、適当な細胞から抽出されたタンパク質合成能を有する成分からなるタンパク質翻訳系であり、この系にはリボゾーム、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素等、翻訳に必要な要素が含まれている。このようなタンパク質翻訳系として、大腸菌抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液等が挙げられ、mRNAの分解を抑制する観点から、本実施形態においては、ウサギ網状赤血球抽出液が好ましい。
更に、翻訳に必要な要素が独立に精製された因子のみからなる再構成型無細胞タンパク質合成系が挙げられる。再構成型無細胞タンパク質合成系は、従来の細胞抽出液を使用する場合よりもヌクレアーゼやプロテアーゼの混入を容易に防ぐことができるため、翻訳効率を高めることができる。
このような系を用いることにより、固相上にmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体又はmRNA−核酸リンカー−ペプチド複合体が製造される。
[第2実施形態]
本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相は、mRNA23と、上述した核酸リンカー12と、mRNA23によりコードされるタンパク質又はペプチド33との複合体が、固相上に固定化されてなる(図2参照)。固相としては、≪核酸リンカー固定化固相≫と同様に、基板又は担体が挙げられる。
本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相は、核酸リンカー12を用いる以外は、第1実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相と同様であるため、その説明を省略する。
[第3実施形態]
本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相は、上述したmRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54−複合体と、mRNA63によりコードされるタンパク質又はペプチド73との複合体であるmRNA23−核酸リンカー2−タンパク質又はペプチド73−逆転写プライマー54−複合体が、固相上に固定化されてなる(図4参照)。
固相としては、≪核酸リンカー固定化固相≫と同様に、基板又は担体が挙げられる。
複合体62を安定化する観点から、逆転写プライマー54は、5’末端領域部分54aが光反応性塩基誘導体54cを含むことが好ましい。光反応性塩基誘導体54cは、可逆的光連結性塩基を用いることが好ましい。本実施形態においては、短時間で効率のよい可逆的な架橋反応が可能である点から、光反応性塩基誘導体54cは、CNVKを用いている。本実施形態のタンパク質又はペプチド固定化固相の製造方法は、(a’)本実施形態の核酸リンカー固定化固相に、mRNA63及び逆転写プライマー54を接触させて逆転写プライマー54、核酸リンカー2、及び、mRNA63の3本の核酸鎖が相互に二本鎖を形成することにより、固相上にmRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体を形成させる工程と、(b’) 前記工程(a’)の後、固相上のmRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体に第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカー2とmRNA63を架橋するとともに、核酸リンカー2と逆転写プライマー54を架橋する工程と、(c’)前記工程(b’)の後、無細胞タンパク質翻訳系を用いてmRNA63からタンパク質又はペプチド73を合成し、タンパク質又はペプチド73のC末端と核酸リンカー2のタンパク質又はペプチドとの連結部分2aとを結合させて、mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を固相上に作製する工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
工程(a’)において、mRNA63及び逆転写プライマー54を核酸リンカー2にハイブリダイズさせる。核酸リンカーに各分子がハイブリダイズする順序は特に限定されず、mRNA63−核酸リンカー2複合体が形成された後に、逆転写プライマー54を系に添加して、mRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体を形成させてもよく、核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体が形成された後に、mRNA63を系に添加して、mRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体を形成させてもよい。また、予めmRNA63−逆転写プライマー54複合体を形成させたものを系に添加してmRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体を形成させてもよい。
次に工程(b’)において、前記工程(a’)の後、固相上のmRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54に第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカー2とmRNA63を架橋するとともに、核酸リンカー2と逆転写プライマー54を架橋する。第一の波長帯域の光としては、340nm以上の光である。一例として、340〜380nmの波長帯域の光を照射する。照射時間は、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い時間がよく、5秒〜60秒が好ましい。また、照射時間は、10秒〜50秒がより好ましく、20秒〜40秒が特に好ましい。mRNA63−核酸リンカー2−逆転写プライマー54複合体中の二箇所を架橋することにより、3つの二本鎖核酸が1ヶ所で交差した構造がより安定化される。
次に工程(c’)において、前記工程(b’)の後、無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNA63からタンパク質又はペプチド33を合成する。工程(c’)において、作成される複合体がmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体以外は、前記工程(c)と同様であるため、説明を省略する。
≪マイクロアレイ≫
本実施形態のマイクロアレイは、複数の核酸リンカー、複数の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、又は複数のmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体が固定化されたものである。核酸リンカー、核酸リンカー−逆転写プライマー複合体、及びmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体については、各実施形態において上述しているため、その説明を省略する。
≪核酸回収方法1≫
本実施形態の核酸回収方法は、本実施形態の核酸リンカーが固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、前記mRNAと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A1と、前記mRNAと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B1と、を含む。
前記工程A1は第一の波長帯域の光を照射することによって、核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有することが好ましい。
また、前記工程B1は第二の波長帯域の光を照射して核酸リンカーからmRNAを解離する工程を有することが好ましい。
以下、好ましい実施形態について説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の核酸回収方法は、
第1実施形態又は第2実施形態の核酸リンカーが固定化された固相上の全てのスポットに第一の波長帯域の光を照射して、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程A1aと、
固相上の特定のスポットに第二の波長帯域帯の光を照射して、特定のスポット中の核酸リンカーからmRNAを解離させる工程B1aと、を有する(図5参照。)。
本実施形態の核酸回収方法は、核酸リンカーが含有する光反応性塩基誘導体を利用したものである。上述したように、該光反応性塩基誘導体に照射する光の波長帯域により、架橋反応の制御が可能となる。可逆的光反応を利用して核酸の架橋と解離を行うため、光反応性塩基誘導体として可逆的光連結性塩基を用いることが好ましい。特に、厳密かつ高効率の制御が可能となることから、光反応性塩基誘導体としてはCNVKが好ましい。
工程A1aは、≪タンパク質又はペプチド固定化固相≫の第1実施形態における工程(b)に相当する。第一の波長帯域は340nm以上の光であり、一例として、340〜380nmの光が挙げられる。照射時間は、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い時間がよく、5秒〜60秒が好ましい。また、照射時間は、10秒〜50秒がより好ましく、20秒〜40秒が特に好ましい。該工程A1aにより、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAが架橋される。架橋反応により、例えば、固相を尿素含有バッファーを用いて洗浄したとしても、核酸リンカー−mRNA複合体の形成は維持される。
工程B1aにおいて、工程A1aにおいて形成された架橋を第一の波長帯域とは異なる第二の波長帯域の光照射により解除する。第二の波長帯域は350nm未満の光であり、一例として、280〜345nmの光が挙げられる。また、照射時間としては、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い方がよく、1秒〜300秒が好ましい。
また、工程B1aにおいて、第二の波長帯域の光を固相上の特定のスポットに選択的に照射する。光を選択的に照射する方法としては、マスクを用いる方法等、アレイ作製において用いられる方法が適用される。架橋を解除されたmRNAは、熱処理や尿素含有バッファーによる溶出等、定法により核酸リンカーから解離する。本実施形態の核酸回収方法によれば、第二の波長帯域の光照射によって解離したmRNAを選択的に回収することができる。
[第2実施形態]
本実施形態の核酸回収方法は、
第1実施形態又は第2実施形態の核酸リンカーが固定化された固相上の特定のスポット以外のスポットに第一の波長帯域(340nm以上。一例として、340〜380nm)の光を照射して、特定のスポット以外のスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程A1bと、
固相上の特定のスポット中の核酸リンカーからmRNAを解離させる工程B1bと、を有する(図6参照。)。
本実施形態においては、工程A1bにおいて、第一の波長帯域の光を固相上の特定のスポット以外のスポットに選択的に照射して、核酸リンカーとmRNAを架橋する。次いで、工程B1bにおいて、第一の波長帯域の光が照射されていないスポット中の核酸リンカーからmRNAを解離させる。解離方法は、第1実施形態と同様である。本実施形態の核酸回収方法によれば、第一の波長帯域の光照射がされなかったmRNAを選択的に回収することができる。
≪核酸回収方法2≫
本実施形態の核酸回収方法は、第1実施形態のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、
前記mRNAの逆転写プライマーと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A2と、
前記逆転写プライマーと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B2と、を含む。
前記工程A2は前記mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して前記逆転写プライマーの3’末端から前記mRNAの相補鎖が伸長してなるcDNAを合成する工程を含むことが好ましい。逆転写に用いられる逆転写酵素としては、従来公知のものが用いられ、例えば、Moloney Murine Leukemia Virus由来の逆転写酵素等が挙げられる。
逆転写されたcDNAはmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体中のmRNAとハイブリッドを形成する。mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体中のmRNAは、アプタマーとして、他の分子と非特異的に相互作用する可能性が高いため、このようなmRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を作製しておくことが好ましい。
また、タンパク質又はペプチドをコードするcDNAを解析するためには、この複合体の作製が必須である。
cDNAは、核酸リンカーにハイブリダイズした逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長して合成されたものである。従って、本実施形態においては、cDNAが核酸リンカーと一体となっておらず別個に存在する。合成されたcDNAは、核酸リンカーから分離可能であるため、本実施形態の核酸回収方法は、cDNAの回収方法に適している。
以下、核酸回収方法の好ましい実施形態について説明する。
[第1実施形態] 本実施形態の核酸回収方法は、
前記工程A2は固相上の全てのスポットに光照射し、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有し、 前記工程B2は固相上の特定のスポット中の核酸リンカーから逆転写プライマーを解離させる工程を有する。
図7に示すように、具体的には、本実施形態の核酸回収方法は、
mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相上の全てのスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとmRNAを架橋し、核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程A3と、
前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程B3と、
前記mRNAを前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体から解離させ、cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程C3と、
タンパク質又はペプチド固定化固相上の特定のスポットに第二の波長帯域の光を照射して、特定のスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程D3と、を有する。
工程A3において、第一の波長帯域の光は、340nm以上の光であり、一例として340〜380nmの光が挙げられる。また、照射時間としては、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い方がよく、5秒〜60秒が好ましく、10秒〜50秒がより好ましく、20秒〜40秒が特に好ましい。該工程A3により、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAが架橋される。
工程B3は、上述した逆転写反応により、mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体からmRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程である。
工程A3と工程B3の順序は特に限定されず、架橋反応→逆転写反応の順でも、逆転写反応→架橋反応の順でもよい。
工程C3において、mRNAを前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体から解離させる。cDNAを回収するためには、先ず、相補鎖を形成しているmRNAを解離させる必要があるからである。解離方法としては、特に限定されず、熱や変性剤による解離方法や、RNA分解酵素やアルカリ溶液を用いたmRNAの分解による解離方法が挙げられる。
工程D3において、工程A3において形成された架橋を第一の波長帯域とは異なる第二の波長帯域の光照射により解除する。第二の波長帯域の光は、350nm未満の光であり、一例として280〜345nmの光が挙げられる。また、照射時間としては、照射されることによる核酸の損傷を抑制する観点から短い方がよく、1秒〜300秒が好ましい。
また、工程D3において、第二の波長帯域の光を固相上の特定のスポットに選択的に照射する。光を選択的に照射する方法としては、マスクを用いる方法等、アレイ作製において用いられる方法が適用される。架橋を解除されたcDNAは、熱処理や尿素含有バッファーによる溶出等、定法により核酸リンカーから解離する。本実施形態の核酸回収方法によれば、第二の波長帯域の光照射によって解離したcDNAを選択的に回収することができる。
[第2実施形態] 本実施形態の核酸回収方法は、
前記工程A2は固相上の特定のスポット以外のスポットに光照射し、特定のスポット以外のスポット中の核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程を有し、
前記工程B2は固相上の特定のスポット中の核酸リンカーから逆転写プライマーを解離させる工程を有する。
図8に示すように、具体的には、本実施形態の核酸回収方法は、
mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー複合体を製造する工程A5と、
mRNA/cDNA−核酸リンカー複合体中の前記mRNAを前記mRNA/cDNA−核酸リンカー複合体から解離させ、cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程B5と、
固相上の特定のスポット以外のスポットに第一の波長帯域の光を照射して、特定のスポット以外のスポット中の核酸リンカーとcDNAを架橋する工程C5と、
特定のスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程D5と、を有する。
工程A5〜C5は、第1実施形態の各工程と同じであるため記載を省略する。工程B5と工程C5の順序は特に限定されず、RNA解離反応→架橋反応の順でも、架橋反応→RNA解離反応の順でもよい。
本実施形態においては、工程C5において、第一の波長帯域の光を固相上の特定のスポット以外のスポットに選択的に照射して、核酸リンカーとcDNAを架橋する。次いで、工程D5において、第一の波長帯域の光が照射されていないスポット中の核酸リンカーからcDNAを解離させる。解離方法は、第1実施形態と同様である。本実施形態の核酸回収方法によれば、第一の波長帯域の光照射がされなかったmRNAを選択的に回収することができる。
≪機能性タンパク質の同定方法≫[第1実施形態]
図9に示すように、本実施形態の機能性タンパク質の同定方法は、
本実施形態の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A6と、
無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B6と、
更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C6と、
前記固相上の全てのスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとmRNAを架橋するとともに、核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程D6と、
前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖を伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程E6と、
前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程F6と、
機能性スクリーニングにより特定されたスポットに第二の波長帯域の光を照射して、特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G6と、
解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H6と、を有する。
以下、本実施形態の機能性タンパク質の同定方法について詳細に説明するが、上述した工程と同様の工程については、その記載を省略する。
工程F6における機能性スクリーニングは、固相上の多数のスポットから所望のタンパク質を有するスポットを特定するためのものであれば特に限定されない。
例えば、スクリーニング対象のタンパク質が酵素である場合、機能性スクリーニングとしては、酵素活性測定系が挙げられる。具体的な手法としては、固相上のスポット位置に対応するような微小凹部を有するマイクロ凹版を用意し、マイクロ凹版の微小凹部内にタンパク質の活性を測定するために必要な溶液(酵素活性測定系)を予め充填し、固相とマイクロ凹版を重ね合わせて酵素反応を生じさせることで、固相上のタンパク質の活性を測定する手法が挙げられる。
また、酵素活性の測定法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET法)、エバネッセント場分子イメージング法、蛍光イメージングアナライズ法、固相酵素免疫検定法(Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA))、蛍光偏光解消法、蛍光相関分光法、表面プラズモン共鳴法等が挙げられる。
本実施形態の機能性タンパク質の同定方法は、工程F6と工程G6の間に、mRNAを前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体から解離させる工程I6を有していてもよい。cDNAを回収するためには、先ず、相補鎖を形成しているmRNAを解離させる必要があるからである。解離方法としては、特に限定されず、熱や変性剤による解離方法や、RNA分解酵素やアルカリ溶液を用いたmRNAの分解による解離方法が挙げられる。
工程G6において、工程D6において形成された架橋を第一の波長帯域とは異なる第二の波長帯域の光照射により解除する。本実施形態の機能性タンパク質の同定方法によれば、第二の波長帯域の光照射によって解離したcDNAを選択的に回収することができる。
工程H6において、解離したcDNAを回収する。回収方法としては特に限定されず、熱処理や尿素含有バッファーによる溶出等、従来公知の方法が挙げられる。次いで、回収されたcDNAの塩基配列を解析することにより、所望の機能を有するタンパク質又はペプチドをコードするDNAを同定することができる。
[第2実施形態]
図10に示すように、本実施形態の機能性タンパク質の同定方法は、
本実施形態の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A7と、
無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B7と、
更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C7と、
前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程D7と、
前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程E7と、
機能性スクリーニングにより特定されたスポット以外のスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとcDNAを架橋する工程F7と、
特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G7と、
解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H7と、を有する
以下、本実施形態の機能性タンパク質の同定方法について詳細に説明するが、上述した工程と同様の工程については、その記載を省略する。
本実施形態の機能性タンパク質の同定方法は、工程E7と工程F7の間に、mRNAをmRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体から解離させる工程I7を有していてもよい。cDNAを回収するためには、先ず、相補鎖を形成しているmRNAを解離させる必要があるからである。解離方法としては、特に限定されず、熱や変性剤による解離方法や、RNA分解酵素やアルカリ溶液を用いたmRNAの分解による解離方法が挙げられる。
本実施形態においては、工程F7において、第一の波長帯域の光を固相上の特定のスポット以外のスポットに選択的に照射して、核酸リンカーとcDNAを架橋する。次いで、工程G7において、第一の波長帯域の光が照射されていないスポット中の核酸リンカーからcDNAを解離させる。解離方法は、第1実施形態と同様である。本実施形態の機能性タンパク質の同定方法によれば、第一の波長帯域の光照射がされなかったcDNAを選択的に回収し、回収されたcDNAの塩基配列を解析することにより、所望の機能を有するタンパク質又はペプチドをコードするDNAを同定することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[光架橋核酸リンカーの合成]
以下に示す材料をつくばオリゴサービス株式会社に委託し、自動核酸合成装置を使用して、ホスホロアミダイト法に従って合成した。
(1)光架橋核酸リンカー1[配列:5’ − (HO−C12−SS−C12)−X1−(CNVK)−X2−(spc18)−(spc18)−(spc18)−CC−(Puromycin)−3’]
X1は以下の配列を表す。
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGCA(配列番号1:54mer)
X2は以下の配列を表す。
CCGTGTAGTAGTCGC(配列番号2:15mer)
(2)光架橋核酸リンカー2[配列:5’ − (HO−C12−SS−C12)−X3−(CNVK)−X4−(spc18)−(spc18)−(spc18)−CC−(Puromycin)−3’]
X3は以下の配列を表す。
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTCAGATCACTCGGTCGA(配列番号3:67mer)
X4は以下の配列を表す。
GTAGACCGGTCTCG(配列番号4:14mer)
(3)逆転写プライマー1[配列:5’ −X5−[CNVK]−X6−3’]
X5は以下の配列を表す。
CGAGA(配列番号5:5mer)
X6は以下の配列を表す。
CGGTGACGATGCCT(配列番号6:14mer)
ここで、(HO−C12−SS−C12)は、(1−O−Dimethoxytrityl−hexyl−disulfide,1’−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite)を用いて合成したものを表す(Glen Research社製、商品名:Thiol−Modifier C6 S−S)。
(CNVK)は、(3−Cyanovinylcarbazole nucleoside,1’−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramidite)を用いて合成したものを表す。
(spc18)は、18−O−Dimethoxytritylhexaethyleneglycol,1−[(2−cyanoethyl)−(N,N−diisopropyl)]−phosphoramiditeを用いて合成したものを表す(Glen Research社製、商品名:Spacer Phosphoramidite 18)。
(Puromycin)は、5'-Dimethoxytrityl−N-trifluoroacetyl−puromycin,2'-succinoyl−long chain alkylamino−CPG用いて合成したものを表す(Glen Research社製、商品名:Puromycin−CPG)。
[mRNAの合成]
5’上流からT7プロモーター配列と翻訳促進配列、Oct1 POU特異的ドメインをコードする配列(以下、PDOとよぶ)、スペーサー領域及び光架橋リンカー1との相補鎖領域を有する2本鎖DNA配列(DNA1、配列番号7:389bp)、もしくは光架橋リンカー2、3との相補鎖領域を有する2本鎖DNA配列(DNA2、配列番号8:401bp)をPCRにより増幅した。
PCRにより得られたDNAからT7 RiboMAX Express Large Scale RNA Production System(プロメガ社製)を用いて、添付のプロトコールに従って5−30pmol/μlのmRNAを合成した(RNA1、配列番号9:359mer、RNA2、配列番号10:371mer)。なお、mRNA合成反応中にCy3−UTPもしくはCy5−UTP(どちらもGEヘルスケア社製)を添加することで、Cy3もしくはCy5修飾したmRNAを作製した。
[液相における光架橋リンカーとmRNAの光架橋](1)光架橋リンカー1の還元
100μMの光架橋リンカー1 2μlを1Mリン酸バッファー(pH 9.0)38μlと混合し、1MDTTを10μl加え、室温で1時間反応させ、前記光架橋リンカー1の5’側にあるジスルフィド基をチオール基に還元した。その後、20mMリン酸バッファー(pH 7.2)で平衡化したマイクロバイオスピン6カラム(バイオラッド社製)を用いて、過剰なDTTを除去した。
(2)前記還元済み光架橋リンカー1のテトラメチルローダミン修飾 前記還元済み光架橋リンカー1 60μlを、DMSOに溶解した1mMのテトラメチルローダミン−5−マレイミド(和光純薬社製)5μlと混合し、よく撹拌しながら室温で60分間反応させた。その後、エタノール沈殿を行って、反応物を沈殿させ、未反応のテトラメチルローダミン−5−マレイミドを除去した。沈殿物を200μlの70%エタノールにて洗浄した後、20μlのヌクレアーゼフリー水に溶解した。
(3)前記テトラローダミン修飾した光架橋リンカー1とmRNAの光架橋 前記テトラローダミン修飾光架橋リンカー1 5pmolとmRNA15pmolとを、10μlの50mMTris−HCl(pH 7.5)/2M NaCl中で混合し、90℃で30秒熱変性させた後、13分間かけて10℃まで徐冷することで、ハイブリダイズさせた後、365nmの紫外線(210mW/cm)を30秒間照射した。
紫外線照射サンプルおよび照射前サンプルを8M尿素5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、蛍光イメージャー(Typhoon9410、GEヘルスケア社製)でテトラメチルローダミンの蛍光を観察(励起波長:533nm、蛍光フィルター:580BP30)した後、SybrGold(Invitrogen社製)で染色し、蛍光イメージャーで観察した(励起波長:488nm、蛍光フィルター:520BP40)。
結果を図11に示す。レーン1は 100bp DNA ladder(プロメガ社製)、レーン2は紫外線照射前のサンプル、レーン3は紫外線照射後のサンプルである。左図はSybrGold染色の蛍光、右図はテトラメチルローダミン蛍光を観察したものである。レーン2、3より、紫外線照射によってmRNAにテトラメチルローダミン修飾光架橋リンカー1が光架橋して分子量が増加していることが確認された。
[ウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系を用いたmRNAとタンパク質の連結] 上記のように合成した、光架橋核酸リンカー1とmRNAの光架橋物(光架橋物1)を用いてウサギ網状赤血球由来の無細胞翻訳系を用いて翻訳反応を行った。1pmolの光架橋物1と0.6μlの20x translation Mix(ライフテクノロジーズ社製)と、8.5μlのウサギ網状赤血球の細胞溶解液であるRabbit Reticulocyte Lysate(ライフテクノロジーズ社製)、および0.25μlのFluorotect(プロメガ社製)に、ヌクレアーゼフリー水を加えて混合し、12.5μlの混合液とした。
この混合液を30℃にて20分間反応させた後、5μlの3M 塩化カリウム溶液と1.5μlの1M 塩化マグネシウム溶液を加え、混合した。この混合液を更に37℃で30分間反応させ、PDO遺伝子のポリペプチド鎖を合成し、光架橋物1−タンパク質複合体を形成させた。反応産物を8M尿素含有SDS−6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離し、光架橋物1のテトラメチルローダミンの蛍光シグナルと、タンパク質中に取り込まれたFluorotectの蛍光シグナルを蛍光イメージャーを用いて検出した。
[小麦胚芽由来無細胞翻訳系を用いたmRNAとタンパク質の連結] 前述のように合成した、光架橋物1を用いて小麦胚芽由来の無細胞翻訳系を用いて翻訳反応を行った。1pmolの光架橋物1、0.5μlのAmino Acid Mixture(プロメガ社製)、6.25μlの小麦胚芽抽出液であるWheat Germ Extract(プロメガ社製)、0.3μlのFluorotect(プロメガ社製)、1.0μlの酢酸カリウム、0.2μlのSUPERase・In(20U/μl,ライフテクノロジーズ社製)および0.2μlのRNasin Plus RNase Inhibitor(プロメガ社製)にヌクレアーゼフリー水を加えて混合し、13μlの混合液とした。
この混合液を25℃にて20分間反応させ、PDO遺伝子のポリペプチド鎖を合成し、光架橋物1−タンパク質複合体を形成させた。反応産物を8M尿素含有SDS−6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離し、光架橋物1のテトラメチルローダミンの蛍光シグナルと、タンパク質中に取り込まれたFluorotectの蛍光シグナルを蛍光イメージャーを用いて検出した。
[液相におけるmRNAとタンパク質の連結実験結果] 上述したウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系および小麦胚芽由来無細胞翻訳系を用いた、mRNAとタンパク質の連結実験の結果を図12に示す。レーン1はmRNAと光架橋リンカー1の光架橋物(光架橋物1)、レーン2はウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系を用いた翻訳産物、レーン3は小麦胚芽由来無細胞翻訳系を用いた翻訳産物、レーン4は光架橋物1およびFluorotectを未添加のウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系反応物、レーン5は、光架橋物1およびFluorotectを未添加の小麦胚芽由来無細胞翻訳系反応物である。左図は光架橋物1のテトラメチルローダミンの蛍光を検出したもの、右図はタンパク質に取り込まれたFluorotectの蛍光を検出したもの(励起波長:488nm、蛍光フィルター:520BP40)である。
この泳動結果より、ウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系を用いた反応では、光架橋物1より高分子量側に、テトラメチルローダミンおよびFluorotectの蛍光シグナルを示す光架橋物1−タンパク質複合体のバンドを確認できた。また、小麦胚芽由来無細胞翻訳系を用いた反応では、反応過程においてmRNAの分解が確認され、複合体の形成が僅かであった。この結果から、光架橋核酸リンカー1を用いたmRNA−タンパク質複合体形成反応ではウサギ網状赤血球由来の無細胞翻訳系を用いることが好ましいことが確認された。
[金薄膜基板上への光架橋リンカー1の固定] 金薄膜基板を酸溶液(HSO:H=1:1)に浸し、200℃で15分間洗浄した後、超純水で10分間リンスし、窒素ガスで乾燥した。
その後、1×PBSに溶解した1μMの還元済み光架橋リンカー1を金薄膜基板上に滴下し、室温で24時間、密閉反応溶液中で反応させた。
その後、金薄膜基板を10mlの1×PBSに溶解した1mMの6−mercapto−1−hexanol溶液に浸漬し、室温で1時間反応させた後、1×PBS/0.2%(v/v)Tween20溶液中で30分間超音波洗浄し、1000rpmで3秒間、3000rpmで20秒間の条件でスピンドライヤーを用いて乾燥した。
[金薄膜基板上でのmRNAの光架橋] 光架橋リンカー1を固定した金薄膜基板上全面に0.02%のSDSを含む3×SSC 50μlに溶解した1μMのCy3修飾mRNA1を滴下後、30℃で2時間、密閉容器中で反応させることで、光架橋リンカー1にmRNA1をハイブリダイズさせた後、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄することで、未反応のmRNAを洗い流した。
その後、金薄膜基板上に365nmの紫外線(210mW/cm)を1、5、10、20、30、45、60、90秒間スポット照射した。
その後、8M尿素溶液で洗浄することにより光架橋リンカー1とmRNA1のハイブリダイズを剥がし、光架橋していないmRNAを洗い流し、金薄膜基板上に残留している光架橋されたCy3修飾mRNAを蛍光イメージャーで観察した(励起波長:532nm、蛍光フィルター:580BP30)。
結果を図13に示す。左から、紫外線照射スポット・照射時間対応図、紫外線照射前、紫外線照射後、尿素洗浄後のCy3蛍光像である。この結果より、紫外線を照射したスポットのみCy3修飾mRNAが残留し、光架橋が行われていることを確認した。また、残留Cy3修飾mRNA量を定量したところ、照射時間に応じて光架橋度が上がることが確認できた(図14)。
[金薄膜基板上へのタンパク質固定化] 光架橋リンカー1を固定した金薄膜基板上に3×SSCに溶解した1μMのCy5修飾mRNA1、0.5μMのCy5修飾mRNA1と0.5μMの無修飾mRNA1の混合液、0.25μMのCy5修飾mRNA1と0.25μMの無修飾mRNA1の混合液、1μMの無修飾mRNA1を5μlずつスポットした後、30℃で2時間、密閉容器中で反応させ、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄した。その後、金薄膜基板全体に365nmの紫外線(210mW/cm)を30秒間照射し、金薄膜基板を蛍光イメージャーで観察した。
次に、洗浄液(80mM酢酸カリウム、0.5mM酢酸マグネシウム)で洗浄した後、Fluorotect(プロメガ社製)を添加した50μlのウサギ網状赤血球由来無細胞翻訳系(ライフテクノロジーズ社製)を滴下し、30℃で20分間、密閉容器中で反応させた。その後、25μlの高塩濃度溶液(3M塩化カリウム、1M塩化マグネシウム)を添加し、37℃で90分間、密閉容器中で反応させた後、洗浄液(790mM塩化カリウム、79mM塩化マグネシウム、52mM酢酸カリウム、0.32M酢酸マグネシウム)で洗浄し、金薄膜基板を蛍光イメージャー(Typhoon9410、GEヘルスケア社製)で観察しCy5修飾mRNA1の蛍光(励起波長:633nm、蛍光フィルター:670BP30)、およびタンパク質に取り込まれたFluorotectの蛍光を確認した。
その後、マグネシウム非含有洗浄液(790mM塩化カリウム、52mM酢酸カリウム、)で洗浄し、上記と同様に金薄膜基板を蛍光イメージャー(Typhoon9410、GEヘルスケア社製)で観察した。
結果を図15に示す。この結果より、翻訳後、Fluorotectが取り込まれたタンパク質がmRNA1と同じスポット上に存在していることが分かる。また、マグネシウム非含有洗浄液で洗浄すると、Fluorotectの蛍光強度が大幅に減少するが、これは、mRNA上に存在するポリソームを介して結合していたタンパク質が、マグネシウム非含有洗浄液によってポリソームが洗い流された結果、Fluorotectを取り込んだタンパク質も同時に洗い流された為と考えられる。そして、マグネシウム非含有洗浄液による洗浄後も金薄膜基板上に残留しているFluorotect修飾タンパク質が、光架橋リンカー1を介してmRNA1に結合しているタンパク質であると考えられ、光架橋リンカー1を用いて、タンパク質を基板上に固定化できることが確認できた。
[基板上での逆転写] 光架橋リンカー2を固定した金薄膜基板上に、3×SSCに溶解した1μMのCy5修飾mRNA2および1μMの逆転写プライマー1の混合液を5μlずつ4箇所に滴下し、30℃で2時間、密閉容器中で反応させ、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄した。
次に、金薄膜基板全面に365nmの紫外線(210mW/cm)を30秒間照射した後、Cy3−dCTP(GEヘルスケア社製)を添加したSuperScriptIII逆転写反応液(インビトロジェン社製)を金薄膜基板上全面に50μl滴下し、42℃で1時間、密閉容器中で反応させた後、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄し、金薄膜基板を蛍光イメージャー(Typhoon9410、GEヘルスケア社製)で観察し、Cy5修飾mRNA2および、逆転写反応中にcDNAに取り込まれたCy3の蛍光を確認した。
結果を図16に示す。この結果より、逆転写反応後に、Cy3修飾されたcDNAが基板上で合成されていることが確認できる。
[基板上からのcDNA回収1] 逆転写反応を行った金薄膜基板上に、50μlの4mMの塩化マグネシウムを含む1×PBSに溶解した100unitのリボヌクレアーゼH(タカラバイオ社製)を滴下し、30℃で15分間、密閉容器中で反応させた後、リボヌクレアーゼHによるCy5修飾mRNAの分解を、蛍光イメージャーで確認した。
結果を図17に示す。この結果より、Cy3修飾されたcDNAは残留しているが、Cy5修飾されたmRNAが分解され消失していることが確認できる。
次に、基板上全面に50μlの8M尿素溶液を滴下し、Cy3修飾cDNA固定化スポットのうち2箇所に312nmの紫外線(10mW/cm)を180秒間照射した後、基板上の溶液を全て回収した。
溶液回収後の金薄膜基板を蛍光イメージャーで観察し、312nmの紫外線を照射したスポットからCy3修飾cDNAが遊離していることを確認した。
光開裂によって遊離したCy3修飾cDNAが溶解していると考えられる回収溶液をエタノール沈殿で濃縮後、回収溶液中に含まれるcDNA量を、リアルタイムPCRを用いて解析した結果、回収DNA量は、約16000分子であった。なお、312nmの紫外線を照射せずに回収したサンプルも同様に定量したところ、DNAの増幅は見られたがSYBR Green IによるリアルタイムPCR実験系での定量範囲未満であった。(図18参照。)。以上のことから、312nmの紫外線照射に依存した基板上からのDNA回収を確認できた。リアルタイムPCR装置としてライトサイクラー480(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、リアルタイムPCR試薬としてライトサイクラー480SYBR GreenI マスター(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、プライマーとして、(5’−GACCTTGAGGAGCTTGAGCAG−3’)、および(5’−ATAGCGAGCCCAACATCACC−3’)を用いた。
[基板上からのcDNA回収2] 光架橋リンカー2を固定した金薄膜基板上に3×SSCに溶解した0.5μMのCy5修飾mRNA1と0.5μMの無修飾mRNA1の混合液を5μlずつ4箇所にスポットした後、30℃で2時間、密閉容器中で反応させ、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄した。その後、金薄膜基板全体に365nmの紫外線(210mW/cm)を0.1xSSC溶液中で30秒間照射し、金薄膜基板を蛍光イメージャーで観察した(図19参照。)。
次に、50μlの2μMの光架橋リンカー3とCy3−dCTP(GEヘルスケア社製)を添加したSuperScriptIII逆転写反応液(インビトロジェン社製)を金薄膜基板上全面に50μl滴下し、30℃で30分、42℃で1時間、密閉容器中で反応させた後、3×SSC溶液で5分間、0.1×SSC/0.1%SDS溶液で5分間、および0.1×SSC溶液で5分間洗浄し、金薄膜基板を蛍光イメージャーで観察し、Cy5修飾mRNAおよび、逆転写反応中にcDNAに取り込まれたCy3の蛍光を確認した(図19参照。)。その後、金薄膜基板の一部に365nmの紫外線(210mW/cm)を30秒間照射した。
次に、逆転写反応を行った金薄膜基板上に、50μlの4mMの塩化マグネシウムを含む1×PBSに溶解した100unitのリボヌクレアーゼH(タカラバイオ社製)を滴下し、30℃で15分間、40℃で5分間密閉容器中で反応させた後、基板上の溶液を全て回収した。リボヌクレアーゼHによるmRNAの分解とcDNAの遊離を蛍光イメージャーで確認した(図19参照。)。
溶液回収後の金薄膜基板を蛍光イメージャーで観察し、2回目の365nmの紫外線を照射していないスポットからCy3修飾cDNAが遊離していることを確認した。
以上の結果から、本実施形態の核酸リンカーによれば、固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を効率よく合成するできることが明らかである。
また、本実施形態の核酸回収方法によれば、固相上の特定領域から核酸回収を効率よく行うことができることが明らかである。
固相上でmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を効率よく合成するできる核酸リンカーを提供することができる。
2,12 核酸リンカー
2a 連結部分
23,63 mRNA
33,73 タンパク質又はペプチド
44,54 逆転写プライマー
44a, 54a 5’末端領域部分
44b,54c 光反応性塩基誘導体
51a ポリヌクレオチド部分
51b アーム部分
51c スペーサー部分
51d 分岐鎖
54b 3’末端領域部分
62 複合体

Claims (30)

  1. mRNAと、該mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体を製造するための核酸リンカーであって、
    5’末端にスペーサー部分と、
    前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得るポリヌクレオチド部分と、
    前記タンパク質又はペプチドとの連結部分を3’末端に有するアーム部分とを備え、
    前記スペーサー部分と前記ポリヌクレオチド部分と前記アーム部分とが一本鎖を形成してなり、
    前記ポリヌクレオチド部分が光反応性塩基誘導体を含み、
    前記スペーサー部分は50塩基以上のオリゴヌクレオチドを有し、
    前記光反応性塩基誘導体は3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideであることを特徴とする核酸リンカー。
  2. 前記スペーサー部分が5’末端に固相との結合部位を有する請求項1に記載の核酸リンカー。
  3. 前記タンパク質又はペプチドとの連結部分は、前記アーム部分の末端にピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、又は3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシドが結合されてなる請求項1又は2に記載の核酸リンカー。
  4. 更に、前記ポリヌクレオチド部分と、前記アーム部分の間から突出した3’末端を有する分岐鎖を有し、
    該分岐鎖は、前記mRNAの一部の配列とハイブリダイズして、該mRNAを逆転写するプライマー配列を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカー。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーと、
    該mRNAの逆転写プライマーと、からなる核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であって、
    前記逆転写プライマーは、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分を含むことを特徴とする核酸リンカー−逆転写プライマー複合体。
  6. 前記逆転写プライマーは、前記5’末端領域部分に3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む請求項に記載の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーと、
    前記mRNAと、
    該mRNAの逆転写プライマーと、からなるmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であって、
    前記逆転写プライマーは、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなることを特徴とするmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体。
  8. 前記逆転写プライマーは、前記5’末端領域部分に3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む請求項に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーが、固相上に固定化されてなることを特徴とする核酸リンカー固定化固相。
  10. 請求項5又は6に記載の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とする核酸リンカー−逆転写プライマー複合体固定化固相。
  11. mRNAと、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーと、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とするタンパク質又はペプチド固定化固相。
  12. 請求項に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体と、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体であるmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とするタンパク質又はペプチド固定化固相。
  13. 請求項に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体と、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体であるmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体が、固相上に固定化されてなることを特徴とするタンパク質又はペプチド固定化固相。
  14. 複数の核酸リンカーが固定化されたマイクロアレイであって、
    前記核酸リンカーは請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーであることを特徴とするマイクロアレイ。
  15. 複数の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が固定化されたマイクロアレイであって、
    前記核酸リンカー−逆転写プライマー複合体は請求項5又は6一項に記載の核酸リンカー−逆転写プライマー複合体であることを特徴とするマイクロアレイ。
  16. 複数のmRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体が固定化されたマイクロアレイであって、
    前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質複合体は、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーと、前記mRNAによりコードされるタンパク質又はペプチドとの複合体であることを特徴とするマイクロアレイ。
  17. 請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸リンカーが固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、
    前記mRNAと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A1と、
    前記mRNAと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B1と、
    を含むことを特徴とする核酸回収方法。
  18. 前記工程A1は第一の波長帯域の光を照射することによって、核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有し、
    前記工程B1は第二の波長帯域の光を照射して核酸リンカーからmRNAを解離する工程を有する請求項17記載の核酸回収方法。
  19. 前記工程A1は固相上の全てのスポットに光照射し、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有し、
    前記工程B1は固相上の特定のスポット中の核酸リンカーからmRNAを解離させる工程を有する請求項17又は18に記載の核酸回収方法。
  20. 前記工程A1は固相上の特定のスポット以外のスポットに光照射し、特定のスポット以外のスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有し、
    工程B1は、固相上の特定のスポット中の核酸リンカーからmRNAを解離させる工程を有する請求項17又は18に記載の核酸回収方法。
  21. 第一の波長帯域は340nm〜380nmであり、第二の波長帯域は280nm〜345nmである請求項1820のいずれか一項に記載の核酸回収方法。
  22. 請求項に記載のmRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体が固定化された固相を用いて核酸を回収する核酸回収方法であって、
    前記mRNAの逆転写プライマーと前記核酸リンカーとを光反応性塩基誘導体によって光架橋する工程A2と、
    前記逆転写プライマーと前記核酸リンカーとの前記光架橋を光照射によって解離させる工程B2と、
    を含むことを特徴とする核酸回収方法。
  23. 前記工程A2は前記mRNA−核酸リンカー−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して前記逆転写プライマーの3’末端から前記mRNAの相補鎖が伸長してなるcDNAを合成する工程を含む請求項22に記載の核酸回収方法。
  24. 前記工程A2は第一の波長帯域の光を照射することによって、核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程を有し、
    前記工程B2は第二の波長帯域の光を照射して核酸リンカーからcDNAを解離する請求項23に記載の核酸回収方法。
  25. 前記工程A2は固相上の全てのスポットに光照射し、全てのスポット中の核酸リンカーとmRNAを架橋する工程を有し、
    前記工程B2は固相上の特定のスポット中の核酸リンカーから逆転写プライマーを解離させる工程を有する請求項2224のいずれか一項に記載の核酸回収方法。
  26. 前記工程A2は固相上の特定のスポット以外のスポットに光照射し、特定のスポット以外のスポット中の核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程を有し、
    前記工程B2は固相上の特定のスポット中の核酸リンカーから逆転写プライマーを解離させる工程を有する請求項2224のいずれか一項に記載の核酸回収方法。
  27. 第一の波長帯域は340nm〜380nmであり、第二の波長帯域は280nm〜345nmである請求項2326のいずれか一項に記載の核酸回収方法。
  28. 請求項に記載の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A6と、
    無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B6と、
    更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C6と、
    前記固相上の全てのスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとmRNAを架橋するとともに、核酸リンカーと逆転写プライマーを架橋する工程D6と、
    前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖を伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程E6と、
    前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程F6と、
    機能性スクリーニングにより特定されたスポットに第二の波長帯域の光を照射して、特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G6と、
    解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H6と、
    を有することを特徴とする機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法。
  29. 請求項に記載の核酸リンカー固定化固相に、mRNAを接触させ、前記mRNAを前記核酸リンカーにハイブリダイズさせて固相上にmRNA−核酸リンカー複合体を形成させる工程A7と、
    無細胞タンパク質翻訳系を用いて前記mRNAからタンパク質又はペプチドを合成し、前記タンパク質又はペプチドのC末端を、前記タンパク質又はペプチドとの連結部分に結合させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を形成させる工程B7と、
    更に、前記核酸リンカーのアーム部分の少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有し、3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideを含む5’末端領域部分と、前記mRNAの少なくとも一部の配列とハイブリダイズし得る配列を有する3’末端領域部分と、からなる逆転写プライマーを前記固相に接触させてmRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を形成させる工程C7と、
    前記mRNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド−逆転写プライマー複合体を逆転写反応に供して、前記逆転写プライマーの3’末端から相補鎖が伸長してなるcDNAを合成して、mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体を製造する工程D7と、
    前記mRNA/cDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体が固定された固相を機能性スクリーニングに供し、該固相上のスポットを特定する工程E7と、
    機能性スクリーニングにより特定されたスポット以外のスポットに第一の波長帯域の光を照射して、核酸リンカーとcDNAを架橋する工程F7と、
    特定されたスポット中のcDNA−核酸リンカー−タンパク質又はペプチド複合体からcDNAを解離させる工程G7と、
    解離したcDNAを回収してその塩基配列を解析する工程H7と、
    を有することを特徴とする機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法。
  30. 第一の波長帯域は340nm〜380nmであり、第二の波長帯域は280nm〜345nmである請求項28又は29に記載の機能性タンパク質又は機能性ペプチドの同定方法。
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