JP6020861B2 - 電子写真現像剤用磁性キャリア及びその製造方法、並びに二成分系現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用磁性キャリア及びその製造方法、並びに二成分系現像剤 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真現像剤用磁性キャリアに関するものであって、詳しくは粒子表面に微小な凹凸を形成することによって、樹脂被覆時の接着性が優れ被覆層の磨耗や剥がれを防止することができ、キャリアに対する機械的なストレスに対して安定となり、更に適切な電気抵抗値をもち、且つ、電気抵抗値の電圧依存性を少なく制御することで、優れた階調性を有す電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分現像剤を提供する。
周知の通り、電子写真方式においては、セレン、OPC(有機半導体)、a−Si等の光導電性物質を感光体として用い、種々の手段により静電気的潜像を形成し、この潜像に磁気ブラシ現像法等を用いて、潜像の極性と逆に帯電させたトナーを静電気力により付着させ、顕像化する方式が一般に採用されている。
この現像工程においては、トナーとキャリアとからなる二成分系の現像剤が使用され、キャリアと呼ばれる担体粒子が摩擦帯電により適量の正又は負の電気量をトナーに付与し、且つ、磁気力を利用し磁石を内蔵する現像スリーブを介して、潜像を形成した感光体表面付近の現像領域にトナーを搬送している。
近年、前記電子写真方式の複写機又はプリンターはデジタル化、複合化が進み、高機能化、高画質化及び高速化の要求がこれまで以上に増大している。また、パーソナル化、省スペース化等の市場要求に伴い、電子写真方式の画像形成装置の小型化が促進されている。特にフルカラーの画質に関しては高級印刷、銀塩写真に近い高画質品位が望まれている。この為、細密化された潜像を長期にわたり忠実に可視化するためには現像剤帯電を安定に維持することが重要である。これらの特性を安定に維持するためには、現像剤中に含有されているキャリア特性、つまり帯電機能を有するキャリアの帯電性能や電気抵抗等の諸特性が長期に亘って安定に維持できる高寿命化がより必要とされている。
これまで、現像剤を形成するキャリアは、装置内に滞留してトナーと摩擦が繰り返されるために、キャリアの表面状態が使用経時によって変化を起こし、画像が変化するという問題があった。これは、キャリア粒子表面にトナーが強固に付着してしまい汚染されることで本来持っているキャリアの帯電性が失われてしまう現象(いわゆるトナーのスペント)と、キャリア粒子表面に形成された樹脂被覆層が摩擦によって剥離を起こし、リークサイトを生じて電気抵抗が変化する現象の2つの現象が大きな原因とされている。
これらの問題に対し、キャリアへのトナーのスペント化を防止するためには、従来からキャリア表面に種々の樹脂を被覆する方法が提案されており、例えばキャリア芯材粒子表面にフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性樹脂をコートしたものが知られている。このようなコート型キャリアは帯電量、抵抗制御の機能付与だけでなく、表面が低表面エネルギー物質で覆われているため、現像時にトナーのスペント化が起こり難く、その結果、帯電量が安定し、現像剤の長寿命化が計れる。
一方、キャリアにはある程度の電気抵抗値を有すことが求められており1×10〜1×1016Ω・cm程度の電気抵抗値が求められている。即ち鉄粉キャリアのように電気抵抗値が10Ω・cmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする問題がある。また、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、さらにトナーの帯電量も高くなり、結果、エッジの効いた画像にはなるが、反面、大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるという問題が生じる。
更に、電気抵抗値の電圧に対する依存性が大きくなると、一般的に階調性のない画像となり、複写機及びプリンターの現像剤として用いた場合に高画質化が困難となり、用途も限定されることとなる。
一般的に二成分系現像剤を構成するキャリアとして、鉄粉キャリア及びフェライトキャリア、バインダー樹脂中に磁性粒子粉末を分散させたバインダー型キャリア、及び磁性体を被覆樹脂でコートしてなるコート型キャリアがよく知られている。
鉄粉キャリア及びフェライトキャリアは、通常、粒子表面を樹脂で被覆して使用されるが、鉄粉キャリアは真比重が7〜8g/cmであってフェライトキャリアは真比重が4.5〜5.5g/cmと大きいために、現像機中で攪拌するためには大きな駆動力を必要とし、機械的な損耗が多く、トナーのスペント化、キャリア自体の帯電性劣化や感光体の損傷を招きやすい。さらに、前記鉄粉キャリア及びフェライトキャリア表面と被覆樹脂との接着性が良好とは言い難く、使用中に次第に被覆樹脂が剥離して、帯電性の変化を起こし、結果として画像の乱れやキャリア付着等の問題を引き起こしてしまう。
もっとも、特開平2−220068号公報記載の磁性酸化鉄粒子とフェノール樹脂との球状磁性複合体粒子からなる磁性体分散型キャリアは、前記鉄粉キャリア及びフェライトキャリアに比べて被覆樹脂との接着性に数段優れており、使用中に被覆樹脂が剥離する問題はほとんど起こらないものである。
しかしながら、近年、カラー化が進むことで高画質化のためのキャリアに対する諸特性の向上と長期に亘って安定に維持できる高寿命化の要求がより高まっていることで、粒子間の衝突、粒子と現像装置内での機械的攪拌、熱的ストレスによって生じる被覆樹脂の削れ、又は剥離の抑制に対して不十分であるという課題を有している。また、前記磁性体分散型キャリアの芯材となる球状磁性複合体粒子の電気抵抗値が低いため、樹脂被覆層の剥離が生じた場合、現像時にリークが生じ、電気抵抗値の電圧依存性が大きくなるため階調性が劣る問題がある。
特に、最近ではメンテナンスフリーシステムの時代へシフトしてきているため、マシン寿命まで現像剤の耐久性が必要な場合もあり、磨耗による被覆樹脂の剥離の抑制とトナースペントを起こりにくくするための対策、更には、十分な電気抵抗をもっていて、電気抵抗の電圧依存性が低い磁性キャリアが強く要求されている。
従来、磁性キャリアの表面状態に着目し、粒子表面に凹凸を形成し、表面凹凸を制御した例がある。
例えば、樹脂分散型粒子やスプレードライ粒子の粒子表面を十点平均粗さRzとその標準偏差によって制御した技術(特許文献1)、凸部形成材を含有し樹脂被覆によって粒子表面の凹凸を形成し、十点平均粗さRz、または、凹凸の高低差と凸部の存在個数によって粒子表面を制御した技術(特許文献2、3)、焼成条件によって粒子表面を算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smによって制御した技術(特許文献4)、同じく焼成条件によって、粒子表面に縞模様の突起部分を形成し、粒子表面を算術平均粗さRaと隣接する突起部分の間の溝の深さによって制御した技術(特許文献5)、酸処理によってハニカム状の粒子表面を形成し、粒子のBET比表面積が計算式S=a×D(S:芯材粒子のBET比表面積 (m/g)、D:芯材粒子の平均粒径 (μm)、a:係数、3≦a≦22、b:係数、b=−1.05)に当てはまるように制御した技術(特許文献6)、粒子表面が板状金属酸化物粒子に起因する微小な凹凸を形成し、磁性キャリアの流動率によって制御した技術(特許文献7)などが挙げられる。
また、特許文献8には、トナーの誘電率よりも大きな誘電率の樹脂で磁性キャリア表面を被覆することが記載され、特許文献9には誘電化合物を含有する磁性キャリアが記載されている。
特開2008―83098号公報 特開2006−18129号公報 特開2002―287431号公報 特開2008―40270号公報 特開2008―250214号公報 特開2007―101731号公報 特開2003―323007号公報 特開2006−47446号公報 特開2007−102052号公報
しかしながら、上記従来の技術によって粒子表面の凹凸を制御し被覆樹脂との接着性を高くなり耐久性が向上するが、粒子間の衝突、粒子と現像装置内での機械的攪拌、熱的ストレスによって粒子表面凹凸の凸部にかかる負荷へ影響が大きい為、被覆樹脂の削れや剥離の抑制に対して十分とは言えず、上記課題に関して満足するものとは言い難い。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、被覆樹脂の剥がれや磨耗に対する耐久性に優れ、かつキャリアに対する機械的ストレスにも安定となり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持できるようになり、また階調性に優れた高画質な画像を長く維持できる電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分系現像剤を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、フェノール樹脂をバインダーとして強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とが結着してなる球状磁性複合体粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアであって、前記球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明1)。
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子の粒子表面は、最大高さRyが0.7μm〜2.5μmである本発明1記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明2)。
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子の粒子表面は、算術平均粗さRaが0.1μm〜0.9μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmである本発明1又は2記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明3)。
また、本発明は、前記電子写真現像剤用磁性キャリアの印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ωcm〜1×1016Ω・cmであって、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300が
0.1≦R300/R100≦1
である本発明1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明4)。
また、本発明は、前記球状磁性複合体粒子は、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子との総量が80〜99重量%であり、誘電体粒子の含有量は、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子との総量を基準として、1〜50重量%である本発明1〜4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明5)。
また、本発明は、前記強磁性酸化鉄粒子が強磁性酸化鉄粒子bの一種からなり、誘電体粒子cの平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbが1より大きく、かつ、強磁性酸化鉄粒子bの形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかの形状を示す本発明1〜5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明6)。
また、本発明は、前記強磁性酸化鉄粒子が、平均粒子径が異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの二種類によって構成されており、平均粒子径が大きい強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと平均粒子径が小さい強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1より大きく、誘電体粒子cの平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbが1より大きく、強磁性酸化鉄粒子aの含有量は、強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bと誘電体粒子との総量を基準として、49重量%未満であり、かつ、強磁性酸化鉄粒子bの形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかの形状を示す本発明1〜5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明7)。
また、本発明は、本発明1〜7のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの粒子表面がシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上で被覆されていることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリアである(本発明8)。
また、本発明は、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とを、フェノール類及びアルデヒド類とともに水性媒体中で反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子を生成する工程からなる本発明1〜6のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法であって、誘電体粒子の粒子形状の起因する微小な凹凸が球状磁性複合体粒子の粒子表面に形成されている電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法である(本発明9)。
また、本発明は、平均粒子径の異なる二種類の強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とを、フェノール類及びアルデヒド類とともに水性媒体中で反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子を生成する工程からなる本発明7記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法であって、平均粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子の粒子形状の起因する微小な凹凸が球状磁性複合体粒子の粒子表面に形成されている電子写真現像剤用磁性キャリアの製造方法である(本発明10)。
また、本発明は、本発明1〜6のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤である(本発明11)。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、粒子表面に微小な凹凸を形成し、制御しているので、樹脂被覆時の接着性が非常に優れ、被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性が優れており、キャリアに対する機械的ストレスに対して安定であり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘って安定に維持できる高寿命化に優れている。また、本発明においては、誘電体を含有することで、キャリアの誘電特性も単独で制御することが可能となり、帯電安定性がより向上するので、印刷した画像の画質を向上させることができる。更に、現像時の電気抵抗値を適切に保つことが可能となり、かつ電圧依存性が少ないので階調性に優れ、電子写真現像剤用磁性キャリアとして好適である。
本発明に係る二成分系現像剤は、用いる磁性キャリアが耐久性に優れ、電気抵抗を制御しているので、高画質化、高速化に対応した現像剤として好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリア(以下、「磁性キャリア」という)について述べる。
本発明に係る磁性キャリアの粒子表面は、十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmである。前記十点平均粗さRzが0.3μm未満であると、磁性キャリア表面が比較的平滑になるため樹脂被覆との接着性が低下し、十分な耐久性が得られない。また、前記十点平均粗さRzが2.0μmを超えてしまうと、磁性キャリア表面の凸部に摩擦、磨耗、機械的ストレス等による負荷がかかり易くなり、十分な耐久性が得られなくなる。好ましい十点平均粗さRzは0.3μm〜1.9μmであり、さらに好ましくは0.3μm〜1.8μmである。
本発明に係る磁性キャリアの粒子表面は、最大高さRyが0.7μm〜2.5μmの範囲であることが好ましい。前記最大高さRyが0.7μm未満であると、適度な表面凹凸が得られず樹脂被覆時に十分な接着性が得られない。また、前記最大高さRyが2.5μmを超えてしまうと、磁性キャリア表面の凸部に摩擦、磨耗、機械的ストレス等による負荷がかかり易くなり、凹凸の脱離を起こし十分な耐久性が得られなくなる。より好ましい最大高さRyは0.7μm〜2.45μmの範囲である。
本発明に係る磁性キャリアの粒子表面は、算術平均粗さRaが0.1μm〜0.9μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.6μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.6μm〜5.5μmである。算術平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smが前記範囲内にあると、より接着性が良好となるため好ましい。
本発明に係る磁性キャリアについて電気抵抗値を測定した場合、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜1×1014Ω・cmであることが好ましい。電気抵抗値R100を前記範囲とすることによって、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着をより抑制したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ潜像の乱れや画像の欠損等をより抑制することができる。
本発明に係る磁性キャリアについて電気抵抗を測定した場合、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は1×10Ω・cm〜1×1014Ω・cmが好ましい。
本発明に係る磁性キャリアは、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100と印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300と関係が
0.1≦R300/R100≦1.0
である。R300/R100が前記範囲とすることによって電気抵抗値の電圧依存性をより小さくすることができる。
本発明に係る磁性キャリアの平均粒子径は10〜100μmが好ましい。平均粒子径が10μm未満の場合には二次凝集しやすく、100μmを越える場合には機械的強度が弱く、また、鮮明な画像を得ることができなくなる。より好ましい平均粒子径は20〜70μmである。
本発明に係る磁性キャリアの比重は2.5〜4.5が好ましく、より好ましくは2.5〜4.2である。
本発明に係る磁性キャリアの飽和磁化値は20〜100Am/kgが好ましく、より好ましくは40〜85Am/kgである。
本発明に係る磁性キャリアの比誘電率は10以上が好ましく、より好ましくは12〜100であり、更により好ましくは13〜60である。
本発明に係る磁性キャリアは、下記式で表される球形度が1.0〜1.4であることが好ましい。
球形度=l/w
l:球状磁性複合体粒子の平均長軸径
w:球状磁性複合体粒子の平均短軸径
本発明に係る球状磁性複合体粒子の粒子表面に樹脂被覆してなる磁性キャリアの電気抵抗値は、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜1×1016Ω・cmが好ましい。印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×1016Ω・cmを超える場合は、キャリア電荷がリークしにくくなり、さらにトナーの帯電量も高くなり、その結果、エッジの効いた画像にはなるが、反面、大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるという問題が生じ好ましくない。印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ω・cm〜5.0×1015Ω・cmがより好ましい。
本発明に係る球状磁性複合体粒子の粒子表面に樹脂被覆してなる磁性キャリアについて電気抵抗を測定した場合、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は1×10Ω・cm〜1×1016Ω・cmが好ましい。
本発明に係る球状磁性複合体粒子の粒子表面に樹脂被覆してなる磁性キャリアは、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100と印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300との関係(R300/R100)が0.1〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.90であり、更により好ましくは0.10〜0.80である。
次に、本発明に係る磁性キャリアの製造法について述べる。
即ち、磁性キャリアを構成する球状磁性複合体粒子は、水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下、強磁性酸化鉄粒子粉末と誘電体粒子とを共存させてフェノール類とアルデヒド類とを反応させて、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子と硬化したフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子を得ることができる。
まず、本発明で用いる強磁性酸化鉄粒子について述べる。
本発明における強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raは、0.25μm〜2.0μmが好ましい。平均粒子径raが0.25μm未満の場合は、磁性キャリア表面に十分な凹凸が得られなくなる。また、平均粒子径raが2.0μmを超える場合には、表面凹凸の凸部にかかる負荷が大きくなり、強磁性酸化鉄粒子aが脱離して凹凸の脱離、または、被覆樹脂に対する十分な耐久性が得られなくなる。
本発明における強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbは、0.05μm〜0.25μmが好ましい。平均粒子径rbが0.05μm未満の場合は、磁性酸化鉄粒子bの凝集力が大きくなり、磁性キャリアの作製が困難なものとなる。また、平均粒子径rbが0.25μmを超える場合には、強磁性酸化鉄粒子aとの粒径差がなくなり、強磁性酸化鉄粒子aによる表層部の形成が困難なものとなる。
本発明における強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bとしては、マグネタイト粒子、マグヘマタイト粒子等の強磁性酸化鉄粒子である。また、強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bの粒子形状は、球状、六面体、八面体、多面体、不定形から選ばれるいずれかであり、その組み合わせは、同じ形状同士でも、または形状が異なったものを組み合わせても構わない。
本発明においては、比誘電率50以上の誘電体粒子を含有するものである。より好ましくは誘電体粒子の比誘電率が70以上、更に好ましくは80以上である。
誘電体粒子としては、酸化チタン、チタン酸塩及びジルコン酸塩が挙げられる。更に具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛などが挙げられる。これらは2種以上組合せてもよい。
誘電体粒子の平均粒子径rcは、好ましくは0.25〜5.0μm、更に好ましくは0.25〜4.5μmである。平均粒子径rcが0.25μm未満の場合は磁性キャリア表面に十分な凹凸が得られなくなる。また、平均粒子径rcが5.0μmを超える場合は表面凹凸の凸部にかかる負荷が大きくなり、強磁性酸化鉄粒子が脱離して凹凸の脱離、または、被覆樹脂に対する十分な耐久性が得られなくなる。
誘電体粒子と組合せて使用する強磁性酸化鉄粒子としては、強磁性酸化鉄粒子bの一種からなり、誘電体粒子の平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbが1より大きい態様(態様1)と、前記強磁性酸化鉄粒子が、平均粒子径が異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bの二種類によって構成されており、強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1より大きく、誘電体粒子の平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbが1より大きい態様(態様2)とがある。
強磁性酸化鉄粒子bの一種からなる場合(態様1)は、誘電体粒子の平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbが1.0より大きく、好ましくは1.1〜5.0であり、更に好ましくは1.2〜4.0である。強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径が誘電体粒子の平均粒子径rcより大きい場合には、誘電体粒子による表層部が形成されず、十分な凹凸が得られないため、樹脂被覆した場合に十分な接着性が得られない。
強磁性酸化鉄粒子が、平均粒子径が異なる強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bとの二種によって構成されている場合は(態様2)、強磁性酸化鉄粒子aの平均粒子径raと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比ra/rbが1.0より大きく、好ましくは1.1〜5.0であり、更に好ましくは1.2〜4.0である。誘電体粒子の平均粒子径rcと強磁性酸化鉄粒子bの平均粒子径rbとの比rc/rbは1より大きく、好ましくは1.1〜5.0であり、更に好ましくは1.2〜4.0である。raとrbとが同じ場合は強磁性酸化鉄粒子bの一種からなる場合と同じになる。rbはra及びrcに対して小さい必要がある。ra及びrcは同程度の平均粒子径であっても、異なる平均粒子径であっても良い。これにより、誘電体粒子と強磁性酸化鉄粒子aの混合した表層部が形成され、平均粒子径の小さい強磁性酸化鉄粒子bが芯部を構成し、表層部に十分な凹凸が得られる。
球状磁性複合体粒子中の誘電体粒子と強磁性酸化鉄粒子との総含有量は好ましくは80〜99重量%、更に好ましくは85〜98重量%である。誘電体粒子と強磁性酸化鉄粒子との総含有量が80重量%未満の場合、樹脂分が多くなり、大粒子が出来やすくなる。誘電体粒子と強磁性酸化鉄粒子との総含有量が99重量%を超える場合、樹脂分が不足して十分な強度が得られない。
誘電体粒子の含有量は、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子との総量を基準として、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは10〜45重量%である。誘電体粒子の含有量が1重量%未満の場合、芯部を形成する強磁性酸化鉄粒子bが粒子表面に現れやすくなるため、誘電体粒子からなる表層部が形成されなくなり、十分な表面凹凸が得られなくなる。誘電体粒子の含有量が50重量%を超える場合、表層部を形成する強磁性酸化鉄粒子aがすべて取り込まれにくくなり微粉、または粗大粒子となって収率低下の原因となるため、粒子表面に微小な凹凸が十分に形成されなくなる。
強磁性酸化鉄粒子aの含有量は、強磁性酸化鉄粒子aと強磁性酸化鉄粒子bと該誘電体粒子との総量を基準として、好ましくは49重量%未満、更に好ましくは10〜45重量%である。強磁性酸化鉄粒子aの含有量が49重量部を越える場合は、強磁性酸化鉄粒子粉末aがすべて取り込まれにくくなり微粉、または異形粒子となって収率低下の原因となるため粒子表面に微小な凹凸が十分に形成されなくなる。
本発明における強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bは、粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子を用いてもよい。上記化合物が被覆されたものを使用する場合、強磁性酸化鉄粒子の粒子表面に存在する被覆元素の量は強磁性酸化鉄粒子全体量に対して0.35〜4.0重量%が好ましく、より好ましくは、0.4〜3.5重量%である。粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子を用いることによって電気抵抗値の高い磁性キャリアを容易に得ることができる。
前記粒子表面がAl、Mg、Mn、Zn、Ni、Cu、Ti、Siから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆された強磁性酸化鉄粒子は以下の製造方法によって得ることができる。
粒子表面が被覆された強磁性酸化鉄粒子は、常法に従って、マグネタイトの核粒子を製造し、次いで、前記核粒子を含有するスラリーを70〜95℃の温度範囲に保持し、スラリーのpHを制御して被覆元素塩を核粒子に対して0.015重量%/分以下の割合で添加した後、30分以上熟成し、次いで、pH調整した後、常法に従って、水洗、乾燥することによって、得ることができる。
本発明における粒子表面が被覆された強磁性酸化鉄粒子を得るための核粒子には、要求される磁気特性・分散性などの観点から様々な形状・粒子径のものが選択可能であり、その製造方法も多様に存在するが、本発明の目的をより効果的に達成するためには、表面処理をより均一に行う観点から、核粒子スラリー中には、表面処理の阻害因子となりやすい物質、例えば、未反応の水酸化鉄微粒子等の混入がないことが好ましい。
核粒子を含むスラリーを得るための手段には様々な方法が挙げられるが、例えば、Fe2+水溶液の酸化反応中のpHを所定の値に制御することで、八面体・多面体・六面体・球状・凹凸形状のものを得ることができる。また、酸化反応中の粒子の成長条件を制御することで所望の粒子径の核粒子を得ることができる。また、核粒子の表面平滑性は、酸化反応終盤での成長条件を制御したり、一般に知られているようにシリカ成分やアルミ成分やカルシウム成分などの成分や亜鉛・マンガンなどのスピネルフェライト結晶構造を形成しやすい成分を添加することでも制御できる。
Fe2+水溶液としては、例えば、硫酸第一鉄や塩化第一鉄などの一般的な鉄化合物を用いることができる。また、水酸化鉄を得るためもしくはpH調整剤としてのアルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液を用いることができる。各々の原料は、経済性や反応効率などを考慮して選択すればよい。
Al表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0が好ましく、より好ましいpHは8.2〜8.8である。スラリーのpHが8.0未満の場合には、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いものとなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。スラリーのpHが9.0を超える場合にも、Al成分が核粒子表面に被覆されずAl化合物単独で析出し、電気抵抗値の低いもととなり、また、BET比表面積値が高くなり吸湿性が高くなり好ましくない。Mg表面処理時のスラリーのpHは9.5〜10.5、Mn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Zn表面処理時のスラリーのpHは8.0〜9.0、Ni表面処理時のpHは7.5〜8.5、Cu表面処理時のpHは6.5〜7.5、Ti表面処理時のpHは8.0〜9.0、Si表面処理時のpHは6.5〜7.5が好ましい。上記pHの範囲外の場合は電気抵抗値の低いものとなり、また吸湿性が高くなり好ましくない。
被覆成分を表面処理するスラリーの温度範囲は70〜95℃が好ましい。スラリーの温度が70℃未満の場合には、BET比表面積値の高いものとなり、強磁性酸化鉄粒子自体の吸湿性の観点からも好ましくない。条件値は特に限定はないが、水系のスラリーであるため、生産性やコストを考慮すると95℃程度が上限となる。
核粒子を含有するスラリーへの被覆化合物の添加速度は、核粒子に対して被覆元素0.015重量%/分以下で添加することが好ましい。より好ましくは核粒子に対して被覆元素0.01重量%/分以下で添加することが好ましい。被覆元素を0.015重量%/分より大きな添加速度とすると、被覆化合物が核粒子表面に被覆されず単独で析出し、強磁性酸化鉄粒子自体の電気抵抗値の低いものとなり、またBET比表面積値の大きなものとなり強磁性酸化鉄粒子自体の吸湿性の高いものとなる。下限は特に限定はないが生産性を考慮すると0.002重量%/分が下限となる。
被覆化合物添加後には30分以上熟成を行うことが被覆化合物を核粒子表面に均一に処理するため好ましい。上限は特に限定はないが生産性を考慮すると240分程度が上限となる。また、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
熟成後は、スラリーのpHを4.0〜10.0の範囲に制御することが好ましい。より好ましいスラリーのpHは6.0〜8.0の範囲である。pHが4.0未満の場合被覆化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。pHが10.0を超える場合にも被覆化合物層を核粒子表面に均一に形成することが困難である。制御に際しては、スラリーはよく攪拌されていることが好ましい。
反応後は、常法に従って、水洗、乾燥を行えばよい。
本発明に用いる強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子は、あらかじめ粒子表面を親油化処理しておくことが望ましい。親油化処理することによって、より容易に球形を呈した磁性キャリアを得ることが可能となる。
親油化処理は、強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤で処理する方法や界面活性剤を含む水性溶媒中に強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子を分散させて、粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法が好適である。
シランカップリング剤としては、疎水性基、アミノ基、エポキシ基を有するものが挙げられ、疎水性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシ)シラン等がある。アミノ基、エポキシ基を有するシランカップリング剤としては前記アミノ基を有するシランカップリング剤、前記エポキシ基を有するシランカップリング剤を用いればよい。
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等を用いればよい。
界面活性剤としては、市販の界面活性剤を使用することができ、強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子や該粒子表面に有する水酸基と結合が可能な官能基を有するものが望ましく、イオン性はカチオン性又はアニオン性のものが好ましい。
前記いずれの処理方法によっても本発明の目的を達成することができるが、フェノール樹脂との接着性を考慮するとアミノ基あるいはエポキシ基を有するシランカップリング剤による処理が好ましい。
前記カップリング剤又は界面活性剤の処理量は強磁性酸化鉄粒子、誘電体粒子に対してそれぞれ0.1〜10重量%が好ましい。
前記強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子は、予め混合してから前記親油化処理を行っても、別々に処理を行っても構わないが、反応の際には強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bが十分に混合された状態で使用することを必須とする(以下、強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bが十分に混合された状態を「ブレンド粉末」という)。
本発明に係るブレンド粉末とフェノール樹脂とからなる球状磁性複合体粒子の製造方法は以下のとおりである。
本発明に用いるフェノール類としては、フェノールのほか、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール等のアルキルフェノール類や、アルキル基の一部又は全部が塩素原子、臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類等のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
本発明に用いるアルデヒド類としては、ホルマリン又はパラアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド及びグルタールアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒドが最も好ましい。
アルデヒド類はフェノール類に対してモル比で1.0〜4.0が好ましく、アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が1.0未満の場合には、粒子の生成が困難であったり、樹脂の硬化が進行し難いために、得られる粒子の強度が弱くなる傾向がある。4.0を超える場合には、反応後に水性媒体中に残留する未反応のアルデヒド類が増加する傾向がある。より好ましくは1.2〜3.0である。
本発明に用いる塩基性触媒としては、通常のレゾール樹脂の製造に使用されている塩基性触媒が使用できる。例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキルアミンが挙げられ、特にアンモニア水が好ましい。塩基性触媒はフェノール類に対してモル比で0.05〜1.50が好ましい。0.05未満の場合には、硬化が十分に進行せず造粒が困難となる。1.50を越える場合には、フェノール樹脂の構造に影響するため造粒性が悪くなり、粒子径の大きな粒子を得ることが困難となる。
本発明における反応は水性媒体中で行われるが、水性媒体中の固形分濃度が30〜95重量%になるようにすることが好ましく、特に、60〜90重量%となるようにすることが好ましい。
塩基性触媒を添加した反応溶液は60〜95℃の温度範囲まで昇温し、この温度で30〜300分間、好ましくは60〜240分間反応させ、フェノール樹脂の重縮合反応を行って硬化させる。
このとき、球形度の高い球状磁性複合体粒子を得るために、ゆるやかに昇温させることが望ましい。昇温速度は0.3〜1.5℃/minが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2℃/minである。
このとき、粒径を制御するために、攪拌速度を制御することが望ましい。攪拌速度は100〜1000rpmが好ましい。
硬化させた後、反応物を40℃以下に冷却すると、バインダー樹脂中にブレンド粉末が分散し、その構造は、強磁性酸化鉄粒子a及び/又は誘電体粒子によって表層部が形成された球状磁性複合体粒子の水分散液が得られる。
前記球状磁性複合体粒子を含む水分散液を濾過、遠心分離の常法に従って固・液を分離した後、洗浄・乾燥して球状磁性複合体粒子を得る。
本発明に係る磁性キャリアは、球状磁性複合体粒子の粒子表面を樹脂によって被覆されていても良い。
本発明に用いる被覆樹脂は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン;アクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン系樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素−ポリアミド樹脂、フッ素−ポリイミド樹脂、フッ素−ポリアミドイミド樹脂、などを挙げることができる。
本発明に係る磁性キャリアは、球状磁性複合体粒子の粒子表面をシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂で被覆することが好ましい。粒子表面を低い表面エネルギーを有するシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂で被覆することによって、トナーのスペント化を抑制することができる。また、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂ともに、コア粒子との接着性及び帯電性向上の効果を有する。
シリコーン系樹脂としては縮合反応型シリコーン樹脂が好ましく、フッ素系樹脂としてはポリフッ素化アクリレート樹脂、ポリフッ素化メタクリレート樹脂、ポリフッ素化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂及び前記樹脂の組み合わせによる共重合体が好ましい。
アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、メチルエタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のアルキルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキルアクリレート、フェニルメタクリレート等の芳香族アクリレート、これらとアクリル酸の共重合体、グリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物との共重合体、グリセリンモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系化合物との共重合体等が挙げられ、キャリアとしたときの環境依存性等の点からメチルメタクリレート、エチルエタクリレート等の短鎖アルキルアクリレートが好ましい。
スチレン−アクリル系樹脂としては、前記アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられ、高温高湿環境下と低温低湿環境下での帯電の差が小さい等の点からスチレンと短鎖アルキルメタクリレートとの共重合体が好ましい。
本発明に係る磁性キャリアの樹脂による被覆量は、球状磁性複合体粒子に対して0.1〜5.0重量%が好ましい。被覆量が0.1重量%未満の場合には、十分に被覆することが困難となり、コートむらが生じることがある。また、5.0重量%を越える場合には、樹脂の被覆を球状磁性複合体粒子表面に密着させることはできるが、生成した球状磁性複合体粒子同士の凝集が生じ、球状磁性複合体粒子の粒子サイズの制御が困難になる。好ましくは0.5〜3.0重量%である。
本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に微粒子を含有させても良い。前記微粒子としては、例えばトナーに負帯電性を付与させるものとして、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ニグロシン系染料、ポリアミン樹脂などによる微粒子が好ましい。一方、トナーに正帯電性を付与させるものとして、Cr、Co等金属を含む染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物などによる微粒子が好ましい。なお、これらの粒子は1種単独で使用して良いし、2種以上を併用しても良い。
また、本発明における樹脂被覆は、樹脂被覆層中に導電性微粒子を含有させても良い。樹脂中に導電性微粒子を含有させることが、磁性キャリアの抵抗を容易に制御することができる点で好ましい。前記導電性微粒子としては公知のものが使用可能であり、例えばアセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、Si、Ti等の金属炭化物、B、Ti等の金属窒化物、Mo、Cr等の金属ホウ化物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してよいし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
球状磁性複合体粒子の粒子表面に樹脂を被覆する場合には、公知のいかなる方法を用いても良い。例えば、乾式法、流動床法、スプレードライ法、ロータリードライ方式、万能攪拌機、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等による浸漬乾燥法等によって行えばよい。
次に、本発明における二成分系現像剤について述べる。
本発明の磁性キャリアと組み合わせて使用するトナーとしては、公知のトナーを使用することができる。具体的には、結着樹脂、着色剤を主構成物とし、必要に応じて離型剤、磁性体、流動化剤などを添加したものを使用できる。また、トナーの製造方法は公知の方法を使用できる。
<作用>
本発明において重要な点は、強磁性酸化鉄粒子粉末と誘電体粒子とをフェノール樹脂に分散してなる球状磁性複合体粒子であって、粒子径の大きな強磁性酸化鉄粒子粉末a及び/又は誘電体粒子により表層部が形成されることで粒子表面に微小な凹凸を形成、制御(表面粗さ、凹凸間隔、凹凸高さ、凹凸形状)することで、十分な電気抵抗、かつ電気抵抗値の電圧依存性の少ない電子写真用磁性キャリアを作製することである。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアの製造法は、平均粒子径の異なる誘電体粒子と強磁性酸化鉄粒子との混合粉末を使用し、所定の重量比で強磁性酸化鉄粒子及び誘電体粒子を含有した構成となっているので、フェノール樹脂をバインダーとして複合化した際に、強磁性酸化鉄粒子a及び/又は誘電体粒子からなる表層部を形成した球状磁性複合体粒子が安定に得られ、その表層部は用いた強磁性酸化鉄粒子a及び/又は誘電体粒子の粒子径と形状に沿って微小な凹凸を形成する。
その結果、樹脂被覆時の接着性が大幅に向上し、被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性に優れ、かつキャリアに対する機械的ストレスにも安定となり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘ってカブリ、濃度ムラがなく安定に維持できるようになった。更に、電気抵抗制御によって階調性の優れた画像を得ることができた。
さらに、本発明においては誘電体粒子を含有することで、磁性キャリアの誘電特性も単独で制御することが可能となり、帯電安定性がより向上するので、湿度など環境変動にかかわらずトナーの帯電量を安定化することができ、安定した印刷濃度を有するとともに、印刷した画像の画質を向上させることができ、しかも、長期にわたり安定した現像性を得ることが可能となる。
以下、本発明の代表的な実施の形態を次の通りに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の説明において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」及び「重量%」を意味する。
<測定方法>
強磁性酸化鉄粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真により撮影した写真、粒子300個についてフェレ径により求めた値で示した。
強磁性酸化鉄粒子粉末、又は、球状磁性複合体粒子の粒子形状は、透過型電子顕微鏡と「走査型電子顕微鏡S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した写真から判断した。
BET比表面積値は、「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス株式会社製)を用いてBET法により求めた値で示した。
飽和磁化は、振動試料型磁力計VSM−3S−15(東英工業(株)製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)のもとで測定した値で示した。
強磁性酸化鉄粒子粉末中に含まれる金属元素量は「蛍光X線分析装置RIX−2100」(理学電気工業株式会社製)にて測定し、強磁性酸化鉄粒子粉末に対して元素換算で求めた値で示した。
球状磁性複合体粒子の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計 LA750((株)堀場製作所製)により計測して体積基準による値で示した。
球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRz、最大高さRy、算術平均粗さRa及び凹凸の平均間隔Smは、JIS B0601に準拠して超深度カラー3D形状測定レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス製)を用いて、球状磁性複合体粒子1粒子に対して1000倍の視野にて観察を行った。形状測定は、球状磁性複合体粒子の中心部を中心点として測定距離を10μmに設定して、45°間隔をとりながら8箇所測定したものを平均値で示し、更に任意に選んだ100個のキャリア表面の測定平均値を平均化して値で示した。尚、形状測定をする際、測定誤差を軽減させるための補正処理を行ってから測定を行っている。
真比重はマルチボリウム密度計1305型(マイクロメリティクス/島津製作所製)で測定した値で示した。
球状磁性複合体粒子の電気抵抗値(体積固有抵抗値)は、ハイレジスタンスメーター4339B(横河ヒューレットパッカード製)により試料1.0gで測定した値で示した。
球形度は、「走査型電子顕微鏡S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察した200個以上の球状磁性複合体粒子が写ったSEM写真より、1個の粒子の長軸径(l)と短軸径(w)を測定し、l/w比で示した。
比誘電率は、あらかじめ成形体を作製した後、評価した。誘電率測定用の成形体は、測定用試料3gと2%PVA水溶液1mlとを混合し、外径7mm、内径3mm、厚み2mmの成形体とした後60℃、6時間乾燥を行い、誘電率測定用成形体(同軸管試験用リングコア)を作製した。
〔誘電率の測定〕
作製した成形体について、アジレント社製ネットワークアナライザーN5230を用いて、同軸管Sパラメータ法により周波数100MHzにおける誘電率を測定した。
球状磁性複合体粒子に対するメラミンの含有量は、微量全窒素分析装置TN−110(ダイアインスツルメンツ(株)社製)で得られた窒素量から換算して算出した。
トナーの帯電量は、磁性キャリア95部と下記の方法により製造したトナー5部を十分に混合し、ブローオフ帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。
(トナー製造例)
ポリエステル樹脂 100部
銅フタロシアニン系着色剤 5部
帯電制御剤(ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛化合物) 3部
ワックス 9部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸押出式混練機により溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粉砕、分級して重量平均粒径7.4μmの負帯電性青色粉体を得た。
上記負帯電性青色粉体100部と疎水性シリカ1部をヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーaを得た。
<球状磁性複合体粒子、被覆樹脂キャリアの強制劣化テスト>
球状磁性複合体粒子、又は、樹脂被覆した磁性キャリア50部を100ccのガラス製サンプル瓶の中に入れ、ふたをした後、ペイントコンディショナー(RED DEVIL社製)にて、24時間振とうさせる。振とう前後の各々のサンプルについて帯電量及び電気抵抗値を測定し、走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立製作所製)により粒子表面の剥れや磨耗等を確認した。
強制劣化テスト前後の帯電量は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃,60%RH)の帯電量の変化幅を%で表わし、以下の評価基準で行なった。C以上が実用上可能なレベルである。現像剤は本発明の複合体粒子、又は、樹脂被覆した磁性キャリアを95部と負帯電性シアントナーaを5部とを十分に混合して調製した。
帯電量の変化率(%)=(1−Q/QINI)×100
INI:強制劣化テスト前の帯電量
Q:強制劣化テスト後の帯電量
A:強制劣化テスト前後の変化率が0%以上5%未満
B:強制劣化テスト前後の変化率が5%以上10%未満
C:強制劣化テスト前後の変化率が10%以上20%未満
D:強制劣化テスト前後の変化率が20%以上30%未満
E:強制劣化テスト前後の変化率が30%以上
電気抵抗値は、下記式で示したように、振とう前後の各々のサンプルについて常温常湿下(24℃,60%RH)の電気抵抗値の変化率を%で表わし、以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
電気抵抗値の変化率(%)=R/RINI×100
R:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト後の電気抵抗値
INI:印加電圧100Vにおける強制劣化テスト前の電気抵抗値
A:強制劣化テスト前後の変化幅が0%以上5%未満
B:強制劣化テスト前後の変化幅が5%以上10%未満
C:強制劣化テスト前後の変化幅が10%以上20%未満
D:強制劣化テスト前後の変化幅が20%以上30%未満
E:強制劣化テスト前後の変化幅が30%以上
樹脂被覆層の剥れや磨耗等は走査型電子顕微鏡により下記の3段階で評価した。B以上が実用上可能なレベルである。
A:被覆層の剥れや磨耗等が無し
B:被覆層の剥れや磨耗等がわずかに有り
C:被覆層の剥れや磨耗等が極めてひどい
<被覆樹脂キャリアの耐久性テスト>
被覆樹脂キャリアの耐久テストは、サンプルミルSK−M10(協立理工(株)社製)により被覆樹脂キャリア試料10gを投入し、回転数16000rpmで30秒間攪拌した。
耐久性評価は、下記式で示したように攪拌前後の粒度分布変化を測定し、粒子径22μm以下の粒子の体積率の増加量から微粒子発生率を算出し、以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
微粒子発生率(%)=(攪拌後の粒子径22μm以下の体積率)−(攪拌前の粒子径22μm以下の体積率)
A:耐久性テスト前後の微粉発生率が0%以上0.1%未満
B:耐久性テスト前後の微粉発生率が0.1%以上0.5%未満
C:耐久性テスト前後の微粉発生率が0.5%以上1.0%未満
D:耐久性テスト前後の微粉発生率が1.0%以上3.0%未満
E:耐久性テスト前後の微粉発生率が3.0%以上
樹脂被覆層の剥れや磨耗等は走査型電子顕微鏡により下記の3段階で評価した。B以上が実用上可能なレベルである。
A:被覆層の剥れや磨耗等が無し
B:被覆層の剥れや磨耗等がわずかに有り
C:被覆層の剥れや磨耗等が極めてひどい
<画像評価における被覆樹脂キャリアの評価>
現像剤は本発明の磁性キャリアを95部と負帯電性シアントナーaを5部とを十分に混合して調整した。画像評価はエプソン製LP8000Cを改造して用い、24℃、60%RHの環境条件下及び30℃、80%RHの環境条件化でバイアス電圧を変えて100万枚の耐刷評価を行い、以下の評価方法に基づいて評価した。
なお、画像評価結果に対してランク付けを行なった。具体的な評価方法は下記のとおりである。
(1)画像濃度(ベタ黒部の均一性も含む)
前記耐刷評価に基づいて1000枚目(初期)と10万枚目の画像と100万枚目の画像について、ベタ部の画像濃度をマクベス濃度計により測定した。ベタ黒部の均一性については限度見本を設け、目視で判定し、以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
A:原稿濃度を非常によく再現しており、濃度ムラがなく均一なベタ黒部である。
B:原稿濃度を再現しており、濃度ムラがない。
C:画像濃度がよく乗っている。
D:画像濃度は乗っているものの不均一な画像であり、白スジ等が多い。
E:全体的に濃度が低くエッジ効果が大きく、原稿濃度に比べ、大きく濃度が低下している。
(2)カブリ
前記耐刷評価に基づいて1000枚目(初期)と10万枚目の画像と100万枚目の画像について、画像上のカブリは白地画像上のトナーカブリをミノルタ社製色彩色差計CR−300のL*a*b*モードで測定し、ΔEを求め、以下の4段階で評価した。B以上が実用上可能なレベルである。
A:ΔEが1.0未満
B:ΔEが1.0以上〜2.0未満
C:ΔEが2.0以上〜3.0未満
D:ΔEが3.0以上
(3)階調性
前記耐刷評価に基づいて1000枚目(初期)と10万枚目の画像と100万枚目の画像について、KODAK社のグレースケール(0〜19階調テストチャート)を用い、目視で階調パターンを色別できる数により以下の5段階で評価した。C以上が実用上可能なレベルである。
A:15(B)階調以上
B:13〜14階調
C:11〜12階調
D:7(M)〜10階調
E:6階調以下
<強磁性酸化鉄粒子>
強磁性酸化鉄粒子a及び強磁性酸化鉄粒子bとして使用する強磁性酸化鉄粒子の諸特性を表1に示す。
Figure 0006020861
(親油化処理1)
フラスコに0.23μmのマグネタイト(酸化鉄粒子1)を1000部仕込み、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)10.0部を添加し攪拌した後、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆されている強磁性酸化鉄粒子bを得た。
(親油化処理2)
フラスコに1.0μmのTiO(比誘電率:100)を1000部仕込み、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)5.0部を添加し攪拌した後、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆された誘電体粒子cを得た。
(親油化処理3)
フラスコに0.35μmのマグネタイト(酸化鉄粒子4)を100部仕込み、0.23μmのマグネタイト(酸化鉄粒子10)を600部、CaTiOを300部仕込み、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(商品名:KBM−403 信越化学社製)10.0部を添加し攪拌した後、約100℃まで昇温し30分間良く混合攪拌することによりカップリング剤で被覆された混合粉末を得た。
実施例1:
<親油化処理後の混合>
フラスコに、親油化処理2を行った誘電体粒子c 30部と親油化処理1を行った強磁性酸化鉄粒子b 70部とを仕込み(rc/rb=4.3)、250rpmの攪拌速度で30分間混合し、混合粉末を得た。
<球状磁性複合体粒子の製造>
フェノール 12部
37%ホルマリン 18部
高誘電体粒子c及び強磁性酸化鉄粒子bの混合粉末 100部
25%アンモニア水 4.2部
水 15部
上記材料を1Lの四つ口フラスコに入れ、250rpmの攪拌速度で攪拌しながら60分間で85℃に昇温させた後、同温度で120分間反応・硬化させることにより、強磁性酸化鉄粒子bと高誘電体粒子cと硬化したフェノール樹脂からなる球状磁性複合体粒子の生成を行った。
次に、フラスコ内の内容物を30℃まで冷却後、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に150〜200℃で乾燥して球状磁性複合体粒子を得た。
得られた球状磁性複合体粒子は、平均粒子径が35μmであり、比誘電率εが20であり、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が9.5×1012Ω・cmであり、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は、7.5×1012Ω・cmであり、十点平均粗さRzが0.60μmであり、最大高さRyが1.20μmであり、算術平均粗さRaが0.22μmであり、凹凸の平均間隔Smが1.20μmであり、比重が3.43g/cmであり、飽和磁化値が61.5Am/kgであり、球形度(l/w)が1.1であった。
ここに得られた球状磁性複合体粒子像と粒子表面像についてSEM観察したところ球状磁性複合体粒子は真球に近い球形を呈しており、粒子表面は高誘電体粒子cに起因する凸部が形成されており、粒子表面に凹凸が形成されていることが確認された。
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。
実施例2、3、比較例2:
強磁性酸化鉄粒子a、強磁性酸化鉄粒子b及び誘電体粒子cの種類及び混合比、親油化処理剤の種類、球状磁性複合体粒子の製造条件を種々変化させた以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性を表3に示す。なお、BaTiO3の比誘電率は1200であった。
比較例1:
親油化処理した強磁性酸化鉄粒子a及び誘電体粒子cを全く混合しないで球状磁性複合体粒子の製造に使用する以外は、実施例1と同一の条件で操作を行って球状磁性複合体粒子を得た。
得られた球状磁性複合体粒子の製造条件を表2に、諸特性及び強制劣化テストの結果を表3に示す。
Figure 0006020861
Figure 0006020861
<樹脂被覆キャリアの製造>
実施例5:
窒素気流下、ヘンシェルミキサー内に、実施例1の球状磁性複合体粒子粉末を1000部及び、シリコーン系樹脂(商品名:KR251 信越化学社製)を固形分として10部及びカーボンブラック(商品名:トーカブラック♯4400 東海カーボン社製)を150部添加し、50〜150℃の温度で1時間攪拌してカーボンブラックを含有したシリコーン系樹脂からなる樹脂被覆層の形成を行った。
ここに得られた樹脂被覆磁性キャリアは、平均粒径が37μmであり、比重が3.26g/cmであり、飽和磁化値が60.9Am/kgであり、印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100は9.8×1014Ω・cmであり、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300は8.8×1014Ω・cmであった。
得られた樹脂被覆キャリア粒子1のシリコーン系樹脂による被覆は、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製(S−4800))で観察したところ、均一かつ十分なものであった。
実施例6〜8及び比較例3、4:
球状複合体粒子の種類、被覆樹脂の種類、樹脂被覆量を種々変化させた以外は、実施例5と同一の条件で操作を行って樹脂被覆磁性キャリアを得た。
得られた樹脂被覆磁性キャリアの製造条件、及びその諸特性を表4に、耐久性評価、強制劣化テスト評価、及び耐刷評価結果を表5に示す。
Figure 0006020861
Figure 0006020861
表5に示すとおり、本発明に係る磁性キャリア及び現像剤は、耐久テストにおいて樹脂剥がれや磨耗を起こすことなく被覆樹脂との接着性に優れ、更に電気抵抗値の電圧依存性を小さく、かつ、適度な電気抵抗値を持たせている為、画質に優れ、高濃度でかつ均一なベタ黒部の再現が得られた。また、被覆処理を施した強磁性酸化鉄粒子粉末を使用することで、磁性キャリアの電気抵抗の制御、且つ、電圧依存性が小さいことが長期に亘り維持できるものとなり、100万枚の印刷でも階調性に優れた画像特性が得られる磁性キャリアであることが確認された。
本発明に係る電子写真現像剤用磁性キャリアは、電気抵抗値の電圧依存性を小さく、かつ、適度な電気抵抗値を持たせ、更に粒子表面に微小な凹凸を形成し、粒子表面の凹凸を制御することで、樹脂被覆時の接着性が非常に優れ、被覆層の剥がれや磨耗に対する耐久性が優れていて、キャリアに対する機械的ストレスに対して安定であり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく長期に亘って安定に維持できる高寿命化に優れているため、近年求められている課題を満足しており、更に、現像時の電気抵抗値を適切に保つことが可能となり、かつ電圧依存性が少ないので階調性に優れているため電子写真現像剤に用いられる電子写真現像剤用磁性キャリア及び該電子写真現像剤用磁性キャリアとトナーとを有する二成分系現像剤として好適である。

Claims (6)

  1. フェノール樹脂をバインダーとして強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子とが結着してなる球状磁性複合体粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアであって、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子との総量が80〜99重量%であり、誘電体粒子の含有量は、強磁性酸化鉄粒子と誘電体粒子との総量を基準として、1〜50重量%であり、前記誘電体粒子の平均粒子径が0.25〜5.0μmであり、前記球状磁性複合体粒子表面の十点平均粗さRzが0.3μm〜2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
  2. 前記球状磁性複合体粒子の粒子表面は、最大高さRyが0.7μm〜2.5μmである請求項1記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
  3. 前記球状磁性複合体粒子の粒子表面は、算術平均粗さRaが0.1μm〜0.9μmであり、凹凸の平均間隔Smが0.6μm〜6.0μmである請求項1又は2に記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
  4. 前記電子写真現像剤用磁性キャリアの印加電圧100Vのときの電気抵抗値R100が1×10Ωcm〜1×1016Ω・cmであって、印加電圧300Vのときの電気抵抗値R300が
    0.1≦R300/R100≦1
    である請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリア。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアの粒子表面がシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂から選ばれる1種又は2種以上で被覆されていることを特徴とする電子写真現像剤用磁性キャリア。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリアを用いた二成分系現像剤。

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