JP6020018B2 - ハブユニット軸受およびハブユニット軸受の輸送方法 - Google Patents
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Description
上記のようなハブユニット軸受は、例えば特許文献1に示すように、前記環状空間を密封する密封装置を備えている。この密封装置は、内輪に固定されるスリンガと、外輪に固定されるシール芯金と、スリンガとシール芯金との間に設けられるとともに、シール芯金に固定され、スリンガに摺接するゴム材からなるシールリップとを備えている。
スリンガは、内輪に固定される円筒状の固定部と、この固定部の端部に形成された円板部とを備えた断面L字形に形成されている。
最も軸受の内部側のリップのみ、軸受の内部向きのグリースリップ12bとなっており、他のメインリップ12eとサイドリップ12fは軸受の外部向きにダストリップとなっている。また、それぞれのリップには、通常、軸受に封入されるグリースと同様のグリースGが塗布され、潤滑されている。
前記グリースリップ12bは、シールの回転トルクを抑える目的で締め代は小さく設定され、スリンガ10の固定部10aの摺動面とグリースリップ12bの稜部で軽接触(線接触)しているが、新品時のリップの稜部は成形時に不可避に発生するヒケ(不均一な成形収縮)やバリ、カケ(アンダーフィル)などの影響で微視的には部分的に隙間が開いた状態となっている。
なお、図5において、符号11はシール芯金を示している。
前記ウレア系グリースは、増ちょう剤と基油と添加剤とから構成されている。
増ちょう剤は、耐フレッチング性を良くする目的で、極性を持つため軌道面に吸着し易く、また、増ちょう剤どうしが吸着し合って網目構造を形成し易い芳香族系のウレア系増ちょう剤が用いられる。
一方、極性を持つ増ちょう剤と組み合わせる基油は鉱油や炭化水素系合成油など、無極性の油剤が選ばれる。基油は増ちょう剤の網目構造に保持され、網目構造から適宜漏れ出した基油によって、軌道面と転動体との接触面が潤滑されることでフォールスブリネリングが防止される。
これに対して、内側列のグリースは軸受部分の組立て後、密封装置の装着前に、外輪と内輪に設けられた内輪構成体(回転輪構成体)との間から封入される。軸受部分の組立て後にグリースを封入するのは、内側列にグリースが存在すると、音響検査や予圧量の測定など、軸受の検査に支障がでるためである。
内側列にグリースを封入するとき、既に外側シールは装着されているので、軸受内部空間は袋小路となっており、グリース封入によって内圧が上昇し、グリースは深く入らず、また、封入グリースの一部は外内輪の戸場口まで押し戻され、内側シール、つまり密封装置に近接した位置に留まる。
なお、前記隙間(スリンガの摺動面とグリースリップの稜部との間の隙間)は微小なものであり、車両装着後、自動車の使用が始まれば摩滅し、グリースあるいは基油の漏洩が発生することはない。
また、図6に示すように、グリースリップ12bの断面形状を、円弧状(図6(a)参照)または円弧と直線の組み合わせた形状(図6(b)参照)とし、バリやカケがなく、ヒケの影響の少ない側面を摺動面に面当たりさせることでグリースリップの密着度を高めることも考えられるが、シールトルクの上昇やシール幅寸法の増加に繋がり、好ましくない。
前記密封装置は、前記内輪に取り付けられるスリンガと、前記外輪に取り付けられるシール芯金を有し、
前記シール芯金には、前記スリンガに摺接するリング状のシールリップが設けられ、
前記シールリップは、前記スリンガに摺接するグリースリップと、前記スリンガの前記グリースリップより軸受の外部側に摺接するメインリップとを有し、
前記グリースリップと前記メインリップと前記スリンガとで囲まれた空間に、軸受内部でかつ前記密封装置の近傍に存在するグリースが、前記グリースリップと前記スリンガとの間の隙間から毛細管現象によって侵入するのを防止するために、前記空間は、前記毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定され、
前記グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする。
また、グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられているので、前記空間と軸受内部との圧力差を解消できる。したがって、軸受内部から前記空間に向けてグリース(の基油)が前記隙間を通過するのを抑制できるとともに、隙間を通過したグリース(の基油)を当該隙間を通して軸受内部に還流できる。
よって、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
また、切欠部の幅や貫通孔の径は、グリースを構成する基油の性情とグリースリップを構成するゴム材料の濡れ性により必要な大きさが変化するため、特に定量的に規定するものではないが、例えば増ちょう剤は通過できないが、基油は通過できるサイズとしてもよい。
例えばJIS K2220のグリースの離油試験方法から明らかなように、グリースを目開き250μm、線径160μmの網上に置いた場合、増ちょう剤は網上に残り、基油の一部は滴下する。したがって、この結果に基づいて基油が通過できるサイズを設定してもよい。なお、ここでいう基油は、純粋な基油である鉱油や炭化水素系合成油の他に、これらの油剤に溶解可能なグリースの添加剤を含むものである。なお、この場合も基油は無極性の油剤の方が、切欠部の幅や貫通孔の径が小さくてすむ。
また、締め代の小さいグリースリップは、グリースの塗布を省略すれば、メインリップとグリースリップとの連鎖の形成をよりよく防ぐことができ、この結果、グリースの漏洩を防止できる。
前記切欠部は、周方向に隣り合う切欠部間の中央位置に存在する前記グリースリップの部分より軸受内側方向に位置しているのが好ましい。
また、グリースリップの内径側は、軸受回転時にグリースを掻くことによって、切欠部からのグリースの侵入を防止するブレードの役割を果たすことになるので、より確実にグリースの侵入を防止できる。
前記ハブユニット軸受の軸受内側端を上方に向けて、当該ハブユニット軸受を輸送することを特徴とする。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態に係るハブユニット軸受1は、図1に示すように、相対回転可能に配置された外輪3および内輪4と、外輪3と内輪4との間の環状空間に転動自在に配置される複数の転動体5と、前記環状空間を密封する密封装置6とを備えている。
内輪4の内輪構成体42をハブ41に嵌着する場合、外輪3と内輪4との間に複数の転動体5を組み込んだ状態で、内輪構成体42をハブ41に形成された段部41sまで当て付けた後、ハブ41のインボード側端部(図1の右端)を加締めることにより、当該内輪構成体42がハブ41のインボード側に固定されている。
なお、上述したような加締による固定に代えて、例えば、内輪構成体42をハブ41に形成された段部41sまで外嵌した後、インボード側からナットなどの締結部材により締め付けることで、内輪構成体42をハブ41のインボード側に固定してもよい。
これにより、各転動体(玉)5は、その転動面が相互に接触することなく軌道面間を円滑に転動することができ、結果として、当該各転動体(玉)5が相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。なお、ハブユニット軸受1の軸受内部には、このような回転抵抗の増大や焼付きなどをさらに効果的に防止すべく、潤滑剤としてのグリースが封入されている。
また、トラック等の重量の嵩む自動車に用いられるハブユニット軸受の場合には、上記転動体として、玉5に代わり、円錐ころが使用されることもある。
スリンガ10およびシール芯金11は、いずれもリング状でかつ断面形状が略L字状に形成されており、シールリップ12はシール芯金11に加硫接合されて、スリンガ10に摺接するようになっている。
また、シール芯金11は、外輪3に嵌合される円筒状の固定部11aと、この固定部11aの端部に形成された円板部11bとから構成されている。
グリースリップ12bは装着部12aの内周部から前記固定部10aの端部側に向けて延び、先端が固定部10aに弾性的に摺接するようになっている。また、装着部12aの内周部には挟持片12cが形成されており、この挟持片12cと装着部12aとによってシール芯金11の円板部11bの内周部のゴムの接着性が高められている。さらに、装着部12aの外周部には挟持片12dが形成されており、この挟持片12dと装着部12aとによってシール芯金11の固定部11aのゴムの接着性を高めると共に、ノーズガスケットを形成している。
さらに、前記装着部12aには、メインリップ12eより外径側(図2において上側)にサイドリップ12fが形成されている。このサイドリップ12fは、前記スリンガ10の円板部10b側の方が大径となるテーパリング状に形成されており、その先端は円板部10bに摺接するようになっている。
切欠部15の幅は、グリースを構成する基油の性情とグリースリップ12bを構成するゴム材料の濡れ性により必要な大きさが変化するため、特に定量的に規定するものではないが、例えば、増ちょう剤は通過できないが、基油は通過できるサイズとしてもよい。
また、締め代の小さいグリースリップ12bは、グリースの塗布を省略すれば、メインリップ12eとグリースリップ12bとの連鎖の形成をよりよく防ぐことができ、この結果、グリースの漏洩を防止できる。
また、グリースリップ12bに、リップ間空間Sと軸受内部を連通する切欠部15がグリースリップ12bの周方向に所定間隔で複数設けられているので、リップ間空間Sと軸受内部との圧力差を解消できる。したがって、軸受内部からリップ間空間Sに向けてグリース(の基油)が前記隙間を通過するのを抑制できるとともに、ハブユニット軸受1の軸受内側端を上方に向けて輸送することによって、前記隙間を通過したグリース(の基油)を当該隙間を通して軸受内部に還流できる。よって、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
図3は、第2の実施の形態に係るハブユニット軸受の要部を示す断面図である。この図に示すハブユニット軸受が第1の実施の形態のハブユニット軸受と異なる点は、切欠部15の形成位置であるので、以下ではこの点について説明する。なお、その他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
切欠部15は、周方向に隣り合う切欠部15,15間の中央位置に存在するグリースリップ12bの部分12b1より軸受内側方向に位置している。
すなわち、グリースリップ12bをその径方向から見ると、図4に示すように、複数の円弧16が繋がったような形状となるが、隣り合う円弧16,16の接続部に前記切欠部15が形成されている。なお、図4はハブユニット軸受1の軸受内側端(図1においてハブユニット軸受1の右端)を上方に向けた状態において、グリースリップ12bをその径方向から見た図である。
このような切欠部15は、周方向に隣り合う切欠部15,15間の中央位置に存在するグリースリップ12bの部分12b1より軸受内側(図4において下側)に位置している。
また、グリースリップ12bの内径側は、軸受回転時にグリースを掻くことによって、切欠部15からのグリースの侵入を防止するブレードの役割を果たすことになるので、より確実にグリースの侵入を防止できる。
3 外輪
4 内輪
5 転動体
6 密封装置
10 スリンガ
11 シール芯金
12 シールリップ
12b グリースリップ
12e メインリップ
15 切欠部(連通部)
S 空間(リップ間空間)
Claims (2)
- 相対回転可能に配置された外輪および内輪と、前記外輪と前記内輪との間の環状空間に転動自在に配置される複数の転動体と、前記環状空間を密封する密封装置とを備えたハブユニット軸受であって、
前記密封装置は、前記内輪に取り付けられるスリンガと、前記外輪に取り付けられるシール芯金を有し、
前記シール芯金には、前記スリンガに摺接するリング状のシールリップが設けられ、
前記シールリップは、前記スリンガに摺接するグリースリップと、前記スリンガの前記グリースリップより軸受の外部側に摺接するメインリップとを有し、
前記グリースリップと前記メインリップと前記スリンガとで囲まれた空間に、軸受内部でかつ前記密封装置の近傍に存在するグリースが、前記グリースリップと前記スリンガとの間の隙間から毛細管現象によって侵入するのを防止するために、前記空間は、前記毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定され、
前記グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられ、
前記連通部が前記グリースリップの周方向に沿う縁部を周方向に所定間隔で切り欠いてなる切欠部によって構成され、
前記切欠部は、周方向に隣り合う切欠部間の中央位置に存在する前記グリースリップの部分より軸受内側方向に位置していることを特徴とするハブユニット軸受。 - 請求項1に記載のハブユニット軸受を輸送するハブユニット軸受の輸送方法において、
前記ハブユニット軸受の軸受内側端を上方に向けて、当該ハブユニット軸受を輸送することを特徴とするハブユニット軸受の輸送方法。
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