以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、情報記録媒体から、浮上高さが2nm以下で離間して設けられたDFH機構を有する磁気ヘッドにより、磁気的に情報を記録又は再生する情報記録装置に備えられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、原料ガラスを溶融炉で溶融した溶融ガラスから形成したガラス素板を、当該ガラス素板の屈折率と略同一の屈折率を有する液体に浸漬させた状態で、前記ガラス素板に検査光を照射し、照射した検査光の反射光及び散乱光に基づいて、異物欠陥量を測定する検査工程と、検査後のガラス素板の表面を研磨する研磨工程と、を備えることを特徴とする。
このような検査工程であれば、原料ガラスを溶融炉で溶融した溶融ガラスから形成したガラス素板を、当該ガラス素板の屈折率と略同一の屈折率を有する液体に浸漬させた状態で、ガラス素板に検査光を照射して検査する。そうすることによって、ガラス素板と液体との界面で、屈折率の変化が非常に小さくなり、ガラス素板の表面で検査光の反射及び散乱が充分に抑制される。このことから、ガラス素板を液体に浸漬させた状態で、照射した検査光の反射光及び散乱光に基づいて、異物欠陥量を測定すると、研磨工程前からガラス素板に存在する内部欠陥の量を測定することができる。
これに対して、液体に浸漬させない状態でガラス素板の異物欠陥量を測定すると、ガラス素板の表面粗さが大きいため、その表面の凹凸による散乱光が発生するので、内部欠陥のみを検出することが困難になる。
以上のことから、研磨工程より前に前記検査工程を施すことによって、内部欠陥に関する情報を比較的早い段階で、精度高く得ることができる。また、内部欠陥に関する情報を精度高く得ることができるので、内部欠陥の主な原因である、溶融炉の構成成分の混入を抑制するための、溶融炉の改修のタイミングを好適に決定することができる。また、内部欠陥に関する情報を、研磨工程前の比較的早い段階で得ることができるので、不良品の発生を早期に発見することができる。すなわち、DFH機構を有する磁気ヘッドで、浮上高さが2nm以下を実現可能な情報記録装置に適用する情報記録媒体用ガラス基板で特に考慮する必要のある内部欠陥に関する情報を、比較的早い段階で精度高く得ることができる。このことから、DFH機構を有する磁気ヘッドで、浮上高さが2nm以下を実現可能な情報記録装置に適用可能な情報記録媒体用ガラス基板を好適に製造することができる。
なお、DFH機構を有する磁気ヘッドとは、情報記録媒体に情報を読み書きする際に、磁気ヘッドにおける記録再生動作を行うヘッド素子のみを情報記録媒体に近接させることによって、いわゆるABS面(air bearing surface、空気ベアリング面)と情報記録媒体間の距離を低減する動的浮上量制御部(dynamic flying height制御技術、DFH制御技術)を備える磁気ヘッドのことである。このような磁気ヘッドを用いることによって、浮上高さ2nm以下を実現することができる。
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、前記検査工程及び前記研磨工程を備えていれば、特に限定されない。具体的には、検査工程及び研磨工程を備えており、その検査工程が、上記のような工程であり、研磨工程が、検査工程の後であること以外、特に限定されず、従来公知の製造方法であればよい。なお、研磨工程は、情報記録媒体用ガラス基板の研磨工程として一般的な工程であればよく、前記検査工程の後に実施されるものであれば、特に限定されない。
まず、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における検査工程について、説明する。
前記検査工程は、上述した検査工程であれば、特に限定されない。すなわち、原料ガラスを溶融炉で溶融した溶融ガラスから形成したガラス素板を液体に浸漬させた状態で、異物欠陥量を測定する。また、異物欠陥量の測定方法は、ガラス素板に検査光を照射し、照射した検査光の反射光及び散乱光に基づいて測定する方法であれば、特に限定されない。具体的には、反射光の強度や角度の変化や、散乱光の存在の有無等により、異物欠陥量を測定する方法等が挙げられる。
また、ガラス素板を浸漬させる液体は、その屈折率がガラス素板の屈折率と略同一である。このような液体にガラス素板を浸漬させた状態で、ガラス素板の異物欠陥量を測定するので、ガラス素板と液体との界面で、屈折率の変化が非常に小さくなり、ガラス素板の表面での検査光の反射及び散乱の発生を抑制することができる。よって、ガラス素板の表面状態にかかわらず、内部異物に基づく異物欠陥(内部欠陥)量を測定することができる。
これに対して、液体に浸漬させない状態でガラス素板の異物欠陥量を測定しようとすると、研磨工程前のガラス素板であるため、ガラス素板の表面粗さが大きく、その表面の凹凸による散乱光が発生する。よって、内部異物に基づく異物欠陥量のみを測定することができない。
このため、ガラス素板を浸漬させる液体としては、その屈折率がガラス素板の屈折率と略同一である液体を用いる。すなわち、液体の屈折率が、ガラス素板の表面での検査光の反射及び散乱の発生を充分に抑制できるほど、ガラス素板の屈折率と同一である液体を用いる。なお、ここでの、液体の屈折率とガラス素板の屈折率とが略同一とは、例えば、それらの屈折率の差が0.01以内であることを指し、0.005以内であることが好ましい。
また、前記液体としては、具体的には、屈折率の異なる複数の調整液を用意し、その調整液を混合した液体等が挙げられる。すなわち、その混合比を調整することによって、ガラス素板の屈折率と同一の屈折率となるように調整した液体等が挙げられる。このような液体であれば、ガラス素板の屈折率にかかわらず、ガラス素板の屈折率と同一になるように調整した液体を容易に用意することができる。
また、前記調整液としては、ガラス素板を損傷させることがなく、他の調整液に溶解することができ、複数の調整液を混合することによって、ガラス素板の屈折率と同一の屈折率を実現できるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、マッチングオイル等が挙げられる。
また、前記検査光は、ガラス素板に照射して、その反射光及び散乱光に基づいて、異物欠陥量を測定可能な光線であれば、特に限定されないが、レーザ光であることが好ましい。具体的には、レーザ光源から出射されたレーザ光等が挙げられる。検査光として、レーザ光を用いることによって、検査光を効率よく集光させることができる。よって、異物欠陥量の測定精度を高めることができる。
また、前記検査工程において、ガラス素板に対して検査光を照射する位置を移動可能とすることが好ましい。すなわち、ガラス素板の、検査光が照射される位置が移動可能であることが好ましい。具体的には、検査光を出射する光源、例えば、レーザ光源を、ガラス素板に対して移動可能に構成するものや、ガラス素板を回転させて、異物欠陥量を測定する構成のもの等が挙げられる。そうすることによって、検査光を照射する位置は、内部欠陥を検査する位置であるので、この位置を移動可能とすることで、ガラス素板の内部欠陥を検査することができる範囲を広げることができる。また、レーザ光源を、ガラス素板に対して移動可能に構成するものは、レーザ光源を移動してもよいし、ガラス素板を移動してもよい。また、光源から出射される検査光の集光位置を変更可能に構成するものが挙げられる。そうすることによって、ガラス素板の厚み方向に異物欠陥量を測定可能にすることができる。
また、前記検査工程での検査方法は、上記の方法を実現することができる方法であれば、特に限定されない。具体的には、図1に示す方法等が挙げられる。なお、図1は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における検査工程の一例を説明するための概略図である。
まず、図1に示すように、ガラス素板1を液体2に浸漬させる。そして、光学照射手段3から出射された検査光8を、レンズ4を通して、液体2に浸漬されたガラス素板1に対して照射する。そして、照射された検査光8の、ガラス素板1で反射した反射光9を、レンズ6を通過させた後、光学検出手段5で検出する。そうすることによって、反射光9の変化を、光学検出手段5で検出することができる。この検出結果を解析することによって、内部欠陥量を測定することができる。
また、検査光8を照射する、ガラス素板1の位置は、最終的に得られるガラス基板になったときに孔が形成される中心部や、加工によって除去される外端部以外の領域とすることが好ましい。また、ここでは、反射光9の変化で内部欠陥量を測定することを記載したが、光学検出手段5で、ガラス素板1で散乱した散乱光を検出し、その有無等で内部欠陥量を測定してもよい。すなわち、本実施形態での検査工程は、照射された検査光8の、ガラス素板1での反射光又は散乱光に基づいて、内部欠陥量を測定するものであればよい。
なお、光学照射手段3は、検査光8を出射させることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、レーザ光源等が挙げられる。また、前記レンズ4は検査光8をガラス素板1で集光させるためのものである。また、前記光学検出手段5は、反射光9を検出することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、反射光9の反射角度や強度の変化を検出できるもの等が挙げられる。また、前記レンズ6は、前記光学検出手段5で検出するのに好適な光に変換するためのものであれば、特に限定されない。
また、前記検査工程が、さらに、以下の工程を備えるものであることが好ましい。具体的には、異物欠陥の存在を検出するための反射光又は散乱光を測定したガラス基板上の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づくガラス素板の該当箇所を拡大した光学像、又は該当箇所の輝度情報を光学撮像手段で得て、得られた光学像や輝度情報によって異物欠陥の種別を判定する工程をさらに備えることが好ましい。
このような工程を備えていれば、検査光を照射することによって、異物欠陥の存在を検出する反射光又は散乱光を測定した位置の情報を取得し、その箇所に対し、光学顕微鏡等の光学撮像手段により光学像や輝度情報を得て、その光学像や輝度情報によって、その異物欠陥の種別を判定するので、異物欠陥の種別の情報が詳細に得られる。検査光の照射により異物欠陥であると判定されたものの種別が、表面の付着異物、気泡、内部異物、及びノイズ等によるものであるかがわかる。よって、内部欠陥に関する情報をより高精度で得ることができる。
このような異物欠陥の種別を判定する工程を備える方法は、この方法を実現することができる方法であれば、特に限定されない。具体的には、図2に示す方法等が挙げられる。なお、図2は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における検査工程の他の一例を説明するための概略図である。
まず、ガラス素板は、位置検出器であるエンコーダを備えた移載装置(不図示)によって、水平方向(面方向)及び厚さ方向に移動可能に保持されている。このエンコーダによって、ガラス素板の位置情報を取得することができる。よって、光学検出手段5によって異物欠陥を検出されたガラス素板の位置情報を、エンコーダによって取得する。そして、その取得した位置情報に相当する箇所に対し、図2に示すような光学撮像手段7で光学像や輝度情報を取得する。そして、この光学像や輝度情報によって、その異物欠陥の種別を判断する。
また、エンコーダによって取得した位置情報に相当する箇所を、光学撮像手段7で測定する際、その該当箇所が光学撮像手段7まで到達するように、ガラス素板1を回転させる構成としてもよい。このような場合、光学撮像手段7の撮像する箇所が、ガラス素板の半径方向に移動可能であれば、ガラス素板の全ての領域を測定可能である。また、その場合、検査光8を照射する位置と、光学撮像手段7で撮像する位置とを、半径方向で同じ位置とする。そして、検査光8を照射する位置と、光学撮像手段7で撮像する位置とが、ガラス素板の中心を挟んで反対側に配置されていることが好ましい。
また、検査光8を照射する位置と、光学撮像手段7で撮像する位置とを予め決めておくことが好ましい。そうすることによって、光学検出手段5によって異物欠陥が検出されたガラス素板の位置情報をエンコーダによって取得し、その位置が、光学撮像手段7で撮像する位置に到達するまでの、ガラス素板の移動距離を得ることができる。
また、光学撮像手段7は、ガラス素板に存在しうる欠陥の種別を判別できる光学像や輝度情報を撮像することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、マイクロスコープ、光学顕微鏡、及びレーザ顕微鏡等が挙げられる。この中でも、高精細な光学像(画像)を取得することができるという点でレーザ顕微鏡が好ましい。
また、光学撮像手段7は、検査されるガラス素板の近傍に配置可能な対物レンズを備えるものが好ましい。そして、その対物レンズを、ガラス素板に近接させ、ガラス素板を浸漬させている液体に浸漬させることにより、開口数が1以上となる対物レンズが好ましい。そうすることによって、光学撮像手段の撮像分解能を向上させることができる。例えば、光学撮像手段の分解能が、空気中で400nm程度であったとしても、液浸での測定時には、200nm程度の分解能を実現することも可能となる。このように対物レンズを、ガラス素板に近接させ、さらに液浸させることよって、内部欠陥に関する情報を、より高精度に得ることができる。また、前記対物レンズの倍率は、特に限定されないが、例えば、100〜150倍程度のものが好ましい。
また、検査光の照射による検査を行い、それと同時に、ガラス素板の照射位置の情報を取得し、記憶しておくことで、その位置情報に基づく位置が、光学撮像手段で撮像する位置に到達した際に、光学撮像手段7で光学像又は輝度情報を取得することが好ましい。そうすることによって、検査光の照射による検査と光学撮像手段による検査を同時に行うことができる。
以上のような検査工程を備えていれば、上述したように、検査光の照射により異物欠陥であると判定されたものの種別が、表面の付着異物、気泡、内部異物、及びノイズ等によるものであったかがわかる。よって、内部欠陥に関する情報を、より高精度で得ることができる。
また、研磨工程は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研磨工程であれば、特に限定されない。また、本実施形態においては、研磨工程は、前記検査工程の後に実施されるものであり、後述するように、検査工程と研磨工程との間に、他の工程を備えるものであってもよい。また、前記研磨工程は、1回研磨であってもよいが、例えば、粗研磨工程と精密研磨工程との複数回の工程を行うものであってもよい。また、精密研磨工程も、1回であってもよいが、2回以上行ってもよい。具体的には、例えば、以下のような研磨工程が挙げられる。
前記粗研磨工程(1次研磨工程)は、ガラス素板の表面に粗研磨を施す工程である。例えば、後述するラッピング工程が施されたガラス素板や、成形により得られたガラス素板の表面に粗研磨を施す工程である。この粗研磨は、傷や歪みの除去を目的とするもので、後述する研磨装置を用いて実施する。なお、前記粗研磨工程で研磨する表面は、ガラス素板の面方向に平行な面、すなわち主表面である。
まず、粗研磨工程で用いる研磨装置は、ガラス基板の製造に用いる研磨装置であれば、特に限定されない。具体的には、図3に示すような研磨装置11が挙げられる。なお、図3は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研磨工程で用いる研磨装置の一例を示す概略断面図である。
図3に示すような研磨装置11は、ガラス素板の主表面の両面を、同時に研磨可能な装置である。また、この研磨装置11は、装置本体部11aと、装置本体部11aに研磨液(研磨スラリー)を供給する研磨液供給部11bとを備えている。
研磨本体部11aは、互いに対向して配置される2枚の定盤12,13を備えている。それぞれの定盤の位置関係は、上下に限定されないが、例えば、2枚の定盤のうち、上側に配置される定盤を、上定盤12とし、下側に配置される定盤を、下定盤13と称する。すなわち、研磨本体部11aは、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とを備えており、それらが互いに平行になるように上下に間隔を隔てて配置されている。そして、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とが、互いに逆方向に回転する。
この円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13との対向するそれぞれの面に、ガラス素板10の表裏の両面を研磨するための研磨パッド15が貼り付けられている。
また、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13との間には、回転可能な複数のキャリア14が設けられている。このキャリア14は、複数の素板保持用孔51が形成されており、この素板保持用孔51にガラス素板10をはめ込んで配置することができる。キャリア14としては、例えば、素板保持用孔51が100個形成されていて、100枚のガラス素板10をはめ込んで配置できるように構成されていてもよい。そうすると、1回の処理(1バッチ)で100枚のガラス素板を処理できる。
研磨パッド15を介して定盤12,13に挟まれているキャリア14は、ガラス素板10を保持した状態で、自転しながら、定盤12,13の回転中心に対して下定盤13と同じ方向に公転する。なお、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とは、別駆動で動作することができる。このように動作している研磨装置11において、研磨液16を、上定盤12とガラス素板10との間、及び下定盤13とガラス素板10との間に、それぞれ供給することによって、ガラス素板10の研磨を行うことができる。
また、研磨液供給部11bは、液貯留部110と液回収部120とを備えている。液貯留部110は、液貯留部本体110aと、液貯留部本体110aから装置本体部11aに延ばされた吐出口110eを有する液供給管110bとを備えている。液回収部120は、液回収部本体120aと、液回収部本体120aから装置本体部11aに延ばされた液回収管120bと、液回収部本体120aから研磨液供給部11bに延ばされた液戻し管120cとを備えている。
そして、液貯留部本体110aに入れられた研磨液16は、液供給管110bの吐出口110eから装置本体部11aに供給され、装置本体部11aから液回収管120bを介して液回収部本体120aに回収される。また、回収された研磨液16は、液戻し管120cを介して液貯留部110に戻され、再度、装置本体部11aに供給可能とされている。
ここで用いる研磨パッドとしては、粗研磨工程に用いることができる研磨パッドであれば、特に限定されない。具体的には、硬質研磨パッド等が挙げられる。
また、ここで用いる研磨液は、研磨剤を水に分散させた状態の液体、すなわち、スラリー液である。そして、この研磨剤としては、例えば、CeO2を含有する研磨剤等が挙げられる。
次に、精密研磨工程について説明する。
前記精密研磨工程は、前記粗研磨工程で得られた平坦平滑な主表面を維持しつつ、例えば、主表面の表面粗さ(Rmax)が0.3nm程度以下である平滑な鏡面に仕上げる鏡面研磨処理である。この精密研磨工程は、例えば、上記粗研磨工程で使用したものと同様の研磨装置を用い、研磨パッドを硬質研磨パッドから軟質研磨パッドに取り替えて行われる。なお、前記精密研磨工程で研磨する表面は、前記粗研磨工程で研磨する表面と同様、主表面である。なお、軟質研磨パッドとしては、例えば、スエードパッド等が挙げられる。スエードパッドとは、表面部(研磨層)が、軟質発泡ポリウレタン等の軟質発泡樹脂で構成されるスエードタイプの軟質発泡樹脂パッドである。また、スエードパッドは、気泡が表面(パッド面)に開放されており、気泡を仕切る壁が軟らかいものが相対的に多い研磨パッドである。
また、精密研磨工程で用いる研磨剤としては、粗研磨工程で用いた研磨剤より、研磨性が低くても、傷の発生がより少なくなる研磨剤が用いられる。具体的には、例えば、粗研磨工程で用いた研磨剤より、粒子径が低いシリカ系の砥粒(コロイダルシリカ)を含む研磨剤等が挙げられる。このシリカ系の砥粒の平均粒子径としては、20nm程度であることが好ましい。そして、本実施形態では、このコロイダルシリカを含む研磨剤が用いられる。
そして、前記研磨剤を含む研磨液(スラリー液)をガラス素板に供給し、研磨パッドとガラス素板とを相対的に摺動させて、ガラス素板の表面を鏡面研磨する。なお、スラリー液は、例えば、上記研磨装置11の研磨液供給部11bによって循環使用してもよい。
また、前記検査工程で測定される異物欠陥量に応じて、ガラス素板を形成する際に用いる溶融ガラスを得るための溶融炉を改修する時期を決定することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る情報記録用ガラス基板の製造方法は、前記検査工程で測定される前記異物欠陥量に応じて、前記溶融炉を改修する時期を決定する決定工程と、前記溶融炉を改修すると決定した時期に、前記溶融炉を改修する改修工程とをさらに備えることが好ましい。上述したように、ガラス素板の内部欠陥は、研磨工程前からガラス素板に存在する内部異物に基づくものであり、その内部異物は、溶融炉の構成成分である白金等の混入によるものが多い。この混入は、溶融炉の使用回数や使用時間等が増加するに従い、増える傾向がある。このことから、内部異物を少なくするためには、溶融炉を改修する必要がある。溶融炉の改修を高頻度で行えば、内部異物の混入が少なくなるが、情報記録媒体用ガラス基板の製造効率が低下してしまう。そこで、上記のように溶融炉の改修時期を決定することによって、異物欠陥量が増えてきたタイミングで、溶融炉を改修することができる。すなわち、内部欠陥の主な原因である、溶融炉の構成成分の混入を抑制するための、溶融炉の改修のタイミングを好適に決定することができる。したがって、溶融炉の改修を必要以上にすることなく、内部異物の混入量の少ない情報記録媒体用のガラス基板を製造することができる。なお、溶融炉の改修方法は、特に限定されず、一般的な改修方法であればよい。
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、前記検査工程で測定される異物欠陥量に応じてガラス素板を選別する工程を備え、研磨工程が、選別された異物欠陥量毎に、前記ガラス素板を研磨することが好ましい。すなわち、前記検査工程で測定された異物欠陥量に応じて、ランク分けを行う。例えば、適用する情報記録装置の磁気ヘッドの浮上量に応じて、ランク分けを行う。具体的には、例えば、異物欠陥が発見されなかったガラス素板は、磁気ヘッドの浮上量が2nm以下の情報記録装置に備えられる磁気ディスク用にランク分けする等である。また、反対に、異物欠陥量が多く、例えば、5個以上発見されたガラス素板は、磁気ヘッドの浮上量が10nm以上の情報記録装置に備えられる磁気ディスク用にランク分けする等である。このように、異物欠陥量毎に分けて、情報記録媒体用ガラス基板が得られる。そうすることによって、情報記録媒体に求められる性能に応じて、異物欠陥量の異なるガラス基板を提供することができるので、ガラス基板の廃棄量を低減することができる。よって、情報記録媒体用ガラス基板を効率よく製造することができる。
以上のように、前記研磨工程の前に、前記検査工程を施すことによって、内部欠陥に関する情報を、比較的早い段階で精度高く得ることができる。また、内部欠陥に関する情報を精度高く得ることができるので、内部欠陥の主な原因である、溶融炉の構成成分の混入を抑制するための、溶融炉の改修のタイミングを好適に決定することができる。また、内部欠陥に関する情報を、研磨工程前の比較的早い段階で得ることができるので、不良品の発生を早期に発見することができる。
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法としては、前記検査工程及び前記研磨工程を備えていればよいが、その他の工程を備えていてもよい。例えば、円盤加工工程、検査工程、熱処理工程(アニール工程)、研削工程(ラッピング工程)、内外研削工程、端面研磨工程、化学強化工程、研磨工程(ポリッシング工程)、及び洗浄工程を備える方法等が挙げられる。そして、前記各工程を、この順番で行うものであってもよいし、これらの工程の全てを行わなくてもよいし、これら以外の工程を備える方法であってもよい。例えば、研削工程を行わない場合であってもよいし、研磨工程の後に化学強化工程を行うものであってもよい。また、研磨工程の途中で、化学強化工程を行ってもよい。具体的には、研磨工程として、粗研磨工程、第1精密研磨工程、第2精密研磨工程を備え、第1精密研磨工程と第2精密研磨工程との間に、化学強化工程を行ってもよい。さらに、これら以外の工程を備える方法であってもよい。また、検査工程は、上記検査工程を行うものであり、研磨工程は、上記研磨工程を行うものである。
前記円盤加工工程は、原料ガラスを、図4に示すような、内周及び外周が同心円となるように、中心部に貫通孔10aが形成された円盤状のガラス素板10に加工する工程である。具体的には、原料ガラスを、溶融炉で溶融して、溶融ガラスとするガラス溶融工程と、溶融ガラスを円盤状のガラス素板に形成する成形工程と、形成された円盤状のガラス素板の中心部に貫通孔10aを形成するコアリング加工を施し、図4に示すような、円盤状のガラス素板10に加工するコアリング加工工程等を備える。なお、図4は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法で用いられるガラス素板を示す上面図である。
前記ガラス溶融工程は、原料ガラスを、溶融炉で溶融して、溶融ガラスとすることができれば、特に限定されない。原料ガラスとしては、特に限定されず、例えば、SiO2、Na2O、及びCaOを主成分とするソーダライムガラス、SiO2、Al2O3、及びR1 2O(式中、R1は、K、Na、又はLiを示す。)で表される酸化物を主成分とするアルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、Li2O−SiO2系ガラス、Li2O−Al2O3−SiO2系ガラス、R2O−Al2O3−SiO2系ガラス(式中、R2は、Mg、Ca、Sr、又はBaを示す。)等が挙げられる。より具体的には、例えば、ガラス組成が、SiO2が55〜75質量%、Al2O3が5〜18質量%、Li2Oが1〜10質量%、Na2Oが3〜15質量%、K2Oが0.1〜5質量%、MgOが0.1〜5質量%、CaOが0.1〜5質量%であるもの等が挙げられる。これらの中でも、アルミノシリケートガラス、及びボロシリケートガラスが、耐衝撃性や耐振動性に優れる点で好ましい。また、原料ガラスの溶融方法としては、特に限定されず、通常は上記ガラス素材を公知の温度、時間にて高温で溶融する方法を採用することができる。
前記成形工程は、溶融ガラスを円盤状のガラス素板に形成することができれば、特に限定されない。具体的には、溶融ガラスをプレス成形により、円盤状のガラス素板を形成するプレス工程等が挙げられる。また、前記成形工程は、プレス工程に限らず、例えば、ダウンドロー法やフロート法等で形成したシートガラスを研削砥石で切り出して、円盤状のガラス素板を作製する工程であってもよい。なお、フロート法とは、例えば、ガラス素材を溶融させた溶融液を、溶融したスズの上に流し、そのまま固化させる方法である。得られたガラス素板は、一方の面がガラスの自由表面であり、他方の面が、ガラスとスズとの界面であるため、平滑性の高い、例えば、算術平均粗さRaが0.001μm以下の鏡面を備えたものとなる。また、ガラス素板の厚みとしては、例えば、0.95mmのものが挙げられる。なお、ガラス素板やガラス基板の表面粗さ、例えばRaやRmaxは、一般的な表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
また、前記コアリング加工工程は、前記成形工程で形成された円盤状のガラス素板の中心部に貫通孔10aを形成するコアリング加工を施す工程である。そうすることによって、図4に示すような、中心部に貫通孔10aが形成された円盤状のガラス素板10が得られる。コアリング加工は、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成する穴あけ加工であれば、特に限定されない。例えば、カッター部にダイヤモンド砥石等を備えたコアドリルや、円筒状のダイヤモンドドリル等で研削することで、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成させる方法等が挙げられる。そうすることで、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成され、平面視で円環状のガラス素板が得られる。
前記円盤加工工程によって、例えば、外径r1が2.5インチ(約64mm)、1.8インチ(約46mm)、1インチ(約25mm)、0.8インチ(約20mm)等で、厚みが2mm、1mm、0.63mm等の円盤状のガラス素板が得られる。また、外径r1が2.5インチ(約64mm)のときは、例えば、内径r2が0.8インチ(約20mm)等に加工される。
前記熱処理工程(アニール工程)は、前記ガラス素板の形状を整えるための工程である。具体的には、ガラス基板熱処理用セッタに、ガラス素板を載置した状態で、加熱炉に収納し、前記ガラス素板を熱処理する工程等が挙げられる。
前記研削工程(ラッピング工程)は、前記ガラス素板を所定の板厚に加工する工程である。具体的には、例えば、ガラス素板の両面を研削(ラッピング)加工する工程等が挙げられる。そうすることによって、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを調整する。また、このラッピング工程は、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。例えば、2回行う場合、1回目のラッピング工程(第1ラッピング工程)で、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを予備調整し、2回目のラッピング工程(第2ラッピング工程)で、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを微調整する。また、研削工程を2回行う場合、第1ラッピング工程と第2ラッピング工程とを連続で行ってもよいが、これらの工程の間に、後述する、内外研削工程、及び端面研磨工程を行ってもよい。
また、研削工程で用いる研削装置は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研削工程で用いる研削装置として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、前記研磨工程で用いる研磨装置と同様のものであって、研磨パッドの代わりに、固定砥粒としてダイヤモンドを使用した樹脂シート(研削シート)を用いたものが挙げられる。また、前記第1ラッピング工程としては、ガラス素板の表面全体が略均一の表面粗さとなるようにした工程等が挙げられる。
また、前記第2ラッピング工程としては、大きなうねり、欠け、ひび等の欠陥を除去したガラス素板が得られるようにした工程等が挙げられる。
前記内外研削工程は、ガラス素板の外周端面及び内周端面を研削する工程である。具体的には、鼓状のダイヤモンド砥石等の研削砥石により、ガラス素板の外周端面および内周端面を研削する工程等が挙げられる。
前記端面研磨工程は、ガラス素板の外周端面及び内周端面を研磨する工程である。具体的には、前記内外研削工程を施したガラス素板を複数枚、例えば、100枚程度積み重ねて積層し、その状態で外周端面及び内周端面の研磨加工を、端面研磨機を用いて研磨する工程等が挙げられる。
前記化学強化工程は、特に限定されず、具体的には、ガラス素板を化学強化液(強化処理液)に浸漬して、ガラス素板に化学強化層を形成する工程等が挙げられる。このような工程を施すことによって、ガラス素板の表面、例えば、ガラス素板表面から5μmの領域に化学強化層を形成することができる。そして、化学強化層を形成することで耐衝撃性、耐振動性及び耐熱性等を向上させることができる。
より詳しくは、化学強化工程は、加熱された化学強化処理液にガラス素板を浸漬させることによって、ガラス素板に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンをそれよりイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンに置換するイオン交換法によって行われる。イオン半径の違いによって生じる歪みにより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス素板の表面が強化される。すなわち、この化学強化工程により、ガラス素板に強化層が好適に形成されると考えられる。
化学強化処理液としては、磁気情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における化学強化工程で用いられる化学強化処理液であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、カリウムイオンを含む溶融液、及びカリウムイオンやナトリウムイオンを含む溶融液等が挙げられる。
これらの溶融液としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウム等を溶融させて得られた溶融液等が挙げられる。この中でも、硝酸カリウムを溶融させて得られた溶融液と硝酸ナトリウムを溶融させて得られた溶融液とを組み合わせて用いることが、融点が低く、ガラス素板の変形を防止する観点から好ましい。その際、硝酸カリウムを溶融させて得られた溶融液と硝酸ナトリウムを溶融させて得られた溶融液とを、ほぼ同量ずつの混合させた混合液であることが好ましい。
前記洗浄工程は、ガラス素板を洗浄する工程である。洗浄工程は、各工程の後に適宜行うことが好ましい。また、前記洗浄工程のうち、前記研磨工程により研磨されたガラス基板を洗浄する最終洗浄工程としては、例えば、スクラブ洗浄が挙げられる。スクラブ洗浄とは、湿式の物理洗浄方法であり、ガラス基板の表面に洗浄液を供給しながら、スクラブ部材をガラス基板に押圧した状態で、スクラブ部材とガラス基板とを相対的に移動させる方法である。そうすることで、ガラス基板の表面上の汚れをこすり取ることができる。また、このスクラブ洗浄を行う装置(スクラブ洗浄装置)としては、情報記録媒体用ガラス基板をスクラブ洗浄できる装置であれば、特に限定されない。具体的には、スクラブ部材が円筒形のロールスクラブであるロールスクラブ洗浄装置や、スクラブ部材がカップ型のカップスクラブ洗浄装置等が挙げられる。
また、この最終洗浄工程等の洗浄工程を施す前のガラス素板やガラス基板は、表面への異物が付着されることを防止するために、ガラス素板やガラス基板を液体と接触させておくことが好ましい。
また、最終洗浄工程としては、スクラブ洗浄をした後、超音波による洗浄を行うことが好ましい。
また、最終洗浄後は、ガラス基板を乾燥させる。その乾燥方法としては、例えば、IPA蒸気による乾燥、スピン乾燥、及び温水乾燥等が挙げられる。
次に、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体について説明する。
図5は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体の一例である磁気ディスクを示す一部断面斜視図である。この磁気ディスクDは、円形の情報記録媒体用ガラス基板101の主表面に形成された磁性膜102を備えている。磁性膜102の形成には、公知の常套手段による形成方法が用いられる。例えば、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂を情報記録媒体用ガラス基板101上にスピンコートすることによって磁性膜102を形成する形成方法(スピンコート法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上にスパッタリングによって磁性膜102を形成する形成方法(スパッタリング法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上に無電解めっきによって磁性膜102を形成する形成方法(無電解めっき法)等が挙げられる。磁性膜102の膜厚は、スピンコート法による場合では、約0.3〜1.2μm程度であり、スパッタリング法による場合では、約0.04〜0.08μm程度であり、無電解めっき法による場合では、約0.05〜0.1μm程度である。薄膜化および高密度化の観点から、スパッタリング法による膜形成が好ましく、また、無電解めっき法による膜形成が好ましい。
磁性膜102に用いる磁性材料は、公知の任意の材料を用いることができ、特に限定されない。磁性材料は、例えば、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金等が好ましい。より具体的には、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPt、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtB、CoCrPtSiO等が挙げられる。磁性膜102は、ノイズの低減を図るために、非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrV等)で分割された多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTa等)であってもよい。磁性膜102に用いる磁性材料は、上記磁性材料の他、フェライト系や鉄−希土類系であってもよく、また、SiO2、BN等からなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子を分散した構造のグラニュラー等であってもよい。また、磁性膜102への記録には、内面型および垂直型のいずれかの記録形式が用いられてよい。
また、磁気ヘッドの滑りをよくするために、磁性膜102の表面には、潤滑剤が薄くコーティングされてもよい。潤滑剤として、例えば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
さらに必要により磁性膜102に対し下地層や保護層が設けられてもよい。磁気ディスクDにおける下地層は、磁性膜102に応じて適宜に選択される。下地層の材料として、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Ni等の非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。例えば、Coを主成分とする磁性膜102の場合には、下地層の材料は、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は、単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造であってもよい。このような複数層構造の下地層は、例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層が挙げられる。磁性膜102の摩耗や腐食を防止する保護層として、例えば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層等が挙げられる。これら保護層は、下地層および磁性膜102と共にインライン型スパッタ装置で連続して形成することができる。また、これら保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる複数層構成であってもよい。なお、上記保護層上に、あるいは、上記保護層に代えて、他の保護層が形成されてもよい。例えば、上記保護層に代えて、Cr層の上にSiO2層が形成されてもよい。このようなSiO2層は、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成することによって形成される。
このような本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を基体とした磁気記録媒体は、情報記録媒体用ガラス基板101が上述した組成により形成されるので、情報の記録再生を長期に亘り高い信頼性で行うことができる。
なお、上述では、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を磁気記録媒体(磁気ディスク)に用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101は、光磁気ディスクや光ディスク等にも用いることが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記研磨工程の前に行う前記検査工程について検討した結果を示す。
まず、改修(メンテナンス)後の使用状況の異なる溶融炉を用いて、原料ガラスを溶融させ、公知の方法より得られた溶融ガラスをプレス成形して円盤状のガラス素板(ブランクス)を500枚得た。すなわち、使用状況の異なる溶融炉を用いて得られたガラス素板を500枚用意した。なお、ここで用意したガラス素板は、アモルファスガラスからなるものであって、外径68mm、板厚0.9mmであった。そして、そのガラス素板を、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における一般的な最終洗浄工程と同様に、予備洗浄を行った後に、洗剤を用いた洗浄や超音波洗浄を行った。
その後、洗浄後のガラス素板に対して、前記検査工程における検査を行った。
具体的には、まず、複数のマッチングオイルを混合して、ガラス素板の屈折率と同一の屈折率になるような混合液を調製した。その後、図1に示すように、その混合液にガラス素板を浸漬させ、その状態で前記ガラス素板に検査光を照射し、照射した検査光の反射光及び散乱光に基づいて異物欠陥量を測定した。その際、最終加工後には、貫通孔が形成される中央部や、除去される外端部以外に、検査光を照射して検査した。なお、この検査は、クリーンルーム内で行った。
そして、その異物欠陥量である内部異物量が1枚あたり5個未満を良品とし、5個以上を不良品として選別し、それぞれを100枚用意した。また、前記検査を行わなかったものも、比較品として100枚用意した。その後さらに、それらのガラス素板に対して、それぞれ公知の方法により、熱処理工程、粗研磨工程、第1精密研磨工程、化学強化工程、第2精密研磨工程、洗浄工程を施し、情報記録媒体用ガラス基板、すなわち、上記磁性膜を形成する前のガラス基板を製造した。
得られたガラス基板に対して、まず、光学的な検査を施した。具体的には、散乱系光学式欠陥解析装置(AOI)を用いて検査した。なお、AOIはその原理上、付着異物による欠陥(付着欠陥)と、内部異物による欠陥(内部欠陥)との両方を区別なく測定する。その際、まず、2μm以上の大きさの欠陥を認識するように検査した場合(検査レベル:2μm)、その検査により検出された欠陥個数が30個程度のものを、良品、不良品、及び比較品から選別した。また、5μm以上の大きさの欠陥を認識するように検査した場合(検査レベル:5μm)、その検査により検出された欠陥個数が20個程度のものを、良品、不良品、及び比較品から選別した。
その選別されたガラス基板について、さらに詳細に検査した。
具体的には、干渉系光学式欠陥解析装置(ODT)を用いて検査した。この検査も、5μm以上の大きさの欠陥を認識する検査だけでなく、2μm以上の大きさの欠陥を認識する検査も行った。
なお、ODTは、その原理上、付着異物による欠陥(付着欠陥)を測定する。よって、AOIで欠陥と認識された個数と、ODTで欠陥と認識された個数との差が、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数となる。
さらに、走査型分析電子顕微鏡(SEM−EDX)を用いて検査した。このSEM−EDXを用いて、得られたガラス基板を検査することによって、内部欠陥の個数を誤差なく測定することができる。なお、SEM−EDXに対して、AOI及びODTを用いた検査によって内部欠陥と認識された個数は誤差を含む。したがって、AOI及びODTを用いた検査によって内部欠陥と認識された個数と、SEM−EDXを用いた検査によって内部欠陥と認識された個数との差分は、誤差である。すなわち、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識されたが、実際には、付着欠陥であったものとなる。
これらの結果を表1及び表2に示す。なお、検査レベルが2μmである場合を表1に示し、検査レベルが5μmである場合を表2に示す。なお、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数を内部欠陥数(AOI・ODT)(個)と示し、SEM−EDXを用いた検査によって内部欠陥と認識された個数を内部欠陥数(SEM)(個)と示す。また、内部欠陥数(SEM)と内部欠陥数(AOI・ODT)(個)との差分を、誤判定と示す。
表1からわかるように、検査レベル2μmの場合、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施して得られたガラス基板(良品及び不良品)は、その検査工程を施していない比較品と比較して、良品、不良品とも、誤判定が少ないことがわかる。
また、例えば、比較品1のような場合、研磨工程後に光学的な検査を行っても、誤判定により、溶融炉の改修が必要であると判断されうる。この判断に基づき溶融炉の改修が行われると、不必要な改修となってしまう。
これらのことから、ガラス素板の段階から存在する内部欠陥に関する情報を、研磨工程前という比較的早い段階で、精度高く得ることが有効であることがわかる。
また、検査レベルが5μmと、検査精度が高くない場合、表2からわかるように、比較品であっても、誤判定が多くはないが、検査レベルが2μmのように検査精度を高めた場合には、誤判定が多くなる。このことから、検査精度を高めても、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施して得られたガラス基板(良品及び不良品)は、誤判定が少なく、有効であることがわかる。
また、例えば、付着欠陥が5個より多い場合を不良品と判定する場合、比較品2は不良品となり、比較品1は良品と判断される。このように、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施して、内部欠陥量に応じて選定しておかないと、このような判定にも不具合が生じうる。
このことからも、ガラス素板の段階から存在する内部欠陥に関する情報を、研磨工程前という比較的早い段階で、精度高く得ることが有効であることがわかる。
また、良品、不良品、及び比較品をそれぞれ20枚用いて、別途、判定を行った。
検査レベルが2μmで、AOIによる欠陥の個数(内部欠陥と付着欠陥との合計)が、5個以下のものを、ガラス基板における良品とした。そして、ODTによる測定も行い、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数が、5個より多いものの枚数を調べた。そして、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数が、5個より多いと判定されたものの中で、SEM−EDXを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数が5個以下と判定されたものの枚数を調べた。すなわち、誤判定の枚数を調べた。
その結果を、表3に示した。まず、AOIによる欠陥の個数(内部欠陥と付着欠陥との合計)が、5個以下のものの枚数を、「良品判定(枚)」と示し、5個より多いものの枚数を、「不良判定1(枚数)」と示す。また、AOI及びODTを用いた検査によって、内部欠陥と認識された個数が、5個より多いと判定されたものの枚数を、「不良判定2(枚数)」と示す。また、誤判定の枚数を、「誤判定(枚)」と示す。
表3からわかるように、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施して得られたガラス基板は、ガラス素板として不良品と判定されていたとしても、ガラス基板の判定として、誤判定されなかった。これに対して、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施していない場合、誤判定されており、実際の内部異物量が5個以下であるにもかかわらず、光学的な検査では5個以上と、誤判定されたものが発生した。
また、検査感度を低下させると、付着欠陥を見逃すことになる。また、検査感度を高めて、例えば、検査レベルを2μmとすると誤判定が生じる。よって、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施すことが有効であることがわかる。
以上のことから、研磨工程前に、液浸による本実施形態に係る検査工程を施すと、すなわち、ガラス素板の段階で、異物欠陥量に応じてランク分け、例えば、ここでは、良品と不良品とに分けておけば、ガラス基板での判定精度が高まることがわかった。このことにより、溶融炉の改修タイミングをより好適に決定することができることがわかった。また、内部欠陥に関する情報を、研磨工程前の比較的早い段階で得ることができるので、不良品の発生を早期に発見することができる。さらに、内部欠陥に関する情報を、研磨工程前の、比較的早い段階で得ることができるので、最終検査で付着欠陥のみを測定すればよく、誤判定が少なくなる。