JP5221265B2 - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法に関し、特に、異物が混入しない高品質の磁気ディスク用ガラス基板の製造に寄与する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法に関する。
従来、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気ディスク用ガラス基板を製造するためのガラス素板は、ガラスの原料を溶解炉内に入れ、攪拌及び溶融を行い、溶融した状態のガラス(溶融ガラス)を成型することで形成されている。このようなガラス素板の形成に用いられる溶解炉には、高温耐熱性を有し、ガラス原料との反応性が低く異物混入及び組成変化を生じ難いという利点から、白金のような貴金属や白金−ロジウム系合金のような貴金属合金等が使用されている。
しかしながら、溶解炉に使用される白金は、ガラス溶融温度程度の高温になると揮発する場合がある。このように白金が揮発した状態で稼働を継続した場合、揮発した白金の一部がガラス成分に異物として混入する事態を引き起こす原因となっている(白金インクルージョン)。このため、従来は、溶解炉の操業を定期的に停止し、その改修作業を行っている。例えば、この改修作業は、溶解炉の熱効率を確保するために定期的に行われる溶解炉の改修作業に合わせて行われていた。なお、この改修作業は、溶解炉の状態に応じて2か月等の長い期間を必要とする場合もある。
従来、このような白金インクルージョンに代表されるガラス成分への異物の混入を低減するガラス溶融容器として、溶融容器を構成する材料の揮発を抑制し、ガラス成分への異物の混入を低減させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このガラス溶融容器においては、貴金属等からなる容器基材の外表面にセラミックからなる補強膜を付した溶融容器を、輻射熱透過部を有する支持部材により支持するものであり、特に、光学ガラス製造のために好適に利用されるものである。
特開平1−201033号公報
しかしながら、近年においては、HDDの磁気ヘッドの浮上量が極めて小さくされていることに伴い、磁気ディスク用ガラス基板には、他のガラス製造品と比べて、極めて厳しい表面平滑性が要求されている。具体的には、nm(ナノメートル)単位の表面平滑性が要求されることから、磁気ディスク用ガラス基板には、同程度での異物管理が要求されている。このため、溶解炉の熱効率を確保するために定期的に行われる溶解炉の改修作業に合わせて溶解炉の改修作業を行う場合、その改修作業のタイミングによっては磁気ディスク用ガラス基板に要求される表面平滑性を満たさない磁気ディスク用ガラス基板が製造されてしまい、メディア歩留まり低下(ヘッド浮上特性の阻害が原因)やヘッドクラッシュ等の不具合を発生させてしまうという問題がある。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みて為されたものであり、メディア歩留まり低下(ヘッド浮上特性の阻害が原因)やヘッドクラッシュ等の不具合の発生率の低い磁気ディスク用ガラス基板を製造することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らが磁気ディスク用ガラス基板への異物の混入具合を調査したところ、これらの製造するためのガラス素板を製造していく中で、突然、磁気ディスク用ガラス基板中に混入される異物の数量及び大きさが増加し、この異物が溶解炉の構成材料であることが判明した。そこで、本発明者らは、磁気ディスク用ガラス基板に混入される溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係に基づいて溶解炉の改修タイミングを決定する必要があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、前記異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を管理した前記溶解炉を用いた磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記溶解炉から供給された溶融ガラスから板状ガラスを製造する工程と、前記板状ガラスを透明なガラス基板に加工する工程と、加工されたガラス基板中に混入される、前記異物の数量及び大きさを欠陥検査装置で検査する工程と、前欠陥検査装置の検査結果に対応する前記相関関係の前記不具合の発生率に応じて前記溶解炉の改修タイミングを決定する工程とを具備することを特徴とする。
この方法によれば、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、当該異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を求めておき、ガラス基板に混入される異物の数量及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定することから、不具合の発生率が増加する前に当該溶解炉の改修作業を行うことができるので、不具合の発生率が低いガラス基板を製造することが可能となる。
上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記溶解炉における前記板状ガラスの製造量と、前記異物の数量及び大きさとの相関関係を管理し、前記板状ガラスの製造量に対応する前記相関関係の前記異物の数量及び大きさに応じて前記異物の検査条件を変化させることが好ましい。この場合には、板状ガラスの製造量に対応する上記相関関係の異物の数量及び大きさに応じて、当該異物の検査条件を変化させることから、溶解炉の状態に見合った適切な改修タイミングを決定することが可能となる。
例えば、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記板状ガラスの製造量が所定の閾値よりも少ない場合に前記異物の検査回数を低減させる一方、前記板状ガラスの製造量が所定の閾値よりも多い場合に前記異物の検査回数を増加させる。この場合には、板状ガラスの製造量と所定の閾値との関係で異物の検査回数を増減できるので、板状ガラスの製造量に応じて適切な溶解炉の改修タイミングを決定することが可能となる。
また、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、前記異物は、白金(Pt)を含む溶解炉の構成材料を含む。この場合には、白金で構成される溶解炉、或いは、内壁面に白金を付着させた溶解炉における適切な改修タイミングを決定し、当該溶解炉を用いて製造されたガラス基板における不具合の発生率を低減することが可能となる。
さらに、上記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、前記溶解炉から供給された溶融ガラスをプレスすることで前記板状ガラスを製造する場合に適している。溶融ガラスをプレスすることで板状ガラスを製造する場合には、一般にシート状態に成型されているシートガラスと比べて表面平滑性の面で劣る。しかしながら、本磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のように溶解炉の改修タイミングを決定する場合には、極めて高い精度でガラス基板の表面平滑性を管理することができるので、シートガラスと同等の表面平滑性を確保することが可能となる。
本発明の溶解炉の管理方法は、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、前記異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係に基づいて前記溶解炉の改修を行う溶解炉の管理方法であって、前記溶解炉から供給された溶融ガラスをプレスすることで板状ガラスを製造する工程と、前記板状ガラスを透明なガラス基板に加工する工程と、加工されたガラス基板中に混入される、前記異物の数量及び大きさを欠陥検査装置で検査する工程と、前記欠陥検査装置の検査結果に対応する前記相関関係の前記不具合の発生率に応じて前記溶解炉の改修タイミングを決定する工程とを具備することを特徴とする。
この方法によれば、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、当該異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を求めておき、ガラス基板に混入される異物の数量及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定することから、不具合の発生率が増加する前に当該溶解炉の改修作業を行うことができるので、この溶解炉を用いて製造されるガラス基板の不具合を低減することが可能となる。
上記溶解炉の管理方法においては、前記溶解炉における前記板状ガラスの製造量と、前記異物の数量及び大きさとの相関関係を管理し、前記板状ガラスの製造量に対応する前記相関関係の前記異物の数量及び大きさに応じて前記異物の検査条件を変化させることが好ましい。この場合には、板状ガラスの製造量に対応する上記相関関係の異物の数量及び大きさに応じて、当該異物の検査条件を変化させることから、溶解炉の状態に見合った適切な改修タイミングを決定することが可能となる。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び溶解炉の管理方法によれば、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、当該異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を求めておき、ガラス基板に混入される異物の数量及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定することから、不具合の発生率が増加する前に当該溶解炉の改修作業を行うことができるので、メディア歩留まり低下(ヘッド浮上特性の阻害が原因)やヘッドクラッシュ等の不具合の発生率の低い磁気ディスク用ガラス基板を製造することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明を磁気ディスク用ガラス基板(以下、適宜「ガラス基板」という)の製造方法に具現化して説明するが、このガラス基板を製造する際に用いられる溶解炉の管理方法としても成立するものである。また、以下においては、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法において製造されるガラス基板が、ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ディスクに適用される場合について示すものとする。
本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、予め、ガラス基板に混入される溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合におけるヘッドクラッシュ等の不具合の発生率との相関関係を求めておく。そして、実際に製造されたガラス基板に混入された、溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定する。そして、このような改修タイミングで改修される溶解炉から供給される溶融ガラスを用いてガラス基板を製造するものである。
例えば、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板に混入された溶解炉の構成材料である異物として、白金(Pt)などの個数及び大きさを検査し、その検査結果に基づいて溶解炉の改修タイミングを決定する。この場合において、白金の個数及び大きさの検査には、例えば、欠陥検査装置として機能する散乱系光学式欠陥解析装置(AOI: Automatic Optical Inspection) と干渉系光学式欠陥解析装置 (ODT: Optical Defect Tester) を用いる。AOIは、その原理上、ガラス基板表面の欠陥、更に基板中の異物の双方を検出することが可能であり、一方、ODTは、干渉縞を発生させた基板表面の欠陥のみを検出することが可能である。ガラス基板中の異物は、AOIで検出され、ODTで検出されないことから、AOIとODTの測定結果を重ね合わせ、AOIで検出し、ODTで検出されない欠陥の個数をカウントすることで、ガラス基板中の異物の個数を検出することができる(図5参照)。このAOIとODTを用いた場合には、高倍率顕微鏡(x1000)でも検出/判定が困難なガラス基板における異物も容易に検出でき、例えば、ガラス基板に混入された5μm以下の大きさの白金の個数を検出することができる。
ガラス基板の製造工程については、その概略を述べれば、(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程、(2)端部形状工程(円穴2を形成するコアリング工程と、端部(外周端部及び内周端部)に面取面を形成するチャンファリング工程)、(3)端部研磨工程(外周端部及び内周端部)、(4)第2ラッピング工程、(5)主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程)、(6)化学強化工程を備えている。なお、端部研磨工程と第2ラッピング工程とは前後する場合もある。
上述した欠陥解析装置による検査は、例えば、(5)主表面研磨工程を経てガラス基板を透明に研磨した後に行われる。なお、ガラス基板を透明に研磨した後であれば、いかなるタイミングで行ってもよい。これは、ガラス基板を透明に研磨する前の状態においては、透明度が低く、欠陥解析装置による欠陥解析に適していないためである。このようにガラス基板を透明に研磨した後に欠陥解析装置で検査することにより所望の表面解析精度を得ることが可能となる。
ガラス基板に混入される白金の個数及び大きさと、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係を求める際には、例えば、ガラス素板を製造すると共に、このガラス素板から製造されたガラス基板に混入された白金の個数及び大きさを欠陥解析装置で検出し、その統計を取る。また、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合におけるヘッドクラッシュ等の不具合の発生率の統計を取る。そして、この統計結果から、ガラス基板に混入される白金の個数及び大きさと、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合におけるヘッドクラッシュ等の不具合の発生率との相関関係を求める。なお、この相関関係を求める際に利用される欠陥検査装置は、上述したガラス基板に混入した異物を検査する欠陥解析装置と同一である。
これにより、例えば、図1に示すようなガラス基板に混入される白金の個数と、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係が得られる。なお、図1においては、10cm当たりに混入される5μm以下の白金の個数と、不具合の発生率との相関関係を示している。図1に示す相関関係においては、10cm当たりの白金の個数が1.25個を上回る辺りから急激に不具合の発生率が上昇していることが分かる。これは、白金の含有個数が多いほど、前記主表面のラッピング或いは研磨工程によりそれらの異物が表面に露出する確率が高くなるためであると考えられる。なお、図1に示す相関関係は、ある溶解炉における相関関係を示したものである。このような相関関係は、それぞれの溶解炉におけるガラス素板の製造量や製造頻度等に応じて変化するものである。
このような溶解炉に特有のガラス基板に混入される特定の大きさの白金の個数と、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係を予め求めておき、実際に製造されたガラス基板に混入された白金の個数及び大きさを検査する。そして、例えば、図1に示すような相関関係が得られている場合には、10cm当たりに検出される5μm以下の白金の個数が1.25個に到達するタイミングを、溶解炉の改修タイミングに決定する。そして、このように決定した溶解炉の改修タイミングによって溶解炉の稼働を停止し、当該溶解炉の改修作業を行う。
このように本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板に混入される白金の個数及び大きさと、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係を求めておき、実際に製造されたガラス基板に混入された白金の個数及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定する。これにより、不具合の発生率が増加する前に当該溶解炉の改修作業を行うことができるので、不具合の発生率が低いガラス基板を製造することが可能となる。
特に、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法は、溶解炉から供給された溶融ガラスをプレスすることでガラス素板を製造する場合に適している。このように溶融ガラスをプレスすることでガラス素板を製造する場合には、一般にシート状態に成型されているシートガラスと比べて表面平滑性の面で劣る。しかしながら、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法のように溶解炉の改修タイミングを決定する場合には、極めて高い精度でガラス基板の表面平滑性を管理することができるので、シートガラスと同等の表面平滑性を確保することが可能となる。
また、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、予め、ガラス基板を製造するための板状ガラスとしてのガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさとの相関関係を求めておく。そして、実際に製造されたガラス素板の製造量に対応する上記相関関係の異物の数量及び大きさに応じて、当該異物の検査条件を変化させる。なお、変化させる異物の検査条件には、例えば、検査精度や検査回数などが含まれる。この検査条件については、溶解炉を適切なタイミングで改修することを目的として、いかなる条件であってもよい。
ガラス基板を製造するためのガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される異物(ここでは、白金)の数量及び大きさとの相関関係を求める際には、例えば、ガラス素板を製造すると共に、このガラス素板から製造されたガラス基板に混入された異物の数量及び大きさを欠陥解析装置で検出し、その統計結果を取る。そして、この統計結果と、その時のガラス素板の製造量とから、ガラス基板を製造するためのガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される異物の数量及び大きさとの相関関係を求める。なお、この相関関係を求める際に利用される欠陥解析装置も、上述したガラス基板に混入した異物を検査する欠陥解析装置と同一である。
これにより、例えば、図2に示すようなガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される異物の数量との相関関係が得られる。なお、図2においては、ガラス素板の製造量と、10cm当たりに混入される5μm以下の白金の個数との相関関係を示している。図2に示す相関関係においては、ガラス素板の製造量が150M枚を上回る辺りから急激に10cm当たりの白金の個数が上昇していることが分かる。なお、図2に示す相関関係は、ある溶解炉における相関関係を示したものである。このような相関関係は、それぞれの溶解炉における温度環境等に応じて変化するものである。
このような溶解炉に特有のガラス素板の製造量と、ガラス素板に混入される白金の個数及び大きさとの相関関係を予め求めておき、実際に製造されたガラス素板の製造量に基づいて、ガラス基板に混入された白金の検査条件を変化させる。例えば、図2に示すような相関関係が得られている場合、ガラス素板の製造量が比較的少ない場合(例えば、50M枚程度)には、白金が混入する可能性が低いので、検査回数を少なくすることが考えられる。一方、ガラス素板の製造量が、白金の混入する可能性が高くなる150M枚程度の場合には、白金が混入する可能性が高いので、検査回数を多くすることが考えられる。この場合には、ガラス素板の製造量に応じて白金の検査回数を増減できるので、ガラス素板の製造量に応じて適切な溶解炉の改修タイミングを決定することが可能となる。
このようにガラス素板の製造量と、ガラス素板に混入される白金の個数及び大きさとの相関関係を求めておき、実際に製造されたガラス素板の製造量に対応する上記相関関係の白金の個数及び大きさに応じてガラス基板の検査条件を変化させることにより、溶解炉の状態に見合った適切なタイミングで改修作業を行うことが可能となる。この結果、改修する必要がない状態において改修作業が行われたり、改修する必要がある状態において改修作業が行われなかったりする事態を防止することが可能となる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。本実施例においては、まず、ガラス基板に混入される溶解炉の構成材料である白金の個数及び大きさと、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合におけるヘッドクラッシュ等の不具合の発生率との相関関係、並びに、ガラス基板を製造するためのガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される溶解炉の構成材料である白金の個数及び大きさとの相関関係を求めるためにガラス基板及び磁気ディスクを製造し、これらの統計を取った。特に、本実施例においては、ガラス基板の10cm当たりに混入される5μm以下の白金の個数に対する不具合の発生率と、ガラス素板の製造量に対するガラス基板の10cm当たりに混入される5μm以下の白金の個数の統計を取った。
これらの統計を取るためのガラス基板及び磁気ディスクについては、上述した製造工程、すなわち、(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程、(2)端部形状工程(円穴2を形成するコアリング工程と、端部(外周端部及び内周端部)に面取面を形成するチャンファリング工程)、(3)端部研磨工程(外周端部及び内周端部)、(4)第2ラッピング工程、(5)主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程)、(6)化学強化工程を経てガラス基板を製造し、更に(7)磁気ディスク製造工程を経て磁気ディスクを製造した。なお、本実施例においては、主表面研磨工程の後に、上述した欠陥解析装置による検査工程を行った。
まず、形状加工工程及び第1ラッピング工程において、内壁部に白金を付着させた溶解炉を用いてガラス原料を溶解させ、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状のガラス素板を得た。次に、このガラス素板の両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。なお、このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。
端部形状工程(コアリング、チャンファリング)においては、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、直径29mmのガラス基板を切り出した。そして、円筒状のコアドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円穴を形成し、円環状のガラス基板とした(コアリング)。そして、外周端部3及び内周端部4をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(チャンファリング)。
端部研磨工程においては、面取り加工が施されたガラス基板の端部に残留しているダメージ(潜傷)を取り除いた。この端部研磨工程においては、内周端部の研磨を行った後、外周端部の研磨を行った。
第2ラッピング工程においては、ガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である端部研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
主表面研磨工程においては、第1及び第2研磨工程を施した。第1研磨工程は、上述したラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質の研磨パッドを用いて、主表面の研磨を行った。第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質の研磨パッドを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。
検査工程においては、主表面研磨工程を経て透明にされたガラス基板の検査を、欠陥解析装置(AOI: 日立ハイテク製NS7700R、ODT日立ハイテク製NS1510)を用いて行った。ここでは、ガラス基板の10cm当たりに混入された5μm以下の白金の個数を欠陥解析装置で検査した。なお、ガラス基板の検査を行う際、同時に溶解炉におけるガラス素板の製造量を取得した。
化学強化工程においては、上述したラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を380°Cに加熱し、その中に洗浄済みのガラス基板を約4時間浸漬することによって行った。
このように、第1ラッピング工程、端部形状工程、端部研磨工程、第2ラッピング工程、主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程)、化学強化工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用のガラス基板を得た。
磁気ディスク製造工程においては、上述した工程を経て製造されたガラス基板の両面に、枚葉式のスパッタリング装置を用いて、シード層、Cr下地層、CrMo下地層、CoPtCrTa磁性層、水素化カーボン保護層を成膜し、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル潤滑層を形成して磁気ディスクを製造した。
このように製造した磁気ディスクをHDDに組み込み、その不具合の発生率の統計を取った。これにより、図1に示すようなガラス基板に混入される白金の個数と、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係を得た。この場合、図1に示すように、10cm当たりの白金の個数が1.25個を上回る辺りから急激に不具合の発生率が上昇していることが分かった。
また、検査工程におけるガラス基板の検査において、図2に示すようなガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される5μm以下の白金の個数との相関関係を得た。この場合、図2に示すように、ガラス素板の製造量が150M枚を上回る辺りから急激にガラス基板に混入される白金の個数が上昇していることが分かった。
これらの相関関係を求めた上で、実際に製造したガラス基板に混入された白金の個数を欠陥解析装置で検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定し、当該溶解炉の改修作業を行った。なお、ガラス基板の製造工程については、上述した相関関係を得る際の製造工程と同様である。
ここでは、図1に示すガラス基板に混入される白金の個数と、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係が得られているため、10cm当たりに検出される5μm以下の白金の個数が1.25個に到達するタイミングを、溶解炉の改修タイミングに決定した。そして、このように決定した溶解炉の改修タイミングによって溶解炉の稼働を停止し、当該溶解炉の改修作業を行った。
なお、この場合、欠陥解析装置による検査工程においては、図2に示すガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される5μm以下の白金の個数との相関関係が得られているため、製造されたガラス素板の製造量に基づいて、ガラス基板に混入された白金の検査条件を変化させた。具体的には、ガラス素板の製造量が50M枚に到達するまでは、欠陥解析装置による検査を行わず、50M枚を上回り150M枚に到達するまでは、ガラス基板2枚につき1枚の割合で欠陥解析装置による検査を行い、150M枚を上回った場合には全てのガラス基板について欠陥解析装置による検査を行った。
[比較例]
ここで、上述した実施例に従って溶解炉の改修作業を行う場合と、定期的に行われる溶解炉の改修作業に合わせて溶解炉の改修作業を行う場合(比較例)との効果の差異について説明する。図3は、実施例に従って溶解炉の改修作業を行う場合におけるガラス素板と不具合の発生率との関係を示す図である。図4は、定期的に行われる溶解炉の改修作業に合わせて溶解炉の改修作業を行う場合におけるガラス素板と不具合の発生率との関係を示す図である。
図3に示すように、実施例に従って溶解炉の改修作業を行った場合には、不具合の発生率が0.05%程度に到達すると溶解炉の改修作業が行われた。一方、図4に示すように、比較例に従って溶解炉の改修作業を行った場合には、不具合の発生率が0.5%程度に到達するまで溶解炉の改修作業が行われなかった。このことから、実施例に従って溶解炉の改修作業を行った場合には、比較例と比べて、不具合の発生率が増加する前に溶解炉の改修作業を行うことができるので、不具合の発生率が低いガラス基板を製造することができることが分かる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。また、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、溶解炉の構成材料である異物として、白金(Pt)を検査する場合について説明しているが、この異物となり得る溶解炉の構成材料については、白金に限定されるものではない。本実施の形態に係るガラス基板の製造方法は、それ以外の溶解炉の構成材料にも適用可能である。例えば、白金以外の貴金属や、白金−ロジウム系合金のような貴金属合金等にも適用可能である。
本発明は、ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、当該異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を求めておき、ガラス基板に混入される異物の数量及び大きさを検査し、その検査結果に対応する上記相関関係の不具合の発生率に応じて溶解炉の改修タイミングを決定することで、不具合の発生率が低いガラス基板の製造を可能とするものであり、産業上の利用可能性を有する。
本発明の一実施の形態に係るガラス基板の製造方法で製造されたガラス基板に混入される白金の個数と、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合における不具合の発生率との相関関係を示す図である。 上記実施の形態に係るガラス基板の製造方法におけるガラス素板の製造量と、ガラス基板に混入される異物の数量との相関関係を示す図である。 上記実施の形態に係るガラス基板の製造方法に従って溶解炉の改修作業を行った場合におけるガラス素板と不具合の発生率との関係を示す図である。 従来の方法に従って溶解炉の改修作業を行った場合におけるガラス素板と不具合の発生率との関係を示す図である。 AOI及びODTを用いてガラス基板中の異物の個数を検出する際の処理を説明するための図である。

Claims (7)

  1. ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、前記異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係を管理した前記溶解炉を用いた磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
    前記溶解炉から供給された溶融ガラスから板状ガラスを製造する工程と、前記板状ガラスを透明なガラス基板に加工する工程と、加工されたガラス基板中に混入される、前記異物の数量及び大きさを欠陥検査装置で検査する工程と、前記欠陥検査装置の検査結果に対応する前記相関関係の前記不具合の発生率に応じて前記溶解炉の改修タイミングを決定する工程とを具備することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記溶解炉における前記板状ガラスの製造量と、前記異物の数量及び大きさとの相関関係を管理し、前記板状ガラスの製造量に対応する前記相関関係の前記異物の数量及び大きさに応じて前記異物の検査条件を変化させることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記板状ガラスの製造量が所定の閾値よりも少ない場合に前記異物の検査回数を低減させる一方、前記板状ガラスの製造量が所定の閾値よりも多い場合に前記異物の検査回数を増加させることを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記異物は、白金(Pt)を含む溶解炉の構成材料を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記溶解炉から供給された溶融ガラスをプレスすることで前記板状ガラスを製造することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. ガラス基板に混入された、ガラス原料を溶解する溶解炉の構成材料である異物の数量及び大きさと、前記異物が混入したガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した際の不具合の発生率との相関関係に基づいて前記溶解炉の改修を行う溶解炉の管理方法であって、
    前記溶解炉から供給された溶融ガラスをプレスすることで板状ガラスを製造する工程と、前記板状ガラスを透明なガラス基板に加工する工程と、加工されたガラス基板中に混入される、前記異物の数量及び大きさを欠陥検査装置で検査する工程と、前記欠陥検査装置の検査結果に対応する前記相関関係の前記不具合の発生率に応じて前記溶解炉の改修タイミングを決定する工程とを具備することを特徴とする溶解炉の管理方法。
  7. 前記溶解炉における前記板状ガラスの製造量と、前記異物の数量及び大きさとの相関関係を管理し、前記板状ガラスの製造量に対応する前記相関関係の前記異物の数量及び大きさに応じて前記異物の検査条件を変化させることを特徴とする請求項6記載の溶解炉の管理方法。
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