以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1〜4は、本発明の実施形態に係る回転電機システムを備えるハイブリッド駆動システムの構成の概略を示す図であり、図1は全体構成の概略を示し、図2〜4は回転電機10の構成の概略を示す。本実施形態に係るハイブリッド駆動システムは、動力(機械的動力)を発生可能な原動機として設けられたエンジン(内燃機関)36と、エンジン36と駆動軸37(車輪38)との間に設けられ、変速比の変更が可能な変速機(機械式変速機)44と、エンジン36と変速機44との間に設けられ、動力(機械的動力)の発生及び発電が可能な回転電機10と、を備える。なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動システムについては、例えば車両を駆動するための動力出力システムとして用いることができる。
回転電機10は、図示しないステータケースに固定されたステータ(固定子)16と、ステータ16に対し相対回転可能な第1ロータ(第1回転子)28と、ロータ回転軸と直交する径方向においてステータ16及び第1ロータ28と所定の空隙を空けて対向し、ステータ16及び第1ロータ28に対し相対回転可能な第2ロータ(第2回転子)18と、を有する。図1〜4に示す例では、ステータ16は、第1ロータ28より径方向外側の位置に第1ロータ28と間隔を空けて配置されており、第2ロータ18は、径方向においてステータ16と第1ロータ28との間の位置に配置されている。つまり、第1ロータ28は第2ロータ18より径方向内側の位置で第2ロータ18と対向配置されており、ステータ16は第2ロータ18より径方向外側の位置で第2ロータ18と対向配置されている。第1ロータ28はエンジン36と機械的に連結されていることで、第1ロータ28にはエンジン36からの動力が伝達される。一方、第2ロータ18は変速機44を介して駆動軸37に機械的に連結されていることで、駆動軸37(車輪38)には第2ロータ18からの動力が変速機44で変速されてから伝達される。なお、以下の説明では、第1ロータ28を入力側ロータとし、第2ロータ18を出力側ロータとする。
ステータ16は、ステータコア(固定子鉄心)51と、ステータコア51にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のステータ巻線(固定子巻線)20と、を含む。ステータコア51には、径方向内側へ(出力側ロータ18へ向けて)突出した複数のティース51aがステータ周方向に沿って間隔をおいて配列されており、各ステータ巻線20がこれらのティース51aに巻回されていることで、磁極が構成される。複数相のステータ巻線20に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。図3,4に示す例では、3相のステータ巻線20が巻装された6つのティース51aあたり、1つの磁極が構成される。
入力側ロータ28は、ロータコア(回転子鉄心)52と、ロータコア52にその周方向に沿って配設された複数相(例えば3相)のロータ巻線(回転子巻線)30と、を含む。ロータコア52には、径方向外側へ(出力側ロータ18へ向けて)突出した複数のティース52aがロータ周方向に沿って間隔をおいて配列されており、各ロータ巻線30がこれらのティース52aに巻回されていることで、磁極が構成される。複数相のロータ巻線30に複数相(例えば3相)の交流電流が流れることで、ロータ巻線30は、ロータ周方向に回転する回転磁界を発生することができる。図3,4に示す例では、3相のロータ巻線30が巻装された3つのティース52aあたり、1つの磁極が構成される。
出力側ロータ18は、ロータ周方向に互いに間隔をおいて(等間隔で)配置された複数(図3,4に示す例では16個)の永久磁石33と、各々がロータ周方向に隣接する永久磁石33間に配置された複数(永久磁石33と同数、図3,4に示す例では16個)の軟磁性材53と、を含む。ロータ周方向に等間隔で分割配置された複数の軟磁性材53の各々は、入力側ロータ28(ティース52a)と所定の空隙を空けて対向する内周面(第1面)61と、ステータ16(ティース51a)と所定の空隙を空けて対向する外周面(第2面)62と、隣接する一方の永久磁石33の磁極面に面する(接触する)側面(第3面)63と、隣接する他方の永久磁石33の磁極面に面する(接触する)側面(第4面)64と、を有し、内周面61と外周面62間で磁束を通す。図3,4に示す例では、各永久磁石33の磁極面が径方向に対して傾斜して配置され、各軟磁性材53の側面63,64も径方向に対して傾斜して形成されている。そして、図3,4に示す例では、各軟磁性材53において、内周面61のロータ周方向幅が、ロータ周方向に3個離れたティース52a間の間隔に等しく、外周面62のロータ周方向幅が、ロータ周方向に6個離れたティース51a間の間隔に等しい。以下の説明において、複数の永久磁石33を区別する必要があるときは、以降33−1,33−2,33−3の符号を用いて説明する。そして、複数の軟磁性材53を区別する必要があるときは、以降53−1,53−2の符号を用いて説明し、軟磁性材53の内周面61、外周面62、側面63,64についても、以降61−1,61−2,62−1,62−2,63−1,63−2,64−1,64−2の符号を用いて説明する。
各軟磁性材53においては、側面63が面する永久磁石33の磁極面と側面64が面する永久磁石33の磁極面が互いに同じ極性であり、ロータ周方向に隣接する永久磁石33の同極同士が軟磁性材53を介して繋がっている。例えば軟磁性材53−1においては、側面63−1が接触する永久磁石33−1の磁極面がN極面であり、側面64−1が接触する永久磁石33−2の磁極面がN極面である。一方、永久磁石33−2を挟んで軟磁性材53−1とロータ周方向に隣接する軟磁性材53−2においては、側面63−2が面する永久磁石33−2の磁極面がS極面であり、側面64−2が接触する永久磁石33−3の磁極面がS極面である。そのため、ロータ周方向に隣接する軟磁性材53(例えば軟磁性材53−1,53−2)においては、側面63,64が面する永久磁石33の磁極面が互いに逆の極性であり、ロータ周方向において、側面63,64が永久磁石33のN極面に接触する軟磁性材53と、側面63,64が永久磁石33のS極面に接触する軟磁性材53が交互に配置される。また、ロータ周方向に隣接する軟磁性材53(例えば軟磁性材53−1,53−2)間には、永久磁石33の他に、磁気抵抗を高くするための空隙54が設けられている。空隙54に代えて非磁性材料を設けることも可能である。ただし、ロータ周方向に隣接する軟磁性材53(例えば軟磁性材53−1,53−2)同士がブリッジで繋がっていてもよい。
永久磁石33による界磁磁束の流れを図4に示す。図4の矢印に示すように、軟磁性材53−1においては、永久磁石33−1による界磁磁束が側面63−1から内周面61−1及び外周面62−1へ流れるとともに、永久磁石33−2による界磁磁束が側面64−1から内周面61−1及び外周面62−1へ流れる。入力側ロータ28に対しては、軟磁性材53−1の内周面61−1がN極面として機能し、界磁磁束が軟磁性材53−1の内周面61−1から入力側ロータ28(ティース52a)に作用する。ステータ16に対しては、軟磁性材53−1の外周面62−1がN極面として機能し、界磁磁束が軟磁性材53−1の外周面62−1からステータ16(ティース51a)に作用する。一方、軟磁性材53−2においては、永久磁石33−2による界磁磁束が内周面61−2及び外周面62−2から側面63−2へ流れるとともに、永久磁石33−3による界磁磁束が内周面61−2及び外周面62−2から側面63−3へ流れる。入力側ロータ28に対しては、軟磁性材53−2の内周面61−2がS極面として機能し、界磁磁束が入力側ロータ28(ティース52a)から軟磁性材53−2の内周面61−2に作用する。ステータ16に対しては、軟磁性材53−2の外周面62−2がS極面として機能し、界磁磁束がステータ16(ティース51a)から軟磁性材53−2の外周面62−2に作用する。このように、同一の軟磁性材53における内周面61と外周面62が互いに同じ極性の磁極面として機能する。そして、ロータ周方向において、N極面として機能する内周面61とS極面として機能する内周面61が交互に配置され、N極面として機能する外周面62とS極面として機能する外周面62が交互に配置される。なお、各軟磁性材53の内部には、内周面61と外周面62間、側面63,64と内周面61間、及び側面63,64と外周面62間で磁束をそれぞれ通しやすくするために、空隙及び非磁性材料が設けられていないことが好ましく、磁気抵抗の高い部分が設けられていないことが好ましい。
直流電源として設けられた充放電可能な蓄電装置42は、例えば二次電池により構成することができ、電気エネルギーを蓄える。蓄電装置42とステータ巻線20との間で電力変換を行う第1電力変換装置として設けられたインバータ40は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ステータ巻線20の各相に供給することが可能である。さらに、インバータ40は、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を直流に変換して、電気エネルギーを蓄電装置42に回収する方向の電力変換も可能である。このように、インバータ40は、蓄電装置42とステータ巻線20との間で双方向の電力変換を行うことが可能である。
スリップリング95は、入力側ロータ28と機械的に連結されており、さらに、ロータ巻線30の各相と電気的に接続されている。回転が固定されたブラシ96は、スリップリング95に押し付けられて電気的に接触する。スリップリング95は、ブラシ96に対し摺動しながら(ブラシ96との電気的接触を維持しながら)、入力側ロータ28とともに回転する。ブラシ96は、インバータ41と電気的に接続されている。蓄電装置42及びインバータ40のいずれかとロータ巻線30との間で電力変換を行う第2電力変換装置として設けられたインバータ41は、スイッチング素子と、スイッチング素子に対し逆並列接続されたダイオード(整流素子)とを備える公知の構成により実現可能であり、スイッチング素子のスイッチング動作により蓄電装置42からの直流電力を交流(例えば3相交流)に変換して、ブラシ96及びスリップリング95を介してロータ巻線30の各相に供給することが可能である。さらに、インバータ41は、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を直流に変換する方向の電力変換も可能である。その際には、ロータ巻線30の交流電力がスリップリング95及びブラシ96により取り出され、この取り出された交流電力がインバータ41で直流に変換される。インバータ41で直流に変換された電力は、インバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20の各相へ供給可能である。つまり、インバータ40は、インバータ41からの直流電力と蓄電装置42からの直流電力とのいずれか(少なくとも一方)を交流に変換してステータ巻線20の各相へ供給することが可能である。また、インバータ41で直流に変換された電力を蓄電装置42に回収することも可能である。このように、インバータ41は、蓄電装置42及びインバータ40のいずれかとロータ巻線30との間で双方向の電力変換を行うことが可能である。
電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング素子のスイッチング動作を制御してインバータ40での電力変換を制御することで、ステータ巻線20の各相に流れる交流電流を制御する。そして、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング素子のスイッチング動作を制御してインバータ41での電力変換を制御することで、ロータ巻線30の各相に流れる交流電流を制御する。さらに、電子制御ユニット50は、エンジン36の運転状態の制御、及び変速機44の変速比の制御も行う。
インバータ40のスイッチング動作により3相のステータ巻線20に3相の交流電流が流れることで、ステータ巻線20は、ステータ周方向に回転する回転磁界を発生する。そして、ステータ巻線20の交流電流により発生した回転磁界と、軟磁性材53の外周面62と側面63,64間を流れる永久磁石33による界磁磁束との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)により、ステータ16と出力側ロータ18間にトルクを作用させることができ、出力側ロータ18を回転駆動することができる。つまり、蓄電装置42からインバータ40を介してステータ巻線20に供給された電力を出力側ロータ18の動力(機械的動力)に変換することができ、ステータ16及び出力側ロータ18を同期電動機(PMモータ部)として機能させることができる。さらに、出力側ロータ18の動力をステータ巻線20の電力に変換してインバータ40を介して蓄電装置42に回収することも可能である。電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作により例えばステータ巻線20に流す交流電流の振幅や位相角を制御することで、ステータ16と出力側ロータ18間に作用するトルク(PMモータトルク)を制御することができる。
また、入力側ロータ28が出力側ロータ18に対し相対回転して入力側ロータ28と出力側ロータ18との間に回転差が生じるのに伴ってロータ巻線30に誘導起電力が発生し、この誘導起電力に起因してロータ巻線30に誘導電流(交流電流)が流れることで回転磁界が生じる。そして、ロータ巻線30の誘導電流により生じる回転磁界と、軟磁性材53の内周面61と側面63,64間を流れる永久磁石33による界磁磁束との電磁気相互作用により、入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクを作用させることができ、出力側ロータ18を回転駆動することができる。そのため、入力側ロータ28と出力側ロータ18間で動力(機械的動力)を伝達することができ、入力側ロータ28及び出力側ロータ18を誘導電磁カップリング部として機能させることができる。
ロータ巻線30の誘導電流により入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルク(電磁カップリングトルク)を発生させる際には、電子制御ユニット50は、ロータ巻線30に誘導電流が流れるのを許容するように、インバータ41のスイッチング動作を行う。その際には、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング動作によりロータ巻線30に流れる交流電流を制御することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18間に作用する電磁カップリングトルクを制御することができる。一方、電子制御ユニット50は、インバータ41のスイッチング素子をオフ状態に維持してスイッチング動作を停止させることで、ロータ巻線30に誘導電流が流れなくなり、入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクは作用しなくなる。
エンジン36が動力を発生している場合は、エンジン36の動力が入力側ロータ28に伝達され、入力側ロータ28がエンジン回転方向に回転駆動する。入力側ロータ28の回転速度が出力側ロータ18の回転速度より高くなると、ロータ巻線30に誘導起電力が発生する。電子制御ユニット50は、ロータ巻線30に誘導電流が流れるのを許容するように、インバータ41のスイッチング動作を行う。これによって、ロータ巻線30の誘導電流と永久磁石33による界磁磁束との電磁気相互作用により入力側ロータ28から出力側ロータ18にエンジン回転方向の電磁カップリングトルクが作用して出力側ロータ18がエンジン回転方向に回転駆動する。このように、入力側ロータ28に伝達されたエンジン36からの動力は、入力側ロータ28のロータ巻線30と出力側ロータ18の永久磁石33との電磁気結合によって、出力側ロータ18へ伝達される。出力側ロータ18に伝達された動力は、変速機44で変速されてから駆動軸37(車輪38)へ伝達されることで、車両の前進駆動等、負荷の正転駆動に用いられる。したがって、エンジン36の動力を用いて車輪38を正転方向に回転駆動することができ、車両を前進方向に駆動することができる。さらに、入力側ロータ28と出力側ロータ18との回転差を許容することができるため、車輪38の回転が停止してもエンジン36がストールすることはない。そのため、回転電機10を発進装置として機能させることができ、摩擦クラッチやトルクコンバータ等の発進装置を別に設ける必要がなくなる。
さらに、ロータ巻線30に発生した交流電力は、スリップリング95及びブラシ96を介して取り出される。取り出された交流電力はインバータ41で直流に変換される。そして、インバータ40のスイッチング動作により、インバータ41からの直流電力がインバータ40で交流に変換されてからステータ巻線20に供給されることで、ステータ巻線20に交流電流が流れ、ステータ16に回転磁界が形成される。このステータ16の回転磁界と出力側ロータ18の永久磁石33による界磁磁束との電磁気相互作用によっても、出力側ロータ18にエンジン回転方向のトルクを作用させることができる。これによって、出力側ロータ18のエンジン回転方向のトルクを増幅させるトルク増幅機能を実現することができる。また、インバータ41からの直流電力を蓄電装置42に回収することも可能である。
さらに、蓄電装置42からステータ巻線20へ電力供給するようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、エンジン36の動力を用いて車輪38を正転方向に回転駆動するとともに、ステータ巻線20への供給電力を用いて発生させた出力側ロータ18の動力により車輪38の正転方向の回転駆動をアシストすることができる。また、負荷の減速運転時には、電子制御ユニット50は、ステータ巻線20から蓄電装置42へ電力回収するようにインバータ40のスイッチング動作を制御することで、負荷の動力をステータ巻線20と永久磁石33との電磁気結合によってステータ巻線20の電力に変換して蓄電装置42に回収することができる。
また、エンジン36の動力を用いずに回転電機10の動力を用いて負荷を駆動する(車輪38を回転駆動する)EV(Electric Vehicle)走行を行う場合は、電子制御ユニット50は、インバータ40のスイッチング動作を制御することで、負荷の駆動制御を行う。例えば、電子制御ユニット50は、蓄電装置42からの直流電力を交流に変換してステータ巻線20へ供給するように、インバータ40のスイッチング動作を制御することで、ステータ巻線20への供給電力をステータ巻線20と永久磁石33との電磁気結合によって出力側ロータ18の動力に変換し、駆動軸37(車輪38)を回転駆動する。このように、エンジン36が動力を発生していなくても、ステータ巻線20への電力供給により車輪38を回転駆動することができる。
ここで、ステータ16及び出力側ロータ18において、軟磁性材53の外周面62のロータ周方向中央位置を通る磁石磁束の方向をd軸(磁束軸)とし、d軸と電気角で90°ずれた位置(外周面62のロータ周方向端部位置)をq軸(トルク軸)とする。そして、軟磁性材53の外周面62において、ロータ周方向中央位置を通るd軸磁束を最大にする(ロータ周方向端部位置を通るq軸磁束を最小にする)ためのステータ巻線20の電流をd軸電流とし、ロータ周方向端部位置を通るq軸磁束を最大にする(ロータ周方向中央位置を通るd軸磁束を最小にする)ためのステータ巻線20の電流をq軸電流とする。同様に、入力側ロータ28及び出力側ロータ18において、軟磁性材53の内周面61のロータ周方向中央位置を通る磁石磁束の方向をd軸とし、d軸と電気角で90°ずれた位置(内周面61のロータ周方向端部位置)をq軸とする。そして、軟磁性材53の内周面61において、ロータ周方向中央位置を通るd軸磁束を最大にする(ロータ周方向端部位置を通るq軸磁束を最小にする)ためのロータ巻線30の電流をd軸電流とし、ロータ周方向端部位置を通るq軸磁束を最大にする(ロータ周方向中央位置を通るd軸磁束を最小にする)ためのロータ巻線30の電流をq軸電流とする。
ロータ巻線30にd軸電流が流れた場合におけるd軸磁束の流れを図5に示す。図5の矢印に示すように、ロータ巻線30のd軸電流によるd軸磁束は、入力側ロータ28(ティース52a)から軟磁性材53−1の内周面61−1に作用し、軟磁性材53−1を内周面61−1から外周面62−1へ流れ、ステータ16(ティース51a)に作用する。さらに、ステータ16を流れるd軸磁束は、ティース51aから軟磁性材53−2の外周面62−2に作用し、軟磁性材53−2を外周面62−2から内周面61−2へ流れ、入力側ロータ28(ティース52a)に戻る。図4,5の矢印に示すように、ロータ巻線30のd軸電流によるd軸磁束が、入力側ロータ28にとっては永久磁石33による界磁磁束と逆方向に振る舞うとともに、ステータ16にとっては永久磁石33による界磁磁束と同方向に振る舞う。そのため、永久磁石33により入力側ロータ28に作用する界磁磁束を弱めるように、ロータ巻線30のd軸電流によりd軸磁束を発生させることで、永久磁石33によりステータ16に作用する界磁磁束を強めることができる。また、永久磁石33により入力側ロータ28に作用する界磁磁束を強めるように、ロータ巻線30のd軸電流によりd軸磁束を発生させることで、永久磁石33によりステータ16に作用する界磁磁束を弱めることもできる。このように、ロータ巻線30のd軸電流によるd軸磁束は、軟磁性材53の内周面61と外周面62間を流れてステータ16に作用することで、ステータ16を流れる磁束に影響を与える。
一方、ロータ巻線30にq軸電流が流れた場合におけるq軸磁束の流れを図6に示す。図6に示すように、ロータ巻線30のq軸電流によるq軸磁束は、入力側ロータ28(ティース52a)から軟磁性材53−1の内周面61−1に作用し、軟磁性材53−1を流れるが、軟磁性材53−1の外周面62−2からステータ16(ティース51a)には作用せず、軟磁性材53−1の内周面61−1から入力側ロータ28(ティース52a)に戻る。軟磁性材53−2におけるq軸磁束の流れも、軟磁性材53−1と同様である。したがって、ロータ巻線30のq軸電流によるq軸磁束は、ステータ16を流れる磁束には影響を与えない。
また、ステータ巻線20にd軸電流が流れた場合におけるd軸磁束の流れを図7に示す。図7の矢印に示すように、ステータ巻線20のd軸電流によるd軸磁束は、ステータ16(ティース51a)から軟磁性材53−1の外周面62−1に作用し、軟磁性材53−1を外周面62−1から内周面61−1へ流れ、入力側ロータ28(ティース52a)に作用する。さらに、入力側ロータ28を流れるd軸磁束は、ティース52aから軟磁性材53−2の内周面61−2に作用し、軟磁性材53−2を内周面61−2から外周面62−2へ流れ、ステータ16(ティース51a)に戻る。図4,7の矢印に示すように、ステータ巻線20のd軸電流によるd軸磁束が、ステータ16にとっては永久磁石33による界磁磁束と逆方向に振る舞うとともに、入力側ロータ28にとっては永久磁石33による界磁磁束と同方向に振る舞う。そのため、永久磁石33によりステータ16に作用する界磁磁束を弱めるように、ステータ巻線20のd軸電流によりd軸磁束を発生させることで、永久磁石33により入力側ロータ28に作用する界磁磁束を強めることができる。また、永久磁石33によりステータ16に作用する界磁磁束を強めるように、ステータ巻線20のd軸電流によりd軸磁束を発生させることで、永久磁石33により入力側ロータ28に作用する界磁磁束を弱めることもできる。このように、ステータ巻線20のd軸電流によるd軸磁束は、軟磁性材53の外周面62と内周面61間を流れて入力側ロータ28に作用することで、入力側ロータ28を流れる磁束に影響を与える。
一方、ステータ巻線20にq軸電流が流れた場合におけるq軸磁束の流れを図8に示す。図8に示すように、ステータ巻線20のq軸電流によるq軸磁束は、ステータ16(ティース51a)から軟磁性材53−1の外周面62−1に作用し、軟磁性材53−1を流れるが、軟磁性材53−1の内周面61−1から入力側ロータ28(ティース52a)には作用せず、軟磁性材53−1の外周面62−1からステータ16(ティース51a)に戻る。軟磁性材53−2におけるq軸磁束の流れも、軟磁性材53−1と同様である。したがって、ステータ巻線20のq軸電流によるq軸磁束は、入力側ロータ28を流れる磁束には影響を与えない。
したがって、ロータ巻線30に交流電流を流して入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクを作用させるとともに、ステータ巻線20に交流電流を流してステータ16と出力側ロータ18間にトルクを作用させる場合は、ロータ巻線30のd軸電流成分によるd軸磁束成分が、入力側ロータ28に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱めるとともに、ステータ16に作用する永久磁石33による界磁磁束を強めることができる。つまり、ロータ巻線30のd軸電流成分によるd軸磁束成分を、自身の弱め界磁磁束とするとともに、ステータ巻線20の強め界磁磁束とすることができる。この強め界磁磁束がステータ巻線20のq軸電流成分と相互作用することで、ステータ16と出力側ロータ18間に磁石トルクやリラクタンストルクとは別に追加のトルクが発生し、トルク増幅効果が得られる。ロータ巻線30及びステータ巻線20の両方に交流電流を流した場合におけるステータ16と出力側ロータ18間のトルクを、ロータ巻線30に交流電流を流さずにステータ巻線20だけに交流電流を流した場合のトルクと比較して図9に示す。図9に示すように、ステータ巻線20だけでなくロータ巻線30にも交流電流を流すことでトルク増幅効果が得られることがわかる。その際には、従来の強め界磁制御と異なり、ロータ巻線30自身の弱め界磁を利用しているため、ロータ巻線30の逆起電圧を抑制しつつ、ステータ16と出力側ロータ18間のトルクを増幅させることができる。
同様に、ロータ巻線30に交流電流を流して入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクを作用させるとともに、ステータ巻線20に交流電流を流してステータ16と出力側ロータ18間にトルクを作用させる場合は、ステータ巻線20のd軸電流成分によるd軸磁束成分が、ステータ16に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱めるとともに、入力側ロータ28に作用する永久磁石33による界磁磁束を強めることができる。つまり、ステータ巻線20のd軸電流成分によるd軸磁束成分を、自身の弱め界磁磁束とするとともに、ロータ巻線30の強め界磁磁束とすることができる。この強め界磁磁束がロータ巻線30のq軸電流成分と相互作用することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18間にも追加のトルクが発生し、トルク増幅効果が得られる。ロータ巻線30及びステータ巻線20の両方に交流電流を流した場合における入力側ロータ28と出力側ロータ18間のトルクを、ステータ巻線20に交流電流を流さずにロータ巻線30だけに交流電流を流した場合のトルクと比較して図10に示す。図10に示すように、ロータ巻線30だけでなくステータ巻線20にも交流電流を流すことでトルク増幅効果が得られることがわかる。その際には、従来の強め界磁制御と異なり、ステータ巻線20自身の弱め界磁を利用しているため、ステータ巻線20の逆起電圧を抑制しつつ、入力側ロータ28と出力側ロータ18間のトルクを増幅させることができる。したがって、ロータ巻線30及びステータ巻線20の逆起電圧を抑制しつつ、入力側ロータ28と出力側ロータ18間のトルクと、ステータ16と出力側ロータ18間のトルクが相互に強め合う相乗効果が得られる。その結果、永久磁石33の量を低減することができる。
また、ロータ巻線30に交流電流を流して入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクを作用させるとともに、ステータ巻線20に交流電流を流してステータ16と出力側ロータ18間にトルクを作用させる場合は、ロータ巻線30のd軸電流成分によるd軸磁束成分が、入力側ロータ28に作用する永久磁石33による界磁磁束を強めるとともに、ステータ16に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱めることもできる。これによって、ステータ巻線20の逆起電圧を抑制しつつ、入力側ロータ28と出力側ロータ18間のトルクを増幅させることができる。同様に、ステータ巻線20のd軸電流成分によるd軸磁束成分が、ステータ16に作用する永久磁石33による界磁磁束を強めるとともに、入力側ロータ28に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱めることもできる。これによって、ロータ巻線30の逆起電圧を抑制しつつ、ステータ16と出力側ロータ18間のトルクを増幅させることができる。
なお、永久磁石33の量を低減した場合は、永久磁石33による界磁磁束も低減する。その場合は、ロータ巻線30の高電流時の弱め界磁磁束(d軸磁束)は、永久磁石33による界磁磁束よりも強くなり、ロータ巻線30には自身の弱め界磁磁束による逆起電圧が発生する。同様に、ステータ巻線20の高電流時の弱め界磁磁束(d軸磁束)は、永久磁石33による界磁磁束よりも強くなり、ステータ巻線20には自身の弱め界磁磁束による逆起電圧が発生する。さらに、本構成では、ロータ巻線30の弱め界磁磁束がステータ巻線20にとっては強め界磁磁束として機能し、ステータ巻線20の弱め界磁磁束がロータ巻線30にとっては強め界磁磁束として機能する。そこで、ロータ巻線30のd軸電流成分によるd軸磁束成分が入力側ロータ28に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱めるとともに、ステータ巻線20のd軸電流成分によるd軸磁束成分がステータ16に作用する永久磁石33による界磁磁束を弱める、つまりロータ巻線30とステータ巻線20が弱め界磁磁束を同時に発生すると、図11に示すように、ロータ巻線30の弱め界磁磁束(d軸磁束)とステータ巻線20の弱め界磁磁束(d軸磁束)が互いに打ち消し合うように作用する。したがって、ロータ巻線30及びステータ巻線20に発生する逆起電圧を減少させることができる。例えば、ロータ巻線30の弱め界磁磁束(d軸磁束)がロータ巻線30に鎖交する永久磁石33の界磁磁束とステータ巻線20の弱め界磁磁束(d軸磁束)の合計に等しくなる(あるいはほぼ等しくなる)ように、ロータ巻線30の交流電流(d軸電流)及びステータ巻線20の交流電流(d軸電流)を制御することで、ロータ巻線30に発生する逆起電圧を最小化することができる。また、ステータ巻線20の弱め界磁磁束(d軸磁束)がステータ巻線20に鎖交する永久磁石33の界磁磁束とロータ巻線30の弱め界磁磁束(d軸磁束)の合計に等しくなる(あるいはほぼ等しくなる)ように、ロータ巻線30の交流電流(d軸電流)及びステータ巻線20の交流電流(d軸電流)を制御することで、ステータ巻線20に発生する逆起電圧を最小化することができる。
ステータ巻線20に流れる交流電流及びロータ巻線30に流れる交流電流を制御するための電子制御ユニット50の機能ブロック図の一例を図12に示す。カップリングトルク指令値演算部135は、例えばアクセル開度(車輪38の要求駆動力)と車速(車輪38の回転速度)とに基づいて、入力側ロータ28と出力側ロータ18間に作用する電磁カップリングトルクの指令値Tcoup_refを演算する。MGトルク指令値演算部155は、例えばアクセル開度A(車輪38の要求駆動力)と、カップリングトルク指令値演算部135で演算された電磁カップリングトルクの指令値Tcoup_refとに基づいて、ステータ16と出力側ロータ18間に作用するMGトルクの指令値Tmg_refを演算する。界磁磁束補正値演算部154は、例えば入力側ロータ28の回転速度ωinと出力側ロータ18の回転速度ωoutとに基づいて、永久磁石33による界磁磁束の補正値ΔΦcoup_refを演算する。
d軸電流指令値演算部136は、入力側ロータ28と出力側ロータ18の回転速度差ωin−ωoutと、カップリングトルク指令値演算部135で演算された電磁カップリングトルクの指令値Tcoup_refとに基づいて、ロータ巻線30のd軸電流の指令値Idcoup_tempを演算する。q軸電流指令値演算部137は、カップリングトルク指令値演算部135で演算された電磁カップリングトルクの指令値Tcoup_refに基づいて、ロータ巻線30のq軸電流の指令値Iqcoup_tempを演算する。d軸電流指令値補正部138は、界磁磁束補正値演算部154で演算された界磁磁束の補正値ΔΦcoup_refに基づいて、ロータ巻線30のd軸電流の指令値Idcoup_tempを補正し、補正後のd軸電流の指令値Idcoup_refを出力する。q軸電流指令値補正部139は、d軸電流指令値補正部138で補正されたd軸電流の指令値Idcoup_refに基づいて、ロータ巻線30のq軸電流の指令値Iqcoup_tempを補正し、補正後のq軸電流の指令値Iqcoup_refを出力する。
d軸電流指令値演算部156は、出力側ロータ18の回転速度ωoutと、MGトルク指令値演算部155で演算されたMGトルクの指令値Tmg_refとに基づいて、ステータ巻線20のd軸電流の指令値Idmg_tempを演算する。q軸電流指令値演算部157は、MGトルク指令値演算部155で演算されたMGトルクの指令値Tmg_refに基づいて、ステータ巻線20のq軸電流の指令値Iqmg_tempを演算する。d軸電流指令値補正部158は、界磁磁束補正値演算部154で演算された界磁磁束の補正値ΔΦcoup_refに基づいて、ステータ巻線20のd軸電流の指令値Idmg_tempを補正し、補正後のd軸電流の指令値Idmg_refを出力する。q軸電流指令値補正部159は、d軸電流指令値補正部158で補正されたd軸電流の指令値Idmg_refに基づいて、ステータ巻線20のq軸電流の指令値Iqmg_tempを補正し、補正後のq軸電流の指令値Iqmg_refを出力する。
ロータ巻線電流制御部140は、ロータ巻線30のd軸電流Idcoup及びq軸電流Iqcoupがd軸電流指令値補正部138で補正されたd軸電流の指令値Idcoup_ref及びq軸電流指令値補正部139で補正されたq軸電流の指令値Iqcoup_refにそれぞれ一致するように、インバータ41のスイッチング動作(インバータ41での電力変換)を制御する。これによって、入力側ロータ28と出力側ロータ18間に作用する電磁カップリングトルクTcoupが電磁カップリングトルク指令値演算部135で演算された指令値Tcoup_refに一致するように制御される。ステータ巻線電流制御部160は、ステータ巻線20のd軸電流Idmg及びq軸電流Iqmgがd軸電流指令値補正部158で補正されたd軸電流の指令値Idmg_ref及びq軸電流指令値補正部159で補正されたq軸電流の指令値Iqmg_refにそれぞれ一致するように、インバータ40のスイッチング動作(インバータ40での電力変換)を制御する。これによって、ステータ16と出力側ロータ18間に作用するMGトルクTmgがMGトルク指令値演算部155で演算された指令値Tmg_refに一致するように制御される。さらに、永久磁石33による界磁磁束の補正量ΔΦcoupが界磁磁束補正値演算部154で演算された補正値ΔΦcoup_refに一致するように、ロータ巻線30のd軸電流Idcoup及びステータ巻線20のd軸電流Idmgの少なくとも一方が制御される。
以上説明した本実施形態によれば、ロータ巻線30及びステータ巻線20に交流電流が流れる場合に、ロータ巻線30の交流電流(d軸電流Idcoup)による磁束(d軸磁束)が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束及びステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束の一方を弱め且つ他方を強めるようにロータ巻線30に交流電流(d軸電流Idcoup)を流す制御と、ステータ巻線20の交流電流(d軸電流Idmg)による磁束(d軸磁束)が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束及びステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束の一方を弱め且つ他方を強めるようにステータ巻線20に交流電流(d軸電流Idmg)を流す制御の少なくとも一方を実行する。これによって、ロータ巻線30やステータ巻線20に発生する逆起電圧を抑制しつつ、入力側ロータ28と出力側ロータ18間の電磁カップリングトルクTcoupやステータ16と出力側ロータ18間のMGトルクTmgを増幅させることができ、永久磁石33の量を低減することができる。ロータ巻線30に発生する逆起電圧を抑制することで、動作可能な入力側ロータ28と出力側ロータ18の回転速度差ωin−ωoutの範囲をより高回転側に広げることができ、ステータ巻線20に発生する逆起電圧を抑制することで、動作可能な出力側ロータ18の回転速度ωoutの範囲をより高回転側に広げることができる。
例えば、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱め且つステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を強めるように、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupを制御することで、ロータ巻線30に発生する逆起電圧を抑制しつつ、ステータ16と出力側ロータ18間のMGトルクTmgを増幅させることができる。また、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束がステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱め且つ入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を強めるように、ステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することで、ステータ巻線20に発生する逆起電圧を抑制しつつ、入力側ロータ28と出力側ロータ18間の電磁カップリングトルクTcoupを増幅させることができる。なお、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を強め且つステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱めるように、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupを制御することによっても、ステータ巻線20に発生する逆起電圧を抑制しつつ、電磁カップリングトルクTcoupを増幅させることが可能である。また、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束がステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を強め且つ入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱めるように、ステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することによっても、ロータ巻線30に発生する逆起電圧を抑制しつつ、MGトルクTmgを増幅させることが可能である。
また、本実施形態では、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束とステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束が互いに反発し合う(逆方向になる)ように、ロータ巻線30のd軸電流Idcoup及びステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することで、ロータ巻線30及びステータ巻線20に発生する逆起電圧を減少させることができる。例えば、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱めるようにロータ巻線30のd軸電流Idcoupを制御するとともに、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束がステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を弱めるようにステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することで、ロータ巻線30のd軸磁束(弱め界磁磁束)とステータ巻線20のd軸磁束(弱め界磁磁束)が互いに反発し合う(逆方向になる)ように作用させることができる。なお、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束が入力側ロータ28に作用する永久磁石33の界磁磁束を強めるようにロータ巻線30のd軸電流Idcoupを制御するとともに、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束がステータ16に作用する永久磁石33の界磁磁束を強めるようにステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することによっても、ロータ巻線30のd軸磁束とステータ巻線20のd軸磁束が互いに反発し合うように作用させることが可能である。
また、本実施形態では、軟磁性材53の内周面61と外周面62間には、永久磁石33、及び空隙や非磁性材等の磁気抵抗の高い部分が設けられていないため、ロータ巻線30のd軸磁束を軟磁性材53を介してステータ16に効率よく作用させることができる。したがって、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupの制御により、ステータ16に流れる界磁磁束を効率よく制御することができる。同様に、ステータ巻線20のd軸磁束を軟磁性材53を介して入力側ロータ28に効率よく作用させることができるので、ステータ巻線20のd軸電流Idmgの制御により、入力側ロータ28に流れる界磁磁束を効率よく制御することができる。その際には、界磁磁束を制御するための界磁巻線を出力側ロータ18に別途追加する必要も無いため、回転電機10の構成の複雑化を招くことも無い。
以上の実施形態において、ロータ周方向に隣接する軟磁性材53間に配置された永久磁石33については、例えば図13に示すように、磁極面の径方向に対する傾斜角度が90°になる状態で配置することも可能である。図13には、図4と同様に、永久磁石33による界磁磁束の流れも示してある。また、永久磁石33の磁極面を径方向に沿って配置することも可能である。
以上の実施形態では、出力側ロータ18が入力側ロータ28及びステータ16と径方向に対向するラジアル型の回転電機10の例について説明した。ただし、回転電機10については、例えば図14〜17に示すように、出力側ロータ18が入力側ロータ28及びステータ16とロータ回転軸に対向するアキシャル型の回転電機とすることも可能である。図14はアキシャル型の回転電機10の構成例を示し、図15はステータ16の構成例を示し、図16は入力側ロータ28の構成例を示し、図17は出力側ロータ18の構成例を示す。ロータ周方向に等間隔で分割配置された複数の軟磁性材53の各々は、入力側ロータ28(ティース52a)と所定の空隙を空けて対向する下面(第1面)61と、ステータ16(ティース51a)と所定の空隙を空けて対向する上面(第2面)62と、隣接する一方の永久磁石33の磁極面に面する(接触する)側面(第3面)63と、隣接する他方の永久磁石33の磁極面に面する(接触する)側面(第4面)64と、を有する。図17に示す例では、各永久磁石33の磁極面が径方向に沿って配置されている。
以上の実施形態では、出力側ロータ18に永久磁石33が設けられている場合について説明した。ただし、出力側ロータ18においては、例えば図18に示すように、永久磁石33に代えて非磁性体35を設けることも可能である。図18に示す構成例において、複数の軟磁性材53は、ロータ周方向に互いに間隔をおいて(等間隔で)分割配置されている。複数(軟磁性材53と同数)の非磁性体35は、ロータ周方向に互いに間隔をおいて(等間隔で)配置され、その各々がロータ周方向に隣接する軟磁性材53間に配置されている。ロータ周方向に隣接する非磁性体35間に配置された軟磁性材53の各々は、入力側ロータ28(ティース52a)と所定の空隙を空けて対向する内周面(第1面)61と、ステータ16(ティース51a)と所定の空隙を空けて対向する外周面(第2面)62と、隣接する一方の非磁性体35に面する(接触する)側面(第3面)63と、隣接する他方の非磁性体35に面する(接触する)側面(第4面)64と、を有し、内周面61と外周面62間で磁束を通す。なお、非磁性体35に代えて空隙を設けることも可能である。また、ロータ周方向に隣接する軟磁性材53同士がブリッジで繋がっていてもよい。
前述のように、ロータ巻線30のq軸電流Iqcoupによるq軸磁束は、ステータ16を流れる磁束に影響を与えないが、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束は、図18に示すように、軟磁性材53の内周面61と外周面62間を流れてステータ16に作用することで、ステータ16を流れる磁束に影響を与える。そのため、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束は、ステータ16にとっては、非磁性体35の位置に永久磁石33が設けられている場合の界磁磁束と同様に振る舞う。したがって、ステータ16と出力側ロータ18間にトルクを作用させる場合は、ステータ巻線20に交流電流を流すとともに、ロータ巻線30の交流電流(d軸電流Idcoup)による磁束(d軸磁束)が軟磁性材53の内周面61と外周面62間を流れてステータ16に作用するようにロータ巻線30に流れる交流電流(d軸電流Idcoup)を制御する。このロータ巻線30のd軸磁束がステータ巻線20のq軸電流成分Iqmgと相互作用することで、ステータ16と出力側ロータ18間にリラクタンストルクとは別に追加のトルクが発生し、トルク増幅効果が得られる。
同様に、ステータ巻線20のq軸電流Iqmgによるq軸磁束は、入力側ロータ28を流れる磁束に影響を与えないが、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束は、軟磁性材53の外周面62と内周面61間を流れて入力側ロータ28に作用することで、入力側ロータ28を流れる磁束に影響を与える。そのため、ステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束は、入力側ロータ28にとっては、非磁性体35の位置に永久磁石33が設けられている場合の界磁磁束と同様に振る舞う。したがって、入力側ロータ28と出力側ロータ18間にトルクを作用させる場合は、ロータ巻線30に交流電流を流すとともに、ステータ巻線20の交流電流(d軸電流Idmg)による磁束(d軸磁束)が軟磁性材53の外周面62と内周面61間を流れて入力側ロータ28に作用するようにステータ巻線20に流れる交流電流(d軸電流Idmg)を制御する。このステータ巻線20のd軸磁束がロータ巻線30のq軸電流成分Iqcoupと相互作用することで、入力側ロータ28と出力側ロータ18間にリラクタンストルクとは別に追加のトルクが発生し、トルク増幅効果が得られる。
さらに、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupによるd軸磁束とステータ巻線20のd軸電流Idmgによるd軸磁束が互いに反発し合う(逆方向になる)ように、ロータ巻線30のd軸電流Idcoup及びステータ巻線20のd軸電流Idmgを制御することで、ロータ巻線30及びステータ巻線20に発生する逆起電圧を減少させることができる。
また、図18に示す構成例でも、軟磁性材53の内周面61と外周面62間には、永久磁石、及び空隙や非磁性材等の磁気抵抗の高い部分が設けられていないため、ロータ巻線30のd軸磁束を軟磁性材53を介してステータ16に効率よく作用させることができる。したがって、ロータ巻線30のd軸電流Idcoupの制御により、ステータ16に流れる界磁磁束を効率よく制御することができる。同様に、ステータ巻線20のd軸磁束を軟磁性材53を介して入力側ロータ28に効率よく作用させることができるので、ステータ巻線20のd軸電流Idmgの制御により、入力側ロータ28に流れる界磁磁束を効率よく制御することができる。その際には、界磁磁束を制御するための界磁巻線を出力側ロータ18に別途追加する必要も無いため、回転電機10の構成の複雑化を招くことも無い。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。