本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。まず、本実施形態の減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、緩衝器1)を説明する。なお、説明の便宜上、図1における上下方向を緩衝器1の上下方向と規定する。 図1に示されるように、緩衝器1は、アウタチューブ2とシリンダ3とを備えた二重筒構造であり、シリンダ3の外周囲にはセパレータチューブ4(チューブ)が設けられる。また、アウタチューブ2とシリンダ3との間の、セパレータチューブ4の外側の部分には、環形状の空間であるリザーバ5が形成される。
シリンダ3の内側には、ピストン6が摺動可能に挿入される。ピストン6は、ナット7によってピストンロッド8の一端に固定され、シリンダ3の内側を第1室3Aと第2室3Bとに分画する。ピストンロッド8は、アウタチューブ2とシリンダ3の上端部とに装着されたロッドガイド9およびオイルシール10を貫通してシリンダ3の外部へ延出する。ピストン6は、第1室3Aと第2室3Bとの間を連通する油路11,12を有する。ピストン6の第1室3A側の面には、油路11における第2室3B側から第1室3A側への油液の流通のみを許容する逆止弁13が設けられる。また、ピストン6の第2室3B側の面には、第1室3A側の油液の圧力が一定の圧力に達した時に開弁し、第1室3A側の油液を油路12を通して第2室3B側へリリーフするディスクバルブ14が設けられる。
緩衝器1は、シリンダ3の下端部に設けられて第2室3Bとリザーバ5とを分画するベースバルブ15を備える。ベースバルブ15は、第2室3Bとリザーバ5とを連通する油路16,17を有する。また、ベースバルブ15は、油路16を通してのリザーバ5側から第2室3B側への油液の流通のみを許容する逆止弁18を備える。さらに、ベースバルブ15は、第2室3B側の油液の圧力が一定の圧力に達した時に開弁し、第2室3B側の油液を油路17を通してリザーバ5側へリリーフするディスクバルブ19を有する。なお、シリンダ3の内側には作動流体として油液が封入され、リザーバ5の内側には油液およびガスが封入される。
セパレータチューブ4は、両端部20,20の内周21,21を周方向へ延びてOリング23,23(シールリング)が装着されるシールリング溝22,22(ハウジング)を有する。そして、セパレータチューブ4の両端部20,20のOリング23,23をシリンダ3の外周に密着させることにより、シリンダ3とセパレータチューブ4との間に環状油路24が形成され、該環状油路24は、シリンダ3の上端部に設けられる油路25によって第1室3Aに連通される。また、セパレータチューブ4の下端部には、小径の開口26が設けられる。さらに、アウタチューブ2には、開口26に対応して配置される大径の開口27が設けられ、該アウタチューブ2の開口27には、減衰力発生機構28が取り付けられる。
減衰力発生機構28は、開口27に装着される円筒形のケース29を有する。ケース29には、ソレノイドバルブ31がナット32によって固定される。ソレノイドバルブ31は、パイロット型(背圧型)の主減衰バルブ30および主減衰バルブ30の開弁圧力をソレノイドにより制御する圧力制御弁とから主に構成される。ソレノイドバルブ31は、開口26に接続され、開口26からリザーバ5への油液の流れを制御して減衰力を発生させる。
主減衰バルブ30は、ディスクバルブ33と、ディスクバルブ33の背面側に形成される背圧室34とを有する。ディスクバルブ33は、開口26側の油液の圧力を受けて撓むことで開弁し、これにより、開口26側の油液をリザーバ5側へ流通させるメインバルブとして機能する。背圧室34は、ディスクバルブ33の背面側の内圧をディスクバルブ33の閉弁方向へ作用させる。また、開口26には、固定オリフィス35を介して副通路36が接続される。副通路36は通路36Aを介して背圧室34に連通される。
図2は、セパレータチューブ4の軸平面(中心軸C1を含む平面)による断面図であり、特に、セパレータチューブ4の一方の端部20の断面を示す。なお、セパレータチューブ4の一方の端部20と他方の端部20とは図1において上下対称である。ここでは、セパレータチューブ4の一方の端部20のみを説明し、他方の端部20の説明を省略する。本実施の形態では、一方の端部20と他方の端部20とは上下対称のセパレータチューブ4について説明するが、他方の端部20のみシールリング溝の前後にバックアップシールを設ける構成としてもよい。また、他方の端部20を一方の端部とは異なるシールリング溝形状としてもよい。なお、セパレータチューブ4の端部20は、ビーディング加工(回転逐次加工)によって内周21にシールリング溝22が成形されるが、スウェージング加工によって予め縮径される。
図3に示されるように、シールリング溝22は、底面71と、Oリング23(図1参照)を挟んで相対する1対の側面72,73と、を有する断面略四角形状に形成される。1対の側面72,73のうち、セパレータチューブ4の端部20の開口端20A側(図2および図3における左側)に位置する側面72は、開口端20A側に開いており、セパレータチューブ4の軸直角平面(中心軸C1に直交する直線を含む一平面PL1)に対して傾斜角度θ1で傾斜されている。この傾斜角度θ1は、後述するように5°以上に設定され、特に、本実施形態では20°に設定される。
他方、側面72とは反対側(図2および図3における右側)に位置する側面73の軸直角平面PL1に対する傾斜角度θ2(図示省略)は、JISB2401に規定されるハウジング形状に基づき0°〜5°に設定される。すなわち、開口端20A側に位置する側面72の軸直角平面PL1に対する傾斜角度θ1は、反対側に位置する側面73の軸直角平面PL1に対する傾斜角度θ2よりも大きい(θ1>θ2)。換言すると、側面72と側面73とは軸直角平面PL1に対して非対称、延いては、シールリング溝22は軸直角平面PL1に対して非対称である。
また、シールリング溝22は、溝角、つまりシールリング溝22の開口端と内周21との繋がり部には丸みを有する。以下、シールリング溝22の側面72側の溝角の丸みおよび側面73側の溝角の丸みのうち、側面72側の溝角の丸みを、溝角の丸みRと規定する。なお、シールリング溝22の溝角の丸みRおよび側面73側の溝角の丸みは、JISB2401に規定されるハウジングの溝角の丸みに準ずる。また、シールリング溝22は、JISB2401に規定されるハウジングの溝底の丸みを有する。さらに、シリンダ2(図1参照)とセパレータチューブ4の内周20との間には、JISB2401に規定されるギャップ(組み立て性を確保するためのクリアランス)が設けられる。
ここで、図4を参照して、セパレータチューブ4の端部20の内周21にシールリング溝22をビーディング加工(回転逐次加工)するためのビーディング加工装置41を説明する。なお、セパレータチューブ4の両端部20,20は、一対のビーディング加工装置41によって同時に加工されるが、ここでは、セパレータチューブ4の一方の端部20に対応する一方のビーディング加工装置41のみを図解する。また、説明の便宜上、図4における上下方向および左右方向を当該ビーディング加工装置41の上下方向および左右方向と規定する。なお、セパレータチューブ4の両端部20,20は、一対のビーディング加工装置41によって同時に加工せず、それぞれ1つのビーディング加工装置を用いて両端部を交互に加工するようにしてもよい。
ビーディング加工装置41は、セパレータチューブ4の端部20の内周21側に挿入される中空軸形状のローラダイス42と、セパレータチューブ4の端部20の外周に装着される外型43とを有する。図5に示されるように、ローラダイス42は、ローラダイス42の外周に周方向へ延びる環状の凸部44を有する。凸部44は、ローラダイス42の中間位置、すなわち、ローラダイス42の中心軸C2方向(図5における左右方向)の中間位置に設けられ、ローラダイス42の軸平面による断面が略四角形状に形成される。
そして、上記シールリング溝22の1対の側面72,73のうち、セパレータチューブ4の開口端20A側に位置する側面72に対応する凸部44の側面75、すなわち、側面72を成形する側の側面75は、シールリング溝22の側面72の傾斜角度θ1に対応して、反対側に位置する側面76側へ寝かせて、ローラダイス42の軸直角平面(中心軸C2に直交する直線を含む一平面PL2)に対して傾斜角度θ1で傾斜されている。なお、ローラダイス42は、凸部44の側面75に対して中心軸C2方向(図5における左方向)へ間隔をあけて設けられたフランジ部45を有する。
図4に示されるように、ビーディング加工装置41は、ローラダイス42を中心軸C2(図5参照)回りに回転駆動する回転駆動機構47を有する。回転駆動機構47は、ローラダイス42を支持するダイス支持部48と、駆動源としてのサーボモータ(図示省略)とを有する。ダイス支持部48は、略円柱形に形成される基部50と、外周にローラダイス42の内周が嵌合される第1軸部51と、規制部材52に接続される第2軸部53とを有する。ダイス支持部48は、基部50の外周が中心軸方向(図4における左右方向)に間隔をあけて配置される一対のベアリング54によって支持され、これにより、中心軸回りに回転可能である。なお、一対のベアリング54は、略円筒形のベアリングケース55に収容され、ベアリングケース55は、フランジ部55Aがモータベース56のボス部56Aにボルト固定される。
ダイス支持部48は、基部50の左側端面に開口する穴57を有し、穴57に挿入されたサーボモータのロータ軸(図示省略)と動力伝達可能に接続される。また、ダイス支持部48は、基部50の右側端部にフランジ部58が形成され、フランジ部58の左側端面に右側のベアリング54が当接される。また、フランジ部58の右側端面の内周側にはローラダイス42のフランジ部45が当接され、これにより、ローラダイス42のダイス支持部48に対する左方向への移動が規制される。そして、ローラダイス42は、右側端面に当接された規制部材52によってダイス支持部48に対する右方向への移動が規制され、これにより、外型43に対して軸線方向に位置決めされる。
なお、ローラダイス42の左側端部は、基部50の右側端面に形成された環状凹部59に嵌合される。また、ダイス支持部48は、第1軸部51の先端部が規制部材52の端面に形成された穴60に嵌合される。 図4に示されるように、外型43は、環形状に形成され、内周側にローラダイス42が挿入される。また、外型43は、ベアリング61を介して外型支持プレート62に取り付けられる。これにより、外型43は、外型43の中心軸を中心に回転可能である。さらに、外型43は、ローラダイス42の凸部44に対応する凹部63を有する。
外型43の内側で且つ凹部63に対して右側の部位には、セパレータチューブ4のテーパ部64との干渉を回避するための逃げ部65が形成される。また、外型43の内側で且つ凹部63に対して左側の部位には、外型43の基準内周面43Aの内径に対して小さい内径を有する突当部66が形成される。突当部66の右側端面には、セパレータチューブ4の端部20の開口端20Aが突き当てられる。これにより、セパレータチューブ4は、ビーディング加工時における材料の流動が規制される。なお、ビーディング加工が完了した直後の状態では、セパレータチューブ4の端部20に形成された隆起部67が外型43の凹部63に嵌り込んでいるため、セパレータチューブ4を外型43から型抜きすることができない。
そこで、外型43は、中心軸方向(図4における左右方向)へ2分割、径方向(図4における上下方向)へ2分割、合計で4分割に構成されており、外型43を4分割することでセパレータチューブ4の型抜きが可能である。 なお、図4に示される符号68は、外型43にボルトによって固定されるベアリング押えであり、ベアリング61の内輪を外型43に固定するためのものである。また、符号69は、外型支持プレート62にボルトによって固定されるベアリング押えであり、ベアリング61の外輪を外型支持プレート62に固定するためのものである。さらに、符号70は、一対のリニアガイドを介して外型支持プレート62が取り付けられるベースプレートである。
(作用効果) 上記ビーディング加工装置41を使用して、図6に示される軸直角平面PL1に対して対称に形成された先行技術のセパレータチューブ4´におけるシールリング溝22´、換言すると、JISB2401に規定されるハウジング形状に基づき側面72´および側面73´の軸直角平面PL1に対する傾斜角度が0°〜5°に設定されたシールリング溝22´を加工した場合、回転逐次加工時にセパレータチューブ4´の材料の流動が型による拘束によって阻害されるため、シールリング溝22´の両方の溝角に鋭角状隆起40,40が形成される。 なお、図6における符号42´は先行技術のローラダイス、また符号44´はローラダイス42´の凸部である。
したがって、図1に示される緩衝器1の状態においては、ピストン6の摺動に伴いシリンダ3の第1室3Aの内圧が変動するため、Oリング23は、シールリング溝22´からの微小はみ出しと復帰とを繰り返す。これにより、バックアップリングを使用しない場合、Oリング23の微小はみ出しが鋭角状隆起40,40を繰り返し通過し、その結果、Oリング23が損傷するおそれがある。そして、鋭角状隆起40,40は、シールリング溝22´の溝幅が小さいほど発生し易くなる。
そこで、本実施形態では、セパレータチューブ4のシールリング溝22を軸直角平面PL1に対して非対称に形成した。具体的には、図2および図3に示されるように、シールリング溝22の1対の側面72,73のうち、セパレータチューブ4の開口端20A側に位置する側面72を、セパレータチューブ4の軸直角平面PL1に対して5°以上の傾斜角度θ1で傾斜させた。これにより、ローラダイス42の凸部44の周りのセパレータチューブ4の材料が、回転逐次加工時により円滑に塑性流動することができるようになり、シールリング溝22の側面72および側面73のうち、少なくとも、側面72側の溝角に鋭角状隆起40(図6参照)が形成されることを抑制することができる。
ここで、図7は、有限要素法により得られた試験結果であり、セパレータチューブ4の内圧が20MPaの時の、シールリング溝22の側面72の軸直角平面PL1に対する傾斜角度θ1(以下、傾斜角度θ1)と、シールリング溝22に装着されたOリング23(材料:NBR−90)に作用する最大引張応力(MPa)との関係を示す図表である。なお、バックアップリングを使用した場合の、先行技術のシールリング溝22´(図6参照)に装着されたOリング23に作用する最大引張応力の試験結果は約110MPaであり、本実施形態のセパレータチューブ4のシールリング溝22に装着されたOリング23に作用する最大引張応力と比較して大きい、すなわち、本実施形態と比較してOリング23の耐久性が劣る結果となった。また、図8は、傾斜角度θ1と上記Oリング23の端部の変形量(mm)との関係を示す図表である。
図7を参照すると、Oリング23に作用する最大引張応力は、傾斜角度θ1が0°〜20°の間で、シールリング溝22の溝角の丸みRが小さいほど、大きくなる傾向であることが理解できる。これは、傾斜角度θ1が20°以下の領域では、溝角の丸みRが小さいほど、Oリング23における当該溝角の丸みRに沿うように変形する部分(凹部)に応力が集中するからであると推測される。
また、図7を参照すると、Oリング23に作用する最大引張応力は、傾斜角度θ1が一定以上であれば、溝角の丸みRによる影響が小さくなり、応力が小さい状態で安定することが理解できる。一方、図8を見ると、傾斜角度θ1が30°を超えたところで、変形量が一度低下し、さらに傾斜角度θ1が大きくなるのに伴い、変形量が増加していることがわかる。これは、図9からわかるように、傾斜角度θ1が10°、30°ではシリンダ3とセパレータチューブ4との間のギャップへ進入するOリング23の進入先端位置が略同じであるのに対し、40°を超えると、Oリング23の進入先端位置が後退し、60°ではさらにOリング23の進入先端位置が後退している。つまり、傾斜角度θ1が30°を超えたあたりから変形モードが変化しているといえる。変形モードが変化すると、シリンダ3とセパレータチューブ4との間のギャップへの進入先端位置が後退することになり、結果として無駄なスペースが生じ、軸長が長くなることにより、シリンダ装置全体の大型化に繋がる。よって、最大引張応力としては傾斜角度θ1を大きくしていくことについて問題ないが、変形モードの変化によりシリンダ装置の大型化に繋がることから、傾斜角度θ1の最大値は30°以下であることが望ましい。
一方で、シールリング溝22は、溝角、つまりシールリング溝22の開口端と内周21との繋がり部の丸みRが0.2mm以上、1.0mm以下であることが望ましい。これは、図7の結果に示されるように、Rが0.05mmのときは傾斜角度θ1が20°に達するまでは最大引張応力が高くなるためである。Rが0.05mm以下では、シリンダ3とセパレータチューブ4とでOリング23を挟む度合いが大きいため、シリンダ3とセパレータチューブ4の間の狭い隙間に侵入するOリング23への影響が大きいためと考えられる。また、Rを大きくしていくと、最大引張応力の影響は変化がないが、変形モードが変化するため、上述した理由により、Rは1.0mm以下であることが望ましい。
また、図7および図8を参照すると、傾斜角度θ1が50°以上の領域では、Oリング23に作用する最大引張応力は、溝角の丸みRが0.05〜1.0mmの間で略同一であり、溝角の丸みRの影響を受けないことが理解できる。しかしながら、傾斜角度θ1を大きく設定すれば、Oリング23に作用する最大引張応力を減少させることができるが、一方で、図9からもわかるように、傾斜角度θ1を大きく設定するほど、シールリング溝22の溝幅が大きくなり、セパレータチューブ4の端部20を中心軸方向へ延長させる必要が生じる等の構造設計上の問題が生じる。その場合、セパレータチューブ4の容積を十分確保できないことが考えられる。そのため、セパレータチューブ4の軸長、およびシリンダ3を延長すると、結果として緩衝器1全体の軸長が長くなり、大型化するという問題が生じる。さらに、傾斜角度θ1の増加に伴ってOリング23の端部の変形量が大きくなる。その結果、Oリング23の歪の度合いが大きくなり、Oリング23の耐久性が低下する。つまり、シールリング溝22の溝幅が大きくなり、さらにシリンダ3とセパレータチューブ4との間のギャップへの進入先端位置が後退することにより軸方向の隙間が生じるため、傾斜角度θ1の増加に伴って軸方向に延び、シリンダ装置が大型化するため、変形モードの変化が発生しない傾斜角度θ1の最大値は30°以下であることが望ましい。
そこで、本実施形態では、構造設計上の問題を生じることなく、且つOリング23の高い耐久性を確保することが可能であるシールリング溝22の傾斜角度θ1として、5°以上の傾斜角度θ1、特に、変形モードが変化する30°の手前である20°の傾斜角度θ1を採用した。
次に、傾斜角度θ1として、5°以上の傾斜角度θ1とした点について詳述する。図10は、回転逐次加工時に、シールリング溝22の溝角に鋭角状隆起40が発生するか否かを確認するため、傾斜角度θ1を2°から10°まで変化させたときの試験結果を示す。傾斜角度θ1が3°までは鋭角状隆起40が発生していたので×と評価し、傾斜角度θ1が4°では鋭角状隆起40が殆ど発生していないが、手で触ると少し隆起があるので△と評価した。傾斜角度θ1が5°を超えると、手で触っても隆起を感じない程度となったので、○と評価した。この試験結果より、傾斜角度θ1を5°以上に設定することで、鋭角状隆起40の発生を抑制することがわかった。また、安定した品質を確保するためには、回転逐次加工によるシールリング溝22の形成の公差が±2.5°であることが望ましいことから、傾斜角度θ1は8°以上であることがさらに望ましい。
本実施形態によれば、ビーディング加工装置41によって端部20の内周21にシールリング溝22が回転逐次加工されるセパレータチューブ4(チューブ)、および該セパレータチューブ4を有する緩衝器1において、シールリング溝22をセパレータチューブ4の軸直角平面PL1に対して非対称に形成し、シールリング溝22のOリング23(シールリング)を挟んで相対する1対の側面72および側面73のうち、セパレータチューブ4の開口端20A側に位置する側面72の軸直角平面PL1に対する傾斜角度θ1を8°以上、特に、傾斜角度θ1を20°に設定した。 これにより、回転逐次加工時に、シールリング溝22の溝角に鋭角状隆起40が形成されることがない。その結果、鋭角状隆起40を排除するための工程を廃止することが可能であり、セパレータチューブ4、延いては、緩衝器1の製造工程を合理化することができる。 また、Oリング23に作用する最大引張応力を、バックアップリングを使用した時の最大引張応力と比較して大幅に減少させることが可能であり、Oリング23の耐久性を、バックアップリングを使用した時と同等以上に向上させることができる。その結果、バックアップリングを廃止することが可能であり、緩衝器1の製造コストを大幅に削減することができ、さらに組み立て性が向上することから生産性を向上させることができる。
なお、上記実施形態では、シールリングとしてOリングの例を示したが、これに限らず、本発明は、断面が矩形の角リングや断面がV字状のリップリング等どのようなシールリングにも適用できる。