以下、本発明の実施形態に係る用紙搬送装置を備えた画像形成装置を図面を参照して説明する。
なお、本願において、「画像形成装置」とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に現像剤やインクを付着させて画像形成を行う装置を意味する。「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。「用紙」は、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、現像剤やインクが付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施形態に係る用紙搬送装置を備えた画像形成装置としてのレーザプリンタの外観斜視図である。本発明に係る用紙搬送装置を適用する画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの各単体はもちろんこと、これらの2つ以上を組み合わせた複合機であってもよい。画像形成装置の下部には給紙トレイ30が配置され、当該給紙トレイ30の上部に、内部点検用のカバーとしての転写カバー8が配設されている。また装置の上部に排紙トレイ44が配設されている。
転写カバー8は、その内面に両面ユニット9を備え、図2に示すように、装置の下部に配置された回転軸12を中心として画像形成装置の手前側に回動可能になっている。図3は、転写カバー8を手前側に開いた状態を示している。
前記両面ユニット9は搬送ハウジング9aを有し、この搬送ハウジング9aの背面側に用紙の戻り通路9bが形成されている。また、搬送ハウジング9aの内面側は、本体側の用紙搬送経路の一部を構成すると共に、転写部材としての二次転写ローラ20と、タイミングローラ対32の一方のタイミング駆動ローラ32aを備えている。二次転写ローラ20は、後述する本体側の駆動ローラ18とで2個一対の送り部材としての転写ローラ対を構成し、タイミング駆動ローラ32aは、本体側のタイミング従動ローラ32bとで2個一対の送り部材としてのタイミングローラ対32を構成する。
以下、図2に基づいて画像形成装置の主要部を説明する。画像形成装置は、カラー画像の色分解成分に対応するブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の現像剤によって画像を形成する作像部として4つのプロセスユニット1K,1Y,1M,1Cを備えている。
画像形成装置の本体側には、プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cが配置されている。各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K,6Y,6M,6Cを有する。それ以外は同様の構成になっている。1つのプロセスユニット1Kを例にその構成を説明すると、プロセスユニット1Kは、像担持体2K(感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、図示しない除電装置、帯電装置4K、現像装置5K等を有している。プロセスユニット1Kは画像形成装置の本体に対して着脱可能に装着され、一度に消耗部品を交換可能となっている。
各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cの上方には、露光器7が配設されている。この露光器7は、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光を発するように構成されている。
また、各プロセスユニット1K,1Y,1M,1Cの下方には、第1転写部としての転写装置15が配設されている。転写装置15は、各像担持体2K,2Y,2M,2Cに対向する4つの一次転写ローラ19K,19Y,19M,19C、各一次転写ローラ19K,19Y,19M,19Cと駆動ローラ18及び従動ローラ17に掛け渡され循環走行する中間転写ベルト16、駆動ローラ18に対向して配置した第2転写部としての二次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22等を有する。像担持体2K,2Y,2M,2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
画像形成装置の下部には、用紙Pを多数枚収容可能な給紙トレイ30と、給紙トレイ30から用紙Pを給紙路31に向けて送り出す給紙ローラ30aが設けてある。給紙路31の末端付近には、用紙を一旦停止させるタイミングローラ対32が配設されている。このタイミングローラ対32は、中間転写ベルト16の直近上流側に位置し、中間転写ベルト16上のトナー像と、用紙先端位置とを精度良く合わせるために、一度用紙Pをたるませて、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が、二次転写ニップ部で用紙Pに転写される直前に、所定のタイミングで二次転写ニップ部に用紙Pを送り出す。
前記二次転写ローラ20は、一般的に、圧縮バネ25で中間転写ベルト16に付勢されることが多い。しかし、フルフロントオペレーションタイプの画像形成装置では、中間転写ベルト16の手前側に両面ユニット9を配置する場合が多く、圧縮バネ25周りのコンパクト化が困難である。そこで、図2のように、転写ニップ部を斜め方向に配置すると、両面ユニット9のデッドスペースを有効に用いることができ、画像形成装置の前後方向のコンパクト化を達成することができる。
二次転写ローラ20と駆動ローラ18のニップ部の上方には、転写後搬送路33が配設されている。その転写後搬送路33の末端付近に、定着部としての定着装置34が設けてある。定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、この定着ローラ34aに対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bを備えている。
定着装置34の上方に定着後搬送路35が配設してあり、定着後搬送路35の末端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。定着後搬送路35の側方に、揺動軸42aを中心に揺動駆動する切替部材42が配設されている。排紙路36の末端には排紙ローラ対37が配設されている。反転搬送路41はその末端で給紙路31に合流し、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設してある。また、画像形成装置の上部には、上部カバーを内方へ凹ませた排紙トレイ44が配設されている。
転写装置15と給紙トレイ30の間には、廃トナーを収容する粉体収容器10(トナー収容器)が配設してある。粉体収容器10は画像形成装置本体に対して着脱可能に装着されている。
この実施形態の画像形成装置では、給紙ローラ30aから二次転写ローラ20までの空間が転写紙搬送の関係により、ある程度離れている必要がある。そのために生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置して、画像形成装置全体の小型省スペース化を図っている。
(画像形成装置の動作)
次に、この画像形成装置の基本的動作について説明する。図1において、図示しない画像形成装置の制御部からの給紙信号によって給紙ローラ30aが回転すると、給紙トレイ30に積載した用紙Pの最上位の用紙のみが分離されて給紙路31へ送り出される。用紙Pの先端がタイミングローラ対32のニップ部に到達すると、中間転写ベルト16上に形成されるトナー画像とタイミング(同期)をとると共に、用紙Pの先端スキューを補正するため、用紙Pに弛みを形成した状態で待機する。
作像動作について、1つのプロセスユニット1Kを例にして説明すると、まず、帯電装置4Kにて像担持体2Kの表面を均一な高電位に帯電させる。画像データに基づいて露光器7から像担持体2Kの表面にレーザビームLが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。トナーボトル6Kから未使用のブラックトナーを現像装置5Kに供給する。
現像装置5Kによって静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分にトナーを転移させ、ブラックのトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成したトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2K表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、図示しない廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、図示しない除電装置は、クリーニング後の像担持体2Kの残留電荷を除電する。
各色のプロセスユニット1Y,1M,1Cにおいても、同様にして像担持体2Y,2M,2C上にトナー画像が形成され、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写される。
各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写されると、タイミングローラ対32と給紙ローラ30aが駆動を開始し、中間転写ベルト16に重畳転写したトナー画像とタイミング(同期)をとって用紙Pを二次転写ローラ20へ送る。そして、二次転写ローラ20の二次転写ニップ部によって、送られてきた用紙Pに中間転写ベルト16上のトナー画像を転写する。
トナー画像を転写された用紙Pは転写後搬送路33を通って定着装置34へと搬送される。定着装置34に送り込まれた用紙Pは、定着ローラ34aと加圧ローラ34b間に挟まれ、その未定着トナー画像が加熱・加圧されて用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置34から定着後搬送路35へ送り出される。
定着装置34から用紙Pを送り出したタイミングでは、切替部材42は図1の実線で示す位置にあり、定着後搬送路35の末端付近を開放している。そして、定着装置34から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を通過した後、排紙ローラ対37に挟み込まれ、排紙トレイ44へ排出される。
両面印刷を行う場合は、排紙ローラ対37によって搬送される用紙Pの後端が、定着後搬送路35を通り抜けると、切替部材42が図1の点線の位置に揺動して定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転し、用紙Pが逆送されて反転搬送路41へ進入する。
反転搬送路41内を搬送される用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、タイミングローラ対32に至り、中間転写ベルト16上に形成された裏面用のトナー画像とタイミングを合わせて送り出され、二次転写ローラ20を通過する際に用紙Pの裏面にトナー画像が転写される。そして、用紙Pの裏面のトナー画像が定着装置34によって定着された後、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して排紙トレイ44へ排出される。
また、中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。この残留トナーは、ベルトクリーニング装置21によって中間転写ベルト16から除去される。
中間転写ベルト16から除去されたトナーは、図示しない廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10内に回収される(図2参照)。
(転写カバー)
印刷途中で用紙詰まりによるジャムが発生した場合、図3、図4のように、ユーザが転写カバー8を回転軸12を中心として手で外側に開き、内部のジャム紙を取り出すことができる。用紙Pがタイミングローラ対32に挟まれている場合、タイミングローラ対32の圧力が非常に高いので、タイミングローラ対32が閉じたままではジャム紙を取り出すのが困難である。
この実施形態は、転写ローラ20と、タイミングローラ対32の一方のタイミング駆動ローラ32aを、それぞれ転写カバー8の内側に配置しているで、転写カバー8を開くことで、転写ローラ20とタイミングローラ対32も同時に開くことができ、ジャム処理を迅速・簡単に行うことができる。すなわち、図3、図4に示すように、転写カバー8を回転軸12を中心として手前側に解放すると、内部に定着装置34と、中間転写ベルト16の端部と、タイミング従動ローラ32b等が見えるので、内部のジャム処理が容易である。
(二次転写ローラ)
二次転写ローラ20は、図12A〜図12Cのように、転写カバー8の内側に配置されている。転写カバー8の内面には、左右両側部分に一対の端板27が複数のネジ29により固定され、これにより端板27に取り付けられた二次転写ローラ20やタイミング駆動ローラ32a等の各ユニットが転写カバー8の強度向上に寄与している。この端板27の内側に支持板28が配置され、この支持板28に、二次転写ローラ20の回転軸20aが回転可能に支持されている。支持板28は、図2に示すように、圧縮バネ25によって二次転写駆動ローラ18に向けて付勢されている。
(タイミング駆動ローラ)
図5に示すように、転写カバー8の内面に配置されたタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1の両端は、回動アーム45に対して、軸方向外側にやや突き出した状態で支持されている(転写ローラ20は図示省略)。この回動アーム45は、その基端部に形成された長穴45aに、搬送ハウジング9aの両側の端板27の支軸27aが回動可能に挿入され、回動アーム45はこの支軸27aを中心にして回動可能、かつ、長穴45aの方向にスライド可能とされている。そして回動アーム45の先端部の軸穴45bに、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1の端部が回転可能に挿入されている。タイミング駆動ローラ32aは、図示しない回転駆動機構によって正逆両方向に回転駆動されるようになっている。
なお、回動アーム45は、その軸穴45bの内周面がタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1と直接接触するので、回動アーム45の材質を回転軸32a1との摺動性が良好なものにするとよい。また、回動アーム45は左右で共通化して部品点数を削減すると共に組み付け性を良好にするために、表裏対称形状とするのが望ましい。
図6に示すように、回動アーム45と端板27との間に、加圧レバー46が配置されている。この加圧レバー46は、長さ方向中間位置に軸穴46aが形成され、この軸穴46aに、端板27に形成された支軸27bが挿入されている。そして、加圧レバー46は、この支軸27bを中心として回動可能とされている。
加圧レバー46の下端部の引っ掛け部46bに、図12A〜図12Cのように、弾性部材としての引張バネ47の一端が連結されている。この引張バネ47の他端は、端板27の軸27cに掛け止めされている。加圧レバー46は、この引張バネ47によって、支軸27bを中心として常時矢印方向(反時計方向)に回動付勢されている。
加圧レバー46の先端部側面は平らな押圧面46cを形成し、この押圧面46cが、引張バネ47の力で、回動アーム45の軸穴45bの周囲に図6、図12Cのように形成された被押圧面部45cに当接している。回動アーム45は、被押圧面部45cが押圧されることにより、転写カバー8を閉じた状態では、常時、矢印方向で示すようにタイミング従動ローラ32bの回転軸32b1の方向、すなわち支軸27aから離れる方向であって、かつ、支軸27aを中心として図12Cで反時計方向に回転付勢されている。
回動アーム45の長穴45aは、この引張バネ47の力によって、回動アーム45が矢印方向に移動するのを可能にしている。なお、回動アーム45を付勢するためのバネは引張バネ47に限られない。当該加圧レバー46と引張バネ47に代えて、支軸27aの回りに反時計方向に付勢する捩りバネを配設すると共に、長穴45a内の支軸27aの左側に回動アーム45を外側に付勢する圧縮バネを配設することでも以上と同等の付勢作用が得られる。
前記端板27のバネ掛け用軸27cの近傍に、図5、図6等に示すように、ストッパ48が形成されている。このストッパ48は端板27を切起こして成形したもので、転写カバー8を開いた時に加圧レバー46が当該ストッパ48に当接してその反時計方向の回動位置を規制するものである。ストッパ48によって加圧レバー46の回動範囲を必要最小限度に規制することで、加圧レバー46周囲の部品レイアウトに余裕を持たせると共に、引張バネ47の伸縮量を必要最低限にしてその部品コストを抑制する。なお、転写カバー8を閉じた状態では加圧レバー46がストッパ48から離れ、両者の間に所定の隙間S1が形成される。
加圧レバー46の回転モーメントは、引張バネ47の引っ掛け部46bから支軸27bまでの距離と、当該支軸27bから押圧面46cまでの距離の比(レバー比)によって決まる。この実施形態では引張バネ47の力が前記距離のレバー比で数倍に増大されて回動アーム45の被押圧面部45cに伝達されるようにしている。従って、引張バネ47の小さなバネ力であっても、大きなタイミングローラニップ圧を生じさせることができるから、必要なタイミングローラニップ圧をコンパクトな小型の引張バネ47で得ることが可能である。
前記のように、回動アーム45に対して端板27の支軸27aが挿入される穴形状を長穴45aにすることにより、当該長穴45aと支軸27aとの間の隙間分だけ回動アーム45がその長手方向に移動可能である。こうすることで、タイミング駆動ローラ32aをタイミング従動ローラ32bに安定して押し付けることができ、安定的なタイミングローラニップ圧を確保する事ができる。なお、長穴45aと支軸27aの関係は、逆にすることも可能である。すなわち、回動アーム45の基端部に形成した支軸を、端板27に形成した長穴に挿入することで、前記と同様の作用が得られる。
転写カバー8を開いた状態、すなわち、タイミング駆動ローラ32aの外周面に外力が作用していない状態では、回動アーム45が自重により支軸27aを中心として図12A、図14Aのように最も下側ないし反時計方向に回動している。そして、回動アーム45が後述するサポート部材52の上端のストッパ面52bに自重で当接している。
この状態、すなわち図12Aの状態で、回動アーム45はその支軸27aの左右に存在する長穴45a内の隙間分だけ自由に移動可能である。一方、加圧レバー46は引張バネ47の力で反時計方向の限界まで回動し、ストッパ48に当接している。従って、回動アーム45と加圧レバー46が互いに離間し、両者の間に隙間S2が出来ている。
(用紙搬送ガイド)
図7A〜図7Cに示すように、タイミング駆動ローラ32aの下方に、両面ユニット9の用紙搬送ガイド50が配置されている。この用紙搬送ガイド50は、タイミングローラ対32に搬送されて来る用紙を、転写ニップ部に正確に案内するためのもので、本体側にも、図2に示すように、同様の用紙搬送ガイド51が配置されている。
従来の画像形成装置では、この用紙搬送ガイド50は、搬送ハウジング9aの内面に固定的に配設されていた。本発明の実施形態では、タイミング駆動ローラ32aを搬送ハウジング9aに対して可動に配設しているので、従来のように用紙搬送ガイド50を固定的に配置したままであると、タイミング駆動ローラ32aが用紙搬送ガイド50に干渉するおそれがある。
また、そのような干渉が生じないように、用紙搬送ガイド50をタイミング駆動ローラ32aから十分離間させて配置すると、タイミング駆動ローラ32aと用紙搬送ガイド50との間の隙間が大きくなり過ぎる。この結果、用紙を安定的にタイミングローラニップ部に案内することが困難になり、前記大きな隙間によって用紙ジャムが発生する可能性が高まる。
そこで本発明の実施形態では、用紙搬送ガイド50をタイミング駆動ローラ32aと共に移動可能に構成した。用紙搬送ガイド50の上端部に図7Cのように軸受部50aが形成され、この軸受部50aが、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1に回転可能に係合されている。軸受部50aは、その一部に切り欠き部50a1を形成して側面視でC字状を成し、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1をその切欠きから横向き(径方向)にクリック的に容易係合可能とされている。軸受部50aの周囲は、回転軸32a1を中心とする円弧面50eに形成されている。
切り欠き部50a1の幅は回転軸32a1の径よりもやや小さく形成され、回転軸32a1をいったん切り欠き部50a1から軸受部50a内に入れると、回転軸32a1が安定的に軸受部50aに支持される構造になっている。切り欠き部50a1は図7Cで用紙搬送ガイド50の左側に形成することも可能である。このように、用紙搬送ガイド50を回転軸32a1に容易に取り付けることができるので、組立作業性向上により装置のコストダウンが可能であり、また用紙搬送ガイド50の破損・汚損時の交換やメンテナンスも容易である。
このようにタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1に用紙搬送ガイド50の軸受部50aを係合させることにより、用紙搬送ガイド50の軸受部50aすなわち用紙搬送ガイド50の下流端を、タイミング駆動ローラ32aと共に移動させることが可能となる。従って、用紙搬送ガイド50の下流端とタイミング駆動ローラ32aとの間の隙間を、常に必要最小限の所定隙間に維持することができる。これにより、タイミングローラニップ部に対して用紙を安定的に送り込むことが可能となり、当該隙間に用紙が食い込んで用紙ジャムが発生するのを防止することができる。また、用紙搬送ガイド50をタイミングローラ対32の直前搬送に必要不可欠な最小寸法で構成することができ、装置の小型省スペース化と低コスト化を図ることができる。
用紙搬送ガイド50の両端面の下端部(上流側端部)には、図7Aのように、短軸状のボス部50bが一体形成されている。一方、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1の両端の下側位置に、図7A、図7Bに示すように、前記ボス部50bを上下方向にガイドするサポート部材52が配置されている。このサポート部材52は、端板27にネジ止め固定されている。
サポート部材52は、図7A、図7Bのように、その前側半分が用紙搬送ガイド50の両端に面するように配設され、当該両端に面した部分に直線状の縦長溝52aが形成されている。この縦長溝52aは、用紙搬送ガイド50の前記ボス部50bを上下方向に摺動可能にガイドする係合部として機能するもので、ボス部50bの直径より若干大きな一定幅で上下方向に所定長さで延びている。そして、用紙搬送ガイド50のボス部50bが縦長溝52aに摺動可能に係合されることで、タイミング駆動ローラ32aの動きに追従して用紙搬送ガイド50が移動する際に、用紙搬送ガイド50の上流端の位置ないし軌跡を前記縦長溝52aで規制するようにしている。
サポート部材52の縦長溝52aを機能的にさらに詳しく説明すると、当該縦長溝52aの左側の係合面52cと右側の係合面52dでは機能がやや異なる。左右の係合面52c、52dを必ず一対で構成しなければならない必然性はなく、いずれか一方の機能で足りる場合は、図8Aと図8Bのように、左側の係合面52c又は右側の係合面52dのいずれか一方のみ配設する構成も可能である。
左側の係合面52cは、図8Aで前記ボス部50bからみて用紙搬送経路S側に形成され、ボス部50bが係合面52cよりも左側に移動しないよう規制し、これにより用紙搬送ガイド50が矢印Sで示す用紙搬送経路に接近し過ぎるのを規制する。すなわち、用紙搬送ガイド50と用紙搬送経路Sとの必要最小隙間を確保した状態で装置を容易に小型省スペース化することができる。また、用紙搬送ガイド50の図8Aで右側への移動の自由度を残し、用紙搬送時に用紙搬送ガイド50に過剰な力が作用した場合の当該用紙搬送ガイド50の破損を防止する。
これに対して右側の係合面52dは、図8Bで前記ボス部50bからみて用紙搬送経路S側とは反対側に形成され、ボス部50bが係合面52dよりも右側に移動しないよう規制し、これにより用紙搬送ガイド50が用紙搬送経路Sから離間し過ぎるのを規制する。
図8Cのように左右一対で係合面52c、52dを配設することで前記機能が共に得られ、用紙搬送ガイド50のガタつき防止により用紙搬送経路Sに対する位置変動を減少させて、用紙が用紙搬送ガイド50に引っ掛かりにくいようにすることができる。また、用紙搬送ガイド50のガタつき防止により当該ガイド50の可動範囲を限定的(必要最小限)にすることができ、隣接配置部品とのクリアランス低減が可能となって装置の小型省スペース化を容易にする。
さらに、左右一対の係合面52c、52dを平行にすることでタイミング駆動ローラ32aと連動した用紙搬送ガイド50の移動がスムーズになり、転写カバー8の開閉操作性を良好にしてユーザビリティ向上とメンテナンス性向上を共に図ることができる。
このように、用紙搬送ガイド50の幅方向両側において、下端(上流端)に配設されたボス部50bが縦長溝52aにスライド可能に係合され、用紙搬送ガイド50の上端(下流端)はタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1に係合されているので、用紙搬送ガイド50の四隅が支持された形でその姿勢が安定する。そして、用紙搬送ガイド50の上端(下流端)とタイミング駆動ローラ32aとの間隔も正確に維持される。
縦長溝52aの係合面52c又は52dの長手方向は、図8A〜図8Cのように、用紙搬送経路Sに沿って、望ましくは用紙搬送経路Sと平行に配設するとよい。これにより、用紙搬送経路Sに対する用紙搬送ガイド50の位置変動を減少させて、用紙が用紙搬送ガイド50に引っ掛かりにくいようにすることができる。また、用紙搬送ガイド50の可動範囲を限定的(必要最小限)にすることで、隣接配置部品とのクリアランス低減が可能となって装置の小型省スペース化を容易にする。
また、図8Dに示すように、縦長溝52aの係合面52c又は52dの長手方向は、タイミング駆動ローラ32aとタイミング従動ローラ32bの各回転軸32a1、32b1を結ぶ直線Qに対して、直角(垂直)又はほぼ直角(垂直)とするのがよい。これにより、用紙搬送経路(図8Dでは直線Pで示す)に対する用紙搬送ガイド50の位置変動を減少させて、用紙が用紙搬送ガイド50に引っ掛かりにくいようにすることができる。
すなわち、タイミングローラ対32の間に形成されるニップ部に対して、用紙の先端が正面から進入するのを確実にすることができる。また、用紙搬送ガイド50の可動範囲を限定的(必要最小限)にすることで、隣接配置部品とのクリアランス低減が可能となって装置の小型省スペース化を容易にする。
また、縦長溝52aの係合面52c又は52dの長手方向は、タイミング従動ローラ32bに対するタイミング駆動ローラ32aの加圧方向(図8Dで矢印Rで示す)に対して、直角(垂直)又はほぼ直角(垂直)とすることでも、前記と同様に用紙搬送経路Pに対する用紙搬送ガイド50の位置変動を減少させて、用紙が用紙搬送ガイド50に引っ掛かりにくいようにすることができる。なお、タイミング駆動ローラ32aの加圧方向Rを直線Qの方向に一致させることで、前記用紙の引っ掛かりにくさをより高めることができる。また、用紙搬送ガイド50の位置変動ないし可動範囲を限定的(必要最小限)にすることで、隣接配置部品とのクリアランス低減が可能となって装置のさらなる小型省スペース化を容易にする。
図8に示すように、サポート部材52は回動アーム45の下側に位置し、サポート部材52の上端は平らなストッパ面52bを形成している。そして、このストッパ面52bに回動アーム45の下面が当接可能に構成され、回動アーム45が引張バネ47の力で下側に回動したとき、前述したように、回動アーム45がサポート部材52のストッパ面52bに当接するようになっている。
なお、ストッパ面52bは必ずしもサポート部材52に形成する必要はなく、ストッパ面52bをサポート部材52から分離して端板27から切起こした部分に形成することも可能である。但し、小型省スペース化のためにストッパ面52bはできるだけサポート部材52に形成するのが望ましい。
用紙ジャム処理時などに、ユーザが一定時間転写カバー8を開いた状態にした場合、タイミング駆動ローラ32aにユーザが接触できる状態にある。このため、転写カバー8に対してタイミング駆動ローラ32aを不用意に動かす可能性があるが、この際、前記の用紙搬送ガイド50を伴って移動可能な範囲を越えてさらにタイミング駆動ローラ32aを動かそうとした場合、用紙搬送ガイド50に過度の負荷がかかり、当該用紙搬送ガイド50を破損させてしまう恐れがある。
そこで、図8A〜図8Dのように、転写カバー8の一部形状、例えばサポート部材52にストッパ面52bを形成し、このストッパ面52bに回動アーム45を当接させることで、それ以上、回動アーム45ないしタイミング駆動ローラ32aを不用意に動かす事ができない構成にする。このような構成にすることで、当該部品の破損防止を確実なものとすることができる。
(位置決めガイド部材)
一方、図9に示すように、本体側にはタイミング従動ローラ32bが配置されている。このタイミング従動ローラ32bと、転写カバー8側のタイミング駆動ローラ32aとが互いに当接して、タイミングローラ対32によるタイミング機構を構成する。
タイミング従動ローラ32bの回転軸32b1の両端に、図9、図10、図11に示すように、タイミング従動ローラに対するタイミング駆動ローラ32aの位置決めのための位置決めガイド部材55が配置されている。このガイド部材55は、図11のように、タイミング従動ローラ32bの回転軸32b1を嵌める軸穴55aと、前方すなわち転写カバー8側に向かって水平に突出した上顎部55bと下顎部55cを有する。下顎部55cは上顎部55bよりも長く突出し、両顎部55b、55cの間に斜め上方に開いた挿入口55dが形成されている。
従って、挿入口55dは斜め上方からタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1をスムーズに受け入れるすくい形状になっている。このすくい形状は、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55の奥まで行かないうちに下顎部55cから浮き上がった場合に、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55と干渉して破損するのを防止する機能もある。
挿入口55dの反対側は円弧状端部55eを形成している。転写カバー8を閉じる最終段階でタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1の両端はこの円弧状端部55eに向かって水平方向に進行するが、回転軸32a1の両端は最大でも円弧状端部55eに当接する直前までしか進行しない。すなわち、転写カバー8を完全に閉じた状態で回転軸32a1と位置決めガイド部材55の円弧状端部55eとの間にわずかに隙間S3が残存する。
この隙間S3はタイミングローラ対32の所定のニップ圧を形成するために必要なものである。隙間S3がゼロになると、タイミング駆動ローラ32aの外周面基準が円弧状端部55eになり、回転軸32a1からそのローラ32a外周面までにある複数部品の各寸法精度のバラツキが積み上げられてニップ圧の大きなバラツキを引き起こしてしまう。また、ローラ32a外周面の摩耗等の経時劣化によってもニップ圧が変動することになる。前記隙間S3を残存させることで前記問題を回避することができる。
位置決めガイド部材55の下側の顎部上面55b1は、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1のガイド部として機能するもので、回転軸32a1が顎部上面55b1に圧接しつつスライドする。下側の顎部上面55b1は、タイミング従動ローラ32bとタイミング駆動ローラ32aとの間で適正かつ精密なニップ部が形成されるように、直線状に形成されている。これにより、タイミング従動ローラ32bとタイミング駆動ローラ32aの回転軸相互間での位置関係のばらつきを非常に小さくすることができ、精度のよいタイミング性能とスキュー補正性能を持たせることができる。なお、ここで「直線状」とは、完全な直線だけを意味するのではなく、タイミング従動ローラ32bに向かってほぼ直線的に近付く形状も含むものとする。
なお、前記位置決めガイド部材55と同様のガイド部材を、本体側の中間転写ベルト16の駆動ローラ18の回転軸の両端部近傍に配置し、転写ローラ20と駆動ローラ18の相対的位置決め精度を当該位置決めガイド部材により確保することも可能である。
(用紙搬送ガイドの上流端接続構造)
用紙搬送ガイド50の上流端は、図15のように、当該用紙搬送ガイド50のさらに上流側に配設された用紙搬送ガイド53と、用紙幅方向に所定間隔をあけて配設された、複数の矩形状凹部53aと複数のリブ状凸部50cによる接続構造で接続されている。この実施形態では、各凹部53aを上流側用紙搬送ガイド53の下流端に形成し、各リブ状凸部50cを用紙搬送経路側に突出する形で下流側用紙搬送ガイド50の上流端に形成している。凸部50cの形状は用紙の搬送を阻害しない限りリブ状ではない他の形状に変更することも可能である。
リブ状凸部50cは用紙搬送方向に所定長延び、先端(上流端)は用紙搬送ガイド50の上流側縁部50dよりもさらに上流側に所定長さで延びている。そしてこのように縁部50dよりもさらに延長したリブ状凸部50cの先端が、前記凹部53aの幅方向中央に、リブ状凸部50cの先端周囲(両側と上流側)に所定の大きさの隙間をあけた状態で挿入されている。
リブ状凸部50cの先端の高さは、図15の部分拡大図に示すように、用紙の引っ掛かりを防止するため、上流側用紙搬送ガイド53の搬送面にちょうど一致させるか、当該搬送面よりはやや低くするとよい。用紙搬送ガイド53の表面に、凹部53aの底で終端するように用紙搬送方向で延びたリブ状凸部53bを形成してもよい。このようなリブ状凸部53bによって用紙の搬送をスムーズにする作用が得られる。
上流側用紙搬送ガイド53は転写カバー8に固定的に配設されており、このため、下流側用紙搬送ガイド50が、後述するように転写カバー8の開閉時にタイミング駆動ローラ32aの移動と連動して移動すると、これら2つの用紙搬送ガイド50、53が互いに干渉するおそれがある。そこでこの実施形態では、前記のように凹部53aとリブ状凸部50cによる接続構造で接続した。
前記のように凹部53aとリブ状凸部50cによる接続構造とすることで、装置のコンパクト設計上有利となるように、2つの用紙搬送ガイド50、53を可及的に近接配置した上で、下流側用紙搬送ガイド50をタイミング駆動ローラ32aと連動して移動させることが可能になる。また、リブ状凸部50cの先端を用紙搬送ガイド53の凹部53aに挿入しているので、用紙搬送ガイド50、53の継目で用紙の引っ掛かりが発生しにくいという作用が得られる。
リブ状凸部50cと凹部53aの組合せは、前記と反対に、リブ状凸部50cを上流側用紙搬送ガイド53に配設し、凹部53aを下流側用紙搬送ガイド50に形成してもよい。或いは、リブ状凸部50cと凹部53aの噛み合わせを用紙幅方向で上下交互に反転した構成としてもよい。
(電装品のための保護部)
本発明の実施形態については、前述のように転写カバー8の開閉に伴いタイミング駆動ローラ32aを図12A〜図12Cのように移動させるようにしたので、次のような課題が新たに生じる。すなわち、転写カバー8を閉じた状態では図16Aのようにタイミング駆動ローラ32aと転写ローラ20との間があまり開いていないが、転写カバー8を開けると図16Bのようにタイミング駆動ローラ32aが自重で矢印方向に下がり、その下流側(図16Bで上側)に比較的大きな空間が形成される(図16A、図16Bでは回動アーム45等を図示省略)。そしてこの空間を通して転写カバー8の内面が露出した状態になる。
転写カバー8のこの露出した内面には、通常、各種電装品が配設されているので、当該電装品が転写カバー8の開放時に露出することになる。このため、ユーザがジャム処理のために転写カバー8を開いた時に、当該電装品に不測に触れて電装品を損傷するおそれがある。そこで、この実施形態では、当該電装品を覆う矩形板状の保護部54を転写カバー8から張り出す形で配設した。これにより、転写カバー8を開いてジャム処理を行う時にユーザが不測に電装品に触れて電装品を損傷するおそれがなくなる。
(転写カバーの開閉とタイミング駆動ローラの作動)
図12A〜図12Cは、転写カバー8を閉じる際の最終段階を順番に示している。図12Aはタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55に当接する直前状態を示している。転写カバー8に対するタイミング駆動ローラ32a等の位置関係は、図3、図4のように転写カバー8を完全に開いた状態から図12Aに至るまでまったく同じであり、その間の位置関係の変化はない。
転写カバー8を回動させる場合、二次転写ローラ20とタイミング駆動ローラ32aが描く円弧状移動軌跡(例えば図12Aに示すタイミング駆動ローラ32aの移動軌跡A1)の範囲内には、本体側部品を配設することができない。二次転写ローラ20とタイミング駆動ローラ32aが干渉する可能性のある本体側部品としては、図2と図4の定着装置34や、中間転写ベルト16(モノクロ画像形成装置の場合は感光体ドラム)とその駆動ローラ18などである。
最近の画像形成装置では、コンパクト化のために、タイミングローラ対を、像担持体としての感光体ドラムや、中間転写ベルトの端部下側に近接配置するレイアウトの必要性が高まっている。このようなコンパクト化したレイアウトの場合、タイミング駆動ローラ32aの円弧状移動軌跡A1が中間転写ベルト16や駆動ローラ18と干渉する可能性が高まる。すなわち、転写カバー8を開閉する際に、タイミング駆動ローラ32aの移動軌跡A1が中間転写ベルト16や駆動ローラ18と干渉しやすい。特に、タイミングローラ対32が用紙搬送経路の関係で、中間転写ベルト16の転写ニップ部からやや装置奥側に配置された場合に、前記干渉可能性がいっそう顕著になる。
また、装置本体をコンパクト化するためには、その上下方向高さを短縮化する必要性があるが、そのような短縮化をした場合、転写カバー8の回転軸12からタイミング駆動ローラ32aまでの回転半径R1が短くなる。そうすると、タイミング駆動ローラ32aの移動軌跡A1がいっそう中間転写ベルト16寄りとなるから、このタイミング駆動ローラ32aの移動軌跡が装置本体の高さ方向短縮の障害になる。
本発明の実施形態は、図2のようにタイミングローラ対32を二次転写ベルト16の駆動ローラ18の直近下方かつ奥側(左側)に配置して装置の上下方向と奥行き方向の両方でコンパクト化を図りながらも、図12A〜図12C、図13及び以下の説明から分かるように、タイミング駆動ローラ32aの移動軌跡A1を二次転写ベルト16とその駆動ローラ18を回避する設定としている。
図12Aの状態では、回動アーム45がその自重でサポート部材52のストッパ面52bに当接する一方、加圧レバー46は引張バネ47の力でストッパ48に当接している。回動アーム45と加圧レバー46との間、すなわち図6に示す加圧レバー46の押圧面46cと、回動アーム45の被押圧面部45cとの間に、隙間S2が形成されている。従って、回動アーム45およびタイミング駆動ローラ32aは、図12Aの状態から当該隙間S2が許容する範囲で、右方および上方に可動な状態になっている。
但し、図12Aの状態から転写カバー8を回転軸12を中心として開く方向(時計方向)に回動させると、回動アーム45が右下がり傾斜となってサポート部材52の上端のストッパ面52bに当接したままその自重で支軸27a側にスライド移動する。これにより、転写カバー8の内面側へのタイミング駆動ローラ32aの突出量が低減し、ユーザが用紙ジャム処理時などに転写カバー8を開いた時にタイミング駆動ローラ32aに不測に触れてしまう可能性を低減することができる。
また、このように回動アーム45が自重で支軸27a側に移動した位置は、転写カバー8を閉じていく時に、少なくとも回動アーム45がサポート部材52の上端のストッパ面52bに当接するまでは維持される。このため、前記のようにタイミング駆動ローラ32aの突出量が自重による移動で低減している分だけ、タイミング駆動ローラ32aと本体側部品との非干渉領域を広く確保することができる。
図12Bは転写カバー8を完全に閉じる直前状態を示している。この状態はタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55の下顎部55cの上面55c1に当接し、それによって回動アーム45がサポート部材52から浮き始める瞬間である。
この状態でも回動アーム45と加圧レバー46との間には前記隙間2がまだ残っており、引張バネ47の力はストッパ48で受け止められ、回動アーム45には引張バネ47の力は作用していない。従って、この図12Bの状態から転写カバー8をさらに閉じていっても、前記隙間S2がゼロになるまでは、回動アーム45は時計方向(サポート部材52から浮き上がる方向)に自由に回動可能な状態にある。
図12Bの状態からさらに転写カバー8を閉じていくと、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55の下顎部上面55c1に支持されてその高さが一定になる一方、回動アーム45の支軸27aの高さが転写カバー8を閉じるに従いさらに下がっていく。この結果、回動アーム45が支軸27aを中心として次第に時計方向に回動する。
そして、前記隙間S2がゼロになって回動アーム45が加圧レバー46に当接することで引張バネ47の付勢力が加圧レバー46に作用するようになる。すなわち、回動アーム45が加圧レバー46に当接すると同時に加圧レバー46がストッパ48から離間して両者の間に隙間S1が形成され、引張バネ47の付勢力が加圧レバー46の先端押圧面46cから回動アーム45の被押圧面部45cに伝達されるようになる。
図12Cは転写カバー8を完全に閉じた状態を示し(転写カバー8の内面は図16Bに示す)、この状態では引張バネ47の付勢力が加圧レバー46を介して回動アーム45に伝達され、回動アーム45が支軸27aを中心として反時計方向に回動付勢される。タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1は、位置決めガイド部材55(図12Cでは図示省略)の下顎部上面55c1に沿って水平方向左方にガイドされるので、前記回動付勢力によりタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が、実際はタイミング従動ローラ32bの回転軸32b1に向かって直線的に接近する方向(支軸27aから離間する方向)にシフト付勢される。従って、回動アーム45の支軸27aは図12Cでは長穴45a内の右端近くまで相対的に移動し、回動アーム45が支軸27aひいては転写カバー8の回転軸12を中心として半径方向外方に最大限延びた状態になる。
この状態で、タイミング駆動ローラ32aがタイミング従動ローラ32bに当接し、両ローラ間にニップ部が形成されてタイミングローラ対32によるタイミング機構が構成される。また、転写ローラ20が圧縮バネ25の付勢力で中間転写ベルト16の駆動ローラ18に中間転写ベルト16を介して当接し、転写ローラ20と、駆動ローラ18に支えられた中間転写ベルト16の端部との間に、所定の転写ニップ圧が形成される。
ところで、前記タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1は、位置決めガイド部材55の下顎部上面55c1に当接した後、前記のようにタイミング機構を構成するまで常に下顎部上面55c1に当接した状態を維持する。この点、特許文献2のローラの位置決め機構は、ローラの軸を本体側の上下顎で構成する案内ガイドのガイド溝でガイドする構成であるが、ローラを付勢するバネの付勢方向を前記ガイド溝方向に一致させている。
このようなローラの付勢機構では、ローラの軸が上下顎のいずれでガイドされるのかが不明確となり、最終的なローラの位置決め位置が上顎基準か下顎基準か定まらないという可能性がある。本発明の実施形態では、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1をタイミング機構を構成する最後まで下顎部上面55c1でガイドするので前記のような問題がない。
また、本発明の実施形態は引張バネ47の付勢力を加圧レバー46を介して回動アーム45に伝達する構成なので、回動アーム45を反時計方向に回動付勢する同時に長穴45aの方向にも付勢することができ、前述のように下顎部上面55c1基準での位置決めを可能にしつつ、引張バネ47の付勢力をタイミングローラ対32のニップ圧形成用としても利用することを可能にしている。この点、特許文献2のようなローラの付勢構造では、バネによるニップ圧形は可能であっても、前述したようにローラの位置決めが不安定になるという問題がある。
前記のタイミングローラ対32によるタイミング機構において、タイミング従動ローラ32bに対するタイミング駆動ローラ32aの位置を決める機構は、ガイド部材55の下顎部上面55c1と、これにガイドされるタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1と、タイミング駆動ローラ32aの外周面自体で構成される。回動アーム45の基端側が支軸27aと長穴45aの間に存在する隙間でガタついても、タイミング駆動ローラ32aの位置には影響がない。
このような位置決め機構は引用文献1の位置決め機構に比べて簡単かつ省スペースである。しかも、タイミング駆動ローラ32aの外周面自体を相手方のタイミング従動ローラ32bの外周面に向けて直線的にガイド付勢した状態で位置決めしているので、前述したようにタイミング駆動ローラ32aの構成部品の寸法精度のバラツキやローラ32a外周面の摩耗等の経時劣化があってもニップ圧が変動することがない。
タイミング駆動ローラ32aはタイミング従動ローラ32bから前記ニップ部の反力を受け、当該反力で回動アーム45が長手方向基端側かつ時計方向に押し返される。一方、前記ニップ部の反力は回動アーム45を介して加圧レバー46の押圧面46cに伝達され、これによって加圧レバー46が時計方向にやや押し返されることで引張バネ47がやや引き伸ばされる。このとき加圧レバー46とストッパ48との間には隙間S1が残存し、引張バネ47の付勢力が加圧レバー46のレバー比(引張バネ47の引っ掛け部46bから支軸27bまでの距離と、当該支軸27bから押圧面46cまでの距離の比)により増大された形で前記ニップ圧に反映される。
以上、図12A〜図12Cを参照して転写カバー8を閉じる際の最終段階を順番に説明したが、次に転写カバー8の開閉時のタイミング駆動ローラ32aの移動軌跡について図13(A)〜(C)に基づいて説明する。図13(A)〜(C)は図12A〜図12Cにそれぞれ対応し、図中の符号12は図2に示す転写カバー8の回転軸12を示している。但し、タイミング駆動ローラ32aの実際の移動軌跡は図13(A)の移動軌跡(回転軌跡)A1であり、図13(B)(C)の移動軌跡A2、A3は中間転写ベルト16や駆動ローラ18との干渉関係を説明するための仮想的なものである。
図13(A)では前述したように回動アーム45が自重でサポート部材52のストッパ面52bに当接したままであり、転写カバー8を開閉する際、図12Aに示す状態から装置外側にかけては、タイミング駆動ローラ32aの外側外周面が回転軸12を中心とする回転軌跡すなわち移動軌跡A1を描く。この移動軌跡A1の半径R1はL11+D1/2であり(L1:回転軸12からタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1中心までの長さ、D1:タイミング駆動ローラ32aの直径)、移動軌跡A1に対して本体側の中間転写ベルト16と駆動ローラ18が干渉しない配置になっている。すなわち、L11+D1/2<L2−D2/2の関係になっている(L2:回転軸12からタイミング従動ローラ32bの回転軸32b1中心までの長さ、D2:タイミング従動ローラ32bの直径)。
一方、転写ローラ20は図13(A)で既に中間転写ベルト16の駆動ローラ18に当接しており、転写カバー8をさらに閉じていくと、この当接状態を維持したまま転写ローラ20と転写カバー8との間の圧縮バネ25(図2、図4参照)が圧縮されていく。
次に、図13(B)と図13(C)では前記L11の長さがL11→L12→L13と順次短くなる(L13<L12<L11)。これは、タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1が位置決めガイド部材55の下顎部55cの上面55c1に当接することにより、タイミング駆動ローラ32aを支持する回動アーム45が、支軸27aを中心として時計方向に回動するためである(図12B、図12C参照)。この結果、移動軌跡A2の半径R2が図13(B)ではL12+D1/2になり(L12<L11)、移動軌跡A3の半径R3が図13(C)ではL13+D1/2になる(L12<L11)。
ここで、図13(C)に示す状態から、タイミング駆動ローラ32aをそのまま回転軸12を中心として時計方向に回転した場合、すなわち回動アーム45を端板27ないし転写カバー8に対して回動させることなく、転写カバー8を開放した場合を想定する。この想定は、特許文献3のようにローラの回転軸を固定的に転写カバーに配設した場合の本体側部品との干渉の度合いを確認するためである。
この場合、図13(C)の移動軌跡A3に示すように、タイミング駆動ローラ32aが本体側の中間転写ベルト16の端部と干渉する。この時の移動軌跡A3の半径R3はL13+D1/2であり、L13+D1/2>L2−D2/2の関係になっている。
すなわち、図13(A)(B)とは前記不等号の大小関係が逆転しており、換言すると、この実施形態では特許文献3の装置に比べて、少なくとも移動軌跡A3が駆動ローラ18に被っている分だけよりコンパクト化を図ることが出来ることを示している。これは、図13(A)(図12A)に比べると、回動アーム45が端板27に対して時計方向に回転し、しかも回動アーム45が加圧レバー46ないし引張バネ47の付勢力によって支軸27aから遠ざかる方向に移動した結果、移動軌跡A3の半径R3が図13(A)の移動軌跡A1の半径R1=L11+D1/2よりも長くなっているからである。
この実施形態では、転写カバー8の開閉中であって、タイミング駆動ローラ32aが本体側部品(中間転写ベルト16やその駆動ローラ18)の近くを通過する時は、回動アーム45を自重で反時計方向に回動させてサポート部材52のストッパ面52bに当接させている。こうすることで、移動軌跡A1の半径R1を短くし、本体側部品との干渉を回避することができる。
なお、回動アーム45が転写カバー8の開閉中の衝撃等でサポート部材52のストッパ面52bから一時的に浮き上がろうとしても、図13(B)(図12B)のようにストッパ48に当接した加圧レバー46によってその浮き上がり高さが規制される。この高さ規制により、タイミング駆動ローラ32aの移動軌跡A2の半径R2は図13(B)のように最大でもL12+D1/2であり、タイミング駆動ローラ32aが中間転写ベルト16や駆動ローラ18と干渉するおそれはない。
しかし、移動軌跡A1のままでは、転写カバー8を最後まで閉じても、タイミング駆動ローラ32aを本体側のタイミング従動ローラ32bに当接させることができない。そこで、タイミング駆動ローラ32aが中間転写ベルト16とその駆動ローラ18を通過してその下側に移動した後、当該タイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1を位置決めガイド部材55の下顎部55cの上面55c1に当接させ、これにより回動アーム45を時計方向に回動させるようにした。また、同時に回動アーム45を加圧レバー46ないし引張バネ47の付勢力によって支軸27aから遠ざかる方向に移動させるようにした。
転写カバー8の開閉中にタイミング駆動ローラ32aを以上のように移動させることにより、タイミング駆動ローラ32aを中間転写ベルト16の端部下側すなわち駆動ローラ18の直近下方かつ奥側(左側)に配置するレイアウトが可能となる。そして、このレイアウトにより装置の奥行きと上下高さを共に短縮することが可能となり、装置のコンパクト化を促進することができる。
図17は、本発明の変形例を示すもので、転写カバー8を回動させるのではなく、装置下部に配置した水平レール66に沿って水平手前方向にスライドさせて転写カバー8を開くようにしている。このように転写カバー8を水平方向で開閉する方式は、例えば特許文献1の図5のように知られている。しかし、水平開閉方式は、転写カバー8側の転写ローラ20やタイミング駆動ローラ32aが、装置の小型省スペース化に伴って本体側部品と干渉する可能性は少なくなる代わりに、転写ローラ20やタイミング駆動ローラ32aの位置決め精度や、中間転写ベルト16が転写ローラ20から受ける摩擦の影響が問題となる。
本発明の実施形態によれば、転写ローラ20やタイミング駆動ローラ32aを、位置決めガイド部材55を使用することで、最終位置に正確に位置決めすることができる。また、位置決めガイド部材55のガイド形状によって、水平移動高さよりも最終位置を上昇させることも可能であり、そうすることで途中の本体側部品の配置を低くすることが可能となり、装置のコンパクト化を促進することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能であって、例えば前記実施形態は本発明を画像形成装置に適用した例であるが、画像形成装置以外に適用することも勿論可能である。また前記実施形態では本体側送り部材としてタイミング従動ローラ32b、中間転写ベルト16及び駆動ローラ18を配置し、カバー側送り部材としてタイミング駆動ローラ32aと二次転写ローラ20を配置したが、これら送り部材はローラでもよいし、ローラに代わる無端ベルト等であってもよい。
また、送り部材の種類は任意であり、タイミング用送り部材や転写用送り部材以外の送り部材であってもよく、例えば定着装置34の加圧ローラ34bを転写カバー8に位置変更可能に配設し、これを本体側のガイド部材によって本体側定着ローラ34aの近傍の本体側部品との干渉を回避するように移動させてもよい。前記ガイド部材による移動方向は、カバーの開閉軌跡を横断する方向で本体側送り部材に接近する方向を第1方向とし離間する方向を第2方向としたとき、例えば、カバー側送り部材をカバーの閉動作によって第1方向に移動させると共に開動作によって第2方向に移動させることができる。
さらに、前記実施形態ではタイミング駆動ローラ32aの上流側の用紙搬送ガイド50をタイミング駆動ローラ32aの回転軸32a1に係合させたが、本発明はカバー側に位置変更可能に配設した任意の送り部材の上流側又は下流側に、用紙搬送ガイドを位置変更可能に設けると共に当該用紙搬送ガイドの下流端又は上流端を送り部材に係合させる構成が可能である。その場合、送り部材に係合させない側の用紙搬送ガイドの上流端又は下流端は、必要に応じてカバー側の係合部に摺動可能に係合させることができる。
また、前記実施形態ではガイド部材55によってタイミング駆動ローラ32aをガイドしたが、同ガイド部材55と同等のガイド部材によって二次転写ローラ20をガイドすることも可能である。また本体側とカバー側の送り部材の数は前記実施形態では2つにしたが、1つでもよいし2つ以上としてもよい。
また、タイミング駆動ローラ32aとタイミング従動ローラ32bの配置関係は、タイミング駆動ローラ32aを本体側に配置し、タイミング従動ローラ32bを転写カバー8に配置する逆の構成にしてもよい。
また、中間転写ベルト16を使用しないモノクロ画像形成装置にも本発明を適用可能であり、その場合は像担持体として中間転写ベルト16に代えて感光ドラムを配置し、当該感光ドラムの外周面に転写カバー側の転写ローラを圧接させる。
また、前記実施形態では転写カバー8は両面ユニット9を有するものとして説明したが、両面ユニットがない転写カバー8であってもよい。