以下、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図5)に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、農業用トラクタ1(以下、単にトラクタ1と称する)は、左右一対の前車輪3と左右一対の後車輪4にて走行機体2を支持している。なお、以下の説明では、走行機体2の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、トラクタ1は前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。エンジン5の後方に燃料タンク13が配置されている。燃料タンク13もボンネット6にて覆われている。
また、ボンネット6の後部にハンドルコラム7が配置されている。ハンドルコラム7には、左右の前車輪3を左右に操舵する操縦ハンドル9が設けられている。走行機体2の上面のうち操縦ハンドル9の後方に、操縦座席8が配置されている。操縦座席8の右側方には、後述するロータリ耕耘機24の高さ位置を手動で変更調整する作業機昇降レバー14が配置されている。作業機昇降レバー14は、前傾操作によってロータリ耕耘機24を下降させ、後傾操作によってロータリ耕耘機24を上昇させるように構成されている。
ハンドルコラム7の下部にはオペレータが搭乗するステップ10を設けている。ステップ10の上面のうちハンドルコラム7の左側にクラッチペダル11を設け、ハンドルコラム7の右側にはブレーキペダル12を設けている。操縦座席8に座乗したオペレータは操縦ハンドル9を握り、クラッチペダル11やブレーキペダル12を足踏み操作する。
一方、走行機体2の後部には、エンジン5の回転を変速して左右の後車輪4や前車輪3に伝達するためのミッションケース17が配置されている。ミッションケース17の左右外側面から外向きに突出するように、左右の後車軸ケース18が装着されている。左右の後車軸ケース18には左右の後車軸19が内挿されている。ミッションケース17に後車軸19を介して後車輪4が取り付けられる。
更に、ミッションケース17の後側面に、PTO駆動力を後向きに伝達するための後側PTO軸23が後向きに突設されている。実施形態のトラクタ1は、対地作業機としてのロータリ耕耘機24と、走行機体2の後部に連結された3点リンク機構20とを備えている。3点リンク機構20は、左右一対のロワーリンク21とトップリンク22とによって構成されている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、3点リンク機構20を介して連結される。
図3及び図4に示すように、左右ロワーリンク21の前端側(基端側)は、後車軸ケース18後端部のヒッチ部18aに、左右横長のロワーリンクピン軸25を介して回動可能に連結されている。トップリンク22の前端側は、ミッションケース17後面側のリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結されている。ロワーリンク21の左右方向の揺動を規制するスウェーチェン33の前端側(基端側)が、ロワーリンクピン軸25の中間部に連結されている(図3〜図5参照)。左右一対のロワーリンク21とトップリンク22とからなる3点リンク機構20にてトラクタ1の後側でロータリ耕耘機24を牽引しながら、ロータリ耕耘機24のロータリ耕耘爪28を後側PTO軸23からの動力にて回転させることによって、圃場の耕耘作業を実行するように構成している。
実施形態のトラクタ1は、3点リンク機構20を昇降動するアクチュエータとして、単動式の昇降油圧シリンダ29を備えている。ミッションケース17の上面後部側に、リフトアーム軸34(回動支点部)を介して左右のリフトアーム30を上下揺動(回動)可能に設けている。各リフトアーム30には、リフトロッド31を介して左右のロワーリンク21を連結している。少なくとも左右一方のリフトアーム30(実施形態では右側)に、左右横向きのシリンダ連結ピン35を介して昇降油圧シリンダ29のピストンロッド(上部側)を連結している。
昇降油圧シリンダ29のシリンダ側の端部(下部側)は、左右横向きのシリンダ支持ピン32(枢支ピン軸)を介して走行機体2(ミッションケース17の後部側)に支持されている。この場合、ミッションケース17の後面側に一体形成されたブラケット部17aと、左右の後車軸ケース18の後端部に一体形成されたヒッチ部18aとに、枢支ピン軸としてのシリンダ支持ピン32を介して、昇降油圧シリンダ29を支持させている。(図3〜図5参照)。
すなわち、少なくとも左右一方の後車軸ケース18(実施形態では右側)に後ろ向きに張り出すように一体形成されたヒッチ部18aと、ミッションケース17の後面に後ろ向きに突出するように一体形成されたブラケット部17aとの間に、昇降油圧シリンダ29の下部側が配置される。ヒッチ部18aと昇降油圧シリンダ29の下部側とブラケット部17aとにシリンダ支持ピン32を貫通させ、シリンダ支持ピン32をヒッチ部18aとブラケット部17aとに両持ち梁状に支持させる。シリンダ支持ピン32のうちヒッチ部18aの左右外側に突出した突出端部には固定板36が設けられている。当該固定板36をヒッチ部18aの外側面にボルト締結することによって、シリンダ支持ピン32が抜け不能に保持される。
実施形態のブラケット部17aは、ミッションケース17の後面のうち後側PTO軸23と後車軸ケース18のヒッチ部18aとの間に後向き突設されている。このため、昇降油圧シリンダ29は、後側PTO軸23が位置する走行機体2の左右中心よりも左右いずれか(ブラケット部17aのある側)にオフセットして配置されることになる。
このように、後車軸ケース18のヒッチ部18aと昇降油圧シリンダ29の下部側とミッションケース17のブラケット部17aとにシリンダ支持ピン32を差し込み固定すれば、昇降油圧シリンダ29の下部側を簡単にミッションケース17の後部側に連結できることになる。従って、昇降油圧シリンダ29下部側の軸支構造を構成する部品点数を少なくして組付け作業工数をも削減でき、製造コスト抑制やメンテナンスコスト抑制の一助になる。
作業機昇降レバー14の手動操作によって昇降油圧シリンダ29を作動させ、そのピストンロッドを突出させたり没入させたりすると、左右のリフトアーム30の先端側(後端側)が上下方向に揺動(回動)し、ロワーリンクピン軸25を支点にして、左右のロワーリンク21の後端側を上下方向に回動させる。その結果、左右ロワーリンク21の後端側に連結されたロータリ耕耘機24が昇降動する。
図3〜図5に示すように、実施形態のヒッチ部18aは、左右両方の後車軸ケース18に、後ろ向きに張り出すようにして一体形成されている。左右両ヒッチ部18aに左右横長のロワーリンクピン軸25が左右抜き差し可能に取り付けられている。ロワーリンクピン軸25のうち各ヒッチ部18a寄りの左右内側に、各ロワーリンク21の前端側(基端側)が回動可能に被嵌されている。このように構成すると、左右両ロワーリンク21の前端側を単一のロワーリンクピン軸25だけで回動可能に軸支でき、左右両ロワーリンク21の取付け支持構造を簡略化できる。その上、ロワーリンクピン軸25を左右両ヒッチ部18aから抜き取れば、左右両ロワーリンク21を走行機体2の後部から簡単に取り外せることになる。従って、左右両ロワーリンク21ひいてはこれらに装着されるロータリ耕耘機24(対地作業機)の着脱作業性を向上できる。
ロワーリンクピン軸25の長手中途部には、左右両ロワーリンク21の前端側の左右移動を規制する筒状体37が被嵌されている。筒状体37の中央部には後側ヒッチ96が固定されている。後側ヒッチ96はヒッチブラケット95を介してミッションケース17の後面にも固定されている。筒状体37のうち後側ヒッチを挟んだ左右両側には、後ろ向きに突出するプレート板38が取り付けられている。これら各プレート板38に、ロワーリンク21の左右方向の揺動を規制するスウェーチェン33の前端側(基端側)が連結されている。スウェーチェン33の後端側(先端側)は、対応するロワーリンク21の先端寄りの左右内面側に連結されている。このように構成すると、各スウェーチェン33が左右両ロワーリンク21の間に位置することになる。従って、各ロワーリンク21の左右方向の揺動を規制するスウェーチェン33がミッションケース17の左右外側にある後車輪4等に干渉するおそれはなくなり、スウェーチェン33の存在が邪魔にならないのである。
次に、図6〜図11を参照しながら、トラクタ1の油圧回路100構造について説明する。トラクタ1の油圧回路100は、エンジン5の動力にて駆動する作業用油圧ポンプ101及びチャージ用油圧ポンプ102を備えている。作業機用油圧ポンプ101は、昇降油圧シリンダ29に対する作動油の給排を制御する昇降用油圧切換弁103に接続されている。昇降用油圧切換弁103は、ミッションケース17の上面に着脱可能に設けた油圧ケース110内に収容される(図9〜図11参照)。作業機昇降レバー14を手動操作すると、昇降用油圧切換弁103が切換作動して昇降油圧シリンダ29を伸縮作動させる。その結果、リフトアーム30が上下回動し、3点リンク機構24を介してロータリ耕耘機24が昇降動する。図7に示すように、作業用油圧ポンプ101は、ミッションケース17上面のうち油圧ケースの左側方に位置している。すなわち、ミッションケース17上面のうち油圧ケース110を挟んで作業機昇降レバー14及びフィードバックリンク123(詳細は後述する)の反対側に、作業用油圧ポンプ101を設けている。
昇降用油圧切換弁103と昇降油圧シリンダ29とをつなぐ作動油路106中には、昇降油圧シリンダ29の短縮速度(リフトアーム30の下降速度とも言える)を調節する可変絞り弁兼止め弁104を設けている。図9に示すように、作動油路106は油圧ケース110の上面側に形成している。可変絞り弁兼止め弁104は、油圧ケース110の上面前部側に着脱可能に装着している。可変絞り弁兼止め弁104の操作ロッド104aは、油圧ケース110の前面側から前向きに突出している。操作ロッド104aの先端側に取り付けられた調節ノブ104bは、操縦座席8の下方前部に位置している。調節ノブ104bの回転操作によって、操作ロッド104aを介して可変絞り弁兼止め弁104を調節操作する。
作動油路106のうち可変絞り弁兼止め弁104と昇降油圧シリンダ29との間には分岐油路107が接続されている。分岐油路107中には、作動油路106のうち可変絞り弁兼止め弁104と昇降油圧シリンダ29との間の圧力を逃がすための損傷防止リリーフ弁105を設けている。例えばロータリ耕耘機24にかかる負荷が増大して、リンクアーム30ひいては昇降油圧シリンダ29に想定以上の過負荷がかかると、作動油路106内の作動油の圧力が高くなり過ぎて、昇降油圧シリンダ29、昇降用油圧切換弁103及び可変絞り弁兼止め弁104等の故障を招来するおそれがある。このような場合に、損傷防止リリーフ弁105は、昇降油圧シリンダ29内の作動油をミッションケース17側に逃がすように構成されている。損傷防止リリーフ弁105の作用によって、作動油路106の過負荷を防止している。損傷防止リリーフ弁105は油圧ケース110の上面後部側に着脱可能に装着されている。
なお、図示は省略するが、チャージ用油圧ポンプ102は、ミッションケース17に設けた油圧無段変速機やパワーステアリング用の操向油圧シリンダ等に作動油を供給するように構成されている。また、油圧回路100は、その他リリーフ弁やオイルフィルタ等も備えている。
次に、図7〜図11を参照しながら、油圧ケース110に設けた昇降機構111及びその周辺構造について説明する。油圧ケース110には、昇降油圧シリンダ29の駆動を司る昇降機構111を設けている。昇降機構111は、操作部材としての作業機昇降レバー14の手動操作に際して昇降用油圧切換弁103の切換を機械的に行うものである。この場合、作業機昇降レバー14の手動操作によって、昇降用油圧切換弁103及び可変絞り弁兼止め弁104を介して昇降油圧シリンダ29を伸縮作動させ、昇降油圧シリンダ29の伸縮作動に伴うフィードバックリンク123の作動によって、昇降用油圧切換弁103を中立位置に復帰させる。その結果、作業機昇降レバー14の手動操作量に応じて、ロータリ耕耘機24が任意の耕耘高さ位置に保持される。
図7〜図9及び図11に示すように、油圧ケース110の左右一側方(実施形態では右側方)に、作業機昇降レバー14を前後傾動(回動)可能に設けている。この場合、左右横長のフィードバック操作軸122に筒状の回動支軸112を相対回転可能に被嵌させ、回動支軸112及びフィードバック操作軸122を油圧ケース110の右側面に回動可能に貫通させている。回動支軸112とフィードバック操作軸122とは同心状の二重軸構造になっている。回動支軸112のうち油圧ケース110から右外側に露出した部位には、作業機昇降レバー14の基端側が溶接固定されている。作業機昇降レバー14は回動支軸112回りに前後回動する。
フィードバック操作軸122のうち回動支軸112からの外向き突出部位は、フィードバックリンク123を介して右リフトアーム30の基端側に連結している。作業機昇降レバー14の手動操作によって左右リフトアーム30が上下回動すると、左右リフトアーム30の変位(位相)がフィードバックリンク123を介してフィードバック操作軸122にフィードバックされる。すなわち、作業機昇降レバー14の操作量及び操作方向に追従させて左右リフトアーム30を上下回動させ、ロータリ耕耘機24を昇降動させる。回動支軸112とフィードバック操作軸122との構造から明らかなように、作業機昇降レバー14とフィードバックリンク123とは、油圧ケース110の左右一側方(実施形態では右側方)にまとめて配置されている。そして、リフトアーム30の回動支点部であるリフトアーム軸34と、油圧ケース110に軸支された二重軸構造112,122とは、互いに近接した位置関係にある。
回動支軸112における油圧ケース110内の部位には、下連動アーム114を介してシーソーリンク130の下端側に連結している。一方、フィードバック操作軸のうち油圧ケース110内での回動支軸112からの内向き突出部位には、上連動アーム124を介してシーソーリンク130の上端側に連結している。シーソーリンク130の上下中途部は、昇降用油圧切換弁103のスプールに当接可能に構成されている。作業機昇降レバー14からの操作力及びリフトアーム30からのフィードバック作用力を適宜変換してシーソーリンク130に伝達することによって、昇降用油圧制御弁103を切換作動させる。その結果、作業機昇降レバー14の手動操作量に応じた任意の伸縮状態に、昇降油圧シリンダ29が保持される。
図7〜図9及び図11に示すように、油圧ケース110の右側面には、レバー支持プレート131をボルト締結している。レバー支持プレート131の上部側には、回動支軸112を中心とする円弧状の案内溝穴132を形成している。レバー支持プレート131の案内溝穴132に、作業機昇降レバー14に固定されたフリクションボルト133の軸部を摺動可能に差し込んでいる。レバー支持プレート131と作業機昇降レバー14との間にスペーサ134を配置し、レバー支持プレート131の左側面側にフリクション板135を配置している。フリクションボルト133の軸部をスペーサ134及びフリクション板135に貫通させている。フリクションボルト133の軸部には、一対の座金136を被嵌させ、これら両座金136の間に二組四枚の皿バネ137を被嵌させている。更に軸部の先端側にダブルナット138をねじ込み被嵌させている。
ダブルナット138を締め込むことによって、皿バネ137の弾性復原力を用いてフリクション板135がレバー支持プレート131に圧着され、フリクション板135とフリクションボルト133の頭部とで、レバー支持プレート131及び作業機昇降レバー14が挟持される。ダブルナット138のねじ込みに伴う皿バネ137の弾性復原力の調節によって、作業機昇降レバー14を所定の操作位置に保持する保持力(ブレーキ力)が調整される。
上記の記載並びに図7〜図11から明らかなように、エンジン5及びミッションケース17を搭載した走行機体2と、前記ミッションケース17の上面後部側に上下揺動可能に設けたリフトアーム30と、前記リフトアーム30を上下揺動させる昇降油圧シリンダ29とを備え、前記ミッションケース17の後部側に外付けで前記昇降油圧シリンダ29を設けている農業用トラクタ1であって、前記昇降油圧シリンダ29に対する昇降用油圧切換弁103を収容する油圧ケース110を前記ミッションケース17の上面に設け、前記リフトアーム30の下降速度を調節する可変絞り弁兼止め弁104と、前記昇降油圧シリンダ29と前記可変絞り弁兼止め弁104との間に位置するリリーフ弁105とを前記油圧ケース110の上面側に設けているから、前記昇降用油圧切換弁103から前記可変絞り弁兼止め弁104を経て前記昇降油圧シリンダ29に至る配管106の短縮化を図れるものでありながら、前記ミッションケース17内に前記可変絞り弁兼止め弁104や前記リリーフ弁105を設ける構造に比べてメンテナンス作業性を向上でき、メンテナンスコスト抑制の一助になる。
上記の記載並びに図7〜図11から明らかなように、前記昇降用油圧切換弁103を手動で切換操作するための操作部材14の回動支軸112と、前記リフトアーム30にフィードバックリンク123を介して連結されるフィードバック操作軸122とを二重軸構造に構成して、前記油圧ケース110に軸支させ、前記操作部材14と前記フィードバックリンク123とを前記油圧ケース110の左右一側方にまとめて配置し、前記ミッションケース17上面のうち前記油圧ケース110を挟んで前記操作部材14及び前記フィードバックリンク123の反対側に、前記昇降用油圧シリンダ29に作動油を供給する油圧ポンプ101を配置しているから、前記ミッションケース17上のスペースを有効利用して、前記油圧ケース110、前記フィードバックリンク123、前記操作部材14及び前記油圧ポンプ101をコンパクトに配置できる。
上記の記載並びに図7〜図11から明らかなように、前記リフトアーム30の回動支点部34と前記油圧ケース110の前記二重軸構造112,122とを近接させるから、前記フィードバックリンク123の長さの短縮化を図れ、部品コスト抑制に寄与できる。
次に、図12〜図16を参照しながら、ボンネット6内部の構造について説明する。走行機体2を構成する機体フレーム150に、防振部材を介してエンジン5を防振支持している。エンジン5を覆うボンネット6の前面下部にはフロントグリル151を一体的に設けている。図示は省略するが、機体フレーム150のうちフロントグリル151の下方に、フロントグリル151の下端側を係脱可能に係止するボンネットロック機構を配置し、ボンネット6の後部内側(燃料タンク13の上方)には開閉支点軸を配置している。ボンネットロック機構によって、エンジン5の前方及び上方を覆う姿勢でボンネット6を保持できる。ボンネットロック機構を係合解除させて、ボンネット6の前部を上方に持ち上げることによって、ボンネット6の後部(開閉支点軸)回りに、ボンネット6の前部を上向き回動させ、エンジン5の前方及び上方が大きく開放される。
図12及び図13に示すように、エンジン5はボンネット6内部の後部側(キャビン7寄り)に位置している。エンジン5の前面側には、エンジン5の動力で回転する冷却ファン152を配置している。冷却ファン152の前方には、熱交換器の一例であるエンジン5水冷用のラジエータ153を配置している。ラジエータ153とエンジン5との間には、冷却ファン152を囲うファンシュラウド154を配置している。すなわち、ファンシュラウド154の開口部に冷却ファン152を位置させ、ラジエータ153に冷却ファン152を対峙させている。
実施形態では、機体フレーム150の前後中途部に正面視略門形の前部フレーム155を立設している。前部フレーム155の背面側にラジエータ153を締結している。ラジエータ153の背面側にファンシュラウド154を配置している。前後フレーム155とファンシュラウド154とでラジエータ153を挟持した状態で、前部フレーム155にファンシュラウド154を締結している。冷却ファン152の回転によって、フロントグリル151からボンネット6内に空気を取り込み、当該空気によってラジエータ153を空冷する。ラジエータ153空冷後の空気は、ファンシュラウド154内の風路を介してエンジン5側に案内され、エンジン5を空冷する。なお、ボンネット6内部のうち前部フレーム155の前方には、バッテリ156を搭載している。
図12〜図16に示すように、ファンシュラウド154はラジエータ153よりも上方に高く張り出している(ファンシュラウドの方がラジエータ153よりも背が高い)。ファンシュラウド154の上部側は、後ろ向きに突出する凹形状に凹んでいる。すなわち、ファンシュラウド154の上部側には、後ろ向きに突出する凹み部157が形成されている。ファンシュラウド154の凹み部157は、エンジン5の上方側のデッドスペースに向けて突き出ている。凹み部157には、エンジン5用のエアクリーナ160を装着する装着部としての装着穴158を貫通形成している。ファンシュラウド154上部側の装着穴158に、エアクリーナ160を挿入固定している。装着穴158の周縁部がエアクリーナ160のクリーナ本体161を支持している。
エアクリーナ160は、フィルタを収容するクリーナ本体161と、クリーナ本体161の開口部を着脱可能に塞ぐ蓋体162とを備えた中空略円柱形状のものである。ファンシュラウド154の装着穴158にエアクリーナ160を装着した状態では、エアクリーナ160の蓋体162側を上にクリーナ本体161側を下にするように、エアクリーナ160が前高後低状に傾斜している。そして、エアクリーナ160の蓋体162を装着穴158よりも前方に位置させている。この場合、エアクリーナ160のクリーナ本体162側をファンシュラウド154の装着穴158に前方から挿入し、クリーナ本体161の開口部側のフランジ161aを、装着穴158の周縁部に形成された折り返し片158aに係合させることによって、エアクリーナ160が下向き抜け不能に保持される。例えばエアクリーナ160内のフィルタ交換の際は、蓋体162を取り外せば内部のフィルタを取り出し可能である。
エアクリーナ160におけるクリーナ本体161の底部は、中継配管163を介してエンジンの吸気側に連結される。クリーナ本体161の側面部には、空気を取り込むための吸気配管164を連結している。吸気配管164の開口部165は、エアクリーナ160の蓋体162側、すなわち前向きに開口している。そして、当該開口部165をファンシュラウド154よりも前方に突出させている。実施形態では、ファンシュラウド154の装着穴158を、エアクリーナ160が嵌る略円形のエアクリーナ部分158bと、吸気配管164が嵌る横長矩形の配管部分158cとの組合せで構成し、蓋体162を装着穴158のエアクリーナ部分158bよりも前方に位置させると共に、吸気配管164の開口部165を装着穴158の配管部分158cよりも前方に位置させている。
エアクリーナ160に取り込まれる空気がラジエータ153やエンジン5の空冷に寄与した温かい空気だと、温かい空気は体積増加のために酸素濃度が低下しているから、燃焼効率の低下や不完全燃焼の発生を招来するおそれがある。これに対して実施形態のように、吸気配管164の開口部165をファンシュラウド154よりも前方に突出させると、冷却ファン152の回転によって、フロントグリル151からボンネット6内に取り込まれた空気を、直接エアクリーナ160に吸い込んで除塵及び浄化し、エンジン5の吸気側に供給でき、温かい空気に起因した燃焼効率の低下や不完全燃焼の発生を抑制できる。
なお、エアクリーナ160のクリーナ本体161と吸気配管164との間には隙間が開いているので、このままでは、装着穴158における前記隙間の箇所(エアクリーナ部分158bと配管部分158cとのつなぎ部分)から、エンジン5空冷後の空気(温風)が吹き戻ってくるおそれがある。そこで、実施形態では、クリーナ本体161と吸気配管164との間に吹き戻し防止部材166を介在させ、装着穴158における前記隙間の箇所を塞いで、温風の吹き戻しを防止している。吹き戻し防止部材166は実施形態のような別体に限らず、ファンシュラウド154と一体成形してもよい。
上記の記載並びに図12〜図16から明らかなように、走行機体2の前部に搭載されたエンジン5の前面側に冷却ファン152を配置し、前記冷却ファン152の前方に熱交換器153を配置し、前記冷却ファン152を囲うファンシュラウド154を前記熱交換器153と前記エンジン5との間に配置している作業車両1であって、前記ファンシュラウド154の上部側に、前記エンジン5用のエアクリーナ160を装着する装着部158を設けているから、特別な支持部材を要することなく前記エアクリーナ160を前記ファンシュラウド154に支持でき、前記エアクリーナ160の支持構造の複雑化を回避できる。前記ファンシュラウド154は当然に前記エンジン5の近傍に配置されるため、前記エアクリーナ160の配管163,164の取り回しも簡単に行える。
上記の記載並びに図12〜図16から明らかなように、前記ファンシュラウド154の上部側は後ろ向きに突出する凹形状157に凹んでいるから、前記エンジン5の上方というもともと空いたデッドスペースを有効利用して、前記ファンシュラウド154の上部側を凹形状にでき、前記エアクリーナ160を効率よく配置できる。また、前記ファンシュラウド154の上部側の凹形状によって、当該部位の断面係数を高めているため、高い剛性を確保でき、前記エアクリーナ160の安定支持も図れる。
上記の記載並びに図12〜図16から明らかなように、前記ファンシュラウド154の前記装着部158に前記エアクリーナ160を装着した状態では、前記エアクリーナ160の蓋体162側を上にクリーナ本体161側を下にするように、前記エアクリーナ160が前高後低状に傾斜していて、前記エアクリーナ160の前記蓋体162を前記装着部158よりも前方に位置させているから、例えば前記エアクリーナ160内のフィルタ交換の際に、前記エアクリーナ160ごと取り外す必要はなく、前記蓋体162だけを取り外せば内部のフィルタを露出させて取り出せる。従って、前記エアクリーナ160のメンテナンス作業性の向上を図れる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。