以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る研磨方法の一実施形態を実施するための研磨装置を説明するための模式図であり、図2は、図1に示す研磨装置の平面図である。研磨装置は、基板であるウェハWを保持して回転させるウェハ保持部3と、ウェハ保持部3に保持されたウェハWのエッジ部を研磨する研磨ユニット25とを備えている。
研磨ユニット25は、研磨テープ38を支持する研磨テープ支持機構70と、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付ける押圧パッド51と、押圧パッド51をウェハ表面に対して垂直な方向に移動させる垂直移動機構59と、押圧パッド51および垂直移動機構59をウェハWの半径方向に移動させる半径方向移動機構45と、研磨テープ38および研磨テープ支持機構70をウェハWの半径方向に移動させるテープ移動機構46とを備えている。
半径方向移動機構45およびテープ移動機構46は、互いに独立に動作可能となっている。したがって、ウェハWの半径方向における押圧パッド51と研磨テープ38との相対位置は、半径方向移動機構45およびテープ移動機構46によって調整することができる。垂直移動機構59、半径方向移動機構45、およびテープ移動機構46としては、エアシリンダの組み合わせ、またはサーボモータとボールねじとの組み合せなどを使用することができる。
研磨テープ38は、その研磨面がウェハWの表面と平行に、かつ研磨面がウェハWのエッジ部に対向するように研磨テープ支持機構70によって支持されている。研磨テープ38の片面(下面)は、砥粒が固定された研磨面を構成している。研磨テープ38は長尺の研磨具であり、ウェハWの接線方向に沿って配置されている。押圧パッド51は、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付けるための押圧部材であり、ウェハWのエッジ部の上方に配置されている。押圧パッド51の底面には、研磨テープ38の水平方向の移動を制限するテープストッパー185が固定されている。このテープストッパー185は省略してもよい。
図3(a)乃至図3(d)は、本発明に係る研磨方法の一実施形態を示す図である。図3(a)に示すように、研磨テープ38の一部(研磨テープ38の長手方向に延びる部分)が、押圧パッド51からウェハWの半径方向内側に向かって突出するように、研磨テープ38と押圧パッド51とが位置決めされる。この状態で、図3(b)に示すように、垂直移動機構59により押圧パッド51を押し下げて研磨テープ38の研磨面を回転するウェハWのエッジ部に押し付ける。さらに押圧パッド51を押し下げることにより、図3(c)に示すように、ウェハWのエッジ部に垂直面および水平面が形成されるまでウェハWのエッジ部を研磨する(第1研磨工程)。押圧パッド51のウェハ押圧面はウェハ表面と平行な水平面であり、この水平な押圧面で研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付けることにより、ウェハWのエッジ部に垂直面および水平面を形成する。ウェハWに接触している研磨テープ38の研磨面は、ウェハWの表面と平行となっている。研磨中の押圧パッド51の内側の縁部は、研磨テープ38を介してウェハWのエッジ部に押し当てられる。
押圧パッド51が下方に移動するに従い、押圧パッド51から突出している研磨テープ38の一部(突出部)は押圧パッド51に沿って上方に折り曲げられる。この状態で、図3(d)に示すように、半径方向移動機構45により押圧パッド51をウェハWの半径方向内側に向かって押すことにより、研磨テープ38の折り曲げられた部分で垂直面を研磨する(第2研磨工程)。研磨テープ38が折り曲げられることによりその研磨面はウェハエッジ部の垂直面に接触する。したがって、ウェハWの垂直面は研磨テープ38の研磨面により研磨される。
このように、第1研磨工程でウェハWのエッジ部に形成された垂直面は、第2研磨工程で研磨テープ38の研磨面によって研磨される。したがって、垂直面を滑らかにすることができる。第1の研磨工程では粗研磨用の目の粗い研磨テープを用い、第2の研磨工程では仕上げ研磨用の目の細かい研磨テープを用いてもよい。図3(c)に示すように、折り曲げられた研磨テープ38の一部は、ウェハWのエッジ部に形成された被研磨部分の深さ(すなわち垂直面の高さ)よりも長いことが好ましい。
研磨中に研磨テープ38を単にウェハWのエッジ部に押し付けるだけでは、エッジ部に研磨痕が残ってしまうことがある。この問題を解決するために、第1研磨工程および前記第2研磨工程のうち少なくとも1つは、研磨テープ38をその長手方向に移動させながら行なってもよい。このように研磨テープ38を送りながら研磨することにより、ウェハWに形成される研磨痕を除去することができる。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるため、また、幾何学的に正しい形状を作るために、研磨テープ38の移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。さらに効果的に研磨痕を除去するために、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付けながら、研磨テープ38をウェハのWの半径方向に移動させることが好ましい。
図4は、本発明の他の実施形態に係る研磨方法を説明するための図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述の実施形態と同様であるのでその重複する説明を省略する。ステップ1では、研磨テープ38の一部(研磨テープ38の長手方向に延びる部分)が、押圧パッド51からウェハWの半径方向内側に向かって僅かに突出するように研磨テープ38と押圧パッド51とが位置決めされる。この位置決めは、半径方向移動機構45およびテープ移動機構46によって達成される。研磨テープ38はウェハWのエッジ部の上方に位置している。研磨テープ38の一部を押圧パッド51から突出させる理由は、ウェハWの研磨中に押圧パッド51がウェハWのエッジ部に接触することを避けることである。
ステップ2では、垂直移動機構59により押圧パッド51を押し下げて研磨テープ38の研磨面を回転するウェハWのエッジ部に押し付け、ウェハWのエッジ部に垂直面および水平面を形成する(第1研磨工程)。研磨中の押圧パッド51の内側の縁部は、研磨テープ38を介してウェハWのエッジ部に押し当てられる。ステップ3では、垂直移動機構59により押圧パッド51および研磨テープ38が上昇し、研磨テープ38がウェハWから離間する。
ステップ4では、押圧パッド51および研磨テープ38は、ウェハWから離れた状態でウェハWの半径方向内側に向かって所定の距離だけ移動する。より具体的には、研磨テープ38の内側の縁部がウェハWの垂直面の半径方向内側に位置し、かつ押圧パッド51の内側の縁部がウェハWの垂直面の半径方向外側に位置するまで、押圧パッド51および研磨テープ38がウェハWの半径方向内側の方向に移動する。このステップ4における押圧パッド51および研磨テープ38の移動は、半径方向移動機構45およびテープ移動機構46によって達成される。
ステップ5では、垂直移動機構59により押圧パッド51および研磨テープ38を下降させる。ステップ5での研磨テープ38の突出部の幅は、ステップ1での突出部の幅と同じか、または大きくてもよい。ステップ6では、研磨テープ38の一部(突出部)をウェハWの垂直面と表面(上面)とが交わる角部に押し当てて研磨テープ38の一部を上方に折り曲げる。この角部は、第1研磨工程によってウェハWのエッジ部に形成されたものである。ステップ7では、半径方向移動機構45により押圧パッド51をウェハWの半径方向内側に向かって押すことにより、研磨テープ38の折り曲げられた部分で垂直面を研磨する(第2研磨工程)。研磨テープ38が折り曲げられることによりその研磨面はウェハエッジ部の垂直面に接触する。したがって、ウェハWの垂直面は研磨テープ38の研磨面により研磨される。
この実施形態においても、第1研磨工程でウェハWのエッジ部に形成された垂直面は、第2研磨工程で研磨テープ38によって研磨される。したがって、滑らかな垂直面をウェハWのエッジ部に形成することができる。第1研磨工程および第2研磨工程のうち少なくとも1つは、研磨テープ38をその長手方向に移動させながら行なってもよい。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるために、研磨テープ38の移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。さらに、研磨痕を除去するために、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付けながら、研磨テープ38をウェハのWの半径方向に移動させることが好ましい。
図4に示すステップ3およびステップ4では、研磨テープ38をウェハWから一旦離間させているが、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に接触させたまま、研磨テープ38の一部を折り曲げてもよい。この例について図5を参照して説明する。図5は図4に示す研磨方法の他の例を説明するための図である。ステップ1およびステップ2に示す第1研磨工程は、図4に示すステップ1およびステップ2と同じである。第1研磨工程後、ステップ3では、研磨テープ38がウェハWに接触した状態で、押圧パッド51および研磨テープ38をウェハWの半径方向内側に向かって移動させ、研磨テープ38の一部(突出部)を第1研磨工程で形成されたエッジ部の垂直面に押し当てて研磨テープ38の一部を上方に折り曲げる。ステップ4では、半径方向移動機構45により押圧パッド51をウェハWの半径方向内側に向かってさらに押すことにより、研磨テープ38の折り曲げられた部分で垂直面を研磨する(第2研磨工程)。
図4に示す第1研磨工程(ステップ1〜3)と第2研磨工程(ステップ4〜7)を異なるタイプの研磨テープを用いて行なってもよい。この場合は、図6に示すように、互いに同一の構成を有する第1の研磨ユニット25Aおよび第2の研磨ユニット25Bを備えた研磨装置が使用される。これら研磨ユニット25A,25Bは、ウェハ保持部3に保持されたウェハWの中心に関して対称に配置されている。研磨ユニット25A,25Bは、図1に示す研磨ユニット25と同じ構成を有しているので、その重複する説明を省略する。
第1の研磨ユニット25Aは、ウェハWのエッジ部を目の粗い第1の研磨テープ38Aを有しており、第2の研磨ユニット25Bは、ウェハWのエッジ部を目の細かい第2の研磨テープ38Bを有している。図7は、図6に示す研磨装置を用いてウェハを研磨する方法を説明する図である。
ステップ1では、第1の研磨テープ38Aの一部が、第1の研磨ユニット25Aの押圧パッド51からウェハWの半径方向内側に向かって僅かに突出するように、第1の研磨テープ38Aと押圧パッド51とが位置決めされる。ステップ2では、第1の研磨ユニット25Aの垂直移動機構59により押圧パッド51を押し下げて第1の研磨テープ38Aの研磨面を回転するウェハWのエッジ部に押し付け、ウェハWのエッジ部に垂直面および水平面を形成する(第1研磨工程)。研磨中の押圧パッド51の内側の縁部は、第1の研磨テープ38Aを介してウェハWのエッジ部に押し当てられる。ステップ3では、垂直移動機構59により第1の研磨ユニット25Aの押圧パッド51および第1の研磨テープ38Aが上昇し、第1の研磨テープ38AがウェハWから離間する。
ステップ4では、第2の研磨テープ38Bの一部が、第2の研磨ユニット25Bの押圧パッド51からウェハWの半径方向内側に向かって突出するように、第2の研磨テープ38Bと押圧パッド51とが位置決めされる。第2の研磨テープ38Bの内側の縁部はウェハWの垂直面の半径方向内側に位置し、かつ第2の研磨ユニット25Bの押圧パッド51の内側の縁部はウェハWの垂直面の半径方向外側に位置している。第2の研磨ユニット25Bの押圧パッド51の内側の縁部とウェハWの垂直面との水平方向の距離は、第2の研磨テープ38Bの厚さよりも大きい。
ステップ5では、第2の研磨ユニット25Bの垂直移動機構59により押圧パッド51および第2の研磨テープ38Bを下降させ、ステップ6で、第2の研磨テープ38Bの一部(突出部)をウェハWの垂直面と表面(上面)とが交わる角部に押し当てて第2の研磨テープ38Bの一部を上方に折り曲げる。この角部は、第1研磨工程によってウェハWのエッジ部に形成されたものである。ステップ7では、第2の研磨ユニット25Bの半径方向移動機構45により押圧パッド51をウェハWの半径方向内側に向かって押すことにより、第2の研磨テープ38Bの折り曲げられた部分で垂直面を研磨する(第2研磨工程)。第2の研磨テープ38Bが折り曲げられることによりその研磨面はウェハエッジ部の垂直面に接触する。したがって、ウェハWの垂直面は第2の研磨テープ38Bの研磨面により研磨される。第1研磨工程および第2研磨工程のうち少なくとも1つは、研磨テープをその長手方向に移動させながら行なってもよい。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるために、研磨テープの移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。さらに、研磨痕を除去するために、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に押し付けながら、研磨テープ38をウェハのWの半径方向に移動させることが好ましい。
本実施形態によれば、目の細かい第2の研磨テープによりより滑らかな垂直面をウェハWのエッジ部に形成することができる。さらに、ウェハWをウェハ保持部3に保持させたまま、異なるタイプの研磨テープで多段階研磨ができる。本実施形態は、第1研磨工程と第2研磨工程との間でウェハWを搬送する必要がなく、第1研磨工程と第2研磨工程との間でのウェハのセンタリングのずれをなくすことができるという利点がある。なお、3つ以上の研磨ユニットを配置することも可能である。
次に、本発明に係る研磨方法のさらに他の実施形態について説明する。図8(a)乃至図8(e)は、本発明に係る研磨方法のさらに他の実施形態を説明するための図である。この実施形態では、研磨テープは、ウェハWのエッジ部上をウェハWの半径方向にスライドしながら、複数回に亘ってウェハWのエッジ部を研磨する。具体的には、図8(a)に示すように、研磨テープ38の一部が押圧パット51から半径方向内側に突出した状態で、研磨テープ38を押圧パット51によりウェハWのエッジ部に押し当て、さらに研磨テープ38がエッジ部に接触した状態で研磨テープ38および押圧パッド51をウェハWの半径方向内側に向かって移動させる。研磨テープ38は、所定の停止位置に達するまでエッジ部上をスライドし、エッジ部を研磨する。
同じようにして、図8(b)乃至図8(e)に示すように、研磨テープ38をエッジ部上をスライドさせるスライド研磨工程を繰り返す。スライド研磨工程を行うたびに、研磨テープ38の停止位置をウェハWの半径方向内側に向かって少しだけ移動させる。このように、研磨テープ38の停止位置を少しずつ内側に移動させながらスライド研磨工程を繰り返すことにより、図40に示すような逆テーパ面をウェハWのエッジ部に形成することができる。研磨テープ38が所定の停止位置に達した後、次のスライド研磨工程を開始する前に、押圧パッド51および研磨テープ38を一旦ウェハWから離間させて次のスライド研磨工程の開始位置に移動させてもよいし、または押圧パッド51および研磨テープ38をウェハWの半径方向外側にスライドさせて次のスライド研磨工程の開始位置に移動させてもよい。本実施形態においても、研磨テープ38をその長手方向に移動させながらスライド研磨工程を行なってもよい。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるために、研磨テープ38の移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。
図8(b)乃至図8(e)に示すスライド研磨によりエッジ部に形成された逆テーパ面は、SOI(Silicon on Insulator)基板の製造に有利である。SOI基板は、デバイスウェハとシリコンウェハとを貼り合わせることで製造される。より具体的には、図9(a)および図9(b)に示すように、デバイスウェハW1とシリコンウェハW2とを貼り合わせ、貼り合わせたデバイスウェハW1とシリコンウェハW2を反転させ、図9(c)に示すように、デバイスウェハW1をその裏面からグラインダーで研削することで、図9(d)に示すようなSOI基板を得る。図9(d)から分かるように、シリコンウェハW2上のデバイス層の端面は逆テーパ面であるので、デバイス層が破損しにくいという利点がある。
図10は、本発明に係る研磨方法のさらに他の実施形態を説明するための図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述の実施形態と同様であるのでその重複する説明を省略する。研磨テープ38をウェハWの接線方向に沿って配置する点では本実施形態は上述の実施形態と同じであるが、本実施形態では、押圧パッド51の縁部を研磨テープ38の縁部に一致させた状態で、押圧パッド51により研磨テープ38をウェハWのエッジ部に対して押し付けてウェハWのエッジ部を研磨する点で、上述の実施形態と異なっている。
本実施形態に係る研磨方法は、初期段階研磨工程である第1研磨工程、高除去レート研磨工程である第2研磨工程、および最終段階研磨工程である第3研磨工程を含んでいる。第1研磨工程は、ウェハWを回転させながら、押圧パッド51により第1の押し付け圧力で研磨テープ38の縁部をウェハWのエッジ部に対して押し付ける工程である。第2研磨工程は、ウェハWを回転させながら、押圧パッド51により第1の押し付け圧力よりも高い第2の押し付け圧力で研磨テープ38の縁部をウェハWのエッジ部に対して押し付ける工程である。そして、第3研磨工程は、ウェハWを回転させながら、押圧パッド51により第2の押し付け圧力よりも低い第3の押し付け圧力で研磨テープ38の縁部をウェハWのエッジ部に対して押し付ける工程である。第1研磨工程、第2研磨工程、および第3研磨工程では、押圧パッド51の縁部により研磨テープ38の縁部がウェハWのエッジ部に押し付けられ、これによりウェハWのエッジ部に垂直面および水平面が形成される。
第1研磨工程、第2研磨工程、第3研磨工程では、研磨テープ38のウェハWへの押し付け圧力およびウェハWの回転速度を適宜変えることができる。例えば、第1研磨工程ではウェハWを第1の回転速度で回転させ、第2研磨工程では第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転させることが好ましい。第3研磨工程でのウェハWの回転速度は、上記第1の回転速度と同じでもよいし、または上記第2の回転速度と同じでもよい。また、第3研磨工程での上記第3の押し付け圧力は、第1研磨工程での第1押し付け圧力と同じでもよく、または第1の押し付け圧力よりも低くてもよく、または第1の押し付け圧力よりも高くてもよい。
第1研磨工程では、低い押し付け圧力でウェハWがゆっくりと研磨されるので、角部に欠損を生じることなく、ウェハWのエッジ部に直角の角部を形成することができる。第2研磨工程では、高い押し付け圧力でウェハWが研磨されるので、全体の研磨時間を短くすることができる。第3研磨工程では、低い押し付け圧力でウェハWが研磨されるので、表面粗さを改善することができる。第3研磨工程の後に、さらに追加の研磨工程を実施してもよい。
本実施形態では、研磨テープ38の縁部と押圧パッド51の縁部とが一致した状態で、研磨テープ38の縁部を含む平坦部が、ウェハWのエッジ部に押し当てられる。研磨テープ38の縁部は直角な角部であり、この直角な縁部が押圧パッド51の縁部によりウェハWの周縁部に上から押圧される。したがって、図10に示すように、研磨されたウェハWの断面形状を直角とすることができる。第1研磨工程、第2研磨工程、および第3研磨工程は、研磨テープ38をその長手方向に移動させながら行なってもよい。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるために、研磨テープ38の移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。
次に、上述した研磨方法の実施形態を実行することができる研磨装置の詳細について説明する。図11は、研磨装置を示す平面図であり、図12は、図11のF−F線断面図であり、図13は、図12の矢印Gで示す方向から見た図である。研磨装置は、研磨対象物であるウェハ(基板)Wを水平に保持し、回転させるウェハ保持部3を備えている。図11においては、ウェハ保持部3がウェハWを保持している状態を示している。ウェハ保持部3は、ウェハWの下面を真空吸引により保持する保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。ウェハWは、ウェハWの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
保持ステージ4は、隔壁20とベースプレート21によって形成された研磨室22内に配置されている。隔壁20は、ウェハWを研磨室22に搬入および搬出するための搬送口20aを備えている。搬送口20aは、水平に延びる切り欠きとして形成されている。この搬送口20aは、シャッター23により閉じることが可能となっている。
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通路7に連通している。連通路7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通路7は、処理後のウェハWを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、ウェハWを保持ステージ4の上面に保持し、離脱させる。
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6は円筒状のケーシング12に固定されている。したがって、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線移動が可能であり、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
ケーシング12と、その外側に同心上に配置された円筒状のケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、ウェハ保持部3は、ウェハWをその中心軸まわりに回転させ、かつウェハWをその中心軸に沿って上昇下降させることができる。
ウェハ保持部3に保持されたウェハWの半径方向外側には、ウェハWの周縁部を研磨する研磨ユニット25が配置されている。この研磨ユニット25は、研磨室22の内部に配置されている。図13に示すように、研磨ユニット25の全体は、設置台27の上に固定されている。この設置台27はアームブロック28を介して研磨ユニット移動機構30に連結されている。
研磨ユニット移動機構30は、アームブロック28を保持するボールねじ機構31と、このボールねじ機構31を駆動するモータ32と、ボールねじ機構31とモータ32とを連結する動力伝達機構33とを備えている。動力伝達機構33は、プーリーおよびベルトなどから構成されている。モータ32を作動させると、ボールねじ機構31がアームブロック28を図13の矢印で示す方向に動かし、研磨ユニット25全体がウェハWの接線方向に移動する。この研磨ユニット移動機構30は、研磨ユニット25を所定の振幅および所定の速度で揺動させるオシレーション機構としても機能する。
研磨ユニット25は、研磨テープ38を用いてウェハWの周縁部を研磨する研磨ヘッド50と、研磨テープ38を研磨ヘッド50に供給し、かつ研磨ヘッド50から回収する研磨テープ供給回収機構70を備えている。研磨ヘッド50は、研磨テープ38の研磨面をウェハWの周縁部に上から押し当ててウェハWのトップエッジ部を研磨するトップエッジ研磨ヘッドである。研磨テープ供給回収機構70は、研磨テープ38をウェハWの表面と平行に支持する研磨テープ支持機構としても機能する。
図14は研磨ヘッド50および研磨テープ供給回収機構70の平面図であり、図15は研磨ヘッド50および研磨テープ供給回収機構70の正面図であり、図16は図15に示すH−H線断面図であり、図17は図15に示す研磨テープ供給回収機構70の側面図であり、図18は図15に示す研磨ヘッド50を矢印Iで示す方向から見た縦断面図である。
設置台27の上には、ウェハWの半径方向と平行に延びる2つの直動ガイド40A,40Bが配置されている。研磨ヘッド50と直動ガイド40Aとは、連結ブロック41Aを介して連結されている。さらに、研磨ヘッド50は、該研磨ヘッド50を直動ガイド40Aに沿って(すなわち、ウェハWの半径方向に)移動させるモータ42Aおよびボールねじ43Aに連結されている。より具体的には、ボールねじ43Aは連結ブロック41Aに固定されており、モータ42Aは設置台27に支持部材44Aを介して固定されている。モータ42Aは、ボールねじ43Aのねじ軸を回転させるように構成されており、これにより、連結ブロック41Aおよびこれに連結された研磨ヘッド50は直動ガイド40Aに沿って移動される。モータ42A、ボールねじ43A、および直動ガイド40Aは、ウェハ保持部3に保持されたウェハWの半径方向に研磨ヘッド50を移動させる第1の移動機構45を構成する。
同様に、研磨テープ供給回収機構70と直動ガイド40Bとは、連結ブロック41Bを介して連結されている。さらに、研磨テープ供給回収機構70は、該研磨テープ供給回収機構70を直動ガイド40Bに沿って(すなわち、ウェハWの半径方向に)移動させるモータ42Bおよびボールねじ43Bに連結されている。より具体的には、ボールねじ43Bは連結ブロック41Bに固定されており、モータ42Bは設置台27に支持部材44Bを介して固定されている。モータ42Bは、ボールねじ43Bのねじ軸を回転させるように構成されており、これにより、連結ブロック41Bおよびこれに連結された研磨テープ供給回収機構70は直動ガイド40Bに沿って移動される。モータ42B、ボールねじ43B、および直動ガイド40Bは、ウェハ保持部3に保持されたウェハWの半径方向に研磨テープ38および研磨テープ供給回収機構(研磨テープ支持機構)70を移動させるテープ移動機構(第2の移動機構)46を構成する。
図18に示すように、研磨ヘッド50は、研磨テープ38をウェハWに対して押し付ける押圧パッド51と、押圧パッド51を保持するパッドホルダー52と、このパッドホルダー52(および押圧パッド51)を押し下げる押圧機構としてのエアシリンダ53とを備えている。エアシリンダ53は、保持部材55に保持されている。さらに、保持部材55は、鉛直方向に延びる直動ガイド54を介してリフト機構としてのエアシリンダ56に連結されている。図示しない気体供給源から空気などの気体がエアシリンダ56に供給されると、エアシリンダ56は保持部材55を押し上げる。これにより、保持部材55、エアシリンダ53、パッドホルダー52、および押圧パッド51は、直動ガイド54に沿って持ち上げられる。
本実施形態では、押圧パッド51をウェハ表面に対して垂直な方向に移動させる垂直移動機構59は、エアシリンダ53およびエアシリンダ56によって構成される。さらに、モータ42A、ボールねじ43A、および直動ガイド40Aから構成される第1の移動機構45は、押圧パッド51および垂直移動機構59をウェハWの半径方向に移動させる半径方向移動機構としても機能する。
エアシリンダ56は、連結ブロック41Aに固定された据付部材57に固定されている。据付部材57とパッドホルダー52とは、鉛直方向に延びる直動ガイド58を介して連結されている。エアシリンダ53によりパッドホルダー52を押し下げると、押圧パッド51は直動ガイド58に沿って下方に移動し、研磨テープ38をウェハWのエッジ部に対して押し付ける。押圧パッド51は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のなどの樹脂、ステンレス鋼などの金属、またはSiC(炭化ケイ素)などのセラミックから形成されている。
押圧パッド51は、鉛直方向に延びる複数の貫通孔51aを有しており、この貫通孔51aには真空ライン60が接続されている。真空ライン60には、図示しない弁が設けられており、弁を開くことにより押圧パッド51の貫通孔51a内に真空が形成されるようになっている。押圧パッド51が研磨テープ38の上面に接触した状態で貫通孔51aに真空が形成されると、研磨テープ38の上面は押圧パッド51の下面に保持される。なお、押圧パッド51の貫通孔51aは1つであってもよい。貫通孔51aの形状は、研磨テープ38が真空により押圧パッド51に確実に保持されるのであれば、特に限定されない。例えば、貫通孔51aはスリット状であってもよく、または異なる形状を有した1つまたは複数の貫通孔51aを設けてもよい。
パッドホルダー52、エアシリンダ53、保持部材55、エアシリンダ56、および据付部材57は、ボックス62内に収容されている。パッドホルダー52の下部はボックス62の底部から突出しており、パッドホルダー52の下部に押圧パッド51が取り付けられている。ボックス62内には、押圧パッド51の鉛直方向の位置を検出する位置センサ63が配置されている。この位置センサ63は、据付部材57に取り付けられている。パッドホルダー52には、センサターゲットとしてのドグ64が設けられており、位置センサ63はドグ64の鉛直方向の位置から押圧パッド51の鉛直方向の位置を検出するようになっている。
図19は、位置センサ63およびドグ64を上から見た図である。位置センサ63は、投光部63Aと受光部63Bとを有している。ドグ64がパッドホルダー52(および押圧パッド51)とともに下降すると、投光部63Aから発せられた光の一部がドグ64によって遮られる。したがって、受光部63Bによって受光される光の量からドグ64の位置、すなわち押圧パッド51の鉛直方向の位置を検出することができる。なお、図19に示す位置センサ63はいわゆる透過型の光学式センサであるが、他のタイプの位置センサを用いてもよい。
研磨テープ供給回収機構70は、研磨テープ38を研磨ヘッド50に供給する供給リール71と、研磨テープ38を研磨ヘッド50から回収する回収リール72とを備えている。供給リール71および回収リール72は、それぞれテンションモータ73,74に連結されている。これらテンションモータ73,74は、所定のトルクを供給リール71および回収リール72に与えることにより、研磨テープ38に所定のテンションをかけることができるようになっている。
供給リール71と回収リール72との間には、研磨テープ送り機構76が設けられている。この研磨テープ送り機構76は、研磨テープ38を送るテープ送りローラ77と、研磨テープ38をテープ送りローラ77に対して押し付けるニップローラ78と、テープ送りローラ77を回転させるテープ送りモータ79とを備えている。研磨テープ38はニップローラ78とテープ送りローラ77との間に挟まれている。テープ送りローラ77を図15の矢印で示す方向に回転させることにより、研磨テープ38は供給リール71から回収リール72に送られる。
テンションモータ73,74およびテープ送りモータ79は、基台81に設置されている。この基台81は連結ブロック41Bに固定されている。基台81は、供給リール71および回収リール72から研磨ヘッド50に向かって延びる2本の支持アーム82,83を有している。支持アーム82,83には、研磨テープ38を支持する複数のガイドローラ84A,84B,84C,84D,84Eが取り付けられている。研磨テープ38はこれらのガイドローラ84A〜84Eにより、研磨ヘッド50を囲むように案内される。
研磨テープ38の延びる方向は、上から見たときに、ウェハWの半径方向に対して垂直である。研磨ヘッド50の下方に位置する2つのガイドローラ84D,84Eは、研磨テープ38の研磨面がウェハWの表面(上面)と平行となるように研磨テープ38を支持している。さらに、これら2つのガイドローラ84D,84Eの間にある研磨テープ38は、ウェハWの接線方向と平行に延びている。研磨テープ38とウェハWとの間には、鉛直方向において隙間が形成されている。
研磨装置は、研磨テープ38の縁部の位置を検出するテープエッジ検出センサ100をさらに備えている。テープエッジ検出センサ100は、上述した位置センサ63と同様に、透過型の光学式センサである。テープエッジ検出センサ100は、投光部100Aと受光部100Bとを有している。投光部100Aは、図14に示すように、設置台27に固定されており、受光部100Bは、図12に示すように、研磨室22を形成するベースプレート21に固定されている。このテープエッジ検出センサ100は、受光部100Bによって受光される光の量から研磨テープ38の縁部の位置を検出するように構成されている。
ウェハWを研磨するときは、図20に示すように、研磨ヘッド50および研磨テープ供給回収機構70は、モータ42A,42Bおよびボールねじ43A,43Bによりそれぞれ所定の研磨位置にまで移動される。研磨位置にある研磨テープ38は、ウェハWの上から見たとき、ウェハWの接線方向に延びている。したがって、研磨テープ供給回収機構70は、ウェハWの接線方向に沿った状態で研磨テープ38をウェハWの表面と平行に支持する研磨テープ支持機構として機能する。
図21は、図3(a)乃至図3(d)に示す研磨方法および図4,図7に示す研磨方法を実施するときの研磨位置にある押圧パッド51、研磨テープ38、およびウェハWを横方向から見た模式図である。図21に示すように、研磨テープ38は、ウェハWのエッジ部の上方に位置し、さらに研磨テープ38の上方に押圧パッド51が位置する。図22は、押圧パッド51により研磨テープ38をウェハWに押し付けている状態を示す図である。
図23は、図10に示す研磨方法を実施するときの押圧パッド51、研磨テープ38、およびウェハWを横方向から見た模式図である。図23に示すように、研磨位置にある押圧パッド51の縁部と研磨テープ38の縁部は一致している。すなわち、押圧パッド51の縁部と研磨テープ38の縁部が一致するように、研磨ヘッド50および研磨テープ供給回収機構70がそれぞれ独立に研磨位置に移動される。ただし、押圧パッド51の縁部と研磨テープ38の縁部は完全に一致している必要はなく、研磨テープ38の縁部が押圧パッド51の縁部から20μm〜100μmほどはみ出していてもよい。
研磨テープ38は、細長い帯状の研磨具である。研磨テープ38の幅は基本的にはその全長に亘って一定であるが、研磨テープ38の部分によってはその幅に若干のばらつきがあることがある。このため、研磨位置にある研磨テープ38の縁部の位置がウェハごとに異なるおそれがある。一方、研磨位置にある押圧パッド51の位置は、常に一定である。そこで、研磨テープ38の縁部を押圧パッド51の縁部に合わせるために、研磨位置に移動される前に、研磨テープ38の縁部の位置が上述のテープエッジ検出センサ100により検出される。
図24(a)乃至図24(c)は、研磨テープ38の縁部を検出するときの動作を説明する図である。ウェハWの研磨に先立って、研磨テープ38は、図24(a)に示す退避位置から、図24(b)に示すテープエッジ検出位置に移動される。このテープエッジ検出位置において、テープエッジ検出センサ100により、研磨テープ38のウェハ側の縁部の位置が検出される。そして、図24(c)に示すように研磨テープ38の一部が押圧パッド51の縁部から所定の幅だけはみ出るように、または図23に示すように研磨テープ38の縁部が押圧パッド51の縁部と一致するように、研磨テープ38が研磨位置に移動される。
研磨位置にある押圧パッド51の縁部の位置は予め研磨制御部11(図11参照)に記憶されている。したがって、研磨制御部11は、検出された研磨テープ38の縁部の位置と、押圧パッド51の縁部の位置とから、研磨テープ38の移動距離を算出することができる。このように、検出された研磨テープ38の縁部の位置に基づいて研磨テープ38の移動距離が決定されるので、研磨テープ38の幅のばらつきによらず、研磨テープ38を所定の位置に移動させることができる。
次に、上述のように構成された研磨装置の研磨動作について説明する。以下に説明する研磨装置の動作は、図11に示す研磨制御部11によって制御される。ウェハWは、その表面に形成されている膜(例えば、デバイス層)が上を向くようにウェハ保持部3に保持され、さらにウェハWの中心周りに回転される。回転するウェハWの中心には、図示しない液体供給機構から液体(例えば、純水)が供給される。研磨ヘッド50の押圧パッド51および研磨テープ38は、図21に示すように、それぞれ所定の研磨位置にまで移動される。
図25(a)は、研磨位置にある研磨テープ38および押圧パッド51をウェハWの径方向から見た図を示している。図25(a)に示す押圧パッド51は、エアシリンダ56(図18参照)により持ち上げられた状態にあり、押圧パッド51は研磨テープ38の上方に位置している。次に、エアシリンダ56の動作を停止させてそのピストンロッドを下げ、図25(b)に示すように、押圧パッド51は、その下面が研磨テープ38の上面に接触するまで下降される。この状態で真空ライン60を介して押圧パッド51の貫通孔51aに真空を形成し、研磨テープ38を押圧パッド51の下面に保持させる。研磨テープ38を保持したまま、押圧パッド51はエアシリンダ53(図18参照)により下降され、図25(c)に示すように、押圧パッド51は、研磨テープ38の研磨面をウェハWの周縁部に所定の研磨圧力で押し付ける。研磨圧力は、研磨テープ38からウェハWの周縁部に作用する押し付け圧力である。この研磨圧力は、エアシリンダ53に供給する気体の圧力により調整することができる。
ウェハWのエッジ部は、回転するウェハWと研磨テープ38との摺接により研磨される。ウェハWの研磨レートを上げるために、ウェハWの研磨中に研磨ユニット移動機構30により研磨テープ38および押圧パッド51をウェハWの接線方向に沿って揺動させてもよい。研磨中は、回転するウェハWの中心部に液体(例えば純水)が供給され、ウェハWは水の存在下で研磨される。ウェハWに供給された液体は、遠心力によりウェハWの上面全体に広がり、これによりウェハWに形成されたデバイスに研磨屑が付着してしまうことが防止される。上述したように、研磨中は、研磨テープ38は、真空吸引により押圧パッド51に保持されているので、研磨テープ38と押圧パッド51との位置がずれることが防止される。したがって、研磨位置および研磨形状を安定させることができる。さらに、研磨圧力を大きくしても、研磨テープ38と押圧パッド51との位置がずれることがないため、研磨時間を短縮することができる。
ウェハWの研磨中の押圧パッド51の鉛直方向の位置は、位置センサ63により検出される。したがって、押圧パッド51の鉛直方向の位置から研磨終点を検出することができる。例えば、押圧パッド51の鉛直方向の位置が所定の目標位置に達したときに、ウェハWのエッジ部の研磨を終了することができる。この所定の目標位置は、目標とする研磨量に従って決定される。
ウェハWの研磨が終了すると、エアシリンダ53への気体の供給が停止され、これにより押圧パッド51が図25(b)に示す位置にまで上昇する。同時に、研磨テープ38の真空吸引が停止される。さらに、押圧パッド51はエアシリンダ56により図25(a)に示す位置にまで上昇される。そして、研磨ヘッド50および研磨テープ供給回収機構70は、図14に示す退避位置に移動される。研磨されたウェハWは、ウェハ保持部3によって上昇され、図示しない搬送機構のハンドによって研磨室22の外に搬出される。次のウェハの研磨が始まる前に、研磨テープ38はテープ送り機構76により所定の距離だけ供給リール71から回収リール72に送られる。これにより、新しい研磨面が次のウェハの研磨に使用される。研磨テープ38が研磨屑により目詰まりをしていると推定されるときは、研磨テープ38を所定の距離だけ送った後、研磨されたウェハWを新しい研磨面で再び研磨してもよい。研磨テープ38の目詰まりは、例えば、研磨時間および研磨圧力から推定することができる。
研磨テープ38をその長手方向にテープ送り機構76によって所定の速度で送りながら(移動させながら)、ウェハWを研磨してもよい。この場合、ウェハWの研磨レートを上げるために、研磨テープ38の移動方向は、回転するウェハWのエッジ部の進行方向と対抗することが好ましい。研磨テープ38を真空吸引により押圧パッド51に保持したまま、テープ送り機構76で研磨テープ38をその長手方向に送ることも可能である。場合によっては、研磨テープ38を真空吸引により押圧パッド51に保持しなくてもよい。
図26(a)に示すように、ウェハWへの研磨圧力を大きくした場合、ウェハWは押圧パッド51の研磨圧力により大きく撓み、その結果、図26(b)に示すように、ウェハWの被研磨面は斜めになってしまうことがある。そこで、図27に示す実施形態では、ウェハWの周縁部を下から支えるサポートステージ180がウェハ保持部3に設けられている。特に説明しない他の構成は、図12に示す構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。サポートステージ180は、サポートステージ台181に固定されている。このサポートステージ台181は、ケーシング12の上端に固定されており、ケーシング12と一体に回転するようになっている。したがって、サポートステージ180は、ケーシング12および保持ステージ4と一体に回転する。
サポートステージ180は、ウェハWの周縁部下面をその全体に亘って支持するために、図28に示すような逆円錐台形を有している。サポートステージ180によって支持されるウェハWの周縁部下面は、図36(a)および図36(b)に示すボトムエッジ部E2を少なくとも含む領域である。サポートステージ180の環状の上面180aは、ウェハWの周縁部下面を支持する支持面を構成している。ウェハWの研磨時には、サポートステージ180の最外周端とウェハWの最外周端とはほぼ一致する。
このようなサポートステージ180を使用することで、押圧パッド51がウェハWに研磨テープ38を押し付けても、ウェハWが撓むことはない。したがって、研磨テープ38でウェハWのエッジ部を研磨することで、ウェハWのエッジ部に垂直面および水平面を形成することができる。また、サポートステージ180は、ウェハWの周縁部下面の全体を支持するので、ウェハの一部のみを支持する従来のウェハ支持機構に比べて、ウェハWのエッジ部を均一に研磨することができる。
中空シャフト5とケーシング12との間にはボールスプライン軸受6が配置されているので、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下方向に移動することができる。したがって、中空シャフト5の上端に連結された保持ステージ4は、ケーシング12およびサポートステージ180に対して相対的に上下方向に移動することが可能となっている。図29は、保持ステージ4とその上面に保持されたウェハWが、サポートステージ180に対して相対的に上昇した状態を示している。
研磨テープ38は、ウェハWとの接触具合やウェハWの周縁部の形状の影響により水平方向の荷重を受けることがある。その結果、研磨テープ38がウェハWの外側に逃げてしまう場合がある。そこで、図30に示すように、研磨テープ38の水平方向の移動を制限するテープストッパー185が押圧パッド51に設けられている。テープストッパー185は、ウェハWの半径方向において研磨テープ38の外側に配置されており、研磨テープ38の外側への動きを制限する。このように配置されたテープストッパー185により、研磨テープ38がウェハWの外側に逃げることを防ぐことができる。したがって、ウェハWの研磨形状および研磨幅を安定させることができる。
研磨テープ38の外側への動きがテープストッパー185によって受け止められると、図31に示すように、研磨テープ38がゆがむことがある。そこで、図32に示す実施形態では、研磨テープ38のゆがみを防止すべく、研磨テープ38の研磨面に近接してテープカバー186が設けられている。テープカバー186は、テープストッパー185に固定されており、研磨テープ38の研磨面の大部分を覆うように配置されている。テープカバー186は、研磨テープ38の下方に配置されており、研磨テープ38の研磨面とテープカバー186の上面との間には、微小な隙間dgが形成されている。研磨テープ38は、押圧パッド51とテープカバー186との間に配置される。このようなテープカバー186を設けることで、研磨テープ38がゆがんでしまうことが防止され、研磨テープ38を平坦に保つことができる。したがって、ウェハWの研磨形状および研磨幅を安定させることができる。
図32に示すように、押圧パッド51、テープストッパー185、およびテープカバー186に囲まれる空間に研磨テープ38が配置される。押圧パッド51の下面とテープカバー186の上面との隙間hは、研磨テープ38の厚さよりも大きく設定されている。研磨テープ38とテープカバー186との隙間dgは、ウェハWの厚さよりも小さい。
テープカバー186の内側面186aは、押圧パッド51の縁部51bよりもウェハWの半径方向において外側に位置している。したがって、研磨テープ38の研磨面は、研磨テープ38の縁部とテープカバー186の内側面186aとの間の距離dwだけ露出する。ウェハWの研磨は、この露出した研磨面で行われる。
図32に示す構造では、研磨テープ38に作用する水平方向の荷重をテープストッパー185が受け止めるため、押圧パッド51が研磨テープ38とともに外側へ動くことがある。このような押圧パッド51の動きは、研磨形状および研磨幅を不安定にさせてしまう。そこで、図33に示す実施形態では、押圧パッド51の外側への動きを制限する移動制限機構が設けられている。この移動制限機構は、押圧パッド51に固定された突起部材190と、この突起部材190の水平方向の動きを制限するサイドストッパー191とを有している。本実施形態では、突起部材190としてプランジャが使用されている。
サイドストッパー191は、ウェハWの半径方向においてプランジャ(突起部材)190の外側に配置されており、プランジャ190の外側への動きを受け止める。サイドストッパー191は、研磨ヘッド50のボックス62の下面に固定されており、サイドストッパー191の位置は固定されている。プランジャ190とサイドストッパー191とは互いに近接して配置されており、プランジャ190とサイドストッパー191との隙間drは、10μmから100μmである。このような構成によれば、研磨中に押圧パッド51が研磨テープ38から水平荷重を受けて外側に移動すると、プランジャ190がサイドストッパー191に接触し、これにより押圧パッド51および研磨テープ38の外側への動きが制限される。したがって、ウェハWの研磨形状および研磨幅を安定させることができる。
図27乃至図33に示す実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、図34は、図27に示すサポートステージ180と、図33に示す研磨ヘッド50とを組み合わせた例を示している。この図34に示す構成によれば、ウェハWの撓みが防止されるとともに、研磨テープ38の移動やゆがみが防止される。
図35は、複数の研磨ユニットを備えた研磨装置を示す平面図である。この研磨装置では、研磨室22内に第1の研磨ユニット25Aおよび第2の研磨ユニット25Bが設けられている。研磨ユニット25A,25Bは、上述した研磨ユニット25と同一の構成を有しているので、その重複する説明を省略する。これら2つの研磨ユニット25A,25Bの配置は、ウェハ保持部3に保持されたウェハWに関して対称である。第1の研磨ユニット25Aは第1の研磨ユニット移動機構(図示せず)により移動可能となっており、第2の研磨ユニット25Bは第2の研磨ユニット移動機構(図示せず)により移動可能となっている。これら第1および第2の研磨ユニット移動機構は、上述の研磨ユニット移動機構30と同様の構成を有している。
第1の研磨ユニット25Aと第2の研磨ユニット25Bでは、異なるタイプの研磨テープを使用することができる。例えば、第1の研磨ユニット25AでウェハWの粗研磨を行い、第2の研磨ユニット25BでウェハWの仕上げ研磨をすることができる。図7に示す研磨方法は、図35に示す研磨装置を用いることにより実施することができる。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。