〔比較例1〕
(画像形成装置)
図1は画像形成装置の概略構成図である。図1では、本発明が適用できる画像形成装置の一実施形態である、電子写真方式を採用したフルカラー画像を形成する画像形成装置を示す。
図1に示すように、比較例1にて、画像形成装置100は、4つの画像形成部P(PY、PM、PC、PBk)を備える。Y、M、C、Bkの添え字は、それぞれイエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックBkの4色を示し、各画像形成部Pで形成されるトナー像の色を表している。各画像形成部Pの構造は同様であるため、以下、必要な場合を除いて、Y、M、C、Bkの添え字を省略して説明する。
画像形成部Pは、像担持体としての感光体ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)を備える。感光体ドラム1は矢印方向(時計回り)に回転するドラム状の電子写真感光体である。
感光体ドラム1の周囲には、各色ごとに、画像形成手段を有する。具体的には、感光体ドラム1の周囲に、帯電器2(2Y、2M、2C、2Bk)、現像装置40(40Y、40M、40C、40Bk)、ドラムクリーナ9(9Y、9M、9C、9Bk)を有する。また、感光体ドラム1の上方には、露光手段としてのレーザービームスキャナ3(3Y、3M、3C、3Bk)を有する。また、後述の中間転写ベルト5を介して一次転写ローラ6(6Y、6M、6C、6Bk)が各画像形成部Pごとに配設される。
次に、上記構成の画像形成装置全体の画像形成シーケンスについて説明する。
感光体ドラム1は、図1における矢印の方向(時計回り)に275mm/secのプロセススピード(周速度)で回転する。まず、感光体ドラム1が、帯電器2によって一様に帯電される。
帯電器2によって一様に帯電された感光体ドラム1は、次に、レーザービームスキャナ3による走査露光が行われる。
レーザービームスキャナ3は、半導体レーザーを内蔵している。半導体レーザーは、CCD等の光電変換素子を有する原稿読み取り装置が出力する原稿画像情報信号に対応して制御される。このため、半導体レーザーが制御されることで、画像信号から変調されたレーザー光が、レーザービームスキャナ3の半導体レーザーから射出される。すると、一様に帯電された感光体ドラム1の表面電位が画像を形成する部分において変化し、この変化した部分が静電潜像となる。感光体ドラム1上の静電潜像は、現像装置40からのトナー供給によって現像されると、可視画像、即ち、トナー像となる。
比較例1では、現像装置40は、現像剤としてトナーとキャリアを混合した現像剤を使用する二成分現像方式を用いる。
上記工程を画像形成部P(PY、PM、PC、PBk)ごとに行うことによって、感光体ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)上に、それぞれ、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像が形成される。
比較例1では、4つの画像形成部Pの下方位置に、中間転写ベルト5(中間転写体)が配置される。中間転写ベルト5は、張架ローラ51、二次転写内ローラ52、駆動ローラ53に懸架され、図中矢印方向(時計回り)に移動自在とされる。
感光体ドラム1(1Y、1M、1C、1Bk)上のトナー像は、一次転写部としての一次転写ローラ6(6Y、6M、6C、6Bk)によって、まず、中間転写ベルト5に一次転写される。これによって、中間転写ベルト5上にて、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、フルカラー画像が形成される。また、感光体ドラム1上に転写されずに残ったトナーは各画像形成部Pのドラムクリーナ9(9Y、9M、9C、9Bk)に回収される。重ね合わせられたフルカラー画像は、二次転写内ローラ52と対向する二次転写部まで搬送される。
一方、給送カセット12に載置される紙などの転写材Sは、給送ローラ13により取り出される。その後、転写材Sは、給送ガイド11を経由して、二次転写内ローラ52と二次転写ローラ10(二次転写部材)によって形成される二次転写部に搬送される。
二次転写部において、中間転写ベルト5上のフルカラー画像は、二次転写ローラ10の作用により転写材Sに転写される。二次転写されずに中間転写ベルト5の表面に残ったトナーは、中間転写ベルトクリーナ18に回収される。
その後、転写材Sは、定着器16(熱ローラ定着器)に送られる。定着器16では、トナー像が転写された転写材Sに対して加熱・加圧が行われ、画像の定着が行わる。トナー像の定着が行われた転写材Sは、排出トレー17に排出される。
尚、比較例1では、像担持体として、通常使用されるドラム状の有機感光体である感光体ドラム1を使用したが、これに限るものではない。例えば、アモルファスシリコン感光体等の無機感光体を使用することもできる。また、ベルト状の感光体を用いることも可能である。帯電方式、転写方式、クリーニング方式、定着方式に関しても、上記方式に限られるものではない。
(現像装置)
次に、図2を参照して、現像装置40の概略構成及び動作を説明する。図2は現像装置の断面図である。
比較例1に係る現像装置40は、現像容器41を有する。現像容器41内には、現像剤として、トナーとキャリアを含む二成分現像剤が収容される。また、現像装置40は、現像容器41内の現像剤を担持する現像スリーブ42(現像剤担持体)と、現像スリーブ42上に担持された現像剤の穂の高さを規制する規制ブレード43を有する。
現像容器41の内部は、その略中央部が図2の紙面に垂直方向に延在する隔壁44によって、現像室45と撹拌室46に区画されている。現像剤は、現像室45及び撹拌室46に収容され、次の構成により循環搬送される。
現像室45と撹拌室46には、それぞれ現像剤を撹拌・搬送するための搬送スクリューが配置される。具体的には、現像室45には第一搬送スクリュー47(第一搬送部材)が配置され、撹拌室46には第二搬送スクリュー48(第二搬送部材)が配置される。
第一搬送スクリュー47は、現像室45の底部に現像スリーブ42に対してほぼ平行に配置される。第一搬送スクリュー47は、回転することで、現像室45内の現像剤を、軸線方向に沿って一方向に搬送する。
第二搬送スクリュー48は、撹拌室46の底部に第一搬送スクリュー47に対してほぼ平行に配置される。第二搬送スクリュー48は、回転することで、撹拌室46内の現像剤を、第一搬送スクリュー47と反対方向に搬送する。
このように、第一搬送スクリュー47、第二搬送スクリュー48の回転による搬送によって、現像剤が隔壁44の両端にある開口部(連通部)を通じて現像室45と撹拌室46との間で循環される。
第一搬送スクリュー47及び第二搬送スクリュー48は、ともに外径18mm、軸径6mm、ピッチ20mmの形状である。また、作像時における第一搬送スクリュー47及び第二搬送スクリュー48の回転速度の設定値は、360rpmである。
次に、現像スリーブ42から感光体ドラム1へのトナーの供給に関わる構成及び動作を詳細に説明する。
比較例1においては、図2に示すように、現像容器41の感光体ドラム1に対向する現像領域に相当する位置は、開口している。この開口から、現像スリーブ42が感光体ドラム1方向に露出する。
比較例1において、現像スリーブ42の直径(外径)は20mm、感光体ドラム1の直径(外径)は40mmである。また、現像スリーブ42と感光体ドラム1との最近接領域を約340μmの距離とする。そして、現像スリーブ42は、感光体ドラム1と接触した状態で、現像領域に搬送した現像剤を感光体ドラム1に供給する。このように現像が行われる。
現像スリーブ42はアルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成される。現像スリーブ42の内部にはマグネットローラ42m(磁界発生部材)が非回転状態で設置される。マグネットローラ42mは、現像領域における感光体ドラム1に対向して配置された現像極N1と、規制ブレード43に近接して配置された磁極N2と、それらの間に配置された磁極S1と、現像室に対向して配置された磁極S2及び磁極S3を有する。作像時における現像スリーブ42の回転数は、420rpm(対感光ドラム周速比=160%)に設定される。
規制ブレード43は、現像スリーブ42の長手方向に延在した板状のアルミニウムなどの非磁性部材で構成される。規制ブレード43は、感光体ドラム1よりも現像スリーブ回転方向上流側に配設される。
現像スリーブ42は、現像時に図示矢印方向(時計回り)に回転しつつ、現像室45内の二成分現像剤を担持する。現像スリーブ42上には、マグネットローラ42mの作用により現像剤の層(いわゆる磁気ブラシ)が形成される。磁気ブラシは、規制ブレード43によって層厚を規制される。これを穂切りという。規制ブレード43による穂切りが行われると、現像スリーブ42上には層厚が規制された現像剤が担持される。
尚、規制ブレード43の現像スリーブ42の表面との間隙を調整することによって、現像スリーブ42上に担持した現像剤の磁気ブラシの穂切り量が規制される。これにより、現像領域へ搬送される現像剤量を調整することができる。
比較例1においては、規制ブレード43によって、現像スリーブ42上の単位面積当りの現像剤コート量を30mg/cm2に規制している。なお、規制ブレード43と現像スリーブ42は、間隙を200〜1000μm、好ましくは400〜700μmに設定される。比較例1では480μmに設定した。
この状態で、現像スリーブ42上に担持された現像剤が、感光体ドラム1と対向する現像領域に搬送される。この現像領域において現像剤(トナーとキャリアの両方)が感光体ドラム1に供給され、感光体ドラム1上に形成されていた静電潜像は、トナーにより現像される。
(現像スリーブ)
次に比較例1の特徴である現像スリーブ42の詳細構成について、図3を用いて詳細に説明する。図3は比較例1に係る現像スリーブの平面図である。
比較例1で使用している現像スリーブ42は、パイプ部201を有する。パイプ部201は、外径が20mm、内径が18.4mm、長手方向の長さは340mmであり、円筒状のアルミからなる。
パイプ部201の長手方向の両端部には、軸部202aを有するフランジ部202と軸部203aを有するフランジ部203が嵌合する。軸部202a及び軸部203aは、ベアリング等の軸受けに通す。
パイプ部201の表面には、長手方向に平行になるように、等間隔な溝206が形成される。図4は現像スリーブのパイプ部の表面の溝の断面拡大図である。図4に示すように、溝206はV字型である。比較例1では溝形状として溝深さd=0.095mm、溝角度θ=100°、溝間隔a=0.98mmとなるものを用いた。尚、溝206の形状やパラメータは、この数値に限定されるものではなく、使用する現像剤の種類等になって最適な形状を選ぶことができる。
比較例1では、溝206の深さdは、キャリアの半径Rよりも大きくしている。また、溝206のスリーブ周方向の幅は、キャリアの直径2Rよりも大きく、かつ、磁性キャリアの10個分の幅(20R)よりも小さい方が好ましい。溝206の幅が20Rよりも大きい場合、キャリアが引っ掛りにくく、溝206による搬送性向上の効果が充分に得られない可能性がある。
比較例1におけるパイプ部201の溝206の形状は次のように形成される。まず、アルミニウム(A6063)のパイプを用意し、次に、当該パイプを溝206を形成するための型に入れる。この型の内部には、V字形の溝形状に対応した突起が形成されている。このため、型に入った状態の前記パイプを型から引き抜くと、パイプ外径を所望の外径に形成するとともに、パイプの表面にはV字形の溝206が形成される。このように、パイプ部201の表面には長手方向全域に渡って、直線状の溝206が形成される。
パイプ部201の両端において、一端のフランジ部202には熱収縮チューブ204が、他端のフランジ部203には熱収縮チューブ205が被される。熱収縮チューブ204及び熱収縮チューブ205(端部シール部材)は、パイプ部201の長手方向が12mmとなるような幅を有する絶縁性の熱収縮チューブである。当該絶縁性の熱収縮チューブは、材料としてPETを用い、収縮後の厚さが約0.08mmとなるように構成される。尚、熱収縮チューブの材料としては、PETの他にもPFAなど他の材料を使うことも可能である。
このように、熱収縮チューブ204、205をパイプ部201の両端に被せることにより、パイプ部201表面に溝が露出している部分の長さを316mmに設定する。一方、熱収縮チューブ204、205で覆われ、溝206が露出しない部分の長さをパイプ部201の両端部でそれぞれ12mmに設定する。
また、表面に溝206が露出した部分の外径が20mmであるのに対して、その両端部でチューブを被せた部分の外径が約20.16mmとなる。このため、溝206が露出する部分と露出しない部分の境界部において、熱収縮チューブ204、205を被せた部分の方が0.08mmだけ高くなるような段差が生じることになる。尚、比較例1では、熱収縮チューブ204、205を被せた部分の方が0.08mmだけ高くなるようにしているが、同等以上であれば良い。
(現像スリーブ端部のシール構成)
次に比較例1における現像スリーブ端部のシール構成について図5を用いて説明する。図5は端部シール構成を説明するパイプ部の断面図である。比較例1のパイプ部201とフランジ部202、203との境界において、磁性板211とマグネットシート212とを用いて前記境界部分の端部シールを行う。
具体的には、現像スリーブ42の溝206が露出している部分の両端部(熱収縮チューブ204、205との段差がある部分)において、図5に示すように、現像スリーブ42の現像容器41側の面に対向するように、磁性板211が設置される。磁性板211は、比較例1においては、厚さ0.8mmの磁性体である。
磁性板211が現像スリーブ42に対向して設置されると、現像スリーブ42の内部に内包されたマグネットローラ42mの磁極から磁性板211に向けて磁力線が延びる。すると、現像剤のキャリア粒子は磁性板211に引きつけられ、前記磁力線に沿うように移動する。よって、現像スリーブ42の溝206が露出している部分の両端部(磁気シール部)において、磁気的にシールされる。
また、磁気シール部においては、図5に示すように、マグネットシート212が磁性板211の外側に隣接するように設置される。マグネットシート212は、幅10mm、厚さ1.5mmに成形されたシート状のマグネットであり、現像容器41(図2参照)の壁面に両面テープによって固定される。マグネットシート212表面の磁束密度は約55mTであり、現像スリーブ42と対向する面がN極、現像容器41に固定される側の面がS極となる。
マグネットシート212を配設する理由は次の通りである。マグネットローラ42mのS2極とS3極の間には磁束密度がほぼ0mTとなる現像剤剥ぎ取り領域が存在する。すると、前記現像剤剥ぎ取り領域とこれに対向する磁性板211との間には、磁力線が延びなくなるため、そのままでは磁気シールをすることができない。そこで、上述のように磁性板211にマグネットシート212を隣接させることによって、現像剤剥ぎ取り領域でも磁気的にシールすることが可能となる。
このように、パイプ部201表面に溝206が形成される領域(溝形成領域)を設け、溝形成領域に現像剤がコートされる。また溝形成領域の両端部、即ちシールを施すべき部分に磁性板211が設置される。このため、磁性板211が設置される位置から外側には、キャリア粒子が流出することを防止することが可能となる。
なお、上述のように、溝形成領域の端部の磁気シール部において磁性を有するキャリア粒子の漏れを防止することはできる一方で、非磁性であるトナー粒子は磁気的に拘束することができない。しかしながら、キャリア粒子が磁力線に沿って密集することで、キャリア間、もしくはキャリアと現像スリーブ42間の隙間を小さくすることができる。このため、キャリア粒子と現像スリーブ42の隙間からトナーが外側に抜けることを防止することができる。
また、現像スリーブに溝が形成される場合、図12を用いて説明したように、溝とキャリア粒子との間に隙間ができる。ここで、当該隙間はトナーの大きさに比べると大きいため、この隙間から溝に沿ってトナーが外側に抜けるおそれがあった。
そこで、比較例1においては、上述のようにパイプ部201の溝形成領域の外側に熱収縮チューブ204、205を被せ、溝206が消去された非溝形成領域を形成する。熱収縮チューブ204、205を被せた場合の効果について、図を用いて説明する。図6は熱収縮チューブを被せた状態のパイプ部端部の断面図である。比較例1では、溝206はパイプ部201の両端まで形成されている。このため、熱収縮チューブ204、205はパイプ部201の溝部の上を覆うように被せられている。
パイプ部201に熱収縮チューブ204、205を被せた領域では、図6に示すように、溝206の隙間の大部分が埋まる。このため、トナーが現像剤のコート領域の端部から外側にトナーが移動することを抑制することができる。
更に、比較例1では熱収縮チューブ204、205をパイプ部201の端部に被せる際、熱収縮チューブ204、205の熱収縮する前の長手方向の幅W1を、溝206が覆われる幅W0よりも長くする。図7は現像スリーブ42の端部において熱収縮チューブ205の状態を説明するための説明図である。熱収縮チューブ205の部分のみが断面図になっている。パイプ部201は、溝206が形成される溝形成領域A1と溝206が表面に現れない非溝形成領域A2を有する。尚、熱収縮チューブ205が覆われている現像スリーブ42の表面には溝部が形成されている。
例えば、図7に示すように、非溝形成領域A2の幅W0=12mmであれば、それよりも長く、W1=15mmにしておく。これにより、熱収縮後の熱収縮チューブ204、205は、図7に示すように、現像スリーブ42のパイプ部201の端部で折り返されるようになる。このため、溝206を断面方向から見たときの隙間を完全に塞ぐことになる。よって、現像スリーブ42の端部からのトナーの飛散を更に確実に防ぐことができる。
図8は熱収縮チューブの有無によるトナー飛散レベルを比較した図表である。即ち、図8では、上述の熱収縮チューブ204、205をパイプ部201端部に被せた場合と被せていない場合において、パイプ部201端部からのトナー飛散のレベルを比較している。
この比較検討は、画像形成装置本体を用いた連続プリント動作によって行う。そして、プリントする画像の画像比率を10%、現像剤のトナー濃度を8%でほぼ一定になるような制御を行った。トナー飛散のレベルの評価方法は、現像スリーブ端部から飛散したトナーによるその周辺のパーツの汚れレベルを5段階で評価する。汚れがほとんど無いレベルを5とし、汚れが顕著な状態を1とした。
その結果、熱収縮チューブ204、205をパイプ部201端部に被せなかった場合、図8の上段に示すように、プリント枚数(1Kは1000枚)が進むにつれて、現像スリーブ42端部からのトナー飛散のレベルが悪化した。特に、60K枚を過ぎたあたりから清掃が必要なほどのレベルに悪化した。
これに対して、比較例1の構成とした場合、図8の下段に示すように、プリント枚数が進んでも目立ったトナー飛散はなく、100K枚までプリントが進んでも顕著なトナー飛散が発生することはなかった。
また、比較例1では使用するトナーとしてマイナス極性に帯電するものを用いているが、その場合、熱収縮チューブ204、205の材質としてはトナーの帯電極性と同じ極性であるマイナスに帯電するものを用いた方がより好ましい。これは、トナーと同じ極性のものを用いることで、トナーは熱収縮チューブ204、205と電気的に反発するようになり、溝形成領域の端部からトナーが外側に移動しようとするのをより効果的に防止することができるためである。
比較例1では熱収縮チューブ204、205の材質としてPETを用いているが、これに限るものではない。他の材質でも、トナーと同極性のものを用いることで同様の効果を得ることができる。
尚、比較例1では溝形成領域A1の外側を覆って非溝形成領域A2とする端部シール部材として熱収縮チューブ204、205を用いたが、端部シール部材はこれに限るものではない。熱収縮チューブ204、205以外の部材、例えば絶縁性のテープを巻きつけることによっても、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、現像領域に現像剤を搬送する現像剤担持体として表面に規則的な凹状の溝が形成されたものを用いた場合、比較例1の構成は有効である。即ち、現像剤担持体の溝形成領域の外側を上述のような部材によって覆うことで、現像剤担持体の溝形状とキャリア粒子との隙間を伝って移動してきたトナーが更に外側に移動することを防ぐ。このため、現像剤担持体の端部からのトナー飛散による機内の汚染を防止し、常に安定した画像形成を行うことのできる画像形成装置を提供することが可能となった。
〔実施形態〕
本実施形態における画像形成装置、及び現像装置の構成で、前述の比較例1と同様の構成については、前述の比較例1と同一符号を用いて説明する。本実施形態では、現像スリーブ42のパイプ部201の表面にV字形状の溝206を形成した後、パイプ部201の両端を研磨し、両端の溝形状を消去したことを特徴とする。図9は実施形態に係る現像スリーブ42の平面図である。尚、図9の熱収縮チューブ224、225を表す部分のみが現像スリーブ42の断面を表している。
図9に示すように、本実施形態で使用する現像スリーブ42は、パイプ部221を有する。パイプ部221は、外径が20mm、内径が18.4mm、長手方向の長さは340mmの円筒状のアルミからなる。パイプ部221の両側から、ベアリング等の軸受けを通すための軸部222a、223aを有するフランジ部222、223が嵌合される。
パイプ部221の表面には長手方向に平行に等間隔で溝206が形成される。溝206の断面方向の形状は比較例1と同様にV字型の形状である。溝206の溝深さdが0.095mm、溝角度θが100°、溝間隔aが0.98mmとなるものを用いた(溝深さd、溝角度θは図4を参照)。この溝206の形成方法は比較例1と同様であるが、本実施形態では溝206形成後、パイプ部221の両端部を幅12mmだけ研磨する工程を加えている。
研磨工程は、研磨後のパイプ部221の外径が19.8mmになるように行うことで表面に形成されていた溝206を完全に消去する。これによって、溝形成領域の磁性板211の位置よりも外側の部分は、溝206が形成されていない領域となる。
一般に、表面に溝が形成された現像スリーブは、上述のように現像剤の搬送力に優れている。このため、従来のように、磁性板よりも外側まで溝形状が形成されていると、磁性板よりも外側に僅かにはみ出している現像剤までも搬送してしまい、端部シールによる漏れ防止の効果が低下してしまう場合があった。
そこで、本実施形態のように、磁性板211の位置よりも外側の部分のパイプ部221上の溝206を消去すると、溝206のある部分とない部分との境界面における長手方向への現像剤の搬送力を大きく低下させることができる。このため、現像スリーブ42の端部から外部へ現像剤が漏れることを防止し、端部シールの効果を十分に得られるようになる。このような構成により、比較例1の構成よりも、トナー漏れを更に確実に防止することができる。
しかしながら、パイプ部221の端部の溝206を、所定の研磨厚みだけ研磨することによって消去する。すると、パイプ部221における、溝206が形成された領域(溝形成領域)の外径よりも、溝が消去された領域(非溝形成領域)の外径が小さくなる。すると、溝形成領域と非溝形成領域との境界部において、非溝形成領域の方が高さが低くなるような段差部が生じることになる。すると、その段差部では溝形状の断面が露出した状態となるため、溝形状に沿って溝形成領域端部に移動してきたトナーが外側に漏れやすくなってしまう。
このような問題を防止するため、本実施形態では研磨工程によって外径が小さくなった非溝形成領域A2に、比較例1と同様の材質の熱収縮チューブ224、225を被せる。ここで熱収縮チューブ224、225は、収縮後の厚さが約0.15mmとなるものを被せる。こうすることで、熱収縮チューブ224、225を被せた部分の外径が約20.1mmとなり、溝形成領域A1と非溝形成領域A2との境界部においては非溝形成領域A2の方の高さが高くなるように段差が形成される。よって、境界部において溝形状の断面が露出することがなくなり、この部分でのトナー漏れを防止することができる。
トナー漏れ防止の効果を十分に得るためには、溝形成領域と非溝形成領域との境界部において、溝形状の断面が露出しないようにする必要がある。このため、熱収縮チューブ224、225を被せた後の非溝形成領域の外径が溝形成領域の外径以上であることが必要である。そこで、被せる熱収縮チューブの厚さとしては、収縮後の厚さt(mm)が片側の研磨量w(mm)以上(t≧w)のものを用いる。これにより、図9に示すように、熱収縮チューブ224、225を被せた後の非溝形成領域A2の外径が溝形成領域A1の外径以上である所望の形状を得ることができる。
尚、本実施形態では溝形成領域の外側を覆って非溝形成領域を構成するための端部シール部材として、熱収縮チューブ224、225を用いたが、それ以外の部材、例えば絶縁性のテープを巻きつけることによっても同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態のような構成とすることにより、現像スリーブ42端部を研磨することによって溝を消去したものを用いた場合でも、非溝形成領域の方が溝形成領域よりも高くなるように段差をつけることができる。このため、溝形成領域の端部において溝形状が露出することがなくなり、端部からのトナー飛散を確実に防止することが可能となる。
〔比較例2〕
比較例2における画像形成装置、及び現像装置の構成で、前述の実施形態と同様の構成については、前述の実施形態と同一符号を用いて説明する。
図10は比較例2に係る現像スリーブ42の平面図であり、(a)は完成図、(b)はフランジ部の取付前の図である。比較例2では図10に示すように、表面にV字形状の溝206が形成された溝形成領域A1と、その外側の非溝形成領域A2が別部材で構成されていることを特徴としている。次に詳しく説明する。
比較例2で使用している現像スリーブ42は、外径が20mm、内径が18.4mm、長手方向の長さは320mmの円筒状のアルミからなるパイプ部231を有する。パイプ部231の両側には、ベアリング等の軸受けを通すための軸部232a、233aを有するフランジ部232、233が嵌合される。パイプ部231の表面には長手方向に平行に等間隔で溝が形成されている。溝206の断面方向の形状はV字型の形状であり、本比較例2では、溝深さdが0.095mm、溝角度θが100°、溝間隔aが0.98mmとなるものを用いた。
フランジ部232、233は、外径20.4mm、幅10mmの溝が形成されていない領域(非溝形成領域232b、233b)を有する。ここで、非溝形成領域232b、233bの外径は、パイプ部231外径よりも大きく構成されている。このため、フランジ部232、233が、パイプ部231に嵌合すると、パイプ部231とフランジ部232、233の境界は、フランジ部232、233の方が高さが0.2mm高くなることとなり、段差ができる。
このような構成にすることにより、パイプ部231の溝形成領域とフランジ部232、233の非溝形成領域232b、233bの境界において溝形状の断面が外側に対して露出することがなくなる。よって、この境界において、トナー漏れを防止することができる。
比較例2の構成にすることにより、比較例1、実施形態で使用した熱収縮チューブを用いることなく、非溝形成領域と非溝形成領域の境界に段差を設けることが可能となる。すると、熱収縮チューブのコストを削減することができる。
また、実施形態のように、溝形成後に両端部を研磨する工程が無くとも、非溝形成領域を形成することができる。このため、研磨工程にかかるコストを削減することが可能となる。
以上説明したように、比較例2のような構成とすることにより、パイプ部の両端部を研磨する工程を省くことができる。また、溝206が形成されるパイプ部に対して段差を付けるために端部シール部材(熱収縮チューブ、絶縁性テープ等)を追加しなくともよい。このため、溝形成領域と非溝形成領域との間に段差を容易に設けることができるため、安価な構成で溝形成領域の端部からのトナー飛散を確実に防止することが可能となる。