JP6010343B2 - イソプレン−ブタジエン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents
イソプレン−ブタジエン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ Download PDFInfo
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Description
一方、燃料油の分野のみならず、家電製品、生活雑貨、自動車などの分野においても化石資源由来の化合物が多く用いられている。
一例として、自動車のタイヤの素材としてイソプレン−ブタジエン共重合体(BIR)やスチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(SIBR)を用いることにより、優れた低転がり抵抗性や耐摩耗性を有するタイヤが得られることから、自動車のタイヤ用として有益である(特許文献2、3参照)。これらタイヤ素材の原料となるイソプレンやブタジエンも化石資源、特に石油資源を原料として製造されているが、石油資源の枯渇や自然環境等の保護等の問題から、同様に再生可能な資源である植物資源を含む生物由来の資源を原料とすることが求められている。
1.植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体及びバイオイソプレン単量体を共重合してなるイソプレン−ブタジエン共重合体であって、該バイオイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値が−30‰〜−28.5‰、又は−22‰以上であって、該バイオブタジエン単量体に由来する炭素原子のΔ14Cの値が−75〜−225‰であるイソプレン−ブタジエン共重合体、
2.植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体及びバイオイソプレン単量体を共重合してなるイソプレン−ブタジエン共重合体であって、バイオブタジエン単量体に由来する炭素原子の14Cの壊変毎分毎グラム量値が0.1dpm/gC以上であるイソプレン−ブタジエン共重合体、
3.前記イソプレン−ブタジエン共重合体の分子量が1000から5000000である上記1又は2に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体、
4.イソプレン−ブタジエン共重合体が、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体、バイオイソプレン単量体及びスチレンを共重合してなるイソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体である上記1〜3のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体、
5.バイオイソプレン単量体由来の構成単位の含有量が10〜60質量%であり、バイオブタジエン単量体由来の構成単位の含有量が40〜90質量%である上記1〜3のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体、
6.バイオイソプレン単量体由来の構成単位の含有量が5〜40質量%であり、バイオブタジエン単量体由来の構成単位の含有量が30〜90質量%であり、かつスチレン由来の構成単位の含有量が5〜30質量%である上記4に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体、
7.上記1〜6のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法であって、植物資源を含む生物由来の資源からのバイオイソプレン単量体及びバイオブタジエン単量体を含む混合物を生成し、該混合物を用いて共重合させるイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法、
8.植物資源を含む生物由来の資源からバイオエタノールを合成し、合成されたバイオエタノールを、加熱下において、金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させることによりバイオブタジエン単量体を含む混合物を生成し、該バイオブタジエン単量体を用いてイソプレン−ブタジエン共重合体を製造する上記7に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法、
9.植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオイソプレン単量体が、イソプレンの生産に適した培養状態下でイソプレン・シンターゼ・ポリペプチドをコードする異種核酸を含む細胞を培養し、該培養物から回収して得られるバイオイソプレン単量体を用いてイソプレン−ブタジエン共重合体を製造する上記7又は8に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法、
10.上記1〜6のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体を含むゴム組成物、
11.上記10に記載のゴム組成物を含むタイヤ、
を提供する。
[イソプレン−ブタジエン共重合体]
本発明の実施形態に係るイソプレン−ブタジエン共重合体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体及びバイオイソプレン単量体を共重合してなるイソプレン−ブタジエン共重合体であって、該イソプレン−ブタジエン共重合体中の該バイオイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値が−30‰〜−28.5‰、又は−22‰以上であって、該バイオブタジエン単量体に由来する炭素原子のΔ14Cの値が−75〜−225‰である。ここで、イソプレン−ブタジエン共重合体中の該バイオイソプレン単量体から由来する炭素原子のδ13Cの値とは、安定同位体比測定装置により測定されたものである。
軽い同位体は、重い同位体よりも拡散が早く、反応性も高いことから、例えば、光合成によって植物体内に取り込まれた大気中の二酸化炭素の炭素原子の場合、13Cよりも12Cのほうが植物体内に固定され易いことがわかっている。
すなわち、植物体内に取り込まれた炭素原子は、大気中の炭素原子に比べて、相対的に12Cが多く13Cが少なくなる。したがって、植物体内に取り込まれた炭素の安定同位体比(δ13C)は、大気中に存在する炭素の安定同位体比よりも低くなる。
このようにして同位体比が変わることを同位体分別と呼び、Δ13Cで表される(Δ13Cは、δ13Cと区別される)。
Δ13C=(大気中のδ13C)−(試料中のδ13C)
従って、イソプレン−ブタジエン共重合体中のイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値からイソプレン−ブタジエン共重合体を製造した際に使用されたイソプレン単量体に由来物質を特定することができる。
すなわち、植物体内に取り込まれた炭素原子は、大気中の炭素原子に比べて、相対的に12Cが多く13Cが少なくなる。したがって、植物体内に取り込まれた炭素の安定同位体比(δ13C)は、大気中に存在する炭素の安定同位体比よりも低くなる。
このようにして同位体比が変わることを同位体分別と呼び、Δ13Cで表される(Δ13Cは、δ13Cと区別される)。
Δ13C=(大気中のδ13C)−(試料中のδ13C)
Δ14Cは、上述したδ13Cの値から、さらに下記のようにして算出できる。
δ14C=[(14As−14AR)/14AR]×1000 (1)
δ13C=[(13As−13APDB)/13APDB]×1000 (2)
ここで、
14As:試料炭素の14C濃度:(14C/12C)sまたは(14C/13C)s
14AR:標準現代炭素の14C濃度:(14C/12C)Rまたは(14C/13C)R
(1)式の14C濃度を、δ13Cの測定値をもとに、次式に基づいて換算する。
14AN=14As×(0.975/(1+δ13C/1000))2 (14Asとして14C/12Cを使用するとき)
または
14AN=14As×(0.975/(1+δ13C/1000)) (14Asとして14C/13Cを使用するとき)
以上より、
Δ14C=[(14AN−14AR)/14AR]×1000 (‰)と算出される。
放射性炭素14Cの半減期は、約5730年であるため、化石資源中に含まれる炭素には、放射性炭素14Cは含まれない。化石資源由来のブタジエン単量体のΔ14Cは、−1000‰程度である。
従って、イソプレン−ブタジエン共重合体中のブタジエン単量体に由来する炭素原子のΔ14C値、或いは14Cの壊変毎分毎グラム量、δ13Cの値により、イソプレン−ブタジエン共重合体中におけるブタジエン単量体の由来物質が、化石資源であるか植物資源を含む生物由来の資源(いわゆる、バイオマス)であるかを特定することができる。
本発明のイソプレン−ブタジエン共重合体の分子量は、1000から5000000とすることができる。好ましくは、100000〜500000であり、より好ましくは、150000〜300000である。
本発明のイソプレン−ブタジエン共重合体は、少なくともバイオイソプレン単量体を含むイソプレン単量体と少なくともバイオブタジエン単量体を含むブタジエン単量体を共重合させて得られるものであるが、必要に応じてスチレン単量体を使用し、共重合させて得られるイソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体を含むものである。
バイオイソプレン単量体は、植物資源を含む生物由来の資源から、各種菌等の微生物細胞を用いて得られる。バイオイソプレン単量体を、植物資源を含む生物由来の資源から、各種菌等の微生物を用いて得る方法については、例えば特表2011−526943号公報や特表2011−505841号公報等で公知となっている。これらの方法は、イソプレンの生産に適した培養状態下でイソプレン・シンターゼ・ポリペプチドをコードする異種核酸を含む細胞を培養し、該培養物からバイオイソプレン単量体を製造し、回収するものである。これらの手法は、イソプレンを生産する天然物由来の微生物細胞をそのまま使用してもよいし、該天然物由来の微生物細胞から遺伝子操作により、その微生物細胞中のイソプレン・シンターゼ・ポリペプチドを大腸菌等の各種菌類に組み込んで、イソプレン生産菌として使用することもできる。
植物資源を含む生物由来の資源としては、セルロース等を含む植物資源やその植物資源から得られる各種のグルコース等の糖類を使用することができる。
バイオブタジエン単量体成分は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオエタノールを出発物質として合成して得られる。
植物資源を含む生物由来の資源(バイオマス)から合成されるバイオエタノールを出発物質として、バイオブタジエン単量体を合成する方法について説明する。
まず、バイオマスからバイオエタノールを生成する。生成されたバイオエタノールを加熱下において、金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させることにより、バイオブタジエン単量体成分を含む混合物を生成する。この混合物からバイオブタジエン単量体成分を抽出し、抽出されたバイオブタジエン単量体成分を用いてブタジエン重合体を合成する。
この合成方法では、複合金属酸化物は、触媒として作用する。良好な触媒活性を発現させる観点から、バイオエタノールを複合金属酸化物に接触させる際における温度は、350℃〜450℃とすることが好ましい。
バイオエタノールの原料となる生物由来の資源としては、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜、キャッサバ、ビート、木材、藻類などが挙げられる。これらの資源のなかでも、生産効率の面から糖質あるいはデンプン質を多く含む、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜を用いることが好ましい。
複合金属酸化物は、金属元素として、少なくともマグネシウム及びケイ素を含む。なかでも、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用することが好ましい。使用可能な金属元素としては、亜鉛、ジルコニウム、銅、アルミニウム、カルシウム、リン、タンタルなどが挙げられる。
複合金属酸化物の製造方法としては、ゾルゲル法や、金属塩の水溶液中とシリカを混合し、蒸発乾燥により担持させる方法などが挙げられる。
複合金属酸化物とバイオエタノールとの接触反応は、一般的に知られている固定床ガス流通式触媒反応装置(例えば特開2009−51760)を用いることができる。
複合金属酸化物を反応管に充填し、前処理として窒素ガスなどのキャリアガス雰囲気下において加熱した後、反応管の温度を反応温度まで下げる。その後、所定量のキャリアガスと、バイオエタノールとを導入する。反応により生成したガスからバイオブタジエン単量体を分離する。分離方法としては、生成したガスを冷却した凝縮器に通し、未反応のバイオエタノールや水などの重質不純物を分離し、その後、反応ガスを有機溶媒中にバブリングし、バイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させて、溶液として回収する。エチレンやキャリアガスであるN2などの軽質不純物は、有機溶媒中に溶解せずに通過させて、溶媒タンクから排出する。
本発明のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法は、溶液重合によって製造される。そのような溶液重合は1種以上の芳香族、パラフィン系またはシクロパラフィン系化合物の炭化水素溶剤中で通常行われる。これらの溶剤は1分子当たり4〜10の炭素原子を通常含んでおり、重合条件下では液体である。適当な有機溶剤のいくつかの代表例はペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の単独または混合物である。
本発明のゴム組成物としては、本発明の(共)重合体を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の共重合体以外のゴム成分、無機充填剤、カーボンブラック、架橋剤、などを含むことが好ましい。
前記ゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の(共)重合体、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物には、必要に応じて補強性充填剤を配合することができる。前記補強性充填剤としては、カーボンブラック、無機充填剤、などを挙げることができ、カーボンブラック及び無機充填剤から選択される少なくとも一種が好ましい。
前記無機充填剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機充填剤を用いる時は適宜シランカップリング剤を使用してもよい。
前記補強性充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、5質量部〜200質量部が好ましい。
前記補強性充填剤の含有量が、5質量部未満であると、補強性充填剤を入れる効果があまりみられないことがあり、200質量部を超えると前記ゴム成分に補強性充填剤が混ざり込まなくなる傾向があり、ゴム組成物としての性能を低下させることがある。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤硫黄などが挙げられるが、中でもタイヤ用ゴム組成物としては硫黄系架橋剤がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、架橋がほとんど進行しなかったり、20質量部を超えると一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があったり、加硫物の物性が損なわれたりすることがある。
その他に加硫促進剤を併用することも可能であり、加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が使用できる。
また必要に応じて、補強剤、軟化剤、充填剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
本発明の架橋ゴム組成物は、本発明のゴム組成物を架橋して得られたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度120℃〜200℃、加温時間1分間〜900分間が好ましい。
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物を用いたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物のタイヤにおける適用部位としては、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられるが、これに限定されない。
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤを製造することができる。
[バイオイソプレン−ブタジエン共重合体の製造例]
<触媒の製造>
触媒として、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用した。この触媒の合成方法は以下の通りである。まずMg(NO3)2・6H2O(64g)を蒸留水100mLに溶解した溶液に、14%アンモニア水溶液100mLを滴下することでMg(OH)2ゲルを合成した。一方で、Si(OC2H5)4(55mL)をエタノール150mLに溶解した溶液に1.38M硝酸12.5mLおよび14%アンモニア水溶液50mLを滴下することによりSi(OH)4ゲルを合成した。得られたMg(OH)2ゲルは蒸留水で洗浄後、吸引ろ過を行い、Si(OH)4ゲルについてはエタノールで洗浄後、吸引ろ過を行った。これら二種類のゲルを混合し、混合後のゲルを風乾、その後80℃乾燥、500℃、N2雰囲気下において焼成を行うことで、シリカ−マグネシアの複合酸化物触媒を製造した。
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールを使用した。
上記方法により製造した触媒と、上記バイオエタノールとを接触させることによりバイオブタジエン単量体を生成した。
反応装置は、一般的に知られる固定床ガス流通式触媒反応装置(例えば特開2009−51760)を用いた。製造したシリカ−マグネシア複合酸化物触媒石英製の反応管に充填し、前処理としてキャリアガス雰囲気下(N2;ガス流量66mL/min)で500℃、2時間加熱処理を行った。
前処理終了後、触媒管の温度を反応温度まで下げ、N2で希釈したバイオエタノールガスを導入した。この時の反応温度は350℃もしくは450℃で行った。
反応により生成したガスに対し、以下の分離操作を行うことでバイオブタジエン単量体を含む混合物を回収した。まず、生成ガスをヘキサン中にバブリングすることで、目的物であるバイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させた。回収したブタジエン溶液を乾燥精製し、不純物であるエタノール、アセトアルデヒド、ジエチルエーテル、エトキシエチレン、酢酸エチルを更に除去した。
95℃に保たれた2つの反応器(各10リッター)を連続させて反応器として用いた。ヘキサン中にイソプレン・シンターゼ・ポリペプチドを大腸菌に組み込んだイソプレン生産菌を使用し、出発物質としてサトウキビのセルロースを分解させて得られたバイオイソプレン単量体、及びバイオブタジエン単量体(1,3−ブタジエン)を含有する混合物を、第1重合反応器に100g/分の速度で連続的に入れた。バイオイソプレン対バイオブタジエンを30:70の比で含有する単量体混合溶液の全単量体濃度は11%であった。重合はn−ブチルリチウムの0.107M溶液を第1反応器へ0.32g/分の速度で加えることによって開始した。両反応器の滞留時間は1.16時間に設定した。平均単量体変換率を測定したところ、第1反応器では62%、第2反応器では93%であった。
重合媒質を第2反応器から、メタノール(重合停止剤としての)および酸化防止剤を含む保持タンクに連続的に押し出した。次に、得られた重合セメントを蒸気ストリップし、回収したバイオイソプレン−ブタジエン共重合体を真空中、60℃で乾燥した。バイオイソプレン単量体およびバイオブタジエン単量体は反応器に連続的にポンプで送ったので、バイオイソプレン−ブタジエン共重合体中のイソプレン分布はランダムであった。得られた重合体Aを測定したところ、ガラス転移温度が−84℃であり、ムーニーML−4粘度は85であった。また測定したところ、6%の1,2−ポリブタジエン単位、60%の1,4−ポリブタジエン単位、32%の1,4−ポリイソプレン単位および2%の3,4−ポリイソプレン単位を含む微細構造であった。
重合体Aの製造において、バイオイソプレン単量体及びバイオブタジエン単量体をそれぞれ石油原料から得られたイソプレン単量体及びブタジエン単量体とした以外は、同様にして重合体Bを製造した。得られた重合体Bを測定したところ、ガラス転移温度が−84℃であり、ムーニーML−4粘度は85であった。また測定したところ、6%の1,2−ポリブタジエン単位、60%の1,4−ポリブタジエン単位、32%の1,4−ポリイソプレン単位および2%の3,4−ポリイソプレン単位を含む微細構造であった。
<イソプレン−ブタジエン共重合体の各物性>
≪ミクロ構造[ポリブタジエン:シス−1、4結合含量(%)、1、2−ビニル結合含量(%)、ポリイソプレン:シス−1、4結合含量(%)、3、4−ビニル結合含量(%)]≫
フーリエ変換赤外分校光度計(FT/IR−4100、日本分光社製)を使用し、赤外法(モレロ法)によって測定した。
≪イソプレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)≫
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8120GPC」、東ソー社製)を使用し、検知器として示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製) 2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/min
サンプル濃度;10mg/20ml
イソプレン・シンターゼ・ポリペプチドを大腸菌に組み込んだイソプレン生産菌を使用し、出発物質としてサトウキビのセルロースを分解させて得られたバイオイソプレン単量体と、出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシからのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールとを用いて製造されたイソプレン−ブタジエン共重合体中のバイオブタジエン単量体から由来する炭素原子のδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定し、上述した換算方法により、Δ14Cを算出した。
バイオイソプレン単量体とバイオブタジエン単量体から製造されたイソプレン−ブタジエン共重合体中のバイオブタジエン単量体から由来する炭素原子14Cの壊変毎分毎グラム量値を加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry ;AMS)、液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Counting Method; LSC)により測定した。
バイオイソプレン単量体とバイオブタジエン単量体から製造されたイソプレン−ブタジエン共重合体中のバイオイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定した。
バイオイソプレン単量体及びバイオブタジエン単量体から製造されたイソプレン−ブタジエン共重合体を含むゴム組成物の耐亀裂成長性および低発熱特性を下記方法によって測定した。
なお、本発明のゴム組成物には、上記イソプレン−ブタジエン共重合体を含むゴム成分、カーボンブラックのほか、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤などのゴム業界で通常使用される配合剤を適宜選択し配合することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
JIS3号試験片中心部に0.5mmの亀裂を入れ、室温で50〜100%の歪みで繰り返し疲労を与え、サンプルが切断するまでの回数を測定した。各歪みでの値を求め、その平均値を用いた。表2においては、重合体Aを配合した比較例1を100とする指標で表した。指標値が大きいほど、耐亀裂成長性が良好であることを示す。
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪3%、周波数15Hz、50℃の条件で測定した。表2においては、重合体Aを配合した比較例1を100とする指標で表した。指標値が小さいほど、低発熱性(低ロス性)に優れることを示す。
重合体A,Bのそれぞれを用いて、表1に示す配合処方によりゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。
重合体A,Bの物性及びδ13Cの値を上記方法により測定した。また、得られた加硫ゴムの耐亀裂成長性及び低発熱性(3%tanδ)を、上述した評価方法に従って測定した。結果を表2に示す。
※2:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−p−フェニレンジアミン、大内新興化学(株)製、ノクラック6C
※3:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学(株)製、ノクラック224
※4:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製、ノクセラーCZ−G
※5:ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製、ノクセラーDM−P
また、得られた重合体BのMnは、200,000であり、Mw/Mn=1.8であった。
得られた重合体Aのδ13Cの値は、−14.69、Δ14Cの値は、−1000であった。また、重合体Bのδ13Cの値は、−23.00、Δ14Cの値は、−100であった。
上記結果から、バイオイソプレン−ブタジエン共重合体中のイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値が−14.69である重合体A(バイオ由来のイソプレン−ブタジエン共重合体)を使用した実施例1の加硫ゴムの耐亀裂成長性の指標及び3%tanδの指標は、δ13Cの値が−23.00である重合体B(通常のイソプレン−ブタジエン共重合体)を使用した比較例1の加硫ゴムと同程度の値を示しており、耐亀裂成長性および低発熱性において、従来品と遜色ないことがわかった。
Claims (9)
- 植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体及びバイオイソプレン単量体を含む混合物を共重合させ、該バイオイソプレン単量体に由来する炭素原子のδ13Cの値が−30‰〜−28.5‰、又は−22‰以上であって、該バイオブタジエン単量体に由来する炭素原子のΔ14Cの値が−75〜−225‰であるイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法であって、前記バイオブタジエン単量体として、植物資源を含む生物由来の資源からバイオエタノールを合成し、次いで合成されたバイオエタノールを、加熱下において、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物であって、Mg(OH) 2 ゲルとSi(OH) 4 ゲルとの二種類のゲルを混合し、焼成して得られる金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させて得られるバイオブタジエン単量体を用いるイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- 植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体及びバイオイソプレン単量体を含む混合物を共重合させ、バイオブタジエン単量体に由来する炭素原子の14Cの壊変毎分毎グラム量値が0.1dpm/gC以上であるイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法であって、前記バイオブタジエン単量体として、植物資源を含む生物由来の資源からバイオエタノールを合成し、次いで合成されたバイオエタノールを、加熱下において、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物であって、Mg(OH) 2 ゲルとSi(OH) 4 ゲルとの二種類のゲルを混合し、焼成して得られる金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させて得られるバイオブタジエン単量体を用いるイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- 前記イソプレン−ブタジエン共重合体の数平均分子量が1000から5000000である請求項1又は2に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- イソプレン−ブタジエン共重合体が、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体、バイオイソプレン単量体及びスチレンを共重合してなるイソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- バイオイソプレン単量体由来の構成単位の含有量が10〜60質量%であり、バイオブタジエン単量体由来の構成単位の含有量が40〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- バイオイソプレン単量体由来の構成単位の含有量が5〜40質量%であり、バイオブタジエン単量体由来の構成単位の含有量が30〜90質量%であり、かつスチレン由来の構成単位の含有量が5〜30質量%である請求項4に記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- 植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオイソプレン単量体が、イソプレンの生産に適した培養状態下でイソプレン・シンターゼ・ポリペプチドをコードする異種核酸を含む細胞を培養し、該培養物から回収して得られるバイオイソプレン単量体を用いてイソプレン−ブタジエン共重合体を製造する請求項1〜6のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- バイオエタノールを、加熱下において、金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させる際の温度が350〜450℃である請求項1〜7のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のイソプレン−ブタジエン共重合体の製造方法により、イソプレン−ブタジエン共重合体を得て、次いで該イソプレン−ブタジエン共重合体を含むゴム組成物を得て、次いで当該ゴム組成物を用いてタイヤを製造するタイヤの製造方法。
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