JP6009404B2 - 抗菌性ガラスおよび抗菌性ガラスの製造方法 - Google Patents
抗菌性ガラスおよび抗菌性ガラスの製造方法 Download PDFInfo
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イオン交換処理の対象とするガラス材は、SiO2を35〜62モル%、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜58モル%と、Al2O3を6〜20モル%、好ましくは10〜18モル%、さらに好ましくは13〜15モル%と、B2O3を7〜20モル%、好ましくは8〜18モル%、さらに好ましくは9〜15モル%と、Na2Oを7〜20モル%、好ましくは9〜17モル%、さらに好ましくは10〜15モル%と、K2Oを0〜15モル%、好ましくは0〜10モル%、さらに好ましくは0〜6モル%と、MgOを0〜15モル%、好ましくは0〜10モル%、さらに好ましくは0〜7モル%を含有する非溶解性のガラス材である。
本発明では、SiO2を35〜62モル%、Al2O3を6〜20モル%、B2O3を7〜20モル%、Na2Oを7〜20モル%、K2Oを0〜15モル%、MgOを0〜15モル%、各々含有する該ガラス材を、250〜550℃でイオン交換処理して、抗菌性イオンを導入する。250〜550℃の高温でイオン交換処理を行うことにより、水溶液で行う低温でのイオン交換処理に比べて、より強固に抗菌性イオンをガラスに担持させることができる。抗菌性イオンは、Ag+、Cu2+、Zn2+の何れかとすることが好ましい。
表1ないし表8中に示す成分(SiO2、Al2O3、B2O3、Na2O、K2O、MgO、その他、CaO、ZnO)の組成(モル%)に従い、試作例1〜12、21〜45、51〜77のガラス組成物を作成した。ガラス組成物の作成は、表中に記載の原料を各組成に従って秤量、調合後、電気炉により1350℃まで加熱して溶融した。その後水中に投入して破砕し粗原料とした。水砕により得た粗原料を白金製の小皿に移し、電気炉にて1350℃に加熱して溶融の後、取り出して徐冷した。徐冷後に生じたガラス材の表面を酸化セリウム研磨剤により研磨し、平滑な鏡面状となるガラス組成物を作成した。また、対照例として、表9中に示す成分の溶解性ガラス(比較組成103)、ソーダライムガラス(比較組成104)を作成した。ゼオライト(比較組成101)、リン酸ジルコニウム(比較組成102)、については市場で入手可能なイオン交換済みの材料で評価を行った。
試作例1〜12、21〜45、51〜77および比較組成101〜104の、各々で構成された各母材を電気炉により390℃に加熱し、400℃のAgNO3溶融液(溶融塩)中に30分間浸漬した。溶融液から母材を引き上げ、空気中にて放冷した。室温まで冷却した後、水洗により塩を十分洗浄し、乾燥した。なお、母材への抗菌性金属の導入は、GD−OES (Glow Discharge−Optical Emission Spectroscopy:マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置)を用いた母材表面の成分濃度測定により、確認することができる。図3、図4には、SiO2を48モル%と、Al2O3を15モル%と、B2O3を12モル%と、Na2Oを13モル%と、K2Oを5モル%と、MgOを7モル%を含有するガラス材(上記試作例4のガラス組成物)に対し、イオン交換処理により抗菌性金属を導入する前後で、GD−OESを用いて母材表面の成分濃度測定を行った結果を示している。図3、図4から、イオン交換処理によって、母材表面のNaが、すべてAgと交換していることが確認できる。更に、このイオン交換処理後の母材の表面Agイオン濃度を算出すると約49wt%となっており、母材としてソーダライムガラス(比較組成104)を用いて同様のイオン交換処理を行った場合(表面Agイオン濃度8wt%)と比較して、遥かに高濃度の抗菌性金属が、イオン交換処理後の母材表面に存在していることが確認された。このように、本発明では、イオン交換処理の母材として、従来のガラス材に比べてSiO2の含有量を減らし、Al2O3の含有量を高め、かつ、CaOを含有しない特殊な構成のガラス材を用いることにより、母材表面に高濃度で抗菌性金属を保持可能とし、高い抗菌性能を実現している。
イオン交換処理後の各母材(試作例1〜12、21〜45、51〜77および比較組成101〜104)について、抗菌試験および溶出試験の他、イオン交換深さ・密度・ビッカース硬度・溶融性の測定を行った。
母材をふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製後、イオン交換したのち、ポリプロピレン樹脂に各0.1wt%添加して抗菌評価用のサンプルとした。
抗菌試験用耐水性前処理
SIAA(抗菌製品技術協議会)耐水性評価耐水区分3の条件を参照し、前記の試験サンプルを90℃温水中16時間浸漬させ、耐水性前処理とした。
抗菌性評価
ポリプロピレン樹脂練込み添加プレートに耐水性試験区分3前処理を施した後、抗菌試験:JIS Z2801を参考に前記の試験サンプル上に菌液を滴下し、35℃にて24時間放置した後、前記の試験サンプル上の菌液を洗い流して培地に塗布し、35℃にて放置後生菌数をカウントした。
母材をふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製後、SIAA(抗菌製品技術協議会)耐水性評価耐水区分3の条件を参照し、試験サンプルを90℃温水中16時間浸漬させ、耐水性前処理とした。
耐水性試験区分3後溶出量
耐水性前処理を施した前記の試験サンプルを試料濃度3.2mg/mLにて超純水中で溶出させ室温・24時間後の溶液を回収しICP−OESにて各成分濃度を測定した。
母材溶出量
母材をふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製後、試料濃度5 mg/mLで超純水中で溶出させ室温・24時間後の溶液を回収しICP−OESにて母材の骨格成分 (Si、Al、B)濃度を測定した。
pH依存性溶出量
母材をふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製後、イオン交換したのち、試料濃度5 mg/mLでpH4,7,10の条件下において溶出させ、室温・24時間後の溶液を回収しICP−OESにて各成分濃度を測定した。
(A判定:試作例1〜12)
試作例1〜12は、Al2O3、B2O3、SiO2とNa2O、K2O、MgOがバランスよく配合されており、高い化学的耐久性と高いイオン溶出性能を両立している。極端なpHや熱水などの環境にさらされても、一定以上の溶出を確保しつつ、母材は崩壊しない優れた抗菌性材料である。
(B判定:試作例21〜45)
試作例29は、ZnOを2モル%含有するものである。ZnOやCaOは化学的耐久性を向上させることから、母材溶出を防ぐという観点からは組成中に含有させるメリットがある一方、ZnOやCaOは、ガラス内のイオンの移動を妨げる性質があるため、イオンの溶出量を保つためには、多くのZnOを母材に導入することは好ましくない。MgOは2価の金属酸化物の中で、イオンの移動を妨げる効果が最も少ないため、含有可能である。
試作例25は、Al2O3を20モル%含有するものである。Al2O3の含有量が増加しすぎると、Alが4配位から6配位の構造を取り始める。それによりガラス構造が密になり、イオンが移動しにくくなるため、イオンが溶出しにくくなる。20モル%を上回らないことが好ましい。
試作例26は、K2Oを含有しないものである。K2Oはイオンの移動を早くする効果があるため、含有量が少なくなると、イオン溶出量が低下する。現実的には1モル%以上の含有が好ましい。
試作例27は、K2Oを10モル%含有するものである。K2Oはイオンの移動を早くする効果があるが、含有量が高くなり過ぎると、母材の化学的耐久性が低下するため、これ以上の含有は好ましくない。
試作例22は、Al2O3を6モル%含有するものである。負に帯電したAlがイオンを移動しやすくしているため、含有量が低下しすぎるとイオンが溶出しにくくなる。このため、Al2O3の含有量は、6モル%を下回らないことが好ましい。
(C判定:試作例51〜77)
試作例57では、B2O3の含有量が5モル%と低いため、化学的耐久性が不足し、母材溶出量が増加しており、抗菌効果の維持と、不要な成分の溶出の点から不適である。
試作例58では、B2O3とAl2O3の含有量がそれぞれ1.6モル%、1モル%と低いため、十分な化学的耐久性を維持できず、母材溶出量が多く、耐水性試験区分3後の溶出量も少なく、抗菌効果の維持が期待できない。
試作例67では、SiO2の含有量が少なくB2O3とAl2O3の割合も適正でないため、骨格が弱くなり、化学的耐久性が低下し、母材の溶出量が多くなっている。
試作例69では、B2O3の含有量が25モル%と多すぎるため、ガラスの化学的耐久性が低下し、母材の溶出量が多く、耐水性試験区分3後の溶出量も少なく、抗菌効果の維持が期待できない。
(D判定:比較組成101〜104)
比較組成101は、100℃以下でイオン交換を行ったものであるため、機能性イオンの保持力が弱く、温水で処理を行う耐水性試験後には機能性イオンが溶出しきっているため、抗菌効果が発揮されない。
比較組成102は、耐水性試験後も機能性イオンを溶出しているが、溶出の絶対量が少ないため、十分な抗菌効果を発揮できない。
比較組成103は、ガラス自体が溶解してしまうため、耐水性試験後には抗菌効果を発揮できない。
以上、AB判定の試作例は、本発明の範囲に含まれる実施例、CDの試作例は、本発明の範囲に含まれない比較例である。
防藻試験はかび抵抗性試験方法:JIS Z2911を参考にサンプル上に藻の混合懸濁液を吹き付け、28 ℃にて28日間放置した後、サンプル表面の藻の発生状況を観察し、外観観察結果を4段階で評価した。外観試験結果は数値が低いほど防藻性能が高いことを意味し、同一の母材におけるイオン交換処理前後の「外観試験結果」の数値が、イオン交換処理後に明らかに低値となっていると防藻効果があると判断できる。表10に示す「外観観察結果」の評価基準は、具体的に、以下の通りとした。
0:試験片の表面に藻の発生は認められない。
1:試験片の表面の藻の発生は全面積の1/3を超えない。
2:試験片の表面の藻の発生は全面積の1/3を超え、2/3を超えない。
3:試験片の表面の藻の発生は全面積の2/3を超える。
[かび抵抗性試験方法]
母材形状の違うサンプルをイオン交換してかび抵抗性試験を行った。かび抵抗性試験:JIS Z2911 附属書A (B法)を参考にサンプル上に菌液を滴下し、29 ℃にて28日間放置した後、サンプル上に発生したかびを観察し、菌糸の発育状態を6段階で評価した。菌糸の発育状態は数値が低いほど防カビ性能が高いことを意味する。同一の母材におけるイオン交換処理前後の「菌糸の発育状態」の数値が、イオン交換処理後に2以上低下していると防カビ効果があると判断でき、4以上低下しているとさらに高い防カビ効果があると判断できる。表10に示す「菌糸の発育状態」の評価基準は、具体的に、以下の通りとした。
0:肉眼及び顕微鏡下でかびの発育は認められない
1:肉眼ではかびの発育が認められないが、顕微鏡下では明らかに確認できる
2:肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満
3:肉眼でかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%以上〜50%未満
4:菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50%以上
5:菌糸の発育は激しく、試料全面を覆っている
試作例3、4、7は、何れも、比較組成104に比べて、高い防藻効果および防カビ性能を備えていることが確認された。
Claims (5)
- SiO2を35〜62モル%と、
Al2O3を6〜20モル%と、
B2O3を7〜20モル%と、
Na2Oを7〜20モル%と、
K2Oを0〜15モル%と、
MgOを0〜15モル%を含有するガラス材に、
イオン交換処理により、抗菌性金属を導入した抗菌性ガラスであって、
抗菌性金属がAg、Cu、Znの何れかであり、
母材溶出量が10ppm以下、
および、
耐水性試験区分3(SIAA規格)後の抗菌活性値が2以上であることを特徴とする抗菌性ガラス。 - 母材溶出量は、ふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製した抗菌性ガラスを試料濃度5 mg/mLにて室温、超純水中で24時間溶出を行った後の溶液のガラスの骨格成分(Si、Al、B)濃度をPerkin Elmer Optima2000DV ICP−OES(Inductively Coupled Plasma- Optical Emission Spectrometry)にて測定した値であることを特徴とする請求項1記載の抗菌性ガラス。
- 耐水性試験区分3(SIAA規格)後の抗菌性金属イオンの溶出量が、ふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製した抗菌性ガラスを試料濃度3.2mg/mLにて室温、超純水中で24時間溶出を行った後の溶液の各成分濃度をICP-OESにて測定した値で2ppm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌性ガラス。
- 抗菌性金属の溶出量が、ふるいにより粒径が32μm以下となるよう調製した抗菌性ガラスを試料濃度5 mg/mLにて室温、pH4,7,10の条件下で24時間溶出を行った後の溶液の各成分濃度をICP-OESにて測定した値で
pH4において4ppm以上、
pH7において2ppm以上、
pH10において1ppm以上、
であることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌性ガラス。 - 請求項1または2記載の抗菌性ガラスの製造方法であって、
SiO2を35〜62モル%と、
Al2O3を6〜20モル%と、
B2O3を7〜20モル%と、
Na2Oを7〜20モル%と、
K2Oを0〜15モル%と、
MgOを0〜15モル%を含有する該ガラス材を、
250〜550℃でイオン交換処理して、Ag、Cu、Znの何れかの抗菌性イオンを導入することを特徴とする抗菌性ガラスの製造方法。
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