以下、本発明の第1実施形態に係る断熱材について、図1〜図8を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る断熱材10の施工例としての床構造を示す斜視図であり、断熱材10は、互いに平行に延びる大引あるいは根太等の断面矩形状の支持材110,110間にこれらに嵌合するようにして配置される。
図2に示すように、断熱材10は、発泡材料を押し出し発泡した複数の棒状の発泡体11,11,…が、一定の配向方向(一方向:図2の紙面直交方向,図3のX方向)に配向しこの配向方向の位置を重ねつつ、この配向方向に直交する配向直交方向に隣り合うもの同士が溶着されて一体化されてなる板状の断熱材本体21を有している。発泡体11,11,…の配向方向は、押し出し方向と同じであり、長さ方向つまり延在方向と同じである。断熱材10および断熱材本体21は、発泡体11,11,…の配向方向に板長方向(図2の紙面直交方向)を有し、発泡体11,11,…の一の配向直交方向に板厚方向(図2の上下方向)を有し、この板厚方向と直交する他の配向直交方向(図2の左右方向)に板幅方向を有する板状に形成されている。
断熱材本体21は、図3に示すように、板長方向の両側に端面12,12を有しており、板幅方向の両側に端面13,13を有している。また、板厚方向の一側に上面14を有し、板厚方向の他側に下面15を有している。
図2に示すように、複数の発泡体11,11,…は、板厚方向に複数段、板幅方向に複数列配置されている。詳しくは、最上段の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられて板厚方向一側の上面14の一部を形成する。また、上から二段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに最上段の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置されて上面14の残りの一部を形成する。そして、上から三段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに上から二段目の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置され、上から四段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに上から三段目の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置される、という配置が順次繰り返される。最下段の発泡体11,11,…および下から二段面の発泡体11,11,…が、板厚方向他側の下面15を形成する。
上面14を形成する最上段の複数の発泡体11,11,…は、ほとんどのものが断面略三角形形状をなしており、これら断面略三角形形状をなす発泡体11,11,…が、同一平面に配置される平坦面51を上面14における上端位置に形成している。また、最上段の複数の発泡体11,11,…のうち断面略三角形形状をなしていて隣り合う発泡体11,11と、これらの両方に接合する上から二段目の発泡体11とが、平坦面51よりも板厚方向に凹む間隙溝52を上面14に形成している。このような間隙溝52が上面14に複数平行に配置されている。これらの間隙溝52,52,…は、図3に示すように、いずれも発泡体11,11,…の長さ方向に沿って延在しており、断熱材本体21の全長にわたって形成されている。つまり、間隙溝52,52,…は、断熱材本体21の板長方向両側の端面12,12に開口している。
図2に示すように、断熱材本体21には、最上段の複数の発泡体11,11,…のうちの所定のものが板厚方向に押圧されることにより、間隙溝52,52,…よりも板厚方向に深く凹む排水溝53が上面14に形成されている。つまり、最上段の所定の発泡体11が板厚方向に円弧状に押し潰されて凹状発泡体11(A)になると、この凹状発泡体11(A)と、この凹状発泡体11(A)の両隣りの上から二段目の発泡体11,11と、この凹状発泡体11(A)の両隣りの最上段の発泡体11,11とで排水溝53が形成される。このような排水溝53が上面14に複数、板幅方向に等間隔で配置されている。これら排水溝53,53,…は、図3に示すように、いずれも発泡体11,11,…の長さ方向に沿って延在しており、断熱材本体21の全長にわたって形成されている。つまり、排水溝53,53,…は、断熱材本体21の板長方向両側の端面12,12に開口している。排水溝53,53,…の深さは、例えば2mm〜10mmとされる。
図2に示すように、下面15を形成する最下段の複数の発泡体11,11,…も、ほとんどのものが断面略三角形形状をなしており、これら断面略三角形形状をなす発泡体11,11,…が、上面14と同様、同一平面に配置される平坦面51を下面15における下端位置に形成している。また、上面14と同様、最下段の複数の発泡体11,11,…のうちの断面略三角形形状をなしていて隣り合う発泡体11,11と、これら両方に接合する下から二段目の発泡体11とが、平坦面51よりも板厚方向に凹む複数の間隙溝52を下面15に形成している。このような間隙溝52が下面15にも複数平行に配置されている。さらに、下面15には、上面14と同様、最下段の複数の発泡体11,11,…のうちの所定のものが板厚方向に押圧されて凹状発泡体11(A)になることにより、間隙溝52,52,…よりも板厚方向に深く凹む排水溝53,53,…が形成されている。
上面14の排水溝53,53,…は、板幅方向に等間隔で配置されており、下面15の排水溝53,53,…も、板幅方向に、上面14の排水溝53,53,…と同じ等間隔で配置されている。ただし、上面14の排水溝53,53,…と下面15の排水溝53,53,…とは半ピッチずれており、上面14の隣り合う排水溝53,53の間の中央に、下面15の排水溝53が配置されている。
つまり、断熱材10の上面となる断熱材本体21の上面14には、板厚方向の位置を合わせて最も上面14側に並べられた発泡体11,11,…の間の浅い間隙溝52,52,…と、間隙溝52,52,…よりも深い排水溝53,53,…とが、発泡体11,11,…の配向方向に延在形成されている。また、断熱材本体21の下面15にも、板厚方向の位置を合わせて最も下面15側に並べられた発泡体11,11,…の間の浅い間隙溝52,52,…と、間隙溝52,52,…よりも深い排水溝53,53…とが、発泡体11,11,…の配向方向に延在形成されている。
複数の発泡体11,11,…は、上記配置により、環状に連結配置された複数(四本)の発泡体11,11,…の接合面以外の部分で囲んで空洞20を形成している。具体的に、空洞20は、板幅方向の位置が合い板厚方向に隣り合う二本の発泡体11,11と、これらの両方に隣り合って板厚方向の位置が合い板幅方向に隣り合う二本の発泡体11,11とで囲まれて形成されている。すべての空洞20は、断熱材本体21を発泡体11,11,…の配向方向に貫通し、この配向方向の両方の端面12にそれぞれ開口している。
ここで、発泡体11,11,…を成形するために使用される発泡材料としては、ポリオレフィン樹脂と、セルロールと、でんぷんとを含む材料を用いるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
セルロースとしては、新聞紙や雑誌等の古紙を原料として用いることができる。古紙は粉砕機により所望の大きさに粉砕されて用いられる。
でんぷんとしては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。
また、上記した発泡材料の100質量%中の各成分の割合は、ポリオレフィン樹脂が30〜50質量%であることが好ましく、セルロースが10〜40質量%であることが好ましく、でんぷんが20〜40質量%であることが好ましい。
また、発泡材料には、必要に応じて酸化防止剤、防かび剤、顔料など、断熱材に用いられる各種添加剤を含有させてもよい。
第1実施形態の断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含むので、環境に十分配慮している。
断熱材本体21は、例えば以下の製造方法により形成される。
まず、上述した紙発泡材料を押出成形機の複数の細孔を有する口金より押し出しながら発泡させることで、細孔の数に応じた複数の円柱棒状(ストランド状)の発泡体11,11,…が同じ一方向に配向しながら成形されることになり、口金から束状に押し出された多数の発泡体11,11,…は、発泡直後の溶融粘着性により隣り合うもの同士が溶着して集合状態に一体化されて中間成形状態の断熱材本体21となって押し出し方向に沿ってさらに移動する。なお、発泡の際は、発泡剤として水を用いるのが好ましい。
このように断熱材本体21が中間成形状態にあるとき、発泡体11,11,…は、表皮が他の発泡体11,11,…との溶着部分を含めて樹脂材を主体に構成されることになり、防水性および防湿性を有する。他方、発泡体11,11,…の表皮よりも内側の内部構成部は吸湿性および吸水性を有している。
そして、押出成形機による発泡体11,11,…の押し出し方向に下流側には、図4に示すように、一対の平行なローラ200,200が押し出し方向に直交する方向に沿って配置されている。これらローラ200,200は、それぞれ、外周面に、円筒状をなす円筒面201と、軸方向に等間隔で設けられて円筒面201から径方向外方に全周一定径をなして突出する複数の環状凸部202,202,…とを有している。
これらローラ200,200を対向部分が押出成形機から離れるように回転させ、これらの間に、これらに板厚方向両側において接触するように、まだ軟らかい中間成形状態の断熱材本体21を連続して通すことにより、この中間成形状態の断熱材本体21を加圧することになる。すると、中間成形状態の断熱材本体21に、ローラ200,200の円筒面201,201により、上面14の平坦面51および下面15の平坦面51が形成されて板厚が調整されることになり、また環状凸部202,202,…により、上面14の排水溝53,53…の底となる凹状発泡体11(A),11(A),…と下面15の排水溝53,53…の底となる凹状発泡体11(A),11(A),…とが形成される。これにより、中間成形状態の断熱材本体21に上面14の排水溝53,53…および下面15の排水溝53,53…が形成される。
言い換えれば、外周面に環状凸部202,202,…を備えたローラ200,200が、回転しつつ発泡体11,11,…の配向方向に相対移動して中間成形状態の断熱材本体21を押圧し、その板厚方向一側の上面14を成形し(上面成形工程)、同時に板厚方向他側の下面15を成形する。その際に、一方のローラ200の環状凸部202,202,…が、上面14に発泡体11,11,…の配向方向に沿う排水溝53,53,…を押圧により形成し、他方のローラ200の環状凸部202,202,…が、下面15に発泡体11,11,…の配向方向に沿う排水溝53,53,…を押圧により形成する。
ここで、排水溝53,53,…は、少なくとも上面14に形成すれば良く、下面15に形成する必要はない。しかしながら、下面15にも形成した方が、上下のローラ200,200からの力が平均化されることになり、反りの発生を抑制できる。また、上面14の排水溝53,53,…と下面15の排水溝53,53,…とを半ピッチずらしていることから、上下のローラ200,200からの力がさらに平均化されることになり、反りの発生をさらに抑制できる。さらに、例え反りが発生したとしても、上面14および下面15の両方に形成されているため、後述する切削加工の前段階では、上下の区別はなく、反りの状態に応じて表裏を選んで上面14および下面15を設定できる。
そして、上記した中間成形状態の断熱材本体21の発泡体11,11,…の配向方向の両側を、切削加工により、上面14との境界線および下面15との境界線がそれぞれ発泡体11,11,…の配向方向に直交し、且つ上面14側が下面15側よりも配向方向の外側に位置するように斜めに切断して、配向方向の両側の端部に位置する両側の図3に示す端面12,12を形成する。また、切削加工により、発泡体11,11,…の配向方向に直交する方向の両側を、上面14との境界線および下面15との境界線がそれぞれ発泡体11,11,…の配向方向に平行をなし、且つ上面14側および下面15側が配向直交方向の位置を合わせるように上面14および下面15に対し垂直に切断して、配向直交方向の両側の端部に位置する両側の端面13,13を形成する。
加えて、両側の端面12,12のそれぞれの近傍に、端面12に沿い、より具体的には発泡体11,11,…の配向方向に直交する複数具体的には2カ所ずつのスリット(直交溝)18,19を上面14から切削加工により形成する。このようにして、断熱材本体21を得る。よって、断熱材本体21には、発泡体11,11,…の配向方向(図3のX方向)の両端側それぞれに、複数のスリット18,19が並設されている。スリット18,19は、排水溝53,53,…よりも深さが深くなるように形成されている。スリット18,19は、断熱材本体21を、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に貫通して両端面13,13に開口している。この断熱材本体21は、すべての発泡体11,11,…が一定の配向方向に沿っており、板厚方向に沿って見ると全体として矩形状をなしている。
なお、断熱材本体21の切断された両端面12,12は、複数の発泡体11,11,…の切断された両端面で構成されており、これら発泡体11,11,…は、端面にて内部構成部が露出しており、よって配向方向に吸湿性および吸水性を有している。つまり、発泡体11,11,…は配向方向とは直交する方向に防水性および防湿性を有しており、この方向には透水および透湿しないようになっている。なお、別途の防水性および防湿性を有するシール材を発泡体11,11,…の両端面に塗布して配向方向にも防水性および防湿性を持たせても良い。
断熱材本体21は、一方の端面12およびその近傍に設けられた2カ所のスリット18,19と、他方の端面12およびその近傍に設けられた2カ所のスリット18,19とが鏡面対称の形状をなしている。同じ端面12に近接する2カ所のスリット18,19のうち端面12側つまり外側のスリット18は一定深さ(つまり底面の高さ位置が一定)に形成され、端面12とは反対側つまり内側のスリット19は外側のスリット18よりも深い一定深さ(つまり底面の高さ位置が一定)に形成されている。
また、同じ端面12に近接する2カ所のスリット18,19において、端面12と外側のスリット18との最大距離と、内外のスリット18,19同士の距離とは同等になっている。
断熱材本体21は、端面12とこれに近接する外側のスリット18との間がこのスリット18を狭める方向に変位可能な外側可動片部23となり、外側のスリット18とこれに近接する内側のスリット19との間がこの内側のスリット19を狭める方向に変位可能な内側可動片部24となっている。そして、一方の端面12に近接する2カ所のスリット18,19および他方の端面12に近接する2カ所のスリット18,19よりも下面15側と、スリット19,19の間とが、変位困難な本体部26となっている。一方の端面12に近接する2カ所のスリット18,19および他方の端面12に近接する2カ所のスリット18,19は、間隙溝52,52,…および排水溝53,53,…を横断するように形成されている。よって、排水溝53,53,…は、それぞれ、図5に示すように、外側可動片部23に配置される外側溝部55と、内側可動片部24に配置される内側溝部56と、本体部26に配置される中央溝部57とに分けられている。
上記の断熱材本体21に、図3および図5に示すように、一枚のシート状部材30が貼付されて断熱材10となる。このシート状部材30は、端面13,13間の距離と同じ幅であって端面12,12間の距離よりも長さの長い矩形状をなしている。そして、シート状部材30は、断熱材本体21の下面15の全面を覆うとともに断熱材本体21における発泡体11,11,…の配向方向両外側に延出しており、下面15と板長方向の両側の端面12,12とに貼り付けられている。よって、端面12,12に開口する排水溝53,53,…の両端開口位置にシート状部材30が配置されている。シート状部材30は、両端側が断熱材本体21の上面14と同一平面でさらに外側に延出可能であり、上面14からの延出部31,31が、断熱材10を支持材110,110間に配置するときに、支持材110,110の上面にタッカーなどで釘打ちされて固定される。断熱材10は、支持材110,110間から抜く際に延出部31,31において引っ張られる。
シート状部材30としては、不織布を用いる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製などの不織布が好適である。
また、シート状部材30は、引張強度が10N以上であることが好ましい。上述したように、断熱材10を支持材110,110間に配置するときに、シート状部材30はその延出部31が支持材110,110に釘打ちされて固定される。そのため、シート状部材30は引っ張られやすいが、引張強度が10N以上であれば、引っ張られても破れにくい。
なお、シート状部材30の引張強度は、JIS L 1906により測定される。
さらに、シート状部材30は、透湿性を有することが好ましい。セルロースを含む断熱材や、該断熱材の上に設置される下地合板は吸湿性を有するので、室内の湿気等を含むと断熱材や下地合板が乾燥しにくいことがあった。また、特に2×4工法により建築する場合、建築途中で下地合板が雨に曝されると、雨水が下地合板と断熱材との間に溜まってしまうことがあった。
透湿性を有するシート状部材30を断熱材本体21の下面15に貼り付けることで、断熱材10や下地合板が吸湿したときにその水分を逃がすことができ、断熱材や下地合板が乾きやすくなる。
ここで、断熱材10は、これが配置される支持材110,110間の隙間の間隔に対して、発泡体11,11,…の配向方向における長さの最小値は短く、この方向の長さの最大値は長く形成されている。
そして、以上の断熱材10を図1に示すように支持材110,110間に配置する場合、作業者は、断熱材10を、支持材110,110に図3に示す端面12,12を対向させる姿勢とし、幅の狭い下面15を先方として、シート状部材30の両側の延出部31,31の挟まりを防止しつつ、支持材110,110間に、上から下への方向を嵌合方向として嵌合させる。よって、言い換えれば、断熱材10において、支持材110,110に対向する端面12,12は、この嵌合方向の手前側が奥側よりも外側に位置するように傾斜している。
つまり、図7に示すように、断熱材10の接点位置S1に支持材110,110が当接した状態から断熱材10が支持材110,110間に押し込まれると、図8に示すように、嵌合方向の手前側の上面14から形成されたスリット18,19を狭めるように、外側可動片部23が内側可動片部24側に変位して内側可動片部24に当接しつつ内側可動片部24が本体部26側に変位して本体部26に当接して、外側可動片部23および内側可動片部24が圧縮されながら支持材110,110間に嵌合させられる。このとき、断熱材10はその弾発力で支持材110,110間に保持される。
なお、このとき、内側可動片部24がスリット19の底の内側可動片部24側の端部を中心に倒れることになり、よって、内側溝部56は、中央溝部57とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで中央溝部57側が下がる。また、外側可動片部23がスリット18の底の外側可動片部23側の端部を中心に倒れることになり、よって、外側溝部55は、内側溝部56とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで内側溝部56側が下がる。よって、中央溝部57の底の最大高さと、内側溝部56の底の最大高さと、外側溝部55の底の最大高さとは略同じとなり、内側溝部56の底はスリット19側ほど下側に位置するように傾斜し、外側溝部55の底はスリット18側ほど下側に位置するように傾斜する。
建築施工中に、上記のように支持材110,110間に配置された断熱材10の上面14に雨水がかかることがある。すると、この雨水は、排水溝53,53,…に落ち、排水溝53,53,…を流れて、一部はスリット18,19に落下し、スリット18,19の両端から断熱材10の板幅方向の端面13,13に排水される(図8の矢印A1,A2参照)。また、一部は排水溝53,53,…を流れてその両端からシート状部材30に浸透してシート状部材30を伝って落下する(図8の矢印A3参照)。よって、断熱材10上に床板や合板等の床材120を施工する前に、断熱材10上に溜まった水を拭き取って乾燥させる作業が不要となり、あるいは軽く済むため、施工上の手間を軽減できる。
以上に述べた第1実施形態によれば、排水溝53,53,…が、発泡材料の押し出し方向であって発泡体11,11,…の配向方向となる一方向に延在形成されている。このため、回転しつつ相対移動するローラ200,200により押圧して、断熱材10の板厚方向一側の上面14を成形する工程において、ローラ200の外周面に設けられた環状凸部202,202,…で排水溝53,53,…を押圧により形成することができる。よって、発泡材料の押し出し成形後に押し出し方向下流側で発泡体11,11,…に対して行われる、厚さ調整のための上面14の押圧時に同時に排水溝53,53,…を形成することができる。よって、比較的容易かつ低コストで排水性を向上できる。
また、押圧により排水溝53,53,…が形成されるため、切削等で形成する場合に比べて強度低下を抑制できる上、表面性状が滑らかになり、排水性が向上する。
また、排水溝53,53,…の延在方向の端面12,12に不織布からなるシート状部材30が貼付されているため、排水溝53,53,…の水を不織布からなるシート状部材30に浸透させて下方に円滑に流すことができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る断熱材について、主に図9,図10を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第2実施形態では、図9に示すように、断熱材本体21の上面14の排水溝53,53,…が、それぞれ、排水溝53の幅方向の中央に最も深い最深溝部61を有し、排水溝53の幅方向の両側に最深溝部61側ほど深くなる傾斜部62,62を有している。ここでは、最上段の隣り合う発泡体11,11が押し潰されて傾斜状発泡体11B,11Bとなることにより、傾斜部62,62が形成され、これら発泡体11,11に接合される上から二段目の発泡体11が押し潰されて凹状発泡体11Cとなることにより、最深溝部61を形成している。
このような排水溝53,53,…は、図10に示すローラ200による押圧によって形成される。第2実施形態で用いられるローラ200は、環状凸部202,202,…のそれぞれの両側が環状凸部202側ほど大径となるテーパ面205,205となっている。そして、テーパ面205,205により最上段の隣り合う発泡体11,11が押し潰されて傾斜状発泡体11(B),11(B)となり、環状凸部202により上から二段目の発泡体11が押し潰されて凹状発泡体11(C)となる。
以上に述べた第2実施形態によれば、排水溝53,53,…が、それぞれ、幅方向の中央に最も深い最深溝部61を有し、幅方向の両側に、平坦な部分を設けずに最深溝部61側ほど深くなる傾斜部62,62を有するため、広範囲の水を傾斜部62,62で最深溝部61に案内し、その量を増やして流れやすくできる。したがって、排水性をさらに向上できる。
次に、本発明の第3実施形態に係る断熱材について、主に図11,図12を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第3実施形態では、図11に示すように、断熱材本体21の上面14に、排水溝53,53,…に直交する方向(つまり発泡体11,11,…の配向方向に直交する方向)に延在する直交溝71が形成されている。直交溝71は、板幅方向に延在しており、板幅方向の全幅にわたって形成されていて、断熱材本体21の板幅方向両側の端面13,13に開口している。このような直交溝71が図示は略すが板長方向に間隔をあけて複数形成されている。つまり、断熱材本体21の上面14に、排水溝53,53,…と直交溝71,71,…とが格子状に形成されている。
排水溝53,53,…および直交溝71,71,…は、図12に示すローラ200による押圧によって形成されている。第3実施形態で用いられるローラ200には、環状凸部202,202,…に加えて、円筒面201の円周方向に等間隔で複数の直線状凸部208,208,…が形成されている。直線状凸部208,208,…は、ローラ200の軸方向に沿っており、環状凸部202,202,…と直交している。そして、円筒面201が平坦面51を、環状凸部202,202,…が排水溝53,53,…を、直線状凸部208,208,…が直交溝71,71,…を形成する。
以上に述べた第3実施形態によれば、上面14に、排水溝53,53,…とこれらに直交する直交溝71,71,…とが形成されているため、排水溝53,53,…の方向と直交溝71,71,…の方向の両方向に水を流すことができる。つまり、発泡体11,11,…の配向方向となる一方向の端部にある端面12,12以外の端面13,13に水を排水することができる。したがって、排水性をさらに向上できる。
なお、第3実施形態において、排水溝53,53,…を設けずに、発泡体11,11,…の配向方向に直交する直交溝71,71,…のみを設けても良い。
次に、本発明の第4実施形態に係る断熱材について、主に図13を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第4実施形態では、図13に示すように、板厚方向の位置を合わせて最も上面14側に最短間隔で並べられる最上段の発泡体11が適宜間引かれて、断熱材本体21の上面14に排水溝53,53,…が形成されている。すなわち、排水溝53は、発泡体11が間引かれた部分の両隣りの最上段の発泡体11,11と、発泡体11が間引かれた部分の両隣りの上から二段目の発泡体11,11と、これら二段目の発泡体11,11の両方に接合する上から三段目の発泡体11とによって形成されている。この場合、発泡材料が押し出される押出成形機の口金の細孔を、間引く部分を除いて形成し、間引く部分については押し出しを行わずにおくことで、排水溝53を形成する。
以上に述べた第4実施形態によれば、発泡体11,11,…が間引かれて、上面14に排水溝53,53,…が形成されるため、押し出し工程で排水溝53,53,…を形成することができ、排水溝53,53,…を形成するための後工程が不要となる。
次に、本発明の第5実施形態に係る断熱材について、主に図14を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第5実施形態では、図14に示すように、最上段の複数の発泡体11,11,…のうちの所定の隣り合うもの同士と、これらの間にある、上から二段目の複数の発泡体11,11,…のうちの所定のものとが板厚方向に押圧されることにより、間隙溝52,52,…よりも板厚方向に深く凹む排水溝53が断熱材本体21の上面14に形成されている。つまり、最上段の複数の発泡体11,11,…の所定のものの相互対向側が押し潰されて変形発泡体11(D),11(D)となり、上から二段目の所定の発泡体11が板厚方向に押し潰されて凹状発泡体11(E)になると、これらの変形発泡体11(D),11(D)と凹状発泡体11(E)とで排水溝53が形成される。この排水溝53は第1実施形態と同じローラ200に対し板幅方向に断熱材本体21の位置をずらすことで形成することができる。なお、この第5実施形態の排水溝53と、第1実施形態の排水溝53とを両方、一つの断熱材本体21に形成するようにしても良い。
次に、本発明の第6実施形態に係る断熱材について、主に図15〜図17を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第6実施形態では、図15および図16に示すように、断熱材本体21の上面14における、発泡体11,11,…の配向方向(図15のX方向)の中央位置に、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に延在する直交溝(排水溝)220が形成されている。直交溝220は、切削加工により、底面の高さ位置が一定となるように形成されている。直交溝220は、断熱材本体21を、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に貫通して両端面13,13に開口している。
第6実施形態では、図17に示すように、一方の端面12の近傍に設けられた2カ所のスリット18,19のうち、内側つまり端面12から遠い側に設けられたスリット19の幅が、外側つまり端面12に近い側に設けられたスリット18の幅よりも広くなっている。図15および図16に示すように、同様に、他方の端面12の近傍に設けられた2カ所のスリット18,19のうち、内側つまり端面12から遠い側に設けられたスリット19の幅が、外側つまり端面12に近い側に設けられたスリット19の幅よりも広くなっている。直交溝220の幅は、スリット19の幅よりも狭く、スリット18の幅と同等に形成されている。直交溝220は、排水溝53,53,…よりも深さが深く、かつスリット18,19よりも深さが浅くなるように形成されている。
具体的に、板厚80mmの断熱材本体21に対して、直交溝220は幅3mm深さ10mmに、スリット18は幅3mm深さ50mmに、スリット19は幅6mm深さ55mmに形成されている。排水溝53,53,…はそれ自体に水が溜まりにくいように幅5mm深さ2mmに形成されている。
第6実施形態では、図15に示すように、断熱材本体21の板幅方向の長さよりも、シート状部材30の同方向の長さが短くなっており、断熱材本体21がシート状部材30よりも板幅方向両側に突出している。なお、シート状部材30の断熱材本体21への貼り付けは、断熱材本体21の下面15において中央部分のみに接着剤を塗布するとともに、両側の端面12,12において高さ方向の中間所定位置(上面14から10mm程度の位置)のみに長さ方向に沿って直線状に接着剤を塗布し、これらの接着剤によって接着固定する。つまり、シート状部材30は、断熱材本体21に対して、下面15の中央部分と両側の端面12,12の高さ方向の中間部分のみに接着固定される。これにより、シート状部材30は、断熱材本体21の下面15に対して、側端部が接着されておらず、開放されることになる。ここで、断熱材本体21の下面15の中央部分への接着剤の塗布形状は、シート状部材30が断熱材本体21の下面15の側端部を開放できれば、円状、線状、十字状等、いかなる形状であっても良い。
このような第6実施形態によれば、直交溝220が発泡体11,11,…の配向方向となる一方向の中央に発泡体11,11,…の配向方向と直交する方向に延在形成されているため、この中央位置が最も低くなる状態で断熱材10が支持材110,110間に取り付けられた場合に、排水溝53,53,…から直交溝220に良好に水を流すことができ、直交溝220で良好に水を排水することができる。つまり、支持材110,110間に端面12,12において断熱材10を嵌合させると、上面14は、端面12,12側の高さが高くなり、直交溝220の位置が低くなる。このような場合に、排水溝53,53,…により中央側に流れる水を直交溝220が端面13,13に排水することができる。なお、排水溝53,53,…がなくても直交溝220があれば中央側に流れる水を端面13,13に排水することができる。
また、直交溝220が排水溝53,53,…よりも深いため、直交溝220から排水溝53,53,…への逆流を抑止でき、排水溝53,53,…から直交溝220に良好に水を流すことができる。
また、複数のスリット18,19のうちの内側のスリット19が外側のスリット18よりも幅が広いため、内側が低くなる状態で断熱材10が支持材110,110間に取り付けられた場合に、スリット18で排水できなかった水を、スリット18よりも幅が広い内側のスリット19で良好に排水することができる。
また、断熱材本体21の板幅方向の長さよりも、シート状部材30の同方向の長さが短くなっており、シート状部材30は断熱材本体21の板幅方向両端との間に間隙を有しているため、流れ落ちる排水する水が、シート状部材30まで到達せずに染み込まない。さらに、シート状部材30の断熱材本体21の下面15への貼り付けを、全面ではなく、中央部分のみとすることで、断熱材本体21とシート状部材30との間に浸入した水を、開放されている側端部から排水することができる。
次に、本発明の第7実施形態に係る断熱材について、主に図18を参照して第3,第6実施形態との相違部分を中心に説明する。第3,第6実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第7実施形態では、図18に示すように、上面14に排水溝53,53,…およびこれに直交する直交溝71,71,…が形成された第3実施形態の断熱材本体21に、第6実施形態の一方の端面12側のスリット18,19と、他方の端面12側のスリット18,19と、中央の直交溝220とを切削加工により形成したものである。スリット18,19および直交溝220は、排水溝53,53,…および直交溝71,71,…よりも深く形成されている。直交溝71,71,…の配置間隔は、排水溝53,53,…の配置間隔と同じになっている。第7実施形態では、第6実施形態と同様、断熱材本体21の板幅方向の長さよりも、シート状部材30の同方向の長さが短くなっている。直交溝71,71,…は、具体的には排水溝53,53,…と同様の幅5mm深さ2mmに形成されている。
なお、直交溝71,71を、図19に示すように直交溝220とスリット19との間の中央位置近傍のみに形成しても良く、図20に示すように直交溝220の近傍両側のみに設けても良い。
次に、本発明の第8実施形態に係る断熱材について、主に図21を参照して第3,第6実施形態との相違部分を中心に説明する。第3,第6実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第8実施形態では、図21に示すように、上面14に、第3実施形態の排水溝53,53,…に対して延在方向が異なる排水溝53’,53’,…と、第3実施形態の直交溝71,71,…に対して延在方向が異なる排水溝71’,71’,…とがローラにより形成された断熱材本体21に、第6実施形態の一方の端面12側のスリット18,19と、他方の端面12側のスリット18,19と、中央の直交溝220とを切削加工により形成したものである。
排水溝53’,53’,…は、発泡体11,11,…の配向方向(図21のX方向)に対して45度傾斜する斜め方向に延在形成されている。排水溝71’,71’,…は、発泡体11,11,…の配向方向(図15のX方向)に対して45度傾斜し且つ排水溝53’,53’,…に対して直交する方向に延在形成されている。排水溝53’,53’,…は等間隔で配置されており、排水溝71’,71’,…も等間隔で配置されている。排水溝53’,53’,…の配置間隔と排水溝71’,71’,…の配置間隔とは等しくされている。よって、排水溝53’,53’,…と排水溝71’,71’,…とは格子状に配置されている。スリット18,19および直交溝220は、排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…よりも深く形成されている。第8実施形態では、第6実施形態と同様、断熱材本体21の板幅方向の長さよりも、シート状部材30の同方向の長さが短くなっている。排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…は、具体的には排水溝53,53,…および直交溝71,71,…と同様の幅5mm深さ2mmに形成されている。
このような第8実施形態によれば、排水溝53’,53’,…と排水溝71’,71’,…とが、発泡体11,11,…の配向方向となる一方向に対し斜め方向に延在形成されている。このため、発泡体11,11,…の配向方向となる一方向の端部にある端面12,12以外の端面13,13に水を排水することができる。また、発泡体11,11,…の配向方向に対して斜めに形成するため、加工が容易となる。
なお、以上の第1〜第3,第5〜第7実施形態において、排水溝53,53,…をローラ200ではなく、金型によるプレス成形で形成しても良い。第3,第7実施形態において、直交溝71,71,…をローラではなく、金型によるプレス成形で形成しても良い。第8実施形態において、排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…をローラではなく、金型によるプレス成形で形成しても良い。
また、以上の第1〜第7実施形態において、排水溝53,53,…を、水平に対して傾斜させて排水性を向上させても良い。例えば、排水溝53,53,…を、延在方向の一端側が深く、他端側が浅くなるように傾斜させたり、中央が浅く、両端が深くなるように傾斜させる等する。この場合、例えば、環状凸部202のローラ200の中心からの径をローラ200の周方向位置によって異なるように徐々に拡大すれば良い。
また、第3,第7実施形態の直交溝71,71,…を、水平に対して傾斜させて排水性を向上させても良い。例えば、直交溝71,71,…を、延在方向の一端側が深く、他端側が浅くなるように傾斜させたり、中央が浅く、両端が深くなるように傾斜させる等する。この場合、例えば、直線状凸部208のローラ200の中心からの高さをローラ200の軸方向位置によって異なるようにすれば良い。また、第8実施形態において、排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…を水平に対して同様に傾斜させても良い。
なお、以上の第1〜第8実施形態においては、複数の発泡体11,11,…を一体化した一層の断熱材本体21を例にとり説明したが、このような一層のものを複数層積層し接着して断熱材本体を得ても良い。その場合、各層の発泡体11,11,…の配向方向を揃えても良く、隣り合う層同士で配向方向が直交するように異ならせても良い。
第6実施形態において、板厚50mmの断熱材本体21に、排水溝53,53,…を、幅5mm深さ5mmで形成し、直交溝220を、幅3mm深さ10mmで形成したもの(実施例1)と、第7実施形態において、板厚50mmの断熱材本体21に、排水溝53,53,…および直交溝71,71,…を、幅5mm深さ5mmで形成し、直交溝220を、幅3mm深さ10mmで形成したもの(実施例2)と、第8実施形態において、板厚50mmの断熱材本体21に、排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…を、幅5mm深さ5mmで形成し、直交溝220を、幅3mm深さ10mmで形成したもの(実施例3)と、第7実施形態に対し、排水溝53,53,…を形成せず、直交溝71,71,…を、幅5mm深さ5mmで形成し、直交溝220を、幅3mm深さ10mmで形成したもの(比較例1)とを準備して、上面14に等量の水を平均的にかけ、排水性能を比較した。
その結果、排水性能の順位は、実施例3≧実施例2>実施例1>比較例1となり、第6〜第8実施形態では、斜めの排水溝53’,53’,…および排水溝71’,71’,…を有する第8実施形態が最も排水性能に優れ、縦横の排水溝53,53,…および直交溝71,71,…を有する第7実施形態がこれと同等か若干低い排水性能が得られることが分かった。これらは、端面13,13に排水しやすいことから、特に排水性能に優れている。