JP6340720B2 - 断熱材 - Google Patents

断熱材

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Description

本発明は、建物に施工される断熱材に関する。
住宅等の建物においては、床下、天井、壁、屋根等に断熱材が施工されている。例えば、床下の場合、大引や根太等の間に断熱材が配置され、断熱材の上に下地合板等が設置される構造になっている。
このような断熱材の施工において、平行に配置される一対の支持材(床下の場合、大引や根太)の間に断熱材を嵌合させることにより断熱材をその弾発力でこれら支持材に支持する場合がある。このように施工される断熱材として、支持材に対向する対向面を、嵌合方向の手前側が奥側よりも外側に位置するように傾斜させ、この対向面の近傍に一定幅のスリットを形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。また、このような断熱材において、スリットの壁面を傾斜させることよりスリットの開口側を底側よりも幅広に形成したものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2012−255329号公報 特許第4757522号公報
断熱材に特許文献1のような一定幅のスリットを形成する場合には、十分な変形代を確保しようとすると、施工後にスリットによって断熱材内に比較的大きな空間を生じてしまうことになる。このような空間は、断熱材の断熱性能を低下させてしまう可能性がある。また、特許文献2のようにスリットの壁面を傾斜させれば、施工後にスリットによって断熱材内に生じる空間を小さくできるものの、製造コストが増大してしまう。
本発明は、断熱性能の低下および製造コストの増大を抑制することができる断熱材の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、一対の支持材間に嵌合されて支持される断熱材であって、前記支持材に対向する対向面は、嵌合方向の手前側が奥側よりも外側に位置するように傾斜しており、前記対向面の近傍位置に該対向面に沿うスリットが前記嵌合方向の手前側の面から形成されていて、前記スリットは、底面側よりも開口側の方が幅が広い階段状をなすことを特徴とする。このように、スリットは底面側よりも開口側(手前側の面側)の方が幅が広い階段状をなしているため、十分な変形代を設けても、施工後にスリットによって断熱材内に生じる空間を減らすことができる。しかも、スリットを底面側よりも開口側の方が幅が広い階段状に形成すれば良いため、製造が容易となる。したがって、断熱性能の低下および製造コストの増大を抑制することができる。
前記スリットは、対向する壁面同士が平行をなしていても良い。このように構成すれば、製造がさらに容易となり、製造コストの増大をさらに抑制することができる。
前記スリットは、前記対向面から遠い側の壁部が階段状をなしていても良い。このように構成すれば、スリットの開口位置が同じ場合に、対向面とこれに近い側の壁面との間の底面側の距離を短くでき、この部分が変形しやすくなる。よって、施工性が向上する。
前記遠い側の壁部は段面を一カ所のみ有していても良い。このように構成すれば、製造がさらに容易となり、製造コストの増大をさらに抑制することができる。
前記手前側の面から前記段面までの距離が、前記手前側の面から前記底面までの距離の40%〜80%であっても良い。このように構成すれば、施工性の低下を招くことなく、スリットによって断熱材内に生じる空間を効果的に減らすことができる。
本発明によれば、断熱性能の低下および製造コストの増大を抑制することができる。
本発明の第1実施形態に係る断熱材の施工例としての床構造を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の正断面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の板厚調整用のローラを示す正面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の側断面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の部分拡大側断面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材のスリットを形成する切削工具を示す側断面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の支持材間への嵌合途中の部分拡大側断面図である。 本発明の第1実施形態に係る断熱材の支持材間への嵌合後の部分拡大側断面図である。 本発明の第2実施形態に係る断熱材の部分拡大側断面図である。 本発明の第2実施形態に係る断熱材の支持材間への嵌合後の部分拡大側断面図である。 第1参考技術に係る断熱材の部分拡大側断面図である。 第1参考技術に係る断熱材の支持材間への嵌合後の部分拡大側断面図である。 第2参考技術に係る断熱材の部分拡大側断面図である。 第2参考技術に係る断熱材の支持材間への嵌合後の部分拡大側断面図である。 第3参考技術に係る断熱材の部分拡大側断面図である。 第3参考技術に係る断熱材の支持材間への嵌合後の部分拡大側断面図である。
以下、本発明の第1実施形態に係る断熱材について、図1〜図9を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る断熱材10の施工例としての床構造を示す斜視図である。断熱材10は、互いに平行に配置される大引あるいは根太等の断面矩形状の支持材110,110間に嵌合されることになり、その際に生じる弾発力で支持材110,110間に支持される。
図2に示すように、断熱材10は、発泡材料を押し出し発泡した複数の棒状の発泡体11,11,…が、一定の配向方向(一方向:図2の紙面直交方向,図3のX方向)に配向しこの配向方向の位置を重ねつつ、この配向方向に直交する配向直交方向に隣り合うもの同士が溶着されて一体化されてなる矩形板状の断熱材本体21を有している。発泡体11,11,…の配向方向は、押し出し方向と同じであり、長さ方向つまり延在方向と同じである。断熱材10および断熱材本体21は、発泡体11,11,…の配向方向に板長方向(図2の紙面直交方向)を有し、発泡体11,11,…の一の配向直交方向に板厚方向(図2の上下方向)を有し、この板厚方向と直交する他の配向直交方向(図2の左右方向)に板幅方向を有する板状に形成されている。
断熱材本体21は、図3に示すように、板長方向の両側つまり発泡体11,11,…の配向方向の両側の端部に側面12,12を有しており、板幅方向の両側の端部に側面13,13を有している。また、板厚方向の一側に上面14を有し、板厚方向の他側に下面15を有している。断熱材本体21は、上面14を鉛直方向上側つまり室内側に向け、下面15を鉛直方向下側つまり室外側に向けて配置される。よって、下面15は室外側に向く裏面となっている。
図2に示すように、複数の発泡体11,11,…は、板厚方向に複数段、板幅方向に複数列配置されている。詳しくは、最上段の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられて板厚方向一側の上面14の一部を形成する。また、上から二段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに最上段の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置されて上面14の残りの一部を形成する。そして、上から三段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに上から二段目の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置され、上から四段目の発泡体11,11,…が、互いに板厚方向の位置を合わせて一列状に並べられるとともに上から三段目の発泡体11,11,…に対して板幅方向に半ピッチずれて配置される、という配置が順次繰り返される。最下段の発泡体11,11,…および下から二段面の発泡体11,11,…が、板厚方向他側の下面15を形成する。
上面14を形成する最上段の複数の発泡体11,11,…は、ほとんどのものが断面略三角形形状をなしており、これら断面略三角形形状をなす発泡体11,11,…が、同一平面に配置される平坦面(嵌合方向の手前側の面)51を上面14における上端位置に形成している。また、最上段の複数の発泡体11,11,…のうち断面略三角形形状をなしていて隣り合う発泡体11,11と、これらの両方に接合する上から二段目の発泡体11とが、平坦面51よりも板厚方向に凹む間隙溝52を上面14に形成している。このような間隙溝52が上面14に複数平行に配置されている。これらの間隙溝52,52,…は、図3に示すように、いずれも発泡体11,11,…の長さ方向に沿って延在しており、断熱材本体21の全長にわたって形成されている。つまり、間隙溝52,52,…は、断熱材本体21の板長方向両側の側面12,12に開口している。
図2に示すように、断熱材本体21には、最上段の複数の発泡体11,11,…のうちの所定のものが板厚方向に押圧されることにより、間隙溝52,52,…よりも板厚方向に深く凹む排水溝53が上面14に形成されている。つまり、最上段の所定の発泡体11が板厚方向に円弧状に押し潰されて凹状発泡体11(A)になると、この凹状発泡体11(A)と、この凹状発泡体11(A)の両隣りの上から二段目の発泡体11,11と、この凹状発泡体11(A)の両隣りの最上段の発泡体11,11とで排水溝53が形成される。このような排水溝53が上面14に複数、板幅方向に等間隔で配置されている。これら排水溝53,53,…は、図3に示すように、いずれも発泡体11,11,…の長さ方向に沿って延在しており、断熱材本体21の全長にわたって形成されている。つまり、排水溝53,53,…は、断熱材本体21の板長方向両側の側面12,12に開口している。排水溝53,53,…の深さは、例えば2mm〜10mmとされる。
図2に示すように、下面15を形成する最下段の複数の発泡体11,11,…も、ほとんどのものが断面略三角形形状をなしており、これら断面略三角形形状をなす発泡体11,11,…が、上面14と同様、同一平面に配置される平坦面51を下面15における下端位置に形成している。また、上面14と同様、最下段の複数の発泡体11,11,…のうちの断面略三角形形状をなしていて隣り合う発泡体11,11と、これら両方に接合する下から二段目の発泡体11とが、平坦面51よりも板厚方向に凹む複数の間隙溝52を下面15に形成している。このような間隙溝52が下面15にも複数平行に配置されている。さらに、下面15には、上面14と同様、最下段の複数の発泡体11,11,…のうちの所定のものが板厚方向に押圧されて凹状発泡体11(A)になることにより、間隙溝52,52,…よりも板厚方向に深く凹む排水溝53,53,…が形成されている。
上面14の排水溝53,53,…は、板幅方向に等間隔で配置されており、下面15の排水溝53,53,…も、板幅方向に、上面14の排水溝53,53,…と同じ等間隔で配置されている。ただし、上面14の排水溝53,53,…と下面15の排水溝53,53,…とは半ピッチずれており、上面14の隣り合う排水溝53,53の間の中央に、下面15の排水溝53が配置されている。
つまり、断熱材10の上面となる断熱材本体21の上面14には、板厚方向の位置を合わせて最も上面14側に並べられた発泡体11,11,…の間の浅い間隙溝52,52,…と、間隙溝52,52,…よりも深い排水溝53,53,…とが、発泡体11,11,…の配向方向に延在形成されている。また、断熱材本体21の下面15にも、板厚方向の位置を合わせて最も下面15側に並べられた発泡体11,11,…の間の浅い間隙溝52,52,…と、間隙溝52,52,…よりも深い排水溝53,53…とが、発泡体11,11,…の配向方向に延在形成されている。
複数の発泡体11,11,…は、上記配置により、環状に連結配置された複数(四本)の発泡体11,11,…の接合面以外の部分で囲んで空洞20を形成している。具体的に、空洞20は、板幅方向の位置が合い板厚方向に隣り合う二本の発泡体11,11と、これらの両方に隣り合って板厚方向の位置が合い板幅方向に隣り合う二本の発泡体11,11とで囲まれて形成されている。すべての空洞20は、断熱材本体21を発泡体11,11,…の配向方向に貫通し、この配向方向の両方の側面12にそれぞれ開口している。
ここで、発泡体11,11,…を成形するために使用される発泡材料としては、ポリオレフィン樹脂と、セルロールと、でんぷんとを含む材料を用いるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
セルロースとしては、新聞紙や雑誌等の古紙を原料として用いることができる。古紙は粉砕機により所望の大きさに粉砕されて用いられる。
でんぷんとしては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。
また、上記した発泡材料の100質量%中の各成分の割合は、ポリオレフィン樹脂が30〜50質量%であることが好ましく、セルロースが10〜40質量%であることが好ましく、でんぷんが20〜40質量%であることが好ましい。
また、発泡材料には、必要に応じて酸化防止剤、防かび剤、顔料など、断熱材に用いられる各種添加剤を含有させてもよい。
第1実施形態の断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含むので、環境に十分配慮している。
断熱材本体21は、例えば以下の製造方法により形成される。
まず、上述した紙等のセルロース含有発泡材料を押出成形機の複数の細孔を有する口金より押し出しながら発泡させることで、細孔の数に応じた複数の円柱棒状(ストランド状)の発泡体11,11,…が同じ一方向に配向しながら成形されることになり、口金から束状に押し出された多数の発泡体11,11,…は、発泡直後の溶融粘着性により隣り合うもの同士が溶着して集合状態に一体化されて中間成形状態の断熱材本体21となって押し出し方向に沿ってさらに移動する。なお、発泡の際は、発泡剤として水を用いるのが好ましい。
このようにセルロース含有発泡体からなる断熱材本体21が中間成形状態にあるとき、発泡体11,11,…は、表皮が他の発泡体11,11,…との溶着部分を含めて樹脂材を主体に構成されることになり、防水性および防湿性を有する。他方、発泡体11,11,…の表皮よりも内側の内部構成部は吸湿性および吸水性を有している。
そして、押出成形機による発泡体11,11,…の押し出し方向に下流側には、図4に示すように、一対の平行なローラ200,200が押し出し方向に直交する方向に沿って配置されている。これらローラ200,200は、それぞれ、外周面に、円筒状をなす円筒面201と、軸方向に等間隔で設けられて円筒面201から径方向外方に全周一定径をなして突出する複数の環状凸部202,202,…とを有している。
これらローラ200,200を対向部分が押出成形機から離れるように回転させ、これらの間に、これらに板厚方向両側において接触するように、まだ軟らかい中間成形状態の断熱材本体21を連続して通すことにより、この中間成形状態の断熱材本体21を加圧することになる。すると、中間成形状態の断熱材本体21に、ローラ200,200の円筒面201,201により、上面14の平坦面51および下面15の平坦面51が形成されて板厚が調整されることになり、また環状凸部202,202,…により、上面14の排水溝53,53…の底となる凹状発泡体11(A),11(A),…と下面15の排水溝53,53…の底となる凹状発泡体11(A),11(A),…とが形成される。これにより、中間成形状態の断熱材本体21に上面14の排水溝53,53…および下面15の排水溝53,53…が形成される。
言い換えれば、外周面に環状凸部202,202,…を備えたローラ200,200が、回転しつつ発泡体11,11,…の配向方向に相対移動して中間成形状態の断熱材本体21を押圧し、その板厚方向一側の上面14を成形し(上面成形工程)、同時に板厚方向他側の下面15を成形する。その際に、一方のローラ200の環状凸部202,202,…が、上面14に発泡体11,11,…の配向方向に沿う排水溝53,53,…を押圧により形成し、他方のローラ200の環状凸部202,202,…が、下面15に発泡体11,11,…の配向方向に沿う排水溝53,53,…を押圧により形成する。
ここで、排水溝53,53,…は、少なくとも上面14に形成すれば良く、下面15に形成する必要はない。しかしながら、下面15にも形成した方が、上下のローラ200,200からの力が平均化されることになり、反りの発生を抑制できる。また、上面14の排水溝53,53,…と下面15の排水溝53,53,…とを半ピッチずらしていることから、上下のローラ200,200からの力がさらに平均化されることになり、反りの発生をさらに抑制できる。さらに、例え反りが発生したとしても、上面14および下面15の両方に形成されているため、後述する切削加工の前段階では、上下の区別はなく、反りの状態に応じて表裏を選んで上面14および下面15を設定できる。
そして、上記した中間成形状態の断熱材本体21の発泡体11,11,…の配向方向の両側を、切削加工により、上面14との境界線および下面15との境界線がそれぞれ発泡体11,11,…の配向方向に直交し、且つ上面14側が下面15側よりも配向方向の外側に位置するように斜めに切断して、配向方向の両側の端部に位置する両側の図3に示す側面12,12を形成する。また、切削加工により、発泡体11,11,…の配向方向に直交する方向の両側を、上面14との境界線および下面15との境界線がそれぞれ発泡体11,11,…の配向方向に平行をなし、且つ上面14側および下面15側が配向直交方向の位置を合わせるように上面14および下面15に対し垂直に切断して、配向直交方向の両側の端部に位置する両側の側面13,13を形成する。
加えて、両側の側面12,12のそれぞれの近傍位置に、側面12に沿い、より具体的には発泡体11,11,…の配向方向に直交する複数具体的には2カ所ずつのスリット18,19を上面14から切削加工により形成する。このようにして、断熱材本体21を得る。よって、断熱材本体21には、発泡体11,11,…の配向方向(図3のX方向)の両端側それぞれに、複数のスリット18,19が並設されている。スリット18,19は、排水溝53,53,…よりも深さが深くなるように形成されている。スリット18,19は、断熱材本体21を、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に貫通して両側面13,13に開口している。この断熱材本体21は、すべての発泡体11,11,…が一定の配向方向に沿っており、板厚方向に沿って見ると全体として矩形状をなしている。
断熱材本体21の上面14における、発泡体11,11,…の配向方向(図3のX方向)の中央位置に、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に延在する直交溝220が形成されている。直交溝220は、切削加工により、底面の高さ位置が一定となるように形成されている。直交溝220は、断熱材本体21を、発泡体11,11,…の配向方向に対し直交する方向に貫通して両側面13,13に開口している。
図6に示すように、一方の側面12の近傍に設けられた2カ所のスリット18,19のうち、内側つまり側面12から遠い側に設けられたスリット19の最大幅が、外側つまり側面12に近い側に設けられた一定幅のスリット18の幅よりも広くなっている。図3および図5に示すように、同様に、他方の側面12の近傍に設けられた2カ所のスリット18,19のうち、内側つまり側面12から遠い側に設けられたスリット19の最大幅が、外側つまり側面12に近い側に設けられた一定幅のスリット18の幅よりも広くなっている。一定幅の直交溝220の幅は、スリット19の最大幅よりも狭く、スリット18の幅と同等に形成されている。直交溝220は、排水溝53,53,…よりも深さが深く、かつスリット18,19よりも深さが浅くなるように形成されている。
具体的に、板厚85mmの断熱材本体21に対して、直交溝220は幅3mm深さ25mmに、スリット18は幅3mm深さ50mmに、スリット19は最大幅6mm深さ55mmに形成されている。排水溝53,53,…はそれ自体に水が溜まりにくいように幅5mm深さ2mmに形成されている。
なお、断熱材本体21の切断された両側面12,12は、複数の発泡体11,11,…の切断された両端面で構成されており、これら発泡体11,11,…は、端面にて内部構成部が露出しており、よって配向方向に吸湿性および吸水性を有している。つまり、発泡体11,11,…は配向方向とは直交する方向に防水性および防湿性を有しており、この方向には透水および透湿しないようになっている。なお、別途の防水性および防湿性を有するシール材を発泡体11,11,…の両端面に塗布して配向方向にも防水性および防湿性を持たせても良い。
断熱材本体21は、一方の側面12およびその近傍位置に設けられた2カ所のスリット18,19と、他方の側面12およびその近傍位置に設けられた2カ所のスリット18,19とが鏡面対称の形状をなしている。
図6を参照して、一方の側面12の近傍位置に設けられた2カ所のスリット18,19を例にとり、さらに詳細に説明する。
一方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19のうち、この一方の側面12側つまり外側のスリット18は、互いに平行をなして対向する平坦な外側の壁面18aおよび内側の壁面18bと、これら壁面18a,18bの下端縁部同士を連結する底面18cとを有している。壁面18a,18bは、上面14の平坦面51と直交しており、発泡体11,11,…の延在方向に対して直交している。底面18cは、上面14の平坦面51と平行をなしている。外側のスリット18は、一定深さ(つまり底面18cの高さ位置が一定)に形成されている。
一方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19のうち、この一方の側面12とは反対側つまり内側のスリット19は、この一方の側面12から遠い側つまり内側の壁部19Aが階段状をなしている。内側のスリット19は、平坦な外側の壁面19aと、この壁面19aに平行をなして対向する平坦な内側かつ上側の壁面19bと、壁面19aに平行をなして対向する平坦な内側かつ下側の壁面19cと、壁面19bの下端縁部と壁面19cの上端縁部とを繋ぐ段面19dと、壁面19a,19cの下端縁部同士を連結する底面19eとを有している。壁面19a,19bは、上面14の平坦面51と直交しており、壁面19a,19b,19cは発泡体11,11,…の延在方向に対して直交している。段面19dおよび底面19eは、上面14の平坦面51と平行をなしている。
壁部19Aは、上記した壁面19b,19cおよび段面19dを有しており、階段状をなしている。平行をなして互いに対向する壁面19a,19b間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19a,19c間の幅よりも広くなっており、具体的には、壁面19a,19c間の幅の2倍となっている。上面14の平坦面51から段面19dまでの距離L1は、平坦面51から底面19eまでの距離L2の半分つまり50%となっている。スリット19は、底面19e側よりも開口側(上面14側)の方が幅が広い階段状をなしている。具体的に、スリット19は、階段状の壁部19Aを有しており、壁部19Aは段面として一カ所の段面19dのみを有している。
壁面19a,19c間の幅は、スリット18の壁面18a,18b間の幅と同等になっており、よって、一方の側面12とその近傍位置に形成されたスリット19との間のスリット18は、スリット19の最大幅よりも狭い幅となっている。
上記のスリット19は、図7に示すように外径の異なる2枚の円板状のカッタ61,62を一体に連結してなる切削工具63で形成される。切削工具63が上面14に対して一定高さ位置を維持しつつ、図6に示す断熱材本体21を板幅方向に横断して切削を行ってスリット19を形成することになり、その際に、大径のカッタ61が外周の切れ刃でスリット19の壁面19a,19cおよび底面19eを形成し、小径のカッタ62が外周の切れ刃でスリット19の壁面19bおよび段面19dを形成する。
断熱材本体21は、側面12とこれに近接する外側のスリット18との間がこのスリット18を狭める方向に変位可能な外側可動片部23となり、外側のスリット18とこれに近接する内側のスリット19との間がこの内側のスリット19を狭める方向に変位可能な内側可動片部24となっている。そして、一方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19および他方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19よりも下面15側と、スリット19,19の間とが、変位困難な本体部26となっている。断熱材本体21の上面14は、外側可動片部23に形成される面部14aと、内側可動片部24に形成される面部14bと、本体部26に形成される面部14cとを有している。
一方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19および他方の側面12に近接する2カ所のスリット18,19は、間隙溝52,52,…および排水溝53,53,…を横断するように形成されている。よって、排水溝53,53,…は、それぞれ、外側可動片部23に配置される外側溝部55と、内側可動片部24に配置される内側溝部56と、本体部26に配置される中央溝部57とに分けられている。
上記の断熱材本体21に、図3および図5に示すように、一枚のシート状部材30が貼付されて断熱材10となる。このシート状部材30は、図3に示すように、側面13,13間の距離よりも短い幅であって側面12,12間の距離よりも長さの長い長方形状をなしている。言い換えれば、シート状部材30は、断熱材本体21の板幅方向の長さよりも同方向の長さが短くなっており、断熱材本体21の板長方向の長さよりも同方向の長さが長くなっている。
そして、シート状部材30は、断熱材本体21に対して側面13,13間の中央所定範囲に配置されており、言い換えれば、側面13,13から等距離の位置に配置されている。シート状部材30は、断熱材本体21の下面15における側面13,13間の中央所定範囲を覆うとともに断熱材本体21における発泡体11,11,…の配向方向両外側に延出して板長方向両側の側面12,12における側面13,13間の中央所定範囲を覆って、下面15と側面12,12とに貼り付けられている。
なお、シート状部材30の断熱材本体21への貼り付けは、断熱材本体21の下面15において中央部のみに接着剤を塗布するとともに、両側の側面12,12において高さ方向の中間所定位置(上面14から10mm程度の位置)のみに長さ方向に沿って直線状に接着剤を塗布し、これらの接着剤によって接着固定する。つまり、シート状部材30は、断熱材本体21に対して、下面15の中央部と両側の側面12,12の高さ方向の中間部分のみに接着固定される。言い換えれば、シート状部材30は、断熱材本体21の下面15に対しては、この下面15を覆う範囲の中間部のみが貼り付けられており、下面15を覆う範囲の全周囲範囲は貼り付けられていない。これにより、シート状部材30は、断熱材本体21の下面15に対して、側端部が接着されておらず、開放されることになる。ここで、断熱材本体21の下面15の中央部分への接着剤の塗布形状は、シート状部材30が断熱材本体21の下面15の側端部を開放できれば、円状、線状、十字状等、いかなる形状であっても良い。
上記のようにシート状部材30が貼付されることで、断熱材本体21がシート状部材30よりも板幅方向両側に均等に突出することになる。断熱材本体21およびシート状部材30からなる断熱材10は、シート状部材30が配置されない板幅方向の両端部の側面が、断熱材本体21の側面13,13からなっている。また、断熱材10は、シート状部材30が配置される板長方向の両端部の側面(対向面)40,40が、それぞれ、板厚方向の全体がシート状部材30で形成された板幅方向中央の被覆面部41と、その板幅方向両側で板厚方向の全体が断熱材本体21の側面12の一部からなる露出面部42,42とを有している。露出面部42,42は、側面12の長さ方向の両端部となっている。言い換えれば、側面40,40は、それぞれの長さ方向の中央がシート状部材30で形成された被覆面部41となり、長さ方向の両端部が断熱材本体21で形成された露出面部42,42となっている。よって、断熱材10は、四隅に露出面部42が設けられている。
一方の側面12を含む一方の側面40の近傍位置に形成された2カ所のスリット18,19は、一方の側面40に沿って形成されており、他方の側面12を含む他方の側面40の近傍位置に形成された2カ所のスリット18,19は、他方の側面40に沿って形成されている。一方の側面40とその近傍位置に形成されたスリット19との間に、このスリット19の最大幅よりも狭い幅のスリット18が形成されており、他方の側面40とその近傍位置に形成されたスリット19との間に、このスリット19の最大幅よりも狭い幅のスリット18が形成されている。一方の側面12を含む一方の側面40の近傍位置に形成されたスリット19は、この一方の側面40から遠い側の壁部19Aが階段状をなしており、他方の側面12を含む他方の側面40の近傍位置に形成されたスリット19は、この他方の側面40から遠い側の壁部19Aが階段状をなしている。
ここで、断熱材10は、図1に示す支持材110,110間に配置されるとき、後述するように、下面15を下側つまり室外側に向ける姿勢で、支持材110,110に側面12,12を含む側面40,40を対向させるようにして嵌合させられることになり、この嵌合により断熱材10により生じる弾発力によって支持材110,110に支持されることになる。
つまり、断熱材10は、その断熱材本体21が側面12,12にて支持材110,110に支持される。そして、シート状部材30が、側面12,12のそれぞれの長さ方向の中央部分を覆っており、言い換えれば、側面12,12のそれぞれの長さ方向の両端部以外を覆っている。シート状部材30は、一方の側面12の長さの50〜95%の範囲を覆っており、よって、一方の側面12の面積の50〜95%の範囲を覆っている。同様に、シート状部材30は、他方の側面12の長さの50〜95%の範囲を覆っており、よって、他方の側面12の面積の50〜95%の範囲を覆っている。
シート状部材30は、板長方向の両端部が断熱材本体21の上面14と同一平面で板長方向両外側に延出可能な長さに形成されている。上面14からの両側に延出する延出部31,31が、断熱材10を支持材110,110間に配置するときに、支持材110,110の上面にタッカーなどで釘打ちされて固定される。また、断熱材10は、支持材110,110間から引き抜かれる際に延出部31,31において引っ張られる。
側面12,12に開口する排水溝53,53,…のうち板幅方向中央側の複数本の排水溝53,53,…の両端開口位置にシート状部材30が配置されており、側面13,13側の排水溝53,53,…の両端開口位置にはシート状部材30は配置されていない。
シート状部材30としては、不織布を用いる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製またはポリプロピレン製などの不織布が好適であり、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート製の不織布を用いている。
また、シート状部材30は、引っ張り強度が10N/mm以上であることが好ましい。上述したように、断熱材10を支持材110,110間に配置するときに、シート状部材30はその延出部31が支持材110,110に釘打ちされて固定される。そのため、シート状部材30は引っ張られやすいが、引っ張り強度が10N/mm以上であれば、引っ張られても破れにくい。具体的には、延出部31,31を結ぶ方向となる縦方向の引っ張り強度が158N/mm、これとは直交する横方向の引っ張り強度が59N/mmとなっている。なお、シート状部材30の引っ張り強度は、JIS L 1906により測定される。
また、不織布であるシート状部材30は、目付量が30〜80g/mとなっており、具体的には、40g/mのポリエチレンテレフタレート製となっている。
さらに、シート状部材30は、透湿性を有することが好ましい。セルロースを含む断熱材や、該断熱材の上に設置される下地合板は吸湿性を有するので、室内の湿気等を含むと断熱材や下地合板が乾燥しにくいことがあった。また、特に2×4工法により建築する場合、建築途中で下地合板が雨に曝されると、雨水が下地合板と断熱材との間に溜まってしまうことがあった。
透湿性を有するシート状部材30を断熱材本体21の下面15に貼り付けることで、断熱材10や下地合板が吸湿したときにその水分を逃がすことができ、断熱材や下地合板が乾きやすくなる。
ここで、断熱材10は、これが配置される支持材110,110間の隙間の間隔に対して、発泡体11,11,…の配向方向における長さの最小値は短く、この方向の長さの最大値は長く形成されている。
そして、以上の断熱材10を図1に示すように支持材110,110間に配置する場合、作業者は、断熱材10を、支持材110,110に側面40,40を対向させる姿勢とし、図3、図5および図6に示す幅の狭い下面15を先方として、シート状部材30の両側の延出部31,31の挟まりを防止しつつ、支持材110,110間に、上から下への方向を嵌合方向として嵌合させる。その際に、断熱材10は側面40,40が支持材110,110の鉛直方向に沿い互いに平行をなして対向する内面111,111を摺動する。断熱材10において、支持材110,110に対向する側面40,40は、この嵌合方向の手前側が奥側よりも外側に位置するように傾斜している。
つまり、図8に示すように、断熱材10の接点位置S1に支持材110,110が当接した状態から断熱材10が支持材110,110間に押し込まれると、図9に示すように、嵌合方向の手前側の上面14から形成されたスリット18,19を狭めるように、外側可動片部23が内側可動片部24側に変位して内側可動片部24に当接しつつ内側可動片部24が本体部26側に変位して本体部26に当接して、外側可動片部23および内側可動片部24が圧縮されながら支持材110,110間に嵌合させられる。このとき、断熱材10はその弾発力で支持材110,110間に保持される。支持材110,110間に断熱材10を押し込む場合、通常、作業者は、断熱材10の上面14の撓みにくい角部位置を下方に押圧することになる。
なお、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、内側可動片部24がスリット19の底面19eの内側可動片部24側の端縁部を中心に倒れることになり、よって、上面14のうちの内側可動片部24上の面部14bは、本体部26とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで本体部26側が下がる。これにより、面部14bとスリット19の壁面19bとで下方に凹む凹溝24Aが形成されることになる。この凹溝24Aは、側面13,13間を繋ぐように板幅方向の全長にわたって延在する。内側可動片部24が上記のように倒れることにより、内側溝部56は、中央溝部57とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで中央溝部57側が下がる。
また、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、外側可動片部23がスリット18の底面18cの外側可動片部23側の端縁部を中心に倒れることになり、よって、上面14のうちの外側可動片部23上の面部14aは、内側可動片部24とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで内側可動片部24側が下がる。これにより、面部14aとスリット18の壁面18bとで下方に凹む凹溝23Aが形成されることになる。この凹溝23Aも、側面13,13間を繋ぐように板幅方向の全長にわたって延在する。外側可動片部23が上記のように倒れることにより、外側溝部55は、内側溝部56とは反対側の端部の高さ位置は略そのままで内側溝部56側が下がる。よって、中央溝部57の底の最大高さと、内側溝部56の底の最大高さと、外側溝部55の底の最大高さとは略同じとなり、内側溝部56の底はスリット19側ほど下側に位置するように傾斜し、外側溝部55の底はスリット18側ほど下側に位置するように傾斜する。
建築施工中に、上記のように支持材110,110間に配置された断熱材10の上面14に雨水がかかることがある。すると、この雨水は、排水溝53,53,…に落ち、排水溝53,53,…を流れて、一部はスリット18,19に落下し、スリット18,19の両端から断熱材10の板幅方向の側面13,13に排水される。そのうちの一部は、側面13,13から下面15に回り込むこともあるが、シート状部材30の断熱材本体21の下面15への貼り付けを、全面ではなく、中央部分のみとすることで、下面15に回り込み、断熱材本体21とシート状部材30との間に浸入した水を、開放されている側端部から排水することができる。また、雨水の量が多い場合、雨水は、凹溝23A,24Aを流れて、それぞれの両端から断熱材10の板幅方向の側面13,13に排水される。
また、雨水の排水溝53,53,…を流れる一部は、場合によっては、その両端に至ることがあるが、側面40,40のシート状部材30が設けられていない露出面部42,42に位置が合う排水溝53,53,…の雨水は、シート状部材30に浸透することはない。よって、シート状部材30に浸透する雨水の量を抑制することができる。
以上により、断熱材10上に床板や合板等の床材120を施工する前に、断熱材10上に溜まった水を拭き取る等して乾燥させる作業が不要となり、あるいは軽く済むため、施工上の手間を軽減できる。
以上に述べた第1実施形態の断熱材10によれば、施工前にスリット19は底面19e側よりも開口側(上面14側)の方が幅が広い階段状をなしているため、十分な変形代を設けても、施工後にスリット19によって断熱材10内に生じる空間を減らすことができる。しかも、施工前のスリット19を底面19e側よりも開口側の方が幅が広い階段状に形成すれば良いため、製造が容易となる。したがって、断熱性能の低下および製造コストの増大を抑制することができる。
また、施工前の断熱材10のスリット19は、対向する壁面19a,19b同士が平行をなしており、対向する壁面19a,19c同士が平行をなしていて、すべての対向する壁面同士が平行をなしているため、製造がさらに容易となり、製造コストの増大をさらに抑制することができる。
また、施工前の断熱材10のスリット19は、近接配置された側面12に対し遠い側の壁部19Aが階段状をなしているため、スリット19の開口位置が同じ場合に、近接配置された側面12とこれに近い側の壁面19aとの間の底面19e側の距離を短くでき、この部分が変形しやすくなる。よって、施工性が向上する。
また、壁部19Aは段面として一カ所のみの段面19dを有しているため、製造がさらに容易となり、製造コストの増大をさらに抑制することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る断熱材について、主に図10,図11を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
第2実施形態においては、図10に示すように、スリット19の壁部19Aの段面19dの高さ位置が第1実施形態と相違している。つまり、第2実施形態においては、上面14の平坦面51から段面19dまでの距離L1は、平坦面51から底面19eまでの距離L2の40%となっている。
第2実施形態においても、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、図11に示すように内側可動片部24がスリット19の底面19eの内側可動片部24側の端縁部を中心に倒れることになるが、上面14の平坦面51から段面19dまでの距離L1が、平坦面51から底面19eまでの距離L2の40%となっていることで、施工後にスリット19によって断熱材10内に生じる空間をさらに減らすことができる。なお、上面14の平坦面51から段面19dまでの距離L1は、平坦面51から底面19eまでの距離L2の40%〜80%とするのが好ましい。つまり、40%より小さいと、内側可動片部24側の倒れを阻害することになって施工性の低下を招くことになり、80%より大きいとスリット19によって断熱材10内に生じる空間を十分に減らすことができない。このように距離L1を距離L2の40%〜80%とすることにより、施工性の低下を招くことなく、スリット19によって断熱材10内に生じる空間を効果的に減らすことができる。よって、断熱性能の低下をさらに抑制できる。
次に、第1参考技術に係る断熱材について、主に図12,図13を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
図12に示すように、第1参考技術においては、内側のスリット19の、これに近接する側面12に近い側つまり外側の壁部19Bが階段状をなしている。第1参考技術のスリット19は、平坦な内側の壁面19gと、この壁面19gに平行をなして対向する平坦な外側かつ上側の壁面19hと、壁面19gに平行をなして対向する平坦な外側かつ下側の壁面19iと、壁面19hの下端縁部と壁面19iの上端縁部とを繋ぐ段面19jと、壁面19g,19iの下端縁部同士を連結する底面19kとを有している。壁面19g,19hは、上面14の平坦面51と直交しており、壁面19g,19h,19iは発泡体11,11,…の延在方向に対して直交している。段面19jおよび底面19kは、上面14の平坦面51と平行をなしている。
壁部19Bは、上記した壁面19h,19iおよび段面19jを有しており、階段状をなしている。平行をなして互いに対向する壁面19g,19h間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19g,19i間の幅よりも広くなっており、具体的には、壁面19g,19i間の幅の2倍となっている。上面14の平坦面51から段面19jまでの距離L3は、平坦面51から底面19kまでの距離L2の半分つまり50%となっている。距離L3は距離L2の40%〜80%であれば良い。スリット19は、底面19k側よりも開口側の方が幅が広い階段状をなしている。具体的に、スリット19は、階段状の壁部19Bを有しており、壁部19Bは段面として一カ所の段面19jのみを有している。
壁面19g,19i間の幅は、スリット18の壁面18a,18b間の幅と同等になっており、よって、一方の側面12とその近傍位置に形成されたスリット19との間のスリット18は、スリット19の最大幅よりも狭い幅となっている。
第1参考技術のスリット19も、図7に示す外径の異なる2枚の円板状のカッタ61,62を一体に連結してなる切削工具63で形成される。切削工具63が上面14に対して一定高さ位置を維持しつつ断熱材本体21を板幅方向に横断して切削を行ってスリット19を形成することになり、その際に、大径のカッタ61が外周の切れ刃でスリット19の壁面19g,19iおよび底面19kを形成し、小径のカッタ62が外周の切れ刃でスリット19の壁面19hおよび段面19jを形成する。
第1参考技術においても、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、図13に示すように内側可動片部24がスリット19の底面19kの内側可動片部24側の端縁部を中心に倒れることになる。壁部19Bが階段状をなしているため、スリット19によって断熱材10内に生じる空間を減らすことができる。
以上の第1参考技術によれば、スリット19は、その近傍の側面12に対し近い側の壁部19Bが階段状をなしているため、スリット19の開口位置が同じ場合に、側面12とこれに近い側の壁部19Bとの間の底面19k側の距離を長くでき、この部分の剛性が高くなる。よって、支持材110,110による支持性能が向上する。
また、スリット19は、その近傍の側面12に対し近い側の壁部19Bが段面として一カ所のみの段面19jを有しているため、第1実施形態と同様に、製造が容易となり、製造コストの増大を抑制することができる。
次に、第2参考技術に係る断熱材について、主に図14,図15を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
図14に示すように、第2参考技術においては、内側のスリット19の、これに近接する側面12に対し遠い側つまり内側の壁部19Aが複数段の階段状をなしている。第2参考技術のスリット19は、平坦な外側の壁面19aと、この壁面19aに平行をなして対向する平坦な内側かつ上側の壁面19mと、壁面19aに平行をなして対向する平坦な内側かつ上下方向中間の壁面19nと、壁面19aに平行をなして対向する平坦な内側かつ下側の壁面19oと、壁面19mの下端縁部と壁面19nの上端縁部とを繋ぐ段面19pと、壁面19nの下端縁部と壁面19oの上端縁部とを繋ぐ段面19qと、壁面19a,19oの下端縁部同士を連結する底面19rとを有している。壁面19mは、上面14の平坦面51と直交しており、壁面19m,19n,19oは発泡体11,11,…の延在方向に対して直交している。段面19p,19qおよび底面19rは、上面14の平坦面51と平行をなしている。
第2参考技術の壁部19Aは、上記した壁面19m,19n,19oおよび段面19p,19qを有しており、複数段の階段状をなしている。平行をなして互いに対向する壁面19a,19m間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19a,19n間の幅よりも広くなっており、壁面19a,19n間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19a,19o間の幅よりも広くなっている。具体的には、壁面19a,19m間の幅は、壁面19a,19o間の幅の3倍、壁面19a,19n間の幅は、壁面19a,19o間の幅の2倍となっている。上面14の平坦面51から段面19pまでの距離と、段面19pから段面19qまでの距離と、段面19pから底面19rまでの距離とは同等になっている。第2参考技術の階段状の壁部19Aは、段面として複数カ所の段面19p,19qを有している。壁面19a,19o間の幅は、スリット18の壁面18a,18b間の幅と同等になっている。
第2参考技術のスリット19も、底面19r側よりも開口側(上面14側)の方が幅が広い階段状をなしている。具体的に、第2参考技術のスリット19は、階段状の壁部19Aを有しており、壁部19Aは段面として複数カ所の段面19p,19qを有している。第2参考技術のスリット19は、図示は略すが外径の異なる3枚の円板状のカッタを一体に連結してなる切削工具で形成される。
第2参考技術においても、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、図15に示すように、内側可動片部24がスリット19の底面19rの内側可動片部24側の端縁部を中心に倒れることになる。壁部19Aが複数カ所の段面19p,19qを有する階段状をなしているため、スリット19によって断熱材10内に生じる空間をより減らすことができる。よって、断熱性能の低下をさらに抑制できる。なお、壁部19Aの段面を三カ所以上としても良い。
次に、第3参考技術に係る断熱材について、主に図16,図17を参照して第1参考技術との相違部分を中心に説明する。第1参考技術と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
図16に示すように、第3参考技術においては、内側のスリット19の、これに近接する側面12に対し近い側つまり外側の壁部19Bが複数段の階段状をなしている。第3参考技術のスリット19は、平坦な内側の壁面19gと、この壁面19gに平行をなして対向する平坦な外側かつ上側の壁面19tと、壁面19gに平行をなして対向する平坦な外側かつ上下方向中間の壁面19uと、壁面19gに平行をなして対向する平坦な外側かつ下側の壁面19vと、壁面19tの下端縁部と壁面19uの上端縁部とを繋ぐ段面19wと、壁面19uの下端縁部と壁面19vの上端縁部とを繋ぐ段面19xと、壁面19g,19vの下端縁部同士を連結する底面19yとを有している。壁面19tは、上面14の平坦面51と直交しており、壁面19t,19u,19vは発泡体11,11,…の延在方向に対して直交している。段面19w,19xおよび底面19yは、上面14の平坦面51と平行をなしている。
壁部19Bは、上記した壁面19t,19u,19vおよび段面19w,19xを有しており、複数段の階段状をなしている。平行をなして互いに対向する壁面19g,19t間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19g,19u間の幅よりも広くなっており、壁面19g,19u間の幅は、平行をなして互いに対向する壁面19g,19v間の幅よりも広くなっている。具体的には、壁面19g,19t間の幅は、壁面19g,19v間の幅の3倍、壁面19g,19u間の幅は、壁面19g,19v間の幅の2倍となっている。上面14の平坦面51から段面19wまでの距離と、段面19wから段面19xまでの距離と、段面19xから底面19yまでの距離とは同等になっている。階段状の壁部19Bは、段面として複数カ所の段面19w,19xを有している。壁面19g,19v間の幅は、スリット18の壁面18a,18b間の幅と同等になっている。
第3参考技術のスリット19も、底面19y側よりも開口側(上面14側)の方が幅が広い階段状をなしている。具体的に、スリット19は、階段状の壁部19Bを有しており、壁部19Bは段面として複数カ所の段面19w,19xを有している。第3参考技術のスリット19も、図示は略すが外径の異なる3枚の円板状のカッタを一体に連結してなる切削工具で形成される。
第3参考技術においても、支持材110,110間に押し込まれる際に、断熱材10は、図17に示すように、内側可動片部24がスリット19の底面19yの内側可動片部24側の端縁部を中心に倒れることになる。壁部19Bが複数カ所の段面19w,19xを有する階段状をなしているため、スリット19によって断熱材10内に生じる空間をより減らすことができる。よって、断熱性能の低下をさらに抑制できる。なお、壁部19Bの段面を三カ所以上としても良い。
第4参考技術として、第1,第2実施形態第2参考技術の壁部19Aと、第1,第3参考技術の壁部19Bとを適宜選択的に組み合わせて、壁部19A,19Bの両方を階段状としても良い。
10 断熱材
14 上面(嵌合方向手前側の面)
19 スリット
19A 壁部(対向面から遠い側の壁部)
19B 壁部(対向面に近い側の壁部)
19a,19b,19c,19g,19h,19i,19m,19n,19o,19t,19u,19v 壁面
19d,19j,19p,19q,19w,19x 段面
19e,19k,19r,19y 底面
40 側面(対向面)
110 支持材

Claims (2)

  1. 一対の支持材間に嵌合されて支持される断熱材であって、
    前記支持材に対向する対向面は、嵌合方向の手前側が奥側よりも外側に位置するように傾斜しており、
    前記対向面の近傍位置に該対向面に沿う第1のスリットが前記嵌合方向の手前側の面から形成され
    前記対向面と前記第1のスリットとの間に前記対向面に沿う第2のスリットが前記嵌合方向の手前側の面から形成されていて、
    前記第1のスリットは、前記対向面から遠い側の壁部が段面を一カ所のみ有する階段状をなし、前記対向面に近い側の壁部が全深さに亘って平坦であると共に、これら壁部の対向する壁面同士が平行をなすことにより、底面側よりも開口側の方が幅が広くなっており、
    前記第2のスリットは、前記対向面から遠い側の壁部および前記対向面に近い側の壁部がいずれも全深さに亘って平坦である共に、これら壁部の対向する壁面同士が平行をなしていて、
    前記第1のスリットは、前記対向面から遠い側の壁部の前記底面と前記段面との間の壁面と前記対向面に近い側の壁部の壁面との間隔が、前記第2のスリットの前記対向面から遠い側の壁部および前記対向面に近い側の壁部の対向する壁面同士の間隔と同等であり、
    前記第2のスリットの底面の深さは、前記第1のスリットの底面の深さよりも浅く、前記段面の深さよりも深いことを特徴とする断熱材。
  2. 前記手前側の面から前記段面までの距離が、前記手前側の面から前記底面までの距離の40%〜80%であることを特徴とする請求項に記載の断熱材。
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