JP6008153B2 - 光硬化型インク用容器 - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化型インク用容器に関するものである。
従来、金属光沢を有する印刷物を作製する際には、アルミニウム粒子等の金属粒子を含むインキによるグラビア印刷やスクリーン印刷等の他、金属箔を用いた箔押し印刷や熱転写印刷等が知られている。
しかしながら、これらの印刷法は、大規模または高価な装置が必要な上、印刷後に廃棄されるインキや金属箔も少なくないため、ランニングコストが高い。さらに印刷時の騒音が大きい等の課題も抱えている。
近年、これらの課題を解消する印刷法としてインクジェット印刷の利用が拡大している。インクジェット印刷は、紙等の印刷面にインクを吐出し、定着させる方式であるため、インクの使用量が少ない。一方、インクを吐出するという原理上、インクの粘性を抑える必要がある。しかしながら、インクの粘性が低下することにより、吐出したインクが滲み易くなり、高精細な印字結果を得ることが難しくなる。特に、インクの吸収性が低い印刷面(例えば紙以外の媒体)に印刷するときには、その傾向が強くなるので、インクジェット印刷用のインクには十分な速乾性が求められる。
そこで、上記の課題を解決すべく、光の照射により硬化する光硬化型インクが提案されている。例えば、特許文献1には、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類からなる重合性化合物と、光重合開始剤とを含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。光硬化型インクを吐出するとともに光を照射すれば、吐出された光硬化型インクが滲み始める前に硬化させることができるため、高精細な印字結果が得られる。
このような背景から、インクジェット印刷により光硬化型インクを吐出することで金属光沢を有する印刷物を作製する技術の実用化が期待されており、金属成分を含む光硬化型インクの開発が進められている。この光硬化型インクには、金属粒子、重合性反応物、光重合開始剤等が含まれ、このインクから得られる印刷物は金属粒子に起因する光沢を有するものとなる。
ところが、金属粒子を含む光硬化型インクは、その保存性において課題を抱えている。通常、金属粒子を含む光硬化型インクは、空気との接触を避けるため十分に脱気処理が施された上で、遮光された気密容器内に封入された状態で保存されるが、インク中に金属粒子が含まれていると、これが前述した重合性反応物の重合反応(硬化)を促進する触媒として機能するため、保存中にインクが硬化してしまう。しかも、この重合反応において、酸素は重合禁止効果を有するものであるため、気密性の高い容器内で脱気されたインクを保存した場合、酸素による重合禁止効果が阻害されてしまい、かえって重合反応が一層促進されることとなる。
特開2008−280383号公報
本発明の目的は、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器およびインクパックを提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光硬化型インク用容器は、内部に、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容可能な容器であって、
内部と外部とを隔てる外装が酸素透過性を有していることを特徴とする。
これにより、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記外装のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m2・day・atm]以上30000[cc/m2・day・atm]以下であることが好ましい。
これにより、内部空間に封入した光硬化型インクに対して必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、著しい粘性の上昇を抑え得る十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記外装のJIS Z 7129に準拠した方法により測定された水蒸気透過度は、50[g/m2・day]以下であることが好ましい。
これにより、外装の外部から内部空間への水蒸気の移動が防止され、吸湿に伴う光硬化型インクの変質、劣化が防止される。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記外装は、樹脂製フィルムを含み、遮光性を有するものであることが好ましい。
これにより、光硬化型インク用容器の軽量化を図ることができる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記樹脂製フィルムは、ポリオレフィン系樹脂製フィルムであることが好ましい。
これにより、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムに加工等を施すことなくそのまま良好な外装として用いることができ、しかも、このフィルムは水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インクの吸湿による変質、劣化を防止することができる。
本発明の光硬化型インク用容器では、当該光硬化型インク用容器は、内部と外部とを連通可能な開口部を備えていることが好ましい。
これにより、開口部を介して光硬化型インクを外部に取り出すことができ、開口部を閉じることで光硬化型インク用容器を気密的に封止することができる。
本発明のインクパックは、本発明の光硬化型インク用容器の内部に、脱気処理を施した前記光硬化型インクを封入してなることを特徴とする。
これにより、液滴吐出装置において安定的に吐出可能な光硬化型インクを封入し、このインクを長期にわたって安定的に保存可能なインクパックが得られる。
本発明のインクパックでは、前記光硬化型インク用容器の内部には実質的に隙間がないように前記光硬化型インクが封入されていることが好ましい。
これにより、脱気した光硬化型インク中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。
本発明のインクパックの実施形態を示す斜視図である。 図1のA−A線断面図である。 図2に示す実施形態の他の構成例を示す斜視図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
≪光硬化型インク用容器およびインクパック≫
まず、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックについて説明する。
図1は、本発明のインクパックの実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図2に示す実施形態の他の構成例を示す斜視図である。
図1に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
このうち、光硬化型インク用容器10は、平面視で長方形をなす封筒状の外装2と、外装2の短辺の一部に設けられた開口部3と、を有している。
外装2の内部は気密空間になっており、開閉可能な開口部3を介して外部と連通可能になっている。外装2の内部空間20は、薄く広がった略直方体状をなしており、外装2は酸素透過性を有している。これにより、インクパック1の外部の大気からは、内部に封入された光硬化型インク100に対して継続的に酸素が供給されることとなる。その結果、光硬化型インク100には、酸素による重合禁止効果が継続的に付与されることとなり、保存中の硬化が防止される。そして、金属粒子を含む光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
以下、光硬化型インク用容器10の各部について詳述する。
(外装)
外装2は、上述した酸素透過性に加え、遮光性を有している。これにより、光硬化型インク用容器10は、外光の侵入を防止して光硬化型インク100の意図しない反応を防止し、光硬化型インク100を液滴吐出装置で吐出する際の吐出安定性の低下を防止する。
外装2の構成材料は、不透液性を有し、かつ酸素透過性を有する材料であれば特に限定されない。外装2は、例えば、樹脂製、金属製、セラミックス製、ガラス製等の硬質のケースで構成されたものでもよいが、好ましくは軟質の樹脂製フィルムを含むものが用いられる。これにより、外装2は、光硬化型インク用容器10の軽量化に寄与する。
外装2に含まれる樹脂製フィルムとしては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンビニルアセテートのようなポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリブタジエンフィルム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を積層してなる積層フィルムが用いられる。
これらの中でも外装2に含まれる樹脂製フィルムとしては、特にポリオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。ポリオレフィン系フィルムは、それ自体が比較的高い酸素透過性を有するため、加工等を施すことなく用いることができ、しかも、水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インク100の吸湿による変質、劣化を防止する。
また、外装2として、通気性を高めるフィラーを添加したフィルムも用いることができる。このようなフィラーとしては、例えば、ゼオライト、多孔性セラミックスのような無機系多孔質粒子が挙げられる。これらのフィラーを用いることにより、フィルムの基材の種類によらず、酸素透過性を有する外装2を得ることができる。また、通気性を高めるフィラーを添加する場合、その添加量は、外装2中において0.5質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
また、外装2には、貫通孔を形成したフィルムも用いられる。貫通孔の大きさは、必要な酸素透過度と光硬化型インク100を保持するために必要な不透液性とを両立する程度に適宜設定されるが、好ましくは10nm以下に設定される。貫通孔の大きさが前記範囲内であれば、透過した酸素の気泡が液滴吐出装置の吐出安定性を低下させるおそれが小さくなる。
また、上記樹脂製フィルムが十分な遮光性を有していない場合には、必要に応じて樹脂製フィルム中に遮光性を付与するフィラーを分散させるようにしてもよい。このようなフィラーとしては、例えば、カーボンブラック(CB)、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブのような炭素系材料、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、雲母のようなケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ホウ素のような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトのような炭酸塩、ケイ化クロム、ケイ化タンタル、ケイ化ジルコニウムのようなケイ化物、炭化クロム、炭化ケイ素、炭化タンタルのような炭化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化クロム、窒化タンタルのような窒化物、各種金属粉末等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
なお、上記フィラーを添加する場合、外装2中のフィラーの含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。フィラーの含有量を前記範囲内とすることにより、外装2は遮光性と酸素透過性とを高度に両立し得るものとなる。すなわち、フィラーの含有量が前記下限値を下回る場合、外装2の遮光性が低下して光硬化型インク100が硬化および変質、劣化するおそれがあり、一方、フィラーの含有量が前記上限値を上回る場合、酸素透過性が低下してやはり光硬化型インク100が硬化するおそれがある。
また、樹脂製フィルムの表面に、酸素透過性を有しかつ遮光性を有する遮光膜を成膜することにより、積層構造の外装2を得ることもできる。
このような遮光膜としては、例えば、上述したようなフィラーを含む塗料を樹脂製フィルムの表面に塗布してなるものが挙げられる。塗料には必要に応じてケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムのようなガラス材料を添加するようにしてもよい。
なお、用いられるフィラーの平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上100μm以下であるのが好ましく、2nm以上80μm以下であるのがより好ましい。フィラーの平均粒径を前記範囲内とすることにより、外装2の遮光性と酸素透過性とを高度に両立することができる。
また、外装2の平均厚さは、構成材料に応じて異なるものの、30μm以上300μm以下程度であるのが好ましく、50μm以上200μm以下程度であるのがより好ましい。外装2の平均厚さを前記範囲内とすることにより、外装2は、光硬化型インク100の硬化を確実に防止し得る程度の十分な酸素透過性と、光硬化型インク100を保持し得る程度の十分な機械的強度とを、高度に両立し得るものとなる。
なお、遮光膜を設ける場合、その平均厚さは、3μm以上200μm以下程度であるのが好ましく、5μm以上150μm以下程度であるのがより好ましい。
また、外装2を前述したような積層構造にする場合、金属を含む層は、最内層以外に配置されるのが好ましい。これにより、金属を含む層が光硬化型インク100に対して硬化触媒として機能するのを防止し、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
なお、上記の観点から、最内層には樹脂製フィルムが配置されるのが好ましく、金属を含む層については、耐擦性を確保する観点から最内層と最外層との間に配置されるのが好ましい。
また、外装2は、例えば図1、2に示すように、複数のフィルムを積層し、外縁部を接着または融着して封止することにより製造される。接着にはホットメルト接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤のような各種接着剤が用いられ、融着には熱融着等が用いられる。
ここで、外装2は、分子レベルで酸素(O2)を透過する酸素透過性を有する一方、内部空間20に封入した光硬化型インク100を保持するための不透液性を有している。
前述したように、外装2は酸素透過性を有しているが、その酸素透過度は、1000[cc/m2・day・atm]以上30000[cc/m2・day・atm]以下程度であるのが好ましく、2000[cc/m2・day・atm]以上20000[cc/m2・day・atm]以下程度であるのがより好ましい。外装2の酸素透過度を前記範囲内に設定することにより、内部空間20に封入した光硬化型インク100に対して外装2の外部から必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、粘性の著しい上昇を抑えるのに十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器10が得られる。
なお、酸素透過度が前記下限値未満である場合、十分な量の酸素が供給されないので、保存中の光硬化型インク100が硬化してしまうおそれがある。一方、酸素透過度が前記上限値を上回る場合、酸素供給量が多過ぎて、酸素による重合禁止効果が短時間しか維持されなかったり、光硬化型インク100が脱気されているにもかかわらず、著しく多くの酸素が溶存してしまい、インクジェット印刷における光硬化型インク100の吐出が不安定になるおそれがある。
また、上記の酸素透過度は、JIS K 7126−2に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
また、外装2は、水蒸気透過度ができるだけ小さいものであるのが好ましく、具体的には水蒸気透過度が50[g/m2・day]以下程度であるのが好ましく、30[g/m2・day]以下程度であるのがより好ましい。外装2の水蒸気透過度が前記範囲内であれば、外装2の外部から内部空間20への水蒸気の移動が防止され、吸湿に伴う光硬化型インク100の変質、劣化が防止される。
なお、上記の水蒸気透過度は、JIS K 7129に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
(他の構成例)
また、外装2の形状は特に限定されず、図3に示すような形状であってもよい。
図3に示す外装2は、底面21が形成されるよう構成されている以外は、図2に示す外装2と同様である。図3に示す形状であれば、底面21を設けることにより、底面21側を鉛直下方にしてインクパック1自体を自立させることができる。このため、インクパック1の取り扱いが容易になる。
(開口部)
開口部3は、光硬化型インク用容器10の内部空間20と外部とを連通するものであり、開閉自在に設けられている。具体的には、開口部3は、内部空間20と外部とを連通させる連通孔31を有する案内部32と、案内部32に着脱可能で連通孔31を開閉するキャップ33とを有している。案内部32の外表面と外装2とは接着または融着により封止されており、キャップ33を閉めると内部空間20は気密的に封止される。一方、キャップ33を開けると、連通孔31を介して光硬化型インク100を外部に取り出すことができるようになる。
なお、開口部3は、液滴吐出装置のインク供給系に接続されるよう構成されていてもよい。これにより、内部空間20に封入された光硬化型インク100を、外気に触れることなく液滴吐出装置内に供給することができる。
開口部3の構成材料は、遮光性を有する材料であればよく、例えば、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、各種金属等が挙げられる。
また、これらの構成材料には、必要に応じて、染料、顔料等が含まれていてもよく、このうち顔料としては前述したような各種フィラーが挙げられる。
≪光硬化型インク≫
前述したように、インクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
光硬化型インク100は、例えば液滴吐出装置により吐出され、これを硬化させることで被膜を形成し得るインク組成物である。
このような光硬化型インク100は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含んでなるものである。
以下、光硬化型インク100の各構成成分について説明する。
(金属粒子)
金属粒子としては、金属を含む粒子であればいかなるものでもよく、含まれる金属としては、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、銅のような金属の単体あるいはこれらの合金、混合物が挙げられる。また、光硬化型インク100中に含まれる金属粒子は、2種以上であってもよい。
また、金属粒子の形状としては、特に限定されず、略球状、平板状、針状等の形状が挙げられる。
なお、略球状の金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下であるのが好ましく、1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
また、平板状または針状の金属粒子の場合、平均長径が前記範囲内であるのが好ましい。
また、金属粒子は、必要に応じて、表面に各種の表面処理を施したものでもよい。表面処理としては、例えば、各種カップリング剤、アルコキシシラン化合物を結合させる処理が挙げられる。
光硬化型インク100中の金属粒子の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であるのがより好ましい。
(重合性化合物)
重合性化合物としては、単官能または多官能であるモノマーやオリゴマーが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸を含むものが好ましく用いられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルのような(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸を含むものが挙げられる。
光硬化型インク100中の重合性化合物の含有量は、40質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、紫外線等のエネルギー線が照射されることにより、活性化してラジカルを生成するラジカル型光重合開始剤や、活性化して水素イオンを生成するカチオン型光重合開始剤等が挙げられる。
具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのようなアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
光硬化型インク100中の光重合開始剤の含有量は、5質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上12質量%以下であるのがより好ましい。
(重合禁止剤)
光硬化型インク100は、必要に応じて、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤は、重合性化合物の重合反応に対し、禁止効果を有する化合物である。
具体的には、p−ハイドロキノン、p−メトキシフェノールのようなフェノール系の重合禁止剤、p−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾキノンのようなキノン系の重合禁止剤等が挙げられる。
光硬化型インク100中の重合禁止剤の含有量は、0.05質量%以上1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
なお、重合禁止剤が作用するためには、酸素が必要になる場合が多い。したがって、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を、空気との接触を避けた状態で保存した場合、重合禁止効果が働かず、保存中にインクが硬化してしまう。これに対し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を光硬化型インク用容器10内に封入することにより、重合禁止効果の発現に必要な酸素が継続的に供給されるため、重合禁止効果が長期にわたって発現し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を安定的に保存することができる。
(その他の成分)
光硬化型インク100は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、顔料や染料のような色材、レベリング剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、乾燥抑制剤、表面張力調整剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
≪インクパックの製造方法≫
次に、本発明のインクパックの製造方法について説明する。この製造方法は、上述した光硬化型インク用容器10の内部空間20に光硬化型インク100を封入し、インクパック1を得る方法である。
内部空間20に封入する光硬化型インク100には、まず、脱気処理を施し、インク中に溶存する気体を排出する。脱気処理には、例えば、超音波脱気処理、減圧脱気処理、遠心脱気処理等の各種脱気処理の1つまたは複数を組み合わせて用いることができる。このような脱気処理を施すことにより、液滴吐出装置において光硬化型インク100を安定的に吐出することができる。
次いで、内部空間20内の空気を一旦吸引し、内部空間20の容積をほぼゼロにした後、空気を巻き込まないように光硬化型インク100を注入する。そして、内部空間20内に光硬化型インク100を充填し、開口部3のキャップ33を閉める。これにより、内部空間20内に光硬化型インク100が封入される。この際、内部空間20内において、光硬化型インク100が充填された空間以外に実質的に隙間が生じないように封入されるのが好ましい。これにより、脱気した光硬化型インク100中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。また、隙間に含まれた成分が光硬化型インク100に意図しない作用を及ぼすことが防止されることにもなり、光硬化型インク100の保存性が向上する。
以上のようにしてインクパック1が得られる。
この状態で光硬化型インク100を保存すれば、外装2を介して外気から内部空間20へと継続的に酸素が供給されることとなる。酸素は、気泡としてではなく分子レベルのサイズで供給されるため、脱気した光硬化型インク100は、気泡を巻き込むことなく、酸素による重合禁止効果が働いて硬化反応が抑えられる。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の光硬化型インク用容器の構成は、上記のものに限定されず、内部空間が複数に分割されていたり、開口部が複数個設けられていたりしてもよい。また、上記の実施形態では、内部空間が薄く広がった略直方体状をなす保存容器について説明したが、内部空間の形状はこのような形状に限らず、円柱状、楕円柱状、円錐状、角柱状、角錐状等であってもよい。
以下、実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.インクパックの製造
(実施例1)
まず、図1、2に示すような光硬化型インク用容器を作製した。具体的には、下記の構成の外装用フィルム2枚を重ね、その外縁部を熱溶着により封止した。これにより外装を形成した。また、開口部は、熱溶着により封止した。これにより、封筒状の光硬化型インク用容器を得た。
なお、光硬化型インク用容器の構成は、以下の通りである。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ100μm、比重0.920、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :2000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:20[g/m2・day]
次に、内部空間内に空気が入らないように、脱気処理を施した下記の成分を含む光硬化型インクを封入した。これにより、インクパックを得た。
<光硬化型インクの組成>
・金属粒子(2質量%):平板状アルミニウム粒子(平均長径1μm、平均厚さ0.03μm)
・重合性化合物(合計87.6質量%):アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル((株)日本触媒製):フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
・光重合開始剤(合計10質量%):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、IRGACURE819):2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、DAROCUR TPO):2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、KAYACURE DETX−S)
・重合禁止剤(0.2質量%):p−メトキシフェノール
・レベリング剤(0.2質量%):シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−UV3500)
(実施例2)
外装用フィルムの平均厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ40μm、比重0.920、カーボンブラック含有量7質量%)
・酸素透過度 :5000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:40[g/m2・day]
(実施例3)
外装用フィルムの平均厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ20μm、比重0.920、カーボンブラック含有量10質量%)
・酸素透過度 :10000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:80[g/m2・day]
(実施例4)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック含有超低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、平均厚さ100μm、比重0.910、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :7000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:50[g/m2・day]
(実施例5)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、平均厚さ100μm、比重0.950、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :600[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:4[g/m2・day]
(実施例6)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径15μm)含有二軸延伸ポリエステルフィルム(PET、平均厚さ100μm、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :20[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:7[g/m2・day]
(実施例7)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径30μm)含有無延伸ポリプロピレンフィルム(PP、平均厚さ100μm、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :1000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:3[g/m2・day]
(実施例8)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有ポリスチレンフィルム(PS、平均厚さ100μm、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :1100[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:30[g/m2・day]
(実施例9)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ40μm、カーボンブラック含有量8質量%)
・酸素透過度 :40000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:100[g/m2・day]
(実施例10)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ100μm、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :15000[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:40[g/m2・day]
(比較例)
外装用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<外装用フィルムの構成>
・層構成 :3層構造フィルム
第1層(最内層):ポリプロピレンフィルム(平均厚さ60μm)
第2層(中間層):アルミニウム層(平均厚さ10μm)
第3層(最外層):ナイロンフィルム(平均厚さ15μm)
・酸素透過度 :0[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:0[g/m2・day]
(参考例)
光硬化型インクとして金属粒子を含まないものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
2.インクパックの評価
2.1.粘度評価
各実施例、比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における粘度変化を以下のようにして評価した。
まず、各インクパック中の光硬化型インクの初期粘度をPhysica社製の粘度計MCR−300により測定した。
次いで、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクの粘度を再び測定した。その上で、加熱前の粘度(初期粘度)を1としたときの加熱後の粘度の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
<粘度の評価基準>
◎ :加熱後の粘度の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の粘度の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の粘度の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の粘度の相対値が2以上である
××:加熱途中で完全硬化してしまう
2.2.硬化性評価
各実施例、比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における硬化性変化を以下のようにして評価した。
まず、加熱前の各インクパック中の光硬化型インクをガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線を照射して滴下した組成物が硬化するまでの時間を測定した。なお、照射強度は20mW/cm2とした。
次いで、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクについて上述したようにして硬化時間を測定した。その上で、加熱前の硬化時間を1としたときの加熱後の硬化時間の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
<硬化時間の評価基準>
◎ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の硬化時間の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の硬化時間の相対値が2以上である
××:パック中でインクが硬化し、評価できない
一方、別の各インクパックを60℃の温度で10日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
また、さらに別の各インクパックを60℃の温度で60日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
以上、2.1、2.2の評価結果を表1に示す。
Figure 0006008153
表1に示すように、各実施例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、長期の加熱処理を施したとしても、著しい粘度上昇を伴うことがなかった。また、加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、いずれのインクパックについても安定的に吐出可能であることが認められた。
また、参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクには、金属粒子が含まれていないため、保存中の粘度上昇は生じなかった。そして、各実施例で用いた光硬化型インク用容器によれば、金属粒子を含む光硬化型インクを保存した場合でも、参考例と同程度の保存安定性を実現していることが認められた。
一方、比較例で得られたインクパックでは、加熱によりインク組成物に著しい粘度上昇が認められた。また、5日加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、ノズルのつまりが発生した。さらに、10日後にはパック中で完全に硬化してしまった。
また、各実施例および参考例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、いずれも10日間保存した後でも、保存前とほとんど変わらない優れた硬化性を示した。
一方、比較例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、5日間保存したところ、硬化性の低下が認められた。
1…インクパック 10…光硬化型インク用容器 100…光硬化型インク 2…外装 20…内部空間 21…底面 3…開口部 31…連通孔 32…案内部 33…キャップ。

Claims (4)

  1. 内部に、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容可能な容器であって、
    内部と外部とを隔てる外装が酸素透過性を有すると共に、前記外装のJIS Z 7129に準拠した方法により測定された水蒸気透過度は、50[g/m2・day]以下であり、
    前記外装のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m 2 ・day・atm]以上30000[cc/m 2 ・day・atm]以下であることを特徴とする光硬化型インク用容器。
  2. 前記外装は、樹脂製フィルムを含み、遮光性を有するものである請求項1に記載の光硬化型インク用容器。
  3. 前記樹脂製フィルムは、ポリオレフィン系樹脂製フィルムである請求項に記載の光硬化型インク用容器。
  4. 当該光硬化型インク用容器は、内部と外部とを連通可能な開口部を備えている請求項1ないしのいずれか1項に記載の光硬化型インク用容器。
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