JP6007505B2 - 人工皮革とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高強力で形態安定性に優れるだけでなく、表面の凹凸が少ない人工皮革およびその製造方法に関するものである。
従来から人工皮革は、天然皮革に類似した柔軟性と機械的性能を得るために、一般的に極細繊維からなる不織布に高分子弾性体を付与して作られている。さらに、人工皮革がカーシートや椅子などの表皮材に使用される場合には、長期の繰り返し使用により表皮材に歪みが生じてしまうことがあるため、不織布内部もしくは片側に補強布として織物を積層一体化させることにより、高強力で低伸度かつ柔軟性に富んだ人工皮革を得る方法が用いられている。
それらの人工皮革の一般的な製造方法は、次のとおりである。極細繊維あるいは極細化可能な複合繊維をウェブ化した後に、これに織物を積層し、ニードルパンチあるいは高速流体によるウォータージェットパンチにより繊維を絡合し、複合繊維中の一成分を除去し極細繊維化した後、得られた繊維シート基体にポリウレタン等の弾性重合体を付与して、柔軟な人工皮革を得る方法が知られている。
特にニードルパンチ法は、繊維シート基体内部に対する絡合効果が低いウォータージェットパンチ法に比べて、不織布と織物を強固に絡合させることができる一方、ニードル針のバーブに織物が引っ掛かり損傷を受け、物理特性向上効果の低下や不織布層を形成する極細繊維と繊度が異なる織物を構成する単糸がニードルパンチにより人工皮革表層に突出して、人工皮革の触感が粗くて固くなるなど、物理特性や品位について改善すべき問題があった。
このような背景において、人工皮革の立毛繊維密度を向上させる方法として、織物の強い収縮力により表面側の不織布の繊維密度を高め、その後、不織布から織物を剥離することにより、緻密で高級感のある品位と良好なタッチを得ることができる方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この方法は、織物を剥離させて伸縮性を得ることを前提としているため、高強力で形態安定性に優れた人工皮革は得られない。また、織物を剥離させないことを前提とした場合においても、不織布表面の凹凸を無くする方法については記載がなく、不織布と織物の収縮率の違いから、不織布表面にシボ状の凹凸が形成された表面品位となる可能性もある。
また、人工皮革特有の高級な立毛表面の手触り感およびライティングエフェクトに寄与する立毛繊維密度ムラを押さえる方法として、極細繊維束を捕捉する弾性重合体付与後の染色等の仕上げ工程で、人工皮革の収縮率を抑えることが提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、条件によっては染色工程で高収縮処理を施した人工皮革であっても立毛密度ムラを抑制できることが、後の検討で判明している。
これらのことから、人工皮革の表面に凹凸が少なく、均一性に優れた品位を達成するために必要な手段については見出されていないのが現状である。
特開2003−013368号公報 特願2010−015514号
本発明の目的は、不織布と織物が積層一体化した繊維シート基体にバインダーとして高分子弾性体が付与された人工皮革において、従来の高強力で形態安定性に優れるだけでなく、表面凹凸が少なく均一性に優れた人工皮革を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、不織布と織物を積層一体させる人工皮革の製造過程において、不織布層と織物層の厚みの比率が人工皮革製品の表面外観に影響を与えていることを見出し、表面凹凸が少なく均一性に優れた人工皮革を達成する手段を見出すことができた。
本発明の人工皮革は、不織布と織物が積層一体化した繊維シート状物からなる人工皮革において、不織布層の厚みをt(mm)、織物を構成する糸状の経糸長径をD1(mm)、緯糸長径をD2(mm)とし、表面粗さをRa(μm)としたとき、下記の式(1)と(2)を満たすことを特徴とする人工皮革である。
0.50≦t/(t+D1+D2)≦0.80 (1)
5≦Ra≦30 (2)
具体的に、上記の式において、t(mm)は後述する図1に示される不織布層の厚みであり、D1(mm)は図1に示される経糸長径であり、D2(mm)は図1に示される緯糸長径に相当する。
0.40≦t/(t+D1+D2)≦0.80 (1)
5≦Ra≦30 (2)
具体的に、上記の式において、t(mm)は後述する図1に示される不織布層の厚みであり、D1(mm)は図1に示される経糸長径であり、D2(mm)は図1に示される緯糸長径に相当する。
人工皮革を構成する不織布層は、繊維が3次元に絡合した構造体であるため、熱処理時の収縮応力は3次元に分散される一方で、織物層はそれらを構成する糸条がほぼ縦方向と横方向の2次元に配列しているため、縦横方向の収縮応力は不織布層より高くなる傾向にある。このことから、後述する図2に示すとおり、織物層に近い不織布層部分では収縮応力が高くなり、織物層から遠くなるほど収縮応力は低くなると言える。よって、これも後述する図3に示すとおり、不織布層が厚いほど表面側の収縮応力は低くなり、表層部は織物の収縮に追随しにくくルーズな繊維構造になるため、染色等の後処理による揉み効果でルーズな表層部は乱れ、表層部に凹凸が形成され易い傾向にあることを見出した。本発明者らはこの検討結果を基に、製品表面の凹凸を抑制し、表面粗さが少ない均一性に優れた製品を得る方法を見出すことができた。
すなわち、不織布と織物を積層一体化させて得られる繊維シートからなる人工皮革において、前記の式(1)と(2)を満たすことにより、製品表面の凹凸、すなわち表面粗さを好適には5μm以上30μm以下の範囲内で均一性に優れるだけでなく、高強力で形態安定性に優れた製品を得ることができる。さらに、本発明によれば、表面の凹凸が少なくなることで、製品の色合いに均一感を付与することができる。
図1は、本発明の不織布と織物を積層一体化させた人工皮革の不織布層の厚みと織物層の厚みを説明するための概略断面図である。 図2は、図1において熱処理時の収縮応力の大きさの関係を説明するための概略断面図である。 図3は、図2において不織布層の厚みが厚く、請求項1の式(1)を満たさなかった場合の表面状態を説明するための概略断面図である。
本発明者らは、極細繊維または極細化可能な繊維からなる不織布の内部や片側、もしくは両面に織物を絡合一体化させて得られる繊維シートからなる人工皮革において、凹凸が少なく均一性に優れた表面感を得ながら、高強力、形態安定および柔軟化を合わせて付与すべく鋭意検討し解決策を得、本発明に到達した。以下に、その詳細について説明する。
まず、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の不織布と織物を積層一体化させた人工皮革の概略断面図であり、図1において、人工皮革は、不織布層1と織物層2が積層一体化されて構成されており、不織布層1の表層部に表面立毛層3が形成されている。前記の織物層2は、経糸4と緯糸5で構成されており、それぞれの長径がD1とD2で表される。また、図1において、人工皮革の厚みは、不織布層の厚みtと織物層の厚みD1+D2の合計で示されている。
不織布層の厚みtは、織物を構成する糸条の上端から表面立毛層を除外した部分までの高さを15点測定(t1,t2,・・・,t15)し、その平均値で求められる。すなわち、次式[t=(t1+t2+・・・+t15)/15]で求められる。
本発明では、図1に示す人工皮革の製品断面におけるt/(t+D1+D2)の値が0.50以上0.80以下の範囲内の関係を満たすことを骨子とし、これにより表面凹凸が少なく均一性に優れた人工皮革を得ることができる。
不織布層は繊維が3次元に絡合した構造体であるため、熱処理時の収縮応力は3次元に分散される一方で、織物層は構成する糸条がほぼ縦方向と横方向の2次元に配列しているため、縦横方向の収縮応力は不織布層より高くなる傾向にある。このことから、図2に示すとおり、不織布層の厚みtについてみると、織物層2に近い不織布層部分では収縮応力が高くなり、織物層2から遠くなるほど収縮応力は低くなると言える。
図3は、不織布層の厚みtが厚く、請求項1の式(1)を満たさなかった場合、すなわち、t/(t+D1+D2)>0.80の表面状態を説明するための概略断面図である。
図3に示すとおり、不織布層1が厚いほど表面側の収縮応力は低くなり、表層部は織物層2の収縮に追随しにくくルーズな構造になるため、熱処理により、図3(A)のように、不織布層1の表層部が盛り上がり、続く染色等の後処理による揉み効果でルーズな表層部はより乱れ、図3(B)のように、不織布層1の表層部に凹凸が形成され易い傾向にあると言える。このように、t/(t+D1+D2)の値が0.80より大きくなると、表層部の凹凸が顕著となり、外観品位を損ねてしまう。
一方で、t/(t+D1+D2)の値が0.50未満の場合は、織物層2が製品表面に露出し易く、品位を損ねてしまうことになり、高級感のある表面品位を得られなくなる。
t/(t+D1+D2)の範囲は0.50以上0.80以下であり、より好ましくは0.52以上0.78以下である。D1とD2の好ましい範囲は、後述するニードルバーブとの関係および織物の目付と剛性の関係から0.06mm以上0.16mm以下であり、より好ましくは0.09mm以上0.15mmである。tの好ましい範囲はD1とD2の範囲を考慮した場合、0.12mm以上1.28mm以下となるが、tの値が小さい場合、生地自体の厚みが薄くなり、加工中に破れが発生し易くなり、tの値が大きいと人工皮革の風合いが硬くなるため、より好ましくは0.17mm以上1.20mm以下である。
また、人工皮革の製造過程の中で、不織布と織物を一体化させ、バインダーとして高分子弾性体を付与してなる人工皮革は、染色時におけるシートの面積保持率を70%以上99%以下となるように制御することが好ましいが、収縮作用による表面凹凸をさらに抑制するために、より好ましくは75%以上である。
染色時におけるシートの面積収縮率が70%未満の場合、収縮過多により表面に凹凸斑が発生し易くなるため、使用する織物としては、湿熱120℃条件下におけるフリーの面積保持率が50%以上99%以下の範囲内に設計しておくことが好ましく、より好ましくは60%以上である。
さらに、織物を構成する糸条の収縮応力が高すぎる場合、同様に収縮が高くなり、表面の凹凸斑が発生し易くなるため、織物を構成する糸条の収縮応力は乾熱120℃条件下で0.45cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.40cN/dtex以下である。織物を構成する糸条の収縮応力が低い場合においては、本発明で得られる効果を損なうものではないため、下限値は特に限定しない。
本発明によって得られる繊維シート状物を人工皮革用に用いる場合は、用いられる織物の目付を20〜200g/mにすることが望ましく、最も好適には目付が30〜150g/mの範囲の織物を用いることである。
織物の目付が20g/m未満になると織物としての形態が極めてルーズになり、織物を不織布と不織布の中層部にはさみ込んだとき、あるいは織物を不織布の表面に重ねる際にシワが発生し、均一に広げることが困難になる傾向がある。また、織物の目付が200g/mを超えると織物の組織が密になり、織物に対する不織布単繊維の貫通が不十分で不織布と織物との絡合が進まず不離一体化した構造物を作るのが概して困難になる傾向がある。
本発明において用いられる織物は、基本組織として平組織の織物が好ましく用いられる。織物組織としてツイルやサテンの織物を用いても良いが、組織に異方性があるため斜め方向の外力に対して挙動が異なること、また取り扱い上織物密度が低いと目ずれが発生しやすく、したがって平組織の織物が好ましい。
本発明で用いられる織物を構成する繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維およびアラミド系繊維等の合成繊維などが好ましく使用される。これらの繊維種は、染色堅牢度の点から、不織布を構成する繊維と同様の素材を用いることが好ましい。もちろん、これに限定されず、木綿、羊毛および絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、さらにアセテートなどの半合成繊維など、編織可能な繊維ならどのような繊維も使用することができる。また、高強力ポリビニルアルコール系合成繊維(高強力ビニロン繊維)や全芳香族性ポリアミド繊維(アラミド繊維)などに代表される高強力繊維で構成しても何ら問題を生じることはない。
織物に使用される繊維糸条の種類としては、フィラメントヤーン、紡績糸、革新紡績糸およびフィラメントヤーンと紡績糸の混合複合糸などが挙げられる。紡績糸はその構造上表面に毛羽が多数存在し不織布と織物を絡合する際、その毛羽が脱落し表面に露出すると欠点となるため、フィラメントヤーンを用いることが好ましい。フィラメントヤーンには、大別すると単繊維1本で構成されたモノフィラメントと複数本で構成されたマルチフィラメントがあるが、本発明で用いられる織物では、マルチフィラメントを用いることが好ましい。モノフィラメントでは、繊維の剛性が高くなりすぎるため人工皮革の風合いを損ねることがある。
本発明で用いられる織物を構成するマルチフィラメントヤーンの単繊維繊度は不織布を構成する繊維の繊度に近いほど染め差が少なくなり、人工皮革の表面に露出した場合においても外観を損ないにくくなるため、好ましくは0.0001dtex以上3.0dtex以下であり、より好ましくは1.5dtex以下である。
上記のフィラメントヤーンについての単繊維繊度は、フィラメントヤーン以外の紡績糸や革新紡績糸にも適用される。
また、マルチフィラメントヤーンの総繊度は、30dtex〜170dtexであることが好ましい。総繊度が30dtex未満のマルチフィラメントヤーンを用いた場合、織物を構成する繊維糸条がニードルのバーブに引っ掛かり易くなる。一般にバーブのスロートデプスの値の下限は10μmまでが実際的であるが、繊維の絡合および織物との一体化を進める上では、ニードルのスロートデプスの範囲は好ましくは30μm〜100μmであり、より好適には50μm〜80μmの範囲のものが使用される。そのため、マルチフィラメントヤーンの総繊度は30dtex以上、すなわち糸条長径D1またはD2の値で60μm以上であることが好ましい。
また、マルチフィラメントヤーンの総繊度が170dtex、すなわち、糸条長径D1またはD2の値で160μmを超えると織物の目付が大きくなるため、ひいては人工皮革の目付が大きくなる。それだけでなく、織物の剛性が高くなるため、結果として人工皮革として満足するほどの十分な柔軟性を得ることができないことがある。
織物を構成する繊維糸条の総繊度は、剛性および目付等の理由から、より好ましくは50dtex〜150dtex、すなわち、糸条長径D1またはD2の値で85μm〜150μm、D1+D2の範囲で170μm〜300μmである。
マルチフィラメントヤーンの形態は、仮撚加工糸と捲縮を持たない生糸に大別されるが、本発明ではどちらを用いても良い。ただし、仮撚加工糸を用いると捲縮により糸条に膨らみが発生するため、ニードルにより損傷を受けやすくなる傾向がある。従って、本発明では生糸を用いることが好ましい。
織物を構成する糸条の撚数は、1000T/m以上4000T/m以下が好ましく、より好ましくは1500T/m以上3500T/m以下である。撚数が1000T/mより小さいと、ニードルパンチによる極細繊維の単繊維切れが多くなり、製品の物理特性の低下や単繊維の製品表面への露出が多くなる。一方で、撚数が4000T/mより大きいと、織物の剛性が高くなり、人工皮革の風合いが硬化する。
ニードルパンチ工程で織物を不織布に積層する場合、織物がニードルから受ける損傷を最小限に抑制する方法として、織物を構成する繊維糸条の径とニードルパンチに使用されるニードルのスロートデプスの関係を明示し、強度低下を抑制する製造方法が提案されている(特公平7−13344号公報。)。織物の損傷を抑制するために、ニードルのバーブサイズと織物を構成する繊維糸条の径は、公知のとおり下記式を満たすことが好ましい。
D≧2J
D:織物を構成する繊維糸条の径
J:ニードルバーブのスロートデプス
但し、スロートデプスの値が小さすぎると、バーブが不織布を構成する繊維を把持する効率が低下し、不織布間および不織布と織物間の絡合を十分高めることが困難になるため、不織布を構成する繊維径を考慮して適正なバーブサイズを選定する必要がある。
このような理由から、バーブのスロートデプスは、前述の関係式を満足していることが好ましいが、ニードルを継続使用した場合、摩耗により形状変化が発生して関係式を満たさなくなることがある。それを避けるようにするため、ニードルに耐摩耗性を有する皮膜を付与することが好ましい。具体的に、好ましくはニードル先端部から少なくとも最も遠いバーブまでの部分が耐摩耗性の被膜で被覆されたパンチング用ニードルを用いることができる。ニードル先端部を被覆する被膜としては、具体的には、硬質クロムやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の耐摩耗性で低摩擦特性に優れた材質からなる被膜が好ましく、特に一般的で比較的低コストである硬質クロム被膜が好ましく用いられる。
また、ニードルパンチを施すことで不織布はシート進行方向と直角方向(幅方向)に収縮し、積層させた織物もこれに追随して収縮するため、幅方向と平行にある織物の繊維糸条(織物の緯糸に該当)は弛むことになる。弛んだ繊維糸条は、ニードルのバーブによって持ち込まれ易く、損傷も受けやすい。一方で、シートの進行方向に対して平行な織物の繊維糸条(織物の経糸に該当)は、工程張力によって常に緊張状態にあるため、ニードルのバーブによって不織布の内層部に持ち込まれ難いため、バーブの向きはシートの進行方法に対して直角角度を0°とした場合、|0°〜30°|に方向規制することが好ましい。
次に、本発明で使用される不織布について説明する。
本発明で用いられる不織布としては、天然繊維、再生繊維および合成繊維等の短繊維を、カード、クロスラッパーおよびランダムウェバー等を通して積層されたもの、スパンボンドやメルトブローン等のように長繊維が積層されたものが挙げられる。さらに、これらの積層された繊維層が、空気流、液体流およびニードルパンチ等により予め予備的な絡合が付与されたものであってもよい。
また、本発明の繊維シート状物の製造方法によって得られた繊維シート状物を人工皮革の製造に利用する場合、不織布を構成する繊維は、極細繊維または極細化可能な繊維であることが望ましい。
極細繊維または極細化可能な繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸およびポリエステルエラストマ等のポリエステル系重合体、ナイロン6、ナイロン66およびポリアミドエラストマ等のポリアミド系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリオレフィン系重合体およびアクリロニトリル系重合体などの繊維形成能を有する重合体からなる繊維が好適である。これらの中でも、加工した製品の風合および実用性能の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6およびナイロン66からなる繊維が特に好ましく用いられる。
また、海島型繊維のように複合繊維を構成する一部の重合体を除去または相互に剥離することによって極細繊維化されるものについては、被除去成分(海成分)として、島成分を構成するポリマーよりも溶解性や分解性の高い化学的性質を有するという点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分とした共重合ポリエステル、ポリ乳酸および共重合ポリアミド等の1種または2種を用いることができる。
海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび共重合ポリスチレンの場合は、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤が用いられ、また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができ、熱水可溶性のポリエステルやポリビニルアルコールの場合は熱水が用いられ、溶剤や溶液中に海島型複合繊維を浸漬し、窄液を行うことによって、海成分を除去することができる。特に、ニードルパンチしたときの繊維の高絡合化による表面繊維の高密度化の観点から、海成分としてポリスチレン、共重合ポリスチレン、ポリエステル、共重合ポリエステルおよびポリ乳酸が好ましく使用される。
本発明で用いられる不織布を構成する極細繊維の単繊維繊度は、皮革様物としての性能、すなわち柔軟性、触感、外観品位および強力特性などを高めるために、0.0001dtex以上1.0dtex以下であることが好ましいが、発色性と触感をさらに向上させるためには0.01dtex以上0.5dtex以下が特に好ましい。
このような極細繊維は、次のような極細繊維発生型繊維から得られる。すなわち、極細繊維発生型繊維としては、例えば、2種以上の重合体からなる高分子配列体繊維(特公昭44−18369号公報)や、互いに相溶性の小さい2種の重合体が隣接してなる易分割型複合繊維(特公昭53−37456号公報)などが挙げられる。しかしながら、本発明はこれらにとらわれるものではなく、その技術的思想を基に発展的形態の繊維が適用可能である。
ニードルパンチで得られる不織布の好ましい厚みは、後工程での圧縮やスライス(スプリット)あるいはバフィング等の条件によって変わってくるため、特に規定しないが、ニードルパンチの性質上、0.5mm以上10mm以下が一般的であるが、前述の式(1)と(2)を満たすように不織布の厚みを予め調整しておくことが重要である。不織布の密度は、人工皮革の優美な外観と良好な触感を得るためには、0.100g/cm以上であることが好ましく、ニードルパンチでの針折れを防ぐために0.400g/cm以下であることが好ましい。より好適には0.150g/cm以上0.350g/cm以下である。
次に、本発明における不織布と織物の関係について説明する。
不織布と織物の絡み合わせには、不織布の片面もしくは両面に織物を積層するか、あるいは複数枚の不織布の間に織物を挟んで、ニードルパンチによって繊維同士を絡ませることができる。
不織布と織物を積層一体化させる方法としては、不織布の片面側に織物を均一に広げて積層し、不織布側からニードルパンチを行い、不織布を構成する繊維を織物側に突き出すことで絡合一体化させ、その後は目標とするシート密度が得られるまで織物側と不織布側から交互にニードルパンチを行うのが一般的である。不織布の両面に織物を積層する場合は、前記の方法で片面側に織物を積層後、不織布側に織物を積層し、反対側の面(最初に積層した織物側の面)からニードルパンチを行い、一体化させる方法が一般的である。複数枚の不織布の間に織物を挟む方法についても織物と不織布を前記の方法で一体化させた後に不織布を織物側の面に積層させてニードルパンチを行い、一体化させる方法が一般的である。
前記の積層構造の違いによる機能の差は特にないが、不織布の両面に織物を積層させたシートは、後工程でスライス(スプリット)することで2枚のシートが得られる点からコスト面で有利である。
このとき、不織布が前述したような何らかの手段で予備的な絡合が与えられていることが、不織布と織物をニードルパンチで不離一体化させる際のシワ発生をより防止するために望ましい態様である。その場合、ニードルパンチにより、あらかじめ予備的絡合を与える方法を採用する場合には、そのパンチ密度は20本/cm以上で行なうことが効果的であり、好適には100本/cm以上のパンチ密度で予備絡合を与えることがよく、より好適には300本/cm〜1300本/cmのパンチ密度で予備絡合を与えることである。
予備絡合が、前述の20本/cmより少ないパンチ密度では、不織布の幅が、織物との絡合時およびそれ以降のニードルパンチにより、狭くなる余地を残しているため、幅の変化に伴い織物にシワが生じ平滑な繊維シート状物を得ることができなくなるからである。また、予備絡合のパンチ密度が1300本/cmを超えると、不織布自身の絡合が進みすぎて、織物を構成する繊維との絡合を十分に形成するだけの移動余地が少なくなるので、不織布と織物が強固に絡合した不離一体構造を実現するには不利となるからである。
織物と不織布とを絡合一体化させるに際しては、パンチ密度の範囲を300本/cm〜6000本/cmとすることが好ましく、パンチ密度の範囲はより好ましくは1000本/cm〜3000本/cmである。
次に、得られた繊維シート状物中の極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的もしくは化学的処理により極細繊維あるいは極細繊維束に変性して人工皮革用基体を得る。
このとき、極細繊維発生型繊維の変性処理に前後して、高分子弾性体液を付与するが、この順序についてはどちらも可能である。高分子弾性体液付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と高分子弾性体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に高分子弾性体液を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが繊維シート状物の柔軟性を得る上で好ましい態様である。
本発明の人工皮革に用いられる高分子弾性体として、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマーおよびスチレン・ブタジエンエラストマー等を用いることができるが、柔軟性とクッション性の観点からポリウレタンが好ましく用いられる。
また、高分子弾性体には、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系等のエラストマー樹脂、アクリル樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル樹脂等が含まれていても良い。また、高分子弾性体は、有機溶剤中に溶解していても、水中に分散していてもどちらでもよい。
高分子弾性体の好適な使用割合については、繊維シート基体質量に対する高分子弾性体重量が10質量%以上200質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上180質量%以下である。高分子弾性体質量が10質量%より少ないと人工皮革からの繊維の脱落が大きく、高分子弾性体質量が200質量%より多いと人工皮革の風合いが硬くなる傾向を示す。
また、本発明で用いられる高分子弾性体には、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料酸化防止剤、酸化防止剤、耐光剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤および防臭剤等の添加剤が配合されていてもよい。
上記で得られた人工皮革用基材は、スライスやバフィング等により所望の厚みに調整可能であるが、前述のとおり、表面粗さの少ない平滑な表面を得るためには、前述の式(1)と(2)を満たすよう不織布層の厚みを調整することが重要であるが、不織布の製造段階と織物を選定する時点で予め調整しておくことが好ましい。バフィング等によって表面の極細繊維束を起毛した上記の基材を染色することによりスエード調人工皮革となる。
スエード調人工皮革で表面粗さRaを低減させるためには不織布を構成する極細繊維径を小さくし、不織布の密度を高くした上で、前述の式(1)と(2)を満たすように設計する必要があるが、実質的にRaを5μm以下にすることは困難である。一方で、Raが30μmより大きくなると、表面凹凸が見えて均一な表面感が得られなくなることがあるため、表面粗さRaは30μm以下であることが好ましい。より好ましい表面粗さRaは、27μm以下である。
染色は、分散染料、カチオン染料やその他反応性染料を用い、染色される人工皮革基材シートの風合いを柔軟にするためにも高温高圧染色機により行うことが好ましい。染色温度は80℃〜150℃が好ましく、110℃以上がより好ましい態様である。必要に応じて、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤および耐光剤等の仕上げ処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも染色と同浴でも良い。
本発明の人工皮革は、高強力で形態安定性に優れるだけでなく、表面凹凸が少なく均一性に優れており、従来のスエード調人工皮革の用途である家具、椅子および車両内装材から衣料用途、工業材料まで幅広く好適に用いることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[測定方法]
(1)表面粗さ(Ra)
サーフコーダ(SE−40C Kosaka Laboratory製)の試料台に50mm×50mmの人工皮革サンプルを触針進行方法とサンプル表面の毛羽が倒れている方向が同一になるように固定する。測定条件は、カットオフ2.5mm、評価長さ12.5mm、送り速度0.5m/min、タテ倍率200倍、ヨコ倍率2倍とし、各水準でn=10の測定を実施して平均値(μm)を求め、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
(2)織物層の厚み(D1+D2)
織物組織をサンプリングして平らな台の上に固定し、走査型電子顕微鏡(SEMキーエンス社製VE−7800型)により倍率100倍で写真撮影を行った。経糸と緯糸について、それぞれ繊維糸条の最も太く見える部分と最も細く見える部分2点と他の任意の8点計10点を実測し、その平均値(mm)からD1とD2を算出した。織物層の厚みは、理論的にD1+D2とする。
(3)不織布層の厚み(t)
人工皮革サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEMキーエンス社製VE−7800型)で50倍の倍率で観察し、図1に示す通り、観察方向と平行な上側に位置する糸条の上端から表面立毛層を除外した部分までの高さを15点測定(t1,t2,・・・,t15)し、平均値(mm)の小数点以下第三位を四捨五入して不織布層の厚みtを算出した。
(4)人工皮革の染色時における面積保持率
染色工程前後の人工皮革基材シートの面積を測定し、染色面積保持率(%)を算出した。なお、測定サンプルシートのサイズは30cm四方以上とし、タテ方向およびヨコ方向に20cmのマーキングを行って、染色工程前後の長さ変化から面積を求めたものである。
(5)織物を構成する糸条の収縮応力
カネボウエンジニアリング社製熱応力測定器(タイプKE−2S)を用い、紐状にした試料を0.088cN/dtexの初荷重をかけた後、2.5℃/secの速度で昇温し、発生する応力をチャート上に記録し、乾熱120℃の温度における収縮応力値を読み取って繊度で除し、cN/dtexで表した。5点の平均値(cN/dtex)の小数点以下第三位を四捨五入して収縮応力を算出した。
(6)目付(g/m
織物、不織布または繊維基体シートからランダムに縦方向50cm×横方向50cmの試料を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
[実施例1]
<原綿〜繊維シート基体>
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分としてポリスチレンからなる質量成分比80/20、島数16本、複合繊維の単繊維繊度3.8dtex、繊維長51mm、捲縮数14山/インチの海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパーの工程を経て不織布を作成した。次いで、プレパンチ300本/cmのニードルパンチを行い、目付質量500g/mの不織布(フェルト)を作成した。得られた不織布の下面に、84dtex(長径D1=D2=0.125mm)−72フィラメント(織物を構成する糸条原糸の収縮応力が、乾熱120℃の条件下で0.37cN/dtex)、撚数2500T/m、のポリエチレンテレフタレート生糸使いの平織物(織密度:95×76本/cm)を一定の張力をかけながら均一に広げて積層して繊維シートとし、スロートデプスJ=60μm、ニードルブレード部の断面が正三角形のニードルをバーブの向きを繊維シート進行方向に対して直角角度0°方向に植えたニードルボードで、まず繊維シートの不織布側から300本/cmのニードルパンチを行い、その後、織物側から300本/cmのニードルパンチを行うと同時に不織布面側にも前記と同設計の平織物を一定の張力をかけながら均一に広げて積層させた。その後、上面側と下面側から交互に計2700本/cmのニードルパンチを行い、目付質量が700g/m、見掛密度が0.220g/cmの繊維シート基体を得た。
<人工皮革>
上記繊維シート基体を96℃の温度の熱水で収縮させた後、5%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、繊維シート基体の質量に対するPVA質量が4質量%のシート基体を得た。このシート基体をトリクロロエチレン中に浸漬して海成分を溶解除去し、極細繊維と織物が絡合してなる脱海シートを得た。このようにして得られた極細繊維からなる不織布と織物とからなる脱海シートを、固形分濃度12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いでDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、単繊維繊度0.21dtexの島成分からなる前記極細繊維と前記織物の合計重量に対するポリウレタン質量が27質量%の人工皮革基材シートを得た。
このようにして得られた人工皮革基材シートを厚さ方向に垂直に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで研削し、立毛面を形成させた。このようにして得られた人工皮革基材シートを液流染色機に投入し、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に乾燥機で乾燥を行い、染色面積保持率85%、不織布層厚みt=0.80mmの人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率85%、不織布層厚みt=0.80mm、t/(t+D1+D2)の値は0.76であり、表面粗さは平均21μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例2]
上記の実施例1において、織物を116dtex(長径D1=D2=0.130mm)−288フィラメント(織物を構成する糸条原糸の収縮応力が、乾熱120℃条件下で0.30cN/dtex)、撚数2000T/m、のポリエチレンテレフタレート生糸使いの平織物(織密度:80×70本/cm)に変更したこと以外は、実施例1と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率96%、不織布層厚みt=0.70mm、t/(t+D1+D2)=0.73であり、表面粗さは平均20μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例3]
上記の実施例1において、島/海質量成分比を55/45、脱海後の単繊維繊度を0.04dtex、不織布(フェルト)の目付重量を420g/m、織物を構成する緯糸設計を56dtex(長径D2=0.90mm)−12フィラメント(織物を構成する糸条の収縮応力が、乾熱120℃条件下で0.40cN/dtex)、撚数1500T/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付620g/mに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率80%、不織布層厚みt=0.57mm、t/(t+D1+D2)=0.73であり、表面粗さは平均24μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例4]
上記の実施例3において、不織布(フェルト)の目付質量を175g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付325g/mに変更したこと以外は、実施例3と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率76%、不織布層厚みt=0.24mm、t/(t+D1+D2)=0.53であり、表面粗さは平均25μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例5]
上記の実施例2において、島/海質量成分比を90/10、脱海後の単繊維繊度を0.33dtex、不織布(フェルト)の目付質量を360g/mニードルパンチ後の繊維シート目付380g/mに変更したこと以外は、実施例2と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率96%、不織布層厚みt=0.56mm、t/(t+D1+D2)=0.68であり、表面粗さは平均24μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例6]
上記の実施例2において、島/海質量成分比を50/50、脱海後の単繊維繊度を0.005dtex、ニードルパンチを計6000本/cmとし、見掛密度を0.300g/cmに変更したこと以外は、実施例2と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率97%、不織布層厚みt=0.78mm、t/(t+D1+D2)=0.75であり、表面粗さは平均7μmであった。結果を表1と表2に示す。
参考例1
上記の実施例2において、不織布(フェルト)の目付質量を410g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付610g/mに変更したこと以外は、実施例2と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率76%、不織布層厚みt=0.23mm、t/(t+D1+D2)=0.47であり、表面粗さは平均26μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例
上記の実施例1において、不織布(フェルト)の目付質量を640g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付840g/m、織物を構成する糸条原糸の収縮応力を乾熱120℃条件下で0.50cN/dtexに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率85%、不織布層厚みt=1.00mm、t/(t+D1+D2)=0.80であり、表面粗さは平均28μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例
上記の実施例1において、不織布(フェルト)の目付質量を640g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付840g/mに変更し、染色面積保持率が68%となるよう加工条件を調整し、人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率68%、不織布層厚みt=1.00mm、t/(t+D1+D2)=0.80であり、表面粗さは平均28μmであった。結果を表1と表2に示す。
参考例2
上記の実施例1において、不織布(フェルト)の目付質量を300g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付500g/mに変更したこと以外は、実施例1と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率85%、不織布層厚みt=0.18mm、t/(t+D1+D2)=0.42であり、表面粗さは平均25μmであった。結果を表1と表2に示す。
[実施例
上記の実施例1において、不織布(フェルト)の目付質量を640g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付840g/m、織物を構成する糸条原糸の収縮応力を乾熱120℃条件下で0.50cN/dtexとし、染色面積保持率が68%となるよう加工条件を調整し、人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率85%、不織布層厚みt=1.00mm、t/(t+D1+D2)=0.80であり、表面粗さは平均29μmであった。結果を表1と表2に示す。
[比較例1]
上記の実施例3において、不織布(フェルト)の目付質量を720g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付1050g/mに変更したこと以外は、実施例3と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率86%、不織布層厚みt=1.15mm、t/(t+D1+D2)=0.84であり、表面粗さは平均34μmであった。また、人工皮革の表面品位はシボ状の凹凸が散見された。結果を表1と表2に示す。
[比較例2]
上記の実施例3において、不織布(フェルト)の目付質量を740g/m、ニードルパンチ後の繊維シート目付1030g/mに変更したこと以外は、実施例3と同一条件で加工して人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率80%、不織布層厚みt=1.00mm、t/(t+D1+D2)=0.82であり、表面粗さは平均35μmであった。また、人工皮革の表面品位はシボ状の凹凸が散見された。結果を表1と表2に示す。
[比較例3]
上記の実施例2において、不織布層厚みがt=0.16mmとなるように加工条件を調整し、人工皮革を得た。このようにして得られた人工皮革は、染色面積保持率96%、不織布層厚みt=0.16mm、t/(t+D1+D2)=0.38であり、表面粗さは平均26μmであったが、人工皮革の表面には織物の露出が多く見られた。また、サンドペーパーでのバフィング加工時にシート破れが多発し、安定的な加工が困難であった。結果を表1と表2に示す。
[比較例4]
上記の実施例1において、織物を構成する糸条原糸の収縮応力を、乾熱120℃条件下で0.50cN/dtexとし、染色面積保持率を65%に調整して得た人工皮革は、染色面積保持率65%、不織布層厚みt=0.80mm、t/(t+D1+D2)=0.76であり、表面粗さは平均32μmであり、シボ状の凹凸が散見された。結果を表1と表2に示す。
1 不織布層
2 織物層
3 表面立毛層
4 経糸(長径D1)
5 緯糸(長径D2)
t 不織布層の厚み
D1 経糸長径
D2 緯糸長径
D1+D2 織物層の厚み

Claims (7)

  1. 不織布と織物が積層一体化した繊維シート状物からなる人工皮革において、不織布層の厚みをt(mm)、織物を構成する糸状の経糸長径をD1(mm)、緯糸長径をD2(mm)とし、表面粗さをRa(μm)としたとき、下記の式(1)と(2)を満たすことを特徴とする人工皮革。
    0.50≦t/(t+D1+D2)≦0.80 (1)
    5≦Ra≦30 (2)
  2. 不織布を構成する繊維の単繊維繊度が、0.0001dtex以上1.0dtex以下であることを特徴とする請求項1記載の人工皮革。
  3. 織物を構成する糸条の単繊維繊度が0.0001dtex以上3.0dtex以下である請求項1または2記載の人工皮革。
  4. 織物を構成する糸条が撚数1000T/m以上4000T/m以下の撚糸である請求項1〜のいずれかに記載の人工皮革。
  5. 人工皮革の表面がスエード調であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の人工皮革。
  6. 不織布と織物が積層一体化してなる繊維シート基体にバインダーとして高分子弾性体を付与してなる人工皮革において、染色時における面積保持率を70%以上99%以下となるように制御して染色することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の人工皮革の製造方法。
  7. 織物を構成する糸条の収縮応力が、乾熱120℃条件下において0.45cN/dtex以下の糸条からなる織物を使用することを特徴とする請求項記載の人工皮革の製造方法。
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