JP6007156B2 - 温度調節機能を有する織編物及び該織編物を用いた衣服 - Google Patents
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本発明に係る織編物は、特に冬季屋外用のスポーツウェア素材として有用であり、本来は相反する機能を有する夏用の機能性物質と冬用の機能性物質とを組み合わせることにより、蓄熱保温性を備え、且つ運動中の発汗に反応して涼感効果を得る事ができ、さらに発汗停止後は、再び素早く蓄熱保温性が発動することにより、運動前、運動中及び運動後に亘り適度な衣服内温度を保つ事ができる。さらには、本発明に係る織編物においては、吸光効果を高めた繊維素材を適切な場所に配置したり、汗の拡散をコントロールする編織構造にすることにより、機能加工と機能性素材の相乗効果によって該各機能を最大限に発揮させ得るに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
また織編物において、前記アンチモンドープ酸化スズおよび/またはスズドープ酸化インジウムが、合計で1.5〜15g/m2付着し、前記糖アルコールが、4〜25g/m2付着していることが好ましい。
また衣服において、前記裏側最外層は、単糸繊度が0.3dtex以上、2.5dtex以下のポリエステルフィラメント糸からなり、前記表側最外層は、前記裏側最外層よりも、単糸繊度が0.1dtex以上、1.5dtex以下だけ大きいポリエステルフィラメント糸からなることが好ましい。
また衣服において、前記裏側最外層は、前記金属酸化物を1.0〜5.0質量%含有し、前記表側最外層は、前記金属酸化物を0〜0.8質量%含有することが好ましい。
冬季野外スポーツにおいて、通常競技者は通常、運動前にはスポーツウェアの上にベンチコートなどの上着を着ておき、運動直前、あるいは運動初期に上着を脱ぎ、運動後には再び上着を着ることにより温度調整をしている。
本発明に係る織編物を、冬用のスポーツウェア等の衣服に用いた場合には、運動前や運動後には暖かく、運動中には涼しく快適であるので、上記のような問題が大幅に軽減される。
実施形態1に係る織編物は、冬季屋外スポーツにおいて、冬用のスポーツウェアなどの衣服に用いる生地である。なお、冬季屋外スポーツとは気温が20℃を下回るような環境下での屋外スポーツを指す。また、安静時とは、比較的運動量が少なく汗をかいていない状態をいい、運動中とは、運動量が増加して体温が上昇し液相の汗をかく状態のことをいう。
実施形態1に係る織編物は、安静時に、冬季の野外にて太陽光の熱線を吸収することにより蓄熱して暖かさを得るために、吸光蓄熱性のある物質を布帛に付着させる。吸光蓄熱性のある物質として、実施形態1では、錫ドープ酸化インジウム(以下「ITO」と記す)又はアンチモンドープ酸化錫(以下「ATO」と記す)のような酸化錫系微粒子を用いる。
実施形態1に係る織編物は、仕上がりの状態でATOおよび/またはITOが1.5〜15g/m2付着していることが好ましく、5〜10g/m2付着していることがより好ましい。ATOおよび/またはITOが1.5g/m2未満であれば、吸光蓄熱効果により競技者に暖かさを感じさせる事が難しい。ATOおよび/またはITOが15g/m2を超えると、加工中において汚れの原因になったり、風合いが硬化したりチョークマークが生じ易くなるおそれがある。
平均一次粒子径が0.1μm以下の酸化錫系微粒子を、水または有機溶剤に分散させて加工液にし、該加工液を布帛に塗布することが好ましい。水に分散させる際には、該加工液に、酸化錫系微粒子を水に安定に分散させるために各種の界面活性剤を混ぜることが好ましい。
実施形態1に係る織編物は、運動により体が火照りだした適切な時期に冷却効果を持たせることが必要である。そのため、実施形態1では必須成分として負の水和熱を持つ糖アルコールを布帛に付着させ、該糖アルコールが汗に溶解する際の吸水吸熱効果を利用して、皮膚と衣服間の衣服内気候の温度を低下させ、運動中に競技者に対して涼感を与える。
実施形態1に係る織編物は、仕上がりの状態で、該糖アルコールが4〜25g/m2付着していることが好ましく、10〜20g/m2付着していることがより好ましい。該糖アルコールが4g/m2未満では発汗時に競技者に涼感を与える事が難しい。糖アルコールが25g/m2を超えると性能限界であり、これ以上濃度を高くしても効果はさほど変わらない。
該糖アルコールを布帛に付着させる方法には、例えば、吸尽加工、パディング加工、スプレー加工及び浸漬加工等があり、特にパディング加工及び吸尽加工は該糖アルコールを布帛全体に均一に付着させやすいので好ましい。
実施形態1に係る織編物には、繊維にハリ・コシ、ツヤ等を与えるために柔軟剤を使ったり、織編物の吸水性を向上させるために親水加工を行ってもよい。親水加工を行う場合には、例えばポリエステル系の親水加工剤が好ましく用いられる。この親水加工剤はパディング法や、吸尽法、スプレー法等の一般的な方法を用いて繊維に付与することができるが、耐久性の面から染色加工時に吸尽法にて付与することが好ましい。
上記した酸化錫系微粒子の付着方法を行った後に、上記した糖アルコールの付着方法を行うか、あるいは、上記した糖アルコールの付着方法を行った後に、上記した酸化錫系微粒子の付着方法を行うことにより、1枚の布帛に酸化錫系微粒子と糖アルコールとを両方付着させることができる。
ATO及びITOによる吸光蓄熱効果や、糖アルコールによる吸水吸熱効果に耐久性を持たせるために、バインダー樹脂を併用しても良い。該バインダー樹脂は、エマルジョン樹脂や、水又は有機溶剤可溶性のバインダー樹脂であることが好ましい。例えば該バインダー樹脂は、アクリル、エポキシ、ウレタン及びポリエステルのうちの少なくとも1つを主成分として用いることが好ましい。特に織編物の風合向上や変色防止の観点から、ウレタン系のバインダー樹脂がより好ましい。ウレタン系のバインダー樹脂は、エステル型、エーテル型、ポリカーボネート型等いずれの種類でも差し支えなく、イオン性についてもアニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれでも差し支えない。ここで、該ウレタン系のバインダー樹脂は、処方液に対する固形分量として、0.1〜10%溶液の濃度で、ATO、ITO及び糖アルコールと混合して処方することが好ましい。
図1は、レフランプによる照射試験の概要を示す外観図である。図1に示すように、本発明者らは、実際の環境に近い安定した環境において、実施形態1に係る織編物の吸光蓄熱性能と吸水吸熱性能とを評価する為の試験として以下の試験方法を考案した。
16cm角、フレーム幅1cm、高さ1cmのアクリル製の試料台A1、A2を2台用意し、これらを1cm程度離して試験台B上に設置する。
熱電対温度センサ(アンリツ製、ST−11K−010−TS2−ANP)D1、D2は、それぞれ試験台B上の試験品C1、比較品C2の中央付近に設置する。
太陽光を想定した光源として写真用500Wレフランプ(パナソニック製、PRF−500WB/D)Fを、試験品C1及び比較品C2からの距離が等しくなるように、試料台A1とA2との間の試験台Bから30cmの高さに設置する。試料が受ける照射量は4000ルクスであり、熱エネルギーに換算して、0.35kW/m2になるように調整した。
照射試験の結果を表1に示す。照射試験開始時の各試料の温度は全て20.9℃である。
図2は、表1に示す照射試験の結果の一部を示すグラフである。図2においては、後述する総合的な評価結果が実施例中で最も低かった実施例1と、総合的な評価結果が実施例中で最も高かった実施例3と、総合的な評価結果が比較例中で最も低かった比較例3と、総合的な評価結果が比較例中で最も高かった比較例1とを記載している。
なお、ここで使用した実施例1〜6、及び比較例1〜3の各試料は、それぞれ後述する「野外快適性フィールドテスト」において作製したものに対応している。
実施形態1に係る織編物を用いた衣服によれば、発汗停止後、15分以内に温度上昇が始まるので、競技者に汗冷えを感じにくくさせる事ができる。
実施形態1に係る織編物は単層であってもよいが、複数の層からなる多層構造であることがより好ましい。該織編物を単層とする場合には、1枚の布帛に酸化錫系微粒子と糖アルコールとを両方付着させる。該織編物を多層構造とする場合には、2層構造であれば一方の最外層である表層と他方の最外層である裏層との2層構成となり、3層以上の構造であれば該表層と該裏層と1層以上の中間層とを持つ構成となる。ここで該表層は、該織編物を用いて衣服を作製した際に外気側となる層であり、該裏層は、肌側となる層とする。
実施形態1に用いる織編物は、汗を吸収することにより競技者に涼感を与える事ができるため、スポーツシャツ等の肌に直接触れる衣服に用いる事が望ましい。快適なシャツ地とするためには、平米目付が80〜200g/m2が好ましく、120〜180g/m2がより好ましい。該目付を最適なものにするために、使用するマルチフィラメントの総繊度は、33〜174dtexが好ましく、55〜110dtexがより好ましい。
該織編物は、少なくとも裏層に、赤外線を反射又は吸収する金属化合物を練り込まれたマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。さらに、表層と裏層とは、それぞれが用いるマルチフィラメントに練り込まれる金属化合物の種類を異なるものとしたり、金属化合物の含有量に差をつけることが好ましい。また、表層及び裏層の両方に金属化合物を練りこんだマルチフィラメントを用いる場合には、裏層に配置するマルチフィラメントにおける金属化合物の含有率を、表層に配するマルチフィラメントにおける金属化合物の含有率よりも、高くすることが好ましい。
該織編物に使用するマルチフィラメントは、疎水性繊維を用いることが好ましい。該疎水性繊維には、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維及びポリオレフィン系繊維等を用いることができ、特にポリエステル系繊維の1つであるポリエステルフィラメント糸を用いることが好ましい。
<野外快適性フィールドテストの方法>
各実施例又は各比較例に示した生地をそれぞれ用いて、生地表層面を外側、裏面層が肌側になるように配置した長袖のTシャツを作製し、20〜50歳の男性5人に屋外で着用してもらい、快適性についてのモニタリングによるアンケート調査を行った。
編地を構成するために用いたマルチフィラメント糸を1m抜取って質量を測定し、測定結果を10,000mに換算して総繊度(dtex)として算出した。
次に、こうして得た総繊度を、マルチフィラメント糸の1本当りのフィラメント数で割り、単糸繊度を算出した。
織編物の目付は、「8.3.2標準状態にける単位面積当たりの質量 A法(JIS法)」により測定した。織編物の密度及び密度は、織物は「JIS L1096 8.6.1A法」、編物は「JIS L1096 8.6.2」により測定した。
吸水性の試験方法として「JIS L 1907繊維製品の吸水性試験方法」の滴下法を用い、吸水性の評価を行った。
酸化アンチモンを固溶したアンチモン酸化錫微粒子(以下「ATO微粒子」と記す)は46.2質量部のSbCl3と670質量部のSnCl・5H2Oを、3000質量部の6N−HCl溶液に溶解し、これに25%のアンモニア液2000質量部を添加して反応させ、ゾル分散液を得て、これを塩化アンモニウムが検出できなくなるまでろ過洗浄した。次いで、これを密閉容器で350℃に加熱し、5時間保持した後に減圧乾燥することにより平均一次粒子径0.005μmの微粒子を得た。このATO微粒子(平均一次粒子径0.005μm)を10重量部、且つスルコハク酸ジオクチルナトリウム(界面活性剤)を2重量部、水88重量部の割合で混合し、ホモミキサーを用いて平均分散粒子径が0.003〜0.1μmの水分散液を作った。
エリスリトール試薬は、東京化成工業株式会社の製品コードE0021、meso−erythritolを使用した。
28ゲージのダブルニット編機を使用し、表層に84dtex/48フィラメント(以下「f」と記す)の酸化チタンを含有しないポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(以下「PETフィラメント糸」と記す)を使用し、糸長を250mm/100wになるように設定する。裏層には84dtex/72fの酸化チタンを含有しないPETフィラメント糸を使用し、糸長が290mm/100wになるよう設定し、図3に示すリバーシブルメッシュ組織に配置したニット生機(染色前の編物)を使用した。
処理液[2]:{ATO分散液 50g/L、エリスリトール試薬 110g/L、U−30NP 20g/L}
表層に84dtex/48fの酸化チタンを0.5質量%含有したポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(以下「PETフィラメント糸」と記す)を、裏層には84dtex/72fの酸化チタンを2.0質量%含有したPETフィラメント糸を、図3に示すリバーシブルメッシュ組織に配置したニット生機(染色前の織物)を使用した。その他の編条件(編機、糸長)については実施例1に用意した生機と同条件とした。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、ATO分散液と、エリスリトール試薬と、[U−30NP]とを、水に溶解及び分散させて処理液[3]を作製した。該処理液[3]を、ピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、ATO分散液と、エリスリトール試薬と、[U−30NP]とを、水に溶解及び分散させて処理液[4]を作製した。該処理液[4]を、ピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
図3に示した表層にあたるフィード番号1、3を、「110dtex/72fの酸化チタンを2.0%含有したPETフィラメント糸」に置き換え、裏層にあたるフィード番号2、4を、「84dtex/72fの酸化チタンを0.5%含有したPETフィラメント糸」に置き換え、リバーシブルメッシュ組織に配置したニット生機を使用した。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、吸光蓄熱剤として大和化学工業株式会社製サンウォーマー TOPコンク(SUNWARMER TOPconc.)と、吸水吸熱剤としてタナテックスジャパンケミカルズ製COOL−EXと、[U−30NP]とを、水に溶解及び分散させて処理液[6]を作製した。該処理液[6]を、ピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、ATO分散剤と、[U−30NP]とを、水に溶解及び分散させて処理液[7]を作製した。該処理液[7]を、ピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、エリスリトール試薬と、[U−30NP]とを、水に溶解及び分散させて処理液[8]を作製した。該処理液[8]を、ピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
実施例2にて用意した生機と同じニット生機を使用し、同じ常法の処理を施した。その後、水をピックアップ率65%で、常法のパディング法にて、生地に付着させた上で、シュリンクサファードライヤーを用いて130℃で乾燥し、引続きテンターを用いて150℃でキュアリングを行った。
野外快適性フィールドテストの評価結果を表2〜4に示す。
B 試験台
C1 試験品
C2 比較品
D1、D2 熱電対温度センサ
E1、E2 放射温度計用黒体テープ
F 写真用500Wレフランプ
Claims (9)
- アンチモンドープ酸化スズおよび/またはスズドープ酸化インジウム、及び負の水和熱を持つ糖アルコールが付着している糸を有する織編物であり、
前記織編物は、
複数の層からなる多層構造であり、
肌側となる層である裏層は、外気側となる層である表層よりも、単糸繊度が小さいことを特徴とする織編物。 - 前記アンチモンドープ酸化スズおよび/またはスズドープ酸化インジウムが、合計で1.5〜15g/m2付着し、
前記糖アルコールが、4〜25g/m2付着していることを特徴とする請求項1記載の織編物。 - 前記裏層は、前記表層よりも、金属酸化物を多く含有する請求項1又は2に記載の織編物。
- 前記裏層は、単糸繊度が0.3dtex以上、2.5dtex以下のポリエステルフィラメント糸からなり、且つ前記金属酸化物を1.0〜5.0質量%含有し、
前記表層は、前記裏層よりも、単糸繊度が0.1dtex以上、1.5dtex以下だけ大きいポリエステルフィラメント糸からなり、且つ前記金属酸化物を0〜0.8質量%含有する請求項3に記載の織編物。 - 請求項1又は2に記載の織編物を用いた衣服であって、
該衣服の裏側最外層は、該衣服の表側最外層よりも、単糸繊度が小さい衣服。 - 前記裏側最外層は、単糸繊度が0.3dtex以上、2.5dtex以下のポリエステルフィラメント糸からなり、
前記表側最外層は、前記裏側最外層よりも、単糸繊度が0.1dtex以上、1.5dtex以下だけ大きいポリエステルフィラメント糸からなる請求項5に記載の衣服。 - 前記裏側最外層は、前記表側最外層よりも、金属酸化物を多く含有する請求項5又は6に記載の衣服。
- 請求項1又は2に記載の織編物を用いた衣服であって、
該衣服の裏側最外層は、該衣服の表側最外層よりも、金属酸化物を多く含有する衣服。 - 前記裏側最外層は、前記金属酸化物を1.0〜5.0質量%含有し、
前記表側最外層は、前記金属酸化物を0〜0.8質量%含有する請求項7又は8に記載
の衣服。
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