JP2004270083A - 繊維構造物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなることを特徴とする繊維構造物。
【効果】本発明によれば、機能剤が繊維構造物に強固に固定され、耐久性、特に洗濯耐久性に優れた種々の機能を有する繊維構造物を得ることができる。
【選択図】 なし
【効果】本発明によれば、機能剤が繊維構造物に強固に固定され、耐久性、特に洗濯耐久性に優れた種々の機能を有する繊維構造物を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭機能等の各種機能を有し、しかも該機能が洗濯によって劣化し難い、洗濯耐久性に優れた繊維構造物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、繊維構造物に対して消臭性や抗菌性等の機能を付与するためには、後加工においてアクリル系やウレタン系のバインダー樹脂を併用して各種機能剤を繊維に固着させる方法が提案されている。
また、バインダー繊維を熱融着させてなる織編物としては、ポリエステルエラストマーを含むバインダー繊維含有紡績糸を熱接着処理することにより、構成単繊維同士を接着させ、糸条の交差点が互いに接着した織編物を得る方法が提案されている(特許文献1:特開平7−305243号公報参照)。
【0003】
更に、融点の異なる合成繊維、又は低融点繊維を使用して繊維同士を接着させる方法等も提案されている(特許文献2〜9:特公昭46−14586号公報、特開昭52−96254号公報、特開昭48−9052号公報、特開昭50−4000号公報、特開昭54−3444号公報、特開昭55−158340号公報、特開昭54−69202号公報、特開平4−240219号公報参照)。
しかしながら、後加工により機能剤を付着させる場合、洗濯耐久性を向上させるためにバインダー樹脂を使用しても十分な洗濯耐久性を得ることは困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−305243号公報
【特許文献2】
特公昭46−14586号公報
【特許文献3】
特開昭52−96254号公報
【特許文献4】
特開昭48−9052号公報
【特許文献5】
特開昭50−4000号公報
【特許文献6】
特開昭54−3444号公報
【特許文献7】
特開昭55−158340号公報
【特許文献8】
特開昭54−69202号公報
【特許文献9】
特開平4−240219号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、機能剤が低融点ポリエステルの溶融により繊維に固定されることによって、洗濯耐久性に優れ、種々の機能が付与された繊維構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物に対して、消臭剤等の機能剤を含む処理液で処理して、繊維構造物に機能剤を付着させた後、低融点ポリエステル繊維が溶融する温度で熱処理することにより、溶融したポリエステル繊維に機能剤を固着させると共に、繊維同士が接触している部分においても熱融着が生じる結果、機能剤を繊維構造物に対して強固に固定させることができ、耐久性に優れ、特に繰り返し洗濯による性能低下のない、洗濯耐久性に優れた繊維構造物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の繊維構造物及びその製造方法を提供する。
[1]160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなることを特徴とする繊維構造物。
[2]上記機能剤が更にバインダー樹脂により該繊維に固定されてなることを特徴とする[1]記載の繊維構造物。
[3]繊維構造物がセルロース系繊維を含有することを特徴とする[1]又は[2]記載の繊維構造物。
[4]機能剤が消臭剤であることを特徴とする[1]、[2]又は[3]記載の繊維構造物。
[5]160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物に対して機能剤を付着させた後、該低融点ポリエステル繊維が溶融する温度で熱処理して、機能剤を低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定させることを特徴とする繊維構造物の製造方法。
【0008】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の繊維構造物は、160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなるものである。
【0009】
ここで、本発明で用いられる低融点ポリエステル繊維は、好ましくは145℃以上160℃以下、更に好ましくは150℃以上155℃以下の融点のものが用いられる。この場合、融点が高すぎると、処理温度が高温になり繊維構造物の風合硬化、及び白度、堅牢度等の特性を劣化させるおそれがある。また、融点が低すぎると繊維構造物の強度特性、寸法安定性の維持が困難となる場合がある。
【0010】
かかる低融点ポリエステル繊維としては、上記融点を有するポリエステル繊維であれば特に制限されないが、ポリエステルエラストマー等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレートを好ましく使用することができる。
【0011】
尚、上記ポリエステル繊維には、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、無機微粒子等の添加剤が必要に応じて含まれることは任意である。
【0012】
本発明における繊維構造物としては、綿、糸、織編物、不織布等及びこれらの縫製品などが挙げられる。これら繊維構造物に使用される繊維は、上述した低融点ポリエステル繊維のみに限定されず、これと他の繊維とを混紡、交編織等して用いることができる。このような繊維としては特に制限は無いが、例えば、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、高強度再生セルロース繊維(例えば、商品名テンセル)等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等の繊維を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を混用して使用することができる。本発明では、これらの中でも綿等の天然繊維、又はレーヨン等の再生セルロース繊維等のセルロース系繊維を用いるのが好ましく、特に綿等の天然繊維が好ましく、更に好ましくは綿を70重量%以上、特に90重量%以上用いたものが優れた吸湿性・吸水性、風合の点から好ましい。
【0013】
この場合、低融点ポリエステル繊維の使用割合は特に制限されず、所望の特性が得られる割合で使用することができるが、その下限値としては、好ましくは繊維構造物全体の1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。また、使用割合の上限値は50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。低融点ポリエステル繊維の割合が多すぎると、繊維構造物の風合硬化、吸湿性・吸水性が低下する場合があり、少なすぎると機能剤の固定が不十分となる場合がある。
【0014】
本発明で用いられる機能剤は、特に制限されず、種々の機能剤を用いることができるが、例えば、消臭剤、抗菌剤、芳香剤、遠赤外線吸収剤、涼感加工剤等を挙げることができる。
【0015】
消臭剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の他、銀(化合物)等が挙げられ、中でも酸化亜鉛を好ましく使用することができる。
【0016】
抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛等の金属を用いた無機系抗菌剤、トリクロサン、クロロヘキシン等の有機系抗菌剤、及びキトサン、カテキン、ヒノキチオ−ル等の天然有機系抗菌剤等が挙げられる。
芳香剤としては、ベンゾイル、イランイラン、ネロリ、カルダモン、ローズマリー等を例示することができる。
【0017】
遠赤外線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム等の金属酸化物やカーボンブラック等が挙げられる。
涼感加工剤としては、コロイダルシリカ等の無機加工剤、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を用いることができる。
【0018】
これらの機能剤は、例えば、処理液中に分散させた分散液、マイクロカプセル等の形態として用いることができる。
【0019】
この場合、上記機能剤の繊維構造物に対する付着量は、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。付着量が少なすぎると、機能剤の性能が十分に発揮されない場合があり、多すぎると、繊維構造物の風合硬化や変色等が生じるおそれがある。
【0020】
本発明では、上記以外の任意成分として、光触媒、浸透剤、風合改良剤、繊維素反応型樹脂、触媒等を本発明の目的を妨げない範囲で用いることができる。
【0021】
また、本発明においては、繊維構造物の耐久性をより向上させるためにバインダー樹脂を使用することができる。本発明によれば、繊維構造物に対してバインダー樹脂を付着させ、上述した低融点ポリエステル繊維を溶融させることにより、機能剤と共にバインダ−樹脂も繊維構造物に対して強固に固定させることができ、洗濯耐久性を更に向上させることができる。
【0022】
上記バインダー樹脂としては、特に制限されないが、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル−シリコーン共重合樹脂、グリオキザール系樹脂等を挙げることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。本発明では、これらの中でも特にアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂を好適に使用できる。
【0023】
この場合、上記バインダー樹脂は、繊維構造物に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%付着させるのが望ましい。付着量が多すぎると繊維構造物の風合硬化や吸湿性・吸水性の低下等が生じる場合があり、少なすぎると耐久性向上効果が得られず、本発明の目的を達成できなくなる場合がある。
【0024】
本発明の製造方法では、上述した繊維構造物に対して機能剤を付着させ、次いで、熱処理して低融点ポリエステル繊維を溶融させることで繊維構造物に機能剤を固定させる。
【0025】
機能剤を繊維構造物に付着させる方法としては、例えば、機能剤等を含む処理液を調整して用い、テンターを用いたパッド/ドライ法、液流染色機やドラム染色機を用いた浸漬法により行ない、乾燥する方法等を採用することができる。これらの中でも、テンターを用いたパッド/ドライ法がコスト面から好ましく採用することができる。尚、バインダー樹脂を使用する場合、機能剤を含む上記処理液にバインダー樹脂を同浴させて使用するのが好ましい。
【0026】
この場合、絞り率は最終的に繊維構造物に付着させる機能剤の量によって適宜選択され、繊維構造物に対する付着量が上述した範囲になるように調整される。
【0027】
次に、得られた繊維構造物の熱処理を行なう。この場合、処理温度は145〜160℃、処理時間は30秒〜5分であることが好ましく、特に150〜155℃、1〜2分とすることが好ましい。この熱処理によって低融点ポリエステル繊維が溶融して機能剤を繊維構造物に強固に固定させることができる。この場合、処理条件が上記範囲を下回ると機能剤の固定が不十分の場合があり、上回ると繊維構造物の風合硬化や変色が生じる場合がある。
【0028】
本発明の製造方法により得られる繊維構造物は、機能剤が繊維構造物に強固に固定されているため、耐久性、特に洗濯耐久性に優れ、機能剤が有する性能を保持することができるため、衣料製品等の様々な製品として幅広く用いることができるものである。
【0029】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
綿70重量%、低融点ポリエステル(帝人(株)製)30重量%を含有する40番手平織物(経糸密度131本/インチ、緯糸密度71本/インチ)を常法により漂白し、20重量%NaOH水溶液を用いてシルケット処理を行なった。
この織物に、下記処方の消臭剤を含む処理液(水分散液)をテンターを用いて絞り率60%でパッド処理し、120℃で60秒乾燥した後、160℃で2分間ベーキング処理した。得られた織物について、下記方法に従って消臭試験を行なった。結果を表1に示す。
【0031】
消臭試験
臭気成分としてアンモニアを用いて、JAFET(繊維製品新機能評価協議会)法に準じた検知管法による消臭試験を行なった。
【0032】
[実施例2]
アクリル系樹脂を使用しない以外は実施例1と同様な織物を用いて同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例3]
酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様な織物を用いて同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例4]
綿90重量%、低融点ポリエステル10重量%を含有する織物を用いた以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例5]
綿90重量%、低融点ポリエステル10重量%を含有する織物を用い、酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
綿100重量%を含有する織物を用いた以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例2]
綿100重量%を含有する織物を用い、酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、機能剤が繊維構造物に強固に固定され、耐久性、特に洗濯耐久性に優れた種々の機能を有する繊維構造物を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭機能等の各種機能を有し、しかも該機能が洗濯によって劣化し難い、洗濯耐久性に優れた繊維構造物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、繊維構造物に対して消臭性や抗菌性等の機能を付与するためには、後加工においてアクリル系やウレタン系のバインダー樹脂を併用して各種機能剤を繊維に固着させる方法が提案されている。
また、バインダー繊維を熱融着させてなる織編物としては、ポリエステルエラストマーを含むバインダー繊維含有紡績糸を熱接着処理することにより、構成単繊維同士を接着させ、糸条の交差点が互いに接着した織編物を得る方法が提案されている(特許文献1:特開平7−305243号公報参照)。
【0003】
更に、融点の異なる合成繊維、又は低融点繊維を使用して繊維同士を接着させる方法等も提案されている(特許文献2〜9:特公昭46−14586号公報、特開昭52−96254号公報、特開昭48−9052号公報、特開昭50−4000号公報、特開昭54−3444号公報、特開昭55−158340号公報、特開昭54−69202号公報、特開平4−240219号公報参照)。
しかしながら、後加工により機能剤を付着させる場合、洗濯耐久性を向上させるためにバインダー樹脂を使用しても十分な洗濯耐久性を得ることは困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−305243号公報
【特許文献2】
特公昭46−14586号公報
【特許文献3】
特開昭52−96254号公報
【特許文献4】
特開昭48−9052号公報
【特許文献5】
特開昭50−4000号公報
【特許文献6】
特開昭54−3444号公報
【特許文献7】
特開昭55−158340号公報
【特許文献8】
特開昭54−69202号公報
【特許文献9】
特開平4−240219号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、機能剤が低融点ポリエステルの溶融により繊維に固定されることによって、洗濯耐久性に優れ、種々の機能が付与された繊維構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物に対して、消臭剤等の機能剤を含む処理液で処理して、繊維構造物に機能剤を付着させた後、低融点ポリエステル繊維が溶融する温度で熱処理することにより、溶融したポリエステル繊維に機能剤を固着させると共に、繊維同士が接触している部分においても熱融着が生じる結果、機能剤を繊維構造物に対して強固に固定させることができ、耐久性に優れ、特に繰り返し洗濯による性能低下のない、洗濯耐久性に優れた繊維構造物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の繊維構造物及びその製造方法を提供する。
[1]160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなることを特徴とする繊維構造物。
[2]上記機能剤が更にバインダー樹脂により該繊維に固定されてなることを特徴とする[1]記載の繊維構造物。
[3]繊維構造物がセルロース系繊維を含有することを特徴とする[1]又は[2]記載の繊維構造物。
[4]機能剤が消臭剤であることを特徴とする[1]、[2]又は[3]記載の繊維構造物。
[5]160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物に対して機能剤を付着させた後、該低融点ポリエステル繊維が溶融する温度で熱処理して、機能剤を低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定させることを特徴とする繊維構造物の製造方法。
【0008】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の繊維構造物は、160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなるものである。
【0009】
ここで、本発明で用いられる低融点ポリエステル繊維は、好ましくは145℃以上160℃以下、更に好ましくは150℃以上155℃以下の融点のものが用いられる。この場合、融点が高すぎると、処理温度が高温になり繊維構造物の風合硬化、及び白度、堅牢度等の特性を劣化させるおそれがある。また、融点が低すぎると繊維構造物の強度特性、寸法安定性の維持が困難となる場合がある。
【0010】
かかる低融点ポリエステル繊維としては、上記融点を有するポリエステル繊維であれば特に制限されないが、ポリエステルエラストマー等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレートを好ましく使用することができる。
【0011】
尚、上記ポリエステル繊維には、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、無機微粒子等の添加剤が必要に応じて含まれることは任意である。
【0012】
本発明における繊維構造物としては、綿、糸、織編物、不織布等及びこれらの縫製品などが挙げられる。これら繊維構造物に使用される繊維は、上述した低融点ポリエステル繊維のみに限定されず、これと他の繊維とを混紡、交編織等して用いることができる。このような繊維としては特に制限は無いが、例えば、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、高強度再生セルロース繊維(例えば、商品名テンセル)等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等の繊維を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を混用して使用することができる。本発明では、これらの中でも綿等の天然繊維、又はレーヨン等の再生セルロース繊維等のセルロース系繊維を用いるのが好ましく、特に綿等の天然繊維が好ましく、更に好ましくは綿を70重量%以上、特に90重量%以上用いたものが優れた吸湿性・吸水性、風合の点から好ましい。
【0013】
この場合、低融点ポリエステル繊維の使用割合は特に制限されず、所望の特性が得られる割合で使用することができるが、その下限値としては、好ましくは繊維構造物全体の1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。また、使用割合の上限値は50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。低融点ポリエステル繊維の割合が多すぎると、繊維構造物の風合硬化、吸湿性・吸水性が低下する場合があり、少なすぎると機能剤の固定が不十分となる場合がある。
【0014】
本発明で用いられる機能剤は、特に制限されず、種々の機能剤を用いることができるが、例えば、消臭剤、抗菌剤、芳香剤、遠赤外線吸収剤、涼感加工剤等を挙げることができる。
【0015】
消臭剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の他、銀(化合物)等が挙げられ、中でも酸化亜鉛を好ましく使用することができる。
【0016】
抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛等の金属を用いた無機系抗菌剤、トリクロサン、クロロヘキシン等の有機系抗菌剤、及びキトサン、カテキン、ヒノキチオ−ル等の天然有機系抗菌剤等が挙げられる。
芳香剤としては、ベンゾイル、イランイラン、ネロリ、カルダモン、ローズマリー等を例示することができる。
【0017】
遠赤外線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム等の金属酸化物やカーボンブラック等が挙げられる。
涼感加工剤としては、コロイダルシリカ等の無機加工剤、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を用いることができる。
【0018】
これらの機能剤は、例えば、処理液中に分散させた分散液、マイクロカプセル等の形態として用いることができる。
【0019】
この場合、上記機能剤の繊維構造物に対する付着量は、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。付着量が少なすぎると、機能剤の性能が十分に発揮されない場合があり、多すぎると、繊維構造物の風合硬化や変色等が生じるおそれがある。
【0020】
本発明では、上記以外の任意成分として、光触媒、浸透剤、風合改良剤、繊維素反応型樹脂、触媒等を本発明の目的を妨げない範囲で用いることができる。
【0021】
また、本発明においては、繊維構造物の耐久性をより向上させるためにバインダー樹脂を使用することができる。本発明によれば、繊維構造物に対してバインダー樹脂を付着させ、上述した低融点ポリエステル繊維を溶融させることにより、機能剤と共にバインダ−樹脂も繊維構造物に対して強固に固定させることができ、洗濯耐久性を更に向上させることができる。
【0022】
上記バインダー樹脂としては、特に制限されないが、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル−シリコーン共重合樹脂、グリオキザール系樹脂等を挙げることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。本発明では、これらの中でも特にアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂を好適に使用できる。
【0023】
この場合、上記バインダー樹脂は、繊維構造物に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%付着させるのが望ましい。付着量が多すぎると繊維構造物の風合硬化や吸湿性・吸水性の低下等が生じる場合があり、少なすぎると耐久性向上効果が得られず、本発明の目的を達成できなくなる場合がある。
【0024】
本発明の製造方法では、上述した繊維構造物に対して機能剤を付着させ、次いで、熱処理して低融点ポリエステル繊維を溶融させることで繊維構造物に機能剤を固定させる。
【0025】
機能剤を繊維構造物に付着させる方法としては、例えば、機能剤等を含む処理液を調整して用い、テンターを用いたパッド/ドライ法、液流染色機やドラム染色機を用いた浸漬法により行ない、乾燥する方法等を採用することができる。これらの中でも、テンターを用いたパッド/ドライ法がコスト面から好ましく採用することができる。尚、バインダー樹脂を使用する場合、機能剤を含む上記処理液にバインダー樹脂を同浴させて使用するのが好ましい。
【0026】
この場合、絞り率は最終的に繊維構造物に付着させる機能剤の量によって適宜選択され、繊維構造物に対する付着量が上述した範囲になるように調整される。
【0027】
次に、得られた繊維構造物の熱処理を行なう。この場合、処理温度は145〜160℃、処理時間は30秒〜5分であることが好ましく、特に150〜155℃、1〜2分とすることが好ましい。この熱処理によって低融点ポリエステル繊維が溶融して機能剤を繊維構造物に強固に固定させることができる。この場合、処理条件が上記範囲を下回ると機能剤の固定が不十分の場合があり、上回ると繊維構造物の風合硬化や変色が生じる場合がある。
【0028】
本発明の製造方法により得られる繊維構造物は、機能剤が繊維構造物に強固に固定されているため、耐久性、特に洗濯耐久性に優れ、機能剤が有する性能を保持することができるため、衣料製品等の様々な製品として幅広く用いることができるものである。
【0029】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
綿70重量%、低融点ポリエステル(帝人(株)製)30重量%を含有する40番手平織物(経糸密度131本/インチ、緯糸密度71本/インチ)を常法により漂白し、20重量%NaOH水溶液を用いてシルケット処理を行なった。
この織物に、下記処方の消臭剤を含む処理液(水分散液)をテンターを用いて絞り率60%でパッド処理し、120℃で60秒乾燥した後、160℃で2分間ベーキング処理した。得られた織物について、下記方法に従って消臭試験を行なった。結果を表1に示す。
【0031】
消臭試験
臭気成分としてアンモニアを用いて、JAFET(繊維製品新機能評価協議会)法に準じた検知管法による消臭試験を行なった。
【0032】
[実施例2]
アクリル系樹脂を使用しない以外は実施例1と同様な織物を用いて同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例3]
酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様な織物を用いて同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例4]
綿90重量%、低融点ポリエステル10重量%を含有する織物を用いた以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例5]
綿90重量%、低融点ポリエステル10重量%を含有する織物を用い、酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例1]
綿100重量%を含有する織物を用いた以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例2]
綿100重量%を含有する織物を用い、酸化亜鉛等を含有する消臭剤の濃度を100g/Lとした以外は実施例1と同様に処理し、同様の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、機能剤が繊維構造物に強固に固定され、耐久性、特に洗濯耐久性に優れた種々の機能を有する繊維構造物を得ることができる。
Claims (5)
- 160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物であって、機能剤が低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定されてなることを特徴とする繊維構造物。
- 上記機能剤が更にバインダー樹脂により該繊維に固定されてなることを特徴とする請求項1記載の繊維構造物。
- 繊維構造物がセルロース系繊維を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の繊維構造物。
- 機能剤が消臭剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の繊維構造物。
- 160℃以下の融点を有する低融点ポリエステル繊維を含有する繊維構造物に対して機能剤を付着させた後、該低融点ポリエステル繊維が溶融する温度で熱処理して、機能剤を低融点ポリエステル繊維の溶融により該繊維に固定させることを特徴とする繊維構造物の製造方法。
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