本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。本実施形態の樹脂製コンテナは、航空機に搭載される際に下段用として用いられる下段用コンテナAと、上段用として用いられる上段用コンテナBとから成る。
図1には、下段用コンテナAと上段用コンテナBに共通に用いられる積層樹脂板材2を示している。図2には、この積層樹脂板材2に形成されるヒンジ部分の構造を示している。図3〜図6には下段用コンテナAを示しており、図7〜図10には上段用コンテナBを示している。
まず、下段用コンテナAの構造について述べる。下段用コンテナAは、図3や図4に示すように、船形形状を有するコンテナ本体4と、このコンテナ本体4の上面開口を塞ぐように取り付けられる蓋板6とを備える。蓋板6により、雨等のコンテナ本体4内への侵入が防止される。
コンテナ本体4は、長手方向aの一端部と他端部を斜め上方に折り曲げた形状の底板8と、この底板8の短手方向bの端縁部に連設される一対の側板10とを有する。本実施形態では、この底板8を、平面視矩形状をなす水平底板12と、水平底板12の両端縁部にヒンジ部材14を用いて連結される一対の傾斜底板16とを用いて形成している。
そして、本実施形態の下段用コンテナAでは、これら板部材6,10,12,16のそれぞれを、積層樹脂板材2を用いて形成している。積層樹脂板材2は図1に示す構造のもので、ポリプロピレン(以下「PP」と略す)製の中空構造板18が用いられる。中空構造板18は、中空の六角柱が隙間なく並設されたハニカム状のコア材20を一対のスキン材22によって両側からサンドイッチした構造の板材である。このハニカム構造の中空構造板18は、単位重量あたりの強度が非常に高く、機械的特性において等方性に優れるとともに、熱可塑性樹脂製であるから二次加工性にも優れたものである。
積層樹脂板材2では、この中空構造板18の両側のスキン材22の外表面に、合成樹脂製の繊維シート24をそれぞれ貼り付け、この繊維シート24の外面を覆うようにさらに樹脂シート26を貼り付けている。ここでの貼り付けには、ポリエチレン(以下「PE」と略す)からなるバインダ樹脂を用いるが、接着剤シートや熱ラミネート等の他の手段で貼り付けてもよい。
繊維シート24は、合成樹脂製の複合繊維を一方向に配列させたものを、同じく合成樹脂製のステッチ糸を用いて結合させ、さらにプレスすることで簾状のシートを形成し、この簾状のシートを複数枚重ねて、加熱加圧成形により一枚のシートに成形したものである。複合繊維は、PP製の芯成分をこれよりも低融点であるPE製の鞘成分で覆ったものであり、ステッチ糸はポリエステル製である。本実施形態では、簾状のシートを三枚用い、各シートを繊維の配列方向が30度ずつ相違するように積層させることで、多軸繊維シートとしている。加熱加圧成形により、複合繊維のうち低融点である鞘成分が溶融または軟化し、扁平化されることによってシート全体の一体性が増し、強度も向上する。なお、繊維シート24として多軸繊維シートの他に、織物、編み物、不織布及びこれらを組み合わせたものを用いてもよい。
積層樹脂板材2の最外層となる樹脂シート26は、薄膜状のPP製のシートである。樹脂シート26は、中空構造板18よりも厚みを薄く形成する。樹脂シート26と繊維シート24の厚みは互いに同程度に設けてもよいが、樹脂シート26を繊維シート24よりも薄く形成した場合には、更に軽量化が図られる。
つまり、この積層樹脂板材2は、合成樹脂製であるハニカム構造の中空構造板18をさらに合成樹脂製の繊維シート24で両側からサンドイッチし、これをさらに両側から樹脂シート26でサンドイッチした構造である。樹脂シート26で覆うことにより、積層樹脂板材2全体の曲げ強度や曲げ剛性が向上するという効果や、ゴミや汚れが付着しづらくなるという効果も得られる。中空構造板18は、ハニカム構造以外の他の中空構造(例えば、平板状の隔壁が一方向に多数列設される中空構造や、中空の円錐台が多数並設される中空構造等)であってもよい。
底板8の中央部をなす水平底板12は、この積層樹脂板材2を用いて成形される。この水平底板12は、長手方向aの両端縁部の下面側を潰すことで凹段部28を形成し、短手方向bの両端縁部には、熱曲げ溶着加工によって折曲片部30を上方に折り曲げて形成したものである。積層樹脂板材2の端縁部を潰すことで、樹脂溜りが生じることによる強度向上の効果も得られる。また、積層樹脂板材2の熱曲げは、曲げられる外側の繊維シート24よりも手前側の部分までを押し潰して折り曲げてもよいし、この外側の繊維シート24の厚み方向の途中までの部分を押し潰して折り曲げてもよい。
底板8の両端部をなす傾斜底板16は、同様に積層樹脂板材2を用いて成形される。この傾斜底板16は、長手方向aの一方の端縁近傍に、ヒンジ構造34を形成している。傾斜底板16の短手方向bの両端縁部には、熱曲げ溶着加工によって折曲片部36を上方に折り曲げて形成している。折曲片部36のうちヒンジ構造34の両端にあたる箇所には、V字状の切り欠きを設ける。また、傾斜底板16には、一対の持ち手孔40を貫通形成している。
ヒンジ構造34は、積層樹脂板材2に対して内面側から熱罫線加工を施すことによって、図2に示すような構造で形成される。既述のように、この積層樹脂板材2は、合成樹脂製である中空構造板18の両面に繊維シート24を貼り付けたものであるから、その一面側からV字状の熱罫線加工を施し、他面側に貼られた繊維シート24を残す形で中空構造板18に凹溝部分を形成することで、折り曲げ自在なヒンジ構造34が形成される。このヒンジ構造34は、外側の繊維シート24を介して折り曲げ自在であることから強度が確保され、且つ、ヒンジ部材14等の専用部材を装着する必要もないので構造が簡素化される。また、この凹溝部分以外には段差が形成されないので、ヒンジ部分をフラットに形成しやすくなる。
なお、熱罫線加工により形成する凹溝部分はV字状に限らず、他の形状で凹溝部分を形成してもよい。凹溝部分を形成するための加工も熱罫線加工に限定されず、樹脂を押し潰しまたは切除することによって積層樹脂板材2に直線状の凹溝部分を形成する加工であればよい。
また、ヒンジ構造34を形成するために施される加工は、折り曲げた際に外側となる繊維シート24が一定の強度を保って残されるものであればよい。つまり、積層樹脂板材2のうち外側の繊維シート24よりも手前側の部分(中空構造板18の全部又は一部)までを押し潰しまたは切除する加工であってもよいし、外側の繊維シート24の厚み方向の途中までの部分を押し潰しまたは切除するものであってもよい。
積層樹脂板材2では、中空構造板18と繊維シート24の素材として共にPPを用いているので、上述のような熱曲げ溶着加工や熱罫線加工を施すときに、剥離等の不具合を生じにくいものとなっている。また、熱曲げ溶着加工や熱罫線加工を施すときに中空構造板18が押し潰され、この押し潰し面の中空部分に合成樹脂が溜まることにより、溶着が確実に行われるという効果や、強度が増すという効果も得られる。
側板10は、積層樹脂板材2を用いて略逆台形状に成形される。この側板10にも、傾斜底板16と同様の一対の持ち手孔42を貫通形成している。なお、これら持ち手孔40,42は凹状であればよく、貫通形成しない構造であっても構わない。また、貫通又は窪んだ形状の別部位を取り付けることで持ち手部分を形成してもよい。
蓋板6は、積層樹脂板材2を用いて平板状に形成される。この蓋板6は、平面視略長方形状の外形を有し、長手方向aの両端縁部に、熱曲げ溶着加工によって折曲片部44を下方に折り曲げて形成している。また、蓋板6の短手方向bの一端縁部にも、同様の熱曲げ溶着加工によって折曲片部46を下方に折り曲げて形成している。蓋板6の短手方向bの他端縁部には、上面側を潰すことによって凹段部48を形成している。
これら板部材6,10,12,16に加え、図5に示すヒンジ部材14、図6に示すフレーム部材52、さらには図3,図4に示すコーナー部材54やリベット部材(図示略)等の別部材を用いることで、下段用コンテナAが組み立てられる。なお、別部材を用いずに組み立てることも可能である。この場合、積層樹脂板材2の端面を潰すこと、又は潰して折り曲げることで端面処理を行う。この端面処理によって樹脂溜りができ、強度向上の効果も得られる。また、別部材装着による段差が生じないので、フラットな外観が得られる。
ヒンジ部材14は、積層樹脂板材2の端縁部同士を折曲自在につなぐ部材であり、一方の積層樹脂板材2の端縁部に嵌合固定される断面コ字状のヒンジ半部56の角縁部と、他方の積層樹脂板材2の端縁部に嵌合固定される断面コ字状のヒンジ半部58の角縁部とを、弾性変形可能な連結部分60を介して連結させたものである。両側のヒンジ半部56,58はPPを用いて長尺状に成形され、連結部分60はエラストマーを用いて成形される。
フレーム部材52は、積層樹脂板材2の端縁部に嵌合固定される断面コ字状の長尺部材であり、PPを用いて成形される。コーナー部材54は、平面視L字型の部材であり、装着されたフレーム部材52に対してさらに上方から嵌合するように、断面コ字状に形成されている。これらヒンジ部材14、フレーム部材52及びコーナー部材54は、それぞれの設置箇所に応じた寸法形状で成形される。これら各部材14,52,54と積層樹脂板材2は共に熱可塑性樹脂を用いて形成されるので、リサイクルが可能であり、特にPPが主であることからパレット等に使用可能となる。
下段用コンテナAは、より具体的には以下のように組み立てられる。
底板8は、水平底板12が両端縁に有する一対の凹段部28に、それぞれヒンジ部材14の一方のヒンジ半部56を嵌合させ、そのヒンジ部材14の他方のヒンジ半部58を傾斜底板16の端縁部に嵌合させることで、長手方向aの一端部と他端部を斜め上方に折り曲げた船底のような形状に組み立てられる。
ここで、ヒンジ半部56の板部の肉厚は、凹段部28の深さと同一に設定しているので、凹段部28にヒンジ半部56が嵌合された状態で、このヒンジ半部56の下面と、水平底板12の下面とが、フラットに連続するようになっている(図4参照)。これによりコンテナ本体4の底面がフラットになり、移動の際にも破損等を生じにくくなる。なお、凹段部28の深さを、ヒンジ半部56の板部の肉厚より少し浅く形成してもよいし、或いは深く形成してもよい。滑りを円滑にするため、コンテナ本体4の底面にソリのような脚部を形成して滑りを円滑にしてもよい。
また、水平底板12の上面側に、凹段部28と同様の凹段部を設けてもよい。この上面側の凹段部にヒンジ半部56の上側の板部が嵌まることで、コンテナ本体4の内面がよりフラットになり、内容物の引っ掛かりが防止される。勿論、凹段部を水平底板12の上面側に設けない場合でも、ヒンジ半部56の板部は薄肉であることから、生じる段差は小さく、内容物の引っ掛かりは殆ど生じない。
傾斜底板16は、その上部17がヒンジ構造34を介してさらに折り曲げられ、上部17が真上に起立した姿勢で、底板8に対して両側の側板10が固定される。底板8と側板10の固定は、水平底板12や傾斜底板16に設けた折曲片部30,36と、側板10の端縁部とを、リベット部材で固定することにより行われる。
傾斜底板16の上部17の上端縁には、この部位に対応する長さ寸法のフレーム部材52が上方から嵌合される。同様に、一方の側板10の上端縁には、この部位に対応する長さ寸法のフレーム部材52が上方から嵌合される。
他方の側板10の上端縁には、蓋用の長さ寸法で形成されるヒンジ部材14のヒンジ半部58が嵌合され、このヒンジ部材14の他方のヒンジ半部56が、蓋板6の凹段部48に嵌合される。これにより、コンテナ本体4と蓋板6とが回転自在に連結される。
このヒンジ半部56の板部の肉厚は、蓋板6の凹段部48の深さと同一に設定しているので、凹段部48にヒンジ半部56が嵌合された状態で、このヒンジ半部56の上面と、蓋板6の上面とが、フラットに連続するようになっている(図3参照)。なお、この凹段部48の深さを、ヒンジ半部56の板部の肉厚よりも少し浅く形成することや、深く形成することも可能である。
コンテナ本体4の開口縁の四隅部分には、フレーム部材52の上方からさらにL字型のコーナー部材54が装着される。これにより、底板8の傾斜底板16と側板10が強固に結合され、コンテナ本体4の補強が図られる。
蓋板6を閉じた状態とき、蓋板6が有する折曲片部44,46は対応する箇所のフレーム部材52に対して外側から当接する。この折曲片部44,46と対応する箇所のフレーム部材52の両者に、蓋板6を閉状態で仮固定するための面ファスナを設けておくことも好適である。また、蓋板6を閉状態で仮固定するために、バックル等の他の仮固定手段を設けてもよい。
このようにして組み立てられた下段用コンテナAにおいて、各折曲片部30,36,44,46の端面には、中空構造板18の中空部分が露出することになるが、この中空部分はそれぞれ独立したセルであるから、仮にゴミ溜まっても少量で済む。各折曲片部30,36,44,46の端面にゴミが溜まらないようにするため、端面の押し潰しやエッジテープの貼り付けを行い、端面を塞ぐことも可能である。
また、下段用コンテナAにおいて、ヒンジ構造34を設けて積層樹脂板材2を折り曲げ自在とした箇所を、ヒンジ部材14を装着することで折り曲げ自在とする構造に変更することも可能である。同様に、ヒンジ部材14を装着することで折り曲げ自在とした箇所を、ヒンジ構造34を設けて折り曲げ自在とする構造に変更することも可能である。
さらに、ヒンジ部材14、フレーム部材52及びコーナー部材54を用いずに下段用コンテナAを組み立てることも可能である。この場合、積層樹脂板材2を用いて各板材6,10,12,16を一体に形成した後に、境界部分にヒンジ構造34等を形成することによって各部を折り曲げたうえで結合させ、下段用コンテナAを組み立てる。これによれば、ヒンジ部材14等の別部材が不要となり、下段用コンテナAの内面や外面も全体にフラットに形成される。積層樹脂板材2の端面処理は、端面を潰すことや、潰して折り曲げることで行う。この端面処理によって樹脂溜りができ、強度向上の効果も得られる。また、フレーム部材52等の装着による段差が生じないので、よりフラットな外観が得られる。
以上、本実施形態の航空機用コンテナのうち、下段用コンテナAの構成について説明した。次いで、上段用コンテナBの構成について説明する。なお、下段用コンテナAと同様の構成については、説明を一部省略する。
上段用コンテナBは、図7に全体を示すように、上面の開口したボックス形状のコンテナ本体104と、このコンテナ本体104の開口を塞ぐように取り付けられる蓋板106とを備える。
コンテナ本体104は、平面視矩形状をなす平坦な底板108と、底板108の短手方向bの両端部に連設される一対の第一側板110と、底板108の長手方向aの両端部に連設される一対の第二側板112とを備える。
上段用コンテナBにおいても、これら板部材106,108,110,112を、下段用コンテナAと同様の積層樹脂板材2を用いて形成している。積層樹脂板材2の構造は、図1に基づいて既述したとおりである。
本実施形態の上段用コンテナBでは、底板108と一対の第一側板110とが、積層樹脂板材2を用いて一体に成形される(図8参照)。具体的には、平面視略矩形状をなす一枚の積層樹脂板材2の両端側を、熱曲げ溶着加工により上方に折り曲げ、上方に折り曲げられた部分を第一側板110としている。底板108の下面はフラットに形成され、床面上を円滑に滑るものとなっている。この第一側板110には、内面側からの熱罫線加工によるヒンジ構造134を、三箇所に形成している。このヒンジ構造134は、下段用コンテナAに形成したヒンジ構造34(図2参照)と同様の構造であり、繊維シート24を介して折り曲げ自在となっている。
三箇所のヒンジ構造134は、上下方向に距離を隔てた平行なライン状に形成され、これらヒンジ構造134のうち下側と中央のライン間の距離と、中央と上側のライン間の距離とを、同一に設定している。
以下においては、第一側板110のうち下側のヒンジ構造134より下方のブロックを下端側板116、下側のヒンジ構造134と中央のヒンジ構造134の間のブロックを可動下側板118、中央のヒンジ構造134と上側のヒンジ構造134の間のブロックを可動上側板120、上側のヒンジ構造134より上方のブロックを上端側板122として説明する。このうち可動下側板118と可動上側板120とが「く」字状に屈折することで、第一側板110全体が上下に折り畳まれる。
底板108と、第一側板110のうち上端側板122を除く各ブロック116,118,120には、それぞれの長手方向aの両端縁部から、熱曲げ溶着加工によって内側に折り曲げられた折曲片部124を設けている。各折曲片部124は、互いに干渉することのないように角部分を斜めに切り欠いている。
第二側板112は、積層樹脂板材2を用いて、図9に示すような矩形状に成形される。第二側板112には、第一側板110と同様の熱罫線加工によるヒンジ構造134を、上縁近傍の箇所に一直線状に形成している。
以下においては、第二側板112のうちヒンジ構造134より上方のブロックを上端側板126、このヒンジ構造134より下方のブロックを揺動側板128として説明する。揺動側板128には、一対の持ち手孔142を貫通形成している。この揺動側板128がヒンジ構造134を介して内側に折れ曲がることで、第二側板112全体が折り畳まれる。
蓋板106は、積層樹脂板材2を用いて成形される。この蓋板106は、平面視略長方形状の外形を有し、長手方向aの両端縁部に、熱曲げ溶着加工によって下方に折り曲げられた折曲片部144を設けている。また、蓋板106の短手方向bの一端縁部にも、同様の熱曲げ溶着加工によって下方に折り曲げられた折曲片部146を設けている。蓋板6の短手方向bの他端縁部には、上面側を潰すことによって凹段部148を形成している。
上述の各部材と、ヒンジ部材114、フレーム部材152、コーナー部材154等を用いることで、上段用コンテナBが組み立てられる。
ヒンジ部材114は、下段用コンテナAで用いるヒンジ部材14と同様の構造であり、断面コ字状である一対のヒンジ半部156,158の角縁部同士を、弾性変形可能な連結部分160を介して連結させている。
フレーム部材152やコーナー部材154も、下段用コンテナAで用いるフレーム部材52やコーナー部材54と同様の構造であり、それぞれの設置箇所に応じた寸法形状で成形されている。
上段用コンテナBは、より具体的には以下のように組み立てられる。
図7等に示すように、一対の第二側板112の上端縁(つまり上端側板126の上端縁)には、この部位に対応する長さ寸法のフレーム部材52が上方から嵌合される。
底板108から起立される一対の第一側板110のうち一方の上端縁(つまり上端側板122の上端縁)には、この部位と対応する長さ寸法のフレーム部材152が上方から嵌合される。他方の第一側板110の上端縁には、ヒンジ部材114が有する一方のヒンジ半部158が嵌合され、このヒンジ部材114の他方のヒンジ半部156が、蓋板106の凹段部148に嵌合される。これにより、第一側板110と蓋板106とが回転自在に連結される。
ヒンジ半部156の肉厚は、蓋板106の凹段部148にヒンジ半部156が嵌合された状態で、このヒンジ半部156の上面と、蓋板106の上面とが、フラットに連続するように設定している(図7参照)。
第一側板110と第二側板112とは、上方から嵌合されるコーナー部材54等を介して、互いの上端側板122,126同士が連結される。蓋板106が有する折曲片部144,146は、蓋板106を閉じたときに、対応する箇所のフレーム部材152に対して外側から当接する。下段用コンテナAと同様、これら折曲片部144,146とフレーム部材152に面ファスナ等の仮固定手段を設けることが好適である。
なお、上段用コンテナBにおいても、ヒンジ構造134を設けて積層樹脂板材2を折り畳み自在とした箇所を、ヒンジ部材114を装着することで折り畳み自在とする構造に変更することが可能である。同様に、ヒンジ部材114を装着することで折り曲げ自在とした箇所を、ヒンジ構造134を設けて折り曲げ自在とする構造に変更することも可能である。
図10(a)−(d)には、上段用コンテナBの折り畳み手順を示している。図10(b)に示すように、まずはコンテナ本体104の短側である第二側板112の、下側のブロックである揺動側板128を、ヒンジ構造134を中心として内側に折り曲げる。次いで、図10(c)に示すように、コンテナ本体104の長側である第一側板110の、可動下側板118と可動上側板120とを、上下三箇所のヒンジ構造134を利用して、内側にむけて「く」字状に屈折させる。これにより、上段用コンテナB全体が図10(d)に示すように上下に折り畳まれ、1/3程度までの減容化が可能となる。
図11には、上述した構造の下段用コンテナAと上段用コンテナBを、航空機の貨物スペースSに搭載した様子を示している。
航空機は、胴体の上側半部が客室に用いられ、胴体の下側半部が貨物スペースSに用いられる。そのため、航空機の貨物スペースSは、図示のように上側を弦とした断面半円状のスペースとなることが通常である。
本実施形態の下段用コンテナAおよび上段用コンテナBは、特定形状の貨物スペースSと対応する寸法形状で設定されたものであり、換言すれば、特定機種の航空機に対応した専用設計のコンテナである。但し、上段用のコンテナBは、他の用途にも使用可能である。
図12にも示すように、下段用コンテナA全体の長手方向aの寸法は、上段用コンテナB全体の長手方向aの寸法の倍に設定している。下段用コンテナAは全体が船形形状であり、上段用コンテナBは全体がボックス形状であるから、下段用コンテナAが有する蓋板6の長手方向aの寸法を、上段用コンテナBが有するコンテナ本体104や蓋板106の長手方向aの寸法の倍に設定している。
一方、下段用コンテナAと上段用コンテナBとで、短手方向bの長さ寸法は同一に設定している。つまり、下段用コンテナAが有する蓋板6の短手方向bの寸法を、上段用コンテナBが有するコンテナ本体104や蓋板106の短手方向bの寸法と同一に設定している。
そのため、一つの下段用コンテナAの蓋板6上に、二つの上段用コンテナBが長手方向aに密着して載置され、このような配置で搭載される下段用及び上段用コンテナA,Bのセット全体(図11参照)が、上側を弦とする断面半円状の貨物スペースSに対して、僅かなクリアランスを介して嵌まるように専用設計している。
このような下段用及び上段用コンテナA,Bのセットを、短手方向b(即ち貨物スペースSの奥行き方向)に連続して搭載させることで、断面半円状の貨物スペースSを有効活用してコンテナを積み込むことができる。
その際、まず下段用コンテナAを、貨物スペースSの床面上に載置させる。下段用コンテナAは船形であって重心が高いため、一方を少し上げて床面上をずらすようにして容易に搭載することができる。搭載された状態において、下段用コンテナAが有する蓋板6のフラットな上面と、この蓋板6に装着されるヒンジ半部58のフラットな上面とは、短手方向bに面一に連続した位置にある。上段用コンテナBを搭載する際は、下段用コンテナAのフラットな連続面を搬送面として活用し、この搬送面上にて、上段用コンテナBをずらして積み込んでいくことができる。
また、下段用コンテナAを複数積み込んだ後に、上段用コンテナBを複数積み込んでいくことも可能である。この場合は、複数の下段用コンテナAを、貨物スペースSの床面上で奥行き方向に密着載置させていくことで、それぞれの下段用コンテナAが有する蓋板6のフラットな上面と、この蓋板6に装着されるヒンジ半部58のフラットな上面とを、短手方向bに多数連続して位置させる。上段用コンテナBを搭載する際は、これら複数の下段用コンテナAのフラットな連続面を搬送面として活用し、この搬送面上にて、上段用コンテナBを奥側にずらして順次積み込んでいくことができる。
下段用コンテナAや上段用コンテナBでは、積層樹脂板材2を用い、コンテナ全体の高強度化と軽量化が図られている。そのため、積み込み作業を手作業で容易に行うことができ、荷重によりコンテナが外側に膨らむ等の変形を生じることも少ない。これにより、専用の機械を使わずとも、積み込み作業を手作業で迅速に完了させることが可能となる。また、コンテナが膨らみ難いことから、離陸や着陸時にコンテナが滑ることも少ない。
加えて、積層樹脂板材2には繊維シート24が貼り付けてあるので、仮に内部の中空構造板18等が破損を生じたときにも、板材の破片が外部に飛散することが抑えられる。特に、中空構造板18は各セルを区画する薄肉の隔壁を多数有しており、破損時にはこれら各隔壁が微細な破片となる虞もあるが、繊維シート24が貼り付けてあることで、この破損部分が繊維シート24を介して陥没する程度で済む。万一、繊維シート24が裂けた場合であっても、中空構造板18の破損部分は繊維シート24と一体に脱落するため、微細な破片が外部に飛散することは防止される。
なお、上段用コンテナBの代わりに、段ボールやトランク等の荷物を積み込んでもよい。運航中の荷崩れをより確実に防止するためには、貨物スペースS内の前記クリアランスに適宜部材を詰め込むことや、コンテナ全体にロープ、ネット等の荷崩れ防止具をかけることが好ましい。また、下段用コンテナAのコンテナ本体4の底面に、磨耗対策用のスリップシート(図示略)を装着してもよい。このスリップシートを、面ファスナ等を用いてコンテナ本体4の底板8に着脱自在に装着することで、スリップシートが消耗したときに容易に交換することができる。
以上、図面に基づいて説明したように、本実施形態の樹脂製コンテナである下段用コンテナAや上段用コンテナBでは、合成樹脂製の中空構造板18に繊維シート24を貼り付けてなる積層樹脂板材2を用いて形成され、この積層樹脂板材2の一部に、繊維シート24を介して折り曲げ自在となるヒンジ構造34,134が形成されている。これらヒンジ構造34,134は、積層樹脂板材2が有する中空構造板18の一部を押し潰しまたは切除することによって直線状の凹溝部分を形成し、この凹溝部分にある繊維シート24によって、凹溝部分を挟む両側の積層樹脂板材2が折り曲げ自在に連結されたものである。
そのため、これらヒンジ構造34,134においては、ヒンジ部材14,114のような専用部材を別途装着せずとも、一定強度を確保しながら折り曲げ自在な構造を形成することができる。しかも、これらヒンジ構造34,134は構造がシンプルであり、熱罫線加工等を施せばよいだけであるから、余分な段差も生じにくいものとなる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層樹脂板材2は中空構造板18の少なくとも一面側に繊維シート24を貼り付けたものであればよい。積層樹脂板材2が中空構造板18の一面側にだけ繊維シート24を貼り付けた構造である場合には、この中空構造板18を他面側から押し潰しまたは切除して凹溝部分を形成することにより、凹溝部分を挟む両側の積層樹脂板材2を一面側の繊維シート24で折り曲げ自在に連結させることができる。また、積層樹脂板材2は、樹脂シート26で両側からサンドイッチした構造でなくてもよい。
そして、本発明の樹脂製コンテナが、航空機用コンテナに限定されないことも勿論である。
図13、図14には、本発明の他の実施形態の樹脂製コンテナを示している。この樹脂製コンテナは、ヒンジ構造234を用いて四方の側板206を折り畳み、全体を非常にコンパクトに収納可能とした、所謂パレットボックスである。
以下、このパレットボックスの構成について説明するが、上述した航空機用コンテナと同様の構成については、説明を一部省略する。
このパレットボックスは、底板をなすパレット200の上面の外周部分に、平面視矩形状の枠フレーム202を形成している。この枠フレーム202の四隅部分に、それぞれ平面視L字型の支柱204を立設し、隣接する支柱204間に都合四枚の側板206を挟み込むことで、上面の開口したボックス部分が形成される。
そして、このボックス部分の上面開口をふさぐように、蓋板210が被せられる。各支柱204は、側板206の端縁部が着脱自在に嵌合される凹条部208(図14参照)を、互いに直交する方向に開口させた構造である。
各側板206は、航空機用コンテナにおいて用いたものと同様の積層樹脂板材2を用いて形成される。そして、互いに対向する箇所に配置される一対の側板206には、内面側からの熱罫線加工によるヒンジ構造234を、それぞれ一箇所に形成している。
ヒンジ構造234は、既述したヒンジ構造34,134と同様の構造であり、繊維シート24を介して折り曲げ自在となっている。各側板206のヒンジ構造234は、支柱204に隣接した箇所において、この支柱204と平行な一直線のライン状に形成される。
このパレットボックスの折り畳みは、以下のようにして行われる。つまり、図13に示すように、まず図中前方にある一枚の側板206を両側の支柱204から取り外す。そのうえで、図中両側方にある一対の側板206のうち一方を、その側板206に形成したヒンジ構造234を介して内側に折り畳み(図中の矢印c1参照)、次いで、一対の側板206のうち他方を、その側板206に形成したヒンジ構造234を介して内側に折り畳む(図中の矢印c2参照)。
四枚の側板206を上記のようにコンパクトに折り畳んだブロック全体を、図14に示すようにパレット200上の枠フレーム202内に載置し、この枠フレーム202に対して上方から蓋板210を被せることで(図中の矢印c3参照)、このパレットボックスはコンパクトに収納される。
図15、図16には、本発明の更に他の実施形態の樹脂製コンテナを示している。この樹脂製コンテナは、ヒンジ構造334を用いることで四方の側板306をM字型に折り畳み、全体を非常にコンパクトに収納可能とした、所謂パレットボックスである。
このパレットボックスは、底板をなすパレット300の上面の外周部分に、平面視矩形状の枠フレーム302を形成している。この枠フレーム302の内側に、上面及び下面の開口した平面視矩形状の側板ブロック304が立設される。側板ブロック304には、その上面開口をふさぐように、上方から蓋板310が被せられる。
側板ブロック304は、航空機用コンテナにおいて用いたものと同様の積層樹脂板材2を用い、この積層樹脂板材2に、内面側からの熱罫線加工によるヒンジ構造334を多数形成し、これらヒンジ構造334を介して積層樹脂板材2を折り曲げたうえで、折り曲げた端縁308同士を熱溶着させることで、全体が平面視矩形状となるように成形される。
ヒンジ構造334は、既述したヒンジ構造34,134,234と同様の構造であり、繊維シート24を介して折り曲げ自在となっている。側板ブロック304が有する各ヒンジ構造334は、この側板ブロック304が立設された状態において、上下方向に一直線のライン状となるように形成される。
より具体的に述べると、平面視矩形状の四隅部分となる箇所には、それぞれ一対のヒンジ構造334が平行に形成される。そして、隣接する隅部分の中間となる箇所には、さらにM字折り畳み用のヒンジ構造334が形成される。このM字折り畳み用のヒンジ構造334は、平面視矩形状にある側板ブロック304のうち互いに対向する箇所に、一対形成される。
このパレットボックスの折り畳みは、以下のようにして行われる。つまり、図15に矢印d1,d2で示すように、まずM字折り畳み用の一対のヒンジ構造334を、互いに近づく方向に折り畳んでゆく。これにより、図16に示すように、側板ブロック304全体がコンパクトに折り畳まれる。
そして、コンパクトに折り畳まれた側板ブロック304を、図16に矢印d3で示すようにパレット300上の枠フレーム302内に載置し、この枠フレーム302に対して、矢印d4で示すように上方から蓋板310を被せる。これにより、パレットボックスはコンパクトに収納される。
これらパレットボックスにおいても、合成樹脂製の中空構造板18に繊維シート24を貼り付けてなる積層樹脂板材2を用いて形成され、この積層樹脂板材2の一部に、繊維シート24を介して折り曲げ自在となるヒンジ構造234,334が形成されている。これらヒンジ構造234,334は、積層樹脂板材2が有する中空構造板18の一部を押し潰しまたは切除することによって直線状の凹溝部分を形成し、この凹溝部分にある繊維シート24によって、凹溝部分を挟む両側の積層樹脂板材2が折り曲げ自在に連結されたものである。
そのため、これらヒンジ構造234,334においては、ヒンジ状の柱材のような専用部材を別途装着せずとも、破損等を防止できるだけの一定強度を確保しながら折り曲げ自在な構造を形成することができ、収納作業や組立作業も容易である。しかも、これらヒンジ構造234,334は構造がシンプルであり、内側や外側に余分な段差も生じにくいものとなる。
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記各例の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、さらに各例において適宜の設計変更を行うことや、各例の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。