本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
先ず、図1を参照し、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙機構1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
筐体1aは、インクジェットヘッド(以下、単にヘッドと称する)10、給紙機構1c、搬送機構30、画像記録時に用紙Pを支持するプラテン40、ガイド機構25、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、液体受け部材8、除去機構55(図3参照)、昇降機構96(図6参照)、及び、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。なお、カートリッジは、ヘッド10にチューブ(不図示)及びポンプ54(図6参照)を介して接続されている。
ヘッド10は、所定位置に位置決め固定されたラインヘッドであり、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。ヘッド10の下面は、多数の吐出口108(図5参照)が開口した吐出面10aである。画像記録に際して、吐出口108からブラックのインクが吐出される。また、ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aとプラテン40の上面との間に記録に適した所定の間隙が形成されるようヘッド10を保持している。ヘッド10の周囲には環状のキャップ61が配設されている(図2参照)。キャップ61はヘッドホルダ3に取り付けられており、平面視でヘッド10の外周を取り囲む。ヘッド10、及びキャップ61の構成についても後に詳述する。
搬送機構30は、搬送方向に関するプラテン40の両側に配置された搬送ニップローラ31、32等を有しており、用紙Pを吐出面10aと対向する対向領域を経由して搬送する。搬送ニップローラ31、32は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。用紙搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ31によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン40の上面に支持されつつ用紙搬送方向に搬送される。プラテン40の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ32によって搬送力を付与され、プラテン40からさらに用紙搬送方向下流側へと搬送される。
プラテン40は、一対の扉部材41,42からなり、平面視で吐出面10aを挟み且つ吐出面10aに平行な一対の回転軸40aに開閉可能に支持されている。プラテン40は、プラテンモータ43(図6参照)による回転軸40aを中心とする回転によって、水平面に平行であり吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)、及び吐出面10aと対向しないで垂れ下がる非対向位置(図2(b)参照)とを選択的に取り得る。プラテン40は、メンテナンス時は非対向位置を取り、画像記録処理時は対向位置を取る。プラテン40が対向位置に配置されたときには、液体受け部材8は下方(後述する第1の位置)に移動させられる。すなわち吐出面10aとプラテン40との間隔は、吐出面10aと液体受け部材8との間隔よりも小さい間隔となる。対向位置に配置されたときにおいて、プラテン40における吐出面10aに対して対向する上面は、用紙Pを支持する支持面であり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。
ガイド機構25は、搬送機構30を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、3つのガイド26a,26b,26c及び二対の送りローラ対27を有する。当該上流側ガイド部は、給紙機構1cと搬送機構30とを繋ぐ。下流側ガイド部は、3つのガイド28a,28b,28c及び三対の送りローラ対29を有する。当該下流側ガイド部は、搬送機構30と排紙部35とを繋ぐ。
給紙機構1cは、給紙トレイ23及び給紙ローラ24を有する。給紙トレイ23は上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ24は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。ここで、副走査方向とは図1において水平方向に平行な方向であり、且つ、搬送機構30による用紙Pの搬送方向に平行な方向である。また、主走査方向とは、図1において水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
液体受け部材8は、長手方向を主走査方向、短手方向を副走査方向とする矩形状の平板部材である。この液体受け部材8は、ガラス等の硬質材料から構成されている。液体受け部材8は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有しており、後述の排出処理時において吐出口108から排出されたインクを全て受けることが可能に構成されている。また、液体受け部材8は、吐出面10aと対向する対向領域に常に位置されている(吐出面10aと液体受け部材8との間にプラテン40が挟まれる状態も含む)。これにより、プリンタ1を鉛直上方から見たときの、ヘッド10の投影面積と液体受け部材8の投影面積とを合わせた面積を小さくすることができるので、プリンタ1をコンパクト化することができる。
除去機構55は、図3に示すように、ワイパ56a、これを支持する基部56b、及び、ワイパ移動機構57を有している。ワイパ56aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、液体受け部材8の副走査方向幅より若干長い。ワイパ移動機構57は、主走査方向に沿って延設されたガイド58と、ワイパ駆動モータ59(図6参照)とから構成される。基部56bはワイパ駆動モータ59に接続されており、ワイパ駆動モータ59の駆動によって、ガイド58に沿って往復移動する。後述の除去処理において、基部56bは、液体受け部材8が第2の位置(後述する)に移動するのを待った後、主走査方向に沿って移動される。これにより、ワイパ56aが液体受け部材8に接触しながら相対移動する。その結果、液体受け部材8上に存在するインクが払拭されて除去される。なお、本実施形態においては、液体受け部材8上に多量のインクが残存する場合には、ワイパ56aを液体受け部材8に対して一回相対移動させただけでは、液体受け部材8上に存在するインクの量を規定量(後述する)未満にすることができない。従って、この場合には、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量未満になるまで、ワイパ56aの液体受け部材8に対する相対移動が複数回行われる。この除去処理が終了すると、基部56bは、液体受け部材8が第1の位置(後述する)に移動するのを待って、左方の待機位置に戻される。
廃液トレイ85は、液体受け部材8の下方に配置されており、廃液タンク(図示せず)に連通している。また、廃液トレイ85は、主走査方向及び副走査方向に関して液体受け部材8より一回り大きなサイズを有しており、除去処理時において、液体受け部材8から垂れ落ちたインクを受容する。
昇降機構96は、制御部100による制御の下、液体受け部材8の昇降動作を行う。具体的には、昇降機構96は、液体受け部材8を、第1の位置、第2の位置、及び第3の位置に選択的に移動させる。ここで、第1の位置とは、図2(a)に示すように、後述の画像記録処理時において液体受け部材8が配置される位置である。第2の位置とは、図3(b)に示すように、第1の位置よりも上方の位置であり、第1の位置と比べて吐出面10aとの間隔が狭い位置である。除去処理は、液体受け部材8が第2の位置に配置されているときに行われる。なお、液体受け部材8が第2の位置に配置されているときには、ヘッド10と液体受け部材8との間の空間を、ワイパ56a及び基部56bが移動可能である(図3(b)参照)。第3の位置とは、図2(b),(c)に示すように、第2の位置よりも上方の位置である。液体受け部材8がこの第3の位置に配置されている際において、キャップ61の後述の可動体63を下降させると、当該キャップ61の先端61aと液体受け部材8とが当接されて、吐出空間S1を外部空間S2から隔離することができる(図2(c)参照)。また、後述の排出処理は、液体受け部材8が第3の位置に配置されているときに行われる。
制御部100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御部100は、インターフェース50(図6参照)を介して外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された印字指令を受信する受信処理を行う。そして、この受信処理により受信した印字指令に基づいて、画像記録処理を行う。制御部100は、画像記録処理においては、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。制御部100の搬送動作によって給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、ガイド26a,26b,26cによりガイドされ、且つ送りローラ対27によって挟持されつつ搬送機構30へと送られる。搬送機構30は、用紙Pを吐出面10aと対向する対向領域(ヘッド10とプラテン40との間)に送り出す。そして、搬送機構30により対向領域に送られた用紙Pに対して、順に吐出口108からインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。この吐出口108からのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド28a,28b,28cによりガイドされ且つ送りローラ対29によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
また、制御部100は、ヘッド10のインク吐出特性の維持・回復のためのメンテナンスを行う。メンテナンスとしては、排出処理、除去処理、キャッピング処理等が含まれる。排出処理は、吐出口108からインクを排出させる処理である。本実施形態において、排出処理は、ヘッド10の一部又は全アクチュエータ(詳細は図4を用いて後述)を駆動することにより一部又は全吐出口108からインクを強制的に吐出させるフラッシングである。なお、本実施形態では、画像記録処理中に吐出口108に付着した紙粉の除去、及び、画像記録処理中の不吐出期間が長い吐出口108内において、乾燥により増粘したインクを当該吐出口108から排出する等の目的から、画像記録処理後にフラッシングを行う。また、この画像記録処理後のフラッシングは、画像記録処理後に最初に実行される除去処理よりも前に実行される。変形例として、画像記録処理後において、液体受け部材8上に多量のインクが存在しており、排出処理を実行すると液体受け部材8からインクが溢れて装置内を汚す虞がある場合には、除去処理を排出処理よりも前に実行してもよい。
除去処理は、除去機構55を制御することにより、液体受け部材8上に存在するインクを除去する処理である。なお、本実施形態においては、除去処理を、受信処理により印字指令を受信した後、当該印字指令に基づく画像記録処理が実行されるまでの間に実行する場合には、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満となるまで行う。それ以外のときに除去処理を実行する場合には、液体受け部材8上に存在するインクの量が上記所定量未満よりも少ない規定量未満となるまで行う。ここで、「規定量」とは、キャッピング処理を実行するときに液体受け部材8上に存在することが許容される最大のインク量である。また、本実施形態においては、図3(b)に示すように、除去処理を実行する際には、ワイパ56a及び基部56bが吐出面10aと対向する対向領域に配置される。このため、プリンタ1は構造的に、画像記録処理と除去処理を同時に実行することができない。
キャッピング処理は、図2(c)に示すように、キャップ61、吐出面10a、及び液体受け部材8により、吐出面10aと対向する空間(以下、吐出空間S1)を外部空間S2から隔離する処理である。これにより、ヘッド10の吐出口108内のインクの乾燥が抑制される。なお、キャッピング処理は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
次に、図4及び図5を参照して、ヘッド10について説明する。図5(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド10は、図4に示すように、流路ユニット9の上面9aに8つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。上面9aには、圧力室110が開口している。アクチュエータユニット21は、図5(b)に示すように、この開口を封止し、圧力室110の側壁を構成する。流路ユニット9は、図5(b)に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の内部には、インク流路が形成されている。インク流路は、上面のインク供給口105bを一端とし、副マニホールド流路105aに分岐するマニホールド流路105、及び、副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て下面の吐出口108に至る個別インク流路を含む。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図4に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に沿って配置されている。アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、図5(c)に示すように、3枚の圧電層136〜138から構成されている。最上層の圧電層136は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。そして、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、個別のユニモルフ型アクチュエータとして働く。個別電極135及び共通電極134間に分極方向の電界が生じると、アクチュエータ部分が圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。このとき、圧力室内のインクが加圧され、吐出口108からインク滴が吐出される。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。また、駆動信号は、個別電極135に選択的に供給される。
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。個別電極135は、予め所定の電位にあり、アクチュエータはユニモルフ変形している。駆動信号が供給されると、個別電極135は、一旦共通電極134と同電位となり、所定時間後に所定電位に復帰する。同電位となるタイミングで、アクチュエータがユニモルフ変形を解消して、圧力室110にインクが吸い込まれる。電位の復帰タイミングで、アクチュエータが再びユニモルフ変形して、吐出口108からインク滴が吐出される。本実施形態においては、アクチュエータが本発明の排出機構に相当する。
次に、図2(c)及び図4を参照し、ヘッドホルダ3、及びキャップ61の構成について説明する。ヘッドホルダ3は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド10の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ3には、キャップ61が取り付けられている。
キャップ61は、弾性体62及び可動体63を有している。弾性体62は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド10を囲んでいる。弾性体62は、図2(c)に示すように、基部62x、基部62xの下面から突出した突出部62a、ヘッドホルダ3に固定された固定部62c、及び、基部62xと固定部62cとを接続する接続部62dを含む。このうち、突出部62aは、断面が三角形である。また、固定部62cは断面がT字状である。固定部62cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ3に固定されている。接続部62dは、固定部62cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部62xの下側側面に接続している。接続部62dは、可動体63の昇降に伴って変形する。基部62xの上面には、凹部62bが形成されており、可動体63の下端と嵌合している。
可動体63は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド10の外周を取り囲んでいる。可動体63は、弾性体62に支持されて、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体63は、複数のギア64と接続されている。制御部100による制御の下、昇降モータ60(図6参照)が駆動されると、ギア64が回転して可動体63が昇降する。このとき、基部62xも、共に昇降する。これにより、突出部62aの先端61aと吐出面10aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
突出部62aは、液体受け部材8が第3の位置(図2(b)参照)に配置されているときにおいて、可動体63の昇降に伴って、先端61aが液体受け部材8に当接する当接位置(図2(c)参照)と、液体受け部材8から離隔した離隔位置(図2(b)参照)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が、外部空間S2に対して隔離された封止状態となる。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態となる。
次に、図6を参照しつつ、制御部100について詳細に説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え不能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図6に示すように、制御部100は、受信部141、画像記録部142、メンテナンス制御部143、判断部144、相関記憶部145、排出量決定部146、及び履歴記憶部147を有している。
受信部141は、インターフェース50を介して外部装置から印字指令を受信する受信処理を行う。なお、印字指令には、用紙Pに記録すべき画像データが含まれている。画像記録部142は、受信部141が受信した印字指令に基づいて、用紙Pに画像を記録する画像記録処理を行う。具体的には、画像記録部142は、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙機構1c、ガイド機構25、及び、搬送機構30の各動作を制御する。また、画像記録部142は、印字指令に含まれる画像データに基づいて、吐出面10aと対向する対向領域に搬送された用紙Pに向けてインクが吐出されるようヘッド10(アクチュエータ)を制御する。
メンテナンス制御部143は、排出処理、除去処理、及び、キャッピング処理等のメンテナンスにおいて、ヘッド10(アクチュエータ)、ポンプ54、プラテンモータ43、ワイパ駆動モータ59、昇降モータ60、及び、昇降機構96を制御する。
ところで、受信部141が印字指令を受信した後、画像記録部142が当該印字指示に基づく画像記録処理を開始するまでの間において、メンテナンス制御部143が除去処理を実行すると、画像記録処理を開始するまでの時間が長くなりユーザを長時間待たせることになる。一方、液体受け部材8上に所定量以上のインクが存在し、且つその粘度が所定値以上であるときに除去処理を実行すると、インクを容易に除去することができず、また、ワイパ56aの故障等の支障を来す虞がある。そこで、本実施形態においては、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上、且つその粘度が所定値以上となる前に除去処理が実行され、且つ、画像記録処理を開始するまでの時間を出来るだけ短くすることができるように、判断部144が画像記録処理及び除去処理の実行する順序を決定する。以下、判断部144について詳述する。
判断部144は、まず、受信部141が印字指令を受信すると、当該印字指令に基づく画像記録処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理を行う。ここで、「印字指令に基づく画像記録処理の実行が開始されるとき液体受け部材8上に存在するインクの量」とは、受信部141が印字指令を受信した後から画像記録処理の実行を開始するまでの間において除去処理を実行しなかった場合の、当該画像記録処理の実行を開始するときに液体受け部材8上に存在するインクの量である。本実施形態においては、判断処理が行われるときから画像記録処理が行われるときまでの間においては、排出処理が行われないように構成されている。即ち、受信部141が印字指令を受信した後から画像記録処理の実行を開始するまでの間において除去処理を実行しなかった場合の、画像記録処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量は、液体受け部材8上に現在(判断処理時を指す)存在しているインクの量と略一致する。従って、判断部144は、判断処理において、液体受け部材8上に現在存在しているインクの量が所定量以上であるか否かを判断する。なお、この液体受け部材8上に現在存在しているインクの量は、履歴記憶部147に記憶されている過去の排出処理の内容(排出されたインク量や、排出処理が実行された時刻など)や除去処理の内容(ワイパ56aが液体受け部材8に対して相対移動した回数や、除去処理が実行された時刻など)に基づいて推測により取得される。変形例として、液体受け部材8上に現在存在しているインクの量をセンサ等の検出手段を用いて実測により取得してもよい。
また、「所定量」とは、液体受け部材8上に存在するインクの粘度が筐体1a内の環境下において取り得る最大の粘度である場合において、排出処理により当該インクの粘度を上述の所定値にするのに必要なインクの量(以下、必要排出量とも称す)を排出すれば、ワイプを行うタイミングまでに当該インクの粘度が上述の所定値
となるときの、液体受け部材8上に存在するインクの量である。所定量を超えたインクが筐体1a内の環境下において取り得る最大の粘度となった場合、仮に必要排出量のインクを排出しても、ワイプを行うタイミングまでに当該インクの粘度が上述の所定値にはならない。これは、粘度の高いインク量が多くなるにつれて、単位量当りの表面積が小さくなるため、必要排出量のインクを排出した後、インクの粘度が上述の所定値となるために要する時間が長くなるためであると考えられる。換言すれば、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であれば、当該液体受け部材8上に存在するインクの粘度が筐体1a内の環境下において取り得る最大の粘度であったとしても、排出処理において吐出口108から特定量のインクを排出することにより、液体受け部材8上に存在するインクの粘度を所定値未満にすることができる。本実施形態においては、この「特定量」は、後述する基準排出量が取り得る最大の量よりも若干大きい値に設定されている。
判断部144は、上記判断処理で液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であると判断したときには、画像記録処理を除去処理よりも前に実行すると決定する。一方、上記判断処理で液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断した場合には第1時間算出処理、第2時間算出処理、及び第2判断処理を行う。第1時間算出処理は、画像記録処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの粘度が所定値となるまでの第1時間を算出する処理である。具体的には、判断部144は、筐体1a内の温度及び湿度を検出する環境センサ51(図6参照)の検出結果、並びに受信部141が受信した印字指令に基づく画像記録処理の実行が開始されるときに存在するインクの粘度に基づいて第1時間を算出する。このように筐体1a内の温度及び湿度、並びに画像記録処理が開始されるときに存在するインクの粘度を用いることで、第1時間を正確に算出することができる。変形例として、画像記録処理が開始されるときに存在するインクの粘度、並びに、筐体1a内の温度及び湿度の何れか一方のみを用いて第1時間を算出してもよい。
第2時間算出処理は、受信部141が受信した印字指令に基づく画像記録処理を実行した後、除去処理が実行可能となるまでの第2時間を算出する処理である。この第2時間は、受信部141が受信した印字指令に基づく画像記録処理の実行時間と、画像記録処理を実行しているときの状態から除去処理を実行可能な状態に移行する移行時間とを加算した時間である。本実施形態においては、移行時間は、プラテン40を対向位置から非対向位置に移動させる時間と、液体受け部材8を第1の位置から第2の位置に移動させる時間とを加算した時間である。
第2判断処理は、第1時間算出処理により算出された第1時間が、第2時間算出処理により算出された第2時間よりも長いか否かを判断する処理である。ここで、第1時間が第2時間よりも長い場合には、画像記録処理を除去処理よりも前に実行したとしても、除去処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの粘度は所定値未満であるため、液体受け部材8上に存在するインクを容易に除去することができる。そこで、判断部144は、第1時間が第2時間よりも長い場合には、画像記録処理を除去処理よりも前に実行すると決定する。
一方、第1時間が第2時間よりも長くはない場合には、画像記録処理を除去処理よりも前に実行すると、除去処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの粘度は所定値以上であるため、液体受け部材8上に存在するインクを容易に除去することができない。そこで、判断部144は、第1時間が第2時間よりも長くはない場合には除去処理を画像記録処理よりも前に実行すると決定する。
相関記憶部145は、液体受け部材8上に存在するインクの量、及びその粘度それぞれの組合せと、インクの粘度を所定値未満にするのに必要なインクの量(必要排出量)との関係を記憶している。この関係は、テーブルで記憶していてもよいし、算出式によって記憶していてもよい。排出量決定部146は、相関記憶部145を参照して、画像記録処理が液体受け部材8上に存在するインクの量が上記所定量よりも少なく、且つ規定量以上である状態で実行されたときの、当該画像記録処理後に実行されるフラッシングにおいて、吐出口108から排出させるインクの量(以下、フラッシング量)を決定する。ここで、排出量決定部146は、フラッシング量が必要排出量以上となるように決定する。履歴記憶部147は、メンテナンス制御部143により実行された排出処理の内容、及びメンテナンス制御部143により実行された除去処理の内容を記憶する。
次に、制御部100の動作の一例について、図7を参照しつつ説明する。なお、図7の動作フローの開始時において液体受け部材8上に存在するインクの量は規定量未満である。
まず、受信部141が、インターフェース50から印字指令を受信すると(A1)、画像記録部142が、当該印字指令に基づいた画像記録処理を実行する(A2)。画像記録処理が終了すると、メンテナンス制御部143は、プラテン40が非対向位置に移動され、且つ液体受け部材8が第2の位置に移動されるように、プラテンモータ43及び昇降機構96を制御する。その後、メンテナンス制御部143は、ステップA2の画像記録処理の内容に応じて決定される基準排出量のインクを吐出口108から排出するフラッシングが実行されるようにヘッド10を制御する(A3)。
次に、受信部141が、インターフェース50から新たな印字指令を受信したか否かを判断する(A4)。受信部141が新たな印字指令を受信していないと判断した場合(A4:NO)には、メンテナンス制御部143が、液体受け部材8が第2の位置に配置されているときには当該第2の位置に維持されるように昇降機構96を制御する。そして、メンテナンス制御部143は、除去処理を実行すべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、図3(b)に示すように、ワイパ56aを液体受け部材8に対して一回相対移動させる(A5)。これにより、液体受け部材8上に存在するインクが除去される。
次に、メンテナンス制御部143は、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量以上であるか否かを判断する(A6)。規定量以上であると判断した場合(A6:YES)には、ステップA4の処理に戻る。一方、規定量未満であると判断した場合(A6:NO)には、除去処理を終了し、ステップA7の処理に移る。このように、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量未満になるまで除去処理を行うことで、次回以降の排出処理によって液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上となる可能性を低くすることができる。その結果、画像記録処理を除去処理よりも前に行うことができる可能性を高くすることができるので、画像記録処理を開始するまでの時間を短くすることができる。
ステップA7の処理では、メンテナンス制御部143は、キャッピング処理を実行すべく、液体受け部材8が第3の位置に移動されるように昇降機構96を制御し、その後、昇降モータ60を制御して、可動体63を下降させ、キャップ61の先端61aを液体受け部材8に当接させる。これにより、吐出空間S1は、吐出面10a、液体受け部材8及びキャップ61により外部空間S2から隔離されることになり、吐出口108近傍のインクが蒸発して粘性が増加することを抑制できる。ステップA7の処理が終了すると、本処理動作を終了する。
一方、ステップA4の処理において、受信部141が新たな印字指令を受信したと判断した場合(A4:YES)には、判断部144が、当該印字指令に基づく画像記録処理が画像記録部142により開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理を行う(A8)。判断処理において液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であると判断した場合(A8:NO)には、判断部144は、画像記録処理を除去処理よりも前に実行すると決定して、ステップA14の処理に移る。
一方、判断処理において液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断した場合(A8:YES)には、判断部144は、第1時間算出処理、及び第2時間算出処理を実行する。そして、判断部144は、第1時間算出処理により算出された第1時間が、第2時間算出処理により算出された第2時間よりも長いか否かを判断する第2判断処理を行う(A9)。
第1時間が第2時間よりも長いと判断した場合(A9:YES)には、判断部144は画像記録処理を除去処理よりも前に実行すると決定する。そして、メンテナンス制御部143は、液体受け部材8が第1の位置に移動され、プラテン40が対向位置に移動されるようにプラテンモータ43、及び昇降機構96を制御する。そして、画像記録部142が、ステップA4の処理において受信部141が受信した印字指令に基づいた画像記録処理を実行する(A10)。
ステップA10の画像記録処理が終了すると、メンテナンス制御部143はプラテン40が非対向位置に移動されるようにプラテンモータ43、及び昇降機構96を制御する。なお、ステップA10において液体受け部材8は第1の位置に配置されているので、ステップA10において移動させる必要はない。そして、ステップA10の画像記録処理の内容に応じて決定される基準排出量のインクを吐出口108から排出するフラッシングが実行されるようにヘッド10を制御し(A11)、ステップA4の処理に戻る。
一方、ステップA9の処理において、第1時間が第2時間よりも長くはないと判断した場合(A9:NO)には、判断部144は、除去処理を画像記録処理よりも前に実行すると決定する。そして、メンテナンス制御部143が、液体受け部材8が第1の位置に配置されているときは第2の位置に移動されるように、液体受け部材8が第2の位置に配置されているときには当該第2の位置に維持されるように昇降機構96を制御する。次に、メンテナンス制御部143は、ワイパ駆動モータ59を制御して、ワイパ56aを液体受け部材8に対して一回相対移動させる(A12)。次に、メンテナンス制御部143は、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるか否かを判断する(A13)。インクの量が所定量以上であると判断した場合(A13:YES)には、除去処理を続行すべく、ステップA12の処理に戻る。一方、インクの量が所定量未満であると判断した場合(A13:NO)には、画像記録処理を実行すべくステップA14の処理に移る。このように画像記録処理前に実行する除去処理においては、最低限必要なインクの量だけ、液体受け部材8上からインクを除去するようにすることで、除去処理に要する時間を短くすることができる。その結果、画像記録処理までの時間を短くすることができる。
ステップA14では、排出量決定部146が、後で図8を参照して説明する排出量決定処理を行う。この排出量決定処理では、画像記録処理後に実行される排出処理において、吐出口108から排出させるフラッシング量が決定される。
次に、メンテナンス制御部143が、液体受け部材8が第3の位置に移動され、プラテン40が対向位置に移動されるようにプラテンモータ43、及び昇降機構96を制御する。その後、画像記録部142が、ステップA4の処理において受信部141が受信した印字指令に基づいた画像記録処理を実行する(A15)。次に、メンテナンス制御部143は、液体受け部材8が第1の位置に移動され、プラテン40が非対向位置に移動されるように、プラテンモータ43、及び昇降機構96を制御する。その後、メンテナンス制御部143は、ステップA14の排出量決定処理により決定されたフラッシング量のインクを吐出口108から排出するフラッシングを実行すべくヘッド10を制御する(A16)。これにより、液体受け部材8上に存在するインクの粘度を所定値未満に下げることができるので、この後に実行される除去処理において、液体受け部材8上に存在するインクを容易に除去することができる。このステップA16の処理が終了すると、ステップA4の処理に戻る。以上、制御部100の動作について説明した。
次に、図8を参照して排出量決定処理について説明する。まず、排出量決定部146が、ステップA4の処理において受信部141が受信した印字指令に基づいた画像記録処理の内容に応じて決定される基準排出量を算出する(B1)。次に、排出量決定部146が、この画像記録処理後において、液体受け部材8上に存在するインクの量、及びその粘度を算出する(B2)。次に、排出量決定部146は、相関記憶部145を参照して、当該液体受け部材8上に存在するインクの量、及びその粘度の組合せに対応する必要排出量を取得する(B3)。
次に、排出量決定部146は、基準排出量が必要排出量以上か否かを判断する(B4)。基準排出量が必要排出量以上と判断した場合(B4:YES)には、排出量決定部146は、フラッシング量を基準排出量に決定(B5)して、本処理を終了する。一方、基準排出量が必要排出量未満と判断した場合(B4:NO)には、排出量決定部146は、フラッシング量を必要排出量に決定(B6)して、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満の場合、及び液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であり、且つ第1時間が第2時間よりも長い場合には、画像記録処理を除去処理よりも前に実行することで、画像記録を開始するまでの時間を短くすることができる。また、除去処理の実行するときに液体受け部材8上に存在するインクの量は所定量未満、又はインクの粘度が所定値未満であるため、除去処理においてインクを容易に除去することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図9を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、メンテナンス制御部143が、除去処理の実行を開始する前に、当該除去処理において液体受け部材8上に存在するインクの量を規定量未満にするのに必要な、ワイパ56aの液体受け部材8に対する相対移動の回数(以下、必要ワイプ回数)を決定する点である。また、本実施形態においては、液体受け部材8上に存在するインクの量如何に拘わらず、ワイパ56aを液体受け部材8に対して一回相対移動させると、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満とすることができるよう、ワイパ56aの構造や相対移動の速度等が設定されている。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
本実施形態において、履歴記憶部147は、メンテナンス制御部143により決定された必要ワイプ回数と、メンテナンス制御部143によりワイパ56aを液体受け部材8に対して相対移動させた回数(以下、実行ワイプ回数)をさらに記憶する。そして、判断部144は、判断処理において、履歴記憶部147に記憶されている実行ワイプ回数が1以上である場合には画像記録処理が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であると判断し、実行ワイプ回数が零である場合には液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断する。
次に、制御部100の動作の一例について、図9を参照しつつ説明する。まず、第1実施形態のステップA1〜ステップA3と同様のステップC1〜ステップC3の処理が行われる。次に、ステップC4の処理において、メンテナンス制御部143は、履歴記憶部147に記憶されている排出処理の内容、及び除去処理の内容に基づいて、液体受け部材8上に存在するインクの量を算出し、当該算出したインクの量に基づいて必要ワイプ回数を決定する。また、履歴記憶部147は、メンテナンス制御部143により決定された必要ワイプ回数を記憶し、且つ、記憶されている実行ワイプ回数を零に初期化する。
次に、第1実施形態のステップA4〜ステップA5と同様のステップC5〜ステップC6の処理が行われる。ステップC6の処理が終了すると、履歴記憶部147は、記憶されている実行ワイプ回数に1加算する(C7)。次に、メンテナンス制御部143が、履歴記憶部147に記憶されている実行ワイプ回数が必要ワイプ回数に到達したか否かを判断する(C8)。実行ワイプ回数が必要ワイプ回数に到達していないと判断した場合(C8:NO)には、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量以上であるとして、ステップC5の処理に戻る。一方、実行ワイプ回数が必要ワイプ回数に到達したと判断した場合(C8:YES)には、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量未満になったとして、第1実施形態のステップA7と同様のステップC9の処理をして、本処理動作を終了する。
また、ステップC5の処理において、受信部141が新たな印字指令を受信したと判断した場合(C5:YES)には、判断部144が、履歴記憶部147に記憶されている実行ワイプ回数が零であるか否かを判断することで判断処理を実行する(C10)。そして、実行ワイプ回数が零であると判断した場合(C10:YES)には、画像記録処理が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるとして、ステップC11の処理に移る。一方、実行ワイプ回数が1以上であると判断した場合(C10:NO)には、画像記録処理が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であるとして、ステップC15の処理に移る。ステップC11〜ステップC14の処理は、第1実施形態のステップA9〜A12の処理と同様である。ステップC14の処理が終了すると、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満になったとして、ステップC15の処理に移る。ステップC15〜ステップC17の処理は、第1実施形態のステップA14〜A16の処理と同様である。
ステップC13及びステップC17の処理が終了すると、ステップC18の処理に移る。ステップC18の処理では、メンテナンス制御部143は、履歴記憶部147に記憶されている排出処理の内容、及び除去処理の内容に基づいて、液体受け部材8上に存在するインクの量を算出し、当該算出したインクの量に基づいて必要ワイプ回数を決定する。また、履歴記憶部147は、メンテナンス制御部143により決定された必要ワイプ回数を記憶し、且つ、記憶されている実行ワイプ回数を零に初期化する。このステップC18の処理が終了すると、ステップC5の処理に移る。以上、第2実施形態に係る制御部100の動作フローについて説明した。
以上、本実施形態のプリンタ1によると、判断部144は、履歴記憶部147に記憶されている実行ワイプ回数に応じて液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上か否かを判断することができるので、判断処理の内容を簡易化することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図10を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、メンテナンス制御部143が、キャッピング処理後に画像記録処理を開始するときにおいても、フラッシングを行う点である。また、判断部144が、判断処理において画像記録処理の実行が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断した場合には、一律に除去処理よりも前に画像記録処理を実行すると決定する点で異なる。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
本実施形態に係る制御部100の動作の一例について、図10を参照しつつ説明する。なお、図10の動作フローの開始時における状態は、メンテナンス制御部143によりキャッピング処理が行われている状態である。即ち、液体受け部材8が第3の位置に配置されており、プラテン40は対向位置に配置されており、キャップ61の先端61aが液体受け部材8に当接されている状態である。
まず、受信部141が、インターフェース50から印字指令を受信すると(D1)、メンテナンス制御部143は、昇降モータ60を制御して、可動体63を上昇させ、キャップ61の先端61aを液体受け部材8から離隔させる(D2)。これにより、吐出空間S1は外部空間S2に開放される。次に、メンテナンス制御部143は、フラッシングを実行すべく、ヘッド10を制御する(D3)。このフラッシングにより排出させるインクの量は、キャッピング処理の処理時間(吐出空間S1が外部空間S2から隔離されている時間)に基づいて決定される。このステップD3の処理が終了すると、判断部144が、ステップD1で受信した印字指令に基づく画像記録処理が開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるか否かを判断する判断処理を行う(D4)。判断処理において液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断した場合(D4:YES)には、判断部144は、除去処理を画像記録処理よりも前に実行すると決定する。そして、メンテナンス制御部143が、液体受け部材8が第2の位置に移動されるように昇降機構96を制御した後、除去処理を実行すべく、ワイパ駆動モータ59を制御する(D5)。この除去処理は、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満(D4:YES)となるまで実行される。
ステップD4の判断処理において、判断部144が液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量未満であると判断した場合(D4:NO)には、ステップD6の処理に移る。ステップD6〜ステップD8の処理は、第1実施形態のステップA14〜ステップA16の処理と同様である。ステップD8の処理が終了すると、メンテナンス制御部143は液体受け部材8が第2の位置に移動されるように昇降機構96を制御する。そして、メンテナンス制御部143は、除去処理を実行すべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、ワイパ56aを液体受け部材8に対して相対移動させる(D9)。この除去処理では、液体受け部材8上に存在するインクの量が規定量未満となるまで実行される。次に、メンテナンス制御部143は、キャッピング処理を実行すべく、液体受け部材8が第3の位置に移動されるように昇降機構96を制御し、その後、昇降モータ60を制御して、可動体63を下降させ、キャップ61の先端61aを液体受け部材8に当接させる(D10)。このステップD10の処理が終了すると、本処理動作を終了する。
以上、本実施形態のプリンタ1によると、判断部144は、判断処理に置いて画像記録処理が画像記録部142により開始されるときに液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であると判断した場合には、一律に画像記録処理よりも前に除去処理を実行すると決定するので、制御内容を簡易化することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。従って、本発明の技術思想の範囲内において、上述の実施形態を組み合わせたり、一部の構成を変更したりしてもよい。例えば、上述の実施形態においては、キャップ61の先端61aが昇降可能にされていたが、これに限定されない。例えば、キャップ61の先端61aが移動不能にヘッドホルダに固定され、キャップ61の先端61aの吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、液体受け部材8が当接位置に配置されたとき、キャップ61の先端61aと液体受け部材8が当接されるように構成されていればよい。
また、排出処理が、判断処理が行われるときから画像記録処理が行われるときまでの間に行うことが可能に構成されていてもよい。この場合、判断部144は、判断処理において、液体受け部材8上に現在存在しているインクの量に、排出処理により排出されるインクの量を加算した値が所定量以上か否かを判断すればよい。
また、上述の実施形態においては印字指令に画像データが含まれているが、含まれていなくてもよい。即ち、制御部100が、外部装置から先に画像データを受信し、その後、当該画像データの用紙Pへの記録を指示する印字指令を、インターフェース50を介して受信した時に、画像記録処理を開始するように構成されていてもよい。この場合、プリンタ1において、印字指令を受信するインターフェース50が、画像データを受信するインターフェースと異なっていてもよい。例えば、印字指令を受信するインターフェース50が、プリンタ1に設けられたタッチパネルを用いたユーザインターフェースであってもよい。これによると、ユーザがタッチパネルを操作することで、印字指令を受信部141に出力させることができる。
また、上述の実施形態では、排出処理はフラッシングであるが、ポンプ54(図6参照)によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口108からインクを強制的に排出するパージであってもよい。この場合、ポンプ54が本発明の排出機構に相当する。
また、インクジェットプリンタは、画像記録処理と除去処理を構造的には同時に実行することが可能なインクジェットプリンタであってもよい。このようなインクジェットプリンタでは、画像記録処理と除去処理を同時に実行すると電力的な負荷が大きくなる。そのため、これを回避するように制御するインクジェットプリンタにおいても本発明を適用することができる。
また、除去機構は、液体受け部材8上に存在するインクを除去することができるものであれば、その他様々な手段を用いてよい。
また、上述の排出量決定処理を行わずに、画像記録処理後に実行される排出処理において吐出口108から排出させるインクの排出量が基準排出量とされていてもよい。この場合、判断部144は、基準排出量を特定量として、液体受け部材8上に存在するインクの量が所定量以上であるか否かを判断すればよい。またさらに、画像記録処理後に実行される排出処理各々において吐出口108から排出させるインクの排出量を、基準排出量に一定の量を一律に加算した値としてもよい。
本発明は、シリアル式のインクジェットプリンタにも適用することができる。さらには、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。