以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.印刷装置の基本構成、インクカートリッジ
図1は、本実施形態における印刷装置(液体消費装置)の要部を示す斜視図である。図1には、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向を示す。印刷装置の通常の使用姿勢において、印刷装置の正面方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とする。例えばX方向を例にとると、矢印の向く方向を+X方向(又は単にX方向)と呼び、その反対方向を−X方向と呼ぶ。
図1の印刷装置は、インクカートリッジIC1〜IC4(液体容器)と、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能に収容するホルダー21を備えるキャリッジ20と、ケーブル30と、紙送りモーター40と、キャリッジモーター50と、キャリッジ駆動ベルト55と、検出部80を含む。なお、ホルダー21とキャリッジ20は一体の部材として形成されてもよいし、別体の部材として形成されてキャリッジ20にホルダー21が組み付けられてもよい。
インクカートリッジIC1〜IC4には、それぞれ一色ずつのインク(液体、印刷材)が収容される。ホルダー21には、インクカートリッジIC1〜IC4が着脱可能に装着される。キャリッジ20の−Z方向の面には、ヘッドが設けられている。インクカートリッジIC1〜IC4から供給されるインクは、ヘッドから記録媒体に向かって吐出される。記録媒体は、例えば印刷紙である。キャリッジ20は、ケーブル30により制御部(後述する図3の制御部100)に接続されており、このケーブル30を介して制御部により吐出制御が行われる。紙送りモーター40は、紙送りローラー(図3の紙送りローラー45)を回転駆動し、図1に示すX方向に印刷紙を送る。キャリッジモーター50は、キャリッジ駆動ベルト55を駆動し、キャリッジ20を±Y方向に移動させる。これらの吐出や紙送り、キャリッジ20の移動を制御部が制御することにより印刷動作が行われる。
なお以下では、キャリッジ20を移動させる±Y方向を「主走査方向」と呼び、印刷紙を紙送りするX方向を「副走査方向」と呼ぶ。
検出部80は、インクカートリッジIC1〜IC4のインク残存状態を検出するための信号を出力する。具体的には、検出部80は、インクカートリッジIC1〜IC4に設けられたプリズム(後述する図2のプリズム320)へ光を照射する発光部82(発光素子)と、プリズムからの反射光を受光して電気信号に変換する受光部84(受光素子)と、を含む。例えば、発光部82はLED(Light Emission Diode)により構成され、受光部84はフォトトランジスターにより構成される。検出部80の詳細な構成については図18で後述する。
図2は、インクカートリッジIC1〜IC4の要部を示す斜視図である。図2に示すインクカートリッジICは、図1のインクカートリッジIC1〜IC4の各インクカートリッジに対応する。
インクカートリッジICは、インクを収容する直方体(略直方体を含む)のインク収容部300と、回路基板350(基板)と、インクカートリッジICをホルダー21に着脱するためのレバー340と、ヘッドにインクを供給するインク供給口330と、インクカートリッジICの底面310に設けられたプリズム320と、を含む。回路基板350の裏面には、インクカートリッジICに関する情報を記憶する記憶装置352が実装されている。回路基板350の表面には、記憶装置352に電気的に接続される複数の端子354が配置されている。これらの複数の端子354は、インクカートリッジICがホルダー21に装着された時に、ホルダー21に設けられた複数の本体側端子を介して、本体側の制御部(図3の制御部100)に電気的に接続される。記憶装置352としては、例えばEEPROM等の不揮発性メモリーを用いることができる。
プリズム320は、発光部82からの光に対して透明な部材で構成され、例えばポリプロピレンにより構成される。プリズム320は、発光部82からの光が入射する入射面が、インクカートリッジICの底面310に露出するように設けられる。底面310は、図1のホルダー21にインクカートリッジICが装着された場合に−Z方向側に向く面であり、ホルダー21には、発光部82からの光をプリズム320の入射面に入射させるための開口が設けられている。即ち、ホルダー21を備えたキャリッジ20が図1の主走査方向(±Y方向)に移動すると、インクカートリッジIC1〜IC4が、順次、検出部80の上(+Z方向)を通過し、各インクカートリッジのプリズム320からの反射光が受光部84により受光される。そして、検出部80は、受光部84の受光結果を、キャリッジ20の位置に対応したセンサー出力信号(受光結果信号)として出力する。本実施形態では、このキャリッジ20の位置に対応したセンサー出力信号に基づいて、各インクカートリッジのインクニアエンドを検出する。
ここで、インクニアエンドとは、インク収容部300に収容されたインクの残量や液面レベルが所定値以下となり、インクカートリッジICのインク量が残り少ない状態のことである。例えば、インクニアエンドが検出された後に印刷を継続し、図3で後述する残量推定部160が推定するインク消費量が所定の量を超えた場合に、ヘッドがインクを吐出しない空打ち状態となる可能性のある状態である。
2.印刷装置の詳細な構成
図3に、本実施形態における印刷装置の詳細な構成例を示す。図3では、第1の方向D1を主走査方向とし、第1の方向D1に直交する第2の方向D2を副走査方向とする。なお以下では、検出部80が出力する受光結果信号が、図18で後述するように電圧信号(以下では検出電圧と呼ぶ)である場合を例に説明する。
図3の印刷装置200は、インクカートリッジIC1〜IC4と、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能に保持するホルダー21を備えるキャリッジ20と、紙送りモーター40と、紙送りローラー45と、キャリッジモーター50と、キャリッジ駆動ベルト55と、A/D変換部70と、検出部80と、制御部100と、表示部210と、インターフェース部220と、を含む。なお、図1で説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
A/D変換部70は、検出部80からの検出電圧をA/D変換し、そのA/D変換後のデジタル信号を制御部100へ出力する。具体的には、A/D変換部70は、例えばロータリーエンコーダーのカウント値や制御部100を構成するCPUの割り込み周期等に応じた所定の位置間隔で、検出電圧をサンプリングし、複数個のサンプリング電圧を取得する。例えば、1個のカートリッジが検出部80の上を通過するときに、数10個のサンプリング電圧を取得する。
制御部100は、インターフェース部220を介してパーソナルコンピューター250から画像データを受信し、その画像を印刷紙PAに印刷する制御を行う。制御部100は、駆動制御部105、位置補正部110、残存判定部130、発光量決定部140、閾値決定部150、残量推定部160を含む。制御部100は、例えばCPUを有し、不図示のROMに記憶された制御プログラムを不図示のRAMに展開し、そのRAMに展開された制御プログラムをCPUが実行することで制御部100の各部として動作する。
駆動制御部105は、印刷装置200の駆動部の制御を行う。具体的には、駆動部であるキャリッジモーター50の制御を行う。例えば制御部100が有する不図示のテーブルデータ記憶部が移動制御用のテーブルデータを記憶し、駆動制御部105は、その移動制御用のテーブルデータに基づいてキャリッジモーター50を制御して、キャリッジ20を移動させる制御を行う。これにより、キャリッジ20に備えられるホルダー21とヘッド22を移動させる駆動が、キャリッジモーター50により行われるようになる。
位置補正部110は、サンプリングされた検出電圧に基づいて、主走査方向D1におけるキャリッジ20の位置情報を補正する。位置を補正する必要があるのは、キャリッジ20の取り付け公差や、故障検出板RFBのホルダー21への取り付け公差等があるからである。具体的には、位置補正部110は、第1の補正処理において、ホルダー21に設けられた故障検出板RFBの位置を検出し、その検出位置に基づいて、インク残存検出を行う際のプリズム中心の位置を補正する。また、第2の補正処理において、各インクカートリッジの検出電圧に対してピーク検出を行い、その検出したピーク位置に基づいて、インク残存検出を行う際のプリズム中心の位置を補正する。
キャリッジ20の位置は、キャリッジモーター50に搭載されたロータリーエンコーダーの出力に基づいて把握される。即ち、ロータリーエンコーダーは、例えばキャリッジ20のホームポジションを基準位置として、その基準位置からの移動量に応じたカウント値を出力する。故障検出板RFBの位置や各インクカートリッジのプリズム中心の位置は、それぞれロータリーエンコーダーの所定のカウント値が対応している。位置補正前においては、その各位置に対応するカウント値は、設計値に基づいてメカ的に設定されており、例えば制御部100の不図示のRAMに記憶されている。位置補正部110は、この各位置に対応するカウント値を、第1の補正処理及び第2の補正処理により補正し、その補正されたカウント値を不図示のRAMに書き込む。
残存判定部130は、A/D変換部70でサンプリングされた検出電圧に基づいて、各インクカートリッジについてインクニアエンドであるか否かの判定を行う。制御部100は、インクニアエンドであると判定されたインクカートリッジについては、例えば印刷装置200の表示部210やパーソナルコンピューター250の表示部にインク交換を知らせるアラームを表示させる指示を出力し、ユーザーにインクカートリッジの交換を促す。例えば、残存判定部130によりインクニアエンドと判定された場合に、制御部100はインクカートリッジが空であると判定し、インクカートリッジが交換されるまで印刷を実行しない。あるいは、残存判定部130によりインクニアエンド判定がなされた後、残量推定部160により所定量のインクが消費された場合に、制御部100はインクカートリッジが空であると判定し、インクカートリッジが交換されるまで印刷を実行しないこととしてもよい。
発光量決定部140は、A/D変換された検出電圧及び気泡有無の判断結果に基づいて、発光部82の発光量を決定する処理を行う。制御部100は、決定された発光量に基づいて図18のPWM信号を制御し、発光部82の発光量を制御する。この発光量決定処理は、気泡判断処理や閾値決定処理と共にインクニアエンド検出よりも前に行われ、インクニアエンド検出は、調整された発光量により行われる。
残量推定部160は、ドットカウント(ソフトカウントとも呼ぶ)により各インクカートリッジ内のインク残量を推定する。具体的には、残量推定部160は、印刷ヘッドから噴射されるインク滴の数を計数し、計数されたインク滴の数とインク滴当たりの質量とを積算することでインクの使用量を算出する。そして、各インクカートリッジ内のインクの初期充填量から、算出されたインクの使用量を差し引くことでインク残量を推定する。残量推定部160は、こうして推定されたインクの残量を、各インクカートリッジに備えられた記憶装置352に適宜記録する。例えば、残量推定部160は、印刷装置200の起動時に、各インクカートリッジの記憶装置352からインクの残量を取得して制御部100の不図示のRAMに記憶させ、電源が投入されている間には、印刷の実行や印刷ヘッドのクリーニングに伴って、このRAM内の値を更新していく。そして、例えば、印刷装置200の電源オフ時や、各インクカートリッジの交換時、あるいは、所定のインク量を消費する毎に、更新された推定残量を各インクカートリッジの記憶装置352に書き戻す。なお、以下ではインク残量を推定する場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えばインク消費量などの種々のインク量を推定してもよい。
閾値決定部150は、サンプリングされた検出電圧に基づいて、インクが有る場合の検出電圧とインクエンドの場合の検出電圧を区別するための閾値を設定する。位置補正部110により、インクエンドを検出するときのプリズム中心の位置が高精度に補正されるため、より適切な閾値を設定することが可能となり、インクニアエンドの検出精度を向上できる。この点については、詳細に後述する。
3.インクニアエンドの検出手法
次に、インクニアエンドの検出手法について説明する。図4、図5には、インクカートリッジICのプリズム320を通過するYZ平面の断面図を示す。また、図4、図5では、プリズム320と検出部80の位置関係が、インクニアエンドを検出可能な位置関係となったときの状態を示している。
図4に示すように、プリズム320の入射面EFには、プリズム320を形成するときに生じる変形を抑制するために、空洞部BPが設けられている。ホルダー21には開口が設けられており、インクカートリッジICがホルダー21に装着されたときに開口を通して入射面EFと検出部80が対向するように構成されている。プリズム320の斜面SF1、SF2はインク収容部300の内側を向いており、インク収容部300にインクIKが満たされている場合には斜面SF1、SF2はインクIKに接する。斜面SF1は例えば斜面SF2に直交する面であり、斜面SF1と斜面SF2は、図1のXZ平面に平行な平面に対して対称となるように配置される。
インクカートリッジICにインクIKが満たされている場合、発光部82からプリズム320に入射した光EMLは、斜面SF1からインクIK内に入射する(光FCL)。この場合、斜面SF1、SF2で反射される光RTLは非常に少なくなるため、受光部84はほとんど光を受光しない。例えば、インクの屈折率を水の屈折率とほぼ同様の1.5と仮定し、プリズム320をポリプロピレンにより構成する場合、斜面SF1、SF2における全反射の臨界角は約64度である。入射角は45度なので、斜面SF1、SF2では全反射されず、入射光EMLはインクIK内に入射する。
図5に示すように、インクカートリッジIC内のインクIKが印刷のために消費され、インクカートリッジICにインクIKが満たされていない場合を考える。プリズム320の斜面SF1、SF2のうち、少なくとも発光部82からの光が照射される部分が、空気に接しているとする。この場合、発光部82からプリズム320に入射した光EMLは、斜面SF1、SF2で全反射され、入射面EFからプリズム320の外へ再び出射する(光RTL)。受光部84は、全反射した光RTLを受光するため、強い検出電圧が得られる。例えば、空気の屈折率を1とし、プリズム320をポリプロピレンにより構成する場合、斜面SF1、SF2における全反射の臨界角は約43度である。入射角は45度なので、入射光EMLは斜面SF1、SF2で全反射される。
図6に、1個のインクカートリッジICが検出部80の上を通過した場合の検出電圧の特性例を示す。図6の横軸は、プリズム320と検出部80の相対的な位置を表し、プリズム320の中心と検出部80の中心が一致したときの位置(例えば図4に示すインクカートリッジICと検出部80との位置関係)を“0”としている。検出部80の中心とは、主走査方向における発光部82と受光部84の中央である。縦軸は、横軸の各位置において検出部80から出力される検出電圧を表す。
図6に示すように、受光部84の受光量がゼロに近いほど検出電圧が上限電圧Vmaxに近くなり、受光部84の受光量が大きいほど検出電圧が下限電圧Vminに近くなる。受光量が所定値を越えると、検出電圧が飽和して下限電圧Vminとなる。上限電圧Vmaxと下限電圧Vminは、例えば、図18で後述する受光部84がコレクタ端子に出力する電圧範囲の上限電圧と下限電圧に対応する。
図6に示すように、検出電圧は、検出部80とプリズム320との相対位置に応じて変化する。SIKは、図4で説明したインクカートリッジICがインクIKで満たされている場合の検出電圧特性である。この場合、受光部84の受光量は小さいため、位置“0”において検出電圧はVmaxに近くなる。位置“0”から、プリズム320の中心と検出部80の中心との相対位置が主走査方向にずれた位置PK1、PK2には、プリズム入射面EFからの反射光によってピークSpk1、Spk2が生じる。このピークSpk1、Spk2については図7で後述する。
SEPは、図5で説明したインクカートリッジICがインクIKで満たされていない場合の検出電圧特性である。この場合、受光部84の受光量は大きいため、位置“0”において検出電圧はVminに達する(あるいは、近くなる)。このように、インクカートリッジICがインクIKで満たされているか否かによって検出電圧の特性が大きく異なっており、本実施形態では、この検出電圧の特性の違いを検出することにより、インクカートリッジのインクニアエンドを検出する。
具体的には、検出電圧特性SIKのピーク値Vpk1に基づいて、ピーク値Vpk1と下限電圧Vminとの間に閾値Vthを設定する。そして、インクカートリッジICが検出部80の上を通る検出範囲DPRとなったときに、検出部80の検出電圧が閾値Vthよりも小さい場合には、インクニアエンドであると判定し、検出電圧が閾値Vth以上である場合には、インクが残存していると判定する。
次に、図7を用いて、ピークSpk1、Spk2について説明する。図7に示すように、ホルダー21には、プリズム320に対応して開口が設けられており、その開口の中央には、発光部82からの光を遮光する遮光部SBが設けられている。開口の中央とは、インクカートリッジICがホルダー21に装着されたときに、プリズム320の中心に対応する位置である。遮光部SBは、主走査方向(±Y方向)に交差する方向(X方向)に沿って設けられており、ホルダー21の開口を、主走査方向に沿って並ぶ第1の開口AP1と第2の開口AP2とに分割する。
発光部82からプリズムの入射面EFに入射した光は、一部が反射されて受光部84に受光される。即ち、発光部82から入射面EFへの入射角θ1と入射面EFから受光部84への反射角θ2が等しい光が、受光部84に受光される。図6の検出電圧特性SIKに示すように、位置“0”には遮光部SBが存在するため入射面EFからの反射光は検出されず、位置PK1、PK2では、開口AP1、AP2が存在するためピークSpk1、Spk2が検出される。ここで、位置PK1は、主走査方向における開口AP1の中央と検出部80の中央とが一致する位置であり、位置PK2は、主走査方向における開口AP2の中央と検出部80の中央とが一致する位置である。なお、プリズム320から全反射光が返ってくる場合にも入射面EFからの反射光は検出されているが、検出電圧特性SEPに示すように全反射光の信号に埋もれるため、ピークSpk1、Spk2は生じない。
4.補正された位置に基づく検出範囲の設定手法
さて、インクカートリッジの位置は、種々の公差によって位置ずれを生じる。公差としては、例えば、故障検出板RFBの取り付け公差や、キャリッジ20の傾き、ロータリーエンコーダーの誤差、電子回路(例えば検出部80)の応答速度、メカ的な(例えばキャリッジ駆動の)位置ずれなどが想定される。図3で説明したように、制御部100は、ロータリーエンコーダーのカウント値に基づいてインクカートリッジの位置を把握しているが、この制御部100が把握する位置は、公差により実際のインクカートリッジの位置からずれてしまう。
この位置ずれを補正しない場合には、想定される全ての公差を含めた位置ずれ範囲を考慮し、その範囲内で正しくインクニアエンド検出が行えるように図6の検出範囲DPRを決める必要がある。そのため、検出範囲DPRが2つのピークSpk1、Spk2の間隔よりも広くなり、閾値VthをピークSpk1、Spk2のピーク電圧Vpk1に近づけることができなくなる。そうすると、図6の検出電圧特性SEP’に示すように、インクが無くなった場合のピークが、プリズム入射面からの反射光によるピークSpk1、Spk2とほぼ同じ大きさとなる場合には、閾値Vthにより正しくインクニアエンドを検出できないことになる。このような状況は、例えば検出部80にインクミストが付着して発光量や受光量が低下し、ピークSpk1、Spk2を含めたノイズと全反射による検出電圧との比(いわゆるS/N比)が小さくなった場合等に、生じうる。
そこで本実施形態では、ロータリーエンコーダーのカウント値に基づいて把握されるインクカートリッジの位置を、プリズム入射面からの反射光によるピークSpk1、Spk2に基づいて補正する。この補正により、公差による位置ずれが補正されるため、インクカートリッジの位置とロータリーエンコーダーのカウント値とを高精度に対応付けることができる。これにより、図6に示すように、インクニアエンドの検出範囲DPR’を、位置補正しない場合よりも狭く設定できるので、閾値Vth’をピークSpk1、Spk2のピーク電圧Vpk1付近に設定することが可能となる。
5.位置補正処理
本実施形態が行う位置補正処理について詳細に説明する。
図8は、キャリッジ20が、ホームポジションPHから主走査方向D1に移動したときの検出部とキャリッジ位置を示す概念図である。位置P0は、故障検出板RFBに発光部82からの光が当たる位置である。故障検出板RFBは、検出部80の故障検出のために設けられており、制御部100は、検出部80が故障検出板RFBからの反射光を検出できない場合には、検出部80が故障していると判定する。位置P1〜P4は、インクカートリッジIC1〜IC4の各々のプリズムに発光部82からの光が当たる位置である。インクカートリッジIC1〜IC4には、例えば、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクが充填されており、各インクカートリッジについてインクニアエンド検出が行われる。
これらの位置P0〜P4はロータリーエンコーダーのカウント値に対応しており、キャリッジ20の設計値に基づくカウント値が不図示のRAMに記憶されている。インクニアエンド検出の際には、その不図示のRAMから読み出したカウント値に基づいて位置P0〜P4を特定する(このインクニアエンド検出の際に位置P1〜P4を特定するための情報(カウント値)を、検出位置情報と呼ぶ)。上述のように、この位置P0〜P4は、種々の公差によって実際の故障検出板RFBの位置やインクカートリッジIC1〜IC4の位置とはずれを生じている。本実施形態では、この位置ずれを有する位置P0〜P4に対して補正処理を行い、その補正後の位置に対応するカウント値を、補正された検出位置情報として不図示のRAMに書き戻す処理を行う。
図9に示すように、位置補正部110は、補正前の位置に基づいて故障検出板RFBの位置を特定し、故障検出板RFBの検出電圧を取得するための位置範囲AD0を設定し、その位置範囲AD0をキャリッジ20が通過したときにA/D変換部70が検出電圧をA/D変換する。位置補正部110は、サンプリングした検出電圧が閾値Vrfを横切る2つの位置PR1、PR2を検出し、位置PR1、PR2の中心(PR1、PR2の平均値)を、故障検出板RFBの新たな位置P0’とする。以上の処理は、第1補正処理として行われる。
次に、位置補正部110は、第1補正処理後の位置に基づいてキャリッジ20の位置を特定し、インクカートリッジIC1〜IC4の検出電圧を取得するための位置範囲AD1を設定し、その位置範囲AD1をキャリッジ20が通過したときにA/D変換部70が検出電圧をA/D変換する。位置補正部110は、各インクカートリッジの検出電圧に対してピーク検出処理を行い、ピーク電圧が最も小さい第1のピークと、その次にピーク電圧が小さい第2のピークを検出する。インクカートリッジIC1を例にとると、位置補正部110は、位置P1aの第1のピークと位置P1bの第2のピークを検出し、それらのピークの中心P1c(P1a、P1bの平均値)を求める。インクカートリッジIC2、IC4についても中心位置P2c、P4cを求め、差分P1−P1c、P2−P2c、P4−P4cを求め、それらの差分の平均値(補正値)を求める。その差分の平均値をP1〜P4に加算し、インクカートリッジIC1〜IC4の最終的な補正された位置P1”〜P4”とする。以上の処理は、第2補正処理として行われる。
ここで、図8のインクカートリッジIC3のように、プリズム320に気泡BABが付着する場合がある。例えば、ユーザーがインクカートリッジICを床に落としてしまった場合などにプリズム320に気泡が付着し、そのままホルダー21に装着されると、気泡が付着したまま検出電圧がサンプリングされる。気泡が付着すると、インクIKが満たされている場合であってもプリズム320と空気が接するため、入射光の一部が全反射される。そうすると、図9のインクカートリッジIC3の検出電圧に示すように、気泡によるピークSpbabが発生する。このピークSpbabの大きさは、気泡BABの付着量や付着位置によって変化し、入射面反射によるピークよりも大きくなる場合がある。このような場合には、第2補正処理において入射面反射によるピークの中心位置を算出できないので、気泡BABが付着したと判定されたインクカートリッジについては、上述した補正値の算出対象から除外する。
具体的には、図9のインクカートリッジIC3を例にとると、第2補正処理のピーク検出において、ピーク電圧が最小のピークとしてピークSpbabが検出され、2番目にピーク電圧が小さいピークとして入射面反射によるピークの一方が検出される。これらのピークの間隔P3b−P3aが所定値よりも小さい場合には、気泡が付着していると判断し、ピークの中心位置を算出せず、上述した補正値の算出対象から除外する。
以上の実施形態によれば、図3等で説明したように、印刷装置は、発光部82と受光部84とが配置された検出部80と、インクを収容するインクカートリッジIC1〜IC4と、制御部100と、を含む。図4等で説明したように、インクカートリッジIC1〜IC4には、発光部82から照射された光EMLをインクの残存状態に応じて反射するプリズム320が配置される。図6、図7等で説明したように、検出部80は、プリズム320に対して発光部82からの光が入射する面である入射面EFからの反射光を受光部84により受光して得られた検出電圧(検出電圧特性SIK)を出力する。制御部100は、その検出電圧に基づいて、インクカートリッジIC1〜IC4内のインクの残存状態を検出する際のインクカートリッジIC1〜IC4の検出位置情報を補正する。
ここで、検出位置情報とは、キャリッジ20と検出部80との位置関係が、インクの残存状態を検出するべき位置関係となったことを、制御部100が把握するための位置情報である。例えば本実施形態では、ロータリーエンコーダーのカウント値を位置情報として用いている。即ち、所定のカウント値が検出位置情報として予め記憶されており、ロータリーエンコーダーが出力するカウント値が、その所定のカウント値となったときに、インクの残存状態が検出されることになる。
本実施形態によれば、図9等で説明したように、公差による位置ずれを高精度に補正することができるため、検出位置情報が表すインクカートリッジの位置とインクカートリッジの実際の位置とのずれを、高精度に補正できる。これにより、インクニアエンドの検出範囲DPR’を、位置補正しない場合よりも狭く設定できるので、より高精度にインクニアエンドを検出することが可能となる。
また本実施形態では、印刷装置は、インクカートリッジIC1〜IC4が装着された場合にプリズム320の入射面EFに対向する位置に開口部が設けられたホルダー21と、ホルダー21の開口部に対応して設けられた遮光部SBと、を含む。図9等で説明したように、制御部100は、検出電圧の第1のピーク(例えばP1a)と第2のピーク(P1b)とを検出し、第1のピークの位置情報と前記第2のピークの位置情報とに基づいて、検出位置情報を補正する。
このようにすれば、図6、図7等で説明したように、開口部に遮光部SBを設けることで検出電圧(検出電圧特性SIK)に第1のピークSpk1と第2のピークSpk2を発生させることができる。そして、図9等で説明したように、その遮光部SBによって発生する第1のピーク(例えばP1a)の位置情報と第2のピーク(P1b)の位置情報とに基づいて、検出位置情報を補正できる。例えば本実施形態では、インクカートリッジの位置P1〜P4に対応するロータリーエンコーダーのカウント値が検出位置情報として補正され、その補正されたカウント値に対応する位置P1”〜P4”においてインクニアエンドが検出されることになる。
なお本実施形態では、往路と復路でそれぞれ検出位置情報を補正してもよい。ここで往路は、キャリッジ20と検出部80の相対的な位置が離れていく移動のことであり、復路は、キャリッジ20と検出部80の相対的な位置が近づいていく移動のことである。往路と復路では、受光部84の回路的な(例えばフォトトランジスター等の)応答速度が異なるが、往路と復路でそれぞれ検出位置情報を補正することで、その応答速度の違いによる位置ずれを補正できる。
6.位置補正処理の詳細
図10〜図13に、位置補正処理の詳細なフローチャートを示す。また図14に、位置補正処理の説明図を示す。図14では、故障検出板RFBの検出電圧特性と、1個のインクカートリッジの検出電圧特性を示す。
まず、図10で後述するA/D変換処理を1回行い、そのA/D変換値を用いて故障検出板RFBによる第1位置補正処理を行う。即ち、図14に示すように、位置補正部110は、故障検出板RFBの検出電圧波形の中心位置XRD(P0’)を求め、補正前の故障検出板RFBの位置XRM(P0)との差分X_def=XRM−XRDを求め、その差分X_defによりキャリッジ20の位置を補正する。この第1位置補正処理は、例えば印刷装置の電源投入時や、インクカートリッジ交換時等に実行される。そして、以下で説明する第2位置補正処理は、後述する感度補正処理(図16のステップS2)において行われ、例えば印刷装置の電源投入時やインクカートリッジ交換時等のほか、例えば印刷ジョブの間や印刷中の所定タイミング等で実行される。
図10に示すように、第2補正処理が開始されると、制御部100は、キャリッジ20を検出終了ポジション(例えば可動範囲の端)まで移動させる制御を開始する(ステップS100)。次に、制御部100は、ロータリーエンコーダーのカウント値に基づいて、キャリッジ20の位置が検出電圧の測定範囲(図14のADR)内であるか否かを判定する(ステップS101)。この測定範囲ADRは、第1補正処理により補正された位置に基づいて設定される。ステップS101において測定範囲ADR内でないと判定された場合には、ステップS104を実行する。一方、測定範囲ADR内であると判定された場合には、A/D変換部70は検出電圧をA/D変換し(ステップS102)、制御部100は、そのA/D変換値とキャリッジ20の位置(ロータリーエンコーダーのカウント値)を対応付けて不図示のRAMに記憶する(ステップS103)。
次に、制御部100は、キャリッジ20が検出終了ポジションまで移動したかを判定する(ステップS104)。検出終了ポジションまで移動していないと判定した場合には、ステップS101を再び実行する。一方、検出終了ポジションまで移動したと判定した場合には、図11、図12に示すピーク検出処理を行う。
図11に示すように、位置補正部110は、インクカートリッジIC1〜IC4の中から処理対象のインクカートリッジを1つ選択する(ステップS120)。次に、位置補正部110は、ピーク位置X1、X2、それらの中心位置XB_defを初期化する(ステップS121)。次に、位置補正部110は、処理対象のインクカートリッジに対応する検出電圧のA/D変換値を不図示のRAMから読み出す。まず、そのA/D変換値が取得されたキャリッジの位置を読み出し、その位置をXpとする(ステップS122)。次に、位置補正部110は、位置Xpの前後5個のA/D変換値を読み出し、そのA/D変換値をVp1〜Vp5とする(ステップS123)。
次に、位置補正部110は、A/D変換値Vp1〜Vp5のうち最大値と最小値を除いた3つのA/D変換値の平均値を求め、その平均値をV_F_aveとする(ステップS124)。次に、位置補正部110は、V_F_min>V_F_aveであるか否かを判定する(ステップS125)。V_F_minの初期値は例えば図6の上限電圧Vmaxであり、初期値ではV_F_min>V_F_aveである。ステップS125においてV_F_min>V_F_aveであると判定された場合、V_F_minにV_F_aveを代入する(ステップS126)。一方、V_F_min≦V_F_aveであると判定された場合、図12のステップS127を実行する。
次に、図12に示すように、位置補正部110は、Xp<XM+X_defであるか否かを判定する(ステップS127)。XM+X_defは、図14に示すように、故障検出板RFBによる補正値X_defで補正されたインクカートリッジの中心位置である。この判定では、位置Xpが、Xp<XM+X_defである範囲ADR1と、Xp≧XM+X_defである範囲ADR2とのいずれに属するかを判定する。
ステップS127において、位置Xpが範囲ADR1に属すると判定された場合には、位置補正部110は、V_F_min1>V_F_aveであるか否かを判定する(ステップS128)。V_F_min1の初期値は例えば図6の上限電圧Vmaxであり、初期値ではV_F_min1>V_F_aveである。ステップS128においてV_F_min1>V_F_aveであると判定された場合、V_F_min1にV_F_aveを代入し(ステップS129)、X1にXpを代入する(ステップS130)。ステップS128においてV_F_min1≦V_F_aveであると判定された場合、ステップS134を実行する。
ステップS127において、位置Xpが範囲ADR2に属すると判定された場合には、位置補正部110は、V_F_min2>V_F_aveであるか否かを判定する(ステップS131)。V_F_min2の初期値は例えば図6の上限電圧Vmaxであり、初期値ではV_F_min2>V_F_aveである。ステップS131においてV_F_min2>V_F_aveであると判定された場合、V_F_min2にV_F_aveを代入し(ステップS132)、X2にXpを代入する(ステップS133)。ステップS131においてV_F_min2≦V_F_aveであると判定された場合、ステップS134を実行する。
次に、位置補正部110は、測定範囲ADR内のA/D変換値を全て読み出したか否かを判定する(ステップS134)。読み出していないA/D変換値がある場合には、位置Xpを次の位置に進める。即ち、位置Xpの格納アドレスに対応する変数dをインクリメントし(ステップS135)、図11のステップS122を実行する。A/D変換値を全て読み出した場合には、図13の位置高精度化処理を実行する。
以上のピーク検出処理を終了したとき、V_F_minは、測定範囲ADRにおける検出電圧の最小値となる。また、図14に示すように、X1は、範囲ADR1において検出電圧が最小値となる第1のピークの位置となり、V_F_min1は、その検出電圧の最小値である。X2は、範囲ADR2において検出電圧が最小値となる第2のピークの位置となり、V_F_min2は、その検出電圧の最小値である。
次に、図13に示すように、位置補正部110は、|X1−X2|≧am1であるか否かを判定する(ステップS140)。|X1−X2|は、第1のピークと第2のピークとの間の距離であり、am1は外乱光判定用の閾値である。外乱光判定用の閾値とは、第1のピーク又は第2のピークが外乱光の影響によって生じたピークであるか否かを判定するための閾値である。例えば、X1、X2が、プリズム入射面の反射によって得られる2つのピークの位置であるときに、平均として|X1−X2|=4.4mmとなる場合、am1>4.4mmであり、|X1−X2|の変動を考慮して例えばam1=5.1mmに設定される。
ステップS140では、外乱光によってピーク検出処理が正しく行われなかったインクカートリッジを除外する。具体的には、図14に示すように、検出部80に外乱光が入射すると、測定範囲ADRの端に向かって検出電圧が下降する波形となる。この波形が測定範囲ADRの端に交差するときの検出電圧が、プリズム入射面の反射によって得られる2つのピークよりも小さくなった場合、上述のピーク検出処理では、測定範囲ADRの端の位置X1gが位置X1として検出される。この場合、X1gとX2の中心位置は、プリズムの中心位置に一致しないため、補正値の算出処理から除外するのが適当である。図14の例では、|X1g−X2|≧am1となるので、位置X1、X2のいずれかが外乱光によって生じたピークである(即ち、プリズム入射面の反射によって得られるピークではない)と検出できる。
なお、外乱光は、例えばキャリッジ20が存在する印刷部の上にスキャナー部が設けられるタイプの印刷装置において、位置補正処理中にスキャナー部を持ち上げて印刷部が露出した場合等に、入射しうる。特に、インクカートリッジIC1〜IC4のうち、ホルダー21の端に装着されるIC1、IC4のいずれかに外乱光が入射することが想定される。また、検出部80が赤外光を検出する場合、太陽光などの自然光が外乱光となりやすく、蛍光灯などの赤外光をあまり含まない光では外乱光とならないことが想定される。
ステップS140において、|X1−X2|≧am1である(外乱光である)と判定された場合、位置補正部110は、位置X1、X2のいずれが、よりプリズム中心位置XM+X_defに近いかを判定する(ステップS141)。位置X1の方がプリズム中心位置XM+X_defに近いと判定された場合には、V_F_minにV_F_min1を代入し(ステップS142)、ステップS148を実行する。一方、位置X2の方がプリズム中心位置XM+X_defに近いと判定された場合には、V_F_minにV_F_min2を代入し(ステップS143)、ステップS148を実行する。
外乱光のピーク位置は測定範囲ADRの端となるので、プリズム中心位置XM+X_defに近い方の位置は、プリズム入射面の反射によって得られるピークである。即ち、ステップS141〜S143では、プリズム入射面の反射によって得られるピークの電圧がV_F_minに設定される。
ステップS140において、|X1−X2|<am1である(外乱光でない)と判定された場合、位置補正部110は、|X1−X2|<am2であるか否かを判定する(ステップS144)。am2は気泡判定用の閾値である。気泡判定用の閾値とは、第1のピーク又は第2のピークが、プリズムに付着した気泡の影響によって生じたピークであるか否かを判定するための閾値である。例えば、X1、X2が、プリズム入射面の反射によって得られる2つのピークの位置であるときに、平均として|X1−X2|=4.4mmとなる場合、am2<4.4mmであり、|X1−X2|の変動を考慮して例えばam1=3.7mmに設定される。
ステップS144では、プリズム320に付着した気泡によってピーク検出処理が正しく行われなかったインクカートリッジを除外する。具体的には、図14に示すように、プリズム320に気泡が付着すると、プリズム入射面の反射によって得られる2つのピークの間にピークを生じる。この気泡による波形の電圧が、プリズム入射面の反射によって得られる2つのピークよりも小さくなった場合、上述のピーク検出処理において、気泡のピークの位置X2bが位置X2として検出される。この場合、X1とX2bの中心位置は、プリズムの中心位置に一致しないため、補正値の算出処理から除外するのが適当である。図14の例では、|X1−X2b|<am2となるので、位置X1、X2のいずれかが、気泡によって生じたピークである(即ち、プリズム入射面の反射によって得られるピークではない)と検出できる。
ステップS144において、|X1−X2|<am2である(気泡が付着している)と判定された場合には、ステップS148を実行する。一方、|X1−X2|≧am2である(気泡が付着していない)と判定された場合には、図14に示すように、位置補正部110は、補正前のプリズム中心位置XMと、ピーク位置X1、X2の中心位置との差分XB_def=((X1+X2)/2)−XMを求める(ステップS145)。次に、位置補正部110は、XB_def_all=XB_def_all+XB_defを求め(ステップS146)、XB_defを加算したインクカートリッジの個数iをインクリメントする(ステップS147)。XB_def_all、iの初期値は“0”である。
ステップS140において|X1−X2|≧am1である(外乱光である)と判定された場合、又は、ステップS144において、|X1−X2|<am2である(気泡が付着している)と判定された場合には、ステップS145〜S147は実行されない。即ち、外乱光の影響がなく且つプリズム320に気泡が付着していないインクカートリッジについてのみ、XB_defが算出され、XB_def_allに加算される。外乱光の影響がなく且つプリズム320に気泡が付着していないインクカートリッジが1つも無い場合には、XB_def_all=0、i=0である。
次に、位置補正部110は、インクカートリッジIC1〜IC4の全てについて処理を終了したか否かを判定する(ステップS148)。終了していないインクカートリッジがある場合には、次のインクカートリッジを選択し(ステップS149)、図11のステップS120を実行する。全てのインクカートリッジについて処理を終了した場合には、位置補正部110は、i=0であるか否かを判定する(ステップS150)。i=0である場合には、位置補正処理を終了する。i=0でない場合には、位置補正部110は、補正値X_def2=(XB_def_all/i)−X_defを求め(ステップS151)、位置補正処理を終了する。XB_def_all/iは、XB_defを算出したインクカートリッジについてのXB_defの平均値である。
以上の位置補正処理は、感度補正処理(図16のステップS2)において行われ、インクニアエンド検出処理(ステップS5)では、第1補正処理の補正値X_defと第2補正処理の補正値X_def2を、インクカートリッジIC1〜IC4の中心位置(図9のP1〜P4)に加算し、その加算後の位置(図9のP1”〜P4”)に基づいてインクカートリッジIC1〜IC4の位置を特定してインクニアエンド検出を行う。本実施形態によれば、故障検出板RFBによる第1補正とピーク検出による第2補正によって高精度にインクカートリッジIC1〜IC4の位置を特定できるため、図14に示すように、インクニアエンド検出を行う検出範囲RIKを狭い範囲に設定でき、より適切なインクニアエンド判定閾値を設定することが可能となる。
なお上記の実施形態では、故障検出板RFBにより補正値X_defを求め、ピークX1とピークX2により補正値X_def2を求める場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、補正値X_defを求めず(即ち故障検出板RFBによる位置補正を行わず)、ピークX1とピークX2により補正値X_def2を求めて位置補正を行ってもよい。
また上記の実施形態では、インクカートリッジIC1〜IC4のうちXB_defを算出したインクカートリッジについてXB_defの平均値をとり、補正値X_def2を求めているが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、XB_defの平均値を補正値にするのではなく、算出したXB_defを、対応するインクカートリッジの補正値としてもよい。
7.第2補正処理の変形例
図15に、第2補正処理の変形例についての説明図を示す。図15では、1個のインクカートリッジが検出部80の上を通過した場合の検出電圧の特性例を示す。SIKは、インクカートリッジがインクで満たされている場合の検出電圧特性であり、SBAは、プリズムに気泡が付着している場合の検出電圧特性であり、SEPは、インクニアエンドとなった場合の検出電圧特性である。
この変形例では、位置補正部110は、検出電圧が所定閾値VTを横切る位置X1’(第1のポイント)と位置X2’(第2のポイント)を検出し、その位置X1’と位置X2’の平均値によりインクカートリッジの中心位置を補正する。即ち、図14のXB_defを、XB_def=((X1’+X2’)/2)−XMにより求める。ここで、所定閾値VTは、プリズム入射面からの反射光によるピークSpk1、Spk2のピーク電圧Vpk1よりも大きい電圧に設定される。他の処理については、図10〜図13で説明した処理と同様である。
位置X1’は、所定の測定範囲RVTにおいて、検出電圧が所定閾値VTを上から下に横切るポイントである。位置X2’は、所定の測定範囲RVTにおいて、検出電圧が所定閾値VTを下から上に横切るポイントである。所定の測定範囲RVTは、1個のインクカートリッジについてA/D変換値を取得する範囲(図14のADR)に対応する。
図15に示すように、インクが無い場合の検出電圧特性SIKや気泡が付着している場合の検出電圧特性SBAでは、測定範囲RVTにおいて閾値VTを横切るポイントが4つ以上存在する可能性がある。このような場合には、制御部100は、その4つ以上存在するポイントのうち両端の2つのポイントを、位置X1’と位置X2’に設定する。
さて、図15に示すように、インクが無い場合の検出電圧特性SIKや気泡が付着している場合の検出電圧特性SBAでは、プリズム入射面からの反射光によるピークSpk1、Spk2を検出できない。このようなインクカートリッジは、図10〜図13で説明した位置補正処理では補正値の算出処理から除外される。
この点、本変形例によれば、プリズム入射面からの反射光によるピークSpk1、Spk2を検出できない場合であっても、検出電圧が閾値VTを横切る2つの位置X1’、X2’を検出できる。この2つの位置X1’、X2’の中心は、プリズム中心にほぼ一致するため、このインクカートリッジを補正値の算出処理に加えても、補正値の精度は低下せず、高精度な補正値を求めることが可能である。このように、本変形例によれば、インクが無いインクカートリッジや気泡が付着しているインクカートリッジを補正値の算出処理から除外することなく、高精度な位置補正を行うことが可能となる。
8.インクニアエンド検出処理
図16に、制御部100が実行するインクニアエンド検出処理のフローチャートを示す。このフローのうちステップS1〜S3(インクニアエンド検出のためのパラメーターを設定するための処理)は、例えば印刷装置の電源投入時や、インクカートリッジ交換時等に実行される。また、このフローのうちステップS4〜S8(実際のインクニアエンド検出処理)は、例えば印刷装置の電源投入時やインクカートリッジ交換時等のほか、例えば印刷ジョブの間や印刷中の所定タイミング等で実行される。
図16に示すように、処理が開始されると、制御部100は、以降の処理で用いられる各パラメーターを取得する(ステップS1)。具体的には、前回の感度補正処理によって決定された発光量PD1を各インクカートリッジの記憶装置352から取得し、各インクカートリッジのインクの推定残量を制御部100の不図示のRAMから取得する。インクの推定残量は、印刷装置200の電源投入時に残量推定部160により各インクカートリッジの記憶装置352から制御部100の不図示のRAMに読み出されて逐次更新されているため、制御部100は、インクの推定残量を自身の不図示のRAMから取得することができる。
次に、発光量決定部140と閾値決定部150が、感度補正処理を実行する(ステップS2)。この感度補正処理では、図10〜図13で説明した位置補正処理と、ステップS4のインクニアエンド検出処理で用いられる発光量PD2を決定する処理と、インクニアエンド検出の閾値を決定する処理と、を行う。
具体的には、位置補正処理において、各インクカートリッジの検出電圧のピークが求められている。発光量決定部140は、これらのピークから、図13のステップS144において気泡が付着していると判定されたインクカートリッジのピークを除き、残りのピークのうちピーク電圧が最小のもの(各インクカートリッジのV_F_minのうち最小のもの)を選択する。そして、その最小のピーク電圧が所定の電圧範囲内に入るように発光部82の発光量を調整する。発光量の調整は、最小のピーク電圧と所定電圧との比率に基づいて、発光量を制御するPWM波形のデューティーを調整することにより行う。
また、位置補正処理において、各インクカートリッジについて2つのピーク電圧が求められており、そのうちの小さい方のピーク電圧がV_F_minとして求められている。閾値決定部150は、αを所定係数とし、βを所定オフセット値として、Vth=V_F_min×α+βにより判定閾値を求める。α、βは、検出電圧のS/Nや、インク有り・無しでの検出電圧ピーク値の差などを考慮して設定すればよい。閾値決定部150は、インクカートリッジIC1〜IC4について、それぞれ閾値Vth1〜Vth4を求める。
次に、制御部100は、感度補正処理で決定された新たな各パラメーター、即ち、新たな発光量PD2を各インクカートリッジの記憶装置352に書き戻す(ステップS3)。また、制御部100は、位置補正処理における気泡有無判定(図13のステップS144)の結果を制御部100の不図示のRAMに記憶する。
次に、残存判定部130は、制御部100の不図示のRAMから気泡有無判定の結果を読み出す(ステップS4)。残存判定部130は、処理対象のインクカートリッジが気泡無しの場合には、そのインクカートリッジについてインクニアエンド検出処理を行う(ステップS5)。この処理では、感度補正処理で決定した閾値による検出電圧の閾値判定と、推定残量が所定値に達しているか否かの判定とに基づいて、インクニアエンドを判定する。インクニアエンド検出処理の詳細については、図17で後述する。ステップS4において、処理対象のインクカートリッジが気泡有りの場合には、残量推定部160により推定されたインク残量に基づいて、インクニアエンドを検出する(ステップS6)。例えば、この検出処理では、後述する図17のステップS45〜S48と同様の処理を行う。
次に、インクカートリッジIC1〜IC4の全てについてインクニアエンド検出処理が終了したか否かを判断し(ステップS7)、終了していない場合には、次のインクカートリッジを処理対象としてステップS4を再び実行する。全インクカートリッジのインクニアエンド検出処理が終了した場合には、判定結果を表示部210に表示する処理を行い(ステップS8)、このフローの処理を終了する。
図17に、インクニアエンド検出処理の詳細なフローチャートを示す。この処理が開始されると、制御部100は、ステップS2で決定された発光量で検出電圧を測定し、A/D変換部70はサンプリング電圧を取得し、制御部100は、そのサンプリング電圧を不図示のRAMに記憶する。残存判定部130は、閾値判定のためのカウント値VLCountを“0”にクリアする(ステップS40)。次に、処理対象のインクカートリッジ(以下では、インクカートリッジIC1を例にとり説明する)について、不図示のRAMに記憶された検出電圧のA/D変換値を、格納順に1つずつ読み出す(ステップS41)。
次に、残存判定部130は、感度補正処理で求めたインクカートリッジIC1の判定閾値Vth1よりもA/D変換値が小さいか否かを判定する(ステップS42)。A/D変換値が判定閾値よりも小さいと判定された場合には、カウント値VLCountをインクリメントする(ステップS43)。次に、カウント値VLCountが3以上であるか否かを判定する(ステップS44)。即ち、インクカートリッジIC1の検出領域において、サンプリングされた検出電圧のうち閾値を下まわったものが3以上であるか否かを判定する。VLCountが3以上である場合には、エンプティ仮判定(インクニアエンドの仮判定)とする。
VLCountが3以上の場合にエンプティ仮判定とするのは、実際にはインクニアエンドではないにも関わらず、例えば静電気による突発ノイズなどによってA/D変換値が閾値を下回る可能性があるためである。
残存判定部130は、エンプティ仮判定となったら、インクの推定残量(ソフトカウント値、ドットカウント値)が所定値より小さいか否かを判定する(ステップS45)。ここで、所定値は、印刷装置及びインクカートリッジの公差や使用環境を考慮して、インクニアエンドと判定されることのないインクの推定残量である。インクの推定残量が所定値より小さくない場合には、インク有りやインクニアエンドと判定せず、処理を終了する。インクの推定残量が所定値より小さい場合には、エンプティ仮判定のカウント値E_tをインクリメントする(ステップS46)。カウント値E_tは、インクカートリッジ毎にステップ7のインクニアエンド検出処理でインク無しと判定されてそのときのインクの推定残量が所定値より小さかった場合にインクリメントされるカウント値である。次に、残存判定部130は、カウント値E_tが4以上であるか否かを判定する(ステップS47)。E_tが4以上でない場合には、インクニアエンドと判定せず、処理を終了する。E_tが4以上である場合には、インクニアエンドと判定し(ステップS48)、処理を終了する。
ステップS42において、A/D変換値が判定閾値よりも小さくないと判定された場合には、カウント値VLCountを“0”にクリアする(ステップS49)。次に、制御部100の不図示のRAMに記憶されたA/D変換値を全て読み出したか否かを判定する(ステップS50)。読み出していないA/D変換値が有る場合には、ステップS41に戻る。全てのA/D変換値を読み出した場合には、エンプティ仮判定のカウント値E_tを“0”にクリアし(ステップS51)、インク有りと判定し(ステップS52)、処理を終了する。
以上のインクニアエンド検出処理によれば、ステップS2の感度補正処理において、気泡が検出されたインクカートリッジの検出電圧を処理対象から除外できる。これにより、気泡の付着していないインクカートリッジの検出電圧のみから適正な発光量を設定することができるため、インクの有無による検出電圧の差を確実に閾値判定することが可能となる。
また図16のステップS4〜S6で説明したように、気泡が付着しているインクカートリッジではインク推定残量に基づいてインクニアエンドを検出し、気泡が付着していないインクカートリッジではプリズム反射光とインク推定残量とに基づいてインクニアエンドを検出する。このようにすれば、気泡の付着状態に応じて適切なインクニアエンド検出を行うことが可能となる。また、気泡が付着していないインクカートリッジでは、プリズム反射光とインク推定残量とに基づいてインクニアエンドを検出することで、プリズム反射光によりインクニアエンドが誤検出された場合であっても、インク推定残量により誤検出を防止できる。
9.検出部
図18に、検出部80の詳細な構成例を示す。検出部80は、反射型のフォトインタラプターとして構成されており、発光部82及び受光部84を有する。検出部80は、発光部82としてLEDを有し、受光部84としてフォトトランジスターを有する。フォトトランジスターのエミッタ端子は接地電位VSSに接地され、コレクタ端子は、抵抗素子R1を介して電源電位Vccに接続されている。
A/D変換部70には、抵抗素子R1とコレクタ端子の間の電位が、検出部80の出力電圧Vc(受光結果信号)として入力される。A/D変換された出力電圧Vcは、残存判定部130に入力される。発光部82が照射する光の発光量は、トランジスターTR1と抵抗素子R2、R3とキャパシターC1とを介して発光部82に印加されるPWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティー比(オン時間とオフ時間の割合)が制御部100によって調整されることにより設定される。発光部82から照射された光が、インクカートリッジIC1〜IC4内のプリズム320で反射して受光部84に受光されると、その受光量に応じた出力電圧Vcが、後述する残存判定部130に入力される。本実施形態では、受光部84が受光する光量が多いほど、検出部80から出力される出力電圧Vcは低くなる。
ここで、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また液体容器や液体消費装置の構成・動作や、位置補正手法、インクニアエンド検出手法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、上記の実施形態では、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能なホルダー21を搭載したキャリッジ20が移動し、検出部80が印刷装置本体に固定される場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、インクカートリッジIC1〜IC4と検出部80が相対的に移動すればよい。例えば、検出部80を搭載したキャリッジ20が移動し、インクカートリッジIC1〜IC4を着脱可能なホルダー21が印刷装置本体に固定されてもよい。
また、上記の実施形態では、本発明を印刷装置とインクカートリッジとに適用した例を説明したが、本発明は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体消費装置に用いてもよく、また、そのような液体を収容した液体容器にも適用可能である。また、本発明の液体容器は、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。「液滴」とは、上記液体消費装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体消費装置が噴射させることができるような材料であれよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや、液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体消費装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体消費装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体消費装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体消費装置であってもよい。更に、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体消費装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体消費装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体消費装置を採用してもよい。