図1から図13を用いて、本実施の形態に係る受電装置、送電装置および電力伝送システムについて説明する。なお、以下に複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、実質的に同一の構成については同一の符号を付してその説明を繰り返さない場合がある。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電力伝送システム、車両、受電装置および送電装置などを模式的に示す模式図である。
本実施の形態1に係る電力伝送システムは、受電装置11を含む車両10と、送電装置50を含む外部給電装置51とを有する。車両10の受電装置11は、主に、送電装置50から電力を受電する。
駐車スペース52には、車両10を所定の位置に停車させるように、輪止や駐車位置および駐車範囲を示すラインが設けられている。
外部給電装置51は、交流電源53に接続された高周波電力ドライバ54と、高周波電力ドライバ54などの駆動を制御する制御部55と、高周波電力ドライバ54に接続された送電装置50と、通信部57とを含む。
図1において、車両10は、通信部9と、車両本体10Aと、車両本体10Aに設けられた受電装置11と、受電装置11に接続された整流器13と、この整流器13に接続されたDC/DCコンバータ14と、このDC/DCコンバータ14に接続されたバッテリ15と、パワーコントロールユニット(PCU(Power Control Unit))16と、このパワーコントロールユニット16に接続されたモータユニット17と、DC/DCコンバータ14やパワーコントロールユニット16などの駆動を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)12とを備える。
そして、整流器13と、DC/DCコンバータ14と、バッテリ15とによって、外部から電力を受電して、バッテリ15に蓄電する受電ユニット18が形成される。
車両本体10Aは、エンジンコンパートメントや乗員収容室が内部に形成されたボディと、このボディに設けられたフェンダなどの外装部品とを備える。車両10は、前輪19Fと、後輪19Bとを備える。
なお、本実施の形態1においては、エンジンを備えたハイブリッド車両について説明するが、当該車両に限られない。たとえば、エンジンを備えていない電気自動車やエンジンに替えて燃料電池を備えた燃料電池車両などにも適用することができる。
整流器13は、受電装置11に接続されており、受電装置11から供給される交流電流を直流電流に変換して、DC/DCコンバータ14に供給する。
DC/DCコンバータ14は、整流器13から供給された直流電流の電圧を調整して、バッテリ15に供給する。なお、DC/DCコンバータ14は必須の構成ではなく省略してもよい。この場合には、外部給電装置51にインピーダンスを整合するための整合器を送電装置50と高周波電力ドライバ54との間に設けることで、DC/DCコンバータ14の代用をすることができる。
パワーコントロールユニット16は、バッテリ15に接続されたコンバータと、このコンバータに接続されたインバータとを含み、コンバータは、バッテリ15から供給される直流電流を調整(昇圧)して、インバータに供給する。インバータは、コンバータから供給される直流電流を交流電流に変換して、モータユニット17に供給する。
モータユニット17は、たとえば、三相交流モータなどが採用されており、パワーコントロールユニット16のインバータから供給される交流電流によって駆動する。
受電装置11は、受電部20を含む。受電部20は、コイルユニット24と、このコイルユニット24に接続されたキャパシタ23とを含む。コイルユニット24は、フェライトコア21と、フェライトコア21に巻回された二次コイル22とを含む。なお、受電部20においても、キャパシタ23は、必須の構成ではない。二次コイル22は、整流器13に接続されている。なお、特に図示しないが、二次コイル22およびキャパシタ23によって閉ループを形成し、二次コイル22により受電された交流電力を電磁誘導により二次コイル22から取出して整流器13へ出力するコイルを別途設けてもよい。
なお、キャパシタ23は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、一次コイル58および二次コイル22の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ23を設けない構成としてもよい。なお、二次コイル22とキャパシタ23とが並列に接続されているが、二次コイル22とキャパシタ23とを直列に接続するようにしてもよい。
図2は、車両10の底面25を示す底面図である。この図2において、「D」は、鉛直方向下方Dを示す。「L」は、車両左方向Lを示す。「R」は、車両右方向Rを示す。「F」は、車両前方向Fを示す。「B」は、車両後方向Bを示す。車両10(車両本体10A)の底面25とは、車両10のタイヤが地面と接地された状態において、車両10に対して鉛直方向下方に離れた位置から車両10を見たときに見える面である。受電装置11、受電部20、および二次コイル22は、底面25に設けられている。
ここで、底面25の中央部を中央部P1とする。中央部P1は、車両10の前後方向の中央に位置すると共に、車両10の幅方向の中央に位置する。
車両本体10Aは、車両10の底面に設けられたフロアパネル26を含む。フロアパネル26は、車両の内部と車両の外部とを区画する板状の部材である。
なお、受電装置11が底面25に設けられているとは、フロアパネル26に直付けされている場合や、フロアパネル26やサイドメンバやクロスメンバーなどから懸架されている場合などを含む。
受電部20や二次コイル22が、底面25に設けられているとは、受電装置11が底面25に設けられている状態において、後述する受電装置11の筐体内に収容されていることを意味する。
前輪19Fは、中央部P1よりも車両前方向F側に設けられている。前輪19Fは、車両10の幅方向に配列する右前輪19FRと左前輪19FLとを含む。後輪19Bは、幅方向に配列する右後輪19BRと左後輪19BLとを含む。
図3は、受電装置11を示す分解斜視図である。この図3に示すように、受電部20は筐体65内に収容されている。筐体65は、下方に向けて開口するように形成されたシールド66と、シールド66の開口部を閉塞するように配置された蓋部67とを含む。蓋部67は、樹脂などから形成されている。
フェライトコア21は、固定部材68内に収容されており、二次コイル22は固定部材68の周面に巻回されている。二次コイル22は、巻回軸線O2の周囲を取り囲むようにコイル線を巻回して形成されている。二次コイル22は、一端から他端に向かうにつれて、巻回軸線O2の周囲を取り囲むと共に、巻回軸線O2の延びる方向に変位するようにコイル線を巻回して形成されている。なお、本実施の形態においては、巻回軸線O2は、車両10の前後方向に延びる。
なお、シールド66は、天板部70と、天板部70の外周縁部から下方に垂れ下がるように形成された周壁部71とを含む。周壁部71は、巻回軸線O2が延びる方向に配列する端面壁72および端面壁73と、端面壁72および端面壁73の間に配置された側面壁74および側面壁75とを含む。
図4は、受電装置11および送電装置50を示す斜視図である。この図4において、
送電装置50は、送電部56と、筐体31とを含む。
送電部56は、複数のコイルユニット30A,30B,30C,30D,30E,30Fと、各コイルユニット30に接続された切替部32とキャパシタ33とを含む。
筐体31は、コイルユニット30A,30B,30C,30D,30E,30Fを収容する。筐体31は、シールド35と、蓋部36とを含む。シールド35は、底面壁と、底面壁の外周縁部から上方に向けて立ち上げるように形成された周壁部とを含む。
周壁部は、車両10の進入方向に配列する前端面壁および後端面壁と、停車する車両10の幅方向に配列する2つの側面壁とを含む。
シールド35は、上方に向けて開口する開口部が形成されている。蓋部36は、シールド35の開口部を閉塞するように形成されており、蓋部36は、たとえば、樹脂材料などから形成されている。
コイルユニット30A,30B,30C,30D,30E,30Fは、配列方向D1に配列している。配列方向D1は、受電部20と送電部56とが対向するように停車した
車両10の前後方向と同じ方向である。換言すれば、配列方向D1は、外部給電装置51の上方に進入する車両10の進入方向である。
図5は、コイルユニット30Aを示す斜視図である。コイルユニット30Aは、分割コア37Aと、分割コア37Aの周面に巻回された一次コイル38Aとを含む。分割コア37Aは、配列方向D1に配列する前端面40および後端面41と、前端面40および後端面41を接続する周面とを含む。周面は、上面43と、底面44と、側面45と、側面46とを含む。
一次コイル38Aは、第1端部47および第2端部48を含む。一次コイル38Aは、第1端部47から第2端部48に向かうにつれて、巻回軸線O1の周囲を取り囲むと共に、巻回軸線O1の延びる方向に変位するようにコイル線を巻回することで形成されている。
具体的には、第2端部48から第1端部47に向かうにつれて、側面46、上面43、側面45および底面44を順次通るように巻回されている。
なお、「一次コイル38Aを分割コア37Aの周面に巻回する」とは、図5に示すように一次コイル38Aを分割コア37Aの周面に直接巻回する場合と、分割コア37Aを樹脂性の固定部材内に収容し、この固定部材に一次コイル38Aを巻回する場合とのいずれも含む。
一次コイル38Aの第1端部47には、接点27A,28Aが設けられ、第2端部48には接点29Aが設けられている。
図5を用いて、コイルユニット30Aの構成について説明したが、図4に示すように、他のコイルユニット30B,30C,30D,30E,30Fもコイルユニット30Aと同様に形成されている。
コイルユニット30B,30C,30D,30E,30Fは、分割コア37B,37C,37D,37E,37Fと、分割コア37B,37C,37D,37E,37Fの周面に巻回された一次コイル38B,38C,38D,38E,38Fとを含む。
ここで、各一次コイル38A,38B,38C,38D,38E,38Fは、配列方向D1に配列すると共に、各一次コイル38A,38B,38C,38D,38E,38Fは、間隔をあけて配置されている。
図4において、切替部32は、複数のリレー80A,80B,80C,80D,80E,80F,81A,81B,81C,81D,81E,81F,82A,82B,82C,82D,82Eを含む。
リレー80Aは、一次コイル38Aの第2端部に設けられた接点29Aと、交流電源53に接続された接点83Aと、接点29Aおよび接点83Aの間を接続したり、接点29Aおよび接点83Aの間を切断したりする接続片84Aとを含む。
同様に、リレー80B,80C,80D,80E,80Fは、一次コイル38B,38C,38D,38E,38Fの第2端部に設けられた接点と、交流電源53に接続された接点と、各接点を接続したり、各接点を切断したりする接続片とを含む。
リレー81Aは、一次コイル38Aの第1端部に設けられた接点28Aと、交流電源53に接続された接点85Aと、接点28Aおよび接点85Aの間を接続したり、接点28Aおよび接点85Aの間を切断したりする接続片86Aとを含む。
同様に、リレー81B,81C,81D,81E,81Fは、一次コイル38B,38C,38D,38E,38Fに設けられた第1端部に設けられた接点と、交流電源53に接続された接点と、各接点を接続したり、各接点を切断したりする接続片とを含む。
リレー82Aは、一次コイル38Aの第1端部に設けられた接点27Aと、一次コイル38Bの第2端部に設けられた接点87Aと、接点27Aおよび接点87Aの間を接続したり、接点27Aおよび接点87Aの間を切断したりする接続片88Aとを含む。このように、リレー82Aは、一次コイル38Aと、一次コイル38Bとの間に設けられ、一次コイル38Aと一次コイル38Bとを直列に接続したり、一次コイル38Aと一次コイル38Bとの接続を切断したりする。
同様に、リレー82Bは、一次コイル38Bと一次コイル38Cとの接続を切り換え、リレー82Cも、一次コイル38Cと一次コイル38Dとの間の接続を切り替える。リレー82Dは、一次コイル38Dと一次コイル38Eとの間の接続を切り換え、リレー82Eは、一次コイル38Eと一次コイル38Fとの間の接続を切り替える。
この切替部32の駆動は、制御部55によって制御されている。そして、各リレーをON/OFFすることで、選択した一次コイル38A,38B,38C,38D,38E、38Fを交流電源53に接続したり、配列方向D1に隣り合う一次コイル38A,38B,38C,38D,38E、38Fを直列に接続したりする。
キャパシタ33は、選択された一次コイルと交流電源53との間に並列となるように接続されている。キャパシタ33としては、容量を変更可能な可変コンデンサである。
次に、図1のように、車両10が停車した後における送電装置50の駆動について説明する。車両10が停車すると車両10は、通信部(送信部)9から通信部(受信部)57に、二次コイル22の大きさに関する情報を通信部57に送信する。
二次コイル22の大きさに関する情報には、巻回軸線O1の延びる方向における二次コイル22の長さが含まれる。
図6は、電源に接続する一次コイルを選択する制御フローを示すフロー図である。この図6に示すように、制御部55は通信部57から二次コイル22の大きさに関する情報を得る(STEP1)。
制御部55は、受信した二次コイル22の大きさに関する情報に基づいて、直列接続させる一次コイルの個数(N)を設定する(STEP3)。具体的には、二次コイル22の大きさは、図5の巻回軸線O1の延びる方向における二次コイル22の長さとすることができる。次に、制御部55は、切替部32を駆動して、一次コイル38Aを含めて、N個の一次コイルを交流電源53に直列に接続する。
たとえば、直列接続させる一次コイルの数が2つの場合には、図4において、リレー80AがON、リレー82AがON、リレー81BがONとなり、他のリレーは、OFFとされる。これにより、一次コイル38Aを含み、2つの一次コイル38Aと一次コイル38Bとが交流電源53に直列に接続される。
次に、図6に示すように、第1電力を上記の直列接続された一次コイルに供給する(STEP5)。たとえば、上記Nが2の場合には、直列接続された一次コイル38Aおよび一次コイル38Bに、第1電力が交流電源53から供給される。
次に、制御部55は、受電部20の受電効率が所定値以上であるかを判定する。なお、所定値は、制御部55の記憶部に予め格納された閾値である。
制御部55は、受電部20の受電効率が所定値よりも小さいと判断すると(STEP6にてNO)、次に、現在、直列接続されたN個の一次コイルに、一次コイル38Fを含むか否かを判断する(STEP7)。一次コイル38Fは、一次コイルの選択開始時に必ず含まれる一次コイル38Aから最も離れた一次コイルである。
たとえば、一次コイル38Aおよび一次コイル38Bが直列に接続された状態においては、一次コイル38Fは含まれておらず、制御部55は、NOと判断する。
制御部55は、現在、直列接続されたN個の一次コイルに、一次コイル38Fが含まれていないと判断すると(STEP7においてNO)、制御部55はN個の直列接続された一次コイルが一次コイル38F側に1つずれるように、切替部32を駆動する。
たとえば、一次コイル38Aおよび一次コイル38Bが直列に接続されていた場合には、一次コイル38Bおよび一次コイル38Cが交流電源53に直列に接続されるように、切替部32を駆動する。
具体的には、切替部32は、リレー80A,81A,82AをOFFとし、リレー80B、82B,81CをONする。なお、他のリレーは、OFFとされる。これにより、一次コイル38Bおよび一次コイル38Cが直列に接続される。
次に、制御部55は、受電部20が受電する受電効率が所定値以上であるか否かを判断する(STEP6)。
制御部55は、受電部20の受電効率が所定値よりも小さいと判断すると(STEP6においてNO)、再度、現在の直列接続されている一次コイルが一次コイル38Fを含むか否かを判断する(STEP7)。そして、制御部55が一次コイル38Fを含まないと判断すると、直列接続される一次コイルを一次コイル38F側に1つずらす。
たとえば、一次コイル38Bおよび一次コイル38Cが直列に接続されていた場合にはい、一次コイル38Cおよび一次コイル38Dを直列接続させる。
次に、制御部55は、受電部20の受電効率が所定値以上であるか否かを判断する(STEP6)。図4に示す状態においては、一次コイル38Cおよび一次コイル38Dが直列に接続されている場合には、直列接続された一次コイル38Cおよび一次コイル38Dと、二次コイル22とが鉛直方向に対向する。このため、一次コイル38Bおよび一次コイル38Cと、二次コイル22との間で磁路が良好に形成される。
この際、コイルユニット30Dと、コイルユニット30Eとの間にはエアギャップが設けられており、同様に、コイルユニット30Cとコイルユニット30Bとの間にも、エアギャップが形成されている。
具体的には、一次コイル38Dと一次コイル38Eとは、互いに間隔をあけて配置されると共に、分割コア37Dと分割コア37Eとは互いに間隔をあけて配置されている。そして、一次コイル38Cと一次コイル38Bとが互いに間隔をあけて配置されると共に、分割コア37Cと一次コイル38Bとが互いに間隔をあけて配置されている。
このため、一次コイル38C,38Dと、二次コイル22との間で磁路が形成されたときに、磁束がコイルユニット30Dおよびコイルユニット30Eの間を通ることが抑制されている。さらに、磁路が形成されたときに、磁束がコイルユニット30Cおよびコイルユニット30Bの間を通ることが抑制される。
これにより、磁束が外部に漏れることを抑制することができ、送電部56から受電部20に良好に電力を送電することができる。この結果、受電部20が受電する受電効率が高くなり、受電効率が所定値以上となる。
制御部55は、受電部20の受電効率が所定値以上であると判断すると、制御部55は、直列接続された一次コイルに供給される電力が第1電力から第2電力となるように、高周波電力ドライバ54を駆動する(STEP9)。
ここで、第2電力は、第1電力よりも大きく、一次コイルに供給される電圧および電流量が大きくなる。これにより、送電部56から受電部20に大きな電力が非接触で送電される。その後、たとえば、バッテリ15が満充電状態となると、送電部56から受電部20への送電が終了する。
その一方で、上記STEP6において、制御部55は、受電部20の受電効率が所定値よりも小さいと判断すると、再度、直列接続される一次コイルを一次コイル38F側にずらす(STEP8)。
そして、上記STEP6〜STEP8を繰り返すことで、一次コイル38Fを含み、直列接続されたN個の一次コイルを用いて、受電部20に送電したとしても、受電効率が所定値よりも小さい場合には(STEP7において「YES」)の場合には、受電部20への送電を中止する(STEP10)。
たとえば、「N」が2の場合であって、コイルユニット30Fとコイルユニット30Eとが直列接続して、受電部20に電力を送電したときに、受電部20の受電効率が所定値よりも小さい場合には、受電部20への送電を中止する。
この場合には、受電部20が、コイルユニット30A〜30Fの上方から離れた領域に位置していると考えられるためである。
次に、受電部20と送電部56との間で行われる電力伝送の原理について図7から図9を用いて説明する。
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、送電部56の固有周波数と、受電部20の固有周波数との差は、受電部20または送電部56の固有周波数の10%以下である。このような範囲に各送電部56および受電部20の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を高めることができる。その一方で、固有周波数の差が受電部20または送電部56の固有周波数の10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%より小さくなり、バッテリ15の充電時間が長くなるなどの弊害が生じる。
ここで、送電部56の固有周波数とは、キャパシタ33が設けられていない場合には、一次コイル58のインダクタンスと、一次コイル58のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ33が設けられた場合には、送電部56の固有周波数とは、一次コイル58およびキャパシタ33のキャパシタンスと、一次コイル58のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、送電部56の共振周波数とも呼ばれる。
同様に、受電部20の固有周波数とは、キャパシタ23が設けられていない場合には、二次コイル22のインダクタンスと、二次コイル22のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ23が設けられた場合には、受電部20の固有周波数とは、二次コイル22およびキャパシタ23のキャパシタンスと、二次コイル22のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、受電部20の共振周波数とも呼ばれる。
図7および図8を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図7は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。電力伝送システムは、送電装置190と、受電装置191とを備え、送電装置190は、コイル192(電磁誘導コイル)と、送電部193とを含む。送電部193は、コイル194(1次コイル)と、コイル194に設けられたキャパシタ195とを含む。
受電装置191は、受電部196と、コイル197(電磁誘導コイル)とを備える。受電部196は、コイル199とこのコイル199(2次コイル)に接続されたキャパシタ198とを含む。
コイル194のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ195のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。コイル199のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ198のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、送電部193の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、受電部196の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、送電部193および受電部196の固有周波数のズレと、電力伝送効率との関係を図8に示す。なお、このシミュレーションにおいては、コイル194およびコイル199の相対的な位置関係は固定した状態であって、さらに、送電部193に供給される電流の周波数は一定である。
図8に示すグラフのうち、横軸は、固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は、一定周波数での伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記式(3)によって示される。
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図8からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が±0%の場合には、電力伝送効率は、100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は、40%となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は、10%となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は、5%となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、受電部196の固有周波数の10%以下の範囲となるように各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が受電部196の固有周波数の5%以下となるように、各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率をより高めることができることがわかる。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
次に、本実施の形態に係る電力伝送システムの動作について説明する。
図1において、選択され、直列接続された一次コイルには、高周波電力ドライバ54から交流電力が供給される。この際、一次コイルを流れる交流電流の周波数が特定の周波数となるように電力が供給されている。
一次コイルに特定の周波数の電流が流れると、一次コイルの周囲には特定の周波数で振動する電磁界が形成される。
二次コイル22は、一次コイルから所定範囲内に配置されており、二次コイル22は一次コイルの周囲に形成された電磁界から電力を受け取る。
本実施の形態においては、二次コイル22および一次コイルは、所謂、ヘリカルコイルが採用されている。このため、一次コイルの周囲には、特定の周波数で振動する磁界および電界が形成され、二次コイル22は主に当該磁界から電力を受け取る。
ここで、一次コイルの周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と一次コイルに供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、一次コイルに供給される電流の周波数との関係について説明する。一次コイルから二次コイル22に電力を伝送するときの電力伝送効率は、一次コイルおよび二次コイル22の間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電部56および受電部20の固有周波数(共振周波数)を固有周波数f0とし、一次コイルに供給される電流の周波数を周波数f3とし、二次コイル22および一次コイルの間のエアギャップをエアギャップAGとする。
図9は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、一次コイルに供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。
図9に示すグラフにおいて、横軸は、一次コイルに供給する電流の周波数f3を示し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、一次コイルに供給する電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、一次コイルに供給する電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような第1の手法が考えられる。第1の手法としては、図1に示す一次コイルに供給する電流の周波数を一定として、エアギャップAGにあわせて、キャパシタ33やキャパシタ23のキャパシタンスを変化させることで、送電部56と受電部20との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が挙げられる。具体的には、一次コイルに供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ33およびキャパシタ23のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、一次コイルおよび二次コイル22に流れる電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置50と高周波電力ドライバ54との間に設けられた整合器を利用する手法や、コンバータ14を利用する手法などを採用することもできる。
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、一次コイルに供給する電流の周波数を調整する手法である。たとえば、図9において、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、一次コイルには周波数が周波数f4または周波数f5の電流を一次コイルに供給する。そして、周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数が周波数f6の電流を一次コイルに供給する。この場合では、エアギャップAGの大きさに合わせて一次コイルおよび二次コイル22に流れる電流の周波数を変化させることになる。
第1の手法では、一次コイルを流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、一次コイルを流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が一次コイルに供給される。一次コイルに特定の周波数の電流が流れることで、一次コイルの周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電部20は、受電部20と送電部56の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電部56から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、一次コイルに供給する電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、一次コイルおよび二次コイル22の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、一次コイルに供給する電流の周波数を調整する場合がある。
なお共鳴コイルとしてヘリカルコイルを採用した例について説明したが、共鳴コイルとして、メアンダラインなどのアンテナなどを採用した場合には、一次コイルに特定の周波数の電流が流れることで、特定の周波数の電界が一次コイルの周囲に形成される。そして、この電界をとおして、送電部56と受電部20との間で電力伝送が行われる。
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。図10は、電流源または磁流源からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図10を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電磁界」と「誘導電磁界」と「静電磁界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πとあらわすことができる。
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、本実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、近接する固有周波数を有する送電部56および受電部20(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、送電部56から他方の受電部20へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
このように、この電力伝送システムにおいては、送電部と受電部とを電磁界によって共振(共鳴)させることで送電部と受電部との間で非接触で電力が送電される。このような受電部と送電部との間に形成される電磁場は、たとえば、近接場共振(共鳴)結合場という場合がある。
本実施の形態の電力伝送における送電部56と受電部20との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「磁場共振(共鳴)結合」、「近接場共振(共鳴)結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」または「電界(電場)共振結合」という。
「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
本明細書中で説明した送電部56の一次コイルと受電部20の二次コイル22とは、コイル形状のアンテナが採用されているため、送電部56と受電部20とは主に、磁界によって結合しており、送電部56と受電部20とは、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」している。
なお、一次コイルおよび二次コイル22として、たとえば、メアンダラインなどのアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部56と受電部20とは主に、電界によって結合している。このときには、送電部56と受電部20とは、「電界(電場)共振結合」している。このように、本実施の形態においては、受電部20と送電部56との間で非接触で電力伝送をしている。このように、非接触で電力伝送する際には、受電部20と送電部56との間には、主に、磁界が形成される。
(実施の形態2)
図11から図12を用いて、本実施の形態2に係る車両10および外部給電装置51について説明する。図11は、車両10および外部給電装置51を模式的に示す模式図である。この図11に示すように、送電装置50は、送電部56と、この送電部56を収容する筐体(図示せず)とを含む。
送電部56は、コイルユニット100と、キャパシタ101とを含み、コイルユニット100は、コア102と、コア102の周面に巻回された一次コイル103とを含む。車両10は、受電装置11を備え、受電装置11は、受電部と、受電部を収容する筐体とを含む。
図12は、受電装置11および送電部56を模式的に示す斜視図である。この図12に示すように、受電装置11は、受電部110と、筐体111とを含む。
筐体111は、下方に向けて開口する開口部が形成されたシールド115と、シールド115の開口部を閉塞するように設けられた蓋部116とを含む。
受電部110は、配列方向D2に間隔をあけて配列する複数のコイルユニット112A,112B,112C,112D,112E,112Fと、選択部113と、キャパシタ114とを含む。
図13は、コイルユニット112Aを示す斜視図である。この図13に示すように、コイルユニット112Aは、分割コア117Aと、分割コア117Aの周面に巻回された二次コイル118Aとを含む。
分割コア117Aは、配列方向D2に配列する前端面120および後端面121と、前端面120および後端面121の間に位置する周面とを含む。周面は、上面122と、下面123と、側面124および側面125とを含む。
二次コイル118Aは、第1端部126および第2端部127を含む。二次コイル118Aは、第1端部126から第2端部127に向かうにつれて、巻回軸線O2の周囲を取り囲むと共に、巻回軸線O2が延びる方向に変位するようにコイル線を巻回することで形成されている。
なお、二次コイル118Aが分割コア117Aの周面に巻回されているとは、二次コイル118Aが分割コア117Aの周面に直接巻回されている場合と、分割コア117Aを収容する固定部材を間に挟んで、二次コイル118Aが分割コア117Aの周面に巻回されている場合とのいずれも含む。
なお、この図13に示す例においては、第2端部127から第1端部126に向かうにつれて、二次コイル118Aは、側面125、下面123、側面124および上面122を順次通るように形成されている。
第1端部126には、接点128が設けられており、接点128よりも第2端部127側には、接点129が設けられている。この図13に示す例においては、接点128および接点129は、二次コイル118Aの端部に設けられているが、各接点は、二次コイル118Aの途中に設けられていてもよい。
なお、図12において、コイルユニット112B,112C,112D,112E,112Fは、コイルユニット112Aと同様に形成されている。
コイルユニット112B,112C,112D,112E,112Fは、分割コア117A,117B,117C,117D,117E,117Fと、分割コア117B,117C,117D,117E,117Fの周面に巻回された二次コイル118B,118C,118D,118E,118Fとを含む。
そして、二次コイル118B,118C,118D,118E,118Fの第1端部には、接点が設けられ、第2端部にも接点が設けられている。
選択部113は、リレー130A,130B,130C,130D,130E,130Fと、リレー131A,131B,131C,131D,131E,131Fと、リレー132B,132C,132D,132E,132Fとを含む。
ここで、リレー130Aは、二次コイル118Aの第1端部126に設けられた接点128と、受電ユニット18との接続状態を切り替える。
同様に、リレー130B,130C,130D,130E,130Fは、二次コイル118B,118C,118D,118E,118Fの第1端部に設けられた接点と、受電ユニット18との接続状態を切り替える。
リレー131Aは、二次コイル118Aの接点128と受電ユニット18との接続状態を切り替える。
同様に、リレー131B,131C,131D,131E,131Fは、二次コイル118B,118C,118D,118E,118Fの第2端部に設けられた接点と、受電ユニット18との接続状態を切り替える。
リレー132Bは二次コイル118Aと二次コイル118Bとの間の接続状態を切り替える。リレー132Cは、二次コイル118Bと、二次コイル118Cとの間の接続を切り替える。
リレー132Dは、二次コイル118Cと、二次コイル118Dとの間の接続を切り替える。リレー132Eは、二次コイル118Dと二次コイル118Eとの間の接続を切り換える。リレー132Fは、二次コイル118Eと二次コイル118Fとの間の接続を切り替える。
この選択部113は、二次コイル118A,118B,118C,118D,118E,118Fから選択した二次コイルを受電ユニット18に接続する。選択された二次コイルは、バッテリ15に接続される。
選択部113は、複数の二次コイルを選択するときには、配列方向D2に隣り合う二次コイルを選択して、各二次コイルをバッテリ15に直列に接続する。
このようにして、選択部113は、対向配置される一次コイル103の長さに応じて、直列接続された二次コイルの長さを調整する。これにより、一次コイル103から電力を受電する受電コイルの長さを調整することができる。
同様に、選択部113は、直列接続される二次コイルの位置を一次コイル103の位置に応じて変更する。これにより、受電効率のよい位置で一次コイル103から電力を受電することができる。なお、選択部113の駆動は、上記実施の形態1の切替部32と同様である。
ここで、図12に示す状態においては、リレー130Dと、リレー132Dと、リレー131CとがON状態であり、他のリレーはOFFとされている。
これにより、二次コイル118Cと二次コイル118Dとがバッテリ15に対して直列に接続されている。
そして、一次コイル103に電流が流れることで、一次コイル103と二次コイル118C,118Dとを通る磁路が形成される。
ここで、分割コア117Cと分割コア117Bとは互いに間隔をあけて配置されると共に、二次コイル118Cと二次コイル118Bとは互いに間隔をあけて配置されている。
また、分割コア117Dと、分割コア117Eとは互いに間隔をあけて配置されると共に、二次コイル118Dと二次コイル118Eとは互いに間隔をあけて配置されている。
二次コイル118Cから二次コイル118Bに磁束が流れることを抑制することができると共に、二次コイル118Dから二次コイル118Eに磁束が流れることを抑制することができる。
これにより、一次コイル103と、二次コイル118C,118Dとの間で流れる磁束量が少なくなることを抑制することができ、受電部110の受電効率が高くなる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。