本発明の第1の発明に係るロータリーカッター用カッターロールは、第1素材で形成される円柱状の本体部であって、本体部の最外層より第1深さの段差で落ち込んだ一対の第1段差部と、第1深さより深い段差で落ち込んだ一対の第2段差部と、を有する本体部と、一対の第1段差部に装着される、第2素材で形成されるリング形状の一対の第1基材と、一対の第2段差部に装着される、第2素材で形成されるリング形状の一対の第2基材と、一対の第1基材は、本体部の最外層よりも高く突出しており、一対の第1基材の間と最外層で形成される凹部に装着される第3素材で形成されるカッター部材と、一対の第2基材の表面に設けられる第3素材で形成される一対のリング形状のガイドリングと、を備え、第3素材は、第1素材および第2素材よりも、高い硬さを有し、第3素材は、第1素材および第2素材よりも、低い熱膨張係数を有し、カッター部材は、その表面から突出して切断対象物に押し切り圧力を付与する突出刃を有する
この構成により、ガイドリングにおける熱膨張による突出量とカッター部材における熱膨張による突出刃の突出量と、の差分量の変化が一定範囲に抑えられる。
本発明の第2の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1の発明に加えて、第1素材および第2素材は、同一素材である。
この構成により、ガイドリングにおける熱膨張による突出量とカッター部材における熱膨張による突出刃の突出量と、の差分量の変化がより減少できる。
本発明の第3の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1又は第2の発明に加えて、第1素材および第2素材のそれぞれの熱膨張係数は、10.0〜13.0×10−6/Kであり、第3素材の熱膨張係数は、5.5〜7.0×10−6/Kである。
この構成により、熱膨張係数の相違に合わせた、突出量の差分量を調整できる。
本発明の第4の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、ガイドリングは、カッター部材の表面より第1突出量で突出し、突出刃は、カッター部材の表面より第2突出量で突出し、第2突出量は、第1突出量よりも所定位置以内で大きく、所定値は、−5μm〜5μmである。
この構成により、突出刃が、丁度よい押し切り圧力を、切断対象物に与えることができる。突き出し量がマイナスというのは、ガイドリングが突出刃よりも突出した状態である。切断対象物が低い押し切り圧力で切断できる場合、2層以上の材質を重ねている場合、完全に切断しないハーフカットを行なうなどの場合には、突き出し量がマイナスをとりうる。繊維、紙、不織布などの切断においては、突き出し量が0.5〜5μmが好ましい。
本発明の第5の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第4の発明に加えて、本体部は、所定の回転軸に基づいて回転可能であり、本体部に装着された、第1基材、第2基材、カッター部材およびガイドリングにより構成される全体が、本体部の回転に合わせて回転し、突出刃は、第1突出量と第2突出量との差分量によって、切断対象物へ押し切り圧力を付与する。
この構成により、カッターロールは、突出刃による押し切り圧力で、切断対象物を押し切ることができる。
本発明の第6の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第5の発明に加えて、第1突出量と第2突出量との差分量は、ガイドリングの第1突出量の調整に基づいて、調整可能である。
この構成により、調整が困難なカッター部材に代わって、ガイドリングが、第1突出量と第2突出量との差分量を容易に調整できる。
本発明の第7の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第6のいずれか記載の本体部の凹部に、本体部の表面から、カッター部材が嵌めこまれ、本体部の一対の第1段差部のそれぞれに、本体部の両端のそれぞれから、一対の第1基材のそれぞれが嵌めこまれ、本体部の一対の第2段差部のそれぞれに、本体部の両端のそれぞれから、一対の第2基材のそれぞれが嵌めこまれ、一対の第2基材のそれぞれの表面に、一対のガイドリングのそれぞれが嵌めこまれて、形成される。
この構成により、カッターロールが、容易且つ確実に組み上げられる。
本発明の第8の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、回転軸から、カッター部材の底面までの距離をX1とし、回転軸からガイドリングの底面までの距離をX2とする場合に、
X1 < X2
の関係を有する。
この構成により、第1突出量と第2突出量との差分量は、カッターロールが熱変化に伴う熱膨張によっても、一定範囲に収まるようになる。
本発明の第9の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、突出刃の高さをH1、カッター部材であって、突出刃を除く厚みをH2、ガイドリングの厚みをH3と、定義する場合に、(関係式1)H1<H3<(H1+H2)、更に好ましくは、(関係式2)(H2+0.2×H1)≦H3≦(H2+0.8×H1)、が、成立する。
この構成により、稼働時間の経過に伴っても、突出量の差分量が一定範囲に収まるようになる。
本発明の第10の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、第1突出量と第2突出量と、の差分量は、切断稼動前に所定値に調整され、切断稼動開始後での所定の稼動温度範囲における差分量は、一定範囲に収まる。
この構成により、カッターロールが切断稼動によって熱をもって熱膨張しても、第1突出量と第2突出量との差分量が一定範囲に収まるので、稼動が進んで熱をもっても、カッターロールはその切断性能を低下させない。
本発明の第11の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第10の発明に加えて、稼動温度範囲は、10℃以上50℃以下である。
この構成により、通常の切断工程を必要とする製造工程で、カッターロールの切断性能が低下することが減少する。
本発明の第12の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第11の発明に加えて、差分量の一定範囲は、10℃以上50℃以下の稼動温差分量の一定範囲は、10℃以上50℃以下の稼動温度範囲においては、0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
この構成により、通常の切断工程を必要とする製造工程で、カッターロールの切断性能が低下することが減少する。
本発明の第13の発明に係るロータリーカッター用カッターロールでは、第1から第12のいずれかの発明にくわえて、第1突出量と第2突出量と、の差分量は、切断稼動前に所定値に調整され、切断稼動開始後においての、カッター部材の稼働時間範囲での差分量は、一定範囲に収まる。
この構成により、カッターロールは、必要な稼働時間において、その突出刃の突出量の最適範囲を維持でき、切断性能を低下させにくい。
以下、図面を用いながら実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
(参考技術の説明)
まず、ロータリーカッター用カッターロール(以下、「カッターロール」という)の参考技術を説明する。図1は、本発明の参考技術におけるカッターロールの正面図である。図2は、本発明の参考技術におけるカッターロールの組み立てを説明する模式図である。なお、図1、図2に示されるカッターロールは、カッターロールを正面から見ている状態を示しているので、4つの角部の構成が同様である。このため、同じ要素への符号の表示を省略しているが、4つの角部のそれぞれにおいて101〜105等の符号と同じ形状の要素は、101〜105等で説明される要素と同等の要素である。
図1は、図2の組み立ての結果組みあがったカッターロール100を示している。カッターロール100は、筒状の本体部101を、その基本部材として備えている。本体部101は、カッターロール100の芯材となる。本体部101は、鉄や鉄系合金などの第1素材で形成される筒状の部材であって、回転軸110に基づいて、回転可能である。また、図2より明らかな通り、本体部101は、段差が幾つも設けられた形状を有している。
本体部101は、本体部101の両端のそれぞれに、一対の第1段差部130、一対の第2段差部131、一対の第3段差部132を有している。すなわち、本体部101は、段々形状を有した筒状の部材である。本体部101に、カッター部材102が側面から嵌めこまれ、次に第1基材104が側面から嵌め込まれる。
更に、本体部101の側面から、ガイドリング105が嵌め込まれる。ここで、カッター部材102は、図1、図2では、凹部134に嵌め込まれた部分のみを示しているが、第1基材104によって凹部が形成されてカッター部材102がこの凹部に嵌め込まれる。凹部にはめ込まれるというのは構造の説明上のことであり、後述のように製造上は、カッター部材102〜第1基材104〜ガイドリング105の順で嵌め込まれる。
カッター部材102は、その表面に突出する突出刃103を備えている。カッター部材102は、突出刃103を切断対象物に押し当てることで、圧力を付与して押し切りで切断する。
また、一対の第1段差部130のそれぞれに、一対の第1基材104のそれぞれが、本体部101の両端のそれぞれから嵌め込まれる。第1基材104は、本体部101の筒状にあわせたリング形状を有しており、第1段差部130も筒状となっているので、この筒状の第1段差部130に、リング形状の一対の第1基材104のそれぞれが両側から嵌め込まれる。
一対の第1基材104のそれぞれが両側からはめ込まれると、次に、一対の第2段差部131のそれぞれに、一対のガイドリング105のそれぞれが嵌め込まれる。ガイドリング105も、筒状の本体部101に合わせてリング形状を有しており、第2段差部131に嵌め込まれるようにして装着される。ガイドリング105が装着されると、第3段差部132は、そのままカッターロール100の両端に残り、回転軸110で回転させるための駆動装置への実装などに用いられる。
ここで、本体部101は、鉄や鉄合金などの第1素材で形成される。第1基材も、鉄や鉄合金の第1素材や同様の素材である第2素材で形成される。一方、カッター部材102とガイドリング105のそれぞれは、第1素材および第2素材とは異なる第3素材で形成される。第3素材は、超硬合金などの素材であり、第1素材および第2素材よりも硬さが高い。一方、第3素材は、第1素材および第2素材よりも低い熱膨張係数を有している。
なお、第1素材および第2素材のそれぞれは、鉄鋼材料である、クロムモリブデン鋼、SNCM材、SC材、SUJ材などが用いられることが適当である。一方、第3素材としては、WC+Co系超硬合金、WC+Ni系超硬合金、あるいはこれらにCr、V、Nb、Taなどの炭化物や、金属バインダーを足した超硬合金が用いられることが適当である。
ガイドリング105およびカッター部材102(突出刃103)が、カッターロールと対になるアンビルロールに接触しながら回転して、切断対象物を切断する。このため、耐久性はもちろん、切断能力を確保するためにも、ガイドリング105およびカッター部材102(突出刃103)は、超硬合金などの硬さの高い素材で形成される。
一方、第3素材となる超硬合金は、その熱膨張係数が低い。例えば、5.5〜7.0×10−6/K(代表的な素材の場合には6.0×10−6/K)程度である。一方鉄や鉄合金などの低コストの第1素材や第2素材は、10.0〜13.0×10−6/K(代表的な素材の場合には11.2×10−6/K)程度の熱膨張係数を有しており、熱膨張係数は、相対的に高い。
図1の矢印A,矢印Bは、それぞれカッターロール100の熱膨張方向を示している。カッターロール100は、対となるアンビルロールと組み合わされてロータリーカッターとして使用される。ロータリーカッターとして使用される稼動時間において、カッターロール100は、熱を持つようになり、その温度が上昇する。この結果、カッターロール100は、矢印A、矢印Bに示されるように、カッターロール回転軸を中心に径方向に熱膨張する。なお、カッターロールの長さ方向(図横方向)への膨張は、切断に直接関係しないので考慮しない。ここで、ガイドリング105の部分では、熱膨張係数の高い第1素材の径方向の長さは、回転軸110を基準とすると短い。一方、カッター部材102の部分では、熱膨張係数の高い第1素材(あるいは第2素材)の断面方向の長さは、回転軸110を基準とすると長い。
このため、矢印Aで示されるガイドリング部分の熱膨張による突出量は、矢印Bで示されるカッター部材102部分の熱膨張による突出量よりも小さくなる。このため、稼動時間が進んで、カッターロール100の温度が上がるにつれて、突出刃103のガイドリング105に対しての突出量が、稼動開始時(開始前)よりも大きくなってしまう。
こうなると、稼働中に突出刃103のアンビルロールに対する相対的な突出量が大きくなってしまう。
カッターロール100は、図3に示されるように対となるアンビルロールと組み合わされてロータリーカッターを形成する。図3は、本発明の参考技術におけるロータリーカッターの正面図である。カッターロール100にアンビルロール200が接触するように組み合わされて、双方が回転して、その接触面(アンビルロール200の表面201)を、切断対象物が通過する。この通過する切断対象物を、カッターロール100の突出刃103がアンビルロール200の表面201に押し当て圧力を付与することで、切断対象物を押し切りする。
このとき、ガイドリング105は、カッターロール100の両端か近い位置でアンビルロール200に接触して、カッターロール100の表面108とアンビルロール200の表面201との距離を決める。
この表面108と表面201との距離は、すなわち、突出刃103の表面201との距離、すなわち押し当て圧力を決定できる。ロータリーカッター300では、カッターロール100のガイドリング105によって、突出刃103の表面201への突出量が、稼動前に最適に調整される。すなわち、ロータリーカッターでの切断稼動開始前に、ガイドリング105の突出量の調整によって、突出刃103の最適な突出量が調整されている。最適な突出量とは、アンビルロール200の表面201への付与圧力、すなわち通過する切断対象物への付与圧力が最適となる状況である。図1の差分量120は、このガイドリング105と突出刃103の突出量の相対的な差分を示すものである。
稼動開始前に、切断に最適なガイドリング105を基準とする突出刃103の突出量が調整されている場合には、稼動開始後に上述のようにカッターロール100が熱を持つことで、突出刃103の相対的な突出量が大きくなってしまう。こうなると、突出刃103のアンビルロール200の表面201への付与圧力が大きくなりすぎて、例えば鉄材よりも硬さの高い反面で靱性の低い突出刃103は、欠けてしまうことがある。こうなれば、当然に切断不良が生じてしまう。大量生産の製造現場では、非常にデメリットが高い。
一方、稼動中の温度上昇による突出量増加を考慮して、稼動前の突出刃103のガイドリング105を基準とした突出量を少なめにすると、稼動開始後に切断不良が生じてしまい、一定の稼動(暖機運転、デモ運転)時間を経てからでないと、本稼動としてロータリーカッター300が使用できない問題もある。
稼動前、稼動中のいずれに合わせるにしても、矢印A、矢印Bで示されるように、カッター部材102での熱膨張とガイドリング105での熱膨張が大きく相違することで、切断不良や突出刃103の損傷などが生じてしまう。
(全体概要)
本発明の実施の形態1は、参考技術で説明した問題点を解消するものである。カッターロールは、図2で説明したように心材となる本体部の両端側から、必要な部材を嵌め込んで形成する必要がある。このために、ガイドリングやカッター部材を挿入するための凹部を形成する基材などを両端から嵌め込んで形成する必要がある。すなわち、この両端から嵌め込んで形成しなければならない前提で、参考技術で説明した問題点を解決する必要がある。
図4は、本発明の実施の形態1におけるカッターロールの正面図である。図5は、本発明の実施の形態1におけるカッターロールの組み立てを示す正面図である。なお、図5においてはカッター部材3を図面下部のみに記載しているが、上部にも同様の部材はある。一対の第1部材により形成される凹部7を示すために上部にはあえて記載していない。上部に点線で表した中央部の径が小さく、左右の第1部材によって形成される部分が凹部7である。図6は、本発明の実施の形態1におけるカッターロールの組み立てを示す斜視図である。なお、図6は、向かって右側の第1基材、第2基材、ガイドリングを嵌め込んでおり、左側のカッター部材、第1基材、第2基材、ガイドリングを嵌め込む前の状態の模式図である。
なお、図2と同様に、図5は、組み立ての状況を正面から見た状態であり、図4と対照させやすいように示しているが、各部材は、リング形状を有しており、リング形状の部材が、本体部2の両端から嵌めこまれてカッターロール1が組み立てられる。これは、図6により、分かりやすく示されるものである。
図7は、本発明の実施の形態1におけるカッターロールの側面図である。図7の側面図に示されるように、リング形状の部材が嵌めこまれて、カッターロール1の側面(断面)は、円形である。
カッターロール1は、本体部2、カッター部材3、一対の第1基材4、一対の第2基材6、一対のガイドリング5を備えている。図4、図5において、カッターロール1は、4隅に同様の構造と部材(第1基材4、第2基材6、ガイドリング5)を有しているが、見易さのために、符号の付与は省略している。符号は、図4、図5の右上の部分のみに付与している。
本体部2は、鉄や鉄合金などの第1素材で形成される円柱状の部材であり、図4、図5より明らかな通り、段々とした段差を有している。具体的には、本体部2は、その最外層より第1深さの段差で落ち込んだ第1段差部21と、第1深さより深い段差で落ち込んだ第2段差部22と、更に深い段差で落ち込んだ第3段差部23を、備えている。これら第1段差部21は、本体部2の両端に一対で設けられ(図4では、正面からの見た目を分かりやすくするために、4箇所あるように見えるが、実際には、図7のように本体部2は円筒状であり、後述の第1基材4などはリング形状を有しているので、第1基材4などを嵌めこむ場所となる第1段差部21、第2段差部22、第3段差部23は、本体部2の両側(必ずしも端部に限定されるわけではない)に一対で設けられる。
カッター部材3は、超硬合金などの硬さの高い第3素材で形成され、後述する一対の第1基材4が、本体部2の両側から第1段差部21に嵌めこまれて形成される、本体部2の表面の凹部7に嵌め込まれる。実際のカッターロール1の製造においては、本体部2の表面の凹部7は、本体部2の両側に設けられる一対の第1段差部21より突出した最外層に設けられる。このため、最初に、この最外層に、カッター部材3が嵌めこまれるか、片方の第1部材を嵌め込んだ後にカッター部材3が装着される。
円筒状のカッター部材3が、本体部2の側面から嵌め込まれる。その後に、後述するように、第1基材4などが、本体部2の側面から嵌め込まれる。このようにして、図4に示される、実施の形態1におけるカッターロールが構成される。
一対の第1基材4のそれぞれは、鉄や鉄合金などの第2素材で形成されるリング形状の部材であり、図5のように、本体部2の両側から、第1段差部21にはめ込まれることで装着される。装着後は、図4に示されるように、第1段差部21に嵌めこまれて、この第1段差部2を埋める。
一対の第2基材6のそれぞれは、鉄や鉄合金などの第2素材で形成されるリング状の部材である。第1基材4と同様に、本体部2に形成されている第2段差部22に、本体部2の両側から、リング形状である第2基材6が嵌めこまれて、一対の第2基材6のそれぞれが、一対の第2段差部22のそれぞれに装着される。この第2基材6は、参考技術では設けられなかったものであり、この第2基材6の上(外層)に、後述のガイドリング5が装着される。
なお、第1基材4で用いられる第2素材と第2基材6で用いられる第2素材とは、同じ素材であってもよいし、異種の素材であってもよい。要は、第3素材との区別を明確にするために、第2素材として定義しているだけである。また同様に、第1素材と第2素材とも、同じ素材であってもよいし、異種の素材であってもよい。第1素材、第2素材は、要は、硬さおよび熱膨張係数で大きく異なる第3素材との区別を明確にするための定義である。すなわち、本体部2、第1基材4および第2基材6の全てが同じ素材であってもよいし、一部が同じ素材であってもよいし、それぞれ異なる素材であってもよい。
なお、第2基材6は焼き嵌めや冷やし嵌めで本体部2に固定されていてもよいし、ロールの長さ方向からのボルト締めなどの手段にて固定してもよい。後述のガイドリングをさらに嵌め込むことを考えると、両方の手段で第2基材と本体部を固定することが最もよい。
第2基材6が装着されると、第2基材6の表面に、第3素材で形成されるリング形状のガイドリング5が、同様に本体部2の両側から嵌め込まれる。ガイドリング5は、第3素材で形成される。図5は、はめ込みの様子を示している。はめ込まれると、図4のように、第2基材6の上(外層)に、ガイドリング5が装着される。図4で見ると、円筒状の本体部2の外に、第2基材6が露出しており、その外層に、ガイドリング5が露出している。またガイドリング5より僅かに、突出刃31が突出していることが分かる。
以上のように、本体部2にカッター部材3が嵌めこまれ、本体部2の一対の第1段差部21のそれぞれに、本体部2の両側のそれぞれから一対の第1基材4のそれぞれが嵌めこまれ、次いで、本体部2の一対の第2段差部22のそれぞれに、本体部2の両側のそれぞれから一対の第2基材6のそれぞれが嵌めこまれ、最後に、一対の第2基材のそれぞれの表面に、本体部2の両側のそれぞれから一対のガイドリング5が嵌めこまれて、実施の形態1のカッターロール1が製造される。
図5における矢印は、この、それぞれの部材の嵌め込みを示している。
図4を図1と比較すればわかる通り、実施の形態1におけるカッターロール1は、ガイドリング5の下方(内層)に、第2基材6を備えている。また、カッター部材3は、カッター部材3の表面から突出して、対となるアンビルロールの表面(切断対象物)に押し切り圧力を付与する突出刃31を備えている。
図4に記載の破線と破線の差分を示す差分量12は、ガイドリング5と突出刃31の突出量との差分を示している。この差分量12が、最適に調整されることで、突出刃31が、切断対象物に最適な押し切り圧力を付与できる。
ガイドリング5およびカッター部材3(突出刃31も含めて)は、第3素材で形成される。第3素材は、超硬合金などの硬さの高い素材である。第3素材は、第1素材および第2素材よりも、高い硬さを有している。また第3素材は、第1素材および第2素材よりも、低い熱膨張係数を有する。カッター部材3は、突出刃31を用いて切断対象物を切断するので、高い硬さの第3素材で形成されることを必要とする。ガイドリング5は、アンビルロールと接触して、カッターロール1とアンビルロールとの距離を調整しつつ、回転の際に接触し続けるので、やはり高い硬さの第3素材を必要とする。このため、ガイドリング5とカッター部材3は、第3素材で形成される。
なお、ガイドリング5とカッター部材3を形成するそれぞれの第3素材は、同一の素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。第3素材との定義は、第1素材および第2素材と、その硬さおよび結果としての熱膨張係数が異なることを定義するものであり、素材の物性を厳密に限定するものではない。
図4には、矢印C、矢印Dが示されている。図4から明らかな通り、参考技術の図1と異なり、回転軸10からカッター部材3の底面までの第1素材での本体部2の径方向の長さと、回転軸10からガイドリング5の底面までの第1素材および第2素材での本体部2および第2基材6の長さと、は、若干の差があるものの、ほぼ同じ程度になる。カッターロール1が稼動によって熱を持つようになると、熱膨張係数の高い第1素材の本体部2と第2素材の第1基材4および第2基材6とが、熱膨張する(もちろん、第3素材のガイドリング5とカッター部材3も熱膨張する)。
矢印Cと矢印Dは、この熱膨張を示している。ここで、第1素材および第2素材のそれぞれの熱膨張係数は、10.0〜13.0×10−6/Kであり、第3素材の熱膨張係数は、5.5〜7.0×10−6/Kであることが一例として挙げられる。このため、第1素材、第2素材で形成される、本体部2、第1基材4および第2基材6の熱による膨張と、第3素材で形成されるカッター部材3とガイドリング5での熱膨張は異なってくる。
しかしながら、実施の形態1におけるカッターロール1は、参考技術のカッターロール100と異なり、回転軸10からカッター部材3の底面までの第1素材での本体部2の長さと、回転軸10からガイドリング5の底面までの第1素材および第2素材での本体部2および第2基材6の長さと、は、若干の差があるものの、ほぼ同じ程度である。このため、矢印Cで示される熱膨張と、矢印Dで示される熱膨張との差は、小さい。この結果、カッターロール1が稼動によって熱を持つようになっても、ガイドリング5の突出量と突出刃31の突出量との差分量12が、余り変化しない。
この結果、実施の形態1におけるカッターロール1は、稼動前に調整していた差分量12を、稼動時間にわたって、一定範囲に維持できる。一定範囲に維持されれば、突出刃31が、アンビルロールに対して付与する押し切り圧力が強くなりすぎることも無いので、突出刃31が欠けるなどの問題も生じない。あるいは、稼動進行での熱上昇に合わせて、稼動前の突出刃31の突出量を小さくしておく必要もない。結果として、突出刃31が欠けることでの稼動時間経過後での切断不良や、突出刃31の突出量が小さすぎることによる稼動開始直後での切断不良が防止される。
もちろん、突出刃31の損傷が防止されることで、カッターロール1(ロータリーカッターそのもの)の、耐久性、使用期間確保も可能となり、使用者側の設備コストを低減できる。この結果、カッターロール1に対する信頼性が向上し、使用者に対するアピールとなる。
(カッターロールによる切断)
カッターロール1は、回転軸10を基準に回転する。このとき、対となるアンビルロールと一緒に回転して、回転する間を通過する切断対象物を、突出刃31の押し切り圧力によって、切断する。
図8は、本発明の実施の形態1におけるロータリーカッターの正面図である。図8は、図4で説明したカッターロール1に対となるアンビルロール40が組み合わされたロータリーカッター50を正面から示している。カッターロール1とアンビルロール40は、相互に対向しており、対向する部分に切断対象物を通過させる通過領域51を形成する。
カッターロール1は、回転軸10を基準に、矢印Fの方向に回転する。同様にアンビルロール40は、回転軸42を基準に、矢印Gの方向に回転する。この回転によって、通過領域51に嵌め込まれた切断対象物(紙、布、不織布、金属板、その他など)が、通過できる。図8に示されるとおり、カッターロール1とアンビルロール40とは、逆方向に回転して、通過領域51において、切断対象物を通過させる。逆方向回転により、切断対象物を引き込むようにして取り込むからである。
ここで、カッターロール1とアンビルロール40との対向距離は、カッターロール1のガイドリング5とアンビルロール40の硬質部分45との対向接触によって決定される。アンビルロール40は、カッター部材を有するものではなく、カッターロール1と対になって、カッター部材3の突出刃31の押し切り圧力を受ける要素であるので、硬質部45は、図8のように、アンビルロール40の表面全体に形成されてもよい。また、切断対象の種類などによっては、あえて硬質部材を設けないことも可能である。
アンビルロール40の硬質部45と、カッターロール1のガイドリング5との接触する距離によって、対向距離が決定される。
また、図9は、本発明の実施の形態1におけるアンビルロールの他のパターンを示す正面図である。図9の上は、ある構成パターンを有するアンビルロール40Aを示しており、図9の下は、ある構成パターンを有するアンビルロール40Bを示している。図中に硬質部45を示しているが、符号を示した部分だけが硬質部45ではなく、色付き部分が、硬質部45である。
アンビルロール40Aと、アンビルロール40Bのそれぞれは、硬質部45の設けられる位置が異なる。アンビルロール40Aは、カッターロール1のガイドリング5およびカッター部材3に対向する位置に、硬質部45を備えている。一方、アンビルロール40Bは、カッターロール1のガイドリング5に対向する位置のみに、硬質部45を備えている。
また、アンビルロール40の硬質部45も、カッターロール1のガイドリング5と同様に第3素材で形成されている。硬さの高い第3素材で形成されることで、カッターロール1と対向して回転するアンビルロール40において、カッターロール1と接触する部分での強度と耐久性を確保できる。また、カッターロール1の本体部や第1基材4などと同様に、アンビルロール40の本体部分は、第1素材や第2素材で形成されれば良い。
また、突出刃31は、カッター部材3の表面より突出している。このとき、突出刃31は、カッター部材3の表面より第2突出量によって、突出している。この第1突出量と第2突出量の差分が、図4に示される差分量12である。また、突出刃31が、アンビルロール40の表面41に押し切り圧力を付与する必要を有するので、突出刃31が、ガイドリング5よりも外側に突出している必要がある。このため、第1突出量よりも第2突出量が当然に大きい。
ここで、第1突出量と第2突出量の差分量12は、所定値以下であることが好適である。所定値としては、−5μm〜5μmであることが適当である。差分量12がこの程度であることで、突出刃31は、アンビルロール40の表面41に、強すぎる押し切り圧力を付与することも無く(刃が欠けることが無い)、切断能力が弱すぎることも無い(切断不良を生じさせることもない)。切断対象物が前述のように低い押し切り圧力で切断できる場合、2層以上の材質を重ねている場合、完全に切断しないハーフカットを行なうなどの場合には、突き出し量がマイナスをとりうる。繊維、紙、不織布などの切断においては、突き出し量が0.5〜5μmが好ましい。
なお、この差分量12は、ガイドリング5の第1突出量の調整によって、調整可能である。カッター部材3は、凹部7に嵌め込まれており、突出刃31は、カッター部材3に一体化して設けられているので、突出刃31の第2突出量を調整することは困難である。これに対して、ガイドリングは、直径を拡縮可能としておくことで、第1突出量を調整できる。このため、第1突出量の調整によって、差分量12が調整可能となる。
上述の通り、カッターロール1は、回転軸10を基準に回転可能である。このときカッターロール1は、カッター部材3、第1基材4、第2基材6、ガイドリング5も含めた全体として、矢印Fの方向に回転する。カッターロール1は、円柱状であるので、回転も円筒状に回転する。同様に、カッターロール1の回転に合わせて、対となるアンビルロール40も回転軸41を基準に、矢印Gの方向に回転する。双方が回転することで、通過領域51を、切断対象物が通過する。
このとき、差分量12によって、突出刃31が、切断対象物へ押し切り圧力を付与することで、切断対象物を切断する。
また、図5の矢印C,Dを用いて説明した通り、回転軸10からガイドリング5の底面までの長さと、回転軸10からカッター部材3の底面までの長さとの差は小さい。このため、カッターロール1が熱を持って熱膨張しても、差分量12の変動範囲が一定範囲に収まる。この結果、稼動開始から稼動終了まで、差分量12が大きく変化することがなく、稼動開始後の切断不良、稼動中の切断不良、稼動中の突出刃31の損傷などが、防止される。
以上のように、実施の形態1におけるカッターロール1は、熱膨張係数の異なる素材を用いて製造されることによる、熱膨張に起因する各種の問題点を防止できる。結果として、カッターロール1の切断性能向上、切断性能維持、耐久性確保、信頼性向上を実現でき、ロータリーカッター50を用いる製造業者の、製造能力を向上させることができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について述べる。実施の形態2では、差分量12の維持の詳細について述べる。
実施の形態1で述べた通り、図4のような構造を有することで、実施の形態1で示される本発明のカッターロール1は、熱膨張による悪影響を防止できる。これは、差分量12が、稼動期間にわたって一定範囲に維持されるからである。
(回転軸からの距離)
図4に示されるように、回転軸10からカッター部材3の底面までの距離をX1とし、回転軸10からガイドリング5までの距離をX2とすると、
X1 < X2
の関係が、成立する。
X1<X2の関係が成立することで、本体部2や第2基材6の熱膨張が生じても、ガイドリング5の突出である第1突出量と、突出刃31の突出である第2突出量との差分量12が、一定範囲に収まりやすくなる。
一方、ロータリーカッター50の稼動に合わせて熱を持つ場合には、カッターロール1全体で熱を持つ。装置内で多少の相違はあるが鉄材は熱伝導率が高いために、カッターロール1での熱の増加は、全体的に一様であり、偏りは少ない。この状況では、カッター部材3およびガイドリング5の体積、横方向の長さ、底面積などに依存して、熱膨張の影響度が決まる。すなわち、上述の通り、カッター部材3に対する熱膨張の影響度は、ガイドリング5に対する熱膨張の影響度よりも高くなる。
このため、X1<X2の関係を有していれば、この影響度の違いを吸収でき、カッターロール1の稼動時間経過によって生じる熱での熱膨張で、差分量12を一定範囲に収めることができる。
カッター部材3の内層の本体部2の熱膨張が、横方向の長さ、体積、底面積で大きなカッター部材3を押し上げる押し上げ量と、ガイドリング5の内層の本体部2と第2基材6の熱膨張が、横方向の長さ、体積、底面積で小さなガイドリング5を押し上げる押し上げ量とが、X1<X2の予めの関係によって、同等程度になるからである。この結果、当然ながら稼動時間経過前に調整されていた差分量12に対して、稼動時間経過後での差分量12が、大きく相違することがなくなるようになる。
このように、X1<X2の関係を有することで、カッターロール1は、稼動前から稼動時間経過後で、カッターロール1の熱膨張が変化する場合でも、ガイドリング5の第1突出量と突出刃31の第2突出量との差分量12が、一定範囲に収まる。
また、X1<X2の関係だけでなく、次の関係式が成り立つ場合でも、稼動によって熱膨張した場合の、第1突出量と第2突出量との差分量12が、所定値以内に収まるようになる。
突出刃の高さをH1、カッター部材3であって、突出刃31を除く厚みをH2、ガイドリング5の厚みをH3と、定義する場合に、
(関係式1)H1<H3<(H1+H2)
更に好ましくは、
(関係式2)(H2+0.2×H1)≦H3≦(H2+0.8×H1)。
上述のように、X1とX2の関係であるX1<X2が成立する場合に、稼動時間が経過して、熱膨張が起きても、第1突出量と第2突出量との差分量12が、所定値以内に収まって、突出刃31による切断性能が劣化することが防止される。
しかし、ガイドリング5の厚みは、嵌め込みで形成する際の嵌めしろなどの設定によって変化しうる。この変化によっては、X1<X2という単純な関係式だけでは確定できないこともある。関係式1および関係式2は、この嵌めしろの設定で変化しうるガイドリング5の厚みにも対応して、熱膨張が生じても、第1突出量と第2突出量との差分量12が所定値以内に収まることを説明している。
関係式1は、ガイドリング5の厚みを、カッター部材3(突出刃31を除く)の厚みよりも厚くして、突出刃31を含むカッター部材3の厚みよりも薄くした場合を示している。このような関係式1でのガイドリング5の厚みとすることで、ガイドリング5と突出刃31の線熱膨張の総量がほぼ同等になる。この結果、稼働時間が経過して、熱膨張が起きても、第1突出量と第2突出量との差分量12が、所定値以内に収まって、突出刃31による切断性能が劣化することが防止される。
突出刃31は、焼き嵌めや冷やし嵌めで本体部2と嵌合されるカッター部材3と異なり、稼動時の温度だけで熱膨張・熱収縮する。このため、ガイドリング5と、突出刃31を含むカッター部材3と、の熱膨張量を合わせるためには、ガイドリング5の厚みH3を、カッター部材3(突出刃31を除く)の厚みH1よりも大きく、突出刃31を含むカッター部材3の厚みであるH1+H2よりも小さくする必要がある。
これが関係式1である。
この関係式1が成立することで、稼働時間が経過することでの熱膨張による、第1突出量と第2突出量との差分量12が、所定値以内に収まるようになる。
一方、関係式2で、定義することでも同じ効果が得られる。
突出刃31の厚みは、カッターロール1とアンビルロール40との間を通過して切断される切断対象物の厚みによって、設定を変える必要がある。このため、H1とH2は、一定の比率や一定の差分をもつような設定であるとは限らず、ロータリーカッター全体の重量や、第3素材の使用量、カッター部材3の強度などにも影響を受ける可能性がある。
H3とH2とを比較した際に、H2<H3は、関係式1で説明した通り必要な条件であるが、H2にH1がどれだけ追加されることによって、H3との関係を見るかが重要になることもある。これには、適した範囲があり、これが関係式2である。
この関係式2が成立する場合にも、稼働時間が経過することでの熱膨張による、第1突出量と第2突出量との差分量12が、所定値以内に収まるようになる。
(一定範囲の収まり方)
カッターロール1は、対となるアンビルロール40と組み合わされて、図8のようにロータリーカッター50として用いられる。ロータリーカッター50の通過領域51を切断対象物が通過する際に、切断対象物に突出刃31が、切断対象物に押し切り圧力を付与して、切断対象物を切断する。
ロータリーカッター50の使用においては、切断稼動開始前に、ガイドリング5の第1突出量と突出刃31の第2突出量との差分量12が、所定範囲内に調整される。これは、ガイドリング5の第1突出量を調整することで行われる。所定範囲は、既述した通り、−5μm〜5μmであることが好ましい。
ロータリーカッター50の稼動開始後では、所定の稼動温度範囲で、ロータリーカッター50は、切断作業を行う。ここで、所定の稼動温度範囲は、一般的に、10℃〜50℃である。もちろん、ロータリーカッター50(カッターロール1)としては、これの前後の温度においても、その切断性能の維持を確保するようにできているが、切断作業を行う工場での制限や、各部材間の接合を焼き嵌めや冷やし嵌めなどの熱膨張により行なっていることを考慮すると所定の稼動温度は、10℃以上50℃以下であることが適当である。
ロータリーカッター50が、稼動を開始して、この10℃から50℃の範囲で温度を上昇させると、当然に熱膨張を生じさせる。このとき、第1素材および第2素材は、鉄や鉄合金であるので、熱膨張係数が高い。このため、本体部2、第1基材4、第2基材6は、高い熱膨張係数に従って、大きな熱膨張を生じさせる。一方、第3素材は、低い熱膨張係数を有するので、カッター部材3やガイドリング5の熱膨張は、本体部2等に比較して、相対的に小さい。
このようなそれぞれの熱膨張によって、ガイドリング5の第1突出量と突出刃31の第2突出量のそれぞれに、違いが段々と生じ始める。しかしながら、実施の形態1のカッターロール1は、図4に示す構成を有することで、第1突出量と第2突出量との差分量12が、稼動温度範囲内で、一定範囲に収まる。すなわち、稼動温度範囲である、10℃〜50℃の間で、第1突出量と第2突出量との差分量12は、所定範囲の値を維持したままである。言い換えれば、差分量12の変化量は、所定範囲内で収まることが好ましい。
ここで、差分量12は、10℃以上50℃以下の稼動温度範囲において、0.5μm以下、さらに好ましくは、0.3μm以下の範囲に収まることが好ましい(差分量12の変化量となる所定範囲が、0.5μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3μm以下であることが好ましい)。図10は、本発明の実施の形態2における、稼動温度範囲での、第1突出量、第2突出量との熱膨張による変化を示すグラフである。図10のグラフは、比較例として図1に示される比較例と、図4に示される実施例との、カッター温度と刃先突出量との関係を示している。
なお、図10および後述の図12での刃先突出量は、図11にて定義されている。図11での刃先突出量は、図4などで説明した第1突出量と第2突出量との差分量12である。なお、図11は、本発明の実施の形態2における刃先突出量を定義する模式図である。
ここで、図10は、設定温度を20℃で刃先突出量を1μmと設定したカッターロールの、温度変化による刃先突出量を示したグラフである。図10を読み取ればわかる通り、1μmに設定した刃先突出量はカッターロール1の温度が10℃と下がったときときには、突出量は0.9μmであり、50℃と上昇した場合でも1.2μmである。すなわち、差分量12の変化量は0.3μmである。
これらを考慮すると、所定の稼動温度範囲において、差分量12の変化は、0.5μm以下、更に好ましくは0.3μmの範囲に収まることが好ましい。この範囲に収まれば、図10の実験を行った際に同時に行った切断実験でも、切断性能が変動しないことが確認された。
これに対して、従来比較例では、カッターロール1の温度が上がるにつれて、差分量12が、大きく変化する。このような大きな変化が生じれば、当然に例えば20℃に設定した突出量と比較して、突出刃31の突出量が相対的に大きくなりすぎて、既述した通り、突出刃31の刃先の損傷が生じて、切断不良が生じる原因となってしまう。
(温度差分と差分量との関係)
図10では、カッターロール1の温度そのものにおける第1突出量と第2突出量との差分量12について説明した。ここで、カッターロール1は、本体部2での温度とカッター部材3での温度との変化は異なる。この温度差が、第1突出量や第2突出量に影響を与え、第1突出量と第2突出量との差分量12も変化する。
図12は、本発明の実施の形態2における温度差と差分量との関係を示すグラフである。図12は、カッター部材3と本体部2との温度差と、突出量(=差分量12)との対応を示している。温度差が大きくなるにつれて、突出量(=差分量12)も大きくなっている。ここで、温度差が0℃を基準にして、温度差が35℃に成った場合の突出量(=差分量12)の変化量は、0.26μmである。このため、本体部2とカッター部材3との温度差が0℃から35℃の範囲においては、差分量12の変化量は、30%以下、更に好ましくは27%以下であることが好ましい。この範囲であれば、ロータリーカッター50の稼動時間が経過して、カッターロール1の本体部2とカッター部材3との温度差が増加しても、ガイドリング5の第1突出量と突出刃31の第2突出量との差分量12は、一定範囲に収まるからである。
一定範囲に収まれば、当然ながら、突出刃31が突出しすぎたり、あるいは引っ込みすぎたりすることも無いので、稼動時間全体に渡って、切断性能が変化したり低下したりすることも無い。
図12のグラフは、このように従来比較例と実施例との差を示しており、従来比較例は、温度差によって、突出量の差分量が非常に大きくなっていくのに対して、実施例では一定範囲に収まっていることがわかる。
このグラフの結果からも、本発明のカッターロール1が、稼動時間経過による温度差の増加にも対応できることが分かる。切断性能が維持されることで、カッターロール1を用いるロータリーカッター50への信頼度も高まり、加えて、切断作業を行う工場での製造精度、製造コストへの好影響が期待できる。
(稼動時間の経過への対応)
上述では、稼動温度範囲においても、ガイドリング5の第1突出量と突出刃31の第2突出量との差分量12が、一定範囲に収まることを説明した。
稼動温度範囲と同様に、稼動時間を基準として、この差分量12が一定に収まることも重要である。例えば、稼動時間が8時間である場合に、この8時間の間に、差分量12の変化が、一定範囲に収まることが好適である。
以上、実施の形態1〜2で説明されたカッターロールおよびロータリーカッターは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。