JP4968907B2 - 動圧軸受装置、モータ及び記録媒体駆動装置並びに軸受スリーブの製造方法 - Google Patents
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Description
オイル等の流体を利用した動圧軸受装置(FDB:Fluid Dynamic Bearing)を利用する方法が知られている。
即ち、樹脂材32は、金属材31にインサート成型されているが、フランジ部32aとなる部分が金属材31の一端側から外側に完全に露出した状態となっている。つまり軸体30は、フランジ部32aとなっている一端側が全て樹脂材32でのみ形成されている。そのため、このフランジ部32aは、樹脂材32を成型する際の金型の成型精度に依存してしまうものであった。ところが、金型の成型精度は、もともとばらつき大きく、使用頻度にも影響されるので高い精度を要求できない。上述したように、動圧軸受装置を構成する軸体30及び軸受スリーブはそれぞれ高い寸法精度が要求されるが、金型の成型精度に影響されてしまうフランジ部32aにその高い精度を求めることは困難である。そのため、フランジ部32aの端面32bと金属材31の外周面とが直角になり難く、高い直角度を得ることができなかった。また、フランジ部32aの厚み精度や平行度に関しても同様に高い精度を期待することができなかった。その結果、軸体30が回転した際に、回転ムラ、振動や異音等が発生する恐れがあった。
本発明に係る動圧軸受装置は、軸線回りに回転する軸体と、流体を間に介在させて前記軸体を流体の動圧作用を利用して回転可能に支持する軸受スリーブと、を備える動圧軸受装置であって、前記軸受スリーブは、金属材料により前記軸体を内部に挿入させるように円筒状に形成され、半径方向外方に張り出したフランジ部を一端側に有するスリーブ本体と、前記フランジ部の端面に、該フランジ部の外縁から一定距離の領域を開けて形成された環状の凹部と、成型材料により前記凹部を埋めるように該凹部内だけに成型され、その表面が前記端面に対して面一とされた成型部と、該成型部と同一のタイミングで成型部の表面に成型加工され、前記軸体の回転時に軸体との間で流体動圧を発生させる動圧溝と、を有していることを特徴とするものである。
更に、金属ガラスは、転写性に優れているうえ、過冷却液体領域があるため成形時の収縮を考慮する必要がない。そのため、動圧溝をより高精度に成型することができる。従って、軸体をさらに安定に回転させることができ、さらなる高品質化及び信頼性の向上化を図ることができる。
まず、ステンレス等の金属材料により形成されたスリーブ本体を用意する。この際、フランジ部自体が樹脂材で成型されていた従来のものとは異なり、フランジ部を含むスリーブ本体自体が金属材料によって一体的に形成されているものを用意する。そして、フランジ部の端面に凹部を形成する。
この凸部形成工程と上述した凹部形成工程とが終了した後、スリーブ本体を第1の金型と第2の金型との間にセットするセット工程を行う。即ち、フランジ部の端面を凸部が形成された平坦面に向けた状態で、スリーブ本体を第1の金型上に載置する。この際、スリーブ本体と第1の金型との間に成型材料を介在させておく。これにより、凹部と凸部との間に成型材料が介在された状態となる。
そして最後に、第1の金型と第2の金型とを離間させることで、スリーブ本体の凹部内に動圧溝を有する成型部が成型された軸受スリーブを製造することができる。
しかも、成型部はフランジ部の端面に形成された凹部内だけに成型されている。つまり、フランジ部自体が樹脂材で成型されていた従来のものとは異なり、フランジ部を含むスリーブ本体は、金属材料によって一体的に形成されている。よって、スリーブ本体の内周面とフランジ部の端面との直角度は、成型精度等に何ら影響されず、金属部品であるスリーブ本体の加工精度に依存する。従って、フランジ部を樹脂材で成型する場合に比べて、高い直角度を確保することができる。
これらのことから、上述した製造方法で製造された軸受スリーブを利用することで、軸体が回転した際に、回転ムラ、振動や異音等が発生することを極力防止することができる。よって、軸体の回転特性を向上することができると共に安定性を高めることができる。
そして、第2の金型でスリーブ本体を押し付ける成型工程を行うことで、背面側に形成された凹部内に、動圧溝を有する成型部を成型することができる。
更に、金属ガラスは、転写性に優れているうえ、過冷却液体領域があるため成形時の収縮を考慮する必要がない。そのため、動圧溝をより高精度に成型することができる。従って、軸体をさらに安定に回転させることができ、さらなる高品質化及び信頼性の向上化を図ることができる。
本実施形態の記録媒体駆動装置1は、図1に示すように、動圧軸受装置2を有し、各種情報を記録可能なハードディスク(記録媒体)Dを軸線L回りに回転駆動するスピンドルモータ(モータ)3と、後述するハブ(軸体)10に設けられ、ハードディスクDを嵌合保持する嵌合部(保持部)10cと備えている。なお、図1は、記録媒体駆動装置1の断面図である。また、図1においては、図を見易くするため、後述する凹部17や動圧溝18の図示を省略している。
ステータコア7は、プレス等により打ち抜かれた磁性体(珪素鋼板等)が積層(例えば、2層に積層)されて表面が図示しない絶縁膜でコーティングされたものであり、図2及び図3に示すように、環状に形成されたコアバック7aと、ティース(歯極部)7bとを有している。なお、図2はステータコア7及びコイル8の上面図であり、図3は図2に示す断面矢視A−A図である。ティース7bは、コアバック7aに基端側が固定されると共に、永久磁石5側に向かう半径方向に延出するように形成され、軸線Lを中心として所定角度毎に複数設けられている。また、これら複数のティース7bは、先端が永久磁石5の外周面に対向する対向部7cとなっている。
このように構成されたステータコア7は、図1に示すように、コアバック7aの下面がベース9の段部9a上に載置された状態で固定されている。
上記コイル8は、図2及び図3に示すように、複数のティース7bの周囲にそれぞれ巻回されている。この際、3相(U相、V相、W相)となるように、3つおきに(間を2つ空けて)巻回されている。
ハブ10は、軸線Lを中心として略円柱状に形成されたシャフト部10aと、該シャフト部10aの外周面から半径方向外方に延びて形成され、後述する軸受スリーブ11のフランジ部15bを上下から挟み込むように形成されたフランジ部10bとを備えている。また、ハブ10の上端は、ハードディスクDの中心孔に挿通されて、該ハードディスクDを嵌合保持する上記嵌合部10cとなっている。なお、このハブ10は、ステンレス等の金属材料により形成されている。
スリーブ本体15は、ハブ10のシャフト部10aを内部に挿入させるように円筒状に形成された円筒部15aと、円筒部15aの一端側で半径方向外方に張り出したフランジ部15bとで一体的に構成されている。また、フランジ部15bの端面15cには、環状の凹部17が形成されている。
本実施形態の製造方法は、一対の金型、即ち、下金型(第1の金型)20及び上金型(第2の金型)21を利用しながら、凹部形成工程、凸部形成工程、セット工程、成型工程を行って製造する方法である。なお、本実施形態では、成型材料Sとして予め環状に焼結された焼結金属を用いた場合を例に挙げて説明する。
なお、この円柱部20bは、一体的に形成されていても構わないが、取り外し可能に構成して必要時に平坦面20aに取り付けるようにすることが好ましい。このようにすることで、平坦面20aの研磨加工と、次に行う凸部22の形成工程とを容易に行うことができる。
そして最後に、下金型20と上金型21とを離間させることで、スリーブ本体15の凹部17内に動圧溝18を有する成型部16が成型された軸受スリーブ11を製造することができる。
また、フランジ部15bの端面15cと該端面15cに対向する背面15dとの平行度に関しても、フランジ部15bを樹脂材で成型する場合と比べて高い平行度を確保することができる。更に、成型部16の表面は、フランジ部15bの端面15cと面一に成型されているので、この成型部16の表面とスリーブ本体15の内周面との直角度に関しても高い直角度を確保することができる。
まず、コイル8に三相交流電流を供給する。すると、ティース7bが励磁されて磁界が発生する。この磁界により、永久磁石5はハブ10と共に軸線L回りに回転する。この際、ステータコア7は、永久磁石5の外周面に対向する対向部7cをティース7bの先端に有しているので、ステータコア7と永久磁石5との間の磁束の受け渡しが密になる。従って、ハブ10を効率良く回転させることができる。その結果、嵌合部10cによってハブ10に固定されているハードディスクDを軸線L回りに回転させることができる。
従って、ハブ10の回転動作による影響や、衝撃等の影響や、温度変化等の影響を受けたとしても、成型部16の剥離やずれ等が生じ難い。その結果、動圧軸受装置2の耐衝撃性や温度特性等を向上することができ、信頼性をより向上することができる。
また、本実施形態の記録媒体駆動装置1によれば、上述した利点を有するスピンドルモータ3を備えているので、ハードディスクDを安定且つ滑らかに回転させることができ、同様に装置全体の品質及び信頼性を向上することができる。また、低コスト化も図ることができる。
即ち、金属ガラスは、非晶質(アモルファス)なので、液体状態のように結晶構造を持たずに原子配列がランダムに詰まった形で固体化する特性を有している。そのため、結晶合金等に存在する特定の滑り面が無い。従って、機械的強度をより向上することができる。また、金属ガラスは、構造、組成が均質であり粒界も無いため、耐食性に優れている。これらのことから、成型部16の耐食性をより向上することができる。また、酸化処理を行うことで、耐摩耗性を向上させることも可能である。
ここで、金属ガラスを用いた際の成型条件の一例を述べる。例えば、Pt基金属ガラスを用いる場合には、ガラス転移点の温度が約230℃、結晶化温度が約310℃であり、その間の温度が過冷却液体状態を維持できる温度である。そのため、270℃前後の温度で成型を行えば良い。
軸受スリーブ11をこのように構成することで、フランジ部15bの両面(上下面)に流体動圧を発生させて、フランジ部15bを間に挟んだ2箇所でスラスト方向の力を支持することができる。従って、ハブ10をより安定させた状態で軸支することができる。
L 軸線
H 溝部の開口幅
S 成型材料
W オイル(流体)
1 記録媒体駆動装置
2 動圧軸受装置
3 スピンドルモータ(モータ)
5 永久磁石
6 ステータ
7 ステータコア
7b ティース(歯極部)
8 コイル
10 ハブ(軸体)
10c 嵌合部(保持部)
11 軸受スリーブ
15 スリーブ本体
15b フランジ部
15c フランジ部の端面
15d フランジ部の背面
16 成型部
17 凹部
17a 溝部
18 動圧溝
20 下金型(第1の金型)
20a 第1の金型の平坦面
21 上金型(第2の金型)
22 凸部
Claims (12)
- 軸線回りに回転する軸体と、
流体を間に介在させて前記軸体を流体の動圧作用を利用して回転可能に支持する軸受スリーブと、を備える動圧軸受装置であって、
前記軸受スリーブは、
金属材料により前記軸体を内部に挿入させるように円筒状に形成され、半径方向外方に張り出したフランジ部を一端側に有するスリーブ本体と、
前記フランジ部の端面に、該フランジ部の外縁から一定距離の領域を開けて形成された環状の凹部と、
成型材料により前記凹部を埋めるように該凹部内だけに成型され、その表面が前記端面に対して面一とされた成型部と、
該成型部と同一のタイミングで成型部の表面に成型加工され、前記軸体の回転時に軸体との間で流体動圧を発生させる動圧溝と、を有していることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1に記載の動圧軸受装置において、
前記端面に対向する前記フランジ部の背面側にも、前記凹部、前記成型部及び前記動圧溝がそれぞれ設けられていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1又は2に記載の動圧軸受装置において、
前記凹部の底面には、複数の溝部が形成され、
前記成型部は、前記複数の溝部内に入り込んだ状態で成型されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項3に記載の動圧軸受装置において、
前記溝部は、深くなるにつれて開口幅が漸次大きくなるように形成されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の動圧軸受装置において、
前記成型材料は、金属ガラスであることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の動圧軸受装置と、
前記軸体に保持された環状の永久磁石と、
該永久磁石の周囲を囲むように配され、永久磁石の外周面に対向する歯極部を周方向に複数有するステータコアと、複数の歯極部の周囲に巻回されたコイルとを有するステータと、を備えていることを特徴とするモータ。 - 請求項6に記載のモータと、
前記軸体に設けられ、各種情報を記録可能な記録媒体を保持する保持部と、を備えていることを特徴とする記録媒体駆動装置。 - 流体を間に介在させて、軸線回りに回転する軸体を流体の動圧作用を利用して回転可能に支持する軸受スリーブを製造する方法であって、
金属材料により前記軸体を内部に挿入させるように円筒状に形成され、半径方向外方に張り出したフランジ部を一端側に有するスリーブ本体を用意した後、前記フランジ部の端面に、該フランジ部の外縁から一定距離の領域を開けて環状の凹部を形成する凹部形成工程と、
平坦面を有する第1の金型と、該第1の金型に対して接近離間可能に配された第2の金型とを用意した後、平坦面に動圧溝の形状に沿ってパターニングした凸部を形成する凸部形成工程と、
成型材料を間に介在させた状態で、前記端面を前記平坦面側に向けて前記スリーブ本体を前記第1の金型上に載置するセット工程と、
セットされた前記スリーブ本体を前記第2の金型で前記第1の金型に押し付けながら前記成型材料を成型加工すると共に前記凸部を成型材料に転写させて、前記凹部内だけを埋めた状態でその表面が前記端面に対して面一とされた成型部と、該成型部の表面に形成されて前記軸体の回転時に軸体との間で流体動圧を発生させる動圧溝とを、それぞれ同一タイミングで成型する成型工程と、を行うことを特徴とする軸受スリーブの製造方法。 - 請求項8に記載の軸受スリーブの製造方法において、
前記凹部形成工程の際に、前記端面に対向する前記フランジ部の背面側にも前記凹部を形成し、
前記凸部形成工程の際に、前記第2の金型の表面に前記凸部を形成し、
前記セット工程の際に、前記スリーブ本体と前記第2の金型との間に前記成型材料を介在させることで、前記フランジ部の背面側に形成された凹部内に前記動圧溝が形成された前記成型部を、前記成型工程時に同一タイミングで成型することを特徴とする軸受スリーブの製造方法。 - 請求項8又は9に記載の軸受スリーブの製造方法において、
前記凹部形成工程の際に、前記凹部の底面に前記成型材料が入り込む複数の溝を形成する溝部形成工程を行うことを特徴とする軸受スリーブの製造方法。 - 請求項10に記載の軸受スリーブの製造方法において、
前記溝部形成工程の際に、深くなるにつれて開口幅が漸次大きくなるように前記溝部を形成することを特徴とする軸受スリーブの製造方法。 - 請求項8から11のいずれか1項に記載の軸受スリーブの製造方法において、
前記成型材料として、金属ガラスを用いることを特徴とする軸受スリーブの製造方法。
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