以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
−輸液セット−
輸液ポンプについて説明する前に、輸液に用いる輸液セットについて図27を参照して説明する。
図27に示す輸液セットSは、薬液を収容する輸液バッグB、この輸液バッグBのポートBpに差し込まれる連結針S1、点滴液の流量を目視にて確認するための点滴筒S2、これら連結針S1と点滴筒S2とを繋ぐ上流側の輸液チューブT、上記点滴筒S2に接続される下流側の輸液チューブT、この下流側の輸液チューブTの途中に設けられたローラクランプ7、及び、輸液チューブTの先端部に接続される注射針(静脈針)S3などによって構成されている。
ローラクランプ7は、図28〜図30に示すように、クランプ本体71とローラ72とを備えている。クランプ本体71は、所定の間隔を隔てて対向する一対の側壁71a,71bと底板71cとが一体形成された樹脂成形品である。その各側壁71a,71bの内面には、ローラ72の回転軸72a,72bを支持しつつガイドするガイド溝711a,711bが設けられている。クランプ本体71の底面71d(底板71cの上面)にはV溝71eが形成されている。また、クランプ本体71の底面71dは上記ガイド溝711a,711bに対して傾斜しており、クランプ本体71の一端側(フランジ71f側)から他端側に向かうにしたがって、ガイド溝711a,711bと底面71dとの間の距離が小さくなるように構成されている。
上記ローラ72は、ガイド溝711a,711bに沿って、クランプ本体71の一端部
(フランジ71f側の端部)と、他端部(フランジ71fとは反対側の端部)との間において回転移動可能であり、フランジ71f側の移動端(開放側移動端)にローラ72が位置したときに、ローラ72の外周面とクランプ本体71の底面71dとの間の間隔が最大となり、フランジ71fとは反対側の移動端(閉塞側移動端)にローラ72が位置したときに、ローラ72の外周面とクランプ本体71の底面71dとの間の間隔が最小となる。
以上の構造のローラクランプ7において、輸液チューブTをクランプ本体71の底面71dとローラ72の外周面との間に挿入した状態で、ローラ72を回転操作して、ローラ72をクランプ本体71の閉塞側移動端に配置すると、輸液チューブTが完全に閉塞される状態となる。この状態からローラ72をクランプ本体71のフランジ71f側に向けて回転移動させていくと、そのローラ72の回転移動に伴って輸液チューブTへの押圧量(扁平量)が小さくなり、輸液チューブT内を流れることが可能な輸液の量が多くなっていく。そして、ローラ72を開放側移動端に配置した状態で、輸液チューブTはローラ72にて押圧されない状態(完全開放状態)となる。
[実施形態1]
−輸液ポンプ−
本発明の輸液ポンプの一例について図1〜図15を参照して説明する。
この例の輸液ポンプ1は、ペリスタルティックフィンガ式の輸液ポンプであって、ポンプ本体(ケーシング)11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている。扉12はヒンジ14,14を介してポンプ本体11に揺動自在(回転自在)に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から、完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
ポンプ本体11の前面には、輸液送り方向の上流側から順に、チューブ装着ガイド部111、そのチューブ装着ガイド部111から矩形状に拡大したポンプ部112、及び、クランプ保持凹部113が設けられている。チューブ装着ガイド部111の溝幅は、上記した輸液セットの輸液チューブTの外径に対応する大きさとなっている。また、ポンプ部112には、後述するポンプ機構2のフィンガ21・・21の先端部が臨んでいる。
チューブ装着ガイド部111は横方向に湾曲した形状(曲り形状)に形成されている。なお、扉12の内面に押圧板24が設けられている。この押圧板24は、扉12を閉じた状態で上記ポンプ機構2の複数のフィンガ21・・21の先端部に対向する位置に配置されている。
クランプ保持凹部113は、図2及び図6に示すように、上記した輸液セットSのローラクランプ7の一方の側壁71aを嵌め込むことが可能な形状に形成されている。このクランプ保持凹部113にローラクランプ7(クランプ本体71)を嵌め込んだ状態で、輸液チューブTが輸液ポンプ1の上下方向に沿って配置され、ローラ72の上下方向への移動により輸液チューブTの閉塞と開放とを行うことができる。
また、扉12の内面には、上記ポンプ本体11の前面のクランプ保持凹部113に対応する位置(扉12の閉鎖状態で対向する位置)にクランプ保持凹部123が設けられている。この扉12のクランプ保持凹部123は、図2及び図8に示すように、ローラクランプ7の他方の側壁71bを嵌め込むことが可能な形状に形成されている。そして、これらクランプ保持凹部113,123に保持されるローラクランプ7のローラ72は、後述するローラ移動機構3によって上下方向に移動される。
また、ポンプ本体11の側部には、後述する扉ロック機構13のロックレバー131が
入り込むことが可能なレバー収容凹部11aが設けられている。さらに、そのレバー収容凹部11aの内部側に、後述するロック片132が入り込むことが可能なロック室11bが設けられている。そのロック片132がロック室11bに入り込むと、扉12の揺動(回転)が規制される。ロック室11bの上部には、ロック片132のロック爪133が引っ掛かる係止片134が設けられており、その係止片134の近傍に、扉ロック機構13がロック位置にあるか否かを検出するロック検出センサ6が配置されている。ロック検出センサ6は、発光素子と受光素子とからなる公知の光電センサ(反射型)であって、図7に示すように、ロック片132のロック爪133が係止片134に係合する位置にあるとき(扉12が閉鎖状態に保持されているとき)に限ってロック検出信号(ON信号)を出力するようになっている。
一方、扉12の側端部(ヒンジ14とは反対側の端部)にロックレバー131が配置されている。ロックレバー131は、回転軸131aを中心として回動自在に設けられており、図2及び図5に示すロック開放位置(非ロック位置)から、扉12をロックするロック位置(図3及び図7に示す位置)までの間において揺動可能(例えば、略90°揺動可能)となっている。ロックレバー131にはロック片132が一体形成されている。ロック片132の先端部にはロック爪133が設けられており、ロックレバー131を操作してロック位置に配置したときに、ロック爪133が上記したポンプ本体11に設けた係止片134に係合して扉12が完全閉鎖状態に保持される。そして、これらロックレバー131、ロック片132、ロック爪133、及び、上記ポンプ本体11の係止片134によって扉ロック機構13が構成されており、そのロックレバー131を操作することによって扉ロック機構13をロック位置または非ロック位置に配置することができる。
−ポンプ機構−
次に、ポンプ機構2の具体的な例について図12〜図15を参照して説明する。なお、図12〜図15において、偏心カム22については切断しないで表記している。
ポンプ機構2は、一方向(上記ポンプ本体11に装着した輸液チューブTに沿う方向)に沿って配列された複数(図12に示す例では13個)のフィンガ21・・21、その各フィンガ21をそれぞれ個別に進退駆動するための偏心カム22・・22、各偏芯カム22を回転するカム軸23、上記した押圧板24、及び、保持フレーム20などによって構成されている。
保持フレーム20の前面側には各フィンガ21に対応する位置に開口部20a・・20aが設けられており、この開口部20aを通じて各フィンガ21の先端部が保持フレーム20の前面側(輸液チューブT側)に臨んでいる。また、これら複数のフィンガ21・・21の軸方向(カム軸23の軸心方向)の移動は保持フレーム20によって規制されている。なお、各フィンガ21は板状の部材であって、相互に摺動しながら個別に移動(進退移動)可能となっている。
各フィンガ21にはそれぞれカム穴21aが形成されている。その各カム穴21aには、それぞれ円板状の偏心カム22が嵌め込まれている。各偏心カム22はカム穴21a内において回転可能であり、これら偏心カム22・・22は上記カム軸23に回転一体に取り付けられている。
各偏心カム22は、その円板の中心がカム軸23に対して偏心しており、図13に示すように、カム軸23が1回転(360°回転)すると、フィンガ21の先端部が最前進位置(チューブ閉塞位置)と最後退位置(チューブ完全開放位置)との間を1回往復するようになっている。そして、これらの複数の偏心カム22は相互に所定の位相差(カム軸23の回転方向の位相差)をもってカム軸23に取り付けられている。具体的には、偏心カム22・・22は、カム軸23の軸方向に並ぶ複数のフィンガ21・・21の先端部が略
正弦波に沿うような位相差(360°/偏心カム22の数)でカム軸23に取り付けられている。なお、図13には、カム軸23が90°回転するごとのフィンガ21の位置を示している。
上記ポンプ機構2のカム軸23は、図12に示すように、上下方向(複数のフィンガ21・・21の配列方向)に沿って設けられている。カム軸23の下端部は、保持フレーム20に設けられたベアリング26によって回転自在に支持されている。カム軸23の上側部分は、保持フレーム20の壁体を貫通して上方に突出している。そのカム軸23の貫通部分にはベアリング25が設けられており、そのベアリング25によってカム軸23の上側部分が回転自在に支持されている。
カム軸23の上端部にはタイミングプーリ(従動プーリ)201が回転一体に取り付けられている。このカム軸23のタイミングプーリ201と、電動モータ(例えばステッピングモータ)4の回転軸41に回転一体に取り付けられたタイミングプーリ(駆動プーリ)202との間にタイミングベルト203が巻き掛けられており、その電動モータ4の駆動によりカム軸23が回転する。電動モータ4は制御部5によって駆動制御(回転数制御)される。なお、この例において、電動モータ4には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
そして、電動モータ4の駆動によりカム軸23が回転すると、各偏心カム22がフィンガ21のカム穴21a内で回転する。この偏心カム22の偏心回転に伴って、各フィンガ21が上流側(輸液送り方向の上流側)から下流側にかけて順次前進・後退していく。具体的には、図14(A)、(B)及び図15(A)、(B)に示すように、フィンガ21の先端部が上流側から下流側に蠕動波状に移動していく。このようなフィンガ21・・21の進退移動(往復移動)によって、これらフィンガ21・・21の先端部と押圧板24との間に配置された輸液チューブTに蠕動運動が付与され、当該輸液チューブT内の輸液が上流側から下流側へと送り出されていく。なお、この例では、輸液チューブTがフィンガ21・・21から受ける過負荷を軽減するために、押圧板24とベース板15との間に緩衝シート24aが設けられている。
ここで、この例において、制御部5は、マイクロコンピュータ等を主体として構成されている。制御部5は、例えば扉12の前面に設置の操作パネル120(図1参照)の操作にて設定された輸液流量(単位時間当たりの輸液の送り量)の設定値に応じて、電動モータ4の回転数を制御することにより輸液流量を可変に調整することが可能であり、例えば輸液流量を1mL/h〜1200mL/hの範囲内において、[1mL/h]単位で設定することができる。また、制御部5は、後述するローラ移動機構3の電動モータ323の駆動制御を行う。さらに、制御部5は、上記操作パネル120に、「輸液流量(注入量)」や「注入積算時間」などの動作情報を表示し、また、「気泡混入異常」や「扉閉塞不良」などを含む各種警告を表示するように構成されている。
−ローラ移動機構−
次に、ローラ移動機構3について図2〜図11を参照して説明する。
この例のローラ移動機構3は、上記したポンプ本体11のクランプ保持凹部113及び扉12のクランプ保持凹部123に保持されたローラクランプ7のローラ72を、輸液チューブTの閉塞位置(閉塞側移動端)と開放位置(開放側移動端)との間において移動させる機構である。
ローラ移動機構3は、ローラスライダ31、ラックギヤ321、ピニオンギヤ322、及び、電動モータ(例えばステッピングモータ)323などを備えている。
ローラスライダ31は、図9に示すように、板状の部材であって、所定の間隔(ローラクランプ7のローラ72の直径よりも大きな間隔)を隔てて、互いに対向する一対の押圧片(閉塞側押圧片31a及び開放側押圧片31b)が設けられている。ローラスライダ31は、ポンプ本体11の前面と並行な方向に沿って配置されており、ラックギヤ321に一体的に取り付けられている。
ローラスライダ31のクランプ保持凹部113に対する位置は、図5、図6及び図10(A)等に示すように、クランプ保持凹部113にローラクランプ7を保持した状態で、閉塞側押圧片31aの先端部が、クランプ本体71の側壁71a,71bの間の隙間の中央位置に入り込み、その閉塞側押圧片31aと開放側押圧片31bとの間にローラクランプ7のローラ72が入り込むような位置に設定されている。これにより、クランプ保持凹部113にローラクランプ7を保持した状態で、ローラスライダ31が上下方向に移動すると、閉塞側押圧片31または開放側押圧片31bがローラクランプ7のローラ72の外周面に接触する。
ラックギヤ321は、ポンプ本体11の前面に設けられたガイド溝114にスライド自在に配設されている。ガイド溝114は、輸液ポンプ1の上下方向、つまり、クランプ保持凹部113,123に装着されたローラクランプ7のローラ72の移動方向に沿って延びており、このガイド溝114に沿ってラックギヤ321が上下方向(ローラ72の移動方向)にスライド移動することができる。
ラックギヤ321にはピニオンギヤ322が噛み合っている。ピニオンギヤ322は電動モータ323の回転軸323aに回転一体に取り付けられており、電動モータ323が回転(図中、時計周りに回転)してピニオンギヤ322が回転すると、ラックギヤ321がガイド溝114に沿って上方向に送られる。これによってローラスライダ31がポンプ本体11の上方向(ポンプ部112に近づく向き)に移動する。また、電動モータ323が逆向きに回転(図中、反時計周りに回転)してピニオンギヤ322が回転すると、ラックギヤ321がガイド溝114に沿って下方向に送られる。これによってローラスライダ31がポンプ本体11の下方向(ポンプ部112から離反する向き)に移動する。なお、電動モータ323はポンプ本体11の内部に収容されている。この電動モータ323の回転軸323aは開口部115を通じてポンプ本体11の前面側に臨んでおり、その回転軸323aの先端部にピニオンギヤ322が取り付けられている。電動モータ323には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
電動モータ323は制御部5によって駆動制御される。制御部5は、上記したロック検出センサ6の検出信号に応じて電動モータ323を駆動する。
具体的に説明すると、扉12が開放状態で扉ロック機構13が非ロック状態(ロック検出センサ6の検出信号がOFFの状態)であるときには、ローラスライダ31は図5及び図6に示す位置(チューブ閉塞位置)に配置されており、この状態から、扉ロック機構13がロック位置に操作されて、上記したロック検出センサ6が検出信号がOFF信号からON信号に切り替わったときには、電動モータ323を駆動してローラスライダ31を図7及び図8に示す位置(チューブ開放位置)に配置する。ローラスライダ31がチューブ開放位置に到達した時点で電動モータ323の駆動は停止される。
また、図7及び図8に示す位置にある状態から、扉ロック機構13が非ロック位置に操作されて、上記したロック検出センサ6が検出信号がON信号からOFF信号に切り替わったときには、電動モータ323を駆動してローラスライダ31を図5及び図6に示す位置(チューブ閉塞位置)に配置する。ローラスライダ31がチューブ閉塞位置に到達した
時点で電動モータ323の駆動は停止される。
なお、上記チューブ閉塞位置及びチューブ開放位置での電動モータ323の停止は、電動モータ(ステッピングモータ)323の回転量やモータ駆動時間(通電時間)で制御するようにしてもよいし、リミットスイッチ等を用いて制御するようにしてもよい。
−動作説明−
次に、輸液ポンプ1への輸液チューブTのセッティング、及び、ローラ移動機構3の動作について図2〜図11を参照して説明する。
(1)まず、図27に示す輸液セットSのローラクランプ7のローラ72を操作して輸液チューブTを閉塞しておく。次に、図2に示すように、輸液ポンプ1の扉12を開いた状態で、ローラクランプ7をポンプ本体11の前面側に持っていき、そのローラクランプ7の片方の側壁71aをポンプ本体11のクランプ保持凹部113に嵌め込む(図5及び図6参照)。具体的には、クランプ本体71のフランジ71fを上側にした状態で、クランプ本体71をクランプ保持凹部113の側方(図2の左側)からクランプ保持凹部113内に、一対の側壁71a,71b間の隙間にローラスライダ31の閉塞側押圧片31aの先端部を差し入れながら嵌め込む。このとき、ローラクランプ7による輸液チューブTの閉塞忘れにより、ローラ72が開放位置(フランジ71f側の移動端)にある場合、そのローラ72とローラスライダ31の閉塞側押圧片31aとが干渉するので(図5及び図6の2点鎖線参照)、ローラクランプ7をクランプ保持凹部113に嵌め込むことはできない。これによって、輸液ポンプ1への輸液チューブTの装着前のチューブ閉塞忘れを防止することがきる。
(2)ローラクランプ7をクランプ保持凹部113に嵌め込んだ状態で、ローラクランプ7の上流側の輸液チューブTをチューブ装着ガイド部111及びポンプ部112に装着する。このようなチューブ装着が終了した後に扉12を閉める。扉12を閉めると、この扉12側のクランプ保持凹部123にローラクランプ7のもう一方の側壁71bが嵌り込むので(図8参照)、ローラクランプ7を輸液ポンプ1に確実に保持することができる。
(3)扉12を閉じた状態で、扉ロック機構13のロックレバー131を回転軸131aを中心としてポンプ本体11のレバー収容凹部11aの内部側に向けて回動(略90度回動)させる。このロックレバー131の回動操作により、図3及び図7に示すように、ロック片132が回転軸131aを中心として回転し、このロック片132の先端のロック爪133がポンプ本体11の係止片134に引っ掛かって扉12が閉鎖状態に保持(扉ロック)される。また、ロック爪133が係止片134に係合した時点(ロック爪133がロック検出センサ6の位置に存在した時点)で、ロック検出センサ6の出力信号がOFF信号からON信号に切り替わる。このロック検出センサ6の出力信号の変化(OFF→ON)に応じて、ローラ移動機構3の電動モータ323が回転(時計回りに回転)して、ローラスライダ31が図6及び図10(A)の位置(チューブ閉塞位置)から上向きに移動(ポンプ部112側に向けて移動)する。このローラスライダ31の移動により、開放側押圧片31bによってローラ72がクランプ本体71の開放側移動端(フランジ71f側の端部)に向けて移動していく。そして、ローラ72がクランプ本体71の開放側移動端まで移動した時点で輸液チューブTが完全開放状態となり(図10(B))、この時点でローラ移動機構3の電動モータ323の駆動が停止する。このようなチューブセッティングを終了した後に、輸液ポンプ1を駆動させて輸液セットSのプライミング操作を行っておく。輸液ポンプ1の駆動によるプライミング操作の代わりに、輸液ポンプ1にセッティングを行う前に落差圧でプライミング操作を行った輸液セットSを輸液ポンプ1にセッティングするようにしてもよい。
以上の処理により輸液の準備が完了し、その後に、輸液ポンプ1を駆動して所定の輸液(点滴)を開始する。
(4)輸液ポンプ1の運転を開始してからの積算時間(または輸液積算量)が予定の値に達した時点で輸液ポンプ1の運転を停止する。次に、輸液ポンプ1の停止を確認した後に、扉ロック機構13のロックレバー131を手前側(レバー収容凹部11aの外側)に回動操作(扉ロック時とは逆の回動操作)する。このロックレバー131の回動操作に伴ってロック片132が回動し、ロック爪133がポンプ本体11の係止片134から外れる。これによって扉12のロックが解除される。
また、ロック爪133が係止片134から外れると、ロック検出センサ6の出力信号がON信号からOFF信号に切り替わる。このロック検出センサ6の出力信号の変化(ON−OFF)に応じて、ローラ移動機構3の電動モータ323が上記扉ロック時とは逆向き回転し、ローラスライダ31が図8及び図10(B)の位置から下向きに移動(ポンプ部112から離反する向きに移動)する。このローラスライダ31の移動過程において、図11に示すように、ローラスライダ31の閉塞側押圧片31aがローラ72の外周面に当接し、その当接時点からローラ72がローラスライダ31によって下向きに押されていき、クランプ本体71の閉塞側移動端(フランジ71fとは反対側の端部)に向けて回転移動していく。そして、ローラ72がクランプ本体71の閉塞側移動端まで移動した時点で輸液チューブTが完全閉塞状態となり(図10(A))、この時点でローラ移動機構3の電動モータ323の駆動が停止する。この後に、扉12を開いて、輸液チューブT及びローラクランプ7を輸液ポンプ1から取り外す。
以上のように、この例の輸液ポンプ1によれば、ポンプ本体11にローラクランプ7を保持する構造とするとともに、扉ロック機構13の操作に連動してローラクランプ7のローラ72を移動するローラ移動機構3を設け、扉ロック機構13がロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを開放する位置に配置し、扉ロック機構13が非ロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを閉塞する位置に配置するように構成しているので、輸液ポンプの扉12を閉めても、その扉12のロックを掛けない限りは、ローラクランプ7によって輸液チューブTは閉塞された状態が維持される。これによって、扉12の閉鎖が不完全な場合や、扉ロックの掛け忘れによるフリーフローを確実に防止することができる。
また、閉鎖状態の扉12を開こうとして扉ロック機構13を操作したときには、これに応じてローラクランプ7にて輸液チューブTが自動的に閉塞されるので、輸液中などにおいて誤って扉12を開いても、フリーフローが起こることがなくなる。さらに、輸液終了後、扉12を開く前に扉ロック機構13を非ロック状態に操作した時点で、輸液チューブTがローラクランプ7によって必ず閉塞されるので、「ローラクランプ7を閉め忘れた状態で輸液チューブTを輸液ポンプ1から取り外してしまう」といった問題もなくなる。
さらに、本発明の輸液ポンプは、ポンプ本体11に輸液チューブTのローラクランプ7を保持することによりフリーフローを防止することができるので、専用のクランプを用いる必要がなく、ローラクランプを備えた一般的な輸液チューブにおいてもフリーフローを防止することができる。
このように、この例の輸液ポンプ1によれば、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
なお、以上の例では、扉ロック機構13がロック状態であるか否かを検出するロック検出センサ6(ロック検出手段)として、発光素子と受光素子とからなる反射型の光電セン
サを用いているが、これに限定されることなく、発光素子と受光素子とを対向配置する構造の透過型光電センサを用いてもよい。また、このような光電センサのほか、例えば、ロックレバー131やロック片132などがロック位置に回動したときにON(またはOFF)となるリミットスイッチなど、他の公知の位置・物品検出手段を適用してもよい。
以上の例では、ポンプ本体11にローラクランプ7を横向きの姿勢(ローラ72の回転軸72a,72bがポンプ本体11の前面に対して垂直となる姿勢)で保持しているが、これに限られることなく、ポンプ本体11にローラクランプ7を縦向きの姿勢(図20及び図21などに示す姿勢)で保持するようにしてもよい。
以上の例では、ローラ移動機構をポンプ本体11側に設けているが、扉12側にローラ移動機構を設けてもよい。
[実施形態2]
次に、ローラ移動機構の他の例について図16を参照して説明する。図16にはローラ移動機構のローラスライダ301のみを表記している。この例において、以下に説明する構成以外については、上記した[実施形態1]と同様な構成であるので、その具体的な説明は省略する。
この例のローラスライダ301は、閉塞側押圧片301aと開放側押圧片301bとの間の間隔Dを、ローラクランプ7のクランプ本体71の長さLよりも大きくしている点を特徴としている。
この例では、輸液ポンプ1の扉12を開いた状態では、図16(A)に示すように、ローラクランプ7が原点位置に配置される。その原点位置とは、図2に示すクランプ保持凹部113に保持したローラクランプ7のクランプ本体71が閉塞側押圧片301aと開放側押圧片301bとの間に入る位置である。したがって、扉12を開いた状態では、図16(A−1)に示すようにローラクランプ7のローラ72がチューブ閉塞位置(閉塞側移動端)にある場合、及び、図16(A−2)に示すようにローラクランプ7のローラ72がチューブ開放位置(開放側移動端)にある場合のいずれの場合でも、ローラクランプ7をクランプ保持凹部113に嵌め込むことができる。
ローラスライダ301は、上記した[実施形態1]の同様な構造のローラ移動機構3のラックギヤ321に取り付けられており、輸液ポンプ1の扉12を閉めて扉ロック機構13のロックレバー131をロック位置に操作すると、これに連動してローラスライダ301が上向き(チューブ開放側)に移動する。その移動過程において開放側押圧片301bがローラ72の外周面に当接し、その当接時点からローラ72がローラスライダ301によって上向きに押されていき、クランプ本体71の開放側移動端(フランジ71fとは反対側の端部)に向けて回転移動していく。そして、ローラ72がクランプ本体71のフランジ71f側の開放側移動端まで移動した時点で輸液チューブTが完全開放状態となる(図16(B))。
また、閉鎖状態の扉12のロックを解除すべくロックレバー131を非ロック位置に操作すると、ローラスライダ301が図16(B)の状態から下向き(チューブ閉塞側)に移動する。その移動過程において閉塞側押圧片301aがローラ72の外周面に当接し、その当接時点からローラ72がローラスライダ301によって下向きに押されていき、クランプ本体71の閉塞側移動端(フランジ71f側の端部)に向けて回転移動していく。そして、ローラ72がクランプ本体71のフランジ71f側の閉塞側端まで移動した時点で輸液チューブTが完全閉塞状態となり(図16(C))、その後に、ローラスライダ301が図16(A)に示す原点位置に復帰する。
この例においても、ポンプ本体11にローラクランプ7を保持する構造とし、扉ロック機構13のロックレバー131の操作に連動して、扉ロック機構13がロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを開放する位置に配置し、扉ロック機構13が非ロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを閉塞する位置に配置するように構成しているので、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
[実施形態3]
次に、本発明の輸液ポンプの別の例について図17〜図26を参照して説明する。
この例の輸液ポンプ100は、上記した[実施形態1]と同様に、ペリスタルティックフィンガ式の輸液ポンプであって、ポンプ本体(ケーシング)11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている。扉12は、ヒンジ14,14を介してポンプ本体11に揺動自在に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
この例の輸液ポンプ100において、以下に説明する構成以外については、上記した[実施形態1]と同様な構成であるので、その具体的な説明は省略する。
−ポンプ本体−
まず、この例においても、ポンプ本体11の略中央部(幅方向の中央部)に、チューブ装着ガイド部111及びポンプ部112が設けられており、このポンプ部112の下流側にクランプ保持部117が設けられている。クランプ保持部117は、図28〜図30に示すローラクランプ7のクランプ本体71を、その底板71c側から嵌め込むことが可能な保持凹部117aを備えており、この保持凹部117aにローラクランプ7(クランプ本体71)を嵌め込んだ状態で、輸液チューブTが輸液ポンプ100の上下方向に沿って配置され、ローラ72の上下方向への移動により輸液チューブTの閉塞と開閉とを行うことができる。
ポンプ本体11の側部には、後述する扉ロック機構403のロックレバー431が入り込むことが可能なレバー収容凹部11cが設けられている。このレバー収容凹部11cの上部に、扉ロック機構403のロック片432のロック爪433が引っ掛かる係止片(鉤形(断面L字状)の部材)434が設けられている。また、ポンプ本体11には、後述するローラ移動機構503のラックギヤ532等との干渉を避けるための段部11dが設けられている。
−扉ロック機構−
次に、扉ロック機構について図17〜図22を参照して説明する。
扉12の側端部(ヒンジ14側とは反対側の端部)にロックレバー431が配置されている。ロックレバー431は、回転軸431aを中心として回動自在に設けられており、図17に示すロック開放位置(非ロック位置)から、扉12をロックするロック位置(図18及び図22に示す位置)までの間において揺動可能(例えば、略90°揺動可能)となっている。ロックレバー431にはロック片432が一体形成されている。
ロック片432は、略1/4円形状に形成された部材であって、外周の一端部にロック爪433が設けられており、ロックレバー431を操作してロック位置に配置したときに、ロック片432及びロック爪433が上記したポンプ本体11に設けた係止片434に係合して扉12が完全閉鎖状態に保持される。また、ロック片432の外周部には、回転軸431aの軸心を中心とする円弧状のギヤ435が形成されている。この円弧状のギヤ435は、後述するローラ移動機構503のラックギヤ532に噛み合っている。そして、これらロックレバー431、ロック片432、ロック爪433、及び、上記ポンプ本体11の係止片434によって扉ロック機構403が構成されており、そのロックレバー431を操作することにより、扉ロック機構403をロック位置または非ロック位置に配置することができる。
−ローラ移動機構−
次に、ローラ移動機構503について図17〜図26を参照して説明する。
この例のローラ移動機構503は、上記したポンプ本体11のクランプ保持部117に保持されたローラクランプ7のローラ72を、輸液チューブTの閉塞位置と開放位置との間において移動させる機構である。
ローラ移動機構503は、ローラスライダ531、ラックギヤ532、並びに、上記した扉ロック機構403のロックレバー431及びロック片432(円弧状のギヤ435)などによって構成されている。また、ラックギヤ532及びロック片432(円弧状のギヤ435)などによって操作力伝達機構(ロックレバー431の回動操作力を、ローラクランプ7のローラ72を移動させる力に変換して伝達する機構)が構成されている。
ローラスライダ531は、図23に示すように、ラックギヤ532に一体的に取り付けられた縦片531dと、この縦片531dの先端部から横方向(扉12内面と平行な方向)に延びる横片531cと、この横片531cの先端部から扉12内面と直交する方向に延びる閉塞側押圧片531a及び開放側押圧片531bとが一体形成されている。
ローラスライダ531の閉塞側押圧片531a及び開放側押圧片531bは、扉12の上下方向に沿うように配置されており、また、それら閉塞側押圧片531aと開放側押圧片531bとの間の間隔はローラクランプ7のローラ72の直径よりも大きな寸法に設定されている。さらに、ローラスライダ531の閉塞側押圧片531a及び開放側押圧片531bは、上記したポンプ本体11のクランプ保持部117の保持凹部117aに対応する位置に配置されており、扉12を閉じた際に、閉塞側押圧片531aの先端部及び開放側押圧片531bの先端部の一部が上記クランプ保持部117の保持凹部117aの中央部に入り込むようになっている。
ラックギヤ532は、扉12の上下方向に沿って配置されており、その扉12の内面に設けられた支持ガイド127,128によって上下方向にスライド移動自在に支持されている。ラックギヤ532は、上述したように、扉ロック機構403のロック片432の円弧状のギア435に噛み合っており、扉ロック機構403のロックレバー431が図20に示す開放状態(非ロック状態)にあるときには、ラックギヤ532(ローラスライダ531)が最下端にあり、この状態から、ロックレバー431をロック側に操作して、ロック片432のロック爪433がポンプ本体11の係止片434に係合した状態(扉ロック状態)となったときには、ラックギヤ532(ローラスライダ531)が最上端の位置(図18及び図22に示す位置)まで移動するようになっている。
ここで、上述の如く、ロックレバー431が開放状態でローラスライダ531が最下端にある状態で、扉12を閉じると、ローラスライダ531の閉塞側押圧片531aの先端部及び開放側押圧片531bの先端部の一部が、ポンプ本体11のクランプ保持部117の保持凹部117a内に入り込む。このとき、クランプ保持部117に保持されているローラクランプ7のローラ72を閉塞側移動端(フランジ71fとは反対側の端部)にある場合は、ローラスライダ531の閉塞側押圧片531aと開放側押圧片531bとの間にローラ72が入り込む(図24(A)参照)。これに対し、ローラクランプ7のローラ72が開放側移動端(フランジ71f側の端部)にある場合は、閉塞側押圧片531aがローラ72と干渉して扉12を閉じることができない。
−動作説明−
次に、輸液ポンプ1への輸液チューブTのセッティング、及び、ローラ移動機構503の動作について図17〜図26を参照して説明する。
(11)まず、図27に示す輸液セットSのローラクランプ7のローラ72を操作して輸液チューブTを閉塞しておく。次に、図17に示すように、輸液ポンプ100の扉12を開いた状態で、ローラクランプ7をポンプ本体11の前面側に持っていき、そのローラクランプ7のクランプ本体71を、フランジ71fを上側にした姿勢でポンプ本体11の保持凹部117aに嵌め込む(図20及び図21参照)。
(12)ローラクランプ7をポンプ本体11の保持凹部117aに嵌め込んだ状態で、ローラクランプ7の上流側の輸液チューブTをチューブ装着ガイド部111及びポンプ部112に装着する。このようなチューブ装着が終了した後に扉12を閉める。
扉12を閉めると、ローラ移動機構503のローラスライダ531の閉塞側押圧片531aの先端部がクランプ本体71の一対の側壁71a,71b間の隙間に入り込み、その閉塞側押圧片531aと開放側押圧片531bとの間にローラクランプ7のローラ72が配置される(図24(A)、図25(A))。
なお、上述したように、ローラクランプ7にて輸液チューブTが閉塞されていない場合は、ローラ72とローラスライダ531の閉塞側押圧片531aとが干渉するので(図24(A)及び図25(A)の2点鎖線参照)、扉12を閉めることはできない。これによって輸液ポンプ100への輸液チューブTの装着前のチューブ閉塞忘れを防止することがきる。
(13)扉12を閉じた状態で、扉ロック機構403のロックレバー431を回転軸431aを中心としてポンプ本体11のレバー収容凹部11cの内部側に向けて回動(略90度回動)させる。このロックレバー431の回動操作により、図18及び図22に示すように、ロック片432が回転軸431aを中心として回動し、このロック片432及び当該ロック片432の先端のロック爪433がポンプ本体11の係止片434に引っ掛かって扉12が閉鎖状態に保持(扉ロック)される。また、ロック片432が回転軸431aを中心として回動すると、ロック片432の円弧状のギヤ435に噛み合っているラックギヤ532が上向きに移動し、これに伴ってローラスライダ531も上向きに移動する。このローラスライダ531の移動により、開放側押圧片531bによってローラ72がクランプ本体71の開放側移動端(フランジ71f側の端部)に向けて移動していく。そして、ローラ72がクランプ本体71の開放側移動端まで移動した時点で輸液チューブTが完全開放状態となる(図24(B)、図25(B))。このようなチューブセッティングを終了した後に、輸液ポンプ100を駆動させて輸液セットSのプライミング操作を行っておく。輸液ポンプ100の駆動によるプライミング操作の代わりに、輸液ポンプ100にセッティングを行う前に落差圧でプライミング操作を行った輸液セットSを輸液ポンプ100にセッティングするようにしてもよい。
以上の処理により輸液の準備が完了し、その後に、輸液ポンプ100を駆動して所定の輸液(点滴)を開始する。
(14)輸液ポンプ100の運転を開始してからの積算時間(または輸液積算量)が予定の値に達した時点で輸液ポンプ100の運転を停止する。次に、輸液ポンプ100の停止を確認した後に、扉ロック機構403のロックレバー431を手前側(レバー収容凹部11cの外側)に回動操作(扉ロック時とは逆の回動操作)する。このロックレバー43
1の回動操作に伴ってロック片432が回動し、このロック片432及びロック爪433がポンプ本体11の係止片434から外れる。また、ロック片432が回動すると、ラックギヤ532つまりローラスライダ531が図24(B)及び図25(B)の位置から下向きに移動する。このローラスライダ531の移動過程において、図26に示すように、ローラスライダ531の閉塞側押圧片531aがローラクランプ7の外周面に当接し、その当接時点からローラ72がローラスライダ531によって下向きに押されていき、クランプ本体71の閉塞側移動端(フランジ71fとは反対側の端部)に向けて回転移動していく。そして、ロックレバー431を図17に示す位置まで戻した時点で、ローラ72がクランプ本体71の閉塞側移動端まで移動し、輸液チューブTが完全閉塞状態となる(図24(A))。そして、この後に、扉12を開いて、輸液チューブT及びローラクランプ7を輸液ポンプ100から取り外す。
以上のように、この例の輸液ポンプ100によれば、ポンプ本体11にローラクランプ7を保持する構造とするとともに、扉ロック機構403のロックレバー431の操作に連動してローラクランプ7のローラ72を移動するローラ移動機構503を設け、扉ロック機構403がロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを開放する位置に配置し、扉ロック機構403が非ロック状態であるときにローラクランプ7のローラ72を輸液チューブTを閉塞する位置に配置するように構成しているので、輸液ポンプの扉12を閉めても、その扉12のロックを掛けない限りは、ローラクランプ7によって輸液チューブTは閉塞された状態が維持される。これによって、扉12の閉鎖が不完全な場合や、扉ロックの掛け忘れによるフリーフローを確実に防止することができる。
また、閉鎖状態の扉12を開こうとして扉ロック機構403を操作したときには、これに応じて、ローラクランプ7にて輸液チューブTが自動的に閉塞されるので、輸液中などにおいて誤って扉12を開いても、フリーフローが起こることがなくなる。さらに、輸液終了後、扉12を開く前に扉ロック機構13を非ロック状態に操作した時点で、輸液チューブTがローラクランプ7によって必ず閉塞されるので、「ローラクランプ7を閉め忘れた状態で輸液チューブTを輸液ポンプ100から取り外してしまう」といった問題もなくなる。
さらに、本発明の輸液ポンプは、ポンプ本体11に輸液チューブTのローラクランプ7を保持することによりフリーフローを防止することができるので、専用のクランプを用いる必要がなく、ローラクランプを備えた一般的な輸液チューブにおいてもフリーフローを防止することができる。
このように、この例の輸液ポンプ100によれば、看護師等の医療従事者の操作ミス等に起因するフリーフローを確実に防止することができる。
なお、この例では、ポンプ本体11にローラクランプ7を縦向きの姿勢(ローラ72の回転軸72a,72bがポンプ本体11の前面と平行となる姿勢)で保持しているが、これに限られることなく、ポンプ本体11にローラクランプ7を横向きの姿勢(図5及び図6などに示す姿勢)で保持するようにしてもよい。
以上の例では、ローラ移動機構を扉12側に設けているが、ポンプ本体11側にローラ移動機構を設けてもよい。
−他の実施形態−
以上の各例では、輸液ポンプのポンプ機構として、ペリスタルティックフィンガ式のポンプ機構を用いているが、これに限定されることなく、輸液チューブ内の輸液を送液する
ことが可能な機構であれば、他の方式のポンプ機構を採用してもよい。その一例として、ローラ式のポンプ機構や、例えば特開2010−136853号公報に開示されているようなV字構造有機アクチュエータモジュールを備えたポンプ機構などを挙げることができる。