JP5998531B2 - 電気−機械変換素子と液滴吐出ヘッドと液滴吐出装置 - Google Patents

電気−機械変換素子と液滴吐出ヘッドと液滴吐出装置 Download PDF

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Description

この発明は、電気機械変換機能を有する電気−機械変換素子と、この電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置とに関する。
従来から、インクジェットプリンターのプリンターヘッドに使用する電気−機械変換素子が知られている(特許文献1参照)。
かかる電気−機械変換素子は、基板と、この基板の上に形成された下部電極層と、この下部電極層の上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜の上に形成された上部電極層とを有する。
この電気−機械変換素子は、上下部の電極を介して電気−機械変換膜に電界を印加することで薄膜アクチュエータとなり、これらはインクジェットヘッドに使われる。
しかしながら、この電気−機械変換素子は信頼性(繰り返し電界印加回数の増加にともない、圧電特性が劣化する)の面で不十分であるという問題があった。
この発明の目的は、信頼性の向上が十分に得られる電気−機械変換素子と、この電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置とを提供することにある。
請求項1の発明は、基板または下地膜と、この基板または下地膜上に第1の密着層を介して形成された下部電極と、この下部電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された上部電極とを備えた電気−機械変換素子であって、
前記下部電極は、前記第1の密着層上に形成されるとともに金属膜からなる第1の電極と、この第1の電極上に形成された酸化物からなる第2の電極と、この第2の電極上に形成された第2の密着層と、この第2の密着層上に形成された第3の電極とを有し、
前記上部電極は、前記電気−機械変換膜上に形成された酸化物からなる第4の電極と、この第4の電極上に形成された金属からなる第5の電極とを有することを特徴とする。
この発明によれば、電気−機械変換素子の信頼性の向上を図ることができる。
この発明に係るインクジェット記録装置の主要部の外観を示した斜視図であり。 図1に示すインクジェット記録装置の構成を示した断面図である。 図1に示すインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの電気−機械変換素子の構成を概念的に示した断面図である。 図3に示すインクジェットヘッドを集積化した構成を概略的に示した説明図である。 2θ=32°に固定したときのPsiと回折強度との関係を示すグラフである。 XRDにて結晶構造を調べた場合の2θと回折強度との関係を示すグラフである。 積層膜を示した説明図である。 第1実施例の液滴吐出ヘッドの構成を示した断面図である。 (A)液滴吐出ヘッドの構成を示した断面図、(B)その平面図である。 実施例の代表的なP−Eヒステリシス曲線を示したグラフである。 実施例と比較例の耐久性評価を示した表である。
以下、この発明に係る電気−機械変換素子(圧電体素子)の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
図3は、この発明に係る電気−機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドである記録ヘッド(インクジェットヘッド)94の構成を示す。
[記録ヘッド]
記録ヘッド94は、圧力室(加圧室)221を形成するとともに下部が開口された断面コ字状の圧力室基板220と、圧力室基板220の下部の開口を閉塞したノズル板210とを有し、この圧力室基板220はSi基板で形成されるとともに、Si基板からなる下地である基板230を有している。ノズル板210には、インクの吐出口であるノズル孔211が形成されている。
基板230の上には下地膜である成膜振動板231が形成され、この成膜振動板231上に第1の密着層232が形成されている。また、第1の密着層232上に第1の電極233が層状に形成され、この第1の電極233上に第2の電極234が層状に形成され、この第2の電極234上に第2の密着層235が形成され、この第2の密着層235上に第3の電極236が層状に形成されている。
第1の電極233と第2の電極234と第2の密着層235と第3の電極236とで下部電極300が構成されている。
第3の電極236上に電気−機械変換膜243が形成され、この電気−機械変換膜243上に第4の電極244が層状に形成され、この第4の電極244上に第5の電極245が層状に形成されている。この第4の電極244と第5の電極245とで上部電極400が構成され、下部電極300と電気−機械変換膜243と上部電極400とで電気−機械変換素子500が構成されている。
また、基板230と電気−機械変換素子500とで圧力室221の液体(図示せず)を昇圧させる吐出駆動手段が構成されている。
図4は、図3に示すインクジェットヘッド(単ビット)を集積化したものの一例を示す。
[圧力室基板]
圧力室基板220としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような圧力室を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっており本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用している。
[振動板]
振動板である基板230は、図3に示すように電気−機械変換膜243によって発生した力を受けて、下地である基板230が変形変位して、圧力室221のインク滴を吐出させる。そのため、下地としては所定の強度を有したものであることが好ましい。
材料としては、Si、SiO2、Si3N4をCVD(化学気相成長)法により作製したものが挙げられる。さらに図3に示すような下部電極300、電気−機械変換膜243の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気−機械変換膜243としては、一般的に材料としてPZTが使用されることから線膨張係数8×10^−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10^−6〜10×10^−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10^−6〜9×10^−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等であり、これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと図1に示すような圧力室の加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になる。
[第1の密着層]
第1の密着層232としては、Tiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置(急速熱処理装置)を用いて、650〜800℃、1〜30分、O2雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜にする。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタンO2膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTA(急速熱処理)による酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としてはTa、Ir、Ru等の材料でも好ましい。
膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があるのと、この範囲以上になってくるとその上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
第1,第5の電極233,245としては、金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、先の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。第1,第4の電極膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。
[第2の密着層]
第2の密着層235としては、Tiをスパッタで作製することが望ましい。このときTiを成膜後、真空を破らず、次の第3の電極236を連続して成膜し、第3の電極236を500℃以上基板加熱させた状態で作製させることが、重要である。これはこの後に作製した電気-機械変換膜243の結晶の質をさらに高めることが出来ており、それにより圧電アクチュエーターとしての連続駆動後の変位劣化に非常に効果が得られているからである。
膜厚としては、1nm〜20nmが好ましく、5nm〜15nmがさらに好ましい。この範囲を超えた場合、電気−変換膜の結晶の質に影響が出てくる。
[第2,第3,第4の電極]
第2,第3,第4の電極234,236,244としては、SrRuO3(SRO)を材料として用いている。左記以外にも、Srx(A)(1−x)Ruy(1−y)、A=Ba、Ca、 B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によってSrRuO3薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、第1電極のPt(111)にならってSrRuO3膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
例えば、SRO成膜条件については特許第3249496号公報に記載されている。以下、その概略を説明する。
室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸加している。この場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)についても(110)配向しやすくなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のθ-2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi(あおり角)方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することが出来る。図5に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを示す。Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できた。
さらにSRO膜の表面粗さを見たときに、成膜温度に影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。粗さについてはAFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ) を指標としている。表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエーターとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。表面粗さとしては、4nm〜15nmになっていることが好ましく、6nm〜10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。従って上述に示すような、結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500℃〜700℃、好ましくは520℃〜600℃の範囲で成膜を実施している。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる。
第3の電極236は、第2の密着層235の作製後に第の2電極234と全く同じスパッタ条件にて成膜を実施している。このとき、第2の電極234と第3の電極236の合計のSRO膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。また第2の電極234と第3の電極236の各膜厚としては、ほぼ同じ膜厚で構成されていることが好ましく、両者の膜厚差としては±10nm内に収まっていることが好ましい。この範囲から外れてくると、第2の密着層235の膜厚の最適値がずれてしまうため、その後作成される電気-機械変換膜質に影響が及び、十分な特性が得られなくなる。
第4の電極244としてSRO膜の膜厚としては、40nm〜80nmが好ましく、50nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
[電気−機械変換膜]
電気−機械変換膜243としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PTZ(53/47)と示される。PTZ以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1-x, Ba)(Zr, Ti)O3、(Pb1-x, Sr)(Zr, Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
電気−機械変換膜243の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmとなる。この範囲より小さいと十分な変位を発生することが出来なくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
第2の電極234上にPZTをSol−gel法により作製した溶液を用いてスピンコートにより1μm成膜した後のXRDについて図6に示す。例えば図3に示す構成で見たときに、第2の密着層235の有無で比較をしたときに、第2の密着層235を入れたときの方が、結晶の質をさらに高めることが出来ていることが分かる。
[作成方法]
次に、電気−機械変換素子500の作成方法の実施例について説明する。
<実施例1>
先ず、シリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1ミクロン)を形成し、第1の密着層232として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した後にRTAを用いて750℃にて熱酸化し、引き続き第1の電極233として白金膜(膜厚150nm)、第2の電極234としてSrRuO膜(膜厚30nm)、第2の密着層235として、チタン膜(膜厚10nm)、第3の電極236としてSrRuO膜(膜厚30nm)をスパッタ成膜した。
スパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。次に電気−機械変換膜243として以下の2種の溶液を用意し、図7に示すような積層膜を作製した。
PZT(1)(Pb:Zr:Ti=110:53:47)
PZT(2)(Pb:Zr:Ti=120:53:47)
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル−リットルにした。この液を用いて、スピンコートにより成膜し
、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。図7に示すように、1、2層目にPZT(1)溶液を用いて、3層目にPZT(2)溶液を用いた。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
次に第4の電極244としてSrRuO膜(膜厚40nm)、第5の電極245としてPt膜(膜厚125nm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いてパターンを作製した。
次に絶縁保護膜1008として、パリレン膜(膜厚2μm)をCVD成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、RIE
(サムコ製)を用いて図8に示すパターンを作製した。
最後に、第5,第6の電極245,1009としてAl膜(膜厚5μm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、RIE(サムコ製)を用いて図8(A),(B)のようなパターンを作製し、液滴吐出ヘッド1000を作製した。1009,1010は第6,第7電極端子である。
<実施例2>
第2の電極234、第3の電極236としてSrRuO膜(膜厚70nm)とした以外は実施例1と同様に図8(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1000を作製した。
<実施例3>
第2の電極234、第3の電極236としてSrRuO膜(膜厚25nm)とした以外は実施例1と同様に図8(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1000を作製した。
<実施例4>
第2の密着層235としてチタン膜(膜厚15nm)とした以外は実施例1と同様に図8に示すような液滴吐出ヘッド1000を作製した。
<実施例5>
第2の密着層としてチタン膜(膜厚2nm)とした以外は例1と同様に図8に示すような液滴吐出ヘッド1000を作製した。
<比較例1>
第2の密着層235を設けないこと以外は実施例1と同様に図9(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1100を作製した。
<比較例2>
第2の電極234、第3の電極236としてSrRuO膜(膜厚85nm)とした以外は実施例1と同様に図9(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1100を作製した。
<比較例3>
第2の密着層235としてチタン膜(膜厚30nm)とした以外は実施例1と同様に図9(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1100を作製した。
<比較例4>
第2の密着層235としてチタン膜(膜厚0.5nm)とした以外は実施例1と同様に図9(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1100を作製した。
<比較例5>
第2の電極234、第3の電極236としてSrRuO膜(膜厚15nm)とした以外は実施例1と同様に図9(A),(B)に示すような液滴吐出ヘッド1100を作製した。
<比較例6>
第2の密着層235として、チタン膜(膜厚10nm)、第1の密着層232として、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜した後に、RTA処理を行わず、連続して第1の電極として白金膜(膜厚150nm)第2の電極234としてSrRuO膜(膜厚60nm)をスパッタ成膜した以外は実施例1と同様に図9に示すような液滴吐出ヘッド1000を作製した。
実施例1〜5、比較例1〜6で作製した液滴吐出ヘッドについて、電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。代表的なP−Eヒステリシス曲線は図10に示す。電気−機械変換能は電界印加(150kV/cm)による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。初期特性を評価した後に、耐久性(10^10回繰り返し印可電圧を加えた直後の特性)評価を実施した。これらの詳細結果について図11の表1にまとめた。
実施例1〜5、比較例1〜6ともに初期特性、耐久性試験後の結果についても一般的なセラミック焼結体と同等の特性を有していた(残留分極Pr:20〜27uC−cm2、圧電定数は−120〜−140pm−V)。
一方、比較例1〜6については、若干初期特性としては一般的なセラミックス焼結体に比べて特性が劣る。さらに1010回後(1010回繰り返し印加電圧を加えた直後)の特性においては、実施例1〜5に比べて、残留分極及び圧電定数の双方において大きく劣化しているのが確認された。
すなわち、図3に示す電気−機械変換素子500を備えた実施例1ないし実施例5の液滴吐出ヘッド1000は、繰り返し電界印加回数の増加にともない、圧電特性が劣化するということがなく、信頼性の向上が十分に得られていることが図11の表示1から分かる。つまり、電気−機械変換素子500の信頼性の向上を図ることができる。
[インクジェット記録装置]
図1及び図2は、図3に示す電気−機械変換素子500を有する記録ヘッド94を搭載した液滴吐出装置であるインクジェット記録装置80を示す。
インクジェット記録装置80は、装置本体81の内部に設けた印字機構部82等を備えている。この印字機構部82は、主走査方向に移動可能なキャリッジ93と、このキャリッジ93に搭載したインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)である記録ヘッド(プリンターヘッド)94と、この記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等を有している。
また、装置本体81の下方部には、前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84が抜き差し自在に装着されている。また、装置本体81の前部には、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85が開倒可能に取り付けられている。
給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83は、装置本体81へ取り込まれ、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙されるようになっている。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91および従ガイドロッド92と、この主ガイドロッド91および従ガイドロッド92によって主走査方向に摺動自在に保持されているキャリッジ93とを有している。このキャリッジ93には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである複数の記録ヘッド94が装着され、各記録ヘッド94は、主走査方向と交差する方向に配列したインク吐出口(ノズル)を有し、インク滴吐出方向は下方に向けられている。
また、キャリッジ93には、各記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95がそれぞれ交換可能に装着されている。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する大気口(図示せず)と、下方には記録ヘッド94へインクを供給する供給口(図示せず)とを有し、内部にはインクが充填された多孔質体が設けられており、この多孔質体の毛管力により記録ヘッド94へ供給されるインクがわずかな負圧に維持されている。
ここでは、記録ヘッドとして各色の記録ヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定している。そして、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
一方、給紙カセット84にセットした用紙83を記録ヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とが装置本体81に設けられている。
搬送ローラ104は、副走査モータ107によってギヤ列(図示せず)を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このインクジェット記録装置80は、電気−機械変換素子500を用いた記録ヘッド94を搭載しているので、繰り返し電界印加回数の増加にともない、圧電特性が劣化することがなく、このため、長期間の使用によって振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られ、画像品質が向上することになる。
電気−機械変換素子500を搭載したインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)であるプリンターヘッド94と、液滴吐出装置であるインクジェット記録装置80は、インク吐出特性を長期間に亘って良好に保持することができ、インクを連続吐出しても安定したインク吐出特性を得ることができる。
上記実施例では、基板230上に成膜振動板231を形成しているが、必ずしもこの成膜振動板231を形成しなくてもよい。
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
80 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
94 記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
230 基板(下地:振動板)
231 成膜振動板(下地膜)
232 第1の密着層
233 第1の電極
234 第2の電極
235 第2の密着層
236 第3の電極
243 電気−機械変換膜
244 第4の電極
245 第5の電極
300 下部電極
400 上部電極
500 電気−機械変換素子
特開2009-54934号公報

Claims (8)

  1. 基板または下地膜と、この基板または下地膜上に第1の密着層を介して形成された下部電極と、この下部電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された上部電極とを備えた電気−機械変換素子であって、
    前記下部電極は、前記第1の密着層上に形成されるとともに金属膜からなる第1の電極と、この第1の電極上に形成された酸化物からなる第2の電極と、この第2の電極上に形成された第2の密着層と、この第2の密着層上に形成された第3の電極とを有し、
    前記上部電極は、前記電気−機械変換膜上に形成された酸化物からなる第4の電極と、この第4の電極上に形成された金属からなる第5の電極とを有することを特徴とする電気−機械変換素子。
  2. 前記第2の電極と第3の電極がルテニウム酸ストロンチウムからなることを特徴とする請求項1に記載の電気−機械変換素子。
  3. 前記第2の電極と第3の電極の膜厚の合計が40nm以上であって150nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気−機械変換素子。
  4. 前記第2の密着層は、チタン膜であり、その膜厚1nm以上であって20nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の電気−機械変換素子。
  5. 前記第1の密着層は、膜厚が10nm以上であって50nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の電気−機械変換素子。
  6. 前記第1の密着層は、酸化チタン膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の電気−機械変換素子。
  7. 液滴を吐出するノズルと、該ノズルが連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記吐出駆動手段は、前記加圧室の壁の一部を振動板で構成し、該振動板に前記請求項1ないし請求項のいずれか1つに記載の電気−機械変換素子を設けたものであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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