<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る駐車支援装置を車載の駐車支援システム1000に適用した場合を例にして説明する。なお、本発明の駐車支援とは、車両を所定の駐車位置に移動させる入車(入庫)時の操作の支援のみならず、車両を駐車位置から他の位置に移動させる出車(出庫)時の操作の支援をも含む。
図1は、本実施形態に係る駐車支援装置100を含む駐車支援システム1000のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態の駐車支援システム1000は、駐車支援装置100の他に、自車両の外部に固定された4つの車載カメラ1a〜1dと、車両コントローラ2と、運転支援情報を表示するディスプレイを備える表示装置3及びこの表示を切り替える表示切替スイッチ31と、イグニッションスイッチ4と、撮像スイッチ5と、車両周囲の物体との距離を計測する測距装置6とを備えている。
上述の車両コントローラ2は、車両のシフト位置のポジションに応じた信号を出力するポジションスイッチ21と、車速情報を出力する車速センサ22と、ステアリングの操舵角情報を出力する操舵角センサ23と、ステアリングにかかる操舵力を検出するトルクセンサ24と各種車両情報を授受することができる。さらに、車両コントローラ2は、車両の駆動に関わる駆動系25及び車両の操舵に関わる操舵装置26と各種車両情報を授受することができる。
本実施形態の操舵装置26は、ステアリングコントローラ261を備えている。本実施形態におけるステアリングコントローラ261は、例えばコラムシャフトに取り付けられるモータ等の制御を実行する。具体的に、ステアリングコントローラ261は、車両コントローラ2を介して取得された各種車両情報から求められた駐車誘導軌道と自車両位置に基づいて目標操舵角を算出し、この目標操舵角に追従するように操舵を自動で行う機能を備えている。なお、本実施形態では電動パワーステアリング(EPS)を備える車両を例に説明するが、EPS以外にも油圧パワーステアリングやステアバイワイヤ等を備える車両でも実現可能である。
これらの各装置はCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行うことができる。
同図に示すように、本実施形態に係る駐車支援装置100の制御装置10は、合成画像とともに注意すべき障害物が含まれる障害物画像とを表示させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、駐車支援装置100として機能させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えている。
本実施形態に係る駐車支援装置100の制御装置10は、撮像画像取得機能と、合成画像生成機能と、運転支援情報生成機能と、障害物設定機能と、注意度算出機能と、画像選択機能と、表示制御機能とを備えている。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行することができる。
以下に、駐車支援装置100の制御装置10が実現する各機能についてそれぞれ説明する。
まず、制御装置10の撮像画像取得機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、イグニッションスイッチ4に入力操作がされ、撮像スイッチ5に入力操作がされると、車載カメラ1a〜1dは、CCD(Charge Coupled Devices)等の撮像素子を用いて構成され、所定周期で車両周囲を撮像する。撮像画像取得機能の起動のトリガは限定されない。たとえば、一時停止後に、ポジションスイッチをリバースに入れる操作がされた(リバースポジションスイッチオン情報が入力された)などの車両の駐車操作パターンに応じた操作信号を車両コントローラ2から取得した場合に撮像画像の取得を開始するようにしてもよいし、車載ナビゲーション装置のGPS装置によって検出された現在位置が、同ナビゲーション装置の地図情報中の駐車場領域に含まれた後に、先述の駐車操作パターンに応じた操作信号を車両コントローラ2から取得した場合に撮像画像の取得を開始するようにしてもよいし、一時停止後に車両周囲を撮像し、撮像画像中に駐車区画に応じた白線が抽出された場合に撮像画像の取得を開始するようにしてもよい。また、後述する出車操作パターンは、駐車支援処理を利用して停車した後にイグニッションがオン操作されたなどの車両の出車操作パターンを予め定義しておき、撮像画像取得機能のトリガとすることができる。
図2は、車載カメラ1a〜1dを車両に取り付ける場合の配置例を示す図である。車載カメラ1a〜1dは、車両の外部の異なる位置に各々設置され、車両周囲の4方向の画像をそれぞれ撮影する。本例では、図2に示すように、フロントグリル近傍などの車両前方の所定位置に設置された車載カメラ1aと、左右のサイドミラー近傍に設置され車載カメラ1b,1cと、車両後方の所定位置に設置された車載カメラ1dとが設けられている。これら4台の車載カメラ1a〜1dは所定周期で撮像画像を駐車支援装置100の制御装置10へ送出する。
次に、制御装置10の合成画像生成機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、取得した各車載カメラ1a〜1dの撮像画像に基づいて車両上方の仮想視点から車両及び車両周囲を見下ろした一つの合成画像を生成する。制御装置10は、異なる位置の車載カメラ1a〜1dによって取得された各撮像画像を、各撮像画像の画素アドレスと合成画像におけるアドレスとの対応関係を示す変換テーブルを予め準備し、これを参照して各撮像画像を合成画像の座標へ変換する。そして、制御装置10は、座標変換された各撮像画像を繋ぎ合せ、車両及び車両周囲の様子を示す一つの合成画像を生成する。この合成画像の生成手法は、公知の手法を用いることができる。
次に、運転支援情報生成機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、自車両が目標駐車位置へ移動する際の車両情報に基づいて、自車両の現在位置及びこの現在位置から目標駐車位置へ移動する際の駐車誘導軌道を含む駐車時における運転支援情報を生成する。特に限定されないが、この駐車誘導軌道は、駐車操作の開始後、後退を開始する後退開始位置と、最終的に駐車する目標駐車位置と、途中で切り返すための駐車途中位置と、ステアリング操舵に連動した線である操舵連動線と、目標駐車位置に至る理想的な進路予想線とを含む。特に限定されないが、制御装置10は、クロソイド曲線、円弧、直線の組合せ、又は予め定義された任意の軌跡を用いて現在位置から目標駐車位置までの駐車誘導軌道を算出する。駐車誘導軌道を算出する手法は、出願時において知られている駐車誘導手法を用いることができる。
制御装置10は、算出した駐車誘導軌道と自車両位置とを車両コントローラ2を介してステアリングコントローラ261に送信する。ステアリングコントローラ261は、この駐車誘導軌道に沿って車両が移動できるように、操舵装置26,駆動系25を制御する。
続いて、障害物設定機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、自車両が駐車する際に、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物を設定する。この障害物の設定処理は所定周期で行い、順次、障害物の存在位置を更新する。このように、自車両が駐車する際、つまり、自車両が駐車操作を開始した現在位置から目標駐車位置に移動する間の複数の位置で障害物を順次設定することにより、後の処理において、その位置ごとに注意すべき障害物の注意度を算出し、障害物画像の選択、表示を行うことができる。この結果、移動に伴い注意すべき障害物が変化する場合でも、注意すべき障害物を監視するための適切な障害物画像を常時提示することができる。
具体的に、本実施形態の制御装置10は、測距装置6に自車両から自車両の周囲に存在する物体までの距離を計測させる。本実施形態の測距装置6としては、超音波、電磁波、レーザー等の反射波に基づいて距離を計測する公知のものを用いることができる。もちろん、公知の手法を用いて、車両に搭載されているカメラ1a〜1dの撮像画像に基づいて、車両から撮像画像に含まれる物体までの距離を算出することもできる。
本実施形態の制御装置10は、測距装置6により計測された車両周囲の物体までの距離が所定値未満である物体を駐車の際における「障害物」として判定し、その障害物を注意度の算出対象として設定する。さらに、必要な座標変換を行い、障害物として判定された物体の存在方向と、カメラ1a〜1dの映像とを比較する。そして、距離が所定値未満の障害物の存在位置を設定する。この障害物の存在位置は、カメラ1a〜1dの撮像画像と共通の座標で設定することが好ましい。このように、障害物の存在位置を撮像画像上に設定することにより、後述の画像選択機能の処理において、障害物がカメラ1a〜1dのうちのどのカメラの撮像画像に含まれているかを容易に判断することができる。
また、本実施形態の制御装置10は、運転支援情報生成機能によって算出された駐車誘導軌道に基づいて、この駐車誘導軌道のパターンと仮想障害物位置とを予め対応づけた仮想障害物設定情報131を参照して、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物の存在位置を設定することもできる。
算出された駐車誘導軌道は、そのパターン(形状)ごとに、例えば、縦列駐車(広い駐車位置への縦列駐車、狭い駐車位置への縦列駐車を含む)、横列駐車、斜列駐車などの駐車パターンに分類することができる。ちなみに、この分類処理は、予め駐車パターンごとに駐車誘導軌道モデルを設定しておき、運転支援情報生成機能によって算出された駐車誘導軌道と駐車誘導軌道モデルとの差を求め、駐車誘導軌道モデルとの差が所定量以下である駐車パターンに、その駐車誘導軌道を分類すればよい。また、縦列駐車、横列駐車、斜列駐車などの駐車パターンごとに、仮想障害物が存在する位置を予測することができる。例えば、縦列駐車パターンであれば、障害物は目標駐車位置の前方と後方に存在すると予測することができ、横列駐車パターン、斜列駐車パターンであれば、障害物は目標駐車位置の左右、又は左右及び前後に存在すると予測することができる。このように、駐車誘導軌道モデルに応じた駐車パターンの仮想障害物位置を予め定義した仮想障害物設定情報131を備えていれば、運転支援情報生成機能によって算出された駐車誘導軌道に基づいて、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物の存在位置を設定することができる。
このように予測によって障害物の存在位置を設定することにより、測距装置6を設けなくても、駐車時における障害物の存在位置を設定することができ、処理負担を軽減させることができる。この結果、運転者の操作に対する応答速度の高い運転支援を行うことができる。
続いて、注意度算出機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、設定された障害物と駐車誘導軌道に沿って移動する自車両の位置との位置関係に基づいて、駐車の際に障害物に対して求められる注意の度合いを示す注意度を算出する。この注意度の算出処理は、障害物設定機能によって所定周期で障害物の存在位置が設定される度に実行する。ちなみに、本実施形態の注意度は駐車時において障害物との接近度合いに応じる値である。つまり、駐車時において障害物と接近する度合いが高い場合はその障害物の注意度が高くなり、障害物と接近する度合いが低い場合はその障害物の注意度が低くなる。
この注意度の算出手法は特に限定されず、以下の手法を用いることができる。
第1の手法として、本実施形態の制御装置10は、運転支援情報生成機能により算出された駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物との距離又はこの距離の変化量に基づいて、障害物に対する注意度を算出することができる。なお、自車両と障害物との距離は、測距装置6からの計測結果や、予測された仮想障害物と自車両との座標上(駐車誘導軌道と共通の座標上)の距離に基づいて求めることができる。
駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物の存在位置との距離が小さいほど注意度は高くなり、駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物の存在位置との距離が大きいほど注意度は低くなる。
距離の変化量とは、移動に伴う接近度合いの変化である。自車両と障害物との距離の変化量は、上記距離の時間あたりの変化量から求めてもよいし、車速センサ22の出力信号に基づいて求めてもよい。距離が急速に増大する、つまり、移動に伴い急速に接近の度合いが高まる場合は注意度が高いと評価する。他方、距離が変化しない、つまり、移動に伴う接近度合いの変化が小さい場合は注意度が低いと評価する。
注意度を算出する場合には、距離と距離の変化量の両方を考慮することができる。例えば、距離が同じであっても、接近速度が速い(急速に接近する)障害物は、より高い注意度が算出される。また、距離に基づく注意度と距離の変化量に基づく注意度に所定の重みづけを付し、これらを合計して各障害物の注意度を算出してもよい。
このように、各障害物に対する注意度を、駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物の存在位置との距離又はこの距離の変化量に基づいて算出することにより、自車両が現在位置から目標駐車位置へ移動する(駐車する)際の注意度を経時的に求めることができる。
また、本実施形態のように、ステアリングコントローラ261により車両が駐車誘導軌道上を移動して目標駐車位置へ移動する場合には、駐車時における車両が移動する軌道が予測できるので、現在位置から目標駐車位置へ移動する間における障害物に対する注意度を事前に算出することができる。
また、第2の手法として、制御装置10は、自車両が駐車する際の、自車両の現在位置と設定された障害物の存在位置との距離又はこの距離の変化量に基づいて、障害物に対する注意度を算出することができる。具体的には、自車両の現在位置と設定された障害物の存在位置との距離が小さいほど注意度は高くなり、自車両の現在位置と設定された障害物の存在位置との距離が大きいほど注意度は低くなる。距離の変化量の意味、距離及び距離の変化量を用いて注意度を算出する手法は、上述の手法と同様である。
この算出手法では、自車両の実際の現在位置と障害物との距離や、距離の変化量に基づいて注意度を算出するので、実際に駐車操作がされる車両が駐車誘導軌道から外れた場合であっても、実際の状況に応じた障害物に対する注意度を算出することができる。
なお、上述した注意度を算出する2つの処理を並行して実行し、各処理手法による注意度を比較し、同じ障害物に対する注意度の差が所定の閾値以上である場合には、実際に駐車操作がされる車両が駐車誘導軌道から外れていると判断し、第2の手法による注意度を後の処理において用いるようにすることもできる。
次に、画像選択機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、設定された障害物の中から算出された注意度に基づいて一又は複数の障害物を抽出するとともに、抽出された障害物が含まれる障害物画像を選択する。
本実施形態の制御装置10は、注意度算出機能により算出された注意度の値が最も注意を要する値である障害物を抽出し、この抽出された障害物が含まれる障害物画像を選択することができる。このように、最も注意をするべき一つの障害物画像を選択することにより、注意を向ける対象を絞り込むことができるので、運転者の注意を集中させることができる。
本実施形態の制御装置10は、注意度の値が最も注意を要する値であるとして抽出された障害物を撮像したカメラ1a〜1dの撮像画像の何れか一つを障害物画像として選択することができる。
また、抽出された障害物が複数のカメラ1a〜1dの撮像画像に含まれている場合は、抽出された障害物の像が最も中心近くに位置する撮像画像を障害物画像として選択することができる。同様に、抽出された障害物が複数のカメラ1a〜1dの撮像画像に含まれている場合は、抽出された障害物の像の面積が最も大きい撮像画像を障害物画像として選択することができる。このように、障害物画像を含むカメラ1a〜1dの撮像画像を障害物画像として選択することにより、障害物画像の選択及び表示処理の速度を速くすることができる。このため、駐車時において注意すべき障害物を迅速に提示させることができる。
注意度の値が最も注意を要する障害物が異なるカメラ1a〜1dによって撮像された場合には、抽出された障害物を含む撮像画像を合成し、この合成された撮像画像を障害物画像として選択してもよい。このとき、合成された撮像画像から障害物に対応する画像領域を切り出して、この部分を障害物画像として選択してもよい。
注意度が所定値以上の障害物が複数抽出された場合には、各障害物が含まれる複数の障害物画像を選択することも可能である。
最後に、表示制御機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、運転支援情報が重畳された合成画像を表示させるとともに、選択された障害物画像を表示装置3に表示させる。
本実施形態の表示装置3は、自車両のダッシュボード付近に取り付けられたナビゲーション装置などの車載機器用の液晶ディスプレイを用いることができる。表示装置3は、制御装置10から供給された俯瞰映像に運転支援情報を重畳させた画像を表示することにより、自車両を目標駐車位置に駐車をするための支援情報を運転者に提供する。車載機器用の液晶ディスプレイは、横長の表示画面を有するものが多いが、運転支援情報は車両の前後方向の動きを表示するために縦長になる。このため、表示装置3のディスプレイにおける表示領域を左右に区分し、一方に合成画像を表示し、他方に障害物画像を表示する。このように、表示装置3のディスプレイに、駐車操作を支援する運転支援情報が重畳された合成画像と、駐車操作時に注意すべき障害物の画像を同時に表示できる。なお、障害物の存在位置によって障害物を見る方向が切り替わるが、カメラ1a〜1dの高さ位置や取り付け角度が共通するため、提示された障害物画像がどの方向の画像であるか分からなくなる場合がある。このため、運転者に対してどの方向にある障害物の画像であるのかを障害物画像上に矢印などで表示することが好ましい。
このように、合成画像上に重畳された駐車誘導軌道を表示されるとともに、障害物画像も表示されるので、運転者は、障害物画像により駐車に際して注意すべき障害物の存在位置を確認しつつ、目標駐車位置まで車両を移動させる経路を認識することができる。
続いて、図3〜図7に基づいて、本実施形態の駐車支援装置100の動作を具体的に説明する。
図3は本発明の実施形態に係る駐車支援システム1000の制御手順を示すフローチャート図、図4は駐車時における車両の移動に伴う障害物画像の選択処理を説明するための第一の図、図5は障害物画像の選択処理を説明するための第二の図、図6は障害物画像の選択処理を説明するための第三の図、図7は駐車操作時における運転支援情報の表示例を示す図である。
図3のフローチャートに示す処理は、所定周期で実行される。まず、ステップS10において、制御装置10は目標駐車位置を決定する。目標駐車位置は、運転者の入力操作により決定されてもよいし、駐車前に停車した位置と停車後の操舵角に基づいて自動的に決定されてもよいし、駐車前に停車した位置における撮像画像から抽出された駐車領域を区切る白線に基づいて自動的に決定されてもよい。決定された目標駐車位置は、座標変換などの画像処理を経て合成画像上に重畳して表示される。
本例では、図4に示すように、自車両が位置V1で一度停車してから、V2,V3の位置を経て目標駐車位置Pへ移動し、縦列駐車をする。位置V1は処理開始時における自車両の現在位置である。この場合における自車両の障害物は目標駐車位置Pの前方の物体Ob1と後方の物体Ob2である。
続くステップS20において、制御装置10は自車両の現在位置から目標駐車位置まで移動する場合の最適な駐車誘導軌道を算出する。次に、ステップS30において、制御装置10は、ステップS20で生成された駐車誘導軌道と自車両の現在位置から、自車両が駐車誘導軌道をトレースするために必要な目標操舵角を算出し、実際の操舵角が目標操舵角に追従するようにステアリングコントローラ261を介して操舵装置26の制御を行う。
次に、ステップS40において、制御装置20は目標駐車位置Pへ移動するときに距離が所定値未満となる物体Ob1,Ob2を障害物として設定する。障害物は、測距装置6により測定された距離が所定値未満の物体を障害物として設定してもよいし、駐車誘導軌道のパターンから推測された仮想障害物を障害物として設定してもよい。
続くステップS50において、障害物が設定できたか否かを判断する。障害物を設定することができた場合はステップS90へ進み、障害物が設定できなかった場合はステップS60へ進む。
ステップS90において、制御装置10は各障害物に対する注意度を算出する。制御装置10は、駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物との距離若しくはこの距離の変化量、又は駐車する際の自車両の現在位置と設定された障害物の存在位置との距離若しくはこの距離の変化量に基づいて、注意度を算出する。
特に限定されないが、注意度を、自車位置から障害物までの距離(Lobs)と、自車両の現在位置から障害物までの距離の変化量(Vobs)と、自車両が現在位置から駐車誘導軌道上を所定距離だけ進んだ場合の障害物との距離(Lest)とを用いて下式のように定義することができる。α,β,γは各成分の重み付けをする定数である。
なお,変化量(Vobs)は自車両の現在位置から障害物までの距離と自車両の車速、自車両と障害物のなす角度、操舵角などから算出することができ、自車両と障害物の接近速度等を用いることも可能である。
注意度Dは、上述した自車位置から障害物までの距離(Lobs)、自車両の現在位置から障害物までの距離の変化量(Vobs)、自車両が現在位置から駐車誘導軌道上を所定距離だけ進んだ場合の障害物との距離(Lest)のいずれか一つ又は二つ以上の要素によって定義することもできる。
続くステップS110において、制御装置10は、最大注意度が所定値以上であるか否か、つまり、注意しなければならない障害物が存在するか否かを判断する。最大注意度が所定値以上である場合にはステップS120へ進み、最大注意度が所定値未満である場合にはステップS60へ進む。
そして、制御装置10は、ステップS120において、注意度が最大の障害物を抽出する。図4に示す例では、自車両が位置V1からV2へ移動する際には距離が所定値未満に接近する物体Ob1が障害物として抽出され、自車両がV2からV3へ移動する際には距離が所定値未満に接近する物体Ob2が障害物として抽出される。
続く、ステップS130において、制御装置10は、ステップS120において抽出された障害物の像を撮像するカメラ1a〜1dを選択する。図4に示す例では、自車両がV1からV2へ移動する際には物体Ob1を撮像するカメラ1bが選択され、自車両がV2からV3を経て目標駐車位置Pへ移動する際には物体Ob2を撮像するカメラ1dが選択される。本例では、カメラ1b及び1dによって撮像される障害物画像Eb及びEdを選択する。
なお、図5に示すように、リア方向(所定方向)を撮像するカメラが2台設けられているような場合において、注意すべき度合いが同程度、例えば注意度の差が所定値未満である障害物が異なるカメラ1d1,1d2の撮像画像に含まれる場合がある。このような場合は、カメラ1d1及び1d2の撮像画像を合成し、この合成した画像を障害物画像として選択することができる。撮像画像の合成手法は一般的な画像処理の手法を用いることができる。さらに、合成された撮像画像から障害物に対応する画像を切り出して、切り出した画像を障害物画像として選択することもできる。
一方、ステップS50において障害物が設定されない場合や、ステップS110において最大注意度が所定値未満である場合には、ステップS60において、制御装置10がポジションスイッチ21に入力されたシフトポジションの信号がR(リア)であるか否かを判断する。シフトポジションがR(リア)でない場合にはステップS70へ進み、フロント側のカメラ1aを選択する。他方、シフトポジションがR(リア)である場合にはステップS80へ進み、リア側のカメラ1dを選択する。
図4及び図5においては、縦列駐車の場合の障害物画像の選択処理を示すが、駐車の場面は限定されず、図6に示すように、斜列駐車の場合等も同様である。図6に示すように、自車両が位置V1で一度停車してから、V2,V3の位置を経て目標駐車位置Pへ斜列駐車をする。位置V1は処理開始時における自車両の現在位置である。この場合における自車両の障害物は目標駐車位置Pの前方側及び後方側に配置された通路や駐車スペースなどの物体Ob3,物体Ob4である。前方側及び後方側の通路に歩行者が存在する場合や、駐車スペースに駐車中の車両が存在する場合には、測距装置6により距離が計測され、自車両からの距離が所定値以下であれば、障害物として設定されて、注意度が算出される。また、自車両が一時停止した現在位置V1から目標駐車位置Pまでの駐車誘導軌道に基づいて、通路に想到する領域や駐車領域が存在すると予測される領域(物体Ob3,物体Ob4に対応する領域)を仮想障害物として設定し、設定された仮想障害物の存在位置に基づいて注意度を算出することもできる。
制御装置10は、自車両がV1からV2へ移動する際には自車両が障害物Ob3に接近するため、この障害物Ob3を撮像するカメラ1bが選択され、自車両がV2からV3を経て目標駐車位置Pへ移動する際には自車両が障害物Ob4に接近するため、障害物Ob4を撮像するカメラ1dが選択される。そして、制御装置10は、カメラ1b及び1dによって撮像される障害物画像Eb及びEdを選択する。
最後に、ステップS140において、ステップS130、S70又はS80で選択されたカメラの撮像画像を、運転支援情報が重畳された合成画像とともに、表示装置3に表示する。
図7に、自車両が図4に示すV1からV2へ移動する際に表示装置3の画面に表示される運転支援情報Mを示す。図7に示すように、運転支援情報Mの左側の領域には、自車両Vの画と駐車誘導軌道Sとが重畳された自車両を所定視点から俯瞰した合成画像Kが表示され、運転支援情報Mの右側の領域には、V1からV2へ移動する際に注意度が最も高くなる物体Ob1(障害物)の右後方端部を撮像するカメラ1bの撮像画像が障害物画像Qとして表示されている。
図8は、駐車位置が広く切り返しの運転操作が不要な場合の車両V1の動きを示す図であり、図9は、駐車位置が狭く切り返しの運転操作が必要場合の車両V1の動きを示す図である。
切り返しの運転操作が不要な場合には、図8に示すように、車両V1はポイントT0を通過してポイントT1に至り、リアのシフトポジションに切り替えて後退を開始する。後退中に障害物の注意度が所定値未満であれば、リアのシフトポジションに応じてリアビューを表示してもよい。そして、後退を開始した後に、ポイントT2において障害物Ob1の注意度が所定値以上であり、かつ障害物Ob1の注意度が最も高いと判断された場合には、障害物Ob1を撮像するカメラを選択し、図7に示すように障害物Ob1の障害物画像Qを表示する。さらに、ポイントT3において最大の注意度が所定値未満となり、障害物の接近状態が解除されたと判断された場合には、シフトポジションがリアであることに対応して、ポイントT4で停止するまでリアビューを表示してもよい。
切り返しの運転操作が必要な場合には、図8に示すように、車両V1はポイントT0を通過してポイントT1に至り、リアのシフトポジションに切り替えて後退を開始して、ポイントT2へ至る。後退中に各障害物の最大の注意度が所定値未満であれば、リアのシフトポジションに応じてリアビューを表示してもよい。本例では、駐車位置のエリアが狭いので、ポイントT2に至った後に、切り返しをするために前進と後退を繰り返す。本例では、ポイントT2からポイントT3へ前進する。このポイントT3において障害物Ob1と接近し、障害物Ob1の注意度が最も高く、その障害物Ob1の注意度が所定値以上であると判断された場合には、障害物Ob1を撮像するカメラを選択し、図7に示す障害物Ob1の障害物画像Qを表示する。本例では、障害物の注意度が所定値未満となるポイントT4に至るまで注意度が最大の障害物を撮像した障害物画像Qを表示する。その後、T5からT6を経てT7に至るまで、必要な回数だけ前進と後退をして切り返し操作を行う。この間、障害物の注意度が所定値以上となる状態が検出されるたびにその障害物を撮像する所外物画像Qを表示してもよいし、最初に障害物の注意度が所定値以上となる状態が検出された誘導軌道(ポイントT3からT4に至る太い破線で表示した誘導軌道)においてのみ障害物を撮像する障害物画像Qを表示してもよい。なお、ポイントT4において障害物の注意度が所定値以上となる状態が解除された場合には、シフトポジションがリアであることに対応して、ポイントT5に至るまでリアビューを表示してもよい。
なお、切り返しの運転操作が必要である場合の処理と、切り替えしの運転操作が必要でない場合の処理とは、図3に示すステップS20の駐車軌道の生成処理において、ユーザが「広い駐車スペースへの縦列駐車モード」又は「狭い駐車スペースへの縦列駐車モード」の何れかを選択して入力してもよいし、撮像画像やソナーによる検出結果から駐車スペースの大きさを検出し、車両情報に含まれる自車両の大きさとの比較に基づいて「広い駐車スペースへの縦列駐車モード」又は「狭い駐車スペースへの縦列駐車モード」であるかを自動的に判断して、駐車軌道を生成してもよい。制御装置10は、「広い駐車スペースへの縦列駐車モード」又は「狭い駐車スペースへの縦列駐車モード」に応じた演算手法を用いて、現在位置から目標駐車位置へ移動する際の駐車誘導軌道を含む駐車時における運転支援情報を生成することができる。
本発明は以上のように構成され、以上のように作用するので、以下の効果を奏する。
本発明に係る実施形態の処理によれば、駐車操作開始から目標駐車位置に駐車するまでの間に、注意すべき度合いである注意度を算出し、注意度の高い障害物を含む障害物画像Qと、駐車誘導軌道を含む自車両を俯瞰する合成画像Kとを同時に表示させるので、自車両の進行方向とは異なる方向に障害物があったとしても、その障害物を確認しながら目標駐車位置に自車両を移動させることができる。
本実施形態の駐車支援装置100によれば、駐車操作開始から目標駐車位置に駐車するまでの間に、注意すべき障害物の画像を自動的に選択して駐車誘導軌道とともに表示するので、運転者は移動の全過程を認識しつつ移動中の各タイミングにおいて注意すべき障害物の状態を同時に目視することができる。
また、本発明に係る本実施形態の駐車支援装置100によれば、各障害物に対する注意度を、駐車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物の存在位置との距離又はこの距離の変化量に基づいて算出するので、自車両が現在位置から目標駐車位置へ移動する(駐車する)際の注意度を経時的に求めることができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、ステアリングコントローラ261により車両が駐車誘導軌道上を移動して目標駐車位置へ移動する場合には、駐車時における車両が移動する軌道が予測できるため、現在位置から目標駐車位置へ移動する間における障害物に対する注意度を事前に算出することができるので、駐車操作時に必要なタイミングで注意すべき障害物画像を提示することができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、自車両の実際の現在位置と障害物との距離や距離の変化量に基づいて注意度を算出するので、駐車操作が算出された駐車誘導軌道から外れた場合であっても、実際の状況に応じた障害物に対する注意度を算出することができる。
さらに、本実施形態の駐車支援装置100は、測距装置6により検出された物体までの距離が所定値未満の物体を障害物として設定することができるので、注意すべき物体を正確に判断することができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、駐車誘導軌道に基づいて、この駐車誘導軌道のパターンと仮想障害物位置とを予め対応づけた仮想障害物設定情報131を参照して、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物の存在位置を設定することもできるので、測距装置6が設けられていない場合や、天候などの環境によって測距装置6の計測結果の精度が担保出来ない場合であっても、注意すべき障害物を正確に設定することができる。また、処理負担を軽減させることができるので、運転者の操作に対する応答速度の高い運転支援を行うことができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、所定周期で障害物の設定を行い、障害物の設定の度に注意度を算出するので、注意すべき障害物を正確に抽出することができる。
また、本実施形態の駐車支援装置100は、注意度の値が最も注意を要する値である障害物を抽出し、この障害物を含む障害物画像を選択するので、運転者が最も注意を払うべき一つの障害物画像を提示して、運転者の注意を集中させることができる。
抽出された障害物の像が最も中心近くに位置する撮像画像を障害物画像として選択することにより、運転者が最も注意を払うべき一つの障害物画像を提示して、運転者の注意を集中させることができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態は自車両を駐車位置に移動させる駐車操作時に関するものであったが、第2実施形態は、自車両を駐車位置から他の位置へ移動させる出車操作時に関するものである。ここでは、重複した説明を避けるため、異なる点を中心に説明する。
本実施形態の駐車支援装置の構成は、図1に示す第1実施形態の駐車支援装置の構成と共通する。本実施形態の駐車支援装置100の制御装置10は、撮像画像取得機能と、合成画像生成機能と、運転支援情報生成機能と、障害物設定機能と、注意度算出機能と、画像選択機能と、表示制御機能とを備えている。
このうち、本実施形態の運転支援情報生成機能は、現在の駐車位置から他の位置へ移動する際の車両情報に基づいて、自車両の現在の駐車位置及びこの駐車位置から他の位置へ移動する際の出車誘導軌道を含む出車時における運転支援情報を生成する。つまり、制御装置10は、駐車位置から車両を出す(パークアウトする)際の運転支援情報を生成する。特に限定されないが、この出車誘導軌道は、出車操作の開始後、前進又は後退を開始する前進又は後退開始位置と、最終的に移動する走行道路などの他の位置と、途中で切り返すための出車途中位置と、ステアリング操舵に連動した線である操舵連動線と、他の位置に至る理想的な進路予想線とを含む。特に限定されないが、制御装置10は、クロソイド曲線、円弧、直線の組合せ、又は予め定義された任意の軌跡を用いて現在位置(駐車位置)から他の位置までの出車誘導軌道を算出する。これらの出車誘導軌道を算出する手法は、出願時において知られている駐車誘導手法を用いることができる。
また、障害物設定機能は、自車両が駐車位置から他の位置へ移動する際に、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物を設定する。この障害物の設定処理は所定周期で行い、順次、障害物の存在位置を更新する。このように、自車両が駐車位置から他の位置へ移動する際、つまり、自車両が出車操作を開始した現在の駐車位置から目標となる他の位置に移動する間の複数の位置で障害物を順次設定することにより、後の処理において、その位置ごとに注意すべき障害物の注意度を算出し、障害物画像の選択、表示を行うことができる。この結果、移動に伴い注意すべき障害物が変化する場合でも、注意すべき障害物を監視するための適切な障害物画像を常時提示することができる。なお、障害物までの距離の測定においては、第1実施形態と同様に測距装置6を用いることができる。
また、第1実施形態と同様に、本実施形態の制御装置10は、運転支援情報生成機能によって算出された出車誘導軌道に基づいて、この出車誘導軌道のパターンと仮想障害物位置とを予め対応づけた仮想障害物設定情報131を参照して、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物の存在位置を設定することもできる。
本実施形態の注意度算出機能について説明する。制御装置10は、設定された障害物と出車誘導軌道に沿って移動する自車両の位置との位置関係に基づいて、出車の際に障害物に対して求められる注意の度合いを示す注意度を算出する。この注意度の算出処理は、障害物設定機能によって所定周期で障害物の存在位置が設定される度に実行する。ちなみに、本実施形態の注意度は出車時において障害物との接近度合いに応じる値である。つまり、出車時において接近する度合いが高い障害物の注意度は高くなり、接近する度合いが低い障害物の注意度は低くなる。なお、注意度の算出に関し、第1実施形態において説明した第1及び第2の手法は、第1実施形態の駐車時における手法を適用することができる。
第1実施形態の画像選択機能と同様に、本実施形態の制御装置10は、設定された障害物の中から算出された注意度に基づいて一又は複数の障害物を抽出するとともに、抽出された障害物が含まれる障害物画像を選択する。
また、第1実施形態の表示制御機能と同様に、本実施形態の制御装置10は、運転支援情報が重畳された合成画像を表示させるとともに、選択された障害物画像を表示装置3に表示させる。
続いて、図10〜図12に基づいて、本実施形態の駐車支援装置100の動作を具体的に説明する。
図10は本発明の実施形態に係る駐車支援システム1000の制御手順を示すフローチャート図、図11は出車時における車両の移動に伴う障害物画像の選択処理を説明するための図、図12は出車操作時における運転支援情報の表示例を示す図である。
図10のフローチャートに示す処理は、所定周期で実行される。まず、ステップS10において、制御装置10は駐車位置とは異なる位置である出車位置を決定する。出車位置は、運転者の入力操作により決定されてもよいし、駐車時において後退前に一時停車した位置に基づいて自動的に決定されてもよいし、駐車領域を区切る白線に基づいて自動的に決定されてもよい。決定された出車位置は、座標変換などの画像処理を経て合成画像上に重畳して表示される。
本例では、図11に示すように、自車両が駐車位置V1からV2を経てV3で示す他の位置へ移動して出車をする。位置V1は処理開始時における自車両の現在位置である。この場合における自車両の障害物は駐車位置V1の前方の物体Ob1と後方の物体Ob2である。
続くステップS20において、制御装置10は自車両の現在の駐車位置から他の位置まで移動する場合の最適な出車誘導軌道を算出する。次に、ステップS30において、制御装置10は、ステップS20で生成された出車誘導軌道と自車両の現在位置から、自車両が出車誘導軌道をトレースするために必要な目標操舵角を算出し、実際の操舵角が目標操舵角に追従するようにステアリングコントローラ261を介して操舵装置26の制御を行う。
次に、ステップS40において、制御装置20は他の位置V3へ移動するときに距離が所定値未満となる物体Ob1,Ob2を障害物として設定する。障害物は、測距装置6により測定された距離が所定値未満の物体を障害物として設定してもよいし、出車誘導軌道のパターンから推測された仮想障害物を障害物として設定してもよい。
続くステップS50において、障害物が設定できたか否かを判断する。障害物を設定することができた場合はステップS90へ進み、障害物が設定できなかった場合はステップS60へ進む。
ステップS90において、制御装置10は各障害物に対する注意度を算出する。制御装置10は、出車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物との距離若しくはこの距離の変化量、又は出車する際の自車両の現在位置と設定された障害物の存在位置との距離若しくはこの距離の変化量に基づいて、注意度を算出する。特に限定されないが、第1実施形態と同様に数1に示す式を用いて注意度を求めることができる。
続くステップS110において、制御装置10は、最大注意度が所定値以上であるか否か、つまり、注意しなければならない障害物が存在するか否かを判断する。最大注意度が所定値以上である場合にはステップS120へ進み、最大注意度が所定値未満である場合にはステップS60へ進む。
そして、制御装置10は、ステップS120において、注意度が最大の障害物を抽出する。図11に示す例では、自車両が位置V1からV3へ移動する際には距離が所定値未満に接近する物体Ob1が障害物として抽出される。
続く、ステップS130において、制御装置10は、ステップS120において抽出された障害物の像を撮像するカメラ1a〜1dを選択する。図11に示す例では、自車両がV2から他の位置V3へ移動する際には物体Ob1を撮像するカメラ1bが選択される。本例では、カメラ1bによって撮像される障害物画像Ekを選択する。
一方、ステップS50において障害物が設定されない場合や、ステップS110において最大注意度が所定値未満である場合には、ステップS60において、制御装置10がポジションスイッチ21に入力されたシフトポジションの信号がR(リア)であるか否かを判断する。シフトポジションがR(リア)でない場合にはステップS70へ進み、フロント側のカメラ1aを選択する。他方、シフトポジションがR(リア)である場合にはステップS80へ進み、リア側のカメラ1dを選択する。
最後に、ステップS140において、ステップS130、S70又はS80で選択されたカメラの撮像画像を、運転支援情報が重畳された合成画像とともに、表示装置3に表示する。
図12に、自車両が図11に示すV2からV3へ移動する際に表示装置3の画面に表示される運転支援情報Mを示す。図11に示すように、運転支援情報Mの左側の領域には、自車両Vの画と出車誘導軌道Tとが重畳された自車両を所定視点から俯瞰した合成画像Kが表示され、運転支援情報Mの右側の領域には、V2からV3へ移動する際に注意度が最も高くなる物体Ob1(障害物)の右後方端部を撮像するカメラ1bの撮像画像が障害物画像Qとして表示されている。
本実施形態において駐車位置から他の位置へ移動する(出車する)場合に切り返しの運転操作が不要な場合には、図8に示すように、車両V1はポイントT4からT3及びT2を通過してポイントT1に至る。切り返しの運転操作が不要であれば、シフトポジションはフロントのままである。移動中に障害物の最も高い注意度が所定値未満であれば、フロントのシフトポジションに応じてフロントビューを表示してもよい。ポイントT3からT2へ至る場合などにおいて障害物の注意度が所定値以上であると判断された場合には、その障害物を撮像するカメラの撮像画像を障害物画像Qとして表示する。
本実施形態において駐車位置から他の位置へ移動する(出車する)場合に切り返しの運転操作が必要な場合には、図9に示すように、車両V1はポイントT7からポイントT4に至るまで切り返しをするために前進と後退を繰り返す。そして、ポイントT4からポイントT3(図中太い破線で表示)のように障害物が接近し、障害物の注意度の最大値が所定値以上であると判断された場合には、その注意度が最大の障害物を撮像するカメラ1の撮像画像を障害物画像Qとして表示する。もちろん、ポイントT7からポイントT4に至るまで切り返し中において、障害物の注意度が所定値以上であると判断された場合にはその障害物の障害物画像Qを表示してもよい。なお、ポイントT7からポイントT4に至る過程の後退中において障害物の注意度が所定値未満である場合には、リアのシフトポジションに応じてリアビューを、フロントのシフトポジションに応じてフロントビューを表示してもよい。
なお、切り返しの運転操作が必要である場合の処理と、切り替えしの運転操作が必要でない場合の処理とは、図10に示すステップS20において、ユーザが「広い駐車スペースからの縦列出車モード」又は「狭い駐車スペースからの縦列出車モード」の何れかを選択して入力してもよいし、撮像画像やソナーによる検出結果から駐車スペースの大きさを検出し、車両情報に含まれる自車両の大きさとの比較に基づいて「広い駐車スペースからの縦列出車モード」又は「狭い駐車スペースからの縦列出車モード」であるかを自動的に判断してもよい。なお、広い駐車スペースからの出車は特に問題がないので、狭い駐車スペースからの出車のときのみ、障害物画像Qを表示するようにしてもよい。
本発明は以上のように構成され、以上のように作用するので、以下の効果を奏する。
本発明に係る実施形態の処理によれば、出車操作開始から駐車位置とは異なる位置に移動するまでの間に、注意すべき度合いである注意度を算出し、注意度の高い障害物を含む障害物画像Qと、出車誘導軌道を含む自車両を俯瞰する合成画像Kとを同時に表示させるので、自車両の進行方向とは異なる方向に障害物があったとしても、その障害物を確認しながら駐車位置から他の位置に自車両を移動させることができる。
本実施形態の駐車支援装置100によれば、出車操作開始から駐車位置以外の位置に移動するまでの間に、注意すべき障害物の画像を自動的に選択して出車誘導軌道とともに表示するので、運転者は移動の全過程を認識しつつ移動中の各タイミングにおいて注意すべき障害物の状態を同時に目視することができる。
また、本発明に係る本実施形態の駐車支援装置100によれば、各障害物に対する注意度を、出車誘導軌道上の任意の点と設定された障害物の存在位置との距離又はこの距離の変化量に基づいて算出するので、自車両が現在の駐車位置から他の位置へ移動する(出車する)際の注意度を経時的に求めることができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、ステアリングコントローラ261により車両が出車誘導軌道上を移動して駐車位置から他の位置へ移動する場合には、出車時における車両が移動する軌道が予測できるため、現在位置から駐車位置以外の他の位置へ移動する間における障害物に対する注意度を事前に算出することができるので、出車操作時に必要なタイミングで注意すべき障害物画像を提示することができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、自車両の実際の現在位置と障害物との距離や距離の変化量に基づいて注意度を算出するので、出車操作が算出された出車誘導軌道から外れた場合であっても、実際の状況に応じた障害物に対する注意度を算出することができる。
さらに、本実施形態の駐車支援装置100は、測距装置6により検出された物体までの距離が所定値未満の物体を障害物として設定することができるので、注意すべき物体を正確に判断することができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、出車誘導軌道に基づいて、この出車誘導軌道のパターンと仮想障害物位置とを予め対応づけた仮想障害物設定情報131を参照して、自車両の周囲に存在する可能性のある障害物の存在位置を設定することもできるので、測距装置6が設けられていない場合や、天候などの環境によって測距装置6の計測結果の精度が担保出来ない場合であっても、注意すべき障害物を正確に設定することができる。また、処理負担を軽減させることができるので、運転者の操作に対する応答速度の高い運転支援を行うことができる。
本実施形態の駐車支援装置100は、所定周期で障害物の設定を行い、障害物の設定の度に注意度を算出するので、注意すべき障害物を正確に抽出することができる。
また、本実施形態の駐車支援装置100は、注意度の値が最も注意を要する値である障害物を抽出し、この障害物を含む障害物画像を選択するので、運転者が最も注意を払うべき一つの障害物画像を提示して、運転者の注意を集中させることができる。
抽出された障害物の像が最も中心近くに位置する撮像画像を障害物画像として選択することにより、運転者が最も注意を払うべき一つの障害物画像を提示して、運転者の注意を集中させることができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る駐車支援装置の一態様として駐車支援装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、本発明に係る駐車支援装置の一態様として、CPU11、ROM12、RAM13を含む制御装置10を備える駐車支援装置100を一例として説明するが、これに限定されるものではない。
また、本明細書では、本願発明に係る撮像画像取得手段と、合成画像生成手段と、運転支援情報生成手段と、障害物設定手段と、注意度算出手段と、画像選択手段と、表示制御手段とを有する駐車支援装置の一態様として、撮像画像取得機能と、合成画像生成機能と、運転支援情報生成機能と、障害物設定機能と、注意度算出機能と、画像選択機能と、表示制御機能を実行させる制御装置10を備えた駐車支援装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、本発明に係る測距手段を備える駐車支援装置の一例として、測距装置6を備える駐車支援装置100を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。