以下、本発明の実施の形態による液圧回転機の容量制御装置を、油圧モータの容量制御装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は可変容量型の油圧ポンプで、該油圧ポンプ1は、タンク2と共に油圧源を構成している。油圧ポンプ1は、例えば油圧ショベルのエンジンまたは電動モータ(図示せず)によって回転駆動され、タンク2内から吸込んだ作動油を高圧の圧油として吐出するものである。
3は可変容量型液圧回転機によって構成された油圧モータで、該油圧モータ3は、例えば斜板または斜軸等の容量可変部3Aを有する可変容量型の油圧モータとして構成されている。油圧モータ3は、後述の容量可変アクチュエータ7で容量可変部3Aを傾転駆動することにより、モータ容量が可変に制御される。油圧モータ3は、油圧ショベルに代表される建設機械の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータまたは、その他の回転機械用油圧モータを構成するものである。
4A,4Bは油圧モータ3に圧油を給排する一対の主管路で、該主管路4A,4Bは、油圧ポンプ1から吐出された圧油を油圧モータ3に給排するため後述の方向制御弁5と油圧モータ3との間を接続する一対の油圧配管を含んで構成されている。
5は油圧ポンプ1、タンク2からなる油圧源と油圧モータ3との間に設けられた方向制御弁である。この方向制御弁5は、例えば4ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。方向制御弁5は、外部から油圧パイロット部5A,5Bにパイロット圧が供給されることにより、中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)のいずれかに切換えられる。このとき、油圧ポンプ1から油圧モータ3に給排される圧油の流量は、中立位置(イ)から切換位置(ロ)または(ハ)に切換わる方向制御弁5のストローク量に対応して可変に制御される。
6は油圧モータ3の容量を可変に制御する容量制御装置で、該容量制御装置6は、油圧モータ3の容量可変部3Aを傾転駆動する容量可変アクチュエータ7と、後述の容量制御弁11とを含んで構成されている。図1および図2に示すように、容量可変アクチュエータ7は、油圧シリンダにより構成され、チューブ7Aと、該チューブ7A内に摺動可能に挿嵌して設けられチューブ7A内を2つの油室A,Bに画成したピストン7Bと、基端側が該ピストン7Bに固着され先端側がチューブ7A外に突出したロッド7Cとを有している。
容量可変アクチュエータ7のロッド7Cは、油圧モータ3の容量可変部3Aに連結され、チューブ7Aから矢示C方向に伸長するときには容量可変部3Aを大容量側に傾転駆動する。一方、ロッド7Cは、チューブ7A内へと矢示D方向に縮小するときに容量可変部3Aを小容量側に傾転駆動する。容量可変アクチュエータ7の油室A,Bには、パイロット管路8A,8Bを介して傾転制御圧が給排される。
ここで、パイロット管路8Aは、容量可変アクチュエータ7の油室Aを高圧管路9Aに常時連通させるように両者間を接続している。一方、パイロット管路8Bは、油室Bを容量制御弁11を介して高圧管路9Aと低圧管路9Bとに選択的に連通させるように、後述の油溝16と油室Bとの間に接続して設けられている。高圧管路9Aは、後述の油溝17と高圧選択弁10A,10Bとの間に接続して設けられている。低圧管路9Bは、後述のドレン室15とタンク2との間に接続して設けられている。
高圧選択弁10A,10Bは、油圧モータ3の一対の主管路4A,4Bのうち高圧側の主管路を選択し、高圧となった主管路から高圧管路9Aに圧油を供給するものである。即ち、方向制御弁5を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えたときには、油圧ポンプ1からの圧油が主管路4Aに供給され、主管路4Bはタンク2に接続される。これにより、高圧選択弁10Aは開弁し、高圧選択弁10Bは閉弁される。この結果、主管路4A内の圧油が高圧選択弁10Aを介して高圧管路9Aに供給される。
一方、方向制御弁5を中立位置(イ)から切換位置(ハ)に切換えたときには、油圧ポンプ1からの圧油が主管路4Bに供給され、主管路4Aはタンク2に接続される。これにより、高圧選択弁10Aは開弁し、高圧選択弁10Bは閉弁される。この結果、主管路4B内の圧油が高圧選択弁10Bを介して高圧管路9Aに供給される。
11は外部指令に応じた流量の圧油を容量可変アクチュエータ7に給排する電磁制御式の容量制御弁である。この容量制御弁11は、油圧源(油圧ポンプ1、タンク2)と容量可変アクチュエータ7との間にパイロット管路8A,8B、高圧管路9Aおよび低圧管路9B等を介して設けられている。容量制御弁11は、後述の比例ソレノイド21に外部から供給される指令信号(外部指令)に応じて図1に示す小容量位置(a)と大容量位置(b)との間で切換制御されるものである。
図2に示すように、容量制御弁11は、後述のスプール摺動穴14Aを有する弁ケーシング12と、後述のスプール19、弁ばね20および比例ソレノイド21を含んで構成されている。弁ケーシング12は、容量制御弁11の外殻を構成するケーシング部材13と筒状のスリーブ14とにより構成されている。ケーシング部材13には、スリーブ取付穴13Aとソレノイド取付穴13Bとが軸方向に延びる段付孔として形成されている。ケーシング部材13のスリーブ取付穴13Aには、弁ケーシング12の一部を構成する筒状のスリーブ14が固定して設けられている。スリーブ14の内周面は、後述のスプール19が摺動可能に挿嵌されるスプール摺動穴14Aとなっている。
弁ケーシング12のスリーブ取付穴13Aは、スリーブ14を挟んでソレノイド取付穴13Bとは反対側の部位がドレン室15となり、このドレン室15は、低圧管路9Bを介してタンク2に接続されている。弁ケーシング12には、断面U字形状をなす2つの油溝16,17がスプール摺動穴14Aの軸方向に離間して形成されている。油溝16は、パイロット管路8Bを介して油室Bに接続された環状溝からなり、スリーブ取付穴13Aの全周にわたって延びている。油溝17は、スリーブ取付穴13Aの周方向に部分的に延びるか、または全周にわたって延びる油溝からなり、高圧管路9Aに接続された高圧側の油通路を構成している。
筒状のスリーブ14には、油溝17をスプール摺動穴14Aに常時連通させるようにスリーブ14の径方向(即ち、スプール19の摺動方向に対して垂直な方向)に穿設された円形の油孔からなる高圧導入路18と、後述の容量制御用通路25と応答性改善用通路26とが設けられている。
19はスリーブ14のスプール摺動穴14A内に挿嵌して設けられたスプールで、該スプール19は、図2に示すように段付円柱状の弁体として形成され、その軸方向一側には幅広な封止ランド部19Aが形成されている。この封止ランド部19Aは、スリーブ14のスプール摺動穴14Aとソレノイド取付穴13Bとの間を封止し、例えば高圧導入路18からスプール摺動穴14A内に供給された圧油がソレノイド取付穴13B側に漏洩するのを抑えるものである。
スプール19の軸方向他側は、スリーブ14内からドレン室15内に向けて突出する突出端19Bとなり、この突出端19Bは、容量可変アクチュエータ7のロッド7Cとの間で弁ばね20の付勢力を受承する受承部となっている。スプール19の軸方向途中部位には、封止ランド部19Aよりも軸方向寸法が小さい細幅な切換ランド部19Cが設けられ、該封止ランド部19Aと切換ランド部19Cとの間は、スプール19の全周にわたって延びる環状溝19Dとなっている。スプール19の環状溝19Dは、スリーブ14の高圧導入路18と常に連通し、高圧管路9Aからの圧油をスプール摺動穴14A内に導くものである。
スプール19の切換ランド部19Cは、後述の容量制御用通路25と応答性改善用通路26とを環状溝19D(スプール摺動穴14A)に対して連通,遮断させるランドを構成している。切換ランド部19Cのランド幅(スプール摺動穴14Aに沿った軸方向寸法)は、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との穴径よりも僅かに大きく形成されている。
弁ばね20は、容量可変アクチュエータ7のロッド7Cとスプール19の突出端19Bとの間に配設されている。弁ばね20は、図2中に示すばね力F1でスプール19を付勢し、そのばね力F1は、弁ばね20の撓み変形量に応じて増減する。一方、後述の比例ソレノイド21は、弁ばね20のばね力F1に抗してスプール19を推力F2で押動する。これにより、スプール19は、ばね力F1と推力F2とが釣合うようにバランスする位置までスプール摺動穴14A内を軸方向に摺動変位するものである。
21はスプール19を挟んで弁ばね20とは反対側に位置して弁ケーシング12に設けられた比例ソレノイドである。この比例ソレノイド21は、例えば合成樹脂またはアルミニウム等の非磁性材料を用いて段付筒状に形成されたソレノイドケース22と、該ソレノイドケース22のボビン部22Aに巻回して設けられ外部指令に比例した磁力を発生するコイル部23と、該コイル部23の径方向内側に位置してソレノイドケース22内に軸方向変位可能に設けられた磁性材料からなる可動鉄心24とにより構成されている。
ソレノイドケース22は、弁ケーシング12のソレノイド取付穴13B内に嵌合して取付けられる小径な嵌合筒部22Bを有し、該嵌合筒部22B内には、可動鉄心24のプッシュロッド24Aが軸方向に変位可能に挿通して設けられている。プッシュロッド24Aは、可動鉄心24から軸方向下向きに突出して設けられ、その突出端(図2中に示すプッシュロッド24Aの下端部)は、スプール19の一側端部(封止ランド部19A側の端部)に当接している。
比例ソレノイド21の可動鉄心24には、外部指令の電流値Iに比例した推力F2が発生する。この推力F2は、プッシュロッド24Aを介してスプール19に伝えられる。これにより、スプール19は、弁ばね20のばね力F1と推力F2とが釣合うようにバランスする位置までスプール摺動穴14A内を軸方向に摺動変位することになる。
電磁制御式の容量制御弁11は、外部指令の電流値Iに応じた推力F2を比例ソノレイド21で発生させることにより、弁ケーシング12内でスプール19を弁ばね20に抗して軸方向に駆動する構成となっている。この場合、弁ばね20は、容量可変アクチュエータ7のロッド7Cが矢示C,D方向に伸縮される伸縮量によっても弾性的に撓み変形され、弁ばね20のばね力F1は、その撓み変形量に応じて増減する。比例ソレノイド21は、このような弁ばね20のばね力F1に抗してスプール19を押動するように、外部指令の電流値Iに応じた推力F2を発生するものである。
25は弁ケーシング12のスリーブ14に設けられた容量制御用通路である。この容量制御用通路25は、スリーブ14の径方向(即ち、スプール19の摺動方向に対して垂直な方向)に穿設された円形穴により構成されている。容量制御用通路25は、パイロット管路8Bに接続された環状の油溝16をスプール摺動穴14A(環状溝19D)に連通させるための通路穴である。
容量制御用通路25は、高圧導入路18に対してスリーブ14の軸方向に予め決められた所定寸法分だけ離間した位置に配置されている。図3に示すように、容量制御用通路25の穴径D1は、スプール19の切換ランド部19C(ランド幅)よりも僅かに小さく形成されている。容量制御用通路25は、スプール19が軸方向に摺動変位するときに切換ランド部19Cにより開,閉され、環状溝19Dに対して連通,遮断されるものである。
26は弁ケーシング12のスリーブ14に設けられた応答性改善用通路で、該応答性改善用通路26は、容量制御用通路25と同様にスリーブ14の径方向に穿設された円形穴からなり、パイロット管路8Bに接続された環状の油溝16をスプール摺動穴14A(環状溝19D)に連通させるための通路穴を構成している。図3〜図6に示すように、応答性改善用通路26は、スプール摺動穴14Aの径方向で容量制御用通路25と対向する位置に穴の中心位置(中心線O−O)を同じくして配置されている。
しかし、応答性改善用通路26は、下記の数1式に示すように、穴径D2が容量制御用通路25の穴径D1よりも所定の寸法差ΔD分だけ小さく形成されている(D2<D1)。両者の寸法差ΔDは、容量制御用通路25の穴径D1に対して下記の数2式の範囲内となる寸法に設定されている。
容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、スリーブ14の周方向で互いに異なる位置においてスプール摺動穴14Aに開口する通路穴により構成されている。容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、スプール摺動穴14Aに開口する部位がそれぞれ円形穴により形成されている。しかも、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、スリーブ14の径方向で対向して穴の中心位置(中心線O−O)を同じくし、穴径D1,D2(D2<D1)が互いに異なる円形穴により形成されている。
これにより、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、スプール19が第1の連通位置(図3、図5参照)まで摺動変位したときに、容量制御用通路25がスプール摺動穴14A(環状溝19Dまたはドレン室15)内と連通し、応答性改善用通路26はスプール摺動穴14Aに対して遮断される。しかし、スプール19が第2の連通位置(図4、図6参照)まで摺動変位したときには、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方がスプール摺動穴14A(環状溝19Dまたはドレン室15)内に連通する構成となっている。
換言すると、図8に示すように、スプール19のストローク量Xが正方向(負方向)で所定量X1(−X1)を越えたときに、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方がスプール摺動穴14A内に連通する第2の連通位置となる。このとき、ストローク量Xの所定量X1は、下記の数3式のように、容量制御用通路25の穴径D1と応答性改善用通路26の穴径D2との寸法差ΔDに対して2分の1の大きさに設定されるものである。
本実施の形態による油圧モータ3の容量制御装置6は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
図7に示す特性線27のように、油圧モータ3のモータ容量Q(即ち、油圧モータ3に給排される圧油の流量)は、例えばオペレータの操作により容量制御弁11の比例ソレノイド21に入力される外部指令の電流値Iに応じて可変に制御される。外部指令の電流値Iを最小値Imin としたときには、比例ソレノイド21による推力F2が電流値I(即ち、最小値Imin )に比例して小さく設定される。これにより、容量制御弁11のスプール19は、弁ばね20のばね力F1により付勢され、容量制御弁11は図1に示す小容量位置(a)におかれる。
このため、容量可変アクチュエータ7の油室Bは、パイロット管路8B、容量制御弁11および低圧管路9Bを介してタンク2に接続される。一方、容量可変アクチュエータ7の油室Aは、パイロット管路8Bを介して高圧管路9Aに接続されている。これにより、容量可変アクチュエータ7は、油室A内に供給される圧油によりロッド7Cを矢示D方向に縮小させる。この結果、油圧モータ3は、容量可変部3Aがロッド7Cにより小容量側に傾転され、モータ容量Qは最小となる小容量Qmin に設定される(図1参照)。
次に、外部指令の電流値Iを漸次大きくすると、比例ソレノイド21による推力F2が電流値Iに比例して漸次大きくなる。これにより、容量制御弁11のスプール19は、図1に示す小容量位置(a)から大容量位置(b)に向け弁ばね20に抗して切換わるようになる。このため、容量可変アクチュエータ7の油室Bは、パイロット管路8Bおよび容量制御弁11を介して高圧管路9Aに接続されるようになり、このときには、油室Aもパイロット管路8Bを介して高圧管路9Aに接続されている。
しかし、容量可変アクチュエータ7のピストン7Bは、油室Aよりも油室Bの方が圧油の受圧面積が大きいので、両者の受圧面積差によってロッド7Cは矢示C方向へと伸長方向に駆動される。この結果、油圧モータ3は、容量可変部3Aがロッド7Cにより大容量側に傾転され、モータ容量Qは特性線27に沿って電流値Iに比例するように増大される。
また、容量制御弁11の弁ばね20は、容量可変アクチュエータ7のロッド7Cが伸長方向(矢示C方向)に変位するに伴って弾性的に圧縮変形され、ばね力F1が弾性変形量に比例して増大する。このため、容量制御弁11のスプール19は、弁ばね20のばね力F1と推力F2とが釣合うようにスプール摺動穴14A内を軸方向に摺動変位し、容量可変アクチュエータ7の油室A,Bに対する容量制御弁11を介した圧油の給排量を調節する。
そして、ばね力F1と推力F2とが釣合ってバランスする位置までスプール19が摺動したときには、図2に示すように、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とがスプール19の切換ランド部19Cによりスプール摺動穴14Aに対して遮断される。このため、容量可変アクチュエータ7の油室Bは、パイロット管路8Bおよび容量制御弁11を介した圧油の給排が停止され、一種の油圧ロック状態となり、ロッド7Cの伸縮動作(即ち、油圧モータ3の容量可変動作)は止められるようになる。
ここで、外部指令の電流値Iを任意の中間値Ia に調整したときには、比例ソレノイド21による推力F2が電流値I(即ち、中間値Ia )に比例した力に設定される。これにより、容量制御弁11のスプール19は、弁ばね20のばね力F1と推力F2とが釣合うようにバランスする位置までスプール摺動穴14A内を軸方向に摺動変位し、容量可変アクチュエータ7の油室A,Bに対する容量制御弁11を介した圧油の給排を制御する。この結果、油圧モータ3は、容量可変アクチュエータ7のロッド7Cにより容量可変部3Aが中間の傾転位置に駆動され、モータ容量Qは電流値Ia に対応した中間の容量Qa に設定される。
さらに、外部指令の電流値Iを最大値Imax まで大きく調整したときには、容量制御弁11が図1に示す小容量位置(a)から大容量位置(b)に完全に切換わる。即ち、スプール19は、比例ソレノイド21(プッシュロッド24A)からの推力F2により、弁ばね20のばね力F1に抗して最大のストローク位置まで摺動変位される。このとき、油圧モータ3は、容量可変部3Aがロッド7Cにより最大の容量位置まで傾転され、モータ容量Qは電流値Imax に対応した大容量Qmax に設定される。
次に、図8を参照してスプール19のストローク量Xと通路(容量制御用通路25および応答性改善用通路26)の開口面積Sとの関係について説明する。
ここで、外部指令の電流値Iを図7に示す任意の中間値Ia から漸次高くする場合を例に挙げると、比例ソレノイド21による推力F2は、電流値Iに比例して増大する。このため、スプール19のストローク量Xは、電流値Iにほぼ比例して増大し、容量制御用通路25の開口面積S1は、図8中に細線で示す特性線28に沿って変化する。
即ち、図3に示すように、比例ソレノイド21の推力F2によりスプール19がばね力F1に抗して軸方向の一側へと摺動変位するときに、容量制御用通路25は、スプール19の切換ランド部19Cによりスプール摺動穴14Aに対して漸次開口される。このため、高圧管路9Aから供給される圧油は、スプール摺動穴14A(環状溝19D内)を介して容量制御用通路25へと矢示E方向に流れる。このときの圧油の流量は、容量制御用通路25の開口面積S1(図8中の特性線28)に対応して増減される。
次に、スプール19のストローク量Xが所定量X1を越えて大きくなると、例えば図4に示すように、容量制御用通路25に加えて応答性改善用通路26がスプール19の切換ランド部19Cにより漸次開口される。このため、高圧管路9Aから供給される圧油は、スプール摺動穴14A(環状溝19D内)を介して容量制御用通路25へと矢示E方向に流れると共に、応答性改善用通路26にも矢示G方向に流れる。このとき、応答性改善用通路26の開口面積S2は、スプール19の軸方向一側に向けたストローク量Xに対して図8中に細線で示す特性線29に沿って変化する。
このため、容量制御用通路25および応答性改善用通路26からなる通路全体の開口面積S(即ち、S=S1+S2)は、スプール19のストローク量Xに対して太線で示す特性線30に沿って変化する。即ち、通路全体の開口面積Sは、スプール19のストローク量Xが所定量X1となる前,後において特性線30の如く2段階で変化するものである。そして、通路全体の開口面積Sは、ストローク量Xが最大量Xmax となったときに最大となる。
このように、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、図3に例示する第1の連通位置へとスプール19が摺動変位し、ストローク量Xが所定量X1に達するまでは、容量制御用通路25がスプール摺動穴14A(環状溝19D)内と連通し、応答性改善用通路26はスプール摺動穴14A(環状溝19D)に対して遮断されたままである。
このため、スプール19のストローク量Xが所定量X1に達するまでの第1の連通位置では、スプール19の摺動変位に対する通路全体の開口特性(即ち、容量制御用通路25による開口面積S1の変化率)を図8中の特性線28に沿って小さくすることができる。これにより、例えば中間の容量Qa から油圧モータ3のモータ容量を漸次増大させる制御を行う場合(特に、目標容量の付近でモータ容量を微調整するように制御するとき)に、容量制御の安定性を確保することができる。
一方、図4に例示する第2の連通位置までスプール19が摺動変位し、ストローク量Xが所定量X1以上となったときには、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方をスプール摺動穴14A(環状溝19D)内に連通させる構成としている。このため、スプール19のストローク量Xが所定量X1以上となった第2の連通位置では、スプール摺動穴14Aに対する通路全体の開口面積S(即ち、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方がスプール摺動穴14Aに連通する流路面積)を特性線30に沿って大きくすることができる。
この結果、スプール19のストローク量Xが所定量X1以上となった第2の連通位置では、高圧管路9Aから容量可変アクチュエータ7の油室Bに供給する圧油の流量を特性線30に沿って増大させることができ、油圧モータ3のモータ容量を、図7に示す中間の容量Qa から特性線27に沿って増大させるときの容量制御の応答性を高めることができる。
次に、外部指令の電流値Iを図7に示す任意の中間値Ia から漸次小さくする場合を例に挙げて説明する。この場合、比例ソレノイド21による推力F2が電流値Iに比例して低下されるため、スプール19のストローク量Xは、電流値Iにほぼ比例して負(マイナス)の方向に減少され、容量制御用通路25の開口面積S1は、図8中に細線で示す特性線31に沿って変化する。
即ち、比例ソレノイド21の推力F2が低下されるときには、これに伴って、スプール19は図5に示す如く、軸方向の他側へと弁ばね20のばね力F1により上向きに摺動変位される。このとき、容量制御用通路25は、スプール19の切換ランド部19Cによりスプール摺動穴14A(ドレン室15)に対して漸次開口され、容量制御用通路25からドレン室15側へと矢示H方向に油液が排出される。このときの油液の流量は、容量制御用通路25の開口面積S1(図8中の特性線31)に対応して増減される。
一方、スプール19の軸方向他側に向けたストローク量Xが負の所定量−X1を越えて大きく変化すると、例えば図6に示すように、容量制御用通路25に加えて応答性改善用通路26がスプール19の切換ランド部19Cにより漸次開口され、応答性改善用通路26からもスプール摺動穴14A(ドレン室15)側へと矢示J方向に油液が排出される。このとき、応答性改善用通路26の開口面積S2は、スプール19のストローク量Xに対して図8中に細線で示す特性線32に沿って変化する。
このため、容量制御用通路25および応答性改善用通路26からなる通路全体の開口面積S(即ち、S=S1+S2)は、スプール19のストローク量Xに対して太線で示す特性線33に沿って変化する。即ち、スプール19のストローク量Xが負の所定量−X1となる前,後で、通路全体の開口面積Sを2段階で変化させることができる。そして、通路全体の開口面積Sは、ストローク量Xが負の最大量Xmax となったときに最大となる。
このように、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とは、スプール19のストローク量Xが負の所定量−X1に達するまで(即ち、図5に例示する第1の連通位置へとスプール19が摺動変位する間)は、容量制御用通路25がスプール摺動穴14A(ドレン室15)内と連通し、応答性改善用通路26はスプール摺動穴14A(ドレン室15)に対して遮断されたままである。
このため、スプール19のストローク量Xが所定量−X1に達するまでの第1の連通位置では、スプール19の摺動変位に対する通路全体の開口特性(即ち、容量制御用通路25による開口面積S1の変化率)を図8中の特性線31に沿って小さくすることができる。これにより、例えば中間の容量Qa から油圧モータ3のモータ容量を漸次低下(減少)させる制御を行う場合(特に、目標容量の付近でモータ容量を微調整するように制御するとき)に、容量制御の安定性を確保することができる。
一方、図4に例示する第2の連通位置へとスプール19が摺動変位し、ストローク量Xが所定量X1以上となったときには、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方をスプール摺動穴14A(ドレン室15)内に連通させる構成としている。このため、スプール19のストローク量Xが負の所定量−X1以上となった第2の連通位置では、スプール摺動穴14Aに対する通路全体の開口面積S(即ち、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方がスプール摺動穴14Aに連通する流路面積)を特性線33に沿って大きくすることができる。
この結果、スプール19のストローク量Xが負の所定量−X1以上となった第2の連通位置では、容量可変アクチュエータ7の油室Bから容量制御用通路25と応答性改善用通路26の両方を介してドレン室15側に排出する油液の流量を特性線33に沿って増大させることができ、油圧モータ3のモータ容量を、図7に示す中間の容量Qa から特性線27に沿って低下(減少)させるときの容量制御の応答性を高めることができる。
従って、本実施の形態によれば、油圧モータ3の容量を目標容量の付近で微調整するように制御するときには、スプール19の摺動位置を第1の連通位置(即ち、ストローク量Xを所定量±X1の範囲内)として容量制御用通路25のみをスプール摺動穴14A内と連通させ、応答性改善用通路26はスプール摺動穴14Aに対して遮断したままとする。これにより、第1の連通位置では、スプール19の摺動変位に対する通路全体の開口特性(即ち、容量制御用通路25による開口面積S1の変化率)を図8中の特性線28の如く小さくすることができ、油圧モータ3(液圧回転機)の容量を目標容量の付近で微調整するように制御する上での安定性を確保することができる。
一方、油圧モータ3(液圧回転機)の容量を目標容量まで大きく増,減させるように制御するときには、スプール19の摺動位置を第2の連通位置(即ち、ストローク量Xを所定量±X1を越える位置)にして容量制御用通路25と応答性改善用通路26の両方をスプール摺動穴14A内と連通させる。これにより、第2の連通位置では、スプール摺動穴14Aに対する通路全体の開口面積S(即ち、容量制御用通路25と応答性改善用通路26との両方がスプール摺動穴14Aに連通する流路面積)を大きくして、容量可変アクチュエータ7に給排する圧油の流量を増大させることができ、容量制御の応答性を高めることができる。
しかも、本実施の形態では、スリーブ14に設けた容量制御用通路25と応答性改善用通路26とを、スプール摺動穴14Aにそれぞれ開口する部位の穴径D1,D2が互いに異なり、穴の中心位置(中心線O−O)を同じくした円形穴により形成している。このため、スプール19がスプール摺動穴14A内を軸方向の一側と他側とに往復動するように摺動変位するときに、容量制御用通路25および応答性改善用通路26からなる通路全体の開口特性に対称性を与えることができる。
即ち、図8中に特性線30,33で示すように、スプール19の摺動変位に対する通路全体の開口特性(即ち、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とによる開口面積Sの変化率)を、スプール19のストローク量Xが正方向と負方向とで同様な特性とすることができ、通路全体の開口特性に対称性を与えることができる。さらに、穴の中心位置(中心線O−O)を同じくすることによって、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とを、スリーブ14に穴加工するときの作業性を向上することができる。
なお、前記実施の形態では、容量制御用通路25と応答性改善用通路26とをスリーブ14の径方向で対向し、穴の中心位置(中心線O−O)を同じくした円形穴により形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、容量制御用通路と応答性改善用通路とは、例えばスプール摺動穴14Aの軸方向に関しては穴の中心位置(軸方向位置)を同じくし、周方向(例えば、30度以上で180度未満の角度)で互いに異なる位置に配置する構成としてもよい。
また、図9に示す第1の参考例のように、容量制御用通路41と応答性改善用通路42とを形成する構成としてもよい。この場合、容量制御用通路41と応答性改善用通路42とは、スプール摺動穴14Aにそれぞれ開口する部位の穴の中心位置(即ち、中心線O1−O1と中心線O2−O2と)がスプール摺動穴14Aの軸方向で寸法α分だけ異なる位置に配置された円形穴により形成され、これ以外の点では、前記実施の形態で述べた容量制御用通路25と応答性改善用通路26と同様に形成されている。図9に示す寸法αは、前記数3式による所定量X1よりも小さい寸法に設定するのが好ましい。
一方、図10に示す第2の参考例のように、容量制御用通路51と応答性改善用通路52とを形成する構成としてもよい。この場合、容量制御用通路51と応答性改善用通路52とは、図9に示す第1の参考例による容量制御用通路41と応答性改善用通路42とは逆の方向で偏心するように、スプール摺動穴14Aにそれぞれ開口する部位の穴の中心位置(即ち、中心線O1−O1と中心線O2−O2と)が軸方向で寸法β分だけ異なる位置に配置されている。図10に示す寸法βは、前記数3式による所定量X1よりも小さい寸法に設定するのが好ましいものである。
また、容量制御用通路と応答性改善用通路とは、必ずしも円形穴に限らず、例えば楕円形、三角形、四角形、菱形を含む非円形の穴により形成してもよい。さらに、前記実施の形態では、油圧モータ3の容量制御装置6を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧ポンプ1の容量制御装置であってもよい。この場合、例えば油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械に設けられる可変容量型液圧回転機の容量制御を行う容量制御装置に広く適用できるものである。