以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置を説明する。なお、以下の説明において、同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ10、装置本体12、装置本体12に接続され操作者からの各種指示・命令・情報を装置本体11に取り込むための入力14、表示部16を有する。加えて本超音波診断装置1には、心電計、心音計、脈波計、呼吸センサに代表される図示していない生体信号計測部およびネットワークが、インターフェース部38を介して接続されてもよい。
超音波プローブ10は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての圧電振動子を有する。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ10の先端に装備される。なお、一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。
装置本体12は、超音波送信部20、超音波受信部22、Bモード信号発生部24、ドプラ信号発生部26、画像発生部28、速度表示スケール決定部30、関心領域設定部32、記憶部34、制御部36、インターフェース部38を有する。
超音波送信部20は、図示していないパルス発生器、送信遅延回路、パルサを有する。パルス発生器は、所定のレート周波数で送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。パルス発生器は、例えば5kHzなどの所定のレート周波数でレートパルスを繰り返し発生する。このレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。送信遅延回路は、チャンネル毎に超音波をビーム状に収束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各レートパルスに与える。なお、送信遅延回路には、図示していないトリガ信号発生器からのトリガが、タイミング信号として供給される。パルサは、送信遅延回路からレートパルスを受けたタイミングで、超音波プローブ10の振動子ごとに電圧パルスを印加する。これにより、超音波ビームが被検体に送信される。
なお、超音波送信部20は、後述する制御部36の制御のもとで、操作者が所望する血流の速度に対応した所定の送信条件で、超音波を送信してもよい。所定の送信条件とは、例えば、血流の最大検出速度、ドプラアングル、最大検出深度に対応した超音波の送信周波数、パルス繰り返し周波数(Pulse repetition Frequency:以下、PRFと呼ぶ)などである。また、超音波送信部20は、後述する制御部36の制御のもとで、操作者が所望する組織の運動速度に対応した所定の送信条件で、超音波を送信してもよい。所定の送信条件とは、例えば、組織の運動速度の最大検出速度、ドプラアングル、最大検出深度に対応した超音波の送信周波数、パルス繰り返し周波数(Pulse repetition Frequency:以下、PRFと呼ぶ)などである。例えば、組織の運動速度に対応する超音波の送信周波数は、血流の速度に対応する超音波の送信周波数より大きい。
超音波受信部22は、図示していないプリアンプ、受信遅延回路、加算器を有する。プリアンプは、超音波プローブ10を介して取り込まれた被検体からのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。受信遅延回路は、ディジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、後述する制御部36からの受信遅延パターンに従って複数のエコー信号を加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この指向性により、いわゆる超音波走査線が決まる。超音波受信部22は、超音波送信部20から送信された超音波に対応する受信信号を発生する。なお、超音波受信部22は、1回の超音波送信で複数の走査線上に生じたエコー信号を同時に受信する並列受信機能を有していてもよい。
なお、超音波受信部22は、後述する制御部36の制御のもとで、操作者が所望する血流の速度に対応した所定の受信条件で、超音波を受信することが可能である。所定の受信条件とは、血流の最大検出速度、ドプラアングル、最大検出深度に対応した超音波の送信周波数、パルス繰り返し周波数(Pulse repetition Frequency:以下、PRFと呼ぶ)などに対応した受信条件であって、例えば、受信中心周波数である。また、超音波受信部22は、後述する制御部36の制御のもとで、操作者が所望する組織の運動速度に対応した所定の受信条件で、超音波を受信することが可能である。所定の受信条件とは、例えば、組織の運動速度の最大検出速度、ドプラアングル、最大検出深度に対応した超音波の送信周波数、パルス繰り返し周波数(Pulse repetition Frequency:以下、PRFと呼ぶ)などに対応した受信条件であって、例えば、受信中心周波数である。例えば、組織の運動速度に対応する受信中心周波数は、血流の速度に対応する超音波の受信中心周波数より大きい。
Bモード信号発生部24は、図示していない包絡線検波器、対数変換器、アナログディジタル変換器を有する。包絡線検波器は、Bモード信号発生部24への入力信号、即ち、超音波受信部22から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。対数変換器は、検波信号の振幅を対数変換して弱い信号を相対的に強調する。アナログディジタル変換器は、この対数変換器の出力信号をディジタル信号に変換し、Bモード信号を発生する。Bモード信号発生部24は、発生したBモード信号を画像発生部28へ出力する。
図2を参照して、ドプラ信号発生部26について説明する。図2は、本超音波診断装置1におけるドプラ信号発生部26の構成を示す構成図である。ドプラ信号発生部26は、ミキサ(mixer)40、第1の低域通過フィルタ(以下第1LPFと呼ぶ)42、サンプルホールド(Sample Hold:以下、SHと呼ぶ)回路44、ウォールフィルタ46、第1のアナログディジタル変換器(以下、第1A/Dと呼ぶ)48、第1周波数分析器(Fast Fourier Transform:以下、第1FFTと呼ぶ)50、第2の低域通過フィルタ(以下第2LPFと呼ぶ)52、第2のアナログディジタル変換器(以下、第2A/Dと呼ぶ)54、第2周波数分析器(Fast Fourier Transform:以下、第2FFTと呼ぶ)56を有する。
ミキサ40は、超音波受信部22から出力された信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの信号(以下、ドプラ信号と呼ぶ)と(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とが得られる。第1LPF42は、ミキサからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。
SH回路44は、図示していないレンジゲート回路からのサンプリングパルスに従って、ドプラ信号の一部分を、サンプリングしホールドする。レンジゲート回路は、レートパルスから所定の遅延時間遅延させたタイミングで、所定のパルス幅のサンプリングパルスを発生する。所定の遅延時間は、超音波が操作者により所望の深さに設定されたレンジゲート(サンプリングポイント、サンプリングボリュームともいう)と圧電振動子との間の距離を往復伝搬する時間である。レンジゲートは、後述する入力部14を介した操作者の指示により、後述する関心領域設定部32によって設定される。レンジゲートは、後述する表示部16に表示されたBモード画像上に設定された関心領域(Region Of Interest:以下、ROIと呼ぶ)内に設けられる。
なお、サンプリングパルスの時間間隔(以下、サンプリング間隔と呼ぶ)は、血流の速度および組織の運動速度に応じて設定されてもよい。また、サンプリング間隔は、後述する速度表示スケール決定部30で決定された速度表示スケールに基づいて、決定されてもよい。例えば、組織の運動速度に対応するサンプリング間隔は、組織の運動速度は血流の速度に比べて遅いため、血流の速度に対応するサンプリング間隔より狭く設定される。
ウォールフィルタ46は、血流に起因した第1ドプラ信号(以下、血流ドプラ信号とよぶ)を抽出するために、SH回路44の出力から、血管壁および心臓の弁等の運動に起因する速度に対応する第2ドプラ信号(以下、組織ドプラ信号と呼ぶ)を除去する。ウォールフィルタ46は、血流ドプラ信号を第1A/D48へ出力する。第1A/D48は、血流ドプラ信号をディジタル信号に変換する。
第1FFT50は、ディジタル信号に変換された血流ドプラ信号に対して、高速フーリエ変換により周波数分析を実行する。第1FFT50は、周波数分析の結果に基づいて、血流ドプラ信号の周波数スペクトラムを発生する。第1FFT50は、血流ドプラ信号の周波数スペクトラム(以下、血流ドプラスペクトラムと呼ぶ)を、後述する画像発生部28と速度表示スケール決定部30とに出力する。血流ドプラスペクトラムは、時間に対する血流ドプラ信号の周波数とこの周波数の強度とを示している。血流ドプラ信号の周波数は、血流速度に対応する。
なお、第1FFT50の高速フーリエ変換におけるサンプル数(以下、第1サンプル数と呼ぶ)は、血流の速度に応じて設定されてもよい。また、第1サンプル数は、後述する速度表示スケール決定部30で決定された速度表示スケールに基づいて、決定されてもよい。
第2LPF52は、組織ドプラ信号を抽出するために、SH回路44の出力から、血流ドプラ信号を除去する。第2LPF52は、組織ドプラ信号を第2A/D54へ出力する。第2A/D54は、組織ドプラ信号をディジタル信号に変換する。第2FFT56は、ディジタル信号に変換された組織ドプラ信号に対して、高速フーリエ変換により周波数分析を実行する。
第2FFT56は、周波数分析の結果に基づいて、組織ドプラ信号の周波数スペクトラムを発生する。第2FFT56は、組織ドプラ信号の周波数スペクトラム(以下、組織ドプラスペクトラムと呼ぶ)を、後述する画像発生部28と速度表示スケール決定部30とに出力する。組織ドプラスペクトラムは、時間に対する組織ドプラ信号の周波数とこの周波数の強度とを示している。組織ドプラ信号の周波数は、組織の運動速度に対応する。以下、説明を簡単にするために、組織の運動速度は血管壁の運動速度であるものとする。
なお、第2FFT56の高速フーリエ変換におけるサンプル数(以下、第2サンプル数と呼ぶ)は、組織の運動速度に応じて設定されてもよい。また、第2サンプル数は、後述する速度表示スケール決定部30で決定された速度表示スケールに基づいて、決定されてもよい。例えば、組織の運動速度は血流の速度に比べて遅いため、第2サンプル数は、第1サンプル数に比べて多く設定される。
なお、受信信号からドプラ信号の発生において、上記のようなFFTによる周波数分析の代わりに、自己相関関数などを使用してドプラスペクトラムの中心(すなわち中心速度)、パワー、分散値などを発生させることも可能である。
画像発生部28は、Bモード信号を、位置情報に従って専用のメモリに配置(配置処理)する。続いて、画像発生部28は、超音波走査線間のBモード信号を補間する(補間処理)。画像発生部28は、配置処理と補間処理とによって、複数のピクセルから構成されるBモード画像を発生する。各ピクセルは、由来するBモード信号の強度(振幅)に応じた画素値を有する。
なお、画像発生部28は、図示していないボリュームデータ発生デバイスを有していてもよい。この時、ボリュームデータ発生デバイスは、Bモード信号発生部28から出力されたBモード信号を位置情報に従って専用のメモリに配置(配置処理)する。続いて、ボリュームデータ発生デバイスは、超音波走査線間のBモード信号を補間する(補間処理)。配置処理と補間処理とによって、複数のボクセルから構成されるボリュームデータが発生される。各ボクセルは、由来するBモード信号の強度に応じたボクセル値を有する。発生されたボリュームデータは、図示していない3次元画像データ発生デバイスでレンダリング処理などを受ける。レンダリング処理されたボリュームデータは、表示部16に出力される。
画像発生部28は、ドプラ信号発生部26から出力された血流ドプラスペクトラムに基づいて、血流ドプラ画像を発生する。血流ドプラ画像は、縦軸を血流に起因するドプラ偏移周波数、横軸を時間、血流ドプラ信号の信号強度を輝度または画素値の大きさとして表された波形(以下、血流ドプラ波形と呼ぶ)を示す画像である。
画像発生部28は、ドプラ信号発生部26から出力された組織ドプラスペクトラムに基づいて、組織ドプラ画像を発生する。組織ドプラ画像は、縦軸を組織(例えば、血管壁)に起因するドプラ偏移周波数、横軸を時間、組織ドプラ信号の信号強度を輝度または画素値の大きさとして表された波形(以下、組織ドプラ波形と呼ぶ)を示す画像である。
画像発生部28は、図示していないフレームメモリ等を有する。画像発生部28は、Bモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形に、種々のパラメータの文字情報および目盛等を合成する。画像発生部28は、合成した画像を表示部16に出力する。画像発生部28は、血流ドプラ波形に、組織ドプラ波形を、時間軸の時刻を一致させて重ね合わせた画像(以下、重畳画像と呼ぶ)を発生する。なお、画像発生部28は、重畳画像とBモード画像とを合成した合成画像を発生してもよい。以下、Bモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形を超音波画像と呼ぶ。
速度表示スケール決定部30は、ドプラ信号発生部26で発生された血流ドプラ信号に関する速度分布範囲(以下、第1速度分布範囲と呼ぶ)に基づいて、第1速度分布範囲を包含するように第1の速度表示スケールを決定する。第1速度分布範囲とは、例えば、血管の種類などから推定される血流速度の速度表示スケールである。速度表示スケール決定部30は、ドプラ信号発生部26で発生された組織ドプラ信号に関する速度分布範囲(以下、第2速度分布範囲と呼ぶ)に基づいて、第2速度分布範囲を包含するように第2の速度表示スケールを決定する。第2速度分布範囲とは、例えば、血管の種類などから推定される血管壁の運度速度の速度表示スケールである。なお、第1、第2の速度表示スケール各々は、後述する入力部14を介して操作者の指示に従って、適宜調整可能である。
また、速度表示スケール決定部30は、記憶部34に記憶された第1の値に基づいて、第1の速度表示スケールを決定してもよい。第1の値とは、例えば血流速度の想定される最大値である。なお、第1の値は、後述する入力部14を介した操作者の指示により、適宜変更可能である。速度表示スケール決定部30は、記憶部34に記憶された第2の値に基づいて、第2の速度表示スケールを決定してもよい。第2の値とは、例えば組織の運動速度の想定される最大値である。なお、第2の値は、後述する入力部14を介した操作者の指示により、適宜変更可能である。第1、第2の値は、速度表示スケール決定部30の図示していないメモリに記憶されてもよい。
また、血管壁の膨張、収縮に伴う運動速度は血流の速度に比べて一般的に小さいため、速度表示スケール決定部30は、第1の速度表示スケールに比べて拡大した速度表示スケールを、第2の速度表示スケールとして決定してもよい。例えば、速度表示スケール決定部30は、第1の速度表示スケールに所定の割合を乗じたスケールを、第2の速度表示スケールとして決定する。ここで所定の割合とは、想定される血流速度の最大値に対する組織の運動速度の最大値である。以下、所定の割合を速度比と呼ぶ。例えば、速度比が8分の1であって、第1の速度表示スケールが−20cm/sec〜40cm/secである場合、第2の速度表示スケールは、−2.5cm/sec〜5cm/secとなる。速度比は、後述する記憶部34に記憶される。なお、速度比は、速度表示スケール決定部30における図示していないメモリに記憶されてもよい。なお、速度比は、後述する入力部14を介して、操作者により適宜変更可能である。
なお、速度表示スケール決定部30は、第2の速度表示スケールに比べて縮小した速度表示スケールを、第1の速度表示スケールとして決定してもよい。例えば、速度表示スケール決定部30は、第2の速度表示スケールに上記速度比の逆数を乗じたスケールを、第1の速度表示スケールとして決定する。例えば、速度比の逆数が8であって、第2の速度表示スケールが−2.5cm/sec〜5cm/secである場合、第2の速度表示スケールは、第1の速度表示スケールが、−20cm/sec〜40cm/secとなる。
なお、速度表示スケール決定部30は、ドプラ信号発生部26から出力された所定期間の血流ドプラスペクトラムにおける血流速度の最大値に基づいて、第1の速度表示スケールを決定してもよい。また、速度表示スケール決定部30は、ドプラ信号発生部26から出力された組織ドプラスペクトラムにおける所定期間の組織の運動の最大値に基づいて、第2の速度表示スケールを決定してもよい。所定期間とは、例えば1または複数の心拍周期である。なお、所定期間は、後述する入力部14を介して適宜変更可能である。
関心領域設定部32は、表示部16で表示されたBモード画像上に、入力部14を介して入力された操作者の指示に従って、ROIを設定する。関心領域設定部32は、入力部14を介して入力された操作者の指示に従って、ROIの中にレンジゲートを設定する。関心領域設定部32は、設定されたレンジゲートに対応する遅延時間を、SH回路44のレンジゲート回路に出力する。
記憶部34は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、本超音波診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群、Bモード信号発生部24で発生されたBモード信号、ドプラ信号発生部26で発生された血流ドプラスペクトラムおよび組織ドプラスペクトラム、画像発生部28で発生されたBモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形などの超音波画像、第1、第2の値、速度比等を記憶する。なお、記憶部34は、第1、第2の速度表示スケールと超音波送受信条件との対応表などを記憶してもよい。
制御部36は、操作者により入力部14から入力されたモード選択、ROIの設定、第1、第2の速度表示スケール、受信遅延パターンリストの選択、送信開始・終了に基づいて、記憶部34に記憶された送受信条件と装置制御プログラムを読み出し、これらに従って、本超音波診断装置1を制御する。
インターフェース部38は、入力部14、ネットワーク、図示していない外部記憶装置および生体信号計測部に関するインターフェースである。本超音波診断装置1によって得られた超音波画像等のデータおよび解析結果等は、インターフェース部38とネットワークとを介して他の装置に転送可能である。
入力部14は、インターフェース部38に接続され操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本超音波診断装置1に取り込む。入力部14は、図示していないトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の入力デバイスを有する。入力デバイスは、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を制御部36に出力する。なお、入力デバイスは、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部14は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部36に出力する。また、操作者が入力部14の終了ボタンまたはフリーズ(FREEZE)ボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、本超音波診断装置1は一時停止状態となる。入力部14は、インターフェース部38を介して他の医用画像診断装置から転送された被検体のボリュームデータに関して、断面位置および表示形式、レンダリング処理におけるレイの方向などを入力する。なお、入力部14は、第1、第2の速度表示スケール、第1、第2の値、速度比、所定の期間、レンジゲートなどを本超音波診断装置1に入力してもよい。
表示部16は、画像発生部28から出力されたBモード画像を表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された血流ドプラ波形を、第1の速度表示スケールで表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された組織ドプラ波形を、第2の速度表示スケールで表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された重畳画像を表示する。重畳画像は、血流ドプラ波形については第1の速度表示スケールで、組織ドプラ波形については第2の速度表示スケールで表示される。表示部16は、画像発生部28により発生された合成画像を表示する。表示部16は、インターフェース部38を介して、入力された他の医用画像診断装置におけるレンダリング画像などを表示することも可能である。
(速度表示スケール決定機能)
速度表示スケール決定機能とは、血流ドプ信号に関する速度分布範囲に基づいて第1の速度表示スケールを決定し、組織ドプラ信号に関する速度分布範囲に基づいて第2の速度表示スケールを決定する機能である。以下、速度表示スケール決定機能に従う処理(以下、速度表示スケール決定処理と呼ぶ)を説明する。
図3は、速度表示スケール決定処理の手順を示すフローチャートである。
超音波受信部22により、受信信号が発生される(ステップSa1)。発生された受信信号に基づいて、血流ドプラ信号と組織ドプラ信号とが発生される(ステップSa2)。血流ドプラ信号に関する速度分布範囲に基づいて、第1の速度表示スケールが決定される(ステップSa3)。組織ドプラ信号に関する速度分布範囲に基づいて、第2の速度表示スケールが決定される(ステップSa4)。なお、第2の速度表示スケールは、第1速度表示スケールに速度比を乗ずることにより、決定されてもよい。血流ドプラ波形が、血流ドプラ信号に基づいて発生される(ステップSa5)。組織ドプラ波形が、組織ドプラ信号に基づいて発生される(ステップSa6)。血流ドプラ波形に組織ドプラ波形を時間軸の時刻を一致させて、重畳画像が発生される(ステップSa7)。発生された重畳画像が、血流ドプラ波形については第1の速度表示スケールで、組織ドプラ波形については第2の速度表示スケールで、表示部16に表示される(ステップSa8)。
図4は、表示部16に表示されたBモード画像上に設定されたROIの一例を示す図である。ROI内には、レンジゲートが設定される。図4におけるレンジゲートは、血管壁に設定されている。本実施形態の適用に当たっては、レンジゲートは、入力部14を介した操作者の指示により、血管の内腔(以下、血管内腔と呼ぶ)と血管壁とを含むように調整される。
図5は、血流ドプラ波形に組織ドプラ波形(点線)を、時間軸の時刻を一致させて重畳させた重畳画像の一例を示す図である。図5において、縦軸は、血流速度および組織の運動速度、横軸は時間を表している。図5の血流ドプラ波形は、第1の速度表示スケールで表示されている。図5の重畳画像の右側の縦軸は、血流ドプラ波形に関する速度を表す軸である。図6の重畳画像の左側の縦軸は、組織ドプラ波形に関する速度を表す軸である。第1の速度表示スケールの上限は、40cm/sである。図5の組織のドプラ波形は、第2の速度表示スケールで表示されている。第2の速度表示スケールの上限は5cm/sである。
図6は、表示部16に表示された合成画像の一例を示す図である。図6のBモード画像上には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたROIが表示されている。ROI内には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたレンジゲートが表示されている。なお、レンジゲート内には、血管内腔と血管壁とが含まれている。図6の重畳画像の右側の縦軸は、血流ドプラ波形に関する速度を表す軸である。図6の重畳画像の左側の縦軸は、組織ドプラ波形に関する速度を表す軸である。
(第1の変形例)
第1の実施形態との相違は、組織ドプラスペクトラムに基づいて、組織ドプラ画像における組織ドプラ波形の背景の色相を、所定の色相に変更することにある。具体的には、組織ドプラ波形の背景の色相は、組織ドプラスペクトラムの周波数に基づいて、所定の色相に変更される。なお、組織ドプラ波形の背景の色相は、組織ドプラスペクトラムにおける周波数の強度に基づいて、所定の色相に変更されてもよい。
なお、組織ドプラスペクトラムに基づいて、組織ドプラ画像における組織ドプラ波形の背景の輝度を、所定の輝度に変更してもよい。具体的には、組織ドプラ波形の背景の輝度は、組織ドプラスペクトラムの周波数に基づいて、所定の輝度に変更される。なお、組織ドプラ波形の背景の輝度は、組織ドプラスペクトラムにおける周波数の強度に基づいて、所定の輝度に変更されてもよい。
以下、説明を簡単にするために、組織ドプラ波形の背景の色相が変更されるものとする。
記憶部34は、色相の変更が実行されるか否かに関する閾値を記憶する。記憶される閾値は、例えば、組織ドプラスペクトラムに関する所定の周波数(以下、閾値周波数と呼ぶ)、組織ドプラスペクトラムにおける所定の周波数の強度(以下、閾値強度と呼ぶ)である。なお、記憶部34は、組織ドプラ波形の背景の色相を複数の所定の色相に変更するための複数の閾値を記憶してもよい。記憶部34は、変更される色相を記憶する。なお、記憶部34に記憶される色相は、複数の色相であってもよい。また、記憶部34は、変更される輝度を記憶してもよい。以下、説明を簡単にするために、記憶部34に記憶される閾値は、一つであるものとする。
画像発生部28は、組織ドプラスペクトラムの周波数が閾値周波数を超えている期間を、図示していないメモリに記憶する。画像発生部28は、記憶された期間に対応する組織ドプラ波形の背景の色相を、所定の色相に変更する。画像発生部28は、背景の色相が変更された組織ドプラ波形を示す組織ドプラ画像を発生する。画像発生部28は、発生した組織ドプラ画像を、表示部16に出力する。なお、記憶部34に記憶された閾値が閾値強度である場合、画像発生部28は、組織ドプラスペクトラムにおける周波数の強度が閾値強度を超えている期間を、図示していないメモリに記憶してもよい。
図7における画像aは、色相が変更される前の重畳画像を示す図である。図7における画像bは、色相が変更された後の重畳画像を示す図である。図7における領域cおよび領域dは、組織ドプラスペクトラムの周波数が閾値周波数を超えている期間に対応する。
図8は、色相が変更される前の重畳画像を示す図である。図8における画像aは、色相が変更される前の重畳画像を示す図である。図8における画像bは、色相が変更された後の重畳画像を示す図である。図8における領域e、領域f、および領域gは、組織ドプラスペクトラムにおける周波数の強度が閾値強度を超えている期間に対応する。
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、血流の速度と組織(例えば血管壁)の運動速度とにそれぞれ対応する第1、第2の速度表示スケールで、血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とを重畳表示することができる。また、組織ドプラ波形における周波数または周波数の強度に応じて、組織ドプラ画像の背景の色相または輝度を変更することができる。これらのことから、操作者による表示画像の観察が容易となる。また、本超音波診断装置1によれば、一つの方位方向におけるROI内の受信信号を用いて、血流ドプラ信号と組織ドプラ信号とをそれぞれ発生することができる。これにより、複数のレンジゲートを設定することなしに、例えば血流の速度とこの血流に伴う血管壁の運動とを同時に観測できる。加えて、血流の速度と組織の運動速度とにそれぞれ対応する送受信条件、サンプリング間隔、FFT点数を設定することができる。これらの設定により、血流ドプラ画像と組織ドプラ画像とにおおける画質および精度が向上する。以上のことから、本超音波診断装置1を用いることにより、例えば、動脈硬化判定指標を提示することが可能となる。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して、第2の実施形態を説明する。
図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。第1の実施形態との相違は、入力部14を介した操作者のフリーズ操作に応じて、ドプラ信号発生部26に含まれるフィルタのフィルタ特性を変更することにある。
装置本体12は、第1の実施形態の構成要素に加えて、フィルタ変更部39をさらに具備する。まず、図10を参照して、ドプラ信号発生部26について説明する。図10は、本実施形態の超音波診断装置1におけるドプラ信号発生部26の構成を示す構成図である。ドプラ信号発生部26は、ミキサ(mixer)40、低域通過フィルタ(以下LPFと呼ぶ)41、サンプルホールド(Sample Hold:以下、SHと呼ぶ)回路44、可変フィルタ45、アナログディジタル変換器(以下、A/Dと呼ぶ)49、周波数分析器(Fast Fourier Transform:以下、FFTと呼ぶ)51を有する。
ミキサ40は、超音波受信部22または記憶部34から出力された信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの信号(以下、ドプラ信号と呼ぶ)と(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とが得られる。LPF41は、ミキサからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。
SH回路44は、図示していないレンジゲート回路からのサンプリングパルスに従って、ドプラ信号の一部分を、サンプリングしホールドする。レンジゲート回路は、レートパルスから所定の遅延時間遅延させたタイミングで、所定のパルス幅のサンプリングパルスを発生する。所定の遅延時間は、超音波が操作者により所望の深さに設定されたレンジゲート(サンプリングポイント、サンプリングボリュームともいう)と圧電振動子との間の距離を往復伝搬する時間である。レンジゲートは、入力部14を介した操作者の指示により、関心領域設定部32によって設定される。レンジゲートは、表示部16に表示されたBモード画像上に設定された関心領域(Region Of Interest:以下、ROIと呼ぶ)内に設けられる。
SH回路44は、サンプリングしホールドした信号(以下、SH信号と呼ぶ)を、後述する可変フィルタ45に出力する。また、サンプリング間隔は、後述する速度表示スケール決定部30で決定された速度表示スケールに基づいて、決定されてもよい。この時、サンプリング間隔の変更は、入力部14を介した操作者のフリーズ指示を契機として、サンプリング間隔を、血流ドプラ信号を得るためのサンプリング間隔から、組織ドプラ信号を得るためのサンプリング間隔へ変更される。なお、サンプリング間隔は、血流の速度および組織の運動速度に応じて設定されてもよい。
可変フィルタ45は、SH信号から血流ドプラ信号を抽出するためのフィルタ特性(例えば、ウォールフィルタON、ハイパスフィルタなど:以下、血流ドプラ抽出フィルタと呼ぶ)と、SH信号から組織ドプラ信号を抽出するためのフィルタ特性(例えば、ウォールフィルタOFF、ローパスフィルタなど:以下、組織ドプラ抽出フィルタと呼ぶ)とを有する。可変フィルタは、フィルタ特性を、後述するフィルタ変更部39からの出力に従って、血流ドプラ抽出フィルタから組織ドプラ抽出フィルタへ変更する。血流ドプラ抽出フィルタによりフィルタリングされた信号(以下、血流ドプラ信号)は、A/D49に出力される。組織ドプラ抽出フィルタによりフィルタリングされた信号(以下、組織ドプラ信号)は、A/D49に出力される。A/D49は、入力された信号をディジタル信号に変換する。
FFT51は、ディジタル信号に変換された信号に対して、高速フーリエ変換により周波数分析を実行する。FFT51は、周波数分析の結果に基づいて、周波数スペクトラムを発生する。FFT51は、発生した周波数スペクトラムを、後述する画像発生部28と速度表示スケール決定部30とに出力する。具体的には、FFT51は、ディジタル信号に変換された血流ドプラ信号に対して、周波数分析を実行することにより、血流ドプラスペクトラムを発生する。FFT51は、ディジタル信号に変換された組織ドプラ信号に対して、周波数分析を実行することにより、組織ドプラスペクトラムを発生する。FFT51は、ディジタル信号に変換された組織ドプラ信号に対して、周波数分析を実行することにより、組織ドプラスペクトラムを発生する。
なお、FFT51の高速フーリエ変換における点数(以下、FFT点数と呼ぶ)は、血流の速度および組織の運動速度に応じて設定されてもよい。また、FFT点数は、後述する速度表示スケール決定部30で決定された速度表示スケールに基づいて、決定されてもよい。
フィルタ変更部39は、入力部14を介した操作者のフリーズ指示を契機として、ドプラ信号発生部26の後述する可変フィルタ45のフィルタ特性を変更する。具体的には、フィルタ変更部39は、可変フィルタ45におけるフィルタ特性を、血流ドプラ抽出フィルタから組織ドプラ抽出フィルタへ変更する。
記憶部34は、超音波受信部22で発生された受信信号を記憶する。記憶部34は、入力部14を介した操作者のフリーズ指示を契機として、記憶部34に記憶した受信信号を、ドプラ信号発生部26へ出力する。
画像発生部28は、入力部14を介した操作者のフリーズ指示を契機として、フリーズ指示が入力された時刻(以下、フリーズ入力時刻と呼ぶ)を血流ドプラ波形の横軸(時間軸)の中心に位置させた血流ドプラ画像(以下、血流ドプラ中心画像と呼ぶ)を発生する。画像発生部28は、ドプラ信号発生部26から出力された組織ドプラスペクトラムに基づいて、フリーズ入力時刻以降の組織ドプラ画像を発生する。画像発生部28は、血流ドプラ中心画像に組織ドプラ画像を重畳させた重畳画像を発生する。画像発生部28は、重畳画像とBモード画像とを合成した合成画像を発生する。
入力部14は、操作者によりフリーズ(FREEZE)ボタンが操作されると、超音波の送受信は終了し、本超音波診断装置1は一時停止状態となる。入力部14は、フリーズボタンの操作に関する信号を、フィルタ変更部39、記憶部34、画像発生部28に出力する。
(フィルタ特性変更機能)
フィルタ特性変更機能とは、入力部14を介した操作者のフリーズ操作に応じて、ドプラ信号発生部26に含まれるフィルタのフィルタ特性を変更する機能である。以下、フィルタ特性変更機能に従う処理(以下、フィルタ特性変更処理と呼ぶ)を説明する。
図11は、フィルタ特性変更処理の手順を示すフローチャートである。
超音波受信部22により受信信号が発生される(ステップSb1)。発生された受信信号が、記憶部34に記憶される(ステップSb2)。受信信号に基づいて、血流ドプラ波形が発生される(ステップSb3)。この時、可変フィルタ45で適用されるフィルタ特性は、血流ドプラ抽出フィルタである。血流ドプラ波形が、第1の速度表示スケールで表示部16に表示される(ステップSb4)。入力部14を介してフリーズ指示が入力される(ステップSb5)と、血流ドプラ中心画像が発生される。発生された血流ドプラ中心画像が、表示部16に表示される(ステップSb6)。
フリーズ指示の入力を契機として、フィルタ変更部39により、可変フィルタ45のフィルタ特性が、血流ドプラ抽出フィルタから組織ドプラ抽出フィルタへ変更される(ステップSb7)。ドプラ信号発生部26により、記憶部34に記憶された受信信号に基づいて、組織ドプラ波形が発生される(ステップSb8)。ステップSb8の処理で発生された組織ドプラ波形は、フリーズ指示入力後の組織ドプラ波形である。なお、ステップSb8の処理で、フリーズ操作前後の組織ドプラ波形を発生してもよい。発生された組織ドプラ波形を第2の速度表示スケールで血流ドプラ波形に重ね合わせた重畳画像が発生される。発生された重畳画像が表示部16で表示される(ステップSb9)。
図12は、血流ドプラ波形に、SH回路44から可変フィルタ45を経由せずに発生されたフリーズ操作前の周波数スペクトラムの強度値に応じて変更された色相と、フリーズ操作後の組織ドプラ波形とを、重畳させた重畳図の一例を示す図である。図12における血流ドプラ波形は、第1の速度表示スケールで表示される。図12における組織ドプラ波形は、第2の速度表示スケールで表示される。血流ドプラ波形に組織ドプラ波形を重畳させるとき、血流ドプラ波形の時間軸は、組織ドプラ波形の時間軸に各々の時刻を一致させて重畳される。なお、フリーズ操作前の周波数スペクトラムの強度値は、フリーズ操作前の組織ドプラスペクトラムの強度値であってもよい。
図12のBモード画像上には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたROIが表示されている。ROI内には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたレンジゲートが表示されている。なお、レンジゲート内には、血管内腔と血管壁とが含まれている。図12の重畳画像の右側の縦軸は、血流ドプラ波形に関する速度を表す軸である。図12の重畳画像の左側の縦軸は、組織ドプラ波形に関する速度を表す軸である。重畳画像における横軸の中心には、フリーズ操作時刻を表す縦線が表示される。
図12の重畳画像における領域a、b、cは、組織ドプラスペクトラムにおける周波数の強度が閾値強度を超えている期間に対応する。重畳画像の背景における色相の変更は、第1の変形例と同様に実行される。
図13は、血流ドプラ波形に、フリーズ操作後の組織ドプラ信号の強度値に応じて変更された色相と、フリーズ操作後の組織ドプラ波形とを重畳させた重畳図の一例を示す図である。図13における血流ドプラ波形は、第1の速度表示スケールで表示される。図13における組織ドプラ波形は、第2の速度表示スケールで表示される。血流ドプラ波形に組織ドプラ波形を重畳させるとき、血流ドプラ波形の時間軸は、組織ドプラ波形の時間軸に各々の時刻を一致させて重畳される。図13のBモード画像上には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたROIが表示されている。ROI内には、入力部14を介して操作者の指示により設定されたレンジゲートが表示されている。なお、レンジゲート内には、血管内腔と血管壁とが含まれている。図13の重畳画像の右側の縦軸は、血流ドプラ波形に関する速度を表す軸である。図13の重畳画像の左側の縦軸は、組織ドプラ波形に関する速度を表す軸である。重畳画像における横軸の中心には、フリーズ操作時刻を表す縦線が表示される。
図13の重畳画像における領域d、eは、血流ドプラスペクトラムの周波数が閾値周波数を超えている期間に対応する。重畳画像の背景における色相の変更は、組織ドプラスペクトラムに基づいて、第1の変形例と同様に実行される。
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、ドプラ信号発生部26におけるフィルタ特性を変更することにより、一つの方位方向上のROI内における受信信号に基づいて、血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とを発生することができる。加えて、第1、第2の速度表示スケールで、血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とを重畳表示することができる。これらのことから、操作者による表示画像の観察が容易となる。また、本超音波診断装置1は、受信信号を記憶部34に記憶させ、操作者のフリーズ操作を契機として、組織ドプラ波形を発生することができる。また、組織ドプラ波形における周波数または周波数の強度に応じて、組織ドプラ画像の背景の色相または輝度を変更することができる。加えて、ドプラ信号発生部26の構成が単純となり、超音波診断装置1のコストを低減させることができる。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して、第3の実施形態を説明する。
図14は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す構成図である。第1、第2の実施形態との相違は、ROI内の画素値に基づいて、ROI内に複数のレンジゲートを設定し、設定されたレンジゲートごとにドプラ画像を発生することである。装置本体12は、第1の実施形態の構成要素に加えて、レンジゲート決定部37をさらに具備する。
関心領域設定部32は、表示部16で表示されたBモード画像上に、入力部14を介して入力された操作者の指示に従って、ROIを設定する。
レンジゲート決定部37は、ROI内の画素値に基づいて、ROI内に複数のレンジゲートの位置を決定する。レンジゲート(Range gate)の位置は、一つの方位方向上に設定される。以下説明を簡単にするため、ROI内に決定されるレンジゲートは2種類であるものとする。一方は血流ドプラ用のレンジゲート(以下、血流RGと呼ぶ)であって、他方は組織ドプラ用のレンジゲート(以下、組織RGと呼ぶ)であるとする。レンジゲート決定部37は、入力部14を介した操作者の指示により、ROI内に組織RGの位置を決定する。なお、組織RGの代わりに血流RGであってもよい。なお、レンジゲート決定部37は、組織RGを、ROI内の画素値を図示していないメモリに記憶された典型的な組織の画素値と比較することにより決定してもよい。
レンジゲート決定部37は、組織RGから方位方向に沿った複数の画素各々について、隣接する2つの画素の画素値を差分した差分値を計算する。なお、差分値の代わりに差分値の絶対値でもよい。レンジゲート決定部37は、記憶部34に記憶された所定の値を読み出す。計算された差分値が所定の値以上であれば、レンジゲート決定部37は、この差分値に関する2つの画素の間を、組織と血管内腔との境界として決定する。所定の値とは、例えば、血管内腔の画素値と血管壁の画素値の差である。
レンジゲート決定部37は、方位方向に沿って、決定された境界の画素から組織RGの一方の端までの距離(以下、第1距離と呼ぶ)を計算する。レンジゲート決定部37は、方位方向に沿って、決定された境界の画素から組織RGの他方の端までの距離(以下、第2距離と呼ぶ)を計算する。レンジゲート決定部37は、第1距離と第2距離とのうち、長い方の距離の2等分(以下、2等分距離と呼ぶ)を計算する。レンジゲート決定部37は、組織RG内であって、境界から2等分距離離れた位置に、血流RGを設定する。図15は、表示部16に表示されたBモード画像上に設定されたROI内に決定された組織RGと血流RGとの一例を示す図である。
なお、レンジゲート決定部37は、入力部14を介した操作者の指示により、ROI内の一方の血管壁に合わせて組織RGの位置を決定してもよい。この時、レンジゲート決定部37は、他方の血管壁と血管内腔との境界を決定する。レンジゲート決定部37は、一方の血管壁と血管内腔との境界と、他方の血管壁と血管内腔との境界との中間の位置に、血流RGを設定する。図16は、表示部16に表示されたBモード画像上に設定されたROI内の血管壁に決定された組織RGと血流RGとの一例を示す図である。
レンジゲート決定部37は、血流RGの位置(深さ)に対応する遅延時間(以下、血流RG時間と呼ぶ)を発生する。血流RG時間は、血流RGと圧電振動子との間の距離を超音波が往復伝搬する時間である。レンジゲート決定部37は、組織RGの位置(深さ)に対応する遅延時間(以下、組織RG時間と呼ぶ)を発生する。組織RG時間は、組織RGと圧電振動子との間の距離を超音波が往復伝搬する時間である。レンジゲート決定部37は、レートパルスから血流RG時間遅延させたタイミングで、所定のパルス幅のサンプリングパルス(以下、血流サンプリングパルスと呼ぶ)を発生する。レンジゲート決定部37は、レートパルスから組織RG時間遅延させたタイミングで、所定のパルス幅のサンプリングパルス(以下、組織サンプリングパルスと呼ぶ)を発生する。レンジゲート決定部37は、血流サンプリングパルスを後述する第1サンプルホールド回路(以下第1SH回路と呼ぶ)44に出力する。レンジゲート決定部37は、組織サンプリングパルスを後述する第2サンプルホールド回路(以下第2SH回路と呼ぶ)51に出力する。
図17を参照して、ドプラ信号発生部26について説明する。図17は、本実施形態の超音波診断装置1におけるドプラ信号発生部26の構成を示す構成図である。ドプラ信号発生部26は、ミキサ(mixer)40、第1の低域通過フィルタ(以下第1LPFと呼ぶ)42、第1サンプルホールド(Sample Hold:以下SHと呼ぶ)回路43、ウォールフィルタ46、第1のアナログディジタル変換器(以下、第1A/Dと呼ぶ)48、第1周波数分析器(Fast Fourier Transform:以下、第1FFTと呼ぶ)50、第2SH回路51、第2の低域通過フィルタ(以下第2LPFと呼ぶ)52、第2のアナログディジタル変換器(以下、第2A/Dと呼ぶ)54、第2周波数分析器(Fast Fourier Transform:以下、第2FFTと呼ぶ)56を有する。
ミキサ40は、超音波受信部22から出力された信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの信号(以下、ドプラ信号と呼ぶ)と(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とが得られる。第1LPF42は、ミキサからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。
第1SH回路43は、血流サンプリングパルスに従って、ドプラ信号の一部分を、サンプリングしホールドする。
ウォールフィルタ46は、血流に起因したドプラ信号(以下、血流ドプラ信号とよぶ)を抽出するために、第1SH回路43の出力から、血管壁および心臓の弁等の運動に起因する速度に対応するドプラ信号(以下、組織ドプラ信号と呼ぶ)を除去する。ウォールフィルタ46は、血流ドプラ信号を第1A/D48へ出力する。第1A/D48は、血流ドプラ信号をディジタル信号に変換する。
第1FFT50は、ディジタル信号に変換された血流ドプラ信号に対して、高速フーリエ変換により周波数分析を実行する。第1FFT50は、周波数分析の結果に基づいて、血流ドプラ信号の周波数スペクトラムを発生する。第1FFT50は、血流ドプラ信号の周波数スペクトラム(以下、血流ドプラスペクトラムと呼ぶ)を、後述する画像発生部28と速度表示スケール決定部30とに出力する。血流ドプラスペクトラムは、時間に対する血流ドプラ信号の周波数とこの周波数の強度とを示している。血流ドプラ信号の周波数は、血流速度に対応する。
第2SH回路51は、組織サンプリングパルスに従って、ドプラ信号の一部分を、サンプリングしホールドする。
第2LPF52は、組織ドプラ信号を抽出するために、第2SH回路51の出力から、血流ドプラ信号を除去する。第2LPF52は、組織ドプラ信号を第2A/D54へ出力する。第2A/D54は、組織ドプラ信号をディジタル信号に変換する。第2FFT56は、ディジタル信号に変換された組織ドプラ信号に対して、高速フーリエ変換により周波数分析を実行する。
第2FFT56は、周波数分析の結果に基づいて、組織ドプラ信号の周波数スペクトラムを発生する。第2FFT56は、組織ドプラ信号の周波数スペクトラム(以下、組織ドプラスペクトラムと呼ぶ)を、後述する画像発生部28と速度表示スケール決定部30とに出力する。組織ドプラスペクトラムは、時間に対する組織ドプラ信号の周波数とこの周波数の強度とを示している。組織ドプラ信号の周波数は、組織の運動速度に対応する。以下、説明を簡単にするために、組織の運動速度は血管壁の運動速度であるものとする。
画像発生部28は、Bモード信号を、位置情報に従って専用のメモリに配置(配置処理)する。続いて、画像発生部28は、超音波走査線間のBモード信号を補間する(補間処理)。画像発生部28は、配置処理と補間処理とによって、複数のピクセルから構成されるBモード画像を発生する。各ピクセルは、由来するBモード信号の強度(振幅)に応じた画素値を有する。
画像発生部28は、ドプラ信号発生部26から出力された血流ドプラスペクトラムに基づいて、血流ドプラ画像を発生する。血流ドプラ画像は、縦軸を血流に起因するドプラ偏移周波数、横軸を時間、血流ドプラ信号の信号強度を輝度または画素値の大きさとして表された波形(以下、血流ドプラ波形と呼ぶ)を示す画像である。
画像発生部28は、ドプラ信号発生部26から出力された組織ドプラスペクトラムに基づいて、組織ドプラ画像を発生する。組織ドプラ画像は、縦軸を組織(例えば、血管壁)に起因するドプラ偏移周波数、横軸を時間、組織ドプラ信号の信号強度を輝度または画素値の大きさとして表された波形(以下、組織ドプラ波形と呼ぶ)を示す画像である。
画像発生部28は、図示していないフレームメモリ等を有する。画像発生部28は、Bモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形に、種々のパラメータの文字情報および目盛等を合成する。画像発生部28は、合成した画像を表示部16に出力する。画像発生部28は、血流ドプラ波形に、組織ドプラ波形を、時相を合わせて重ね合わせた画像(以下、重畳画像と呼ぶ)を発生する。なお、画像発生部28は、重畳画像とBモード画像とを合成した合成画像を発生してもよい。以下、Bモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形を超音波画像と呼ぶ。
記憶部34は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、本超音波診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群、Bモード信号発生部24で発生されたBモード信号、ドプラ信号発生部26で発生された血流ドプラスペクトラムおよび組織ドプラスペクトラム、画像発生部28で発生されたBモード画像、血流ドプラ波形、組織ドプラ波形などの超音波画像、レンジゲート決定部37で用いられる所定の値等を記憶する。
表示部16は、画像発生部28にから出力されたBモード画像を表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された重畳画像を表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された血流ドプラ波形を表示する。表示部16は、画像発生部28により発生された組織ドプラ波形を表示する。表示部16は、Bモード画像上にROIを表示する。表示部16は、ROI内に血流RGおよび組織RGを表示する。
入力部14は、操作者の指示に従って、ROIを入力する。入力部14は、操作者の指示に従って、ROI内に組織RGと血流RGとのうち少なくとも一方を入力する。
(レンジゲート決定機能)
レンジゲート決定機能とは、Bモード画像の画素値に基づいて、Bモード画像上に設定されたROI内に複数のレンジゲートを決定する機能である。以下、レンジゲート決定機能に従う処理(以下、レンジゲート決定処理と呼ぶ)を説明する。
図18は、レンジゲート決定処理の手順を示すフローチャートである。
受信信号に基づいて、Bモード画像が発生される(ステップSc1)。発生されたBモード画像上に、ROIが設定される(ステップSc2)。ROI内に組織RGが設定される(ステップSc3)。ROI内の画素値と組織RGとを用いて、血流RGが決定される(ステップSc4)。に基づいて、血管内腔と血管壁とにそれぞれ対応する2種のレンジゲートが決定される。受信信号と血流RGとを用いて血流ドプラ波形が発生される(ステップSc5)。受信信号と組織RGとを用いて組織ドプラ波形が発生される(ステップSc6)。血流ドプラ信号に関する速度分布範囲に基づいて、第1の速度表示スケールが決定される(ステップSc7)。組織ドプラ信号に関する速度分布範囲に基づいて、第2の速度表示スケールが決定される(ステップSc8)。血流ドプラ波形が、血流ドプラ信号に基づいて、第1の速度表示スケールで発生される(ステップSc9)。組織ドプラ波形が、組織ドプラ信号に基づいて、第2の速度表示スケールで発生される(ステップSc10)。血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とに基づいて発生された重畳画像が、時間軸の時刻を一致させて表示部16で表示される(ステップSc11)。
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置1によれば、ROI内の画素値に基づいて、一つの方位方向上のROI内に複数のレンジゲートを決定することができる。また、一つの方位方向におけるROI内の受信信号を用いて、複数のレンジゲートにそれぞれ対応する複数のドプラ波形を発生することができる。例えば、複数のレンジゲートが血管内腔とこの血管内腔の方位方向における血管壁とに決定された2つのレンジゲートである場合、本超音波診断装置1によれば、血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とを発生することができる。加えて、第1、第2の速度表示スケールで、血流ドプラ波形と組織ドプラ波形とを重畳表示することができる。これらのことから、操作者による表示画像の観察が容易となる。加えて、本超音波診断装置1によれば、複数のレンジゲートの設定操作が不要となるため、複数のレンジゲートの設定操作の煩雑さが改善される。これにより、検査効率が向上する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。