(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1〜図6に基づき説明する。この第1実施例に係る超音波診断装置は、組織としての心筋(心臓壁)のTDI(組織ドプライメージング)画像を得る診断装置である。
図1には、超音波診断装置のブロック構成を示す。図に示すように、この超音波診断装置10は、被検者との間で超音波信号の送受信を担う超音波プローブ11と、この超音波プローブ11を駆動し且つ超音波プローブ11の受信信号を処理する装置本体12と、この装置本体12に接続され且つ心電情報を検出するECG(心電計)13と、装置本体12に接続され且つオペレータからの指示情報を装置本体に出力可能な操作パネル14とを備える。
装置本体12は、その扱う信号経路の種別に拠り超音波プローブ系統、ECG系統及び操作パネル系統に大別することができる。超音波プローブ系統としては、超音波プローブ11に接続された超音波送受信部15を備え、この超音波送受信部15の出力側に配置されたBモード用DSC(デジタルスキャンコンバータ)部16、Bモード用フレームメモリ(FM)17、メモリ合成部18及び表示器19を備える一方、同じく超音波プローブ11に接続された、カラーマッピングのための位相検波部20、フィルタ部21、周波数解析部22、符号化演算部23、TDI用DSC部24、及びTDI用フレームメモリ25を備えている。また、ECG系統としては、ECG13に接続されたECG用アンプ40を備え、このアンプ40の出力側に接続されたトリガ信号発生器41及び参照データメモリ42を備える。さらに、操作パネル系統としては、操作パネル14からの操作情報を入力するCPU(中央処理装置)43と、このCPU43の管理下に置かれるタイミング信号発生器44とを備える。なお、CPU43は、オペレータが操作パネル14を介して指令したROI(関心領域)の設定信号を、ROI設定に必要な各構成に供給できるようになっている。
この実施例にあっては、超音波プローブ11及び超音波送受信部15が本発明の走査手段を形成し、位相検波部20が抽出手段を成し、フィルタ部21及び周波数解析部22が本発明の速度演算手段を形成している。また、TDI用DSC部24、TDI用フレームメモリ25、メモリ合成部18及び表示器19が本発明の表示手段を形成している。符号化演算部23がスケール設定手段及び速度変換手段に対応している。
超音波プローブ11は、短冊状の複数の圧電振動子を配列させたフェーズド・アレイ形のトランスデューサを内蔵している。各圧電振動子は、超音波送受信部15からの駆動信号によって励振される。各駆動信号の遅延時間を制御することにより、スキャン方向を変更してセクタ電子走査可能になっている。超音波送受信部15の遅延時間パターンは、後述するタイミング信号発生器44から送られてくる基準信号を基準時として、CPU43により制御される。超音波送受信部15は、スキャン方向に対応して遅延時間パターンが制御された駆動電圧信号を超音波プローブ11に出力する。この駆動電圧信号を受けた超音波プローブ11は、そのトランスデューサにおいて電圧信号を超音波信号に変換する。この変換された超音波信号は、被検者の心臓に向けて送波される。この送波された超音波信号は、心臓を含む各組織で反射され、再び超音波プローブ11に戻ってくる。そこで、プローブ11内のトランスデューサでは反射超音波信号が再び電圧信号(エコー信号)に変換され、そのエコー信号は超音波送受信部15に出力される。
上記超音波送受信部15の信号処理回路は、送信時と同様に、入力したエコー信号に遅延をかけて整相加算し、スキャン方向に超音波ビームを絞ったと等価なエコービーム信号を生成する。この整相加算されたエコービーム信号は、検波された後、Bモード用DSC部16に出力される。このDSC部16は超音波走査のエコーデータを標準テレビ走査のデータに変換し、メモリ合成部18に出力する。また、これと並行して、Bモード用DSC部16は、任意の心位相における複数枚の画像データをBモード用フレームメモリ17に記憶させる。
一方、超音波送受信部15で処理されたエコー信号は、位相検波部20にも出力される。位相検波部20はミキサとローパスフィルタを備える。心筋のような運動をしている部位で反射したエコー信号は、ドプラ効果によって、その周波数にドプラ偏移を受けている。位相検波部20はそのドプラ周波数について位相検波を行い、ドプラ信号のみをフィルタ部21に出力する。
フィルタ部21は、運動速度の大きさが「心筋<弁<血流」の関係にあることを利用して(図2参照)、位相検波されたドプラ信号から、心臓壁以外の弁運動、血流などの不要なドプラ成分を除去し、超音波ビーム方向の心筋のドプラ信号を効率良く検出する。この場合、フィルタ部21はローパスフィルタとして機能させる。
上記フィルタ部は既に実用化されている、血流情報を得るためのカラードプラ断層装置にも搭載されているものである。この血流情報を得るカラードプラ断層装置の場合には、血流と心臓壁、弁運動とのドプラ信号が混在したエコー信号に対してハイパスフィルタとして機能させ、血流以外のドプラ信号を除去している。このため、フィルタ部は装置の目的に応じてローパスフィルタとハイパスフィルタとを切換可能にすることで汎用性を高めることができる。
フィルタ部21でフィルタリングされたドプラ信号は、次段の周波数解析部22に出力される。周波数解析部22は、超音波ドプラ血流計測で用いられている周波数分析法である、FFT法及び自己相関法などを応用するものであり、スキャンされる断層面内の個々のサンプル点における観測時間(時間窓)内での平均速度や最大速度を速度データとして演算する。具体的には、例えば、FFT法又は自己相関法を用いてサンプル各点の平均ドプラ周波数(即ち、その点での観測対象の運動の平均速度)や分散値(ドプラスペクトラムの乱れ度)を、さらにはFFT法を用いてドプラ周波数の最大値(即ち、その点での観測対象の運動の最大速度)などをほぼリアルタイムで演算する。このドプラ周波数の解析結果は運動速度のカラードプラ情報として次段の符号化演算部23に出力される。
符号化演算部23は、CPU機能を備え、周波数解析部22から送られてくる、断層面の各サンプル点毎のドプラ偏移周波数fdを、指定された速度変換スケールを使って所定ビット数の速度表示データに符号化するようになっている。この超音波パルスドプラ法では、超音波パルス信号のパルス繰返し周波数frはサンプリング周波数に相当する。よってサンプリング定理から、測定可能なドプラ偏移周波数の最大値fdmaxは、
[数1]
fdmax=fr/2
である。
周波数解析部22において折返り現象が発生しない演算可能なドプラ偏移周波数fdは、
[数2]
−fr/2≦fd≦fr/2
であるが、この周波数(すなわち速度)範囲のうち、
[数3]
−fr/8≦fd≦fr/8
の周波数範囲を「fr/128」の量子化率で量子化して、例えば5ビットのデータ長の速度表示コードに符号化する。この場合、ドプラ偏移周波数fdが、
[数4]
−fr/2≦fd<−fr/8
のときは、一方の運動方向(例えば超音波ビームから遠ざかる方向)の最高階調度に対応する、「−fr/8」のときと同じ符号化データに設定し、
[数5]
fr/8<fd≦fr/2
のときは、もう一方の運動方向(例えば超音波ビームに近づく方向)の最高階調度に対応する、「fr/8」のときと同じ符号化データに設定する。
この結果、ドプラ偏移周波数の範囲「−fr/2≦fd≦fr/2」を横軸にとり、カラー表示色の赤(黄)−青(水色)の色相変化を表す速度表示コードを縦軸にとったときの速度変換スケールは図3に示すように絶対値が「fr/8」より大きい速度では飽和する形で表わされる。このように符号化された、データ長が5ビットのサンプル点毎の速度表示データは次段のTDI用DSC部24に出力される。以上の手順の概略を、図4のステップS1〜S5に示す。
TDI用DSC部24は、走査方式変換用のDSC24aとコードに変換された速度表示データをカラー化するためにルックアップ用テーブルを備えたカラー回路24bとを備えている。このため、符号化演算部23から送られてきた速度データは、DSC24aで超音波走査信号が標準テレビ走査信号に変換されると共に、カラー回路24bでカラー表示用データに変換され、その変換信号が前記メモリ合成部18に出力される。
ここで、上記カラー回路24bで処理される心筋速度のカラー表示方式について触れる。このカラー表示を大別すると、(i)速度の大きさ(絶対値)の表示、(ii)運動の方向と速度の大きさの表示、(iii)運動の方向の表示、に分けられる。(i)の表示法としては、a:単色で大きさに応じて輝度を変える、b:大きさに応じて色を変える、がある。(ii)の表示法については、方向を色で示し、大きさを輝度で示すやり方のほか、方向を色合いで示し、大きさをその色合いの変化で示すやり法などがあり、この内、方向については、得られる速度情報の態様に応じて、適用可能な表現法が制限される。ここでは、TDI用DSC部24のカラー回路24bにおいて、図5に示したように、カラーが決められる。即ち、従来知られている超音波ビームに近づく運動を赤、超音波ビームから遠ざかる運動を青で示す方法に対応させて、心筋の収縮運動を赤(黄)、心筋の拡張運動を青(水色)で示し、且つ、その絶対値が大きくなるにしたがって黄色又は水色にグラデーションを変化させるようにしたものである。この結果、所望の低速度領域「−fr/8≦fd≦fr/8」の速度表示データは「水色→青→赤→黄」の一連のカラー表示色に対して運動方向毎に32階調の色情報に変換される。
また、TDI用DSC部24のDSC24aはさらに、任意の心時相における複数枚のカラードプラ画像をTDI用フレームメモリ25に記憶させる。
一方、前述したECG13は被検者の各心時相の心電図情報を検出するようになっている。この検出信号は、ECG用アンプ40を経てトリガ信号発生器41及び参照データメモリ42に各々出力される。この内、参照データメモリ42は各心時相における心電図情報を記憶しておき、必要に応じて必要な情報をメモリ合成部18に供給する。トリガ信号発生器41は、各心時相のタイミング情報を前記タイミング信号発生器44に知らせるようになっている。タイミング信号発生器44は、通常、操作パネル14からの指示に応じて超音波送受信部15における遅延時間パターンを制御するCPU43のコントロール下にあるが、トリガ信号発生器41から各心時相のタイミングが告知されると、超音波送受信部15に対して超音波送受のための基準信号を発振する。
上述したようにメモリ合成部18には、Bモード用DSC部16から出力されたBモード画像信号、TDI用DSC部24から出力されたTDIモードの画像信号、さらには必要に応じて前記参照データメモリ42からの心電図情報が入力するようになっている。メモリ合成部18では、それらの入力信号データが重畳され、その重畳データが表示器19に出力される。表示器19はここではCRTで成る。
この結果、血流や弁のドプラ信号は既にフィルタ部21でカットされているから、表示器19には心臓のBモード断層像(白黒階調)と、心筋の動きを図3に示す速度変換スケールに従って、図5に示すカラーバーで色分けしたカラー画像とを重畳させた断層像が、例えば図6に示すように殆どリアルタイムに表示される(同図においてハッチング部分が心筋HMを示す)。つまり、図6に示す心筋HMのカラーは収縮運動時には赤(黄)、拡張運動時には青(水色)となり、その赤、青が周期的に且つリアルタイムに繰り返される。しかも収縮、拡張運動の最中における運動速度の変化は、赤もしくは黄または青もしくは水色の色合い変化によって殆どリアルタイムに表現される。よって、心筋HMの運動速度をカラーでほぼリアルタイム且つ精度良く表示させることができ、心臓の機能低下を定量的且つ高精度に評価するための基礎画像を取得できる。
特に、組織ドプライメージングにおいて関心のある超低速度の範囲「−fr/8≦fd≦fr/8」がカラーバーの全階調度範囲に相当する運動方向毎の32階調(量子化率5ビット)の色合いで表示されるため、ここでは1階調当り「fr/128」の、刻みが細かいドプラ偏移周波数(すなわち運動速度)が実質的に割り当られることになる。これは、前述したフルスケール「−fr/2≦fd≦fr/2」に32階調を割り当てる従来法の場合に比べて、超低速度範囲「−fr/8≦fd≦fr/8」の階調表示能が4倍に向上したことになる。これにより、低いパルス繰返し周波数にして検出した心筋の超低速の運動速度が、従来よりも格段に多い階調度で表示されるから、超低速域内の僅かな速度差が異なる色合いの表示色となり、速度差を視覚的に容易に差別化して評価することができる。
本出願人の臨床評価では、上記低速度域の最大速度範囲は4cm/s及び10cm/sの間で選択し、この最大速度範囲よりも大きい速度は飽和して最高輝度(色相変化に代えて指定カラーの輝度変化をカラー表示用階調データとして採用した)の赤または青の速度表示データに符号化されるようにした。しかしながら、サンプリング周波数から得られるエイリアシング速度はその飽和した最大速度よりも4倍または8倍高く、30cm/s及び40cm/sの間であった。この条件のもとで心室壁の運動速度を計測したが、エイリアシングは発生しないことが確認できた。
よって、従来と同じパルス繰返し周波数の超音波パルス信号によるスキャンであっても、組織の超低速の運動速度に対する計測機能を損わないで済み、装置の高機能化を図ることができる。
なお、上記実施例における診断装置はBモード用とTDI用の2種類のフレームメモリ17、25を備えているため、必要に応じて、スローモーション再生、コマ送り再生などのシネループ再生や動画再生を行ったり、心時相が異なる画像をBモード用とCFM用とで個別に或いは並列に表示させたりすることができる。
また、上記断層装置には、心筋の動きをドプラ表示させるためのドプラフィルタやFFT(高速フーリエ変換)周波数分析器を付加することもできる。
さらに、上記実施例では心筋TDI画像を重畳させる画像がBモード断層像であり、また診断対象が心臓である構成について説明してきたが、この発明は必ずしもそのような構成に限定されるものではない。例えば、Bモード像の代わりに、Mモード像であってもよいし(この場合には、Bモード像取得のための各構成要素をMモード像のそれに置換すればよい)、心筋の代わりに血管壁を診断してもよい(この場合には、フィルタ部21のカットオフ周波数を血管壁用に合わせる)。また、それらBモード像やMモード像を重畳しないで、TDI(カラードプラ)像のみを単独で表示させてもよい。
さらに、通常のBモード断層装置及び血流カラーフローマッピングで見られるように、心電図などの生体信号との対応を明確にするため、生体信号波形の同時表示や、心電図R波などからの時間差表示を行ってもよい。
さらにまた、上記実施例における周波数解析部22と符号化演算部23との間に、絶対速度演算部を挿入して、心筋などの組織の運動の絶対速度(すなわち、各サンプル点における組織の運動方向の速度それ自体)を例えば特開平6−114059号に示す如く推定演算させ、この絶対速度を二次元カラー表示することもできる。
一方、本発明に係る階調表示能を階調する低速度領域については、前述した実施例の「−fr/8≦fd≦fr/8」に限定されることなく、符号化演算部23のプログラムなどを組み換えることにより、例えば図7中の一点鎖線の速度変換スケールで示す如く「−fr/12≦fd≦fr/12」の範囲や、同図中二点鎖線の速度変換スケールで示す如く、「−fr/16≦fd≦fr/16」の範囲に設定するとしてもよい。また、それらの周波数範囲「−fr/8≦fd≦fr/8」、「−fr/12≦fd≦fr/12」、「−fr/16≦fd≦fr/16」をオペレータからのマニュアル操作信号に応じて切り換え、表示器の画面を見ながら適宜なレンジを選択するようにしてもよい。これには、図1において、操作パネル14からのマニュアル操作信号を受けたCPU43が、その操作に係る切換信号を符号化演算部23に送るようにすればよい。
さらに、本発明に係る低速度域強調表示にあっては、例えば図8に示す如く、所望の低速度領域、例えば「−fr/12≦fd≦fr/12」については勾配のより大きい速度変換スケールを割り当て、その外側の中速度領域についてはより緩やかな勾配の速度変換スケールを割り当てるようにしてもよく、同図に示す複数段の速度変換スケールの勾配の切替制御を符号化演算部23で行なうようにすればよい。これにより低速度領域とその周辺部との速度関係にも若干、配慮した二次元カラー像が得られる。
さらに本発明に係る低速度域の強調表示法にあっては図9の実線に示す速度変換スケールを使うこともできる(同図の1点鎖線は従来の血流解析時のスケールである)。この速度変換スケールは予め符号化演算部23に例えば記憶テーブルの形で記憶させているものである。低速度域として定めた、例えば−fr/8<fd<+fr/8の範囲では組織運動の方向毎に赤色から黄色に及び青色から水色に徐々に(すなわち連続的に)変化する色相の階調データに対応する速度表示コードが割り当てられている。しかし、平均化されたドプラ偏移周波数fd(すなわち組織の平均運動速度)がfd≧±fr/8に達すると、それまでの赤から黄または青から水色への連続変化する色相に変え、色相が全く連続しない特殊な表示色CL1,CL2の速度表示コードを一律に割り当てるものである。この特殊表示色CL1,CL2は、例えば赤系,青系の色相に一定の色相を混ぜて生成される色である。勿論、このときの速度しきい値は±fr/8に限定されず、変更可能な値である。これにより、予め定めた低速度域を超える組織の運動速度は不連続な色相に拠って一目で見分けが付くから、低速度域の強調表示と合せて診断のための画像観察の容易化が一層押し進められる。
さらに、本発明のカラー表示に係る速度表示コードの階調データは前述したように速度の大きさに応じて色相を変えるもののほか、速度の大きさに応じて赤(または青)の輝度を変化させるようにしてもよい。
さらにまた、前記実施例及びその変形例は必要に応じて従来の血流ドプライメージングを実施する超音波診断装置に適用することもできる。
(第2実施例)
次に本発明の第2実施例を図10〜図15に基づいて説明する。前述した第1実施例では低速度領域の表示能を向上させることを目的としていたが、この第2実施例の超音波診断装置は、かかる表示能向上に加えて、関心領域の正常/異常を見分ける診断を容易化させるものである。この目的を達成するため、この第2実施例の超音波診断装置は図10に示すように構成されている。
具体的には、この超音波診断装置は、被検体との間で超音波信号の送受信を担う超音波プローブ100と、この超音波プローブ100を駆動し且つ超音波プローブ100の受信信号を処理する装置本体101とを備える。
この内、超音波プローブ100は第1実施例と同様にフェーズド・アレイ形に形成されている。装置本体101は、この超音波プローブ100に接続された超音波送受信部110を備え、この出力側に位相検波器111,A/D変換器112,フィルタ113,運動速度解析部114,DSC115,カラー処理器116,D/A変換器117,及びカラーモニタ118が順次接続されている。
また、運動速度解析部114には、後述する組織運動のカラー画像の少なくとも一部をブランク処理するためのブランク制御器121が接続されている、このブランク制御器121には入力器122を介して検査者から必要な情報が与えられる。
上記超音波送受信部110は、与えられるレートパルスの周期で超音波プローブ100を駆動するとともに、超音波プローブ100からのエコー信号を整相加算する送受信回路110a、この送受信回路110aにラスタアドレスなどの必要な情報を与えるRPG(レートパルスジェネレータ)110b、及びBモード用画像信号を生成する包絡線検波器110cとを備え、第1実施例と同等に機能する。
送受信回路110aの出力側は位相検波器111,A/D変換器112,フィルタ113に順次接続されており、これらのユニットは第1実施例における位相検波部20,フィルタ部21(A/D変換器を含む)と同等に機能する。
周波数解析部114は、自己相関法などに拠り断層面の各サンプル点のドプラ周波数解析を行う周波数解析器114aを有するとともに、その解析結果に基づいて、各サンプル点の平均ドプラ周波数(平均速度)を演算する速度演算器114b,分散値(スペクトラムの乱れ度)を演算する分散演算器114c及び強さ(パワー)を演算するパワー演算器114dを備える。
速度演算器114bは本実施例では図11に示すように、CPU1140及びメモリ1141などを備えている。メモリ1141の所定記憶領域には図12に示す処理のプログラムが予め内蔵されており、速度演算器114bの起動と共に、係る処理が自動的に実行される。なお、この速度演算器114bは図12と同等に機能するようにアナログ,デジタルの電子回路などを組み合せて構成してもよい。
ブランク制御器121は入力器122から供給される信号を解読するとともに、その解読値に対応した、ブランク処理に必要な偏角値θのしきい値θthのしきい値信号Sθth及びスケール変換係数Kの計数信号SKを速度演算器11bに供給する。
DSC115は、包絡線検出波器110cから出力された白黒のBモード断層像の画像データと速度演算器114b,分散演算器114c,及びパワー演算器114dから出力されたTDI像の画像データとを入力し、Bモード像にTDI像を重畳(合成)したフレーム像データを形成する。このフレーム像データはカラー処理器116に送られる。カラー処理器116はTDI像の画素には速度表示コードに対応した色付けを行い、そのカラー化したフレーム像データをD/A変換器117を介してカラーモニタ118に送るようになっている。
ここで図12に基づいて速度演算器114bの処理を説明する。
速度演算器114bのCPU1140は、まずステップ200でブランク制御器121から供給されるしきい値信号Sθthを読み込む。次いでステップ201に移行してしきい値信号Sθthで指定されたしきい値θthを記憶する。速度演算器114bは、後述するように、周波数解析器114aの解析結果である平均ドプラ周波数(平均速度)の例えば自己相関係数Re,Im(複素数),Po(パワー)の内のRe,Imを入力して、組織の運動速度Vに対応する複素平面上の単位円上の点を表わす偏角θを求めるので(図13参照)、上記しきい値θthは図14に示す如く運動速度V(すなわちドプラ周波数)のしきい値Vthに相当する。
CPU1140は次いでステップ202に移行し、TDIの表示能強調用のスケール変換係数K(>1)を指定する係数信号SKをブランク制御器121から読み込む。そしてステップ203で係数信号SKに対応するスケール変換係数Kを記憶する。この係数K=1のときは血流速度解析時である。
次いで、ステップ204で、CPU1140は周波数解析器114aで解析された例えば自己相関係数Re,Imを入力し、ステップ205で前述した組織の運動速度Vに相当する偏角θを演算する。このときの偏角θは、スケール変換係数K=1、すなわち血流速度解析に相当する値であり、図14の1点鎖線dで示す直線(速度変換スケール)上を動く。同図は横軸に運動速度V、縦軸に赤(プローブに近付く運動方向)及び青(プローブから離れる運動方向)の階調データとしての輝度階調を表わす速度表示コードCDV(例えば8ビットの論理値データ)を各々とっている。同図上には、後述するように本発明に係る種々の直線、すなわち速度変換スケールを引けるが、前記直線dは血流解析時に相当する速度変換スケールである。この速度変換スケールdは周知の如く、折り返り速度±fr/2の範囲内で全ての速度Vに連続的に変化する速度表示コードCDVが一様に割り当てられる。
さらにステップ206では、CPU1140により、ステップ205で演算した偏角θがステップ201で設定したしきい値θthに対して、θ>θth(すなわち、V>Vth)か否かが判断される。この判断でYES(θ>θth)となる場合、ステップ207に移行してそのθ>θth(V>Vth)となった運動速度を有する画素に対するブランク処理が指令される。このブランク処理は、その画素の速度表示コードCDVを強制的にV=0のときの速度表示コードCDV=「0,0,…,0」(ブランクコード)に設定する処理である。
このブランク指令が終ったとき、又はステップ206の判断でNO(θ≦θth)となるときは、ステップ208に処理が進められる。このステップ208ではステップ203で設定されたスケール変換係数K(>1)にステップ205で演算した偏角値θが掛けられる。
この係数の乗算「K・θ」によって偏角値θ、すなわち組織の運動速度VがTDI像の低速度域の強調表示態様に変換されるようになる。例えばK=K1(>1;例えば「4」)となる所定値にする速度変換スケールは図14上で血流解析時に相当する直線dからaに移る。既にブランキング処理されている偏角値θ(=0)に係数Kを乗じてもその値は零であるからTDI用の一例を示す速度変換スケールaは図14に示すように、V=±Va(例えば±fr/8)の間で表示色「赤」及び「青」の設定輝度階調全部の速度表示コードを使う直線で表わされ、Va≧|V|≧Vthの範囲では最大輝度に対応する速度表示コード±CDV(MAX)で飽和した形となり、V=±Vthで原点を通る横軸、すなわち黒の表示色に対応まで立ち下がる。
また別の例として係数K=K2(>K1:例えば「8」),K=K3(>K2:例えば「16」)を偏角値θに乗じたときの速度変換スケールは図14上の特性線b,cのようになる。速度変換スケールbはV=±Vb(例えば±fr/12)の間で直線的に増減し、Vb≧|V|≧Vthの間で飽和して赤,青の最大輝度の速度表示コード±CDV(MAX)に設定される。もう一方の速度変換スケールcの場合、V=±Vc(例えば±fr/16)の間で同様に直線的に増減し、Vc≧|V|≧Vthの間で飽和して最大輝度の速度表示コード±CDV(MAX)に設定される。両スケールb,c共に|V|≧Vthの範囲ではブランク処理により立ち下がる。このように、乗じる係数Kの値に比例して速度変換スケールの直線部分が急峻になる。このためスケール変換係数Kの値に比例してその低速度域の階調性のある部分の表示能が強調されることになる。
このようにTDI表示のためのスケール変換係数Kの乗算が終ると、CPU1140は図12のステップ209に移って、K倍された偏角値θ(すなわち速度V)の速度表示コードCDVへの変換を行う。この変換は予めメモリ1141に格納してある偏角値θを速度表示コードCDV(例えば8ビット値)の対応を示す記憶テーブルを参照することで行われる。次いでステップ210では、変換した速度表示コードCDVをDSC115に出力する。
さらにステップ211で再びしきい値信号Sθth及び係数信号SKのステップ212で偏角値θのしきい値θth(Vth)又は/及び係数Kを変更するか否かを判断し、変更する場合はステップ201又は203の処理に戻る。しきい値θthや係数Kを変更しないでブランク処理を続ける場合、ステップ213を経てステップ204に戻る。ブランク制御は以上のようにしてなされる。
超音波プローブ100より生体内に超音波ビームを送信して得られたエコー信号は再びプローブ100により受信される。このエコー信号はプローブ100で電気量の受信信号に変換され、送受信回路11aで受信処理され、さらに位相検波器111で直交検波される。検波により検出されたドプラ信号はフィルタ113により組織運動に相当する周波数成分を含む成分が抽出され、クラッタ成分を含んだままの当該ドプラ信号が周波数解析器114aに送られる。この周波数解析結果は、速度演算器114b,分散演算器114c,パワー演算器114dに送られて、組織運動に関する目的とする量が演算される。パワー演算器114dでは「K・log10Po」の処理が行われる。
今、図14に示す如く、速度演算器114bに、入力器122およびブランク制御器121を介して、偏角値θに対するしきい値θth(すなわち組織運動Vに対する速度のしきい値Vth)が指令されており、TDI表示に係るスケール変換係数K=K2(直線b)が指令されているとする。この場合、図14上でのコード変換特性全体は一点鎖線mbで表わされる。
このため、TDIの強調表示のために演算された組織運動の平均速度(K・θの値)が|V|<±Vbの低速度範囲に入るとき、許容される速度表示コードCDV全体が使われる。速度Vが±Vb≦|V|<±Vthの範囲に収まるときは±CDV(MAX)の最高輝度のコードで飽和し、±Vth≦|V|となる速度はブランクコードが割り当てられる。
このようにブランク処理された平均速度データを含む運動速度解析結果はDSC115に送られる。このDSC115には包絡線検波器110cからBモード像データも送られており、このBモード像に運動速度情報が重畳される。この重畳されたフレーム像データはカラー処理器116で色付けされ、カラーモニタ118に表示される。この表示像は白黒のBモード像を背景として、これに組織運動のカラー像などの運動速度情報が重畳したものであるが、指定速度Vth以上の速度値を有する画素は図12のステップ207によりブランク処理されているので、その画素のカラー像は表示されない。すなわち、±Vth≦|V|となる高速度域の画素にはカラー情報が上書きされず、背景像のBモード像が検査者に見えることになる。
このため、高速度域をカットするために指定する速度しきい値Vth(具体的には偏角θのしきい値θth)を適宜な値に設定することで、心筋などの組織の運動の階調性の無い最高輝度部分は必要最小限の面積(画素)に抑えることができる。これにより、見易い画面となり、組織運動の解析にとっては無用な最高輝度部分が診断の邪魔になるという事態を殆ど回避でき、診断の能率(診断時間,診断労力)向上に寄与できる。
またそのような高輝度像に代えて背景像(白黒Bモード像)が現われるので、かえって診断に有効な情報が増えるという利点がある。
当然に、低速度域を強調する速度変換スケールa,b,c(図14参照)を用いているので、壊死した組織の遅い運動速度を容易に見分けることができ、関心部位の正常/異常の診断能が向上する。
さらに、本実施例では運動速度Vのしきい値Vthを速度変換スケールa(…c)とは独立して設定でき、モニタ画面上に残す赤、青の最高輝度±CDV(MAX)の部分を、同一の速度変換スケールa(…c)(すなわち、同一の低速度強調機能)に対して適宜に調整できる。このため、速度しきい値Vth及びスケール変換係数Kの選択具合によっては図15の1点鎖線m1で示すように、最高階調の輝度領域をモニタ画面上に残すこともできるし、同図実線m2で示すように最高階調の輝度まで達しない内にTDIカラー像のみをブランクにしてしまうこともできる。
本実施例ではさらに組織運動解析用に複数の速度変換スケールa…cを予め用意し、それらを適宜、選択/切換できるようになっている(図12中ステップ202,211参照)。このため非常に汎用性が高められる。なお、図14上の仮想線ma,mcは速度しきい値Vthを一定としたときの速度変換特性の別の例を示している。
(第3実施例)
本発明の第3実施例を図16〜図20に基づいて説明する。この第3実施例に係る超音波診断装置は前述した組織運動の高速域のブランク処理を、その低速域強調の速度表示コードを演算した後に行うようにするものである。なお、この第3実施例以降の実施例では第2実施例と同一又は同等の構成要素には同一符号を用いてその説明を省略又は簡略化する。
図16に第3実施例の超音波診断装置のブロック構成を示す。運動速度解析部114とDSC115との間にはブランク処理器125が介挿されている。ブランク制御器121からは前述した係数信号SKのみが前述した速度演算器114bに供給される一方で、ブランク処理器125に速度表示コードのコードしきい値信号SCDthが供給されるようになっている。
ブランク制御器121はCPU1210及びメモリ1211を含むコンピュータ機能を有する。CPU1210は図17に示す一連の処理を行う。速度演算器114bのCPU1140は本実施例では図18に示す一連の処理を行う。さらにブランク処理器125もCPU1250及びメモリ1251を含み、CPU1250は図19に示す一連の処理を行う。
最初にブランク制御器121の動作を図17で説明する。CPU1210はステップ250,251にて入力器122から読み込んだ操作信号からスケール変換係数Kを算出する。そしてこの算出係数Kに対応した係数信号SKを速度演算器114bに出力する(ステップ252)。この後ステップ253で、血流解析時に相当する速度変換スケールをK倍したときの、最高輝度の速度表示コード±CDV(MAX)に対応する速度±V(MAX)を演算する(図19参照)。なお、この±V(MAX)の演算は速度演算部114bで行わせて、その演算値を送り返してもらうようにしてもよい。
次いでCPUはステップ254で入力器122からの操作信号を読み込み、ステップ255で検査者が欲している所望の速度しきい値Vthを算出する(図20参照)。ここでの速度しきい値は直接的には偏角θに関係しない。というのは、この速度しきい値Vthは速度演算器114bから出力される、既に変換された速度表示コードCDVに対するしきい値を与えようとするものだからである。
上記速度しきい値Vthを用いて、次のステップ256では|Vth|≦VMAXか否かが判断される。この判断でYES、すなわち−VMAX≦Vth≦+VMAXになるときはそのしきい値Vthに対応する速度表示コードのしきい値CDth(図20参照)を演算し(ステップ257)、次いでこのしきい値CDthに対応したコードしきい値信号SCDthをブランク処理器125に出力する(ステップ258)。これに対し、ステップ256の判断でNO、すなわち|Vth|>VMAXとなるときは、ステップ259で、ブランク処理が不可である旨の表示をDSC115を介してモニタ118に表示させる(図16の信号SUN参照)。
ステップ259及び前記ステップ258の処理後、ステップ260で再び入力器122からの操作信号の読込みを試み、ステップ261で検査者がスケール変換係数K又は/及び速度しきい値Vthの変更を欲しているか否かを判断する。この判断でYES(変更)のときは、前記ステップ251又は255に戻り上述した処理を繰り返す。さらにステップ261でNO(変更しない)となるときは、ステップ262で処理終了か否かを判断し、処理継続の場合ステップ260〜262の処理を行いながら待機する。
続いて、速度演算器114bの動作を図18に示す。この動作は前述した図12の一連の処理の中の対応する符号部分と同一又は同等であって、ステップ200,201,206及び207を除いたものである。これにより、ブランク制御器121から指令されたスケール変換係数Kに応答してリアルタイムに、低速域を強調した速度表示コードCDVがブランク処理器125に出力される。
さらにブランク処理器125の動作を図19に基づき説明する。この処理器125のCPU1250はまず、ステップ270でブランク処理器121から供給されるコードしきい値信号SCDthを読み込み、ステップ271で速度表示コードのしきい値CDthを設定する。次いでステップ272で速度演算器114bからの速度表示コードCDVを読み込み、ステップ273で|CDV|>CDthか否かを判断する。この判断がYES(送られてきたコードCDVの絶対値がしきい値CDthを超えている)のとき、ステップ274に移ってその速度表示コードCDVにブランク処理を施す。これにより|CDV|>CDthとなる画素の速度Vにはブランクコードが強制的に割り当てられる。
ステップ273でNO、すなわち|CDV|≦CDthとなるとき、及びステップ274でブランク処理を終えた速度表示コード(ブランクコードを含むコード)CDV*は、次いで、DSC115に出力される(ステップ275)。
CPU1250は次いでステップ276にてブランク処理器121から供給されているかもしれないコードしきい値信号SCDthの読込みを試み、ステップ277にてしきい値CDthの変更を欲しているか否かを判断する。しきい値CDthを変更する場合はステップ271に戻り、変更しない場合はステップ278で処理終了か否かを判断し、終了しないときはステップ272に戻って上述した処理を繰り返す。
なお、このブランク処理器125は特に図示していないが、速度の分散値及び/又はパワー値を単独で観察するときは、これらの値を直接DSC115に供給することともに、速度Vと併用して観察するときは、速度V(すなわち速度表示コードCDV)を優先し、|CDv>CDthとなる画素をブランク処理するようになっている。それらの処理は図示しないコンソールからの指令信号Sconに基づいて行われる。
ブランク制御器121,速度演算器114b,ブランク処理器125は以上のように動作するので、図20に示す如く、検査者が指令したブランク処理のしきい値Vthが、組織運動の低速度域を強調表示したときの最高階調度に対応する速度±Vthの間に入っているときのみ、速度しきい値±Vthを超える速度の画素が自動的にブランクされる。これにより前述した第2実施例と同等の作用効果が得られるほか、スケール変換係数Kを変更する場合でもブランク処理は固定できるという利点がある。
但し、本実施例では図20で±VMAX以降の速度表示コードCVVには階調性が無いので、検査者が±VMAXを超えるしきい値±Vthを指定したとしても、検査者にその旨の告知があるだけでブランク処理はなされない。これにより検査者は低速域強調表示における±VMAXが何処にあるかに特別な注意を払わなくても自由に±Vthの値を指令でき、操作が容易になる。
なお、このブランク処理器125の機能は、図21に示す如く、DSC130に含めてもよい。この場合、コードしきい値信号SCDth及びその他の制御信号Sun,SconはDSC130に供給される。DSC130は前述と同様に速度表示コードCDvを速度しきい値Vthに対応するコードしきい値CDthでブランク処理を行うとともに、組織運動情報の画像データとBモード像データとを重畳する。これにより、速度演算出力CDvの階調性を持った低速域に適宜な速度しきい値Vth(CDth)を設定することができ、第3実施例と同等のブランク作用及び効果が得られる。
(第4実施例)
以上説明した第2〜第3実施例は、何れも低速度強調表示のための速度変換スケールに無関係にブランク処理のしきい値を設定できるものであったが、速度変換スケールの設定に連動してしきい値(すなわちブランク域)を決めることもできる。以下の実施例ではそのような超音波診断装置を例示する。
本発明の第4実施例を図22〜図24を参照して説明する。
図22に示す超音波診断装置は前述した速度演算器114bを備えており、そのCPU1140は図23に示す一連の処理を行うようになっている。ブランク制御器121からは低速域強調表示用の係数信号SKのみが供給されるようになっている。
図23において、速度演算器114bのCPU1140はステップ300、301の処理(図12のステップ202、203と同じ処理)を行った後、ステップ302で速度変換スケール(図24の直線a…c参照)の最高階調度に相当するコードしきい値±CDV(MAX)を演算する。その後、ステップ303、304の処理(図12のステップ204、205と同じ処理)を行う。この図23の処理ではステップ304で偏角θが求まると、直ちにステップ305、306の処理(図12のステップ208、209と同じ処理)を実行する。次いでCPU1140はステップ307に移行し、コードしきい値±CDV(MAX)を用いて、速度表示コードCDVが|CDV|<CDV(MAX)か否かを判断する。
この判断は最高階調度に対応する速度以上の組織運動はブランク処理しようとする趣旨に基づくもので、したがってK倍した後のスケールの最高階調度によってブランク処理する速度しきい値Vthが自動的に決まってしまう。換言すれば、低速度強調用の速度変換スケールに連動して速度しきい値が決まることになる。例えば図24の例ではスケール変換係数K=K1(>1)のときの速度変換スケールaの場合、速度しきい値±Vth−1に、K=K2(>K1)のときのスケールbの場合、速度しきい値±Vth−2に、さらにK=K3(>K2)のときのスケールcの場合、速度しきい値±Vth−3に各々、連動して決まる。
このステップ307の判断でYES(|CDV|<CDV(MAX))となるときにはステップ309に移行して、そのままのコード値を有する速度表示コードCDVをDSC115に出力する。しかし、NO(|CDV|≧CDV(MAX))となるとき、すなわち求めた速度表示コードCDVが赤又は青の輝度の最高階調度に達している場合、ステップ308で速度表示コードCDVのコード値=ブランクコードに強制設定する。このようにブランク処理されたコードCDVはステップ309でやはりDSC115に出力される。この結果、例えば±CDV(MAX)=±128のとき、CDV=±127まではブランク処理されないが、CDV=±128のときはブランク処理される。これは図24に示すように最高階調度±CDV(MAX)からCDV=0に立ち下がる特性になる。
次いでCPU1140はステップ310〜312の処理を、図12のステップ211〜213と同じに行う。
以上のブランク処理によって、組織運動の低速域強調表示のための速度変換スケールa(…c)を任意に選択/切換できるとともに、各スケールa(…c)に連動して決まる速度値Vth以上の速度の画素は自動的にブランクされ、背景像が現われる。
したがって、この実施例によっても前述した低速域強調表示及びブランク処理の利点を良好に享受できる。また検査者が入力器122から指令するのはスケール変換係数Kだけで済む利点もある。
なお、上記実施例ではブランク処理のしきい値を±CDV(MAX)の最高階調に設定したが、必要に応じて、これより低い適宜なコード値に設定することもでき、その場合にもそのコード値に連動して速度しきい値が自動的に決まり、それ以上の速度のカラー画素のみは同様にブランクされる。
(第5実施例)
続いて本発明の第5実施例を図25,26を参照して説明する。
この実施例では図25に示す如く、組織運動解析部114とDSC115との間に図16と同様に別個のブランク処理器131を介挿し、図26に示すステップを含む処理をそのCPU(図示せず)で実行させるようにしている。ブランク制御器121はここではコードしきい値CDthを表わすしきい値信号SCDthブランク処理器131に与える。
ブランク処理器131は図26に示すように、コードしきい値信号SCDthを読み込み、対応するコードしきい値CDth(ここでは例えば前記実施例と同様に±CDV(MAX))を設定する(ステップ320,321)。次いで、演算された速度表示コードCDVが読み込まれ、|CDV|<CDthか否かが判断される(ステップ323,324)。|CDV|=CDthとなるときはブランク処理される(ステップ325)。
したがって、ブランクする速度範囲を速度変換スケールに連動させる場合、平均ドプラ速度の表示コードを演算した後でも、コードしきい値を適宜に決めてやることで容易に実施でき、図24と同一の作用効果が得られる。
なお、この実施例においてコードしきい値SCDthは速度演算器114bで演算してブランク処理器131に与えるようにしてもよい。
またなお、上述したブランク処理器131の機能を表示系としてのDSC115の中に一体に含めて実施することもできる(図21参照;但し、この場合しきい値設定の可否に関する制御信号SUNの供給は不要である)。
さらに前記第2〜第5実施例及びその変形例では速度表示コードCDVを組織運動の方向を識別する赤色及び青色の輝度の階調として表わしたが、速度表示コードCDVはそのほかにも例えば色相のグラデーションで表わすようにしてもよい。