JP4346147B2 - 超音波診断装置および超音波診断装置の作動方法 - Google Patents

超音波診断装置および超音波診断装置の作動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波診断装置に係り、特に組織構造を表すBモードの画像に、ドップラモードで検出した血流情報をカラーで重ねてリアルタイムに表示する、カラーフローマッピング機能を有する超音波診断装置およびこのような超音波診断装置の画像生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波の医学的な応用として、超音波パルス反射法を用いた生体の軟部組織の断層像を得るための超音波診断装置がよく知られている。この超音波診断装置による検査は、無侵襲検査法であり、他の医用診断装置例えば、X線診断装置、X線CT、MRI、核医学装置などに比べて、リアルタイム表示が可能、装置が小形で安価、放射線被爆がなく安全性が高いなどの特徴を有している。さらに超音波診断装置は、超音波ドップラ法による血流イメージングが可能であり、駆出量や心拍出量などの心機能計測などの種々の診断支援機能の充実にも著しいものがある。
この超音波診断装置における受信エコー信号の表示方法は、いくつかの方法に分類されている。その一つはAモードと称されている。Aモードは現在ではあまり使われなくなったが、超音波診断装置の基本となるもので、1方向に対して超音波を送受信し、横軸にエコー信号の到着する時間すなわち超音波プローブからの距離をとり、縦軸にエコー信号の振幅(amplitude)を表示する方法である。この振幅に由来してAモードと称している。二つめは、最も一般的な表示方法としてのBモードである。Bモードは、体内組織の断面を超音波ビームで走査し、各超音波ビームについてエコーの振幅に応じて輝度(brightness)を変えることにより、組織構造を断面像(断層像)として表示する方法であり、超音波断層法とも称されている。輝度のBに由来してBモードと称しており、組織の断面像(断層像)をBモード像と言う。三つめは、特定部位が時間経過とともにどのように動くかを表示するMモードである。Mモードは、超音波ビームの線上にある心臓の弁や心筋などの動き(motion)を分かり易く表示するための方法であり、縦軸に超音波プローブからの距離をとり、横軸を経過時間として、エコーの強度を輝度変調して表示するもので、心臓の弁や心筋などが時間経過につれてどのように動いているかがわかる。動きのMに由来してMモードと称している。
【0003】
さらに、超音波のドプラ効果を利用して血流速度を検出し、血流をカラーで表示するカラードプラ法がある。この方法は、血流の平均速度と速度のばらつき(分散)を自己相関法を用いて算出し、通常超音波プローブに向う方向の血流を赤で、遠ざかる方向の血流を青で、いずれも血流速度が早いほど明るく表示し、速度のばらつきが大きいほど黄色または緑を加えて表示するものであり、ここではこれをドプラモードと称するものとし、このドプラモードで得られる超音波画像は血流像である。そして、白黒のBモード像に血流情報をカラーで重ねて表示する方法をカラーフローマッピング(color flow mapping;以下CFMと略称する)あるいはカラードプラ断層法といい、ここではこれをCFMモードと称するものとする。このCFMモードは、通常一つの超音波プローブを用いて、超音波ビームを断層像を得るためとドプラ検波とに共用し、断層像の1フレーム描出とドプラ検波を交互に行っている。
【0004】
ところで、超音波診断装置において単位時間に収集される画像の枚数は、超音波のパルス繰返し周波数、走査密度、走査範囲などに依存して決まり、通常30枚(30フレーム/秒)程度となっている。しかし、より良質な画像とするためにフレーム数を向上させたいという要望があり、特にCFMモードのように、血流情報を表示する場合にはその要望が強かった。すなわち、CFMモードの場合には、周波数解析が必要となるため同一ラスタに対して複数個(例えば16個)の受信信号を必要とし、そのためBモードに比べて多くの画像生成時間を要することとなり、従ってフレームレートが低下する。そこで従来は、図4(a)に示すように、モニタ100に表示されている超音波画像101中の特に詳細に観察したい部位などに関心領域(region of interest;以下ROIと略称する)102を設定し、このROI102内をカラーフローマッピング領域(CFM領域)として、CFM領域内を走査してCFM画像を得るとともに、ROI102の幅で決定される領域を走査してBモード像を得るようにしていた。従って得られた画像は、図4(b)に示すように、ROI102の幅に合わせて視野幅を狭めた画像101aとなり、超音波ビームの走査範囲が狭くなった分フレーム数が上がって、ROI102の枠内により良質なCFM画像が表示されるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ROI102の幅で超音波像101aを表示した場合、白黒のBモード像の視野幅はROI102の幅と同じとなり、ROI102以外の視野幅部分は超音波ビームの走査がされないので、走査されない部分は当然表示されないこととなる。従って、診断している部位の形状や位置を把握することが困難になるという問題があった。また、ROI102の幅を狭くすればするほど、超音波画像のフレーム数を増加させて良質の画像を得ることが可能となるが、フレーム数を増加するとそれに相対してBモード像の視野幅が狭くなってしまい、診断時の情報が減るという問題に繋がっていた。本発明は、このような問題を解決することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波ドプラ効果を利用して得た血流情報を、Bモード画像にカラーで重ねて表示するカラーフローマッピング機能を有する超音波診断装置において、モニタにリアルタイムに表示されている超音波画像上に関心領域を設定することにより、設定した関心領域の幅に走査幅を制限して得たBモード画像にカラーフローマッピング画像を重畳した画像をリアルタイムに表示するとともに、前記関心領域の幅を所定の幅以下に設定したときに、所望の周期で再走査することにより関心領域の幅よりも広い幅のBモード画像を得て、これを前記モニタにリフレッシュ表示させるようにしたことを特徴とするものである。
このように、狭い関心領域の幅で走査したリアルタイムのカラーフローマッピング画像を表示させた場合に、所望の周期で再走査して関心領域の幅よりも広い走査幅のBモード画像を得、これをリフレッシュ表示させるようにしたので、フレーム数を増加させて良質のカラーフローマッピング画像を得るようにしながら、診断情報が低減されるのを回避して、診断している部位の形状や位置を十分把握することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、前記リフレッシュ表示させるBモード画像は、所定の時間に1回の割合で繰返し走査して得ることを特徴とするものである。
これにより、リフレッシュ表示させるBモード画像を適宜新しい画像に繰返し置き換えることができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、前記リフレッシュ表示させるBモード画像は、ECG信号に同期した走査によって得ることを特徴とするものである。
これにより、リフレッシュ表示させるBモード画像を同位相の画像とすることができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、前記関心領域を移動させたときに、移動直前に表示されていたカラーフローマッピング画像をフリーズして所定時間残像として表示させることを特徴とするものである。
これにより、リアルタイムで表示されている画像と残像との違いを明瞭にして、正確な診断情報を医師などの操作者へ提供することができる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、前記リフレッシュ表示させるBモード画像または前記所定時間残像として表示させる画像の輝度を、前記リアルタイムに表示される画像の輝度よりも低くすることを特徴とするものである。
これにより、関心領域の幅でリアルタイムに表示しているBモード画像および/またはカラーフローマッピング画像と、リフレッシュ表示させたBモード画像や残像として所定時間表示させる画像との違いを明瞭にして、正確な診断情報を医師などの操作者へ提供することができる。
【0008】
また、請求項6に記載の発明は、被検体内の血流情報を表すカラーフローマッピング画像と、被検体内の組織構造を表すBモード画像を重畳して表示する超音波診断装置の画像生成方法のための装置の作動方法において、
前記装置が超音波画像上に設定された関心領域を受け付けるステップと、
前記関心領域に基づいて決定されたカラーフローマッピング領域内を走査してカラーフローマッピング画像を生成するステップと、
前記関心領域に基づいて決定された第1領域内を走査してBモード画像を生成するステップと、
前記第1領域には含まれていない領域を含む第2領域内を走査してBモード画像を生成するステップと、
前記カラーフローマッピング画像、前記第1領域のBモード画像および前記第2領域のBモード画像を重畳した画像を表示するステップとを有し、
前記第2領域の走査は、前記第1領域の走査よりもフレームレートが低くなるように設定されていることを特徴とするものである。
これにより、カラーフローマッピング画像と第1領域のBモード画像に、第2領域のBモード画像を重畳した画像を生成することができる。そして、特に詳細に観察したい領域の走査のためにフレームレートをより高く割り当てることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態について、図1ないし図3を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態を示した系統図である。超音波プローブ1は、超音波診断装置本体に着脱可能に接続されるもので、先端部に複数の微少圧電素子が配列されており、被検体Pへ超音波パルスを放射するとともに、被検体P内から返ってくるエコーを受けて電気信号に変換するものである。この超音波プローブ1は、走査方式の異なるセクタプローブ、リニアプローブ、コンベックスプローブ等の中から任意に選択して使用することができる。また、超音波診断装置本体には、送信ユニット2、受信ユニット3、Bモードユニット4、カラードプラユニット5、デジタル・スキャン・コンバータ(以下DSCと略称する)ユニット6、制御ユニット7および表示器としてのカラーモニタ8などが設けられている。
【0013】
超音波プローブ1は、送信ユニット2と受信ユニット3に接続される。送信ユニット2は、クロック発生器21、レートパルス発生器22、送信遅延回路23、パルサ24を有しており、クロック発生器21から発振されたクロック信号に従って、レートパルス発生器22から超音波の送信レート(毎秒送信する超音波パルスの数)を決定するためのレートパルスが出力される。このレートパルスは、送信遅延回路23で超音波の指向性を決めるために必要な適当な遅延を受けて、パルサ24にトリガパルスとして与えられる。そして、トリガパルスに同期してパルサ24から超音波プローブ1の圧電素子に個別に、または近隣グループ単位で中心周波数foの高周波の信号パルスが印加される。この信号パルスを受けて、超音波プローブ1の圧電素子が機械的に振動し、これにより中心周波数foの超音波パルスが発生され、被検体Pへ放射される。
超音波プローブ1から被検体Pへ放射された超音波パルスは、生体内を伝播していき、伝播途中の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射して、エコーとして超音波プローブ1へ返ってくる。このエコーの振幅は、反射することになった当該不連続面での生体の音響インピーダンスの差に依存している。また、超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射したときのエコーは、ドップラ効果により当該移動体のビーム方向の速度成分に依存して周波数偏移を受けることになる。
【0014】
さて、エコーが超音波プローブ1に返ってくると、超音波プローブ先端の圧電素子が機械的に振動し、これにより圧電素子は微弱な電気信号を発生する。この電気信号は、受信ユニット3に取り込まれる。受信ユニット3は、プリアンプ31、受信遅延回路32、加算器33を有しており、エコーに伴う超音波プローブ1からの電気信号は先ずプリアンプ31で増幅される。増幅された電気信号は、受信遅延回路32で受信指向性を決めるために必要な例えば送信時とは逆の遅延を受けた後、加算器33で加算されることにより、受信指向性を持った1つのエコー信号が取得される。
このエコー信号は、Bモードユニット4とカラードプラユニット5とに供給される。なおここでは、本発明に係わりの深いBモードユニット4とカラードプラユニット5との2種類のユニットについてのみ説明するものとし、その他のモード例えばMモードやAモードなどのユニットを装備していて、それらにエコー信号が供給されるようになっていてもよいが、その説明は省略する。
【0015】
先ずBモードユニット4は、検波回路41、対数増幅器42、アナログデジタルコンバータ(A/D)43を有している。上述の受信ユニット3で取得されたエコー信号は、検波回路41に供給され検波されて包絡線信号となって対数増幅器42へ供給される。この包絡線信号はアナログ信号であり、これが対数増幅器42で対数増幅され、そしてアナログデジタルコンバータ43でデジタル信号に変換され、組織断層イメージの超音波画像(以下これをBモード像という)の信号が得られる。
【0016】
一方カラードプラユニット5は、ミキサ51、ローパスフィルタ52、アナログデジタルコンバータ(A/D)53、MTIフィルタ54、自己相関器55および演算部56を有している。ここでミキサ51とローパスフィルタ52とは、直交位相検波回路を構成し、受信ユニット3から供給されるエコー信号に、中心周波数foの参照信号とそれから90度移相した参照信号とをそれぞれ個別に掛け合わせ、この掛け合わせにより得られた信号それぞれから高周波成分を除去することにより、偏移周波数成分を持ったドプラ信号を取り出す。なお、このドプラ信号には、主に血球などの速い移動体での反射により周波数偏移を受けた高周波成分と、心臓壁などの遅い移動体での反射により周波数偏移を受けた低周波成分とが含まれている。
このドプラ信号はアナログデジタルコンバータ53に供給され、ここで1本の走査線に対して例えば0.5mm間隔に相当する所定のサンプリング周波数に従ってサンプリングして、デジタル信号に変換してから、MTIフィルタ(moving target indication filter)54へ送り込む。MTIフィルタ54は、ハイパスフィルタとして機能し、主に血流などの速い移動体の反射により周波数偏移を受けた高周波成分(血流成分)だけを通過させ、主に心臓壁などの遅い移動体での反射により周波数偏移を受けた低周波成分(クラッタ成分)を除去するものである。よって、MTIフィルタ54を通過して血流成分だけとなったドプラ信号は、自己相関器55によって周波数解析されて、血球による偏移周波数が求められる。さらに、この偏移周波数に基づいて、演算部56で血流速度(平均速度)とその分散および主に血流量(血球個数)を反映しているパワー(ドプラ信号の振幅の二乗)とをサンプル点毎に演算して、血流イメージの超音波画像(以下これをCFM画像という)の信号を得る。
【0017】
これらBモードユニット4で得た組織断層イメージすなわちBモード像の信号と、カラードプラユニット5で得た血流イメージの超音波画像すなわちCFM画像の信号とは、DSCユニット6へ送られる。このDSCユニット6は、フレームメモリ61、DSC処理部62、メモリ合成部63、カラー処理部64、デジタルアナログコンバータ(D/A)65、第2のフレームメモリ66および輝度制御回路67などを有している。そしてDSCユニット6の動作は、制御ユニット7からの制御信号によって制御され、制御ユニット7はシステム制御部71、ECG信号発生回路72、制御卓73などから構成されている。
さて、Bモードユニット4からのBモード像の信号と、カラードプラユニット5からのCFM画像の信号とは、DSCユニット6のフレームメモリ61に夫々一旦格納される。このフレームメモリ61に格納されている画像信号は、超音波走査に同期した信号なので、これをテレビ方式のカラーモニタ8に表示できるようにするために、DSC処理部62によって標準のテレビ走査に同期して読み出すことにより走査方式を変換してメモリ合成部63へ供給する。メモリ合成部63では、DSC処理部62から送られてくるBモード像の信号とCFM画像の信号とを、並べたり重ねるなどの処理を施すことによって1フレームの画像データを構築する。
メモリ合成部63で構築された1フレームの画像データは、カラー処理部64へ送られ、図示しないルックアップテーブルのカラーマップに従ってRGBなどの色信号に変換し、これをデジタルアナログコンバータ65でアナログ信号に戻してカラーモニタ8へ供給する。この結果、カラーモニタ8には、白黒のBモード像やBモード像を背景像としてCFM画像がカラーで表示される。このカラーモニタ8としては、CRTの他適宜の表示デバイスを用いることができる。なお、メモリ合成部63には第2のフレームメモリ66が接続されており、Bモード像やCFM画像を各別にまたはBモード像を背景像としたCFM画像などを格納することができるようになっている。
【0018】
さて、制御ユニット7は、オペレータからの各種の指示や情報を、超音波診断装置を構成する前述の各ユニットへ与えるもので、システム制御部71、ECG信号発生回路72、制御卓73などが設けられており、制御卓73にはキーボード73a、トラックボール73b、各種設定スイッチ73cなどが備えられている。システム制御部71は、予め設定してある所定の手順に従って超音波診断装置全体の動作を制御するもので、CPU(中央演算処理装置)や各種メモリなどを有している。すなわち、システム制御部71は制御卓73を介してオペレータの操作情報を読込み、超音波の送信、受信、表示、各種演算などの処理を管理したり変更したりする。
例えば、送受信における動作状態の制御は、送受信条件がモード別に制御される。そのため、図示しない送受信条件メモリに、予めモード別に、送受信焦点距離、送信周波数、送信音圧などを表すデータを記憶させてある。そこで、システム制御部71は制御卓73の各種設定スイッチ73cの中の一つであるモード切換えスイッチの状態を監視しながら、指定されたモード状態を判断し、当該モードに応じた送受信条件を送受信条件メモリから読み出して、該当するユニットなどへその送受信条件を指令する。具体的には、送信ユニット2のレートパルス発生器22に対して送信レートを決める駆動周波数などが指定され、送信遅延回路23に対してフォーカス点を決めるための遅延時間、送信振動素子の位置や数などが送信条件として指定される。一方、受信ユニット3の受信遅延回路32に対しては、フォーカス点に対応した遅延時間が受信条件として指定される。また、カラードプラユニット5に対しては、繰返し周波数、ドプラのデータ数などのパラメータが送信条件として伝達される。なお、どのモードが指定されているかの情報が、システム制御部71からDSCユニット6のメモリ合成部63に伝えられ、これによりメモリ合成部63において、指令モードの表示形態に対応した画素の選択が実施され、フレーム画像の再構築が行われる。
【0019】
さて、CFMモードによる血流像は、通常カラーモニタ8に白黒のBモード画像にカラーで重畳されて観察されるが、このとき、特に詳細に観察したい部位にROIを設定する。ROIの設定は、制御卓73に設けられている各種設定スイッチ73cの中のROI設定スイッチを操作して、カラーモニタ8に表示されている画像に所望の形状のROIを表示し、これをトラツクボール73bによって表示画面上の所望の位置へ移動することにより行われる。トラツクボール73bは、制御卓73の上面に突出するように設けられているボールを、オペレータが手で回転操作することにより、画面上のカーソルを移動させるポインティングデバイスであり、図示しない位置演算部に接続されている。そのため、ボールの回転により入力される相対座標を基に、画面上のカーソルを移動する際の位置情報が演算されるとともに、ROIの位置や範囲などが演算される。
【0020】
ところで、通常カラーモニタ8には、超音波プローブ1に設定された最大視野範囲すなわち最大走査幅の画像8aが表示される。例えば、超音波プローブ1がセクタ走査方式のもので、その最大走査幅が80度に設定されているものとすれば、図2(a)に示すように、カラーモニタ8に表示される画像8aも80度の広がりをもった扇形の画像となる。この画像は、白黒のBモード像のみでも、またBモード像にカラーのCFM画像を重ねて表示する場合でも同様であり、視野幅いっぱいに表示される。しかし、CFM画像の場合は前述のように、周波数解析を行うことから、同一ラスタに対して複数個の受信信号を必要とし、そのため、Bモード像に比べて多くの画像生成時間を要することとなって、フレームレートが低下する。すなわち、最大走査幅でCFM画像を表示すると、その画像は粗く質の劣ったものとなる。
そのため、血流部など特に詳細に観察したい部位にROI8bを設定して、超音波プローブ1の走査幅をROI8bの幅に制限し、ROI8bの枠内(これをCFM領域と称するものとする)を走査してCFMモードの信号を得るとともに、ROI8bの幅の範囲内(これはROI8bに基づいて決定された領域であり、これを第1領域と称するものとする)を走査してBモードの信号を得るようにする。このようにしてCFMモードのフレームレートを上げ、画像の質を向上させることができる。ここで、図2(a)で設定したROI8bの視野幅が例えば45度だったとすれば、図2(b)に示すように、カラーモニタ8に表示されるBモード像81aは、45度の広がりをもった扇形の画像となり、この画像81aに重ねてCFM領域8b内にCFM画像が表示され、1点鎖線で示す範囲には画像は表示されない。
【0021】
しかし、ROIの幅をあまり狭い幅に設定すると、CFM画像による血流の状況はよく観察できるようになるものの、第1領域を走査して得られる背景としてのBモード像の幅も狭くなって、診断時の情報が減り診断している部位の形状や位置を把握することが困難となる。そのため本発明では、ROI8bの幅を或る所定の幅よりも狭く設定したときに、第1領域すなわちROI8bの幅に含まれていない他の走査範囲のBモード像をリフレッシュ表示させるようにしている。すなわち、例えばROI8bの幅が30度以下に設定されたときに、再走査によりBモード像をリフレッシュ表示させるものとすれば、トラツクボール73bによって設定されたROI8bの幅をシステム制御部71で監視し、その幅が30度以下であれば、システム制御部71はECG信号発生回路72から生ずるECG信号のR波をタイミング信号として、この信号に同期させて、走査幅最大(例えば80度)のBモード像を1フレーム分だけ得るように制御して、その画像を一旦第2のフレームメモリ66に格納し、それを読み出してカラーモニタ8に表示させる。よって、図2(c)に示すように、30度以下のROI8bの幅でBモード像を背景としてCFM画像が重畳されたリアルタイムに表示される画像82aに対して、1心拍に1回の割合で再走査された走査幅最大のBモード像83aがリフレッシュ表示されるようになる。なお、リフレッシュ表示されるBモード像83aは、リアルタイムに表示される画像82aの領域すなわち第1領域を除いた領域(これは第1領域には含まれていない領域であり、これを第2領域と称するものとする)を走査して得ている。
【0022】
上述のような本発明の作用を整理すると、図3に示すようなフローチャートのようになる。すなわち、先ず超音波プローブ1に設定された最大走査幅の超音波画像8aを生成してカラーモニタ8に表示する(ST1)。次に、この超音波画像8aにROI(関心領域)8bを設定する(ST2)。これにより、ROI8bに基づいて決定されたCFM領域内を走査してCFM画像を生成する(ST3)。さらに、ROI8bに基づいて決定された第1領域内を走査してBモード画像81aを生成する(ST4)。続いて、ROI8bの幅が所定の幅以下か否かを判定し、所定の幅以下でなければST6へ進み、所定の幅以下ならばST7へ進む。ST6では、ST3およびST4で生成したCFM画像と第1領域のBモード画像とを重畳してカラーモニタ8に表示する。一方、ST7では、第1領域には含まれていない領域を含む第2領域内を走査してBモード画像83aを生成する。そしてST8へ進み、ST3、ST4およびST7で生成したCFM画像、第1領域のBモード画像および第2領域のBモード画像とを重畳してカラーモニタ8に表示する。なおここで、ST7で第2領域内を走査して生成するBモード画像のフレームレートを、ST4で第1領域を走査して生成するBモード画像のフレームレートよりも低くなるように設定したり、或いは、所定のタイミング信号が入力されたときに、ST7において第2領域内を走査してBモード画像83aを生成するようにしてもよい。
【0023】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。例えば、このリフレッシュ表示されるBモード像83aは、輝度制御回路67によって、リアルタイムに表示されているROI8bの枠内のCFM画像82aに比べて、輝度のレベルを例えば30%〜50%低下させるようにする。このようにすることによって、リアルタイム表示されるROI8bの幅のBモード像および/またはCFM領域内のCFM画像による画像82aと、リフレッシュ表示される走査幅最大のBモード像83aとの違いを明らかにする。また本発明では、ROI8bを移動させた場合には、移動後のリアルタイムに表示される画像に重ねて、ROI8bを移動させる寸前の画像を残像として表示することもできる。この場合も、システム制御部71の監視下で、ROI8bが移動したことを認識すると、ROI8bの移動直前のROI8bの幅の画像をフリーズし、このフリーズされた画像(すなわち残像)の輝度を、輝度制御回路67によって、その後リアルタイムに表示される画像の輝度よりも30%〜50%低下させる。そしてこの残像は、例えば再走査によるBモード像83aがリフレッシュ表示されるまで保持される。
さらに、Bモード像のリフレッシュ表示は、ECG信号発生回路72から生ずるECG信号に同期させて1心拍に1回の割合で再走査して行うことに限るものではなく、ECG信号発生回路72に代えて内部時計回路を備えておき、この内部時計に同期させて例えば1秒間に1回の割合で再走査して得たBモード像をリフレッシュ表示するように制御してもよい。また、Bモード像をリフレッシュ表示させるようにするROIの幅は30度以下に限ることなく、適宜の角度に設定すればよい。そして、リフレッシュ表示させるBモード像83aの走査幅は、超音波プローブ1の最大走査幅に限ることはなく、ROI8bの幅よりも広い適宜の範囲の幅であればよい。
【0024】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、狭い関心領域の幅で走査したカラーフローマッピング画像をリアルタイムに表示する場合に、所定の周期で再走査して得た関心領域の幅よりも広い視野幅のBモード画像をリフレッシュ表示させることにより、フレーム数を増加させて良質のカラーフローマッピング画像を得ながら、診断情報が低減されるのを回避して、診断している部位の形状や位置を十分把握することのできる超音波診断装置および超音波診断装置の画像生成方法が提供される。
また、リアルタイムで走査している画像に対して、リフレッシュ表示させたBモード画像や残像の輝度を低くして表示するので、両者の画像の違いが明瞭になり、さらにリフレッシュ表示させるBモード画像は、所定のタイミングで繰返し新しい画像に置き換えることができるとともに、置き換える画像を同位相の画像とすることができるので、正確な診断情報を医師などの操作者へ提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る 超音波診断装置の一実施の形態を示した系統図である。
【図2】本発明の作用を説明するために示した説明図である。
【図3】本発明の作用を説明するために示したフローチャートである。
【図4】従来の超音波診断装置の問題点を説明するために示した説明図である。
【符号の説明】
1 超音波プローブ
2 送信ユニット
3 受信ユニット
4 Bモードユニット
5 カラードプラユニット
6 デジタル・走査・コンバータ(DSC)ユニット
7 制御ユニット
71 システム制御部
72 ECG信号発生回路
73 操作卓
73a キーボード
73b トラツクボール
73c 設定スイッチ
8 カラーモニタ

Claims (6)

  1. 超音波ドプラ効果を利用して得た血流情報を、Bモード画像にカラーで重ねて表示するカラーフローマッピング機能を有する超音波診断装置において、
    モニタにリアルタイムに表示されている超音波画像上に関心領域を設定することにより、設定した関心領域の幅に走査幅を制限して得たBモード画像にカラーフローマッピング画像を重畳した画像をリアルタイムに表示するとともに、前記関心領域の幅を所定の幅以下に設定したときに、所望の周期で再走査することにより関心領域の幅よりも広い幅のBモード画像を得て、これを前記モニタにリフレッシュ表示させるようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記リフレッシュ表示させるBモード画像は、所定の時間に1回の割合で繰返し走査して得ることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  3. 前記リフレッシュ表示させるBモード画像は、ECG信号に同期した走査によって得ることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  4. 前記関心領域を移動させたときに、移動直前に表示されていたカラーフローマッピング画像をフリーズして所定時間残像として表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  5. 前記リフレッシュ表示させるBモード画像または前記所定時間残像として表示させる画像の輝度を、前記リアルタイムに表示される画像の輝度よりも低くすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
  6. 被検体内の血流情報を表すカラーフローマッピング画像と、被検体内の組織構造を表すBモード画像を重畳して表示する超音波診断装置の画像生成方法のための装置の作動方法において、
    前記装置が超音波画像上に設定された関心領域を受け付けるステップと、
    前記関心領域に基づいて決定されたカラーフローマッピング領域内を走査してカラーフローマッピング画像を生成するステップと、
    前記関心領域に基づいて決定された第1領域内を走査してBモード画像を生成するステップと、
    前記第1領域には含まれていない領域を含む第2領域内を走査してBモード画像を生成するステップと、
    前記カラーフローマッピング画像、前記第1領域のBモード画像および前記第2領域のBモード画像を重畳した画像を表示するステップとを有し、
    前記第2領域の走査は、前記第1領域の走査よりもフレームレートが低くなるように設定されていることを特徴とする超音波診断装置の作動方法。
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