JP5993712B2 - 透明導電膜基材用ポリエステルフィルムおよび透明導電フィルム - Google Patents

透明導電膜基材用ポリエステルフィルムおよび透明導電フィルム Download PDF

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Description

本発明はタッチパネル用の構成基材である、パターン化された透明導電層の基材として用いられるポリエステルフィルムおよび透明導電フィルムに関するものであり、積層された透明導電層のエッチング時に高精彩なエッチングが可能であり、透明導電層の結晶化工程後でも透明導電層に欠陥が発生しない透明導電膜基材用ポリエステルフィルムおよび透明導電フィルムに関するものである。
従来、タッチパネル用途においては、位置検出方法により、抵抗膜方式、静電容量方式等の各種方式が採用されている。それらの中でも、多点検出が可能で、光線透過率が高いこと、かつ分解能が高く応答速度が速いことが特徴である静電容量方式の普及が増加する傾向にある。静電容量方式のタッチパネルには表面型と投影型の2つの方式がある。表面型はカバー、透明導電層、ガラス基板の3層から成る構成となっており、投影型は、ガラスやプラスチック製のフィルム、透明電極層、演算処理を行うICを搭載した基板層から構成される。
透明導電性積層体の製造工程においては、パターニング工程を経てから、加熱加工されるのが一般的である。まずは、透明導電性膜を形成するために、スパッタリング法によりITO膜を形成する。その後、フォトレジスト法などにより、ITO膜をパターン化し、150℃程度の温度で熱処理してITO膜を結晶化させ、パターン化された透明導電積層体を得る。
透明導電積層体のパターン化された箇所については、最終タッチパネル部材に仕上げた際に、ITO膜とその下の層であるポリエステル基材層との間の光学特性差に起因して筋状に見えることがある。特に蛍光灯などの反射光にかざした場合にパターン部の筋が顕著に見られ、タッチパネルディスプレイ最終製品に仕上げた場合の外観品位を落ちることとなるため、近年はITO膜のパターン幅がより狭く設計される傾向にある。
ポリエステルフィルム基材には、通常、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として粒子を配合している。粒子をより多く添加し、ポリエステルフィルム基材の表面粗さを高く設計すれば、該基材の加工時のハンドリング性は上昇するが、ITOパターン部分に粒子の凝集体が存在する場合、フォトレジスト法によるITO層の一様なパターン化に悪影響を及ぼすことがある。特に近年のパターン幅がより狭く設計されたタイプの透明導電積層体では、パターン化不良の不具合が頻発する傾向にあった。一方、ポリエステル基材に粒子を配合しないと、各工程でのロールパスをフィルムが通過する際に発生する傷がフィルム全面に発生し、良好な外観を有する透明導電積層体を加工することは極めて困難である。
特開2007−200823号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、フォトレジスト法などによりITO膜をパターン化する際、パターン幅がより狭く設計されたタイプの透明導電積層体に使用されたときでも、パターン化不良等の不具合が発生しない、透明導電膜基材として好適に使用できるポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定構成のポリエステルフィルムによれば上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一方の面の表面粗度最大粗さ(Rt)が10nm以上68nm以下であり、平均粒径が0.001μm〜1μmの酸化アルミニウムを含むことを特徴とする透明導電膜基材用ポリエステルフィルム、および当該ポリエステルフィルムの表面にパターニングされた透明導電膜が積層された透明導電フィルムであり、前記パターニングの模様の最細部の幅が15μm以下であることを特徴とする透明導電フィルムに存する。
本発明の透明導電膜基材用ポリエステルフィルムおよび透明導電フィルムによれば、フォトレジスト法などによりITO膜をパターン化する際、パターン幅がより狭く設計されたタイプの透明導電積層体に使用されたときでも、パターン化不良等の不具合が発生しない、透明導電膜基材として好適に使用できる材料を提供することができ、その工業的価値は高い。
本発明におけるポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上の多層フィルムであることが好ましい。本発明にいうポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押し出される、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、必要に応じ、縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト(PEN)等が例示される。
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノーネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
本発明のフィルムの両最表層は、オリゴマー(環状三量体)含有量が0.5重量%以下であるポリエステルを60%以上、さらには70%以上、特に80%以上により構成されることが好ましい。オリゴマー含有量が0.5重量%を超えるポリエステルを使用した場合、もしくは当該ポリエステルの構成比が60%未満である場合、積層ポリエステルが150℃条件下での長時間の熱処理や、高い張力がかかる条件下でのスパッタリング工程や、高温高湿雰囲気下での耐久性試験など、過酷な条件下での加工工程で使用される際、フィルムヘーズが大きく上昇し、製品として加工した後に光学特性・視認性の点で光学部材用としては適さない可能性がある。
本発明のフィルムは、その両最表層の厚みが4μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは6μm以上である。両最表層の厚みが4μm未満の場合、オリゴマー(環状三量体)含有量が少ない最表層のオリゴマー析出封止効果が薄れてしまうこととなる。
本発明のフィルムの少なくとも片側の最大粗さ(Rt)は10nm以上300nm以下であることを必須の条件とし、より好ましくは最大粗さ(Rt)が10nm以上150nm以下である。最大粗さ(Rt)が10nm未満の場合は表面が平滑すぎて、ポリエステルフィルムの製膜時にキズが発生する可能性が高く、一方、300nmを超える場合は、パターン化した後の透明導電膜上で、特に細くパターン化された箇所で、透明導電層の結晶化工程で配線の断線が発生する。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステルフィルム中に配合する粒子の平均粒径としては、特に限定されるものではないが、通常0.001μm〜1μm、好ましくは0.001μm〜0.8μm、さらに好ましくは0.001μm〜0.5μmの範囲である。平均粒径が0.001μm未満の粒子を用いた場合には、充分な易滑性の付与が出来ないため、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。また、平均粒径が1μmを超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて本特許で請求する最大粗さを満たせない可能性が高い。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.0005〜0.5重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0005重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合がありフィルム加工時に傷等の外観不良が生じる。一方、0.5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
本発明のポリエステルフィルムは延伸工程中および、またはその後のフィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離形性等の機能を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したりコロナ処理等の表面処理を施したりしてもよい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、その上に加工される層との密着性の向上、加工時の滑り性向上などを目的として塗布層を設けてもよい。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との接着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜で均一な塗工を行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
また、本発明のフィルムの塗布層は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
また、必要に応じ、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となることがある。
塗布層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
また、塗布層は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、例えば、タッチパネル用等、長時間、高温雰囲気下に晒された後であっても、高度な透明性が要求される場合がある。かかる観点より、タッチパネル用部材として対応するためには、熱処理(150℃、90分間)前後におけるフィルムヘーズ変化率(ΔH)が0.5%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.3%以下、もっとも好ましくは0.1%以下がよい。ΔHが0.5%を超える場合には、フィルムヘーズ上昇に伴い視認性が低下し、例えば、タッチパネル用等、高度な視認性が必要とされる用途に不適当となる場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、遮光剤、マット化剤、および染料、顔料などの着色剤等を配合してもよい。また、必要に応じ、フィルムの滑り性や耐摩耗性を改良する目的などのために、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを配合することもできる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを熱処理(150℃、90分間)した前後におけるフィルム表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー(環状三量体)量(OL)は、0.5mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.4mg/m以下、さらに好ましくは0.3mg/m以下である。OLが0.5mg/mを超える場合、後加工において、例えば、150℃、90分間等、高温雰囲気下で長時間の加熱処理に伴い、オリゴマー析出量が多くなり、フィルムの透明性が低下する場合がある。
本発明のフィルムの最大粗さ(Rt)10nm以上300nm以下の特性を有する面の上には透明導電膜が積層される。該透明導電膜の構成材料としては、透明性、耐久性、耐候性の観点から金属酸化物が好適に使用されるが、特にインジウム錫酸化物(ITO)、アンチモン含有インジウム錫酸化物(ATO)、酸化錫、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム亜鉛酸化物(In−ZnO)などが特に好ましく使用される。
透明導電膜の形成方法については、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
透明導電膜の厚さについては特に限定されないが、厚さ10nm〜50nmの範囲とすることが好ましい。厚さが10nm未満の場合は、透明導電膜としての十分な導通性能が出せない可能性が高く、一方、厚さが50nmを超える場合は透明性が低下し、透明導電フィルムとしての不適となる可能性がある。
透明導電膜とポリエステルフィルム基材の間には、必要に応じて、密着性向上、外観向上などの目的でアンカーコーティングを施すことも可能である。該アンカーコート層の構成材料としては特に限定されないが、例えば無機物の中では酸化珪素、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウムなどが好適に用いられる。有機物の中ではアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、有機シラン系ポリマーなどが好適に用いられる。
形成された透明導電膜は、エッチング処理してパターン化される。パターンの形状は最終製品であるタッチパネルの設計に依存するが、パターン化部の最細部は15μm以下であり、好ましくは1μm以上13μm以下であり、より好ましくは5μm以上10μm以下である。パターン化部の最細部が1μm未満の場合は導通部が細すぎ、少しの衝撃で断線する可能性があり、一方、パターン化部の最細部が15μmを超える場合は、パターン部の筋が顕著に見られ、タッチパネルディスプレイ最終製品に仕上げた場合の外観品位が落ちる。
エッチング処理によりパターン化された透明導電膜は、加熱処理されて結晶化する。加熱処理の温度は通常100℃〜180℃の範囲であることが好ましい。100℃未満の場合は透明導電膜の結晶化が十分に進行しない可能性が高く、一方、180℃を超える温度の場合は、ポリエステル基材からオリゴマー成分が析出して透明導電フィルム全体の透明性が落ちてしまうなどの副次的弊害が発生する可能性がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
(3)ポリエステル原料に含有される含有オリゴマー量の測定方法
ポリエステル原料を約200mg秤量し、クロロホルム/HFIP(ヘキサフルオロ−2−イソプロパノル)の比率3:2の混合溶媒2mlに溶解させる。溶解後、クロロホルム20mlを追加した後、メタノール10mlを少しずつ加える。沈殿物を濾過により除去し、さらに沈殿物をクロロホルム/メタノールの比率2:1の混合溶媒で洗浄し、濾液・洗浄液を回収し、エバポレーターにより濃縮、その後、乾固させる。乾固物をDMF(ジメチルホルムアミド)25mlに溶解後、この溶液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値をクロロホルム/HFIP混合溶媒に溶解させたポリエステル原料量で割って、含有オリゴマー量(重量%)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
(4)積層ポリエステル層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
(5)積層ポリエステルフィルムの表面から抽出されるオリゴマー量(OL)の測定方法 あらかじめ、未処理の積層ポリエステルフィルムを空気中、150℃で90分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmの箱の内面に出来るだけ密着させて箱形の形状とする。塗布層を設けている場合は塗布層面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とした。
なお、DMF中のオリゴマー量は上記(3)ポリエステル原料に含有される含有オリゴマー量の測定方法に記載の絶対検量線法に従い算出した。
(6)透明導電膜パターン化後の配線断線評価
ポリエステルフィルムにおいて、塗布層とは反対側の面に、アルゴンガス95%と酸素ガス5%とからなる0.4Paの雰囲気下で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ25nmの ITO膜(透明導電性薄膜)を形成した。該ITO膜上にパターン化(最細部:8μm、12μm、20μm)されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られたITO膜を4%の塩化水素水溶液(和光純薬工業製)に浸漬してエッチング処理した。得られたパターン化されたITO膜は150℃×1時間の加熱処理により結晶化させた。
得られたパターン化後のITO膜の最細部となる箇所を光学顕微鏡(キーエンス社製 デジタルマイクロスコープ 型番:VHX−200)にて倍率40倍で100箇所検査し、ITOの断線の有無を検査し、以下の基準にて透明導電膜パターン化後の配線断線性を評価した。
○:ITO配線の断線が確認されない
△:ITO配線の断線は確認されないが、配線のひび割れのような現象が確認される
×:ITO配線の断線が1箇所以上で確認される
(7)表面粗度 最大粗さ(Rt)
(株)小坂研究所製表面粗さ測定機「SE−3F」によって得られた断面曲線から、基準長さ(2.5mm)だけ抜き取った部分(以下、抜き取り部分という)の平均線に平行2直線で抜き取り部分を挟んだ時、この2直線の間隔中の最大の山と最深の谷を平均線に並行な2直線で挟み、その間隔を縦倍率で割った値をマイクロメートル(nm)単位で表したものを抜き取り部分の最大高さ(Rt)とした。なお、この時使用した触針の半径は2.0μmとし、荷重は30mg、カットオフ値は0.08mmとした。
〈ポリエステルの製造〉
[エステル(A)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.65、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.97重量%であった。
[ポリエステル(B)の製造方法]
ポリエステル(A)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75、オリゴマー(環状三量体)含有量0.46重量%のポリエステル(B)を得た。
[ポリエステル(C)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65、オリゴマー(環状三量体)含有量0.82重量%であった。
[ポリエステル(D)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径60nmのエチレングリコールに分散させた酸化アルミニウム粒子を粒子のポリエステルに対する含有量が1.5重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行い、ポリエステル(D)を得た。得られたポリエステル(D)は、極限粘度0.61、オリゴマー(環状三量体)含有量0.77重量%であった。
[ポリエステル(E)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、添加する粒子種を平均粒子径0.4μmのジビニルベンゼン架橋ポリスチレン粒子とし、ポリエステルに対する含有量を0.5重量%とした以外は、ポリエステル(D)の製造方法と同じ方法でポリエステル(E)を得た。得られたポリエステル(E)は、極限粘度0.61、オリゴマー(環状三量体)含有量0.78重量%であった。
[ポリエステル(F)の製造方法]
ポリエステル(A)の製造方法において、添加する粒子種を平均粒子径0.7μmのエチレングリコールに分散させた炭酸カルシウム粒子とし、ポリエステルに対する含有量を2.0重量%とした以外は、ポリエステル(D)の製造方法と同じ方法でポリエステル(F)を得た。得られたポリエステル(F)は、極限粘度0.61、オリゴマー(環状三量体)含有量0.82重量%であった。
実施例1:
上記ポリエステル(B)、(D)、をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A)100%の原料をB層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(ABA)で、厚み構成比がA:B:A=5:13:5になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、フィルムをロール上に巻き上げ片面に下記に記載の調製法で作成した塗布液を乾燥後膜厚で0.1μmとなるように塗布し、厚さ23μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表1に示す。
[塗布液の調製]
以下のA、B、C、D、Eの化合物をそれぞれ30、10、40、10、10重量部となるように混合した。
・4級アンモニウム塩基含有ポリマー(A):
2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー
対イオン:メチルスルホネート 数平均分子量:30000
・ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー(B):
ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー 数平均分子量:20000
・架橋剤(C):メラミン架橋剤(DIC社製:ベッカミン)
・粒子(D):アルミナ表面変性コロイダルシリカ(平均粒径:50nm)
・バインダー(E):ポリビニルアルコール(けん化度88モル%、重合度500)
実施例2:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(B)、(D)、をそれぞれ70%、30%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
参考例3:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(B)、(D)、(E)、をそれぞれ67%、30%、3%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
参考例4:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(B)、(D)、(E)、をそれぞれ64%、30%、6%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
参考例5:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(A)、(D)、(E)、をそれぞれ64%、30%、6%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
比較例1:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(B)、(C)、をそれぞれ84%、16%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
比較例2:
実施例1において、A層の原料としてポリエステル(B)、(F)、をそれぞれ83%、17%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
Figure 0005993712


本発明のフィルムは、例えば、透明導電膜基材用ポリエステルフィルムとして好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 少なくとも一方の面の表面粗度最大粗さ(Rt)が10nm以上68nm以下であり、平均粒径が0.001μm〜1μmの酸化アルミニウムを含むことを特徴とする透明導電膜基材用ポリエステルフィルム。
  2. 請求項1に記載のポリエステルフィルムの表面にパターニングされた透明導電膜が積層された透明導電フィルムであり、前記パターニングの模様の最細部の幅が15μm以下であることを特徴とする透明導電フィルム。
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