特許文献1の牧草ロールの細断装置は、回転しながら牧草ロールの長さ方向に沿って段違いに複数設けられた牧草ロールを細断するカッターと、このカッター方向に牧草ロールを供給する搬送コンベアと、この搬送コンベアの供給路終端に立設された牧草ロールに当接するプレッシャコンベアとを設け、プレッシャコンベアと牧草ロールとの当接角度を調整可能とすると共に、正逆方向への駆動の切替えを可能としている。この特許文献1の牧草ロールの細断装置は複数のカッターの構成や、上方から押さえ込むように当接するプレッシャコンベア等により細断効率の改善や駆動源の小型化等を企図したものである。
しかしながら、この特許文献1の装置では、搬送コンベアの他にロールの径の減少に対応させるためのプレッシャコンベアをロールの上方側に設けているとともに、ロールの搬送駆動、カッター駆動、プレッシャコンベア等の別々の駆動系を用いた構成であるので、構造が複雑化し部材点数が多くなるうえ、大型化、重量化しコスト高となっていた。さらに、動作駆動を円滑に行なわせるためのシーケンサ等電気制御装置が必要でメンテナンスや故障時の修理が容易ではなかった。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、細断によって次第に小径化していく牧草等ロールを切削手段に向けて円滑に安定して搬送し切削細断作業を安定維持できる牧草等ロールの細断装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、1つの駆動系で牧草等ロールの送り動作、切削刃による切削動作を機械的に同期連動させることによりロールの送りと切削を安定して行なえるうえに、装置構成の簡単化、小型化、軽量化、低コスト化を実現し得る牧草等ロールの細断装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は、牧草等ロール2と、牧草等ロール2を受ける受部を有し該牧草等ロール2を横方向に移動させる搬送手段3と、牧草等ロール2の搬送方向に配置されロールの表面側に当着して切削する切削刃4を有する切削手段5と、切削手段5の切削による、牧草等ロール2の小径化に伴ない搬送手段3の受部において牧草等ロールを切削手段方向に向けて下がり傾斜状に案内する下がり傾斜機構6と、を備え、搬送手段3はベルトコンベア30からなり、原動機を介して切削刃4を掻き落し状に往復円弧運動させる第1駆動伝達部9と、第1駆動伝達部9による切削刃4の往復円弧運動を変換してベルト34を一方向横送り移動させる第2駆動伝達部10と、を備える牧草等ロールの細断装置1から構成される。
また、下がり傾斜機構6は、ベルト34の左右中間位置を持ち上げて切削手段方向に向けた下がり傾斜部を形成する持ち上げ装置60を含むこととしてもよい。
また、持ち上げ装置60は、ベルト34の上動部裏面にベルト走行方向と直交方向に長く配置された持ち上げローラ62と、持ち上げローラ62を支持する支持体64と、を含むこととしてもよい。
また、持ち上げ装置60は、牧草等ロール2の小径化に伴ってベルト34の持ち上げ位置を高く変位させる弾発持ち上げ機66を含むこととしてもよい。
また、弾発持ち上げ機66は、持ち上げローラ62を持ち上げ方向に付勢するダンパ68からなり、ダンパ68による弾発持ち上げ力調整自在に支持体64とダンパ68が連結されていることとしてもよい。
本発明の牧草等ロールの細断装置によれば、牧草等ロールと、牧草等ロールを受ける受部を有し該牧草等ロールを横方向に移動させる搬送手段と、牧草等ロールの搬送方向に配置されロールの表面側に当着して切削する切削刃を有する切削手段と、切削手段の切削による、牧草等ロールの小径化に伴ない搬送手段の受部において牧草等ロールを切削手段方向に向けて下がり傾斜状に案内する下がり傾斜機構と、を備えたことから、切削が進んで牧草等ロールが次第に小径化していっても該ロールを切削手段方向に向けて円滑に安定して搬送するので、牧草等ロールの切削細断作業全体を安定して維持しうる。さらに、牧草等ロールを下がり傾斜状に案内する構造であるので、簡単な構造で装置の小型、軽量化、低コスト化を実現できる。
また、搬送手段はベルトコンベアからなり、下がり傾斜機構は、ベルトの左右中間位置を持ち上げて切削手段方向に向けた下がり傾斜部を形成する持ち上げ装置を含む構成とすることにより、ベルトの中間位置を持ち上げて確実に下がり傾斜部を形成して小径化した牧草等ロールの安定した搬送を実現できる。さらに、搬送手段及び下がり傾斜機構を構成する部品点数が少なくて済み簡単な構造で低コストで製造できるとともに、ベルト中間位置を持ち上げるので下がり傾斜を効率良く形成することができる。
また、持ち上げ装置は、ベルトの上動部裏面にベルト走行方向と直交方向に長く配置された持ち上げローラと、持ち上げローラを支持する支持体と、を含む構成とすることにより、ベルトの持ち上げ動作を確実かつ安定して行わせて、形成させた下がり傾斜部によって牧草等ロールを切削手段方向への確実な案内を実効化させ、牧草等ロールの切削細断作業を安定維持しうる。また、持ち上げローラ等の部材配置のスペース効率が良いので持ち上げ装置を省スペース化し、装置全体を小型軽量化できる。
また、持ち上げ装置は、牧草等ロールの小径化に伴ってベルトの持ち上げ位置を高く変位させる弾発持ち上げ機を含む構成とすることにより、牧草等ロールの小径化による軽量化に伴って弾発持ち上げ機の弾発力とのバランスにより自動的にかつ円滑にベルトを持ち上げることができる。その結果、例えば、油圧シリンダやその他の駆動装置及びセンサや電気制御等の複雑な構成を必要とせず、簡単な構造で持ち上げ装置を実現できる。
また、弾発持ち上げ機は、持ち上げローラを持ち上げ方向に付勢するダンパからなり、ダンパによる弾発持ち上げ力調整自在に支持体とダンパが連結されている構成とすることにより、安価で容易に入手できるダンパを利用して弾発持ち上げ機を簡単に低コストで製造できる。さらに、弾発持ち上げ力を自在に調整して牧草等ロールの小径化に伴なう下がり傾斜の調整を簡単に行える。
また、原動機を介して切削刃を掻き落し状に往復円弧運動させる第1駆動伝達部と、第1駆動伝達部による切削刃の往復円弧運動を変換してベルトを一方向横送り移動させる第2駆動伝達部と、を備えることから、少ない駆動系で牧草等ロールの送り動作、切削刃による切削動作を機械的に同期連動させることによりロールの送りと切削を安定して行なえるうえに、装置の小型、軽量化、低コスト化を実現し得る。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を具体的に説明する。本発明は、牧草等ロールの細断装置であり、細断対象の梱包ロール内に収容された牧草に限らず、干草、枯れ草、藁などでもよい。
図1ないし図11は、本発明の実施形態に係る牧草等ロールの細断装置を示しており、図1において、牧草等ロールの細断装置1は、牧草等ロール2と、搬送手段3と、切削刃4を有する切削手段5と、下がり傾斜機構6と、を含む。
牧草等ロールは例えば図示しないベーラー等の農業機械により円柱状に圧縮、成形され、1.5メートル直径程度の大型の円柱状ロール体となっており、多量の牧草等の圧縮により相当程度の重量と堅さに締め固められて円周曲面状部分と両端平坦部分とで形成されて例えば作業者が単独の人力では簡単に移動できないようになっている。牧草等ロールは、細断装置に付設された移送装置90によりロールの細断位置に配置される。なお、移送装置は付設せずに別途に配備したクレーン、その他の作業車、重機等を用いて移動搬送し、配置させるものでも良い。
図1,2において、牧草等ロールの細断装置1は、複数の脚110で基台112を床面あるいは地面から所要高さ位置に支持し、基台112上に上面と一側面を開放するようにフレームを組付けて機体骨格を形成している。そして、開放側面113に対向する側面側に受け枠部114を設けると共に、他の対向両側面に軸方向規制枠116,118を立設し、開放側面113や上面115側から梱包ロールを搬送して収容し梱包ロールが切削位置にセットされる。その際、開放側面113に対向する側面に設置された受け枠部114にロール表面が当たり、横方向への移動が規制される。
図1において、基台112上には駆動モータ120が配置されその出力軸は伝達機構122、シャフト124を介して基台112の下面に固定した減速機126に接続され、その駆動力が伝達される。なお、伝達機構122は実施例では咬合する複数歯車で構成しているが、この部分はチェーンやベルト等による伝達、その他の任意の伝達機構を採用することができる。
搬送手段3は、牧草等ロール2を受ける受部7を有し牧草等ロール2を下側から受けて横方向に搬送移動させるものであり、本実施形態では、図1,2に示すように複数のローラ31,32,33にベルト34を調帯したベルトコンベア30により構成されている。ベルトコンベア30は、牧草等ロールの横送り搬送装置8を構成している。ベルト34は3つのローラ31,32,33に対してある程度撓むように長めに形成され、後述の持ち上げ装置60による持ち上げしろを有している。ベルトコンベア30は、開放側面113側から対向する受け枠部114側にかけて斜めに下がり傾斜姿勢で設けられており、これによって、牧草等ロール2がベルト34の傾斜した載置面に配置されると牧草等ロール2は、受け枠部114とベルトコンベア30との鋭角状の空隙に保持される。この鋭角状の空隙が本装置1の収容部128とされる。
切削手段5は、収容部128に収容された牧草等ロールの表面を切削して細断状の牧草等ロールを得るための機構であり、本実施形態において、牧草等ロールの搬送方向に配置されロールの表面側に当着して切削する切削刃4を含む。詳しくは、牧草等ロールの搬送方向となる受け枠部114近傍に横長円弧板状の切削刃基体42が設けられその一円弧端側に横長直線状の切削刃4が固定されて切削刃基体42の往復円弧動作により梱包された牧草等ロールの表面を削って掻き落すように切削する。すなわち、横長円弧板状の切削刃基体42の両端には取付板44が断面直角方向に連結されており、これらの取付板44が装置機体に取り付けた切削刃の回転軸としての横軸46周りに枢支されて切削刃基体42全体が例えば横軸回り120度位置から210度位置を往復円弧運動するようになっている。切削手段5により切削された牧草等の切削物50は、切削刃4の円弧最下端位置近傍から下方にかけて傾斜して設けられたシュート板26によって案内されて地面又は床面に排出される。
図1,2において、切削刃4の切削動作を行わせる第1駆動伝達機構9と、第1駆動伝達機構9による切削刃の切削動作を伝達して牧草等ロールの横送り動作を行わせる第2駆動伝達機構10と、が設けられている。第1駆動伝達機構9は、原動機としての駆動モータ120の回転動力により切削刃4を掻き落とし状に往復円弧運動させる第1駆動伝達駆動部であり、本実施形態において、減速機126の出力軸に一端が連結されたアーム92と、枢支軸94を介してアーム92の他端に一端が枢支連結され他端が切削刃基体42の両端の取付板44の外周寄り位置に枢支連結されたロッド96と、を含む。ここにおいて、減速機126の出力軸が回転するとその軸を中心としてロッド96の他端側が回転し、その一回転ごとに切削刃基体42が横軸46周りに例えば120度位置から210度位置を往復円弧運動する。なお、この移動範囲の角度はロッド他端と取付板44との取付位置やアーム92の長さ等を変更して大小調整でき、設定範囲も任意の移動角度で動くようにしても良い。ロッド96とこれに枢支連結され他端を切削刃基体42の取付板に枢支させたアームでクランク機構を形成する。
第2駆動伝達機構10は、切削刃の切削動作を伝達して牧草等ロールの横送り動作を行わせる第2駆動伝達部であり、実施形態において、牧草等ロールの横送り搬送装置8の1つの回転ローラ31が切削刃基体42に連結されて、切削刃の往復円弧運動を変換して横送り搬送装置8に伝達して、ベルトコンベア30の横送り駆動すなわちベルトの一方向送り移動を実現させている。図3,4,5に示すように、本実施形態において、第2駆動伝達機構10は、装置機体に設けられた固定軸12に軸支されて固定軸周りに回動する中間体14と、中間体14の固定軸位置と異なる他の部位において一端が枢支され他端が切削刃基体42に固定されたフック部48に着脱自在に係合する第1リンク16と、中間体14と横送り搬送装置の回転ローラ31とを連結接続する第2、第3リンク18,20と、第3リンク20をローラ軸31a回りに一方向に回転させるように付勢する付勢部材22と、を含む。付勢部材22は、例えば、一端が装置機体の基台112及び軸方向規制枠118に固定される柱材や壁材等の機体構成材119(図5参照)に枢支されるとともに他端が第3リンク20の中間位置に枢支され、常に伸長方向に付勢されたガスダンパ等のダンパからなる。第3リンク20とローラ軸31aとの連結部分には一方向クラッチ24が取り付けられている。図3,5に示すように、第1駆動伝達機構10により切削刃4の切削による掻き落とし動作のときには、切削刃基体42のフック部48と第1リンク16との係合が外れ、付勢部材22の付勢力により第3リンク20がロール軸31a周り回転されるが、一方向クラッチ24により第3リンク20とローラ軸31aは空転しベルト34は回転されず停止状態となる。一方、図4に示すように、切削刃4が復帰動作のときには、切削刃基体42のフック部48と第1リンク16の端部とが係合して、付勢部材22の付勢力に抗して第1リンク16、中間体14、第2、第3リンク18、20を介してローラ31を回転駆動させてベルト34を一方向横送り移動させる。これにより、切削刃4あるいは切削刃基体42の往復円弧動作により中間体14の固定軸12周りに中間体14が回動することにより駆動用のローラ31を介してベルトコンベア30のベルト34を矢印方向に無端状回転駆動し、搬送装置8を横送り動作させ、切削動作に同期してローラの横送り搬送動作を機械的に連動させている。
下がり傾斜機構6は、切削手段5の切削による、牧草等ロール2の小径化に伴ない搬送手段3の受部において牧草等ロールを切削手段方向に向けて下がり傾斜状に案内する機構であり、実施形態において、図6,7,8,9,10に示すように、下がり傾斜機構6は、ベルトコンベア30のベルト34の左右中間位置を持ち上げて切削手段方向に向けた下がり傾斜部を形成する持ち上げ装置60を含む。すなわち持ち上げ装置60により牧草等ロールの小径化に伴なってベルト中間部分を隆起させるように持ち上げて切削刃方向に向けてロール径に対応した勾配の下がり傾斜部を形成することができる。なお、ベルトコンベア30が傾けて設けられているのでベルト34の中間位置が持ち上げられていない通常状態でもベルト上面は傾斜しており、持ち上げ装置60はベルト上面の下がり傾斜を、緩やかな勾配から急な勾配まで自在に変更しうる傾斜角度変更機構を実現し、収容部128の鋭角状の空隙を変化させる。詳しくは、持ち上げ装置60は、ベルト34の上動部裏面にベルト走行方向と直交方向に長く配置された持ち上げローラ62と、持ち上げローラ62を支持する支持体64と、牧草等ロールの小径化に伴ってベルトの持ち上げ位置を高く変位させる弾発持ち上げ機66と、を含む。持ち上げ装置60は、牧草等ロールの小径化に伴なってロール重量と弾発持ち上げ機66の弾発力とのバランスによりベルト上面の下がり傾斜角度を連続的にあるいは段階的に変化させる。持ち上げローラ62は、例えば、ベルト34の幅(ベルト走行方向と直交する方向の幅長さ)すなわちローラ31、32、33と略同じ長さか若干短い長さで設けられ、ローラ31、32、33と平行でローラ31、33の間位置に配置され、両端を支持体64で支持されている。支持体64は、ローラ62の両端に略コ字状に連結された2個の支持アームを含み、支持アームの一端部でローラ62を回転自在に軸支し、他端は回転軸64aを介して装置機体に回転自在に軸支されている。支持体64の支持アームの回転軸64a回りの回転により、持ち上げローラ62の持ち上げ高さ位置が変位する。支持体64を構成する一つの支持アームの回転軸64aには、切換えレバー69の一端が固定されているとともに、切換えレバー69の長手中間位置に弾発持ち上げ機66が連結されている。弾発持ち上げ機66は、持ち上げローラ62を持ち上げ方向に付勢するように切換えレバー69及び支持体64を介して付勢しており、実施形態では、一端を装置機体に枢支されるとともに、他端を切換えレバー69の中間位置に枢支され、常に伸長方向に付勢力を作用するガスダンパ等のダンパ68からなる。ダンパ68は、切換えレバーを介設して支持体64に連係されており、該ダンパによる弾発持ち上げ力調整自在に該支持体64とダンパ68とが連結されている。弾発持ち上げ機は、ガスダンパに限らず、コイルばね、板バネ、ゴム等の弾発部材を含む任意の弾発機構でもよい。実施形態において、ダンパ68の弾発持ち上げ力は、例えば、直径1.5メートル程度の牧草等ロール2が切削により直径50センチメートル程度以下に小さくなったときに、該小径化した牧草等ロールの重量に抗して持ち上げローラ62がベルト34の中間位置を持ち上げるように調整されている。ダンパ68の弾発持ち上げ力は、牧草等ロールの切削手段側への搬送が不安定になるような小径化したロール直径に応じて調整すると好適であり、ロール重量とダンパの弾発力とのバランスを任意に設定できる。
図7,8に示すように、牧草等ロール2をベルト34の上面に載せると、ロール径が大きい切削細断作業の初期段階では、ダンパ68の弾発持ち上げ力により持ち上げローラ62は持ち上げ方向に付勢されてベルト34の上動部分裏面に当着するが、牧草等ロール2の重量がダンパ68の弾発持ち上げ力よりも大きいので持ち上げローラ62によりベルト中間位置は高い位置には持ち上げられず、ベルト上面は比較的緩やかな勾配で切削手段方向に向けた下がり傾斜で保持される。一方、図9,10に示すように、切削手段5の切削動作が進み、牧草等ロール2が小径化されると、牧草等ロール2の重量よりもダンパ68の弾発持ち上げ力の方が大きくなるので、ダンパ68の弾発力により持ち上げローラ62がベルトの中間位置を持ち上げ動作してベルト上面の切削手段側の約半分部分に比較的(ロールが大径時の下がり傾斜よりも)急な勾配の下がり傾斜部を形成させる。すなわち、細断により牧草等ロールが小径化していくにしたがってロール重量が軽くなると自動的に持ち上げローラ62によるベルト中間位置の持ち上げ力が発揮され、ロール径に対応した勾配の下がり傾斜が形成される。持ち上げローラ62が持ち上げられる高さの限界は、2つのローラ31、33と持ち上げローラ62との3つのローラによってベルト34の撓み(緩み)がなくなって該ベルトが略緊張状に張られるような高さ位置まで変位することができ、この際にベルトの下がり傾斜が最大となる。このようなロール小径化に伴なった下がり傾斜状の案内と上記の切削動作に同期したベルトの一方向横送り移動によって、切削手段による牧草等ロール全体の切削細断を安定して行える。さらに、搬送手段3にロール小径化に伴なう搬送安定化機構としての下がり傾斜機構6を付設させた構成であるので、装置の小型軽量化、低コスト化を実現する。なお、ダンパ68は切換えレバー69を介さずに支持体64に直接連結する構成としてもよいし、ダンパ68を持ち上げローラ62に直接連結しダンパ68が支持体64を兼用する構成としてもよい。また、持ち上げ装置60でベルト中間位置を持ち上げていない状態では、収容部128はロール2の載置面が開放側面113側に水平より下がり勾配となっていなければよく、その態様では、必ずしも鋭角状の空隙とする必要はなく、任意の態様の収容部構成とすることができる。また、持ち上げ装置60は、ベルトの駆動用のローラ31以外のローラ32又は33を移動させてベルトに下がり傾斜を形成する構成としてもよい。
本実施形態では、切換えレバー69は、手動で支持体64の回転軸64a回りの回転変位位置を変更することができ、そのレバーの回転に伴って、ダンパ68による持ち上げローラ62の付勢方向を、上述のベルトの持ち上げ方向と、その逆にベルトを持ち上げしない方向と、に切換えできるようになっている。切換えレバー69による付勢力切換機構70は、ダンパ68による持ち上げローラ62の持ち上げ方向への弾発付勢を必要に応じて一時的に規制する弾発持ち上げの規制手段を構成する。図7,9に示すように、ダンパ68の装置機体への枢支軸と支持体64の回転軸64aとを結ぶ直線よりも、切換えレバー69とダンパ68との枢支部分を上方に配置させたレバー回転位置では、上述のようにダンパ68は支持体64を介して持ち上げローラ62をベルトの持ち上げ方向へ付勢させる。一方、図11に示すように、切換えレバー69を下に向けて回転変位して、ダンパ68の装置機体への枢支軸と支持体64の回転軸64aとを結ぶ直線よりも、切換えレバー69とダンパ68との枢支部分を下方に配置させたレバー回転位置では、ダンパ68は持ち上げローラ62がベルトを持ち上げしないように逆方向(下方向)へ付勢することとなり、図示しないストッパ等によってベルト上動部分に対して退避した位置で保持される。なお、切換えレバーを機械的に切換え動作するように設けても良い。また、切換えレバーに代えて、持ち上げローラ62や支持体64に一時的に係止して持ち上げ方向への弾発付勢を規制するストッパ機構やロック機構等その他任意の規制手段を設けてもよい。
次に、本実施形態の作用について、図面を参照しながら説明すると、円柱状に圧縮成形され合成樹脂シート等で梱包された梱包牧草等ロールは、装置に付設された移送装置90あるいは外部の重機等を用いて機枠の開口部分等からロールの収容部128上に搭載される。このとき、切削刃4の直線部分がロールの軸線方向に沿うようにロール2を配置させる。なお、牧草等ロールを収容部に搭載する際には、図11のように、予め切換えレバー69によりダンパの付勢方向を切換えて持ち上げローラ62を持ち上げ方向とは逆方向に付勢する状態で保持させておくとよい。そして、牧草等ロール2をベルト上面に載せた状態で、図7に示すように、切換えレバー69を切換えて、ダンパ68により持ち上げローラ62をベルト持ち上げ方向に付勢させるが、牧草等ロールの重量の方がダンパの弾発持ち上げ力よりも大きい状態では、ベルト中間位置は持ち上げられず、ベルト上面が比較的緩やかな勾配で下がり傾斜した状態となる。横送り搬送装置8のベルト上面は切削刃方向に向けて下がり傾斜のベルト面となっているので、通常は、受け枠部114に受けられて鋭角状スペースの収容部に配置されている。そして、駆動モータ120の駆動により、切削刃駆動機構9のクランク機構を介して切削刃4が往復円弧運動すると、図3のように固定軸12周りの中間体14の動き及び付勢部材22により切削刃基体42のx方向矢視掻き落し動作のときはローラ軸31aと第3リンク20とがワンウェイクラッチ機構により空転し、図4のように、切削刃基体42が矢視y方向回転時にのみベルトコンベア30が矢印方向に回転し、ロールを常時切削刃4に当てるように移動させる。切断刃4で切削された牧草等の切削物50はシュート板26で地面や床面等に落下されていく。
切削動作が進んで牧草等ロールが次第に小径化されてくると、図9に示すように、ロール重量とダンパ68による弾発持ち上げ力とのバランスにより、軽くなった牧草等ロール2の重量よりもダンパ68の弾発持ち上げ力の方が大きくなり、ダンパ68に付勢された持ち上げローラ62がベルト34の中間位置を持ち上げ、ロール径に対応して比較的急な勾配で切削手段方向に向けた下がり傾斜を形成する。このようにベルト34を高く持ち上げて下がり傾斜を形成した状態で上述同様に切削刃4の往復円弧動作等に連動してベルト34が一方向横送り移動される。これによってベルトによる横送り搬送と協働して小径化した牧草等ロールを切削手段方向に向けて円滑に案内させ安定して搬送することができることから、切削動作が進み牧草等ロールの径がしだいに小さくなる場合でも、常にロール表面を切削刃に最も近い位置に配置させることができ、安定した切削動作を維持して牧草等ロールの細断作業を円滑に行なうことができる。コンベアによる横送り量は切削動作に同期した略一定量を維持するから、この点でも切削動作の安定に寄与し得る。なお、切換えレバー69による持ち上げローラ62の付勢方向の切換え動作タイミングは、切削細断作業の途中でロール径がある程度小さくなった段階で持ち上げ方向に付勢するように操作してもよく、少なくとも小径化した牧草等ロールの搬送が不安定になる際に当該持ち上げ方向に付勢するようにしておくとよい。また、牧草等ロールを収容部128に収容するときにもダンパ68により持ち上げローラ62を常に持ち上げ方向に付勢させておくこととしてもよく、この場合でも、牧草等ロールの重量によりダンパ68に抗して持ち上げローラを強制的に押下げて該牧草等ロールをベルト上面に安定して載せることができる。
以上の通り、本発明の牧草等ロールの細断装置は、切削細断により小径化していく牧草等ロールの切削手段方向への搬送方式に顕著な特徴があり、切削細断動作の安定維持、装置の小型、軽量化、低コスト化、さらには切削動作と送り動作の同期による送り動作の安定等を果たすことができる。
本発明の牧草等ロールの細断装置は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲の改変も本発明に含まれる。例えば、装置支持のための脚の代わりに車輪、ローラ、その他の転動体を取り付けて移動可能としてもよい。また、横送り装置の収容部に連続搬送可能なように、牧草等ロールの装填用の機構を本装置に一体的に取り付けることもできる。さらに、原動機としての駆動用のモータ120の駆動力は、本装置をトラクタに連結してトラクタの回転動力からとってもよい。