JP5992214B2 - 発泡ウレタンシートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は発泡ウレタンシートの製造方法に関する。
半導体ウエハーやディスプレー用ガラス基板などを精密に研磨する研磨パッドや、鉄道用軌道から発生する騒音・振動を防止する防振パッド、あるいは自動車、建築、土木分野などで使われる防振パッドなど、耐久性を要するパッドとして発泡ウレタンシートが使用されている。
このような耐久性を要する発泡ウレタンシートを製造するには、通常、強度を向上するためポリオールを予めイソシアナートと反応させて分子量を上げたNCO末端を有するプレポリマーが用いられる。このNCO末端を有するプレポリマーは粘度が高いので、一般的には50℃以上の高温、例えば70℃にして、発泡剤、架橋剤などのウレタン原料と混合撹拌した反応原液を金型(モールド)に注入した後、加熱硬化させて製造される(例えば特許文献1〜3参照)。
研磨パッドや鉄道用の防振パッドのような厚みの薄い製品を作る場合においても、ある程度大き目の製品を作ってからスライスなどの手法で厚みの薄いものを作ったり、厚みの薄いモールドに反応原液を流し込んでバッチ生産をしているのが現状である(例えば特許文献4〜6参照)。しかし、バッチ生産品からスライスして厚みの薄い発泡ウレタンエラストマーを生産する方法は不要の廃棄部分が多く、生産性も悪く、しかも品質のバラツキが大きくなり易い。
一方、反応性の高いポリウレタン原液をコートハンガーダイにて連続的に離型性フィルム上に塗布して発泡ポリウレタンを製造する装置及び製法が開示されている(例えば特許文献7、8参照)。しかし、この方法は厚みの薄いコートハンガーダイ内を反応原液が流動する必要があり、液体粘度は低くなければならず、高粘度のプレポリマーを用いた反応原液は適用できていない。
また、モールドによる生産方式を改良したものとして、特許文献9には、反応原液を2枚の無限軌道ステンレススチールベルト間に吐出し、加熱硬化させて、得られた発泡体を上下2分割して研磨パッドを生産する方法が開示されている。しかし、このような方法を実行しようとすると、ウレタン反応原液は反応性が高いため、増粘が短時間で進んでしまう。ステンレススチールベルト間に連続的に吐出するにしても塗工装置で20秒〜2分程度もするとゲル化するため、1時間以上の長時間連続吐出は不可能である。
特開10−17639号公報 特開2008−56730号公報 特開2011−38005号公報 特開2002−192454号公報 特開2000−343412号公報 特開2005−068168号公報 特開昭54−81366号公報 特開昭54−81367号公報 特開2004−169038号公報
本発明は、粘度の高い末端NCO基を有するプレポリマーを用いた反応性の高いウレタン原液を用いても発泡ウレタンシートを連続的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、ジフェニルメタンジイソシアナート由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量が500以下の低分子ポリオール、pKa3.46〜1.00の有機酸、及びシクロアミジン系又はジシクロオクタン系の複素環3級アミンを混合した反応原液、又は、ジフェニルメタンジイソシアナート由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量が500以下の低分子ポリオール、及びpKa3.46〜1.00の有機酸とシクロアミジン系又はジシクロオクタン系の複素環3級アミンとの塩を混合した反応原液を第1の連続ウェブ上に連続的に塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、
前記第1の連続ウェブ上の前記塗布膜を加熱して硬化させる加熱工程と、
を含む発泡ウレタンシートの製造方法である。
請求項2の発明は、前記塗布工程の後、前記加熱工程の前に、前記第1の連続ウェブ上の前記塗布膜に第2の連続ウェブを供給して前記2枚の連続ウェブにより前記塗布膜を挟む第2連続ウェブ供給工程を含み、
前記加熱工程は、前記塗布膜を前記2枚の連続ウェブにより挟まれた状態で加熱して硬化させる工程である請求項1に記載の発泡ウレタンシートの製造方法である。
請求項3の発明は、前記第1の連続ウェブ及び前記第2の連続ウェブの少なくとも一方は、前記塗布膜と接する面が離型性を有する連続ウェブである請求項2に記載の発泡ウレタンシートの製造方法である。
請求項4の発明は、前記pKa3.46〜1.00の有機酸が、オルトフタル酸、マレイン酸又はマロン酸である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発泡ウレタンシートの製造方法である。
本発明によれば、粘度の高い末端NCO基を有するプレポリマーを用いた反応性の高いウレタン原液を用いても発泡ウレタンシートを連続的に製造することができる方法が提供される。
本発明の発泡ポリウレタンシートの製造方法に用いられる装置構成の一例を示す概略図である。
以下、発泡ウレタンシートの製造方法について具体的に説明する。
本発明者らは ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いた末端NCO基を有するプレポリマーと、鎖延長剤として分子量が500以下の低分子ポリオール、発泡剤、pKa3.46〜1.00の有機酸と複素環3級アミン、又はその塩を触媒として用いれば、粘度の高い末端NCO基を有するプレポリマーを用いたウレタン反応性原液であっても、厚みの薄いシート状の発泡ウレタンエラストマーを連続的に生産することができることを見出した。
すなわち、本発明の発泡ウレタンシートの製造方法は、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、低分子ポリオール、pKa3.46〜1.00の有機酸、及び複素環3級アミンを混合した反応原液、又は、ジフェニルメタンジイソシアナート由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量が500以下の低分子ポリオール、及びpKa3.46〜1.00の有機酸と複素環3級アミンとの塩を混合した反応原液を第1の連続ウェブ上に連続的に塗布して塗布膜を形成する工程と、前記第1の連続ウェブ上の前記塗布膜を加熱して硬化させる工程と、を含んで構成される。
本発明の発泡ウレタンシートの製造方法は、好ましくは、塗布工程の後、加熱工程の前に、第1の連続ウェブ上の塗布膜に第2の連続ウェブを供給して2枚の連続ウェブにより塗布膜を挟む第2連続ウェブ供給工程を含み、加熱工程は、塗布膜を2枚の連続ウェブにより挟まれた状態で加熱して硬化させる工程である。
まず、反応原液について説明する。
(MDI由来の末端NCO基を有するプレポリマー)
発泡ウレタンシートの原料としては、ポリオールと、イソシアナートとしてジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いて合成したMDI由来の末端NCO基を有するプレポリマー(以下、「末端NCO基を有するプレポリマー」又は「末端NCO基プレポリマー」と略記する場合がある。)を用いる。
本発明で用いるMDI由来の末端NCO基を有するプレポリマーとしては、ポリオールとMDIをNCO基/OH基の当量比を1.5〜6.0程度のNCO基過剰にて反応させてNCO%を3〜15%としたものを好適に使用することができる。
更に高硬度製品が必要な場合はカルボジイミド変性の液状MDIなどを追加して極性基濃度を高めることもできる。
末端NCO基を有するプレポリマーの合成に用いられるポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン系として、ポリオキシプロピレンポリオール(PPG)、ポリオキシエチレンポリオール(PEG)、PPGとPEGの共重合物、ポリオキシテトラメチレンポリオール(PTMG)などが挙げられる。また、その他のポリオールとしては、ジカルボン酸としてアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸などと、グリコールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチルプロパンジオール、3−メチルペンタンジオールなどとを縮合させたアジピン酸エステルポリオール(PA)などのポリエステルポリオール(PES)や、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)、ポリカーボネートポリオール(PCA)などが挙げられる。
末端NCO基を有するプレポリマーの合成に用いられるポリオールは、官能基数が2〜3、分子量が500〜6000のものが好ましく、プレポリマーの合成のし易さ、粘度、強靭性に優れる観点から官能基数が2〜2.5、分子量が500〜2500のものが特に好ましい。
上記ポリオール成分は、粘度が低く、得られる製品の強度・伸びを高めるためPPG、PTMG、PA、PCLが好ましい。
本発明で末端NCO基を有するプレポリマーの合成に用いるMDIは、官能基数が2〜2.3のものが好ましく使用できるが、プレポリマーの合成のし易さ、発泡体の物性から官能基数が2のものが特に好ましい。
イソシアナートとしてMDIを用いると、混合初期の増粘が遅い(初期反応速度が低い)が、加熱硬化させると固化時間が早いため高速生産が可能である。高速生産ができるということは、高速で塗工できることになり、塗工装置でフレッシュな反応原液により古い反応原液が洗い流されるため、長時間の連続塗工ができるメリットがある。つまり、ゲル化時間(秒)÷固化時間(分)=ゲル化/固化比が大きいほど反応原液を連続塗工し易い。
本発明者らの実験によれば、このゲル化/固化比が好ましくは15〜80であると連続塗工が可能なことが分った。さらに好ましいゲル化/固化比は30〜80であり、最も好ましくは60〜80で、この範囲内であると特に高速で生産することができる。
ここでゲル化時間は、MDI由来の末端NCO基を有するプレポリマーと所定量の鎖延長剤及び触媒を混合し、70℃において40000sPa・sに粘度が到達する時間とし、2〜5分(120秒〜300秒)程度が好ましい。
また、固化時間は、離型性を有する樹脂フィルム上に所定の反応原液を塗布した後、塗布膜の上面に同様な離型性樹脂フィルムを被せ、100℃にて加熱して固化させた後、樹脂フィルムが剥離可能な時間とする。
一般的に、ゲル化時間が短いほど塗布時に原料が増粘して長時間の連続塗工できず、逆にゲル化時間が長過ぎると発泡硬化に長時間必要になる。
(発泡剤)
発泡剤としては、水及び/又はシクロペンタン、ジクロロメタンなどの低沸点の有機溶剤、ハロゲン化炭化水素などが好ましく用いられる。あるいは、メカニカルフロス法等によりポリオールやプレポリマーに空気や窒素などの気泡を巻き込む方法も取り得る。
発泡剤の添加量(質量基準)は目標の発泡体(発泡ウレタンシート)の密度等により異なるが、末端NCO基を有するプレポリマー100部に対し、水を0.01〜0.5部、メカニカルフロス法では窒素を10〜600cm、シクロペンタンでは0.05〜2部程度である。
本発明で用いる発泡剤としては、水が本発明で用いる触媒を溶解し易いので特に好ましい。
(整泡剤)
本発明では整泡剤を配合してもよい。整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンポリオールの共重合体を代表例としたシリコーン系化合物が好適に用いられる。水酸基末端ポリエーテル変性シリコーン整泡剤を用いてもよい。
整泡剤の添加量は、末端NCO基を有するプレポリマー100部に対し、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
(鎖延長剤)
鎖延長剤として、例えばウレタンシートの製造に一般的に用いられる4,4‘−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(MOCA)のような芳香族ジアミンは増粘スピードが速く、無触媒でもあるいは触媒を少量添加した場合でもその種類を問わず、ゲル化し易く連続塗工することができない。
一方、鎖延長剤として低分子ポリオールを用いれば長時間の連続塗工が可能である。
本発明において鎖延長剤として用いる低分子ポリオールの分子量は500以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物が挙げられ、また、ヒドロキノン、レゾルシンのエチレンオキシド付加物も例示できる。
これらの内、分子量200以下で1級アルコールの低分子ポリオールで、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ヒドロキノン、レゾルシンのエチレンオキシド付加物などが特に好ましい。更に、2官能と3官能の低分子ポリオールを併用すると架橋が導入されるため復元性が良好になり、しかも独立気泡構造の発泡体が得られ易いので、目標の発泡ポリウレタンシートが独立気泡構造で低い吸水率が要求される場合には好適である。
なお、低分子ポリオールと共に、分子量500を超える高分子ポリオールを併用し、低分子ポリオールや触媒など少量成分の希釈材として用いる事で、原料ポンプによる計量性向上や、反応性の調整剤として用いてもかまわない。これらの高分子ポリオールとしては前述のプレポリマーに用いるポリオールと同様のものを用い得るが、この場合は官能基数が2〜4で、分子量は500〜6000のものでもかまわない。
末端NCO基を有するプレポリマー100部に対する低分子ポリオールの配合量は、発泡剤として用いる水のOH基も含めてNCO基/OH基の当量比で0.9〜1.2が好ましい。
(pKa3.46〜1.00の有機酸)
本発明で用いるpKa3.46〜1.00の有機酸(以下の括弧内はpKaを表す)としては、m−フタル酸(3.46)、o−フタル酸(2.95)、クエン酸(3.09)、フマル酸(3.03)、マロン酸(2.83)、トリメリット酸(2.52)、o−ニトロ安息香酸(2.17)、マレイン酸(1.93)、ジクロロ酢酸(1.29)、シュウ酸(1.23)、ジヒドロキシフマル酸(1.14)が例示できる。
pKa3.46〜1.00の酸の中で、ウレタン原料に溶解し易いことから、オルトフタル酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、ジクロロ酢酸が好ましく、さらに反応性を制御し易いことからオルトフタル酸、マレイン酸、又はマロン酸を用いることが特に好ましい。
pKa3.46〜1.00の有機酸の添加量は、併用する複素環3級アミンの添加を中和するに要する量との観点から、末端NCO基を有するプレポリマー100部に対し、0.01〜0.3質量部であることが好ましい。
(複素環3級アミン)
本発明で用いる複素環3級アミンは、シクロ環内に窒素を含む化合物であり、N−アルキルイミダゾールとして、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、トリアジン環を有するトリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサトリアジン、ジシクロ環を有する1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(トリエチレンジアミン、TEDAと略称)、シクロアミジン系の1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7−エン(DBUと略称)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5−エン(DBNと略称)などが代表例である。
これらの複素環3級アミンの中でシクロアミジン系のDBUとDBNとジシクロオクタン系のTEDAが高温での反応速度が高く、固化時間を短くできるので好ましい。
複素環3級アミンの添加量は、固化反応を早める観点から、末端NCO基を有するプレポリマー100部に対し、0.01〜0.3質量部であることが好ましい。
複素環3級アミンと前述のpKa3.46〜1.00の酸は、別々に略当量で低分子ポリオールや発泡剤である水中に配合してもよいし、ジメチルフォルムアミドやメチルピロリドンのような極性溶媒に溶解してウレタン原料に混合してもよく、予め酸とアミンを略当量で混合することで塩として配合してもよい。複素環3級アミンとpKa3.46〜1.00の酸は、本発明の組成において初期反応を有効に抑えつつ、温度を高めることで急激な固化反応を進めることができる。
複素環3級アミンとpKa3.46〜1.00の酸から塩を作るには、アミンと酸をそれぞれ液体にして等モルずつ配合する方法、あるいは、例えばエチレングリコールや1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール中、又は水やジメチルフォルムアミドやメチルピロリドンのような極性溶媒中で混合反応させる方法は溶解しにくい塩の場合であっても溶液にすることができる。
pKa3.46〜1.00の酸と複素環3級アミンを塩として配合する場合の添加量(質量基準)は、プレポリマー100部に対し0.02〜0.5部であり、反応性及び物性から特に好ましくは0.1〜0.3部である。
次に、上記反応原液を用いて発泡ポリウレタンシートを製造する工程について、添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の発泡ポリウレタンシートの製造方法を実施するための装置構成の一例を概略的に示している。図1に示す発泡ポリウレタンシート製造装置100は、第1の連続ウェブ14Aを巻き出す第1ウェブロール14、反応原液を第1の連続ウェブ14A上に塗布する塗布装置12、第1ウェブロール14から巻き出された第1の連続ウェブ14Aを塗布装置12の直下に導く大径ローラ18、第2の連続ウェブ16Aを巻き出す第2ウェブロール16、第2の連続ウェブ16Aを第1の連続ウェブ14A上の塗布膜10上に導くガイドローラ20、2枚の連続ウェブ14A,16Aの間に挟まれた反応原液の塗布膜10を加熱装置22に導くとともに加熱装置22により加熱して硬化した発泡ウレタンシート30を搬送する搬送ローラ28A,28B、発泡ウレタンシート30から剥離された各連続ウェブ14A,16Aを巻き上げて回収する回収ローラ24,26を備えている。
<塗布工程>
まず、原料成分を混合攪拌した反応原液、すなわち、MDI由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量500以下の低分子ポリオール、pKa3.46〜1.00の有機酸、及び複素環3級アミン(又はpKa3.46〜1.00の有機酸と複素環3級アミンの塩)を混合した反応原液を第1の連続ウェブ14A上に連続的に塗布して塗布膜10を形成する。
本発明の発泡ウレタンシートの製造に用いる反応原液は、40〜70℃程度の温度においてもウレタン化の初期反応が抑制され、増粘を抑えられるため連続塗工が可能である。なお、液温をさらに20〜50℃高めた90〜120℃にすると急激な反応速度になるため固化反応が速やかに完結し、長尺の発泡ウレタンシート製品を紙管に巻いたり、短尺に切断することが可能となる。
第1の連続ウェブ14としては、例えば樹脂フィルムまたは紙体が好ましく用いられる。
樹脂フィルムは、反応原液の塗布及び加熱工程での加熱によって変形しないものであれば特に限定されないが、反応原液に対する耐性、耐熱性などの観点から、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのフィルムが好ましい。
必要であれば、樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などを施して発泡ウレタンシートとの接着性を向上させてもよい。
また、発泡ウレタンシートを製造した後、樹脂フィルムを剥がし易いように反応原液の塗布膜を形成する面が離型性を有する樹脂フィルムを用いてもよい。
離型性を有する樹脂フィルムとしては、樹脂フィルムの片面にシリコーン離型剤を塗布する方法、ポリプロピレン樹脂やポリメチルペンテン樹脂などの離型性を有する樹脂フィルムをそのまま用いる方法、離型性を有する樹脂フィルムをポリエステルフィルム等にラミネートするなどの方法がある。
第1の連続ウェブ14Aとして紙体を用いる場合は、グラシン紙や上質紙の表面をポリエチレンやポリプロピレンでコートしたもの、あるいはその上から更にシリコーン離型剤を塗布したものなどが用いられる。
本発明で用いる第1の連続ウェブ14Aとしては樹脂フィルム又は離型性樹脂フィルムが、発泡体の固化速度が速く且つ厚み精度が高いため好ましい。
第1の連続ウェブ14A上に反応原液を塗布するための塗布装置12としては、ダイスコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどを用いることが好ましい。反応原液をミキシング装置で撹拌して吐出ノズルからトラバース(反復塗布)装置で吐出してロールコータ又はナイフコーターで薄塗りする方法や、反応原液を吐出ノズルからダイスコーターに導入して連続ウェブ上に塗工する方法も好ましい。
塗布膜10の厚みは目的とする発泡体の用途に応じて決めればよいが、発泡ウレタンシートの発泡倍率、目的の厚みなどの観点から、0.1〜20mmであることが好ましい。
<第2連続ウェブ供給工程>
第1の連続ウェブ14A上の塗布膜10に第2の連続ウェブ16Aを供給して2枚の連続ウェブ14A,16Aにより塗布膜10を挟み込む。
第2の連続ウェブ16Aとしては、第1の連続ウェブ14Aの説明で例示した樹脂フィルム又は紙体を用いることができる。なお、加熱工程後、発泡ウレタンシート30の少なくとも片面の連続ウエブを剥離し易くする観点から、第1の連続ウェブ14A及び第2の連続ウェブ16Aの少なくとも一方の連続ウェブは、塗布膜10と接する面が離型性を有する連続ウェブを用いることが好ましい。
第2の連続ウェブ16Aを巻いた第2ウェブロール16から第2の連続ウェブ16Aを連続的に巻き出して第1の連続ウェブ14A上の塗布膜10に被せる。これにより塗布膜10は2枚の連続ウェブ14A,16Aにより挟まれた状態となる。
なお、図1に示す装置は2枚の連続ウエブ14A,16Aにより塗布膜10を挟むように構成されているが、第1の連続ウエブ14A上に塗布膜を形成した後、第2の連続ウエブ16Aを被せずに次の加熱工程に進んでもよい。
<加熱工程>
塗布膜10は2枚の連続ウェブ14A,16Aで挟んだ状態で加熱装置22内に搬送され加熱により硬化される。
硬化のための加熱温度は90〜120℃が好ましく、この範囲の温度で5〜20分で固化することが好ましい。
加熱装置22としては、赤外線ヒータ、電気ヒーターやガス燃焼炉などを用いることができる。
塗布膜10が固化(硬化)するまでの時間を短くできると反応原液を高速で塗工でき、塗工装置12のフレッシュ原料による共洗いが促進するため長時間塗工には非常に有利である。
<剥離工程>
加熱工程により発泡硬化させたシート状の発泡ウレタンエラストマー(発泡ウレタンシート)30を連続ウェブ14A,16Aが発泡ウレタンシート30に密着したまま巻き取ってもよいし、連続ウェブ14A,16Aが離型性ウェブである場合は、図1に示すように発泡ウレタンシート30から離型性ウェブを剥離して各回収ローラ24,26に巻き取って回収する。なお、回収した各連続ウェブ14A,16Aは供給ロール14,16として再利用することができる。
上記工程を経て、品質のバラツキが少なく、0.2〜0.95g/cm程度の高い密度を有し、機械的強度の高い長尺の発泡ウレタンシートを連続的に製造することができる。
本発明で製造される発泡ウレタンシートは独立気泡構造または連続気泡構造を有するものとなり、研磨パッドや鉄道用制振パッドのような強靭性、耐久性を要求される用途の発泡ウレタンシートの製造であっても本発明を適用することができる。
本発明の発泡ウレタンシートの製造方法は、特に、独立気泡率を高めることが容易であり、低吸水率を要求される鉄道用制振パッドや建築・土木用の制振パッドの製造に好適に適用できる。
更に、本発明によれば、発泡ウレタンシートを連続的に製造することができるため、品質のバラツキが極めて少ないことはもちろん、バッチ式で生産しスライスするものに比べ歩留りが大幅に向上する。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、配合量(含有量、添加量)に関する「部」、「%」はすべて質量基準である。
(使用原料)
実施例、比較例で用いた原料について説明する。
〔末端NCO基プレポリマー〕
PP−A:PTMG−1000(三菱化学社製 ポリオキシテトラメチレングリコール、分子量1000)を100部、ピュアーMDI(日本ポリウレタン社製 ジフェニルメタンジイソシアナート)を50部混合し、70℃で2時間反応させてNCO%が5.25%のNCO基末端のプレポリマーを得た。
PP−B:PTMG−1000を100部、ピュアーMDIを95.1部混合し、70℃で2時間反応させてNCO%が9.2%のNCO基末端のプレポリマーを得た。
PP−C:PTMG−1000を100部、T−80(日本ポリウレタン社製トルエンジイソシアナート)を31.68部混合し、80℃で3時間反応させてNCO%が5.25%のNCO基末端のプレポリマーを得た。
〔鎖延長剤〕
14BD:1,4−ブタンジオール
TMP:トリメチロールプロパン
MOCA:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン
〔発泡剤〕
水又は窒素
〔整泡剤〕
NP−100:水酸基末端ポリエーテル変性シリコーン整泡剤(信越化学工業社製)
〔触媒〕
CA:ジメチルフォルムアミド中で、1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(TEDA)とマレイン酸を11.2:11.6(質量比)で室温にて混合し、触媒塩CAの50%溶液を得た。
CB:ジメチルフォルムアミド中で、TEDAとo−フタル酸を11.2:16.6(質量比)で混合し、触媒塩CBの50%溶液を得た。
CC:ジメチルフォルムアミド中で、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)とマレイン酸を15.2:5.8(質量比)で混合し、触媒塩CCの50%溶液を得た。
〔樹脂フィルム〕
フィルムA:厚みが100μmのポリエステルフィルムの片面に離型性シリコーン樹脂を0.3μmの厚みで塗布したもの。
(実施例1)
PP−Aを100部、14BDを5.62部、水を0.05部、NP−100を0.5部、TEDAのジメチルフォルムアミド(1/1)溶液を0.15部、マレイン酸のジメチルフォルムアミド(1/1)溶液を0.15部の割合としたプレミックスをタンクに投入し、定量ポンプでミキシングヘッドへ搬送して機械撹拌した。
撹拌した反応原液を離型処理したポリエステルフィルム(フィルムA)の上にダイスコーターを用いて厚み1mmに塗布し、上から別の離型フィルム(フィルムA)を離型処理した面が塗布液に面するように被せた。この連続塗工品は100℃のオーブンで加熱して発泡硬化時間を観察し、固化後、両面のフィルムAを剥離して厚みが約2mmの発泡ウレタンシートを得た。
〔ゲル化時間〕
ゲル化時間は、MDI由来の末端NCO基を有するプレポリマーと所定量の鎖延長剤及び触媒を混合し、70℃において40000sPa・sに粘度が到達する時間として測定した。
〔固化時間〕
固化時間は、離型性を有する樹脂フィルム上に所定の反応原液を塗布した後、塗布膜の上面に同様な離型性樹脂フィルムを被せ、100℃にて加熱して固化させた後、樹脂フィルムが剥離可能な時間とした。
〔ゲル化/固化比〕
上記のようにして測定したゲル化時間(秒)と固化時間(分)からそれらの比(ゲル化時間(秒)/固化時間(分))を求めた。このゲル化/個化比が大きいほど反応原液を連続塗工し易い。
〔連続塗工〕
連続塗工時間の判断は、ダイコーター内で反応原液がゲル化し塗工物にスジができるか、厚みに異常が発生するなどの観察により測定した。
〔密度〕
得られた発泡ウレタンシートの密度はサンプルの重量を体積で除する事によって測定した。
〔独泡率〕
得られた発泡ウレタンシートの独泡率はASTMD2856に基づく、ベックマン式空気比較式比重計930型(東京サイエンス社製)によって測定した。
〔吸水率〕
得られた発泡ウレタンシートの吸水率はサンプルを水深10cm下に沈め24時間後の重量増を試験前重量で除した重量%によって測定した。
〔A硬度〕
得られた発泡ウレタンシートのA硬度を、サンプル表面をJIS―A硬度計で押し当てた直後の値によって測定した。
〔総合判定〕
得られた発泡ウレタンシートについて以下の基準により総合判定を行った。
AA:連続塗工が2時間以上可能で独泡率が80%以上の組成
A:連続塗工が2時間以上であったが独泡率が80%未満の組成
B:連続塗工が1〜1.5時間の組成
C:連続塗工が0.5時間以下の組成
(実施例2)
触媒にCAを0.3部用いた以外は実施例1と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例3)
触媒にCBを0.3部用いた以外は実施例1と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例4)
触媒にCCを0.3部用いた以外は実施例1と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例4´)
整泡剤を用いない以外は実施例4と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例5)
プレポリマーにPP−Bを100部、14BDを9.87部、水を0.08部、NP−100を0.5部、触媒CCを0.3部用いた以外は実施例1と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例6)
鎖延長剤として、14BDを7.40部、TMPを2.47部用いた以外は実施例5と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例7)
鎖延長剤として、14BDを4.93部、TMPを4.93部を用いた以外は実施例5と同様な方法で発泡ウレタンシートを得た。
(実施例8)
発泡剤としての水を除いたこと以外は実施例2と同様に配合した溶液をオークスミキサー)に導入し、ウレタン原料100cmに対して100cmの窒素を泡として機械的に巻き込んだ反応原液を実施例1と同様にダイスコーターを用いてフィルムA上に塗布して発泡ウレタンシートを得た。
実施例2〜8で製造した発泡ポリウレタンシータについても実施例1と同様に評価を行った。実施例で発泡ウレタンシートの製造に用いた反応原液の組成及び評価結果を下記表1に示す。なお、空欄は配合していないことを表す。
(比較例1)
触媒として1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(TEDA)を0.1部用いた以外は実施例1と同様な方法で実験をしたが、ゲル化時間が30秒と早すぎるため連続塗工は全くできなかった。
(比較例2)
鎖延長剤としてMOCAを16.68部用い、触媒CCを0.3部添加した以外は実施例1と同様な方法で実験をしたが、ゲル化時間が60秒と早く、固化時間も5分と短く連続塗工時間は約10分と極めて短かった。
(比較例3)
プレポリマーとしてPP−Cを用いた以外は実施例3と同様な方法で実験を行った。ゲル化時間は300秒と長いが、固化時間が30分と長いため塗布速度を上げられず、ダイコーター内でゲル化して連続塗工時間は約10分と短かった。更に得られた発泡ウレタンシートはA硬度が20であり、柔らかいものしか得られなかった。
(比較例4)
鎖延長剤をMOCA 16.68部、触媒CCを0.3部用いた以外は比較例3と同様な方法で実験を行ったが、ゲル化時間が60秒と短いため連続塗工は全くできなかった。
(比較例5)
触媒CCの添加量を0.1部とした以外は比較例4と同様な方法で実験を行った。ゲル化時間が200秒と延びたが、固化時間も20分と長いため連続塗工時間は10分であった。
比較例で発泡ウレタンシートの製造に用いた反応原液の組成及び評価結果を下記表2に示す。
本発明により製造される発泡ウレタンシートは、連続気泡構造又は独立気泡構造を有し、且つ弾性回復性と機械的強度を有するもので、半導体ウエハーやディスプレー用ガラス基板などを精密に研磨する研磨パッドや、鉄道用軌道から発生する騒音・振動を防止する防振パッド、あるいは自動車、建築、土木分野などで使われる防振パッドなど、極めて耐久性を要する用途に好適に適用される。
10 塗布膜
12 塗布装置
14 第1ウェブロール
14A 第1の連続ウェブ
16 第2ウェブロール
16A 第2の連続ウェブ
18 大径ローラ
22 加熱装置
24 第1回収ロール
26 第2回収ロール
30 発泡ウレタンシート
100 発泡ウレタンシート製造装置

Claims (4)

  1. ジフェニルメタンジイソシアナート由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量が500以下の低分子ポリオール、pKa3.46〜1.00の有機酸、及びシクロアミジン系又はジシクロオクタン系の複素環3級アミンを混合した反応原液、又は、ジフェニルメタンジイソシアナート由来の末端NCO基を有するプレポリマー、発泡剤、分子量が500以下の低分子ポリオール、及びpKa3.46〜1.00の有機酸とシクロアミジン系又はジシクロオクタン系の複素環3級アミンとの塩を混合した反応原液を第1の連続ウェブ上に連続的に塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、
    前記第1の連続ウェブ上の前記塗布膜を加熱して硬化させる加熱工程と、
    を含む発泡ウレタンシートの製造方法。
  2. 前記塗布工程の後、前記加熱工程の前に、前記第1の連続ウェブ上の前記塗布膜に第2の連続ウェブを供給して前記2枚の連続ウェブにより前記塗布膜を挟む第2連続ウェブ供給工程を含み、
    前記加熱工程は、前記塗布膜を前記2枚の連続ウェブにより挟まれた状態で加熱して硬化させる工程である請求項1に記載の発泡ウレタンシートの製造方法。
  3. 前記第1の連続ウェブ及び前記第2の連続ウェブの少なくとも一方は、前記塗布膜と接する面が離型性を有する連続ウェブである請求項2に記載の発泡ウレタンシートの製造方法。
  4. 前記pKa3.46〜1.00の有機酸が、オルトフタル酸、マレイン酸又はマロン酸である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発泡ウレタンシートの製造方法。
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