JP5991982B2 - アーク溶解炉装置及び被溶解物のアーク溶解方法 - Google Patents
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Description
このアーク溶解には消耗型アーク溶解と非消耗型アーク溶解とがある。そのうち非消耗型アーク溶解は、減圧アルゴンの雰囲気内で直流アーク電源を用いてタングステン電極を陰極とし、水冷鋳型上に置いた被溶解物(陽極)との問で、一定の強度の直流アーク放電による熱エネルギーによって被溶解物を溶解するものである。
図示するアーク溶解炉200において、溶解室210の下面に銅鋳型201が密着し、溶解室210は密閉容器となされている。また、銅鋳型201の下方には、冷却水が循環する水槽202が設けられ、銅鋳型201は水冷鋳型となされている。また、図示するように棒状の水冷電極203が、溶解室210の上方から室内に挿設され、陰極としてのタングステン製の先端は、ハンドル部204の操作によって溶解室210を上下、前後、左右に移動できるようになされている。
しかしながら、水冷鋳型上で被溶解物を溶解しているため、鋳型に接する溶湯底面は冷却されている。そのため、底部に位置する溶融物が液相から固相にすぐに変化し、充分な攪拌ができない。
そのため、溶解した被溶解物Mを冷却後、図11に示すように、溶解室210の外から操作する反転棒205により銅鋳型201上で材料(被溶解物)Mを反転させ、再び溶解し、その後続けて冷却、反転、溶解のプロセスを複数回繰り返すことによって攪拌を行い、材料(被溶解物)Mの微細組織や成分の内部分布を均一化する方法が用いられている。
そして、前記架台に、この架台を傾動させるハンドル部が設けられ、ハンドル部を操作することにより、溶解炉を傾動させ、溶解された被溶解物を揺動し攪拌するように構成されている。
このようなアーク溶解炉によれば、ハンドル部の操作により溶解炉を傾動させることができるため、鋳型上で溶解された被溶解物(溶湯)を揺動させて、その固相化を抑制し、さらに揺動の傾斜を大きくすることにより効果的に被溶解物を攪拌することができる。
また、架台に設けられたハンドル部を操作して溶解炉を傾動させることにより、溶解された被溶解物を揺動し攪拌する場合には、作業者に多大な労力をかけるという技術的課題を有していた。
また、溶湯の揺動を大きくすることによってより攪拌がなされ、この溶湯の揺動の振幅が放電電流の周波数に大きく依存することを見出し、本発明を想到したものである。
ここに言う出力強度の変化の波形は正弦波、矩形波、三角波、パスル波形などの事であり、周波数とは該出力強度の強弱変化周期の逆数である。
即ち、アーク放電の出力を強弱させることによって、アーク放電によって生じる力に強弱を与え、溶解された被溶解物を揺動させ、攪拌するものであり、この揺動、攪拌により、均一な組織の材料や均一な組成分布の合金等を得ることができる。
このように電源部からの電流周波数を制御することにより、溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になるように、前記放電電極からのアーク放電の出力に強弱を加えることができ、溶解された被溶解物をより揺動させ、攪拌でき、この揺動、攪拌により、より均一な組織の材料やより均一な組成分布の合金等を得ることができる。
このように予め実験等により溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅を最大とする、前記電流周波数を求め、その電流周波数に基づいて、電源部を制御することによって、放電電極からのアーク放電の出力に自動的に強弱を加えることができる。
このように、前記溶湯計測手段から入力される検出信号によって、前記制御装置が電源部からの電流周波数を制御し、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変することにより、溶湯の揺動を大きくでき、より攪拌をなすことができる。
特に、溶湯の形状変化が最大(揺動振幅が最大)となるように電源部からの該電流周波数を制御し、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変することが望ましい。また、溶湯の形状変化を計測し、計測した溶湯の形状変化の振幅を検出する検出信号を、前記制御装置に出力する溶湯計測手段を備えることにより、省力化でき、より短時間での溶解作業を行うことができる。
このように、前記した溶湯形状変化を計測する溶湯計測手段に代えて、溶湯の光量変化を計測し、計測した溶湯の光量の変化幅を検出する検出信号を、前記制御装置に出力する溶湯計測手段を用いることもできる。
ここで、溶湯の光量変化とは、アーク放電の光が溶湯で反射して戻ってくる光量の変化や、高温の被溶解物からの輻射光等の変化である。かかる光量の計測は、溶湯の揺動振幅の評価に対して正確さに欠けるが、溶湯形状の計測(例えば、画像解析手段を用いた形状計測)より安価に、容易かつ高速に計測できるため、より好ましい。
即ち、アーク放電の出力強度を変化させ、アーク放電によって生じる力に強弱を与え、溶解された被溶解物を揺動させ、攪拌するものであり、この揺動、攪拌により、均一な組織の材料や均一な組成分布の合金等を得ることができる。
このように溶湯計測手段で測定しながら、溶湯の形状変化の振幅が最大になる、あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になる、電流周波数を求め、求めた電流周波数に対して一定範囲にある電流周波数の出力電流を、電源部から非消耗放電電極に所定時間供給し、被溶解物の溶解するため、溶解された被溶解物をより揺動させ、攪拌するものであり、この揺動、攪拌により、より均一な組織の材料やより均一な組成分布の合金等を得ることができる。
溶解に用いる電流周波数の決定は、電流周波数を所定の周波数幅をもって小さい周波数から順次に大きい周波数に変化させていき、溶湯の揺れが最大になる周波数を求めるが、溶湯の形状変化の振幅が最大になる、また前記溶湯の光量の変化幅が最大になる電流周波数を超えると、溶湯の揺れが急激に減少する。そのため、誤差等により最大電流周波数を超えることがないように、電流周波数から1.5Hz小さい範囲内にある電流周波数を最大周波数(最適周波数)とするのが好ましい。
さらに、本発明においては動力を用いた被溶解物の反転工程を加える事により、より高品質な合金等を人手を介さずに自動で製造する事が容易となる。
先ず、本発明の実施形態のアーク溶解炉装置1の全体構成を、図1を用いて説明する。
図1に示すように、アーク溶解炉装置1は、溶解室2の下面に銅鋳型3が密着し、溶解室2は密閉容器となされている。また、銅鋳型3の下方には、冷却水が循環する水槽4が設けられ、銅鋳型3は水冷鋳型となされている。
この水冷電極5のタングステン製の先端部は、銅鋳型3の上面(凹部3a)と相対向する位置に配置されている。また、この水冷電極5の先端は、ハンドル部(図示しない)の操作によって溶解室2を上下、前後、左右に移動できるようになされている。
また、前記水冷電極5は、電源部10の陰極に電気的に接続され、前記水冷電極5に電力を供給するようになされている。また前記電源部10の陽極側は溶解室2、銅鋳型3と共に、接地(アース)されている。
尚、不活性ガス供給部(図示せず)が設けられ、溶解室2を真空に排気した後に、この不活性ガス供給部から溶解室2の内部に不活性ガスが供給、封入され、溶解室2内は不活性ガス雰囲気となされている。
即ち、電源部10からの電流の強度と周波数を制御することにより、アーク放電の出力強度を可変させ、アーク放電によって生じる力に強弱を与える。このアーク放電によって生じる力の強弱によって、溶解された被溶解物は揺動し、攪拌され、均一な組織の材料や均一な組成分布の合金等とされる。
具体的には、CCDカメラ等によって、溶湯の形状を画像解析し、その画像変化(形状変化)に応じた検出信号を、制御装置に送出する。そして前記制御装置11によって電源部10からの出力電流(電流の強度)と該電流周波数を制御し、前記放電電極5からのアーク放電の出力強度に強弱を加えるように構成されている。
この光量センサを用いる場合には、CCDカメラを用いた場合に比べて、安価であり装置のコストを抑制することができる。また、CCDカメラを用いた場合に比べて、容易かつ高速に計測できる。
尚、図1中、符号7は、溶解室2の下面部分を操作するレバーであって、このレバー7を操作することにより、溶解室2から下面部の銅鋳型3を取外すことができ、前記銅鋳型3上(凹部3a内)に被溶解物を収容し、また凹部3a内から被溶解物を取出すことができる。
そして、溶解室2内を不活性ガス、通常はアルゴンガス雰囲気とした後に、水冷電極5のタングステン電極(陰極)と銅鋳型3上の被溶解物(陽極)との間でアーク放電を発生させ、被溶解物を溶解する。
合金の作製においては、複数の金属材料を秤量し銅鋳型3上に載置(凹部3aに収容)する。そして、上記場合と同様に、溶解室2内を不活性ガス、通常はアルゴンガス雰囲気とした後に、水冷電極5のタングステン電極(陰極)と銅鋳型3上の合金材料(陽極)との間でアーク放電を発生させ、その熱エネルギーにより複数の異なる合金材料が溶解し、合金化される。
即ち、前記銅鋳型52にはモータ54が設けられ、回転軸54aを中心に回転可能に設けられている。また、銅鋳型52の下方には、冷却水が循環する水槽53が設けられ、ロータリジョイント55を介して、水を導入、排出できるようになされている。
この自動反転装置は、溶解した被溶解物を冷却した後、溶解室2の外から反転リング56をモータ57で回転させることにより、銅鋳型52(凹部52a)上で材料(被溶解物)を反転させることができるようになされている。
尚、符号57aは回転軸、符号57bは軸受けであり、符号58は、被溶解物を反転した際、被溶解物が凹部52aから外部に飛び出すのを防止する、半球状の飛散防止具である。
その後、アーク溶解炉装置50の前扉59を閉じ、溶解室2を閉鎖し、溶解室2内を図示しない真空ポンプにより真空状態になした後に、不活性ガス、通常はアルゴンガスを供給し、溶解室2内をアルゴンガス雰囲気とする。
そして、図3に示すポジション(放電ポジション)P1において、水冷電極5からのアーク放電により、被溶解物を溶解する。溶解後、銅鋳型52を回転させ、ポジションP2に送り出す。そして、新たな被溶解物をポジションP1に搬入し、溶解する。そして、溶解後、再びポジションP2に送り出す、
前記ポジションP6は、反転リング56によって、冷却した被溶解物を反転させるポジションであり、反転された被溶解物は、再びポジションP1に戻り、再溶解される。
先ず、電源部10は定電流Icを送出するように構成され、前記制御装置11が前記電源部10からの出力電流(電流の強度)と該電流周波数を制御するように構成されている。即ち、制御装置11は、定電流Icに、振幅I0の正弦波を加算し、電源部10からアーク放電を行う水冷電極5に対して、
I=Ic+I0・sinωt ……(1)
とする電流Iが供給されるように制御する。
尚、水冷電極は陰極とされるため、電流Iを負の値で図示した。また、本発明では、後述のように、|Ic|>|I0|を必要条件としている。すなわち、Icは負の値であり、かつ、Ic+I0<0(負の値)となり、|Ic+I0|は電流の絶対値(電流強度)の最小値となっている。同様に、|Ic−I0|は電流強度の最大値となる。
Y=Y0+A・sin(ωt+f) ……(2)
Yは溶湯の変位(形状変化)、Y0は溶湯に力が加わらない時の変位(形状)、Aは溶湯の形状変化(揺動)の振幅であり、fは位相差である。この位相差fは、溶湯の粘弾性特性や溶湯と銅鋳型の摩擦などから生じるものである。
即ち、このアーク放電によって生じる力の強弱によって、溶解された被溶解物は揺動し、攪拌され、均一な合金等とされる。尚、図中、Cは電流の値が平均値の場合の形状を示している。
横軸は時間であり、縦軸は放電電流である。非消耗放電電極が陰極であることにより、図5では負の電流値とした。
この放電電流の波形の特徴は、図5に示すように片側(負側)に片寄り、かつ強弱変化が与えられること、更には、その変調周波数がその溶湯の共振周波数と一致しているか、その共振周波数と近い場合には、溶湯を効率よく揺動させることができる。
このように放電電流を、通常の交流の周波数(50Hzや60Hzの周波数)より小さい値の周波数にすることにより、溶湯を効率よく揺動させることができる。
また、図5における電流値Ic+I0と電流値Ic−I0はともに同じ符号(図5では負の値)である、その絶対値(電流の強さ)は値|Ic−I0|が大きく、値|Ic+I0|が小さい。即ち、強弱に変調されている。
本発明にあっては、このような放電電流を「片振り繰返し電流」と称する。
この放電電流の波形が矩形波の場合と正弦波の場合とを比べると、金属ガラスなどの銅鋳型との濡れ性が良くない材料の場合は、正弦波の場合の方が、溶湯の揺動振幅を大きくすることができ、また、放電電流の位相と溶湯計測手段からの検出信号の位相の差(ずれ)からも溶湯の揺動状態の良否を判断できる。
したがって、「片振り繰返し電流」の特定の周波数において、溶湯Mは最大揺動振幅となり、溶湯の揺動は単振動に近いモードとなる。また、「片振り繰返し電流」の特定の周波数(アーク放電の放電周期)と溶湯の揺動周期の位相差が約90度の時に、溶湯の揺動振幅が略最大となる。
このように、溶湯の揺動振幅が最大となる時に溶湯の攪拌効果が大きいので、溶湯(被溶解物)の種類や、溶解目的により、「片振り繰返し電流」の周波数を適宜選択することが望ましい。
そして、この入力手段60によって、溶解する被溶解物の種類、被溶解物の各材料の重量が入力され、入力手段60により動作開始信号が入力されると、溶解炉の動作プログラムに基づいて演算処理部11bは記憶部11cから、第1回目の溶解に最も適した「片振り繰返し電流」の電流値の最大値、最小値と、「片振り繰返し電流」の周波数と、溶解時間の情報を得る。
その後も同様に、溶解炉の動作プログラムに基づいて演算処理部11bは記憶部11cから、第2回目の溶解に最も適した「片振り繰返し電流」の電流値の最大値、最小値と、「片振り繰返し電流」の周波数と、溶解時間の情報を得て、電源制御部11aに制御信号を送出する。電源制御部11aから電源部10を制御する制御信号が送出され、電源部10から所定の電流値、周波数を有する「片振り繰返し電流」を水冷電極5に供給する。
そして、溶解炉の動作プログラムに基づいて、所定回数溶解した後、溶解作業を終了する。
しかしながら、予め実験等で電流値の最大値、最小値と、周波数とを得ることなしに、被溶解物を溶解する毎に、電流の周波数を所定の周波数幅で変化させ、形状変化あるいは照度変化を溶湯計測手段12、51で計測し、最大の揺動振幅あるいは最大の照度を得る周波数を求め、前記周波数を求めた後、該最大の揺動振幅あるいは最大の照度を得る周波数で所定時間溶解を行うようになしても良い。
前記したように、被溶解物を溶解する毎に、電流の周波数を所定の周波数幅で変化させ、形状変化あるいは照度変化を溶湯計測手段12、51で計測し、最大の揺動振幅あるいは最大の照度を得る周波数を求めることにより、最大の振幅変化を得る周波数を自動追尾、自動制御を行うことができ、その周波数が変化しなくなった時点で、「溶解作業が終了した」と判断するようになすこともできる。
溶湯の粘度は材料の均一さの重要な評価値となり、この粘度の値又は粘度が溶解作業の進行とともに変化していく挙動から溶解作業の完成度を知ることができる。
このように、溶湯の最大の振幅変化を得る周波数の変化、溶湯の揺動振幅(溶湯計測手段からの検出信号出力)の減衰挙動から溶湯の粘度を推定すること等により、溶解作業を効率良く遂行でき、さらに溶解作業の終了を自動で判断することもできる。
図10に示す従来のアーク溶解炉を用いて以下の実験を行った。
原材料として、Zr,Cu,Ni,Alを原子比率が55:30:5:10で、全量が25gとなるように銅鋳型201に設けた凹部に収容し、真空に排気した。そして、到達真空度2×10−3Paとなったところで排気を停止し、高純度Arガスを50kPaまで導入した。
その後、直流電源(定電流)を用いたアーク放電により、原材料を溶解した。また、電流300Aで5分間の放電を行った。放電を行いながら操作レバー204を操作し、溶湯全体にアークが当るようにした。
本比較例では、前記反転操作を1回行った合金、2回行った合金、3回行った合金、4回行った合金を作製し、組成の均一性を、EPMA(電子線マイクロアナライザー)で面分析を行い調べた。
尚、図8(a)は反転回数が1回、(b)は反転回数が2回、(c)は反転回数が3回、(d)は反転回数が4回の場合を示す図である。
図において、黒い部分はNi元素が多く集まった箇所である。図から明らかなように、反転回数が少ない場合は、組成斑が大きく、また、合金塊の表面に雛が多く、表面の曇りが顕著であった。反転回数が4回の場合は、ほぼ満足な均一組成の合金となっていることが認められ、また表面も金属光沢を有していた。
このように、従来のアーク溶解炉にあっては、4回程度の反転を行う必要があり、その場合における、放置冷却時間、反転作業時間を除く、溶解時間(放電時間)のみで40分が必要とされる。
図1に示すアーク溶解炉を用い、電源部は電流を正弦波で周波数制御可能な構成とし、溶湯計測手段としてCCDカメラを用いた。
原材料として、Zr,Cu,Ni,Alを原子比率が55:30:5:10で、全量が25gとなるように銅鋳型に設けた凹部に収容し、真空に排気した。そして、到達真空度2×10−3Paとなったところで排気を停止し、高純度Arガスを50kPaまで導入した。
その後、正弦波の電流を加算した電流を電源部10から水冷電極5に供給し、前記アーク放電により、原材料を溶解した。
尚、このときの最大電流は300A、最小電流は200Aとした。電流の周波数は12Hzとした。
反転の前後のアーク放電時間は同じとし、かつできた合金(試料)の表面状態(雛状の不均一部分の有無)を目視観察し、また断面EPMA面分析を行った。断面EPMA面分析の結果を、図9に示す。図9(a)は10分の試料であり、図9(b)は15分の試料である。15分以上は全て図9(b)と同じ面分析結果だったので図示省略した。この図9から明らかなように、反転前後の溶解時間の合計が15分以上で均一な組成の合金を得ることができることを確認した。
また、できた合金塊の表面の光沢は、溶融時間が長いほど、縞麗な光沢を示し、20分と25分と30分では差がなかった。
図1に示すアーク溶解炉を用い、電源部は電流を正弦波で周波数制御可能な構成とし、溶湯計測手段としてCCDカメラを用いた。
原材料として、Zr,Cu,Ni,Alを原子比率が55:30:5:10で、全量が2g、3g、4g、30gの場合について、以下の実験を行った。
まず、上記原材料を銅鋳型に設けた凹部に収容し、真空に排気した。そして、到達真空度2×10−3Paとなったところで排気を停止し、高純度Arガスを50kPaまで導入した。その後、正弦波の電流を加算した電流を電源部10から水冷電極5に供給し、前記アーク放電により、原材料を溶解した。
このときの最大電流は300A、最小電流は200Aとし、電源部からの電流を正弦波で、周波数を2Hz,5Hz,10Hz,20Hz、30Hz,40Hz,50Hz,60Hzと変えて行った。反転操作は1回行うこととし、溶解時間は反転操作の前後それぞれ7.5分間、合計15分間とした。
そしてまた、できた合金(試料)の表面状態(綴状の不均一部分の有無)を目視観察した。
その結果、原材料が2gの場合には40Hz、3gの場合には30Hz、4gの場合には30Hz、30gの場合には10Hzで溶解した合金が最も均一であり、合金塊の表面に光沢があることを確認することができた。
尚、この溶湯の共振周波数が質量の平方根に反比例するとして計算した値は、原材料が2gの場合には42.6Hzであり、3gの場合には34.8Hzであり、4gの場合には30.1Hzであり、30gの場合には11Hzである。
即ち、上記合金の均一性の妥当な評価である合金塊の表面光沢の結果からして、変調周波数が、溶湯の共振周波数に近い周波数、また溶湯の共振周波数と同一の周波数である場合には、溶湯が効率よく揺動させることができ、好適であることが認められた。
図1に示すアーク溶解炉を用い、電源部は電流を正弦波で周波数制御可能な構成とし、溶湯計測手段として照度計を用いた。
原材料として、Zr,Cu,Ni,Alを原子比率が55:30:5:10で、全量が15g、20g、25g、30g、35g、40gの場合について、以下の実験を行った。
まず、上記原材料を銅鋳型に設けた凹部に収容し、真空に排気した。そして、到達真空度2×10−3Paとなったところで排気を停止し、高純度Arガスを50kPaまで導入した。その後、第1の工程として、定電流300Aの直流電流を60秒間、電源部10から水冷電極5に供給し、前記アーク放電により、原材料を溶解し、その後、被溶解物を反転した。
そして、開始周波数を8Hzから測定終了周波数13.7Hzの間で、最も光量の変化幅が大きくなる周波数(最大振幅を与える周波数)を求めた。尚、このときの最大電流は350A、最小電流は250Aとした。
更に、最も光量の変化幅が大きくなる周波数(最大振幅を与える周波数)で、120秒間、電源部10から水冷電極5に供給し、前記アーク放電により原材料を溶解し、その後、冷却後に被溶解物を反転した。
そして、開始周波数を8Hzから測定終了周波数13.7Hzの間で、最も光量の変化幅が大きくなる周波数(最大振幅を与える周波数)を求めた。尚、このときの最大電流は350A、最小電流は250Aとした。
更に、最も光量の変化幅が大きくなる周波数(最大振幅を与える周波数)で、120秒間、電源部10から水冷電極5に供給し、前記アーク放電により原材料を溶解し、その後、冷却後に被溶解物を反転した。
即ち、第3工程として、前記第2工程と同一の工程、即ち、第2回目の周波数のサーチを行い、また、最も光量の変化幅が大きくなる周波数(最大振幅を与える周波数)を求め、その後、冷却後に被溶解物を溶解、反転した。
尚、表1に、各試料重量の各回の最も光量の変化幅が大きくなる最大周波数(最大振幅を与える最大周波数)を示す。尚、単位は、Hzである。
そのため、実際のアーク溶解においては、誤差等を考慮して、表1に示した最も光量の変化幅が大きくなる最大周波数(最大振幅を与える最大周波数)よりも、1.5Hz以内の幅で小さい周波数とするのが好ましく、本実施例の実験では約0.5Hz減じた、表3に示す周波数を最適周波数とした。
あるいはまた、この実施例3に示した場合のように最適周波数を求めながら、前記最適周波数で電源部を制御することにより、被溶解物を溶解しても良い。
2 溶解室
3 銅鋳型
4 水槽
5 水冷電極(非消耗放電電極)
6 反転棒
7 下面部操作レバー
10 電源部
11 制御装置
12 溶湯計測手段
50 アーク溶解炉装置
51 溶湯計測手段
51A 照度計
51B CCDカメラ
52 銅鋳型
52a 凹部
53 水槽
54 モータ
55 ロータリジョイント
56 反転リング
57 モータ
58 飛散防止具
P1 溶解ポジション
P6 反転ポジション
Claims (14)
- 溶解室の内部に設置された凹部を有する鋳型と、前記凹部に収容された被溶解物を加熱溶解する非消耗放電電極と、前記非消耗放電電極に電力を供給する電源部と、前記電源部を制御することにより、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を制御する制御装置とを備え、前記アーク放電が片振り繰返し電流を非消耗放電電極に供給することによってなされるアーク溶解炉装置であって、
前記制御装置が前記電源部からの電流周波数を制御することにより、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変し、前記被溶解物が加熱溶解した溶湯を攪拌することを特徴とするアーク溶解炉装置。 - 前記制御装置は、前記溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になるように前記電源部からの前記電流周波数を制御することを特徴とする請求項1記載のアーク溶解炉装置。
- 前記制御装置には記憶部が設けられ、前記記憶部に、予め求められた溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅を最大とする、前記電流周波数が記憶され、
前記制御装置は、前記記憶部に記憶された溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅を最大とする前記電流周波数を読み出し、
前記読み出された前記電流周波数に基づいて、前記電源部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載のアーク溶解炉装置。 - 前記溶湯の形状変化を計測し、計測した溶湯の形状変化の振幅を検出する検出信号を、前記制御装置に出力する溶湯計測手段を備え、
前記溶湯計測手段から入力される検出信号によって、前記制御装置が電源部からの電流周波数を制御し、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変することを特徴とする請求項1または請求項3記載のアーク溶解炉装置。 - 前記溶湯の光量変化を計測し、計測した溶湯の光量の変化幅を検出する検出信号を、前記制御装置に出力する溶湯計測手段を備え、
前記溶湯計測手段から入力される検出信号によって、前記制御装置が電源部からの電流周波数を制御し、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変することを特徴とする請求項1または請求項3記載のアーク溶解炉装置。 - 前記制御装置は、前記溶湯の形状変化の振幅あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になるように、前記電源部からの電流周波数を制御することを特徴とする請求項4または請求項5記載のアーク溶解炉装置。
- 前記鋳型には複数の凹部が形成されると共に、前記鋳型は回転軸を中心に回転可能に形成され、
かつ前記鋳型の凹部内の被溶解物を反転する反転リングが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアーク溶解炉装置。 - 非消耗放電電極からのアーク放電によって被溶解物を溶解する方法であって、
前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を、電源部から前記非消耗放電電極に供給される片振り繰返し電流の電流周波数を変化させることにより可変し、前記被溶解物を加熱溶解することを特徴とする被溶解物の溶解方法。 - 溶解室の内部に設置された凹部を有する鋳型と、前記凹部に収容された被溶解物を加熱溶解する非消耗放電電極と、前記非消耗放電電極に電力を供給する電源部と、前記電源部を制御することにより、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を制御する制御装置とを備えたアーク溶解炉装置の被溶解物の溶解方法であって、
前記制御装置によって電源部から前記非消耗放電電極に供給される片振り繰返し電流の電流周波数を変化させ、前記非消耗放電電極からのアーク放電の出力強度を可変し、前記被溶解物を加熱溶解することを特徴とする請求項8記載の被溶解物の溶解方法。 - 前記制御装置によって、片振り繰返し電流の電流周波数を所定の周波数幅をもって、開始周波数から所定の周波数間隔ずつ周波数を上昇させ、その周波数毎の溶湯の形状変化の振幅あるいは溶湯の光量の変化幅を溶湯計測手段で測定し、前記溶湯の形状変化の振幅が最大になる、あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になる、電流周波数を求め、
前記求めた電流周波数に対して最大周波数よりも小さい一定範囲の電流周波数の片振り繰返し電流を電源部から非消耗放電電極に所定時間供給し、被溶解物の溶解することを特徴とする請求項9記載の被溶解物の溶解方法。 - 前記制御装置によって、片振り繰返し電流の電流周波数を所定の周波数幅をもって、開始周波数から所定の周波数間隔ずつ周波数を上昇させ、その周波数毎の溶湯の形状変化の振幅あるいは溶湯の光量の変化幅を溶湯計測手段で測定し、前記溶湯の形状変化の振幅が最大になる、あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になる、電流周波数を求め、
前記求めた電流周波数に対して最大周波数よりも小さい一定範囲の電流周波数の片振り繰返し電流を電源部から非消耗放電電極に所定時間供給し、被溶解物の溶解する工程が、複数回なされることを特徴とする請求項10記載の被溶解物の溶解方法。 - 前記被溶解物の溶解する工程を複数回なされる際、
前記被溶解物の溶解する工程の後、前記鋳型の凹部内で被溶解物を反転させる反転工程がなされ、
その後、再び前記被溶解物を溶解する工程がなされることを特徴とする請求項11記載の被溶解物の溶解方法。 - 前記の反転工程の反転操作が動力を用いて自動でなされる事を特徴とする請求項12記載の被溶解物の溶解方法。
- 前記求めた電流周波数に対して一定範囲にある電流周波数は、溶湯の形状変化の振幅が最大になる、あるいは前記溶湯の光量の変化幅が最大になる、電流周波数から1.5Hz小さい範囲内にある電流周波数であることを特徴とする請求項10または請求項11記載の被溶解物の溶解方法。
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