JP5991354B2 - 澱粉糊液の稠度調整剤 - Google Patents

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Description

本発明は、澱粉糊液の稠度調整剤に関する。
澱粉は、増粘、保型、接着等の目的で、食品及び非食品工業分野で一般的に用いられる。使用においては一般に、澱粉に水分を加え加熱し、澱粉粒が糊化した糊液の状態を経る。加熱の過程で澱粉糊液は一時的に激しく増粘し、加熱を続けると澱粉粒が崩壊して粘度が低下する。冷却することで澱粉粒の再構成が生じて再び粘度が高まり、一般に澱粉糊に期待される粘度付与、保型、接着等の機能が発現する。その粘度、流動性、硬さ等によって、ペースト状の物質がどのような扱いやすさを有するかを、稠度と言う。澱粉糊液の稠度は、加熱や冷却の工程の中で大きく変化しており、その制御は食品の加工上、また最終的に所望の製品を得る上で、重要である。
澱粉糊液の加熱の過程における一時的な激しい増粘は、撹拌、送液、殺菌、均質化、酵素反応等の食品製造工程において障害となり、生産効率の低下を招くことがある。例えば、澱粉で粘度付与しボディ感を出す液、ペーストあるいはゲル状の食品の製造においては、タンク内で加熱糊化させる過程で不均一な撹拌状態となったり、ライン中に付着が発生することがある。特に、プレート式やチューブ式等の超高温瞬間殺菌(UHT殺菌)を行う際には、焦げ付きや付着による詰まりが発生し、流量が低下したり中間洗浄を要する等、生産性が低下する場合がある。UHT殺菌は、一般に120℃を超える温度で瞬間的に加熱処理するため、低温の殺菌法では殺菌出来ない耐熱性菌も死滅させることが出来、食品の保存性を高める上で非常に重要な食品加工技術である。澱粉によって加熱時に激しい増粘を生じる食品のUHT殺菌適性を向上させることは、食品加工上の大きな課題であった。
加熱糊化時の激しい増粘を抑制するには、澱粉の配合量を下げる、低粘度の品種や加工された澱粉を用いることが検討されるが、コスト、原料の性質、原料表示、最終製品の物性や風味への影響等から、それらが望ましくない場合がある。澱粉の粘度低下法としては、化学的手法や物理的手法の種々の方法が知られているが、食品用澱粉に使用出来る方法は限定される。食品に用いる澱粉に対しては、硫酸、塩酸、酢酸等による酸処理、次亜塩素酸やその塩による酸化処理、架橋処理、加熱焙焼処理、アミラーゼ等による酵素処理等が一般的に用いられる。これらの方法は、澱粉を分解したり官能基を変化させることにより、粘度を低下させる。この場合、加熱糊化に次いで糊液を冷却した際の粘度も低下するため、高分子としての澱粉の機能、即ち糊としての粘度付与、保型、接着等の機能が所望される場合に、好ましくない。加えて、これらの処理に必要な添加物が、最終製品の味や風味を変化させることがある。味や風味を変化させることなく、冷却後の粘度や糊としての機能には影響を与えずに、加熱時の一時的な増粘のみを抑制する方法、即ち、加工から消費の過程においてその時々に適した稠度に調整する方法が、食品加工の効率化、とりわけ製品をUHT殺菌に供する上での効率化の面で望まれている。
澱粉の構造を実質的に変えることのない方法として、澱粉分解物を添加することによって糊液粘度を低下させる方法が開示されている(特許文献1)。これは、澱粉に対して等量以上、好ましくは5倍以上という大量の澱粉分解物の添加を必要とし、非効率的である。また、グアガム分解物やアラビノガラクタンを添加することで澱粉含有食品の過膨潤を抑制する方法が開示されている(特許文献2)。これは、米や麺等の澱粉含有食品を対象として、糊化による結着を防止することを目的としており、糊としての機能を根本的に抑制することに主眼を置いているため、特許文献2の技術は糊としての粘度付与、保型、接着等の機能が所望される場合に機能が不十分であった。また、澱粉の粉体を水溶液に分散させ加熱して成る糊液については示されていない。大豆多糖類を使用して澱粉を含有するルー類の流動性を向上させる方法が開示されているが(特許文献3、4)、冷めた状態あるいは冷蔵した状態でゲル化せず流動性が良いことを効果としており、冷却後の粘度が低下しすぎるため糊としての粘度付与、保型、接着等の機能が所望される場合に機能が不十分な場合があった。また、原料の大豆に由来するアレルゲンが問題となって使用出来ない場合があった。食品アレルギーに対する消費者の意識が年々高まっており、アレルゲンフリーである素材が望まれている。
特開平9-272702号公報 特開平5-276882号公報 特開平9-289880号公報 WO2008/111676号公報
このように、従来の澱粉の加熱糊化時の増粘を抑制する技術は、澱粉を酸化あるいは分解することによって低分子化させており、本質的に澱粉の糊としての機能を低下させるものであった。また、澱粉を本質的に変化させない物質の添加による場合も、加熱プロセスにおける澱粉糊液の一時的な激しい増粘のみを抑制しつつ、冷却後の粘度に大きな影響を与えない、すなわち、冷却後の粘度が高すぎたり低すぎたりすることを防ぐことのできる稠度調整技術としては不十分なものであった。
そこで本発明は、澱粉を本質的に変化させることなく、加熱時の一時的な激しい増粘のみを抑制し、かつ、冷却後の粘度に大きな影響を与えないようにすることの出来る澱粉糊液の稠度調整剤を提供することを目的とした。
本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、水溶性エンドウ多糖類を含有する稠度調整剤を添加することで加熱工程での澱粉糊液の一時的な増粘を抑制し、低粘度化出来ることを見出した。更には、その粘度低下効果が糊液冷却後の粘度には大きく影響せず、粘度が下がりすぎることがないため、糊としての機能は水溶性エンドウ多糖類を含有する稠度調整剤を添加しない場合と同様に維持出来るという特徴を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)水溶性エンドウ多糖類を含有することを特徴とする、澱粉糊液の稠度調整剤、
(2)稠度調整が、ラピッドビスコアナライザーで澱粉糊液の粘度を測定したときの最高粘度が、稠度調整剤の無添加時に対し5%以上低下し、かつ、最終粘度が稠度調整剤の無添加時に対し±10%以内である、(1)記載の稠度調整剤、
(3)(1)または(2)記載の稠度調整剤を添加してなる澱粉糊液、
(4)稠度調整剤の添加量が、澱粉の重量に対して0.1〜15重量%である、(3)記載の澱粉糊液、
(5)水溶性エンドウ多糖類を添加することを特徴とする、澱粉糊液の製造方法、
(6)水溶性エンドウ多糖類を添加することを特徴とする、澱粉糊液製造時の粘度上昇抑制方法、
である。
本発明の稠度調整剤は、澱粉の加熱糊化時の一時的な激しい増粘を抑制し、澱粉糊液の撹拌、送液、殺菌、均質化、酵素反応等の食品製造工程に対する適性、特に通液時の焦げ付きや付着による詰まりを低減することでUHT殺菌適性を向上させることが出来る。また、加熱糊化に次いで糊液を冷却した後の粘度には大きな影響を与えないため、澱粉の糊としての機能を損なうことなく生産適性を改善することが出来る。
(水溶性エンドウ多糖類)
本発明における水溶性エンドウ多糖類とは、エンドウ種子から抽出される水溶性の多糖類を指す。好ましくはエンドウ種子の子実部から抽出されたものであり、更に好ましくは黄色エンドウの種子から抽出されたものである。その製造方法は、例えば国際出願PCT/JP2012/065907号明細書に記載される製造例で得ることが出来る。
(水溶性エンドウ多糖類の製造法)
工業的には、エンドウ種子に含まれる蛋白質画分並びに澱粉画分を除去した繊維画分を原料として、水または熱水で抽出して得ることが出来る。製造法の一例を示せば、原料に5〜20倍量の水を加水したのち、酸或いはアルカリを添加してpH3からpH12の範囲、好ましくはpH4からpH10の範囲に調整する。続いて、60℃以上150℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下の温度で水溶性エンドウ多糖類を抽出する。抽出時間は概ね0.5〜3時間であるが、原料の状態や温度等により、任意に調整することが出来る。抽出した水溶性エンドウ多糖類は、不溶性繊維分を遠心分離機等により分離した後に、任意で除澱粉・除蛋白・除低分子等の精製処理や殺菌処理を行い、そのまま水溶液として用いても良いし、乾燥して用いても良い。
(分子量)
本発明に使用する水溶性エンドウ多糖類は、構成成分として分子量1万以上の高分子成分を含むが、以下の条件でのゲル濾過で分析される、分子量1万以上と認められる画分をもって、高分子成分と定義する。平均絶対分子量(MM)は10万から100万が好ましく、20万から80万がより好ましい。
ゲル濾過は、HPLC(TSK-gel G-5000PWXL: 東ソー φ7.8mm×300mm)を用い、平均絶対分子量(MM)は、カラム通液後にトルエンでキャリブレーションしたマルチアングルレーザーライトスキャッタリング(MALLS)により求める。分析条件は、溶離液:50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH5.0)、流速:1.0mL/min、 RI検出器及びMALLS検出器にて行う。
(構成糖)
本発明に使用する水溶性エンドウ多糖類は、構成糖として酸性糖であるガラクツロン酸が含まれるものである。また主要な中性糖としてアラビノースとガラクトースが含まれるものである。その他の中性糖としてグルコース、ラムノース、キシロース及びフコースが含まれていても良い。酸性糖であるガラクツロン酸の糖組成は3〜40重量%であることが好ましい。また中性糖の糖組成は60〜97重量%であることが好ましい。また中性糖としてアラビノースの糖組成が20〜50重量%であるのが好ましく、ガラクトースの糖組成は10〜30重量%であるのが好ましい。 尚、水溶性エンドウ多糖類の全糖含量はフェノール硫酸法を用いた比色定量法にて、ガラクツロン酸含量はBlumenkrantz法を用いた比色定量法にて測定する。中性糖の組成は、硫酸分解した後、電気化学検出器を用いたイオンクロマトグラフィー法(HPLC-PAD法)を用いて測定する。
(澱粉)
本発明を適用出来る澱粉の種類に限りはないが、トウモロコシ、小麦、米等の種子由来、サゴ椰子等の幹由来、ジャガイモ、キャッサバイモ等の根茎由来、サツマイモ等の根茎由来の澱粉が例示出来る。また、これらの澱粉を原料として湿熱処理、アルファ化、油脂加工等の物理的処理、酸化、エステル化、エーテル化、架橋等の化学的加工、またそれらを2種以上組み合わせた処理を施したものであっても良い。
(澱粉糊液)
本発明で述べる澱粉糊液とは、澱粉が分散した水溶液に対して澱粉の糊化温度以上の加熱を行った結果澱粉粒の糊化膨潤が生じ、粘性のある状態となったものを言う。澱粉の好ましい濃度は、澱粉種によって異なるが、系中0.1〜40重量%であり、さらに好ましくは1.0〜30重量%である。澱粉の分散媒及び糊液に対しては所望に応じて、生乳類、粉乳類、濃縮乳類、乳タンパク分離物、植物性タンパク分離物及び濃縮物、卵及びその加工品、各種タンパク加水分解物等のタンパク質原料やその発酵物、乳脂及びその加工品、植物性油脂及びその加工品等の油脂原料、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大豆粉等の穀粉類、ショ糖、トレハロース、液糖、水あめ等の糖類、糖アルコール類、塩類、有機酸類とその塩、無機酸類とその塩、乳化剤、増粘多糖類、香辛料、香料、食物繊維、酵素等を添加しても良い。
(稠度調整剤)
本発明の稠度調整剤は水溶性エンドウ多糖類を含有することを特徴とする。本発明でいう澱粉糊液の稠度調整とは、ラピッドビスコアナライザーを用いた粘度測定において、稠度調整剤が無添加の系よりも、最高粘度が低下され、かつ、冷却後の最終粘度が稠度調整剤が無添加の系と大きな差異がないことをいう。つまり、澱粉糊液の稠度調整剤として機能を発揮するためには、加熱プロセスにおける澱粉糊液の一時的な激しい増粘のみを抑制しつつ、冷却後の粘度に大きな影響を与えないことが必要である。
ラピッドビスコアナライザーを用いた評価方法は、例えば、以下の方法が例示できる。
澱粉として、馬鈴薯澱粉(和光純薬工業株式会社製)2g、稠度調整剤として、水溶性エンドウ多糖類の1%水溶液1g、水22gをアルミ製カップに秤量する。次に、ラピッドビスコアナライザー(フォス・ジャパン株式会社製)にカップをセットし、カップ中の溶液をパドルで撹拌(160rpm)しながら、35℃から95℃まで12分で昇温後、95℃で10分保持し、35℃まで12分で降温した後、35℃で4分保持する。その間の粘度を測定し、昇温過程での最高粘度と、測定終了時の最終粘度を記録する。
稠度調整剤としての評価は、稠度調整剤の無添加時に対する最高粘度の低下度合(最高粘度の無添加に対する低下率)と、稠度調整剤の無添加時に対する最終粘度の差の比率(最終粘度の無添加に対する差の割合)により行う。つまり、「加熱プロセスにおける澱粉糊液の一時的な激しい増粘のみを抑制」を最高粘度の無添加に対する低下率で評価し、「冷却後の粘度に大きな影響を与えないこと」を最終粘度の無添加に対する差の割合で評価する。
それぞれの計算式を以下に示す。

・最高粘度の無添加に対する低下率(%)=(稠度調整剤無添加時の最高粘度−稠度調整剤添加時の最高粘度)÷稠度調整剤無添加時の最高粘度
・最終粘度の無添加に対する差の割合(%)=(稠度調整剤無添加時の最終粘度−稠度調整剤添加時の最終粘度)÷稠度調整剤無添加時の最終粘度

最高粘度の無添加に対する低下率(%)が好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上であり、かつ、最終粘度の無添加に対する差の割合(%)が好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内、さらにより好ましくは3%以内である場合、澱粉の稠度調整剤として優れていると判断する。
(稠度調整剤の澱粉への添加)
本発明で使用する稠度調整剤は、粉状、粒状、液状など様々な形態で糊液中に添加することが出来る。添加方法として、例えば、澱粉や他の粉体原料と粉体混合する方法、予め水溶液にして分散媒に添加する方法が挙げられるが、澱粉ならびに他の原料中に均一に混合出来る添加方法であればどのような方法を選択しても差し支えない。
添加量は、所望の効果によって任意に選択出来る。稠度調整剤の添加量は、澱粉の重量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。0.1重量%未満であると、糊化時の最高粘度を低下させる効果が十分でない場合があり、15重量%を超えると最終粘度に影響を与える場合がある。
(UHT殺菌法)
UHT殺菌法には、蒸気をプロセス液に直接接触させ加熱する直接加熱方式と、プレート等による熱交換によって加熱する間接加熱方式がある。本発明の生産性向上効果が好ましく得られるUHT殺菌法は、間接加熱方式である。間接加熱方式には、プレート式、チューブ式、掻き取り式等の種類があるが、プレート式やチューブ式が好ましい。殺菌温度は、澱粉を含む原料が120℃〜135℃、好ましくは120℃〜130℃に2秒以上保持された時と同等の殺菌効果が得られる殺菌条件に、プロセス液の物性や性質に応じて任意に設定可能である。
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。例中の「部」は重量部を、「%」は重量%を意味する。
(製造例1)水溶性エンドウ多糖類の製造
エンドウの種子50kgを脱皮した後、5倍量の水を加えて24時間浸漬した。ホモミキサー(5,000rpm、30分間)にて種子を砕き、蛋白質と澱粉を抽出した。遠心濾過機を用いて1,500×g、20分間で水に分散している蛋白質や澱粉などの成分を除去し、繊維質を回収した。更に、繊維質に5倍量の水を加えてホモミキサー(3,000rpm、30分間)で攪拌し、遠心濾過(1,500×g、20分間)により繊維質を回収した。この操作を2回繰り返し、凍結乾燥して10kgのエンドウ繊維を得た。エンドウ繊維80部を920部の水に分散し、塩酸を用いてpH5に調整した後、120℃にて90分間加熱して水溶性エンドウ多糖類を抽出した。エンドウ繊維100部に対して0.2部に相当するアミラーゼ(「Fungamyl」ノボザイム社製)を抽出液に添加し、澱粉を分解した後、不溶性繊維を遠心分離(5,000rpm、30分間)にて除去して上清を回収した。この上清に60重量%になるようにエタノールを加えて水溶性エンドウ多糖類を沈殿させ、90重量%の含水エタノールで精製し、得られた沈殿を風乾して水溶性エンドウ多糖類を得た。
得られた水溶性エンドウ多糖類の分析値を表1に記載した。
(表1)
Figure 0005991354
(実施例1〜4)馬鈴薯澱粉への添加
馬鈴薯澱粉(和光純薬工業株式会社製)2g、稠度調整剤として、水溶性エンドウ多糖類の1%水溶液1g、水22gをアルミ製カップに秤量した。ラピッドビスコアナライザー(フォス・ジャパン株式会社製)にセットし、溶液をパドルで撹拌(160rpm)しながら、35℃から95℃まで12分で昇温後、95℃で10分間保持し、35℃まで12分で降温した後、35℃で4分間保持した。その間の粘度を測定し、昇温過程での最高粘度と、測定終了時の最終粘度を記録した(実施例1)。
水溶性エンドウ多糖類の1%水溶液の量を2g、10g、20g、水の量をそれぞれ21g、13g、3gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例2〜4)。
(比較例1)
実施例1において、系を馬鈴薯澱粉(和光純薬工業株式会社製)2g、水23gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(比較例2〜4)
実施例2〜4において、水溶性エンドウ多糖類を水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-LA200」不二製油株式会社製)とした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
実施例1〜4及び比較例1〜4について、最高粘度、最高粘度の無添加に対する低下率、最終粘度、最終粘度の無添加に対する差の割合を表2に示した。
表2:馬鈴薯澱粉の最高粘度と最終粘度
Figure 0005991354
水溶性エンドウ多糖類の添加量の増加に従って、馬鈴薯澱粉の加熱時の糊液の最高粘度が低下し、水溶性エンドウ多糖類を0.5%以上添加で、最高粘度の無添加に対する低下率は20%以上となった。水溶性エンドウ多糖類を澱粉に対して5%添加することで、最高粘度は約1/3まで低下し、流動性が大きく改善した。一方で、最終粘度はいずれの添加量においても、最終粘度の無添加に対する差の割合が±10%以内で、無添加の比較例1と大きな差がなく、加熱時の最高粘度を低下させ、冷却後の粘度には大きな影響を及ぼしていないことが示された。大豆多糖類は、加熱時の最高粘度を低下させるがその効果はエンドウ多糖類に及ばなかった。また、冷却後の粘度も大きく低下させるものであった。
(実施例5、6)トウモロコシ澱粉への添加
実施例1において、系をトウモロコシ澱粉(キシダ化学株式会社製)3.5g、水溶性エンドウ多糖類の2%水溶液1.75g、水20.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例5)。
実施例5において、水溶性エンドウ多糖類水溶液の量を8.75g、水の量を14.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例6)。
(比較例5)
比較例1において、系をトウモロコシ澱粉(キシダ化学株式会社製)3.5g、水21.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(比較例6)
実施例6において、水溶性エンドウ多糖類を水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-LA200」不二製油株式会社製)とした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(実施例7,8)甘藷澱粉への添加
実施例1において、系を甘藷澱粉(火の国食品工業株式会社製)2.5g、水溶性エンドウ多糖類の2%水溶液1.25g、水21.25gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例7)。
実施例7において、水溶性エンドウ多糖類の量を6.25g、水の量を16.25gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例8)。
(比較例7)
比較例1において、系を甘藷澱粉(火の国食品工業株式会社製)2.5g、水22.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(比較例8)
実施例8において、水溶性エンドウ多糖類を水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-LA200」不二製油株式会社製)とした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(実施例9、10)タピオカ澱粉への添加
実施例1において、系をタピオカ澱粉(株式会社クオカプランニング製)3g、水溶性エンドウ多糖類の2%水溶液1.5g、水20.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例9)。
実施例7において、水溶性エンドウ多糖類の量を7.5g、水の量を14.5gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した(実施例10)。
(比較例9)
比較例1において、系をタピオカ澱粉(株式会社クオカプランニング製)3g、水22gとした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
(比較例10)
実施例8において、水溶性エンドウ多糖類を水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-LA200」不二製油株式会社製)とした以外は同様の方法で、最高粘度と最終粘度を測定、記録した。
実施例5〜10及び比較例5〜10について、最高粘度、最高粘度の無添加に対する低下率、最終粘度、最終粘度の無添加に対する差の割合を表3に示した。
表3:トウモロコシ、甘藷、タピオカ澱粉の最高粘度と最終粘度
Figure 0005991354
水溶性エンドウ多糖類の添加量の増加に従って、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉でも加熱時の糊液の最高粘度が低下し、最高粘度の無添加に対する低下率は10%以上であった。最終粘度はいずれの添加量においても、最終粘度の無添加に対する差の割合が±10%以内で、無添加の比較例5と大きな差がなく、加熱時の最高粘度を低下させ、冷却後の粘度には大きな影響を及ぼしていないことが示された。大豆多糖類は、加熱時の最高粘度低下効果がエンドウ多糖類に及ばず、また冷却後の粘度も低下させるものであった。
(実施例11)チーズペースト様食品のプレート殺菌適性
脱脂粉乳(よつ葉乳業株式会社製)6部、トータルミルクプロテイン(NZPC社製)4部、卵黄0.5部、乾燥卵白0.3部、食塩0.65部、馬鈴薯澱粉1.5部、エンドウ多糖類0.03部、炭酸ナトリウム0.1部、クエン酸ナトリウム0.2部、水59.77部を60℃で30分間撹拌混合した。パーム油(「パームエース10」不二製油株式会社製)27部を加えて、10分間高速撹拌を行って乳化した。乳酸でpHを5.0に調整した後、10MPaの圧力で均質化した。次いで、プレート式UHT殺菌機で120℃、2秒間保持して殺菌し、殺菌済みのチーズペースト様食品を得た。UHT殺菌機の最高加熱部の出口圧力を殺菌開始時と殺菌終了時に記録し、その差(開始時圧力−終了時圧力)を算出した。出口圧力の差、即ち圧力低下幅が大きい程焦げ付きや付着によって通液が妨げられているとして、UHT殺菌適性が低いと判断した。
殺菌終了後、プレート殺菌機の最高加熱部のプロセス液通過部を開放し、状態を目視で確認した。また、加熱後15℃に冷却したペーストをラピッドビスコアナライザー(フォス・ジャパン株式会社製)にセットし、溶液をパドルで撹拌(160rpm)しながら粘度を測定した。
(実施例12)
実施例11において、水溶性エンドウ多糖類を0.2部、水を59.6部とした以外は同様の方法で、殺菌済みチーズペースト様食品を得て、出口圧力の差とプロセス液通過部の状態、冷却後粘度を記録した(実施例12)。
実施例11において、水溶性エンドウ多糖類を0.3部、水を59.5部とした以外は同様の方法で、殺菌済みチーズペースト様食品を得て、出口圧力の差とプロセス液通過部の状態、冷却後粘度を記録した(実施例13)。
(比較例11)
実施例11において、水溶性エンドウ多糖類を添加せず、水を59.8部とした以外は同様の方法で、殺菌済みチーズペースト様食品を得て、出口圧力の差とプロセス液通過部の状態、冷却後粘度を記録した。
(比較例12〜14)
実施例11〜13において、水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-LA200」不二製油株式会社製)とした以外は同様の方法で、殺菌済みチーズペースト様食品を得て、出口圧力の差とプロセス液通過部の状態、冷却後粘度を記録した。
実施例11及び比較例11〜14について、殺菌開始時と終了時の最高加熱部の出口圧力の差、プレート殺菌機のプロセス液通過部への付着の有無及び冷却後粘度を表4に示した。
出口圧力の差が0.1Mpa以下であるものを、UHT殺菌適性良好と判定する。
プロセス液通過部への付着は、+:有り、±:僅かに有り、−:無し で記載した。
表4:出口圧力の差と付着の有無及び冷却後粘度
Figure 0005991354
多糖類を添加しない比較例11では出口圧力の差が0.1MPaを超え、殺菌後のプレートのプロセス液通過部に付着が確認された。それに対し、水溶性エンドウ多糖類を添加した実施例11〜13では、圧力差が0.1MPaを下回りプレートへの付着も見られず、通液がスムーズに行われたことが示された。冷却後のペーストの粘度は、水溶性エンドウ多糖類の添加、無添加に関わらず同等であった。水溶性大豆多糖類を添加した比較例12〜13では、圧力差が0.1MPaより大きく、また付着が確認された。比較例14では、0.1MPaを下回り付着も見られないが、比較例12〜13と同様に冷却後の粘度が低下していた。
本発明の稠度調整剤は、澱粉の加熱糊化時の一時的な激しい増粘を抑制し、澱粉糊液の撹拌、送液、殺菌、均質化、酵素反応等の食品製造工程に対する適性、特に通液時の焦げ付きや付着による詰まりを低減することでUHT殺菌適性を向上させることが出来る。また、加熱糊化に次いで糊液を冷却した後の粘度には大きな影響を与えないため、澱粉の糊としての機能を損なうことなく生産適性を改善することが出来る。

Claims (2)

  1. 水溶性エンドウ多糖類を含有することを特徴とする、澱粉糊液の稠度調整剤であって、該稠度調整が、ラピッドビスコアナライザーで澱粉糊液の粘度を測定したときの最高粘度が、稠度調整剤の無添加時に対し5%以上低下し、かつ、最終粘度が稠度調整剤の無添加時に対し±10%以内である、澱粉糊液の稠度調整剤。
  2. 水溶性エンドウ多糖類を添加することを特徴とする、澱粉糊液製造時の粘度上昇抑制方法。
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