JP5990871B2 - 疲労の判定方法 - Google Patents
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Description
従って、生活習慣病やリンパ腺の腫れなどを伴う病的疲労や薬剤由来の疲労の判定方法として活用することは可能であるが、日常生活における疲労の判定方法としては、使用において課題が残されている。
この報告においては、“運動による生体のゆがみを元に戻そうとする反応”を評価しており、“生体のゆがみ”は客観的に評価していない。ましてや、この報告において、ストレス刺激ストレッサーとする肉体疲労、精神疲労、過労などの程度は評価の対象にしていない。さらには、運動負荷に伴う精神的なストレスや疲労感など、精神機能の変化による二次的な影響を大きく受けており、疲労を客観的に評価していることに成りえない。
従って、疲労の程度の判定などに有用な方法は、国民の健康維持・増進のためにも重要なものであり、医薬品などの疲労に対する有効性を判定するためにも必要である。
しかしながら、上述のように、疲労の程度の判定方法は提案されているが、客観的な判定方法としては極めて不十分であり、真に疲労の程度の判定に用いることが可能な判定方法は開発されていない。また、疲労状態を確実に治療できる医薬品も依然として開発途上にあり、学問上も大きな問題である。
即ち、本発明に係る疲労の程度の判定方法は、上記の課題を解決するために、被験体より容易に入手し得る生体試料を用い、少なくとも1個以上の特定の遺伝子の発現の変動(発現変動)を指標として疲労の程度を判定することを特徴とする。
(2) 被験体に被験物質を投与し、被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較することを含む、被験物質の疲労に対する有効性を判定する方法。
(3) 被験体に被験物質を投与し、被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較し、当該遺伝子の発現を変動させる物質を、疲労を回復、改善又は予防し得る候補物質として選択することを含む、疲労を回復、改善又は予防し得る物質を探索する方法。
(5) 表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる2個以上の遺伝子について、発現変動が異なる遺伝子の数を分析及び/又は比較する、(1)から(4)のいずれか1項に記載の方法。
(7) 生体試料が血液、肝臓、心筋、骨格筋又は細胞である、(1)から(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) 生体試料が血液である、(1)から(6)のいずれか1項に記載の方法。
(9) 疲労が生理的疲労である、(1)から(8)のいずれか1項に記載の方法。
(10) 疲労が末梢性疲労である、(1)から(9)のいずれか1項に記載の方法。
(11) 疲労が身体作業による肉体疲労である、(1)から(10)のいずれか1項に記載の方法。
(17) 遺伝子の発現変動の分析を、生体試料における遺伝子のRNAをプライマーを用いた遺伝子の増幅手法で測定することによって行う、(1)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(18) 遺伝子の発現変動の分析を、生体試料における遺伝子のRNAを疲労のバイオマーカーとして測定することによって行う、(1)から(17)のいずれか1項に記載の方法。
(20) 被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量が、疲労の状態の対照体及び/又は非疲労の状態の健常対照体における当該遺伝子の発現量のどちらに近いかに基づいて行われ、疲労の状態の対照体に近い発現量の場合に、被験体は疲労の状態であると判定することを特徴とする、(1)から(19)のいずれか1項に記載の方法。
(21) 被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量又は発現変動率が、疲労の状態の対照体における当該遺伝子の発現変動量又は発現変動率に近い場合に、被験体は疲労の状態であると判定することを特徴とする、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22) 被験体由来の生体試料における2個以上の遺伝子の発現変動量又は発現変動率の平均値及び/又は中央値が、疲労の状態の対照体における2個以上の当該遺伝子の発現変動量又は発現変動率の平均値及び/又は中央値に近い場合に、被験体は疲労の状態であると判定することを特徴とする、(1)から(21)のいずれか1項に記載の方法。
(24) 被験物質の疲労に対する有効性を判定するにおいて、(i)被験物質を投与した被験体と、被験物質を投与しなかった被験体からそれぞれ生体試料を採取し、それぞれの生体試料における遺伝子の発現量を測定する工程と、(ii)(i)の工程によって得られた、当該被験物質の投与有無による生体試料における遺伝子の発現量の測定結果に基づき、当該被験物質の投与有無による生体試料における遺伝子の発現変動量を算出する工程と、(iii)(ii)の工程によって得られた当該被験物質の投与有無による生体試料における遺伝子の発現変動量に基づき、当該被験物質の疲労に対する有効性を判定する工程とを含む、(23)に記載の方法。
(25) 被験物質の疲労に対する有効性を判定するにおいて、(i)被験体に被験物質を投与する前に当該被験体の生体試料を採取し、生体試料における遺伝子の発現量を測定する工程と、(ii)被験体に被験物質を投与した後に当該被験体の生体試料を採取し、生体試料における遺伝子の発現量を測定する工程と、(iii)(i)及び(ii)の工程によって得られた、当該被験物質の投与前後における遺伝子の発現量に基づき、当該被験物質の投与前後における生体試料における遺伝子の発現変動量を算出する工程と、(iv)(iii)の工程によって得られた当該被験物質の投与前後における生体試料における遺伝子の発現変動量に基づき、当該被験物質の被験体における疲労に対する有効性を判定する工程とを含む、(23)に記載の方法。
<疲労>
本発明における「疲労」とは、一般的な意味としては、例えば、身体作業あるいは精神作業などにより、身体あるいは精神に負荷を与えた際に生じる作業効率(パフォーマンス)が低下した状態を示す。この場合、「疲労の程度(疲労度)」とは作業効率の低下の程度(度合い)を意味する。
「生理的疲労」とは、睡眠や休息の確保、栄養の摂取などを適切に得ることにより、自然の状態で回復が可能な範囲での疲労であり、病的疲労や薬剤由来の疲労を含まない疲労を示す。
「末梢性疲労」とは、脳が主体となって疲労を感じている中枢性疲労の状態でなく、脳以外の末梢組織に起因する疲労を示す。
「病的疲労」とは、慢性疲労症候群、悪性腫瘍、細菌又はウイルス感染、糖尿病、うつ病などの疾病に伴う疲労を示す。
「薬剤由来の疲労」とは、抗ガン剤、免疫抑制剤、向精神剤などの薬剤の使用によって引き起こされる疲労を示す。
「肉体疲労」、「身体疲労」、「筋肉疲労」、「運動疲労」などは、日常生活における生理的疲労及び末梢性疲労に含まれる疲労を示す。
従って、「非疲労の状態」とは、十分な睡眠や休息が確保されており、栄養摂取量を満たしており、精神あるいは身体などへの負荷が少なく、日常的に適度な運動を行い、さらに、生理的疲労、中枢性疲労、末梢性疲労、病的疲労又は薬剤由来の疲労を呈していない状態を意味する。
本発明による、被験体の疲労の程度を判定する方法、被験物質の疲労に対する有効性を判定する方法、疲労を回復、改善又は予防し得る物質を探索する方法においては、被験体由来の生体試料における、特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較する。
「非ヒト哺乳動物」とは、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、霊長類(例えば、サルなど)、並びにイヌなど、医薬品、食品又は被験物質などの薬理試験や毒性試験などに汎用される動物が好ましく、上記の中でもマウス及びラットが特に好ましい。
生体試料としては、血液、唾液、精液などの体液、肝臓、心筋、骨格筋などの組織や細胞が挙げられる。これらの試料は、倫理的な問題が生じないように採血、採取又はバイオプシーなどにより、被験体から分離されることが望ましい。好ましくは、生体試料は、血液又は骨格筋であり、さらに好ましくは血液であり、特に好ましくは血球である。
従って、骨格筋などの末梢組織と血液においては、同種の遺伝子の発現が変動すると考えられるため、疲労を引き起こす身体作業による生体への刺激に応じて発現が変動する遺伝子は、生体試料が異なっていても発現変動の特徴やパターンは同様となる可能性が高い。
細胞としては、例えば、血液細胞、肝細胞、筋細胞、神経細胞、グリア細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、間質細胞、又はこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。細胞は、好ましくは、筋細胞、肝細胞、血液細胞、又はそれらの前駆細胞もしくは幹細胞であり、ヒト由来の細胞であることがより好ましい。
本発明の方法においては、被験体由来の生体試料における、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較する。
ここで言う「その一部を含む遺伝子」とは、ハイブリダイズする際に十分な配列長を有するものであれば、その長さは特に限定されないが、好ましくは少なくとも10塩基以上である。また、遺伝子には、塩基配列又はポリペプチド配列などによって特定される遺伝子、例えば、塩基配列と相補的な塩基配列からなる遺伝子とハイブリダイズする遺伝子が含まれる。
通常、機能的に同等な遺伝子は、塩基配列又はポリペプチド配列において、高い相同性や同一性を有しており、少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性又は同一性を示す。機能的に同等な遺伝子は、塩基配列を基にした遺伝子の増幅手法などを利用して単離及び特定することも可能である。
本発明の方法においては、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子より遺伝子リストを作成し、遺伝子リストに含まれる遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較する。
身体作業としては、身体的な負担により作業効率が低下する動作であり、例えば、水泳、走行、自転車こぎ、階段昇降などの動作であり、最大筋力や筋持久力を低下させる動作が好ましく、トレッドミル走行あるいは自転車エルゴメータ運動がより好ましい。
例えば、マウスに運動を負荷し、運動負荷前後の骨格筋における遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較し、著しい発現変動を示す遺伝子を選定し、それらを含む遺伝子リストを作成する方法がある。選定する遺伝子としては、好ましくはヒト遺伝子と比較して相同性又は同一性が高い遺伝子であり、より好ましくは血液においても運動負荷前後において著しい発現変動を示す遺伝子である。
本発明の方法においては、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較する。
<2個以上の遺伝子の組み合わせ>
2個以上の特定の遺伝子を組み合わせて用いる場合、好ましくは2個から51個の遺伝子の組み合わせであり、より好ましくは2個から35個の遺伝子であり、より好ましくは2個から19個の遺伝子であり、より好ましくは2個から15個の遺伝子であり、より好ましくは2個から10個の遺伝子であり、さらに好ましくは2個から7個の遺伝子であり、特に好ましいのは2個から4個の遺伝子の組み合わせである。
ADAMTS1(AF060152.1)配列番号1
ADAMTS20(NM_025003.3)配列番号2
ADAMTS9(AF261918.1)配列番号3
ATF4(NM_001675.2)配列番号4
ATP2A2(NM_0016881.3)配列番号5
BCL2L11(AF032458.1)配列番号6
CASP9(NM_032996.1)配列番号7
CHRD(NM_003741.2)配列番号8
DDIT3(NM_004083.4)配列番号9
EIF2B2(NM_014239.3)配列番号10
ERN1(NM_001433.3)配列番号11
ID1(NM_002165.2)配列番号12
INHBB(NM_002193.2)配列番号13
JUN(NM_002228.3)配列番号14
NFATC1(NM_172390.1)配列番号15
PLAU(NM_002658.3)配列番号16
PPP1R15A(NM_014330.3)配列番号17
THBS1(NM_003246.2)配列番号18
TP53(NM_000546.4)配列番号19
AGT(NM_000029.3)配列番号20
ATF3(NM_001674.2)配列番号21
ATP6V0D1(NM_004691.4)配列番号22
CARHSP1(NM_014316.2)配列番号23
CCRN4L(NM_012118.2)配列番号24
CD38(NM_001775.2)配列番号25
CHST15(NM_015892.3)配列番号26
CLIC4(NM_013943.2)配列番号27
CTGF(NM_001901.2)配列番号28
FKBP5(U42031.1)配列番号29
FOS(NM_005252.3)配列番号30
FOSB(NM_006732.2)配列番号31
FOXO1(NM_002015.3)配列番号32
GLUL(NM_002065.5)配列番号33
HMOX1(NM_002133.2)配列番号34
HSP90AA1(NM_005348.3)配列番号35
HSPA1A(BC002453.2)配列番号36
HSPA1B(NM_005346.4)配列番号37
LCN2(NM_005564.3)配列番号38
LGALS3(NM_002306.3)配列番号39
MT1E(NM_175617.3)配列番号40
NFIL3(NM_005384.2)配列番号41
NR4A1(L13740.1)配列番号42
NR4A3(U12767.1)配列番号43
OPTN(NM_021980.4)配列番号44
PLK3(NM_004073.2)配列番号45
SDC4(NM_002999.2)配列番号46
SMAD3(NM_005902.3)配列番号47
TINAGL1(NM_022164.2)配列番号48
TLR4(U88880.1)配列番号49
TLR8(NM_016610.2)配列番号50
ZBTB16(NM_006006.4)配列番号51
本発明における遺伝子の発現の変動(発現変動)とは、例えば、遺伝子の発現量、発現強度又は発現頻度などの遺伝子の測定可能な特性や特徴の変動(増加又は減少)を示す。
通常、遺伝子の発現変動の分析は、当該遺伝子の遺伝子産物の発現量を測定し、その発現量を補正し、その発現変動量を算出することにより可能である。
「遺伝子産物」とは、転写産物又は翻訳産物のいずれでもよく、例えば、遺伝子の発現変動の分析とは、通常、転写産物や翻訳産物の発現量を測定し、その発現量を補正し、その発現変動量を算出することを示す。
「転写産物」とは、遺伝子から転写の過程を経て生じる遺伝子、通常、RNAを示し、好ましくはmRNAを示す。
「翻訳産物」とは、遺伝子から転写、翻訳の過程を得て生じるタンパク質を示し、未修飾であっても翻訳後修飾されていてもよい。
「翻訳後修飾」としては、リン酸、糖、糖鎖、リン脂質、脂質などによる修飾が挙げられる。
「プローブ」とは、ハイブリダイゼーションによって、転写産物の検出の用に供される核酸分子を示す。本発明に用いられるプローブとしては、遺伝子を特異的に検出するため、少なくとも10塩基長以上の長さを有するものが好ましい。
「プライマー」とは、核酸の合成反応にあたりヌクレオチド鎖が伸長していく出発点として働く核酸分子を示す。本発明に用いられるプライマーとしては、遺伝子を特異的に増幅するため、少なくとも10塩基長以上の長さを有するものが好ましい。
プローブやプライマーとしては、市販のプローブやプライマーを用いてもよいし、遺伝子データベースなどの配列情報をもとにクローニング又は化学合成したものでもよい。プローブやプライマーは、当業者に公知の技術に従って設計することができる。これらのプローブやプライマーは、適当な標識が施されていてもよい。
「標識」としては、酵素標識、放射性標識、蛍光標識などが挙げられる。また、ビオチン、リン酸、アミンなどにより標識されていてもよい。
遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較する場合には、予め発現量などの測定値を公知の方法によって補正することができる。補正により、独立した複数の生体試料における遺伝子の発現変動をより正確に比較することが可能となる。測定値の補正は、疲労の状態の有無において発現量などが大きく変動しない遺伝子、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現量などの測定値に基づいて、特定の遺伝子の発現量などの測定値を補正することにより行われる方法や、全測定値の平均値及び分散値を用いる標準化処理方法などがあり、その他にも公知の方法がある。
「ハウスキーピング遺伝子」としては、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)やβ−アクチン(ACTB)などを挙げることができる。
遺伝子の発現変動の比較は、例えば、(i)遺伝子の発現量や発現変動量の増減の比較、(ii)遺伝子の発現量や発現変動量が増加又は減少している遺伝子数の増減の比較、(iii)統計的処理、により可能である。
また、特定の遺伝子の発現変動量を比較する方法としては、例えば、生体試料(A)において発現している遺伝子(x)の発現量と比較対照の発現量との差(発現変動量A)などが、生体試料(B)において発現している当該遺伝子(x)の発現量と比較対照の発現量との差(発現変動量B)と比較して、“増加”、“減少”又は“変動なし”と判断する方法が挙げられる。
ここでの「比較対照の発現量」とは、特定の遺伝子の疲労の状態の対照体由来の生体試料における発現量又は非疲労の状態の健常対照体由来の生体試料における発現量などを示す。
「Fold Change比較の方法」とは、例えば、生体試料(B)において発現している遺伝子(x)の発現量が生体試料(A)において発現している遺伝子(x)の発現量と比較して1.3倍以上の比率で増加している場合に、生体試料(B)において発現している遺伝子(x)の発現量は、30.0%以上に“増加”と判断する方法を意味する。また、1.3倍以上の比率で減少している場合には、−23.1%以下に“減少”と判断することができる。比率は1.3倍以上が好ましいが、特には限定されない。
2個以上の遺伝子の転写産物などの発現変動を分析及び/又は比較する場合にも、RT−PCR法などのプライマーを用いた遺伝子の増幅手法を選択することができる。しかし、特に測定する遺伝子の数が多い場合には、同時に複数の遺伝子の転写産物などを測定することができる技術、例えば、プローブやプライマーが固定化された担体により同時に複数の遺伝子の転写産物の発現量などを測定する方法を用いることも可能である。
担体としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、メンブレン、繊維、マイクロビーズ又はシリコンチップなどを使用することができる。これらの好ましい例としては、ハイスループットqPCRダイナミックアレイ、RNAカード、DNAマイクロアレイチップなどを用いる方法が挙げられる。DNAマイクロアレイチップとしては、特定の遺伝子の転写産物の発現量などを測定できるものであれば、市販のものを用いてもよいし、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子より選ばれる特定の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子を含むDNAマイクロアレイチップなどを作製してもよい。
また、それぞれの遺伝子の発現量や発現変動量の平均値又は中央値を分析及び/又は比較することにより“増加”、“減少”又は“変動なし”と判断することができる。さらには、発現変動している遺伝子の数を比較し、全体としての発現挙動、発現量が変動している遺伝子の占める割合など、遺伝子の発現量の状態を判定できる情報、即ち遺伝子の発現変動の特徴(発現強度、発現頻度、発現パターンなど)により判断することもできる。
本発明においては、疲労の程度が未知である被験体由来の生体試料における、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較することによって“疲労の程度"を判定する。
ここでの「発現変動量」とは、被験体由来の生体試料における特定の遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常対照体由来の生体試料における当該遺伝子の発現量との差を示す。
「発現変動率」とは、特定の遺伝子の発現変動量の疲労の状態の対照体由来の生体試料における発現変動量に占める割合を示す。
また、被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量が、疲労状態の対照体及び/又は非疲労の状態の健常対照体における発現量のどちらに近いかに基づいて行われ、疲労状態の対照体に近い発現量の場合に、被験体は疲労の状態であると判定し、その発現変動量又は発現変動率を疲労の程度とすることができる。
また、被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量又は発現変動率が、疲労状態の対照体における発現変動量又は発現変動率に近い場合に、被験体は疲労の状態であると判定し、その発現変動量又は発現変動率を疲労の程度とすることができる。
また、被験体由来の生体試料における2個以上の遺伝子の発現変動量又は発現変動率の平均値又は中央値が、疲労状態の対照体における2個以上の当該遺伝子の発現変動量又は発現変動率の平均値及又は中央値に近い場合に、疲労の状態であると判定し、その発現変動量又は発現変動率の平均値又は中央値を疲労の程度とすることができる。
また、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる2個以上の特定の遺伝子について、少なくとも2個以上の当該遺伝子のうち発現変動量又は発現変動率が異なる遺伝子の数を分析及び/又は比較してもよい。
これらによると、特定の遺伝子の発現変動量又は発現変動率が増加している程、疲労の程度は増加していると判定することができる。
(a)非疲労の状態の複数の健常対照体由来の生体試料における遺伝子の発現量を測定し、発現量の平均値又は中央値を算出する工程、
(b)生理的疲労を呈している複数の被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量を測定し、作業効率の低下の程度が同程度と判断される複数の被験体由来の生体試料ごとに遺伝子の発現量の平均値又は中央値を算出する工程、
(c)非疲労の状態の健常対照体由来の生体試料における遺伝子の発現量の平均値又は中央値と、作業効率の低下の程度が同程度と判断される生理的疲労を呈している被験体の発現量の平均値又は中央値との差(発現変動量)を算出する工程、
(d)作業効率の低下の程度が特に著しい複数の被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量を“疲労の程度100”又は“発現変動率100%”と変換する工程、及び、
(e)作業効率の低下の程度が異なる生理的疲労を呈している被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量の“疲労の程度100(発現変動率100%)”に相当する疲労の状態にある遺伝子の発現変動量に占める割合(発現変動率)より、多段階で疲労の程度を判定する手順を作成する工程、
により作成する方法がある。
(f)疲労の程度が未知の被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量を測定する工程、
(g)疲労の程度が未知の被験体における遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常対照体由来の生体試料における遺伝子の発現量(疲労の程度0に相当する発現量)との差(発現変動量)を算出する工程、
(h)疲労の程度が未知の被験体における発現変動量の“疲労の程度100”に相当する発現変動量に占める割合(発現変動率)を算出する工程、及び、
(i)疲労の程度が未知の被験体における発現変動量が0に近似している場合(発現変動率が0%に近似している場合)に被験体は非疲労の状態であると判定し、“疲労の程度100”に相当する変動変動量に近似している場合(“発現変動率100%”に近似している場合)に“被験体は疲労の状態である”と判定する工程、
により疲労の程度を判定する方法がある。
本発明によれば、被験体に被験物質を投与し、当該被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較し、被験物質を投与した被験体の疲労の程度の判定をすることによって、当該被験物質の疲労に対する有効性(効果)を判定することができる。
また、被験物質を投与する前に、疲労の状態とする被験体を被験物質投与群と被験物質非投与群に分け、これらの群における特定の遺伝子の発現量、発現変動量又は発現変動率を比較し、被験物質を投与した群の発現変動量又は発現変動率が、被験物質を投与しなかった群の発現変動量又は発現変動率より減少している場合に、被験物質は疲労に対して有効であると判定することができる。
尚、被験物質投与群においては、複数の投与用量又は複数の被験物質の疲労に対する有効性を判定するために、群の数を適宜増減してもよい。
これらによると、被験物質を投与した被験体の特定の遺伝子の発現変動量又は発現変動率が減少している程、被験物質は疲労に対して有効であると判定することができる。
(a)被験物質又はこれを含む製剤を投与した疲労の状態である被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった疲労の状態である被験体由来の生体試料における工程(a)と同一の1個以上の遺伝子の発現量を測定する工程、
(c)工程(a)にて測定した遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常被験体由来及び/又は疲労の状態の被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量と比較し、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体における遺伝子の発現変動量又は発現変動率を算出する工程、
(d)工程(b)にて測定した遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常被験体由来及び/又は疲労の状態の被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量と比較し、被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった被験体における遺伝子の発現変動量又は発現変動率を算出する工程、
(e)被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量又は発現変動率が、被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった被験体由来の生体試料における遺伝子の発現変動量又は発現変動率と比較して減少している場合に、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定する工程、及び、
(f)工程(e)において、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定した場合に、被験物質又はこれを含む製剤は疲労に対して有効であると判定する工程、
を含む、被験物質の疲労に対する有効性を判定する方法。
ここで、工程(a)と工程(b)における疲労状態の被験体は同一の個体であっても、別々の個体であっても良い。
(a)被験物質又はこれを含む製剤を投与した疲労の状態である被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)被験物質又はこれを含む製剤を投与した非疲労の状態である被験体由来の生体試料における工程(a)と同一の1個以上の遺伝子の発現量を測定する工程、
(c)工程(a)及び工程(b)にて測定した遺伝子の発現量より発現変動量を算出する工程、
(d)工程(c)にて算出した被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労有無における発現変動量と、非疲労の状態の健常被験体及び疲労の状態の被験体における発現変動量を比較する工程、
(e)被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労有無における発現変動量が、非疲労の状態の健常被験体及び疲労の状態の被験体における遺伝子の発現変動量と比較して減少している場合に、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定する工程、及び、
(f)工程(e)において、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定した場合に、被験物質又はこれを含む製剤は疲労に対して有効であると判定する工程、
を含む、被験物質の疲労に対する有効性を判定する方法。
ここで、工程(a)と工程(b)における疲労状態の被験体は同一の個体であっても、別々の個体であっても良い。
具体的な態様を以下に示す、
(a)被験物質又はこれを含む製剤を投与した疲労の状態である被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる2個以上の特定の遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)工程(a)にて測定した各遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常被験体及び疲労の状態の被験体由来の生体試料における当該遺伝子の発現量と比較し、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体由来の生体試料における当該遺伝子の発現変動量又は発現変動率を算出する工程、
(c)工程(b)にて測定した各遺伝子の発現変動量又は発現変動率において、平均値又は中央値を算出する工程、
(d)被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった疲労の状態である被験体由来の生体試料における工程(a)と同一の2個以上の遺伝子の発現量を測定する工程、
(e)工程(d)にて測定した各遺伝子の発現量と、非疲労の状態の健常被験体及び疲労の状態の被験体由来の生体試料における当該遺伝子の発現量と比較し、被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった被験体由来の生体試料における当該遺伝子の発現変動量又は発現変動率を算出する工程、
(f)工程(e)にて測定した各遺伝子の発現変動量又は発現変動率において、平均値又は中央値を算出する工程、
(g)被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体における発現変動量又は発現変動率の平均値などが、被験物質又はこれを含む製剤を投与しなかった被験体における発現変動量又は発現変動率の平均値などと比較して減少している場合に、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定する工程、及び、
(h)工程(g)において、被験物質又はこれを含む製剤を投与した被験体の疲労の程度は減弱又は消失していると判定した場合に、被験物質又はこれを含む製剤は疲労に対して有効であると判定する工程、
を含む、被験物質の疲労に対する有効性を判定する方法。
ここで、工程(a)と工程(d)における疲労状態の被験体は同一の個体であっても、別々の個体であっても良い。
従って、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較することにより、多段階で被験物質の疲労に対する有効性を判定することが可能となる。
本発明においては、被験体に被験物質を投与し、被験体由来の生体試料における表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較し、当該遺伝子の発現変動量を減弱又は消失させる物質を、疲労を回復、改善又は予防し得る候補物質として選択することによって、疲労を回復、改善又は予防し得る物質を探索することができる。
このような処置としては、例えば、走行、遊泳、跳躍などの運動を身体に負荷させることにより疲労を惹起し得る方法や随意収縮及び電気刺激により筋疲労を惹起し得る方法、睡眠や休息を除去する方法、栄養を低減する方法などが挙げられる。細胞の遺伝子を発現変動させる処置としては、疲労における生理学的メカニズムと類似の処理が好ましい。
この方法によれば、疲労に対して有効である被験物質を投与した疲労状態の被験体由来の生体試料を用いて疲労の程度を判定した場合には、被験体は“疲労の程度75(発現変動率75%)”以下、さらには、“疲労の程度50(発現変動率50%)”以下の判定となりやすく、疲労を増悪させる被験物質を投与した疲労状態の被験体由来の生体試料を用いて疲労の程度を判定した場合には、被験体は“疲労の程度150(発現変動率150%)”以上の判定となりやすい。
また、発現量、発現変動量又は発現変動率が異なる2個以上の遺伝子を組み合わせて、各遺伝子における“疲労の程度”を算出し、それら2個以上の遺伝子の“疲労の程度”の平均値又は中央値などを算出することによっても、被験物質などを選択することが可能である。
本発明によれば、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較するための疲労判定試薬又は疲労判定キットが提供される。
本発明の疲労判定試薬又は疲労判定キットには、更に所望により、標識、標識二次抗体、担体、サンプル希釈液、酵素基質、反応停止液、標準物質、遺伝子の発現量や特徴などから疲労の程度(発現変動率)を判定するための資料などを含めてもよい。さらに必要に応じて、洗浄バッファー、保存剤、防腐剤などを加えることもできる。
本発明の疲労判定試薬又は疲労判定キットに含まれるプライマー、プローブ、抗体などは、1種のみでもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらは、固体でも液体でもよく、単一又複数の固相上に固定されているもの、例えば、マイクロタイタープレートのようなプレートに個別に分注された状態となっていてもよいし、RNAカードやDNAマイクロアレイチップに固定された状態でもよい。
また、疲労判定キットの包装材に付されたラベル又は添付された文書に、生体試料における遺伝子の発現変動を指標として被験体の疲労の程度を判定するために使用できることを表示していてもよい。
さらに、本発明にかかる疲労判定キットは、コンピューターなどの従来公知の演算装置を用いてなるキットとなっていてもよい。
本発明においては、疲労の程度が未知の被験体由来の生体試料において、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子の発現変動を分析及び/又は比較することにより、被験体の疲労の程度を判定することができる。従って、表1、表4、表5又は表6に記載の遺伝子又はそれらのホモログ遺伝子より選ばれる1個以上の特定の遺伝子及びそれらの遺伝子産物は、疲労のバイオマーカー(生物学的指標)として用いることができる。
身体作業による肉体疲労の状態としたマウス由来の骨格筋における遺伝子の発現量を、DNAマイクロアレイを用いて測定し、疲労の状態において発現増加又は発現減少する遺伝子を選定し、疲労の程度の判定に用いる遺伝子リストを作成し、疲労の程度の判定方法を開発した。
実験には、安静(非疲労)マウス(6匹)、走行運動負荷直後マウス(2匹)、走行運動負荷1時間後マウス(6匹)を用い、走行運動負荷直後マウス及び走行運動負荷1時間後マウスに走行運動を負荷した。走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(室町機械(株)又はバイオリサーチセンター(株))を用いて行った。走行運動の負荷条件は、傾斜角度10度、走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分とし、高強度(高速)運動により走行困難に至るまで負荷した。
尚、走行訓練を3から4日間隔で4回実施し、疲労を惹起させる走行運動の負荷は最終走行訓練の3から4日後に実施した。走行訓練は全てのマウスに行った。
走行運動負荷直後マウスは走行運動負荷直後に、走行運動負荷1時間後マウスは走行運動負荷1時間後に安楽死させ、後肢骨格筋(速筋及び遅筋より構成されているヒフク筋部位)を採取し、直ちにRNA抽出に供した。安静(非疲労)マウスは運動負荷をすることなく安楽死させ、同様の方法を行った。
RNAlaterを浸透後、筋組織100mgをRNAiso 18ml中でホモジェナイズし、筋組織のRNAiso溶液とした。筋組織のRNAiso溶液1mlにクロロホルム0.2mlを加えて十分ボルテックスし、遠心の後、水層500から700μlをRNA粗抽出液として回収した。得られたRNA粗抽出液をRNeasy Mini kit中のColumnに流し入れ、RNAを吸着させた。洗浄後60μlのヌクレアーゼ不含水に溶解させた。RNAを含むヌクレアーゼ不含水1μlを、NanoDropSpectrophotometer(NanoDrop社)を用いてRNAの定量及び純度指標による品質確認を行った。ヌクレアーゼ不含水1μl中のRNAを、常法により変性後、BioAnalyzer 2100 (Agilent社)を用いて電気泳動し、分解度指標による品質確認を行った。
Affymetrix社において作製された約34000個の遺伝子を含む約39000個の転写産物とバリアントに対応する45000のオリゴヌクレオチド・プローブセット(パーフェクトマッチとミスマッチがペアとなっているプローブセット)が搭載されたDNAマイクロアレイ(GeneChip Mouse Genome 430 2.0 Array)を用い、遺伝子発現量の解析を行った。具体的には、次の手順で行った。
増減それぞれの発現変動幅の絶対値を等しくするために、原則として、発現比については1.5倍の比率とし、50.0%以上(増加)又は−33.3%以下(減少)とするFold Change比較の方法を採用した。
試験により選定した、疲労の程度の判定に用いる特定の遺伝子を次に示す。
走行運動負荷直後において著しく発現変動した遺伝子は392個であり、表2に示した。また、走行運動負荷1時間後において著しく発現変動した遺伝子は254個であり、表3に記載した。表2に記載の走行運動負荷直後の遺伝子において、発現量が増加している遺伝子は169個であり、減少している遺伝子は223個であった。表3に記載の走行運動負荷1時間後の遺伝子において、発現量が増加している遺伝子は161個であり、減少している遺伝子は93個であった。また、表2と表3に記載の遺伝子をまとめたものを表4に示す。
表4に記載の遺伝子より作成された遺伝子リストに含まれる特定の遺伝子4個を用い、被験物質の投与により疲労の状態におけるマウス由来の骨格筋における遺伝子の発現変動量を減少させた場合に被験物質の投与に伴って被験体の疲労の程度は減弱していると判定し、被験物質は疲労に対して有効であると判定する工程を含む、疲労の回復、改善又は予防し得る物質(被験物質)の有効性(効果)の判定方法を開発した。
抗疲労物質は、疲労を惹起させる走行運動の負荷前まで、1週間、1日1回、50mg/kgの投与量でマウスに経口投与した。
抗疲労物質投与したマウス4匹には走行運動を負荷し、試験例1と同様に疲労困憊までおこなった。他の抗疲労物質投与したマウス4匹には走行運動を負荷しなかった。
マウスからの骨格筋の採取は、走行運動負荷前(4匹)及び走行運動負荷1時間後(4匹)に行った。
遺伝子リストに含まれる特定の遺伝子から、走行運動負荷1時間後に増加する遺伝子であるERN1、BCL2L11、PPP1R15A及びDDIT3の遺伝子4個を選定し、各遺伝子の発現変動を比較した。
試験例1において、運動負荷1時間後のBCL2L11及びDDIT3の発現量は運動負荷前と比較して50%以上増加し、ERN1及びPPP1R15Aの発現量は100%以上増加していた。
一方、疲労困憊まで運動を負荷したマウスの運動前後におけるDDIT3及びPPP1R15Aの発現変動は、著しく変化しなかった。
従って、運動前後における特定の遺伝子4個の発現変動量を分析及び/又は比較することにより、被験物質の投与に伴って遺伝子2個(50%)の発現変動量が減少することを評価し、被験物質を投与した被験体の疲労の程度は減弱していると判定することができた。これより、被験物質は疲労に対して有効であると判定することができた。
身体作業による肉体疲労の状態としたマウス由来の骨格筋における遺伝子の発現量を測定し、疲労の状態において発現増加又は発現減少する遺伝子を選定し、より少数の遺伝子よりなる、疲労の程度の判定に用いる遺伝子リストを作成し、疲労の程度を判定できる資料(データベース)を作成し、疲労の程度の判定方法を開発した。
実験には、安静(非疲労)マウス(4匹)、走行運動負荷1時間後マウス(4匹)を用い、走行運動負荷1時間後マウスに走行運動を負荷した。走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(バイオリサーチセンター(株))を用いて行った。走行運動の負荷条件は、傾斜角度10度、走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分とし、高強度(高速)運動を負荷した。走行時間は一定時間(52分間)とした。
尚、走行訓練を3から4日間隔で4回実施し、疲労を惹起させる走行運動の負荷は最終走行訓練の3から4日後に実施した。走行訓練は全てのマウスに行った。
走行運動負荷1時間後マウスは走行運動負荷1時間後に深麻酔条件にて安楽死させ、後肢骨格筋(速筋及び遅筋より構成されているヒフク筋部位)を採取し、液体窒素中で急速凍結後、−80℃で一時保管し、後日RNA抽出に供した。安静(非疲労)マウスは運動負荷をすることなく安楽死させ、同様の方法を行った。
−80℃で一時保管された筋組織100mgをRNAiso 4ml中でホモジェナイズし、筋組織のRNAiso溶液とした。筋組織のRNAiso溶液1mlにクロロホルム0.2mlを加えて、十分ボルテックスし、遠心の後、水層500から700μlをRNA粗抽出液として回収した。得られたRNA粗抽出液をRNeasy Mini kit(QIAGEN社)中のColumnに流し入れ、RNAを吸着させた。洗浄後60μlのヌクレアーゼ不含水に溶解させた。RNAを含むヌクレアーゼ不含水1μlを、NanoDrop Spectrophotometer(NanoDrop社)を用いてRNAの定量及び純度指標による品質確認を行った。RNAを含むヌクレアーゼ不含水1μlを常法によりRNAを変性後、BioAnalyzer 2100 (Agilent社)を用いて電気泳動し、分解度指標による品質確認を行った。
Affymetrix社において作製されたゲノム上の既知、及び想定される28853個の遺伝子について25mer×770317個の対象と完全一致するオリゴヌクレオチド・プローブ(パーフェクトマッチプローブ)が搭載されたDNAマイクロアレイ(GeneChip Mouse Gene 1.0 ST Array)を用い、遺伝子発現量の解析を行った。具体的には、次の手順で行った。
増減それぞれの発現変動幅の絶対値を等しくするために、原則として、発現比については30%以上(増加)又は−30%以下(減少)とするFold Change比較の方法を採用した。
DNAマイクロアレイを用いた遺伝子の発現量の解析後、さらにパスウェイデータベースや遺伝子オントロジーデータベースを用いた解析により、細胞機能の低下、細胞機能の維持・回復、細胞機能の活性と関連する遺伝子より35個の遺伝子を選定し、35個の遺伝子よりなる遺伝子リストを作成した。作成した遺伝子リストを表6に示す。
表6に記載の走行運動負荷1時間後の特定の遺伝子において、発現量が増加している遺伝子は33個であり、減少している遺伝子は2個であった。
表6に記載のNo.001からNo.033の遺伝子33個の発現変動は、Fold Change比較の方法によると、平均値±標準偏差:238.5±443.0%(増加)、中央値:107.3%(増加)であり、No.034及びNo.035の遺伝子2個の発現変動は、平均値±標準偏差:−41.6±7.9%(減少)、中央値:−41.6%(減少)であった。さらに、遺伝子リストに含まれる遺伝子35個のいずれの1個の遺伝子においても、30%以上又は−30%以下の著しい発現変動が認められた。
疲労の程度を判定できる資料は、非疲労の状態及び疲労の状態とする遺伝子の発現量、疲労の状態とする遺伝子の発現量、発現変動量及び発現変動率の設定により作成した。具体的な作成方法を以下に示す。
(a)非疲労の状態の健常対照体に相当する被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量の平均値及び/又は中央値を算出する工程、
(b)生理的疲労及び末梢性疲労を呈している被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量の平均値及び/又は中央値を算出する工程、
(c)非疲労の状態の健常対照体由来の生体試料における遺伝子の発現量の平均値及び/又は中央値と、生理的疲労及び末梢性疲労を呈している被験体由来の生体試料における遺伝子の発現量の平均値及び/又は中央値の差(発現変動量)を算出する工程、及び、
(d)生理的疲労及び末梢性疲労を呈している被験体の遺伝子の発現変動量を“発現変動率100%”又は“疲労の程度100”と変換する工程、
により、(i)非疲労の状態の健常対照体に相当する遺伝子の発現量、(ii)疲労の状態の対照体に相当する遺伝子の発現量、(iii)“発現変動率100%”又は“疲労の程度100”に相当する遺伝子の発現変動量を設定して、作成することができた。
疲労の程度が未知のマウスの疲労の程度を判定するにおいては、疲労の程度が未知のマウスにおける各遺伝子の発現量を算出し、安静(非疲労)マウスにおける各遺伝子の発現量と疲労の程度が未知のマウスにおける各遺伝子の発現量の差(発現変動量)を算出し、算出した疲労の程度が未知のマウスにおける各遺伝子の発現変動量が、“発現変動率100%”又は“疲労の程度100”に相当する発現変動量に占める割合を算出し、疲労の程度が未知のマウスにおける遺伝子の“発現変動率”又は“疲労の程度”を算出する手順とした。また、2個以上の遺伝子を用いて判定する場合には、各遺伝子の“発現変動率”又は“疲労の程度”の平均値又は中央値などを算出する手順とした。
表6に記載のNo.001からNo.035の特定の遺伝子35個を用い、疲労の程度が未知のマウス由来の骨格筋における遺伝子の発現変動量を分析及び比較し、疲労の程度を判定できる資料(データベース)を用い、“発現変動率”及び“疲労の程度”を算出することによって、疲労の程度が未知の被験体の疲労の程度を判定し、疲労の判定方法を検証した。
実験には、疲労の程度が未知である持久型走行運動負荷1時間後マウス(4匹)及び走行運動負荷24時間後マウス(4匹)を用い、走行運動を負荷した。
走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(バイオリサーチセンター(株))を用いて行った。
持久型走行運動負荷1時間後マウスへの走行運動は、走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分にて28分間走行した後、到達速度30メートル/分にて60分間走行させた(総走行時間 88分)。
走行運動負荷24時間後マウスへの走行運動は、試験例3と同様に走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分にて、52分間の一定負荷とした。
尚、走行訓練を3から4日間隔で4回実施し、疲労を惹起させる走行運動の負荷は最終走行訓練の3から4日後に実施した。走行訓練は全てのマウスに行った。
疲労の程度を判定できる資料を用いて、疲労の程度の判定を行った。
表6に記載のNo.001からNo.035の遺伝子35個それぞれにおいて、持久型走行運動負荷1時間後マウスにおける遺伝子の発現量は、平均値±標準偏差:1246.4±1248.3、中央値:793.9であった。
また、Fold Change比較の方法を用い、持久型走行運動負荷1時間後マウスにおけるNo.001からNo.033の遺伝子33個の発現量を試験例3の安静(非疲労)マウスにおける遺伝子の発現量と比較すると、平均値±標準偏差:301.7±406.9%(増加)、中央値:137.5%(増加)であった。
No.034及びNo.035の遺伝子2個の発現量を比較すると、平均値±標準偏差:−36.7±8.4%(減少)、中央値:−36.7%(減少)であった。さらに、遺伝子リストに含まれる遺伝子35個のいずれの1個の遺伝子においても、30%以上又は−30%以下の著しい発現変動が認められた。
表6に記載のNo.001からNo.017、No.034及びNo.035の特定の遺伝子19個を用い、身体作業による肉体疲労の状態としたマウス由来の末梢血液における遺伝子の発現量を測定することによって、末梢組織と同様に発現変動する遺伝子を用いた、生理学的な特徴に立脚した客観的な疲労の程度の判定方法を開発した。
実験には、安静(非疲労)マウス(4匹)、走行運動負荷1時間後マウス(4匹)及び走行運動負荷24時間後マウス(4匹)を用い、走行運動を負荷した。
走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(室町機械(株)又はバイオリサーチセンター(株))を用いて行った。
走行運動負荷1時間後マウス及び走行運動負荷24時間後マウスへの走行運動は、試験例3と同様に、走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分にて52分間の一定負荷とした。
尚、走行訓練を3から4日間隔で4回実施し、疲労を惹起させる走行運動の負荷は最終走行訓練の3から4日後に実施した。走行訓練は全てのマウスに行った。
走行運動負荷1時間後マウス又は走行運動負荷24時間後マウスは、それぞれ走行運動負荷1時間後または24時間後に深麻酔条件にて安楽死させ、腹部大静脈より血液を1ml採取し、ヌクレアーゼ不含水1mlを添加し、Isogen−LS(ニッポンジーン社)2mlを添加し、血液を溶解した。その後、液体窒素中で急速凍結後、−80℃で一時保管し、後日RNA抽出に供した。安静(非疲労)マウスは運動負荷をすることなく安楽死させ、同様の方法を行った。
Isogen−LS(ニッポンジーン社)に溶解されている血液サンプル4mlの半量を用いて精製を行った。Isogen−LS溶解サンプル2mlに対し、クロロホルム400μlを加えて、十分ボルテックスし、遠心の後、水層800から1000μlをRNA粗抽出液として回収した。得られたRNA粗抽出液をRNeasy Mini kit中のColumnに流し入れ、RNAを吸着させた。洗浄後60μlのヌクレアーゼ不含水に溶解させた。RNAを含むヌクレアーゼ不含水1μlを、NanoDropSpectrophotometer(NanoDrop社)を用いてRNAの定量及び純度指標による品質確認を行った。
表6に記載のNo.001からNo.017、No.034及びNo.035の特定の遺伝子19個の発現量より疲労の程度を判定した。
表6の遺伝子リストに記載のNo.001からNo.017の遺伝子17個それぞれにおいて、安静(非疲労)マウスにおける遺伝子の発現量は、平均値±標準偏差:246.9±248.6、中央値:154.2であり、走行運動負荷1時間後マウスにおける遺伝子の発現量は、平均値±標準偏差:410.7±447.6、中央値:205.6であり、走行運動負荷24時間後マウスにおける遺伝子の発現量は、平均値±標準偏差:222.1±204.4、中央値:143.9であった。さらに、17個の遺伝子全てにおいて運動負荷による発現量の増加、休息による発現変動の減弱を認めた。
さらに、17個の全ての遺伝子を用いても、いずれの1個の遺伝子を用いても、発現量又は発現変動量は増加しており、疲労の状態であると判定することができた。
走行運動負荷24時間後マウスにおける遺伝子の発現変動は、平均値±標準偏差:−2.8±15.4%(減少)、中央値:−2.3%(減少)であった。
さらに、17個の全ての遺伝子を用いても、いずれの1個の遺伝子を用いても、発現量の増加は休息により減弱しており、疲労は減弱または消失していると判定することができた。
走行運動負荷24時間後マウスの遺伝子の発現量は、平均値±標準偏差:23.5±25.1%(増加)、中央値:23.5%(増加)であった。2個の全ての遺伝子を用いても、いずれの1個の遺伝子を用いても、走行運動負荷1時間後に認められた発現量の減少は休息により減弱しており、疲労は減弱または消失していると判定することができた。
表6に記載のNo.001からNo.010の特定の遺伝子10個を用い、被験物質の投与により疲労の状態における遺伝子の発現変動量を減少させた場合に、被験物質の投与により被験体の疲労の程度は減弱したと判定し、被験物質は疲労に対して有効であると判定する工程を含む、疲労の回復、改善又は予防し得る物質(被験物質)の有効性(効果)の判定方法を開発した。
被験物質投与走行運動マウス(4匹)には、疲労を惹起させる走行運動の負荷前まで、2週間、1日1回、300mg/kgの投与量で経口投与し、走行運動負荷終了直後にも経口投与した。安静(非疲労)(4匹)及び媒体投与走行運動マウス(4匹)には、疲労を惹起させる走行運動の負荷前まで、2週間、1日1回、蒸留水を経口投与した。
被験物質投与走行運動マウス及び媒体投与走行運動マウスへの走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(室町機械(株)又はバイオリサーチセンター(株))を用いて行った。
走行運動は、試験例3と同様に、走行開始速度9メートル/分、漸増ステップ3メートル/4分にて52分間の一定負荷とした。
尚、走行訓練を3から4日間隔で4回実施し、疲労を惹起させる走行運動の負荷は最終走行訓練の3から4日後に実施した。走行訓練は全てのマウスに行った。
骨格筋の採取は、走行運動負荷2時間後に深麻酔条件にて行った。他の方法は試験例3と同様に行った。
安静(非疲労)マウスにおける遺伝子の発現量と媒体投与走行運動マウスにおける遺伝子の発現量とを、Fold Change比較の方法に用いて比較すると、No.001からNo.010の特定の遺伝子10個においては、平均値±標準偏差:106.6±82.9%(増加)、中央値:65.4%(増加)であった。遺伝子10個の全ての遺伝子において著しい発現変動が認められ、疲労の状態であると判定することができた。
被験物質投与走行運動マウスにおける特定の遺伝子10個それぞれにおいては、“疲労の程度(発現変動率%)62.3±15.9(平均値±標準偏差)”、“疲労の程度(発現変動率%)61.6(中央値)”であった。
表6に記載のNo.001からNo.006の特定の遺伝子6個を用い、身体作業による肉体疲労の状態としたマウス由来の末梢血液におけるRNAの発現量を、プライマーを用いた遺伝子の発現増幅手法(RT−PCR法)を用いて測定し、定量的な疲労の程度の判定方法を開発した。
実験には、安静(非疲労)マウス(4匹)、走行運動負荷1時間後マウス(4匹)及び持久型走行運動負荷1時間後マウス(4匹)を用い、走行運動を負荷した。
走行運動の負荷は、マウス・ラット用トレッドミル走行装置(バイオリサーチセンター(株))を用い、試験例3又は試験例4と同等に行った。
Total RNA 各200ngより、Quntitect Reverse Transcript (QIAGEN社)を用いて、規定のプロトコールに沿って、20μlのcDNAを調製した。具体的には、まずTotal RNAにゲノムDNAの除去試薬を加え14μlとし、42℃ 2分間の処理後、直ちに氷冷した。同じく氷上で逆転写反応溶液を調製し、ゲノムDNA除去処理後のTotal RNAを加えて20μlとし、42℃で30分間反応させた。反応終了後95℃で3分間処理して含まれる酵素を不活性化し、5倍濃度に希釈して以降の工程に供した。プライマーと調製されたcDNAを用いて、定量的PCR解析を実施した。PCR試薬はAbsolute SYBR Green ROX Mix (Thermo SCIENTIFIC社)、装置は7300 Real Time PCR System (Applied Biosystems社)を使用した。反応条件は、95℃で15分変性後、「95℃ 15秒、55 or 58℃ 30秒、72℃ 30秒」を50サイクルとした。プライマー濃度は100nM、もしくは250nMとした。
△Ct = [(各遺伝子のCt値) - (Actb遺伝子のCt値)]
次に各被検体について、対照検体に対する相対発現量に対応する値を以下の式で求めた。
△△Ct = [(各検体の△Ct) - 運動前検体の△Ct値]
相対発現量=2-△△Ct
Fkbp5 :
センス鎖5’-CTCAAACCCAAACGAAGGAG-3’(配列番号52)
アンチセンス鎖5’-CACATCTCGGCAATCAAATG-3’(配列番号53)
Nfil3 :
センス鎖5’-AGGGAGCAGAACCACGATAA-3’(配列番号54)
アンチセンス鎖5’-CGGATGGAGGAGACAAATCA-3’(配列番号55)
Ppp1r15a :
センス鎖5’-GCTTCTGCTGCTTCCATAGC-3’(配列番号56)
アンチセンス鎖5’-TTCTTCCGTGGCTTGATGTT-3’(配列番号57)
Tlr4 :
センス鎖5’-GCACTGACACCTTCCTTTCC-3’(配列番号58)
アンチセンス鎖5’-CTGGTTCTCCTTTCTGTTCTCA-3’(配列番号59)
Tlr8 :
センス鎖5’-GGCATTTACACCCTCACAGAG-3’(配列番号60)
アンチセンス鎖5’-CATTCCACAAACGGTCAAGA-3’(配列番号61)
Optn :
センス鎖5’-TGAAGAGGGAGGCAGTAGACA-3’(配列番号62)
アンチセンス鎖5’-GGCAGGAGTGAATCGGAATA-3’(配列番号63)
Actb :
センス鎖5’-CAGCAGATGTGGATCAGCAAG-3’(配列番号64 )
アンチセンス鎖5’-GCACTTGCGGTGCACGAT-3’(配列番号65)
表6の遺伝子リストに記載のNo.001からNo.006の特定の遺伝子6個を選定し、遺伝子の発現量を定量的に測定した。
No.001:Fkbp5 2.37倍
No.002:Nfil3 1.76倍
No.003:Ppp1r15a 1.43倍
No.004:Tlr4 1.27倍
No.005:Tlr8 1.77倍
No.006:Optn 1.80倍
これらより、表6の遺伝子リストに記載のNo.001からNo.006の遺伝子6個全てにおいて、高強度(高速)での運動負荷に伴い、発現増加することを認めた。
No.001:Fkbp5 2.00倍
No.002:Nfil3 2.69倍
No.003:Ppp1r15a 1.90倍
No.004:Tlr4 1.56倍
No.005:Tlr8 2.49倍
No.006:Optn 2.05倍
これらより、表6の遺伝子リストに記載のNo.001からNo.006の遺伝子6個全てにおいて、運動負荷に伴う疲労困憊の状態において、発現増加することを認めた。
Claims (10)
- 被験体由来の生体試料において、
PPP1R15A遺伝子、FKBP5遺伝子、NFIL3遺伝子及びOPTN遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の発現が増加する場合に被験体が疲労状態であると判定する方法。 - 被験体がヒト又は非ヒト哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
- 生体試料が血液、肝臓、心筋、骨格筋又は細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
- 生体試料が血液である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 疲労が生理的疲労である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 疲労が末梢性疲労である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
- 疲労が身体作業による肉体疲労である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
- 遺伝子の発現変動を、生体試料における遺伝子のRNAを測定することによって分析する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
- 遺伝子の発現変動を、生体試料における遺伝子のRNAをプライマーを用いた遺伝子の増幅手法で測定することによって分析する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
- PPP1R15A遺伝子、FKBP5遺伝子、NFIL3遺伝子及びOPTN遺伝子より選ばれる1個以上の遺伝子の転写産物に特異的なプローブ又はプライマー、又は上記遺伝子の翻訳産物に特異的な抗体を含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法において上記遺伝子の発現変動を測定するための試薬又はキット。
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